(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、小型で大容量なコンデンサ素子として、誘電体磁器組成物と内部電極との同時焼成によって作られた積層セラミックコンデンサが開発されている。そして、従来型の誘電体磁器組成物は焼成温度が1150℃〜1400℃と高いため内部電極との同時焼成を行うための電極材料として、高温に耐えるニッケル(Ni)またはニッケル合金が主流であった。しかし、ニッケルはレアメタルの一つであり、レアメタル需要の拡大が見込まれるなか、近年のレアメタル価格高騰を受け、その代替技術に注目が集まっており、ニッケル(以下、「Ni」と表記することもある。)を用いた内部電極から、銅(以下。「Cu」と表記することもある。)などの地金が安い金属を用いた内部電極への置き換え需要が高まっている。
【0003】
しかしながら、内部電極として、銅を使用する場合には、銅の融点は1085℃とニッケルよりも融点が低いことから、1030℃、望ましくは1000℃以下で焼成する必要があり、従来よりも低温で焼成しても十分な特性を発揮する積層セラミックコンデンサ用の誘電体材料が必要であるという問題がある。
【0004】
本発明者らは、以上のような事情に鑑みて、還元雰囲気下において、1030℃、望ましくは1000℃以下での焼結が可能であり、誘電体セラミックス層の材料に鉛(Pb)やビスマス(Bi)を含有せず、誘電率が2000以上であり、誘電率の温度特性がX7R特性であり、従来のNi内電積層セラミックコンデンサと同等レベルの高温加速寿命特性を有する積層セラミックコンデンサを得るべく検討した結果、BaTiO
3系化合物を主成分とする誘電体磁器組成物において、Ba/Ti比や、副成分ある希土類の組成比及びMnOの組成比の条件を見出した。 そして、複数の誘電体セラミック層と、該誘電体セラミック層間に対向して形成され、交互に異なる端面へ引出されるように形成された内部電極と、前記誘電体セラミック層の両端面に形成され、前記内部電極のそれぞれに電気的に接続された外部電極とを有する積層セラミックコンデンサにおいて、前記誘電体セラミック層が、ABO
3+aRe
2O
3+bMnO(ただし、ABO
3はBaTiO
3を主体とするペロブスカイト系誘電体、Re
2O
3はLa、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びYから選ばれる1種以上の金属酸化物、a、bはABO
3100molに対するmol数を示す)で表記したとき、1.000≦A/B≦1.035の範囲であり、0.05≦a≦0.75の範囲であり、0.25≦b≦2.0の範囲である主成分と、B、LiまたはSiのうちの一種以上を含み、それぞれB
2O
3、Li
2O、SiO
2で換算したときの合計が0.16〜1.6質量部である副成分と、で構成された焼結体であり、前記内部電極はCuまたはCu合金で構成されていることを特徴とする積層セラミックコンデンサを提案した(特許文献1)。
【0005】
また、本発明者らは、内部電極がCuまたはCu合金で構成された、積層セラミックコンデンサにおいて、誘電体セラミックスを、断面でみたときの径の平均値が400nm以下のグレインと粒界とで構成された、BaTiO
3を主体とするプロブスカイト型誘電体材料の焼結体とすることにより、温度特性がX7R特性またはX8R特性のものが得られることも提案しており(特許文献2)、実施例においては、焼結体の出発原料として、MnOに、添加剤である希土類の酸化物、および焼結助剤としてのB
2O
3、Li
2O、SiO
2を混合したものを用いている。
【0006】
さらに、本発明者らは、BaTiO
3からなる主成分と、Re、Mn、V、Mo、Cu、B、Li、Ca、Srからなる副成分とからなる誘電体磁器組成物において、Re、Mn、B、Liの含有量に加え、VおよびMoのトータル含有量が、Cuを主成分とする内部電極を用いた積層セラミックコンデンサの寿命特性に影響を与えることを見いだし、前記誘電体磁器組成を、BaTiO
3+aRe
2O
3+bMnO+cV
2O
5+dMoO
3+eCuO+fB
2O
3+gLi
2O+xSrO+yCaO(ただし、ReはEu、Gd、Dy、Ho、Er、Yb、及びYから選ばれる1種以上、a〜hはBaTiO
3からなる主成分100molに対するmol数を示す。)で表記し、該誘電体磁気組成物に含まれる(Ba+Sr+Ca)/Tiのmol比をmとしたとき、0.10≦a≦0.50、0.20≦b≦0.80、0≦c≦0.12、0≦d≦0.07、0.04≦c+d≦0.12、0≦e≦1.00、0.50≦f≦2.00、0.6≦(100(m−1)+2g)/2f≦1.3、0.5≦100(m−1)/2g≦5.1、0≦x≦1.50≦y≦1.5であることを特徴とする誘電体磁器組成物を提案している(特許文献3)。
【0007】
一方、積層セラミックコンデンサにおいては、小型化かつ大容量化への要求を満たす有効な手段の1つとして、積層セラミックコンデンサを構成する誘導体セラミックス層の薄層化を図ることが検討され、薄層化した際の信頼性設計に関し、種々の提案がなされている。 例えば、特許文献4では、粉砕した原料粉と粉砕していない原料粉とを適当な比率で混ぜ合わせることにより、誘電体層内の結晶粒子径分布が、層厚の1/4よりも小さい側と、これよりも大きい側に、それぞれ一つずつピークが現れるような構造にし、これにより、1μm未満の薄層化においても、高い誘電率と高い電気絶縁性の両立を可能としている。 また、上記特許文献5には、薄層化が可能で且つ高い寿命特性を得るための構造として、一層あたりの粒子数を少なく制限し、MnやVを粒界全体に拡散しやすくする方法をとる。 また、特許文献6では、Li系化合物を焼結助剤として含有し、誘電体セラミックのグレイン径の平均値Rg[μm]を0.06<Rg<0.17、その標準偏差σg[μm]をσg<0.75とすることで、1μm未満の薄層化と良好な寿命特性を同時に実現しており、 また、特許文献7では、信頼性低下の原因となる2次相の発生を制限するために、2次相と同じ組成による化合物をあらかじめ誘電体材料中に混入してから焼成し、余計な2次相の発生を抑えるという方法を取っている。この方法により、2次相の大きさを誘電体厚みの1/3以下に制限している。 また、特許文献8には、M
4R
6O(SiO
4)6型結晶相(Mはアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種)を、BaTiO
3からなる主相粒子の二面間粒界層および3重点に析出させ、薄層化した場合における静電容量の温度特性、絶縁破壊電圧、および、高温負荷寿命を向上している。 また、特許文献9では、余剰なBaやSiなどのアルカリ土類金属が、非結晶性物質として三重点に析出し、これが信頼性を低下させている。そこで、三重点の80%以上の断面積を、8nm以下に抑制し、代わりにBa、TiおよびSiを含む結晶性酸化物粒子を誘電体セラミック層中に析出させる構造をとることで、薄層化した場合においても高い信頼性を実現している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らが、内部電極として銅を使用する積層セラミックコンデンサについて更に検討を重ねた結果、既に提案している上記特許文献1〜3では数μ以上の厚い所で検討しており、誘電体セラミック層が、2μm以下、好ましくは1μm以下と、薄くなってきた場合の信頼性の確保といった点で、まだ検討の余地があることが判明した。 一方、上記特許文献4〜9等に記載の、従来の薄層化した際の信頼性設計においては、前述のような低温での焼成は意図されておらす、充分とはいえないことも判明した。
【0010】
すなわち、上記特許文献4、5においては、内部電極にNiを用いており、焼成温度が1150℃と高く、Cuを内部電極として用いるためには焼成温度が高い。 また、特許文献6では、1025℃と低温で焼成する事も可能であるが、低温で焼結させる為の成分としては、SiおよびLiしか含有していない。このような系においては、焼成過程においてLiが揮発しやすく安定した特性を得ることが難しい。 また、特許文献7のものも、焼成温度が1200℃以上と高く、Cuを内部電極とすることはできない。 また、特許文献8に記載された組成では、焼成温度が1200℃以上と高くなり、Cuを内部電極とすることはできない。 また、特許文献9では、低温での焼成は意図しておらず、実際に、記載の組成だけでは1030℃以下での焼成ができない。
【0011】
本発明は、こうした現状を鑑みてなされたものであり、1030℃以下の低温での焼成が可能で、かつ、薄層化した場合においても、高い誘電率と、良好な寿命特性と、さらに、X7Rを満たす温度特性とを合わせ持つ、積層セラミックコンデンサを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成すべく更に検討を重ねた結果、BaTiO
3を主成分とする主相粒子と、少なくともRe(ReはEu、Gd、Dy、Ho、Er、Yb、及びYの少なくとも一つ以上を含む)、Ba、Tiを含む2次相粒子、及び少なくともB(ホウ素)又はLi(リチウム)のどちらか一方又は両方を含んだ粒界相からなる誘電体セラミックにより構成される、層厚が2μm以下の誘電体セラミック層が複数積層されてなる略直方体形状のセラミック積層体と、前記誘電体セラミックスを介して対向しかつ交互に異なる端面へ引き出されるように形成された、Cu又はCu合金によりなる内部電極と、前記セラミック積層体の両端面に形成され、該端面に引き出された前記内部電極のそれぞれに電気的に接続された外部電極と、を有する積層セラミックコンデンサにおいて、主相粒子の粒子径の分布を特定することにより、BやLiを用いて低温で焼結させても高誘電率と高寿命の両立を図ることが可能となることを見いだした。また、比較的大きな、希土類を含む2次相粒子を存在させることで、主相粒子の焼結を促進させると共に、2次相から徐々に希土類が粒界相に拡散することで、焼結性と信頼性の両立を達成しうることを見いだした。更に、主相粒子の成分であるBaTiO
3からBaの一部が粒界相に拡散することで低温での緻密な状態を形成しうるが、拡散するBaが多すぎると結晶性が低下して欠損を作り、信頼性を低下させる原因となることも見いだした。
【0013】
本発明は、これらの知見に基づいて検討を重ねた結果完成に至ったものであり、以下の発明を提供するものである。
[1]BaTiO
3を主成分とする主相粒子と、少なくともRe(ReはEu、Gd、Dy、Ho、Er、Yb、及びYの少なくとも一つ以上を含む)、Ba、Tiを含む2次相粒子、及び少なくともB(ホウ素)又はLi(リチウム)のどちらか一方又は両方を含んだ粒界相からなる誘電体セラミックにより構成される、誘電体セラミック層が複数積層されてなる略直方体形状のセラミック積層体と、前記誘電体セラミックス層を介して対向しかつ交互に異なる端面へ引き出されるように形成された、Cu又はCu合金によりなる内部電極と、前記セラミック積層体の両端面に形成され、該端面に引き出された前記内部電極のそれぞれに電気的に接続された外部電極と、を有する積層セラミックコンデンサにおいて、
前記内部電極に挟まれた前記誘電体セラミック層の層厚をtとし、上記誘電体セラミック層中における前記主相粒子の粒子径を測定して得られた累積個数分布の累計20%、累計50%及び累計95%における粒子径を、それぞれD20、D50、D95としたとき、D20≦D50×70%、D50≦t/4、D95≦t/2、CV値(D20〜D95の間の標準偏差/D50)<40%となり、
前記誘電体セラミック層の任意の5μm×5μmの領域中に、粒子径が0.1μm以上の前記2次相粒子が、平均5個以上存在し、該領域において、主相粒子の累積個数分布の累計80%(D80)よりも大きい粒子径をもつ2次相粒子の数が、平均2個未満であり、
前記粒界相のBa/Ti比を、前記主相粒子の粒子内のBa/Ti比で割った値が、1.2以下であり、
前記誘電体セラミック層を構成する誘電体セラミックスが、BaTiO
3からなる主成分と、Re、Mn、V、Mo、Cu、B、Li、Ca、Srからなる副成分とからなる誘電体磁器組成物からなり、前記誘電体磁器組成を、BaTiO
3+aRe
2O
3+bMnO+cV
2O
5+dMoO
3+eCuO+fB
2O
3+gLi
2O+xSrO+yCaO(ただし、ReはEu、Gd、Dy、Ho、Er、Yb、及びYから選ばれる1種以上、a〜
g、xおよびyはBaTiO
3からなる主成分100molに対するmol数を示す。)で表記し、該誘電体磁器組成物に含まれる(Ba+Sr+Ca)/Tiのmol比をmとしたとき、0.10≦a≦0.50、0.20≦b≦0.80
、0≦c≦0.12
、0≦d≦0.07
、0.04≦c+d≦0.12
、0≦e≦1.00
、0.50≦f≦2.00、0.6≦(100(m−1)+2g)/2f≦1.3
、0.5≦100(m−1)/2g≦5.1
、0≦x≦1.5
、0≦y≦1.5
であることを特徴とする積層セラミックコンデンサ。
[2]前記誘電体磁器組成物に不純物として含まれるSiは、BaTiO
3からなる主成分を100molとしたときにSiO
2換算で1.0mol以下であることを特徴とする[1]に記載の積層セラミックコンデンサ。
[3]前記誘電体磁器組成物は、焼結温度が1030℃以下で緻密化させることが可能であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の積層セラミックコンデンサ。
[4]前記誘電体セラミック層の層厚が2μm以下であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の積層セラミックコンデンサ。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、1030℃以下の温度で焼成し、かつ、誘電体セラミック層の層厚を2μm以下に薄層化した場合においても、1800以上の高い誘電率と、X7R特性を満足する温度特性に加え、温度150℃で電界強度20kV/mm相当の高温負荷の下でも100時間を上回るような高い寿命特性を満足する、良好な寿命特性が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る積層セラミックコンデンサの実施形態について説明する。 本実施形態による積層セラミックコンデンサ1は、
図1に示すように、複数の誘電体セラミック層3と、該誘電体セラミック層間に形成された内部電極4で構成されるセラミック積層体2を備える。セラミック積層体2の両端面上には、内部電極と電気的に接続するように外部電極5が形成され、その上には必要に応じて第一のメッキ層6、第二のメッキ層7が形成される。 隣り合う内部電極4に挟まれた誘電体セラミック層3の厚みは2μm未満である。
【0017】
前記誘電体セラミック層3を構成する誘電体セラミックは、BaTiO
3からなる主成分と、Re、Mn、V、Mo、Cu、B、Li、Ca、Srからなる副成分とからなる誘電体磁器組成物からなり、 前記誘電体磁器組成を、BaTiO
3+aRe
2O
3+bMnO+cV
2O
5+dMoO
3+eCuO+fB
2O
3+gLi
2O+xSrO+yCaO(ただし、ReはEu、Gd、Dy、Ho、Er、Yb、及びYから選ばれる1種以上、a〜g、xおよびyはBaTiO
3からなる主成分100molに対するmol数を示し、mは誘電体磁気組成物に含まれる(Ba+Sr+Ca)/Tiのmol比を示す)で表記したとき、 0.10≦a≦0.50 0.20≦b≦0.80 0≦c≦0.12 0≦d≦0.07 0.04≦c+d≦0.12 0≦e≦1.00 0.50≦f≦2.00 0.6≦(100(m−1)+2g)/2f≦1.3 0.5≦100(m−1)/2g≦5.1 0≦x≦1.5 0≦y≦1.5である。
【0018】
ここで、Re
2O
3の量、すなわちaが小さい場合、特に0.10未満の場合は顕著に、寿命が低下する一方、大きくなり過ぎると焼結性が低下し、特に0.50よりも大きい場合には1030℃以下での焼結が困難となる。したがって、0.10≦a≦0.50の範囲が望ましい。より望ましくは、0.20≦a≦0.35であり、高い寿命特性と1000℃以下の緻密化を可能とする。
【0019】
また、MnOの量、すなわちbが小さい場合、寿命が低下する一方、過剰になると焼結性が低下し、特に0.80よりも大きくなると1030℃以下での焼結が困難となる。従って、0.20≦b≦0.80の範囲が望ましい。より望ましくは、0.20≦b≦0.60であり、高い寿命特性と1000℃以下の緻密化を可能とする。
【0020】
VまたはMoの少なくとも一方が副成分として含まれていないと、寿命特性が低下することから、c+d≧0.04が望まれる一方で、VおよびMoのトータル含有量が過剰になっても、また寿命特性の低下が見られた。したがって、0.04≦c+d≦0.12の範囲が望ましい。また、VおよびMoの個々の添加量が0.12および0.07を超えてもまた、寿命特性の低下が見られたことから、0≦c≦0.12および0≦d≦0.07の範囲が望ましい。また、特に、0≦c≦0.10の範囲にした場合において一段と良い寿命特性を示す。
【0021】
内部電極にCuを用いた場合、内部電極から誘電体層へCuが拡散することが知られている。そのため、Cuを添加しなくても誘電体層にはCuが含有していると考えられ、Cuを含むことで寿命特性が改善する。このとき、CuOを添加していない場合、内部電極から誘電体層へのCuの拡散は平衡状態に達し安定化すると考えられる。しかし、Cuを外部から添加し過剰なCuが存在した場合、逆に寿命が低下する傾向が見られた。そこで、0≦e≦1.00が望ましい。 また、Cuは原料として原料工程で添加をしなくても、焼成工程でCu内部電極から誘電体層にCuを拡散させることでも、誘電体層に含有させることが可能である。
【0022】
B
2O
3の含有量、すなわちfが0.50未満であると、焼結性が低下し1030℃以下での焼結が困難となる一方、2.00よりも大きくなると、寿命が低下するため、0.50≦f≦2.00の範囲が望ましい。更により低温で焼成させるためにより望ましくは、0.65≦f≦1.5の範囲が望まれ、高い寿命特性と1000℃以下の緻密化を可能とする。
【0023】
また、Li
2Oの量、すなわちgについては、(100(m−1)+2g)/2fが0.6未満になると寿命が低下し、逆に、1.3よりも大きくなると焼結性が低下し1030℃以下での緻密化が困難となる。したがって、0.6≦(100(m−1)+2g)/2f≦1.3の範囲が望ましい。 また、m≦1の場合、寿命特性が低下するためにm>1であることが望まれる。ただし、mの値は、BaTiO
3系化合物の合成時によって一義的に決まるものではなく、mの値を調整するために、原料工程にてBaやSr、Caの酸化物や炭化物を添加しても同様の効果が得られる。 100(m−1)/2gが0.50未満の場合、寿命特性が低下する一方、5.1よりも大きくなると焼結性が低下し1030℃以下での焼結が困難となる。従って、0.50≦100(m−1)/2h≦5.1の範囲が望ましい。 また、SrやCaはBaと同じようにmの調整元素として使用することができる。 本発明においては、0≦x≦1.5、0≦y≦1.5の範囲において、mの調整に効果があることを確認している。 更に、添加したSrやCaは焼成過程において主成分であるBaTiO
3系化合物に固溶するため、SrやCaを主成分として添加した(Ba
1−x−ySr
vCa
w)TiO
3を用いても同様の効果が得られる。
【0024】
Siは、低温焼結化のためには含まれていないことが望ましいが、例えば分散工程などの製造工程上において含有される可能性が高い。 そのため、意図的にSiO
2を添加し、Si含有量に対する系の安定性を確認したところ、SiO
2換算にて1.0mol%以下であれば特性上に大きな影響を与えないことを確認した。一方で、1.0mol%よりも多く含まれていると焼結性の低下が顕著になるために、SiO
2の不純物含有量は、BaTiO
3からなる主成分を100molとしたときにSiO
2換算で1.0mol以下である。
【0025】
このように、誘電体層2に用いる誘電体磁器組成物を設計することにより、組成物中に環境や人体に有害な鉛やビスマス等を含有しなくても、1030℃以下、望ましくは、1000℃以下の低温焼結が可能で、Cuを主成分とする導電性に優れた金属との共焼結が可能であり、高誘電率かつX7R特性やX5R特性を満足する誘電特性を示すと共に、中性や還元雰囲気下で焼成しても、絶縁抵抗が高く、さらに高温負荷などの寿命特性に優れた誘電体磁器組成物および積層セラミックコンデンサを提案することができる。
【0026】
本発明の誘電体セラミックを作製するために、BaTiO
3系化合物からなる主成分原料に、副成分原料として少なくともRe(ここで、Reは、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Yb、及びYから選ばれる1種以上)、Mn、B、SiおよびLiと、更にV、Moのうち1種以上と、或いは更にCuやBa、Sr、Caを、酸化物やガラス、その他の化合物などの形態で含むセラミック原料を準備する。 本発明の誘電体セラミック層3の主成分である、BaTiO
3粉末の平均粒子径は、0.10μm以上で、且つ、0.30μm以下である。
【0027】
内部電極4は、Cu又はCu合金で構成されている。Cu合金としては、Cu−
Ni合金、Cu−Ag合金などが挙げられる。この内部電極4は、導電ペーストをスクリーン印刷等の方法でセラミックグリーンシートに印刷することによって形成される。導電ペーストには、Cu又はCu合金の金属材料の他、誘電体セラミック層3の焼成収縮との収縮差を軽減するために、誘電体セラミック層3を構成するセラミック材料と略同一のセラミック材料が含まれている。
【0028】
前記の導電ペーストが印刷されたセラミックグリーンシートを積層することにより、生のセラミック積層体が得られる。この成形体を、内部電極4が溶融しない、1030℃以下の温度で、且つ、内部電極4の酸化を防ぐために、窒素雰囲気、あるいはこれに3.0%未満の濃度の水素ガスを混合した還元性雰囲気下で、焼成することにより、焼結されたセラミック積層体2が得られる。なお、還元性雰囲気で焼成した場合、降温工程において、窒素等の雰囲気中で700℃程度の温度での熱処理を施す必要がある。
【0029】
本発明において、焼結された誘電体セラミック層3は、BaTiO
3を主相粒子として含む。主相粒子は、内部電極4に挟まれた誘電体セラミック層の層厚をtとしたとき、
図2で示されるような粒子径分布を示す。
図2は、誘電体セラミック層中における前記主相粒子についてその粒子径分布を示すものであり、縦軸に累計を示し、横軸に粒子径を示してある。
【0030】
本発明においては、該粒子径分布において、累計20%、累計50%及び累計95%における粒子径を、それぞれD20、D50、D95としたとき、 D20 ≦ D50×70%、 D50 ≦ t/4、 D95 ≦ t/2、 CV値(D20〜D95の間の標準偏差/D50)<40%、となることを特徴としており、より望ましくは、100nm≦ D50 ≦t/4である。 すなわち、D20が、D50の70%以下の値を持ち、D50が、t/4以下の値を持ち、D95が、t/2以下の値を持つように分布し、さらに、CV値(D20〜D95の間の標準偏差/D50)が40%未満となるものである。
【0031】
本発明の誘電体セラミックは、高抵抗な粒界相を設計することで信頼性を確保しており、D50>t/4となった場合、内部電極間の粒界数が減少することによる寿命の低下は免れない。ただし、D50が100nm未満になると誘電率の極端な低下を招くことから、誘電率確保の側面から、D50が100nm以上であることが望まれる。更に、D95がt/2以上である場合、粗大な粒子の数が多くなることから、2つの電極間に挟まれた誘電体層において局所的に電極界面の少ない箇所が出来、そこを起点に寿命が劣化する。また、本発明においては、平均粒子径よりも十分に小さい微小粒子が他の粒子と共に存在することで、誘電率の低下を抑制しながら、粒界数を稼ぎ、信頼性の向上を図っている。しかし、中途半端に小さい粒子が存在した場合、誘電体層の見かけ誘電率を下げる事になり、好ましくない。しかし、BやLiを用いて低温で焼結させた場合、D20がD50×70%未満と極端に小さくすることで、逆に誘電率の低下を抑えられる。つまり、D20までの範囲において微小な粒子が存在していることが重要である。更に、D20〜D95の範囲におけるCV値が40未満と小さく粒子径が揃っていることで、高誘電率と高寿命の両立を図っている。CV値が40%以上になると、粒子径のばらつきにより、寿命の低下が起こることになる。
【0032】
また、本発明において、焼結された誘電体セラミック層3は、少なくとも、Re(ReはEu、Gd、Dy、Ho、Er、Yb、及びYの少なくとも一つ以上を含む)、Ba、および、Ti、によって構成される2次相粒子を含む。前記2次相粒子の存在量は、誘電体セラミック層3の任意の5μm×5μmの領域において、0.1μm以上の粒子径のものが平均5個以上であることを特徴としている。また、主相粒子のD80よりも大きい粒子径を持つものが、平均2個未満であることを特徴としている。
【0033】
本発明においては、B−Li−Baと共に希土類が粒界相に存在していることで、粒界相の絶縁性を高め、信頼性を確保していると考えられている。しかし、焼結初期の過程でB−Li中に希土類が固溶してしまうと主相粒子の焼結性を妨げる。そこで、比較的サイズの大きな希土類を2次相として存在させることで、主相粒子の焼結を促進させると共に、2次相から徐々に希土類が粒界相に拡散することで、焼結性と信頼性の両立を図ったものである。
【0034】
2次相の粒子サイズが、0.1μmよりも小さい場合、希土類の粒界への拡散が早まることから焼結性が悪化する。逆に、主相粒子のD80よりも大きい2次相が多数存在すると、拡散速度が遅くなることから、粒界に十分な希土類が分布しないために信頼性が低下する。
【0035】
さらに、本発明では、上記主相粒子において、EELS分析(電子エネルギ−損失分析法を用いた分析)によって得られた粒界相および粒子内のBa/Ti比において、粒界相のBa/Ti比を、粒子内のBa/Ti比で割った値が、1.2未満であることを特徴としている。 本発明においては、主成分であるBaTiO
3からBaの一部が粒界相に拡散することで、低温でネッキングし緻密な状態を形成している。しかし、主相粒子からBaが多く粒界相に拡散すると主相粒子の界面の結晶性が低下し、欠損を作ることで信頼性を低下させていると考えられる。その為、粒界相のBa/Ti比を、粒子内のBa/Ti比で割った値が、1.2を超えないように設計する必要がある。
【0036】
外部電極5は、Cu、Ni、Ag、Cu−Ni合金、Cu−Ag合金で構成され、焼成済みのセラミック積層体2に導電ペーストを塗布して焼付けるか、または未焼成のセラミック積層体2に導電ペーストを塗布して誘電体セラミック層3の焼成と同時に焼付けることで形成される。外部電極5の上には、電解メッキなどによって、メッキ層6、7が形成される。第一のメッキ層6は外部電極5を保護する役目を持ち、Ni、Cu等で構成される。第二のメッキ層7は、半田ぬれ性をよくする役目を持ち、SnまたはSn合金等で構成される。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0038】
《誘電体セラミック原料の作製》 主成分の出発原料として、表1に示す平均粒子径と比表面積を有するBaTiO
3粉末を準備した。 副成分として、BaCO
3、Re
2O
3、MnO、MoO
3、V
2O
5、B
2O
3、及びLi
2Oの各粉末を準備した。 まず、誘電体磁器組成物中のBa/Ti比をmと表記したとき、表1に記載された値となるように、BaCO
3を秤量した。 続いて、組成式を、100BaTiO
3+aRe
2O
3+bMnO+cV
2O
5+dMoO
3+eCuO+fB
2O
3+gLi
2O(ただし、ReはEu、Gd、Dy、Ho、Er、Yb、及びYから選ばれる1種以上、a〜gはBaTiO
3からなる主成分100molに対するmol数を示す)で表記したとき、 0.10≦a≦0.50 0.20≦b≦0.80 0≦c≦0.12 0≦d≦0.07 0.04≦c+d≦0.12 0≦e≦1.00 0.50≦f≦2.00 0.6≦(100(m−1)+2g)/2f≦1.3 0.5≦100(m−1)/2g≦5.1を満たす範囲内において、表1に記載された値となるように、残りの粉末を秤量した。
【0039】
【表1】
【0040】
次に、上記のように秤量されたBaTiO
3、BaCO
3、Gd
2O
3、MnCO
3、MoO
3、V
2O
5、B
2O
3、Li
2Oの各粉末を混合した後、エチルアルコールを媒体として、ボールミルによる湿式混錬を行った。なお、攪拌に要した時間は、サンプルごとに、表2に示すように調節した。
【0041】
【表2】
【0042】
《積層セラミックコンデンサの作製》 上記粉砕処理物に、ポリビニルブチラール系バインダを加えて、ボールミルにより湿式混合し、セラミックスラリーを作製した。このセラミックスラリーをダイコーター法により、シート状に成形し、セラミックグリーンシートを得た。次に、グリーンシート上に、Cuを含有する導電性ペーストをスクリーン印刷し、内部電極となるべき導電性ペースト膜を作製した。さらに、導電性ペースト膜が形成されたセラミックグリーンシートを、導電ペースト膜の引き出されている側が互い違いに成るように積層し、コンデンサ本体となるべき生の積層体を得た。
【0043】
生の積層体を、N
2雰囲気中にて300℃の温度まで加熱し、脱バインダ処理を行った。脱バインダ処理後の積層体を、N
2、H
2O、及び表2に示す水素濃度から成る還元性雰囲気中において、表2に示す温度にて、各サンプルを2時間焼成した。また、その降温工程の途中の段階において、N
2雰囲気における700℃でのアニール処理を行い、生の積層体を焼結させてなるコンデンサ本体を得た。次に、得られたコンデンサ本体の両端部に、Cuとガラス粉末を含んだ外部電極ペーストを塗布し、900℃で焼付けを行い、外部電極を形成した。
【0044】
このようにして得た積層セラミックコンデンサの外形寸法は、幅0.5mm、長さ1.0mm、高さ0.5mmであった。また、内部電極に挟まれた誘電体の積層数は80層であり、1層あたりの平均層厚tは、表3に示すような値であった。
【0045】
《セラミック構造の分析》 主相粒子の粒子径分布を調べるために、コンデンサ試料の研磨面に対し、FE−SEM観察を行い、1000個以上の結晶粒子について最大径と最小径をもとめ、これらの中間の値を、粒子径とした。このようにして得られた粒子径から、主相粒子に関して、粒子径の累積個数分布を作成し、D20(累計20%における粒子径)、D50(累計50%における粒子径)、D95(累計95%における粒子径)、ならびに、CV値(D20〜D95の間の標準偏差/D50)を算出した。
【0046】
また、2次相粒子の分布を調べるために、STEMを用いて、内部電極層に挟まれた誘電体セラミック層について、希土類元素のマッピングを、
図3に示すような、5μm×5μmの領域に対して行った。なお、5μm×5μmの領域は、積層セラミックコンデンサを、内部電極と平行に研磨して、内部電極間の誘電体層を露出させて、その露出面上でサンプリングした。 上記マッピングの結果、希土類元素が粒内に均一に分布する箇所を2次相とし、同箇所に該当するTEM像から、上記主相粒子の粒子径をもとめたものと同様の手段により、その粒子径を計測した。そして、前記領域内に存在する、0.1μm以上の直径をもつ2次相粒子の個数を計上した。さらに、その中から、主相粒子のD80以上の直径を持つ2次相粒子の個数を計上した。尚、各サンプルに関して、任意の30箇所を撮影した写真を使用し、平均値をもとめた。
【0047】
主相粒子内と粒界相におけるBa/Ti比を比較するため、まず、
図4で示すような、任意の隣り合う2個の主相粒子9を選び、それぞれの中心点10を結んだ、直線上(分析領域11)におけるBaとTiの濃度を、EELS分析(電子エネルギー損失分光法を用いた分析法)により測定した。続いて、前記分析領域11における、粒界相12上に位置する分析領域13において、Ba/Ti比の平均値を算出し、これを粒界層のBa/Ti比とした。さらに、前記分析領域11から、前記分析領域13を
除いた領域において、Ba/Ti比の平均値を算出し、これを主相粒子内のBa/Ti比とした。そして、前記粒界相のBa/Ti比を、前記主相粒子内のBa/Ti比で割った値を求めた。各サンプルに関して、任意の100箇所において計測を行い、平均値を求めた。 上記結果を表3に示す。
【0048】
《電気特性の評価》 得られた各試料に係る積層セラミックコンデンサに関して、誘電率、温度特性、加速寿命を求めた。 誘電率については、温度25℃、1kHz、及び1Vrmsの条件下で測定した静電容量より算出し、1800以上のものを良品とした。 温度特性については、1kHz、1Vrmsの条件で測定し、25℃での静電容量を基準とした、−55〜125℃の範囲における温度容量変化率の最大の値を算出した。この範囲における変化率が±15%以内であるもの、即ち、EIA規格のX7R特性を満足するものを良品とした。 加速寿命は、温度150℃の下で、電界強度で20kV/mm相当の電圧を印加する高温負荷試験を実施し、絶縁抵抗が10^5Ωを下回った時点を故障とみなし、故障時間が100時間を上回ったものを良品とした。 上記結果を表3に示す。
【0049】
【表3】
【0050】
《実験結果》 サンプル5、11、15、17、21、22、24においては、主相粒子の粒子径分布が、本発明の条件を、少なくとも1つ以上満たしていないため、故障時間が100時間未満と短くなっている。 サンプル6、12においては、0.1μm以上の粒子径を持つ2次相粒子の個数が、本発明の条件よりも少ないため、希土類元素の主相への固溶が進み、故障時間が100時間未満と短くなっている。 サンプル23においては、主相粒子のD80よりも粒子径が大きい2次相粒子の個数が、本発明の範囲を超えるため、信頼性が悪化し、故障時間が100時間未満と短くなっている。 サンプル10においては、主相粒子の粒界におけるBa/Tiが、粒内におけるBa/Tiの1.2倍以上であり、本発明の範囲を満たさないいため、故障時間が100時間未満と短くなっている。 なお、表1〜表3において、これらのサンプルには*印を付して、本発明の実施例外であることを示してある。
【0051】
上記以外の、本発明の範囲を満たすサンプル全てにおいて、1800以上の高い誘電率と、X7R特性を満足する温度特性に加え、温度150℃で電界強度20kV/mm相当の高温負荷の下でも100時間を上回るような高い寿命特性を満足する結果が得られた。