(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下部走行体(2)と、該下部走行体(2)上に旋回可能に搭載された上部旋回体(3)と、該上部旋回体(3)の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置(4)と、該作業装置(4)とバランスさせるために前記上部旋回体(3)の後側に設けられたカウンタウエイト(12)とからなり、
前記上部旋回体(3)は、
支持構造体を形成し前端に支持ブラケット(5F)が設けられた旋回フレーム(5)と、
前記カウンタウエイト(12)の前側に位置して該旋回フレーム(5)上に搭載されたエンジン(8)と、
前記旋回フレーム(5)の前記支持ブラケット(5F)に設けられ前記作業装置(4)を左,右方向に揺動可能に支持するスイングポスト(13)と、
該スイングポスト(13)と前記旋回フレーム(5)との間に設けられ前記スイングポスト(13)を左,右方向に揺動させるスイングシリンダ(14)と、
該スイングシリンダ(14)の近傍で、かつ前記エンジン(8)の前側に位置して前記旋回フレーム(5)上に設けられ油圧アクチュエータに供給される作動油を貯える作動油タンク(15)と、
該作動油タンク(15)の前側に位置して前記旋回フレーム(5)上に設けられ前記エンジン(8)に供給される燃料を貯える燃料タンク(16)とを備えてなる建設機械において、
前記旋回フレーム(5)には、前記燃料タンク(16)の下側に位置して前記スイングシリンダ(14)の一部を跨ぐ取付部材(17)を設け、
前記作動油タンク(15)の上部位置と前記取付部材(17)との間には、前記燃料タンク(16)を前,後方向および上,下方向に拘束する縦拘束具(20,20′)を着脱可能に設け、
前記作動油タンク(15)の左,右方向の外側の側面部(15D)と前記取付部材(17)との間には、前記燃料タンク(16)を左,右方向に拘束する横拘束具(25)を着脱可能に設ける構成としたことを特徴とする建設機械。
前記作動油タンク(15)に取付けられる前記連結部材(21,21′)は、前記作動油タンク(15)の前面(15A)の上部位置、または上面(15E)の前部位置のいずれかに設ける構成としてなる請求項3に記載の建設機械。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械の代表例である油圧ショベルは、下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置とにより大略構成されている。
【0003】
上部旋回体は、旋回フレームと、該旋回フレーム上に設けられ、オペレータが着座する運転席と、該運転席の後側に位置して前記旋回フレームに搭載されたエンジンと、該エンジンに設けられた油圧ポンプと、前記運転席の右側に位置して前記旋回フレーム上に設けられ、前記油圧ポンプに供給する作動油を貯える作動油タンクと、前記旋回フレーム上に設けられ、前記エンジンに供給する燃料を貯える燃料タンクとにより大略構成されている。
【0004】
ここで、側溝等の掘削作業に好適に用いられる油圧ショベルとして、作業装置が上部旋回体に対して左,右方向に揺動可能となったスイング式の油圧ショベルがある。このスイング式の油圧ショベルは、上部旋回体を構成する旋回フレームの前側に位置して、スイングシリンダによって左,右方向に揺動されるスイングポストが設けられ、該スイングポストに作業装置が俯仰動可能に取付けられている(特許文献1)。
【0005】
このようなスイング式の油圧ショベルは、上部旋回体の機器類の設置スペースを有効的に利用するため、作動油タンクと燃料タンクとが、前,後方向に隣接した状態でスイングシリンダの上方に配置されている。このため、従来技術では、スイングシリンダの整備作業を行う場合等において、燃料タンクを旋回フレームに対して容易に取付け、取外しするために、固定ベルトを用いて旋回フレームに燃料タンクを固定する構造となった油圧ショベルが知られている。(特許文献2、特許文献3)。
【0006】
一方、他の従来技術として、2本の固定ベルトを、燃料タンクの外周面上で、上,下方向または左,右方向に平行に配置することにより、燃料タンクを固定する構造が提案されている。(特許文献4、特許文献5)。さらに、2本の固定ベルトを、燃料タンクの外周面上で十字状に交差させることにより、燃料タンクを固定する構造が提案されている(特許文献6)。
【発明の概要】
【0008】
ところで、上述した特許文献2ないし特許文献5による燃料タンクの取付け構造は、1本の固定ベルト、あるいは平行に配置した2本の固定ベルトを用いて燃料タンクを固定している。このため、燃料タンクを水平方向あるいは垂直方向(上,下方向)の何れか一方向にしか拘束することができず、油圧ショベルの振動により燃料タンクがずれてしまうという問題がある。
【0009】
一方、上述した特許文献6のように、2本の固定ベルトを燃料タンクの外周面上で十字状に交差させて燃料タンクを水平方向と垂直方向とに拘束した場合には、燃料タンクを強固に固定することができる。しかし、この従来技術では、燃料タンクを固定するための専用の取付台が必要となり、部品点数が増大し、製造コストが嵩むという問題がある。
【0010】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、部品点数の増大を招くことなく、燃料タンクを強固に固定することができるようにした建設機械を提供することにある。
【0011】
(1).本発明による建設機械は、下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置と、該作業装置とバランスさせるために前記上部旋回体の後側に設けられたカウンタウエイトとからなり、前記上部旋回体は、支持構造体を形成し前端に支持ブラケットが設けられた旋回フレームと、前記カウンタウエイトの前側に位置して該旋回フレーム上に搭載されたエンジンと、前記旋回フレームの前記支持ブラケットに設けられ前記作業装置を左,右方向に揺動可能に支持するスイングポストと、該スイングポストと前記旋回フレームとの間に設けられ前記スイングポストを左,右方向に揺動させるスイングシリンダと、該スイングシリンダの近傍で、かつ前記エンジンの前側に位置して前記旋回フレーム上に設けられ油圧アクチュエータに供給される作動油を貯える作動油タンクと、該作動油タンクの前側に位置して前記旋回フレーム上に設けられ前記エンジンに供給される燃料を貯える燃料タンクとを備えている。
【0012】
本発明が採用する構成の特徴は、前記旋回フレームには、前記燃料タンクの下側に位置して前記スイングシリンダの一部を跨ぐ取付部材を設け、前記作動油タンクの上部位置と前記取付部材との間には、前記燃料タンクを前,後方向および上,下方向に拘束する縦拘束具を着脱可能に設け、前記作動油タンクの左,右方向の外側の側面部と前記取付部材との間には、前記燃料タンクを左,右方向に拘束する横拘束具を着脱可能に設ける構成としたことにある。
【0013】
この構成によれば、燃料タンクは、縦拘束具と横拘束具とによって水平方向(前,後方向および左,右方向)と垂直方向(上,下方向)の2方向(具体的には、3軸方向)に確実に固定されているので、建設機械の走行時や作業時の振動によって燃料タンクが旋回フレームに対して位置ずれするのを抑えることができる。この結果、燃料タンクがずれて周囲の搭載機器と接触するのを防止することができる。従って、燃料タンクと周囲の搭載機器との間のクリアランスを小さく設定することができ、この分、燃料タンクの容量を十分に確保することができる。
【0014】
しかも、スイングシリンダの一部を跨ぐ取付部材と作動油タンクとを利用して縦拘束具と横拘束具とを取付けることができるので、縦拘束具と横拘束具とを、それぞれ専用の固定具等を用いて個別に取付ける必要がない。この結果、部品点数の増大を抑え、製造コストの低減にも寄与することができる。加えて、縦拘束具および横拘束具を取付部材または作動油タンクに対して着脱することにより、燃料タンクを交換するときやスイングシリンダ等のメンテナンス作業時に容易に燃料タンクを着脱可能とすることができる。
【0015】
(2).本発明によると、前記上部旋回体は、底板と左,右の縦板とにより前記旋回フレームを形成し、前記左,右の縦板の前端に前記スイングポストを支持する前記支持ブラケットを設け、前記スイングシリンダは前記各縦板のうちの一方の縦板よりも左,右方向の外側に位置して設け、前記作動油タンクと前記燃料タンクは、前記スイングシリンダに沿わせて前,後方向に配置する構成としたことにある。この構成によれば、スイングシリンダの周囲の空間を利用して、作動油タンクと燃料タンクとを旋回フレーム上に搭載することができる。
【0016】
(3).本発明によると、前記燃料タンクの上面は前記作動油タンクの上面よりも低く形成し、前記縦拘束具は、前記燃料タンクの上面よりも上側に位置して前記作動油タンクに取付けられる連結部材と、上端側が該連結部材に連結されると共に下端側が前記取付部材に取付けられ前記燃料タンクの前面に当接するベルト部材とにより構成し、前記横拘束具は、前端側が前記取付部材に取付けられると共に後端側が前記作動油タンクの外側の側面部に取付けられ前記燃料タンクの左,右方向の外側の側面に当接するベルト部材により構成したことにある。
【0017】
この構成によれば、縦拘束具を構成する連結部材は、燃料タンクの上面よりも上側に位置した状態で作動油タンクに固定されるので、燃料タンクが上,下方向に移動するのを規制することができる。
【0018】
(4).本発明によると、前記作動油タンクに取付けられる前記連結部材は、前記作動油タンクの前面の上部位置、または上面の前部位置のいずれかに設ける構成としたことにある。この構成によれば、作動油タンクに連結部材を取付けることにより、燃料タンクの上面に連結部材を当接させることができ、燃料タンクの上,下方向の移動を規制することができる。
【0019】
(5).本発明によると、前記燃料タンクは、その底面を左,右方向の外側の深底部と内側の浅底部とを有する段付底面形状に形成し、前記取付部材は、前記スイングシリンダを取り囲むように縦板部と該縦板部の上端を左,右方向に連結する横板部からなる逆L字状に構成し、前記取付部材の横板部には、前記燃料タンクの浅底部を載置し、前記縦板部には、前記縦拘束具の下端側と前記横拘束具の前端側を取付ける構成としたことにある。
【0020】
この構成によれば、スイングシリンダの上側には、取付部材を介して燃料タンクの浅底部が配置されているので、スイングシリンダの上部空間を利用して燃料タンクの容量を増大することができる。さらに、縦拘束具の下端側と横拘束具の前端側とを同一の部材である取付部材に固定させているので、部品点数を削減することができ、製造コストを抑えることができる。
【0021】
(6).本発明によると、前記上部旋回体は、前記下部走行体に対する旋回中心と前記カウンタウエイトとの間を旋回半径とする後方小旋回型として形成され、前記燃料タンクは外側の側面部が前記旋回半径に収まるように円弧形状に形成したことにある。この構成によれば、上部旋回体が旋回動作を行うときに、燃料タンクの外側の側面が上部旋回体の旋回半径からはみ出すことがなく、旋回動作の安全性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る建設機械の実施の形態を油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、
図1ないし
図9を参照しつつ詳細に説明する。
【0024】
1は建設機械の代表例としてのキャブ仕様の油圧ショベルを示している。該油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3とにより構成されている。上部旋回体3の前側には作業装置4が俯仰動可能に設けられている。
【0025】
次に、上部旋回体3の構成について説明する。この上部旋回体3は、後述の旋回フレーム5、運転席6、キャブ7、エンジン8、油圧ポンプ9、熱交換器10、カウンタウエイト12、作動油タンク15、燃料タンク16等により構成されている。
【0026】
ここで、上部旋回体3は、
図2に示す如く、下部走行体2の車幅とほぼ等しい左,右方向の幅寸法を有し、下部走行体2に対する旋回中心Oと後述するカウンタウエイト12の後面との間の距離を旋回半径Rとしたときに、旋回中心Oを中心とした旋回半径Rの仮想円C内にほぼ収まるように、上方から見て略円形状に形成されている。これにより、油圧ショベル1は、上部旋回体3が旋回動作を行ったときに、カウンタウエイト12の後面が下部走行体2の車幅内に収まる後方小旋回型の油圧ショベルとして構成されている。
【0027】
4は上部旋回体3の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置を示している。この作業装置4は、後述のスイングポスト13に俯仰動可能に取付けられたブーム4Aと、該ブーム4Aの先端部に俯仰動可能に取付けられたアーム4Bと、該アーム4Bの先端部に回動可能に取付けられたバケット4Cとによって構成されている。スイングポスト13とブーム4Aとの間にはブームシリンダ4Dが設けられ、ブーム4Aとアーム4Bとの間にはアームシリンダ4Eが設けられ、アーム4Bとバケット4Cとの間にはバケットシリンダ4Fが設けられている。
【0028】
5は上部旋回体3のベースを構成する旋回フレームを示し、該旋回フレーム5は、強固な支持構造体を形成している。
図3に示すように、この旋回フレーム5は、左,右方向の中間部を前,後方向に延びた平板状の底板5Aと、該底板5Aの上面側に左,右にV字状に離間して立設された左縦板5B,右縦板5Cと、左縦板5Bの左側に配設された左サイドフレーム5Dと、右縦板5Cの右側に配設された右サイドフレーム5Eとにより大略構成されている。各縦板5B,5Cの前端部には、後述のスイングポスト13を支持する支持ブラケット5Fが固定して設けられている。
【0029】
一方、底板5Aと右サイドフレーム5Eとの間には、両者間を連結する3本の右ビーム5G,5H,5Iが、前,後に間隔をもって配設されている。最前部に位置する右ビーム5Gと右縦板5Cとの間には、後述する取付部材17が設けられ、他の右ビーム5H,5I上には、後述する作動油タンク15が取付けられる。
【0030】
運転席6は旋回フレーム5上であって左,右方向の左前側位置に設けられ、該運転席6は、オペレータが着座するものである。また、運転席6の周囲には、走行レバー・ペダル、操作レバー等の操作機器(図示せず)が設けられ、これら運転席6、各操作機器等は、キャブ7により覆われている。
【0031】
エンジン8は旋回フレーム5の後端側に搭載され、該エンジン8は、後述するカウンタウエイト12の前側に位置し、左,右方向に延在する横置き状態に配置されている。ここで、エンジン8の左側には、該エンジン8によって駆動される油圧ポンプ9が設けられ、エンジン8の右側にはラジエータ、オイルクーラ等の熱交換器10が配設されている。
【0032】
コントロールバルブ11は、旋回フレーム5の前部左側であって運転席6の下側に配設されている。このコントロールバルブ11は、各種操作機器(図示せず)の操作に応じて、油圧ポンプ9から油圧ショベル1に搭載された油圧アクチュエータに対する圧油の給排を制御するものである。
【0033】
カウンタウエイト12は、エンジン8の後側に位置して旋回フレーム5の後端部に取付けられている(
図1参照)。このカウンタウエイト12は、作業装置4との重量バランスをとるもので、
図2に示すように、エンジン8の後側に配置され、上部旋回体3の旋回半径R内に入るように左,右方向に円弧状に延びる凸湾曲形状をなしている。
【0034】
スイングポスト13は、旋回フレーム5の支持ブラケット5Fに揺動可能に設けられ、該スイングポスト13は、例えば鋳造等により一体形成され、支持ブラケット5Fに左,右方向に揺動可能にピン結合されている。このスイングポスト13は、作業装置4を左,右方向に揺動可能に支持するもので、該スイングポスト13には、ブーム4Aの基端部とブームシリンダ4Dのボトム側が取付けられている。
【0035】
14は旋回フレーム5とスイングポスト13との間に設けられたスイングシリンダを示し、該スイングシリンダ14は、旋回フレーム5の右縦板5Cよりも左,右方向の外側(右側)に配置されている。このスイングシリンダ14は、チューブ14Aと、該チューブ14A内に摺動可能に設けられたピストン(図示せず)と、基端側がピストンに取付けられ先端側がチューブ14Aの外部に突出したロッド14Bとにより構成されている。
図2に示すように、スイングシリンダ14は、右縦板5Cの外側面に沿って前,後方向に延び、チューブ14Aのボトム側が、旋回フレーム5に回動可能にピン結合され、ロッド14Bの先端側が、スイングポスト13の右側面側に回動可能にピン結合されている。従って、スイングシリンダ14を伸縮させることにより、スイングポスト13は、支持ブラケット5Fとのピン結合部を中心として左,右方向に揺動する構成となっている。
【0036】
次に、上部旋回体3の旋回フレーム5上に設けられた作動油タンク15と燃料タンク16とについて説明する。
【0037】
15はスイングシリンダ14の近傍で、かつエンジン8の前側に位置して旋回フレーム5上に搭載された作動油タンクを示している。具体的には、作動油タンク15は、旋回フレーム5の右ビーム5H,5I間に取付けられている。作動油タンク15は、油圧ポンプ9から作業装置4の各シリンダ4D,4E,4F、スイングシリンダ14、旋回モータ、走行モータ(いずれも図示せず)等の油圧アクチュエータに供給される作動油を貯えるものである。ここで、作動油タンク15は、油圧ポンプ9に向け効率よく作動油を供給できるように内部に圧力を作用させている。このため、作動油タンク15は、例えば鋼板等を用いて大きな強度をもって形成されている。
【0038】
即ち、
図4ないし
図8に示すように、作動油タンク15は、前面板15A、後面板15B、左側面板15C、右側面板15D、上面板15Eおよび底面板15Fにより、前,後方向に扁平で上,下方向に長尺な直方体として形成されている。この場合、作動油タンク15の高さ寸法は、後述する燃料タンク16よりも大きく設定されている。
【0039】
ここで、作動油タンク15の上部位置、即ち、前面板15Aの上端側には、後述する燃料タンク16の上面部16Eよりも高い位置に、板状のねじ座15Gが溶接等の手段を用いて固着されている。このねじ座15Gは、後述する連結部材21を取付けるためのものである。作動油タンク15の右側面板15Dの下端部には、断面U字型に折り曲げられた板体からなる係止部材15Hが溶接等の手段を用いて固着されている。この係止部材15Hは、後述する横拘束具25の後端側を係止するためのものである。
【0040】
16は作動油タンク15の前側に隣接して旋回フレーム5上に搭載された燃料タンクを示している。燃料タンク16は、作動油タンク15と一緒にスイングシリンダ14に沿わせて前,後方向に配置され、燃料タンク16内には、エンジン8に供給される燃料が貯えられている。ここで、燃料タンク16は、例えば樹脂材料を用いて異形な容器として形成されている。即ち、燃料タンク16は、前面部16A、後面部16B、左側面部16C、右側面部16D、上面部16E、深底部16F、浅底部16Gおよび段差面部16Hとにより構成され、旋回フレーム5の右ビーム5G,5Hおよび後述の取付部材17に取付けられている。
【0041】
ここで、
図2に示すように、燃料タンク16の左,右方向の外側となる右側面部16Dは、上部旋回体3の旋回中心Oを中心とした旋回半径Rの仮想円C内に収まるように、上方からみて円弧形状に形成されている。さらに、
図4および
図5に示すように、燃料タンク16の上面部16Eは、作動油タンク15と燃料タンク16とを旋回フレーム5に搭載した状態で、作動油タンク15の上面板15Eよりも低く形成されている。この場合、燃料タンク16の上面部16Eは、作動油タンク15の前面板15Aに設けられたねじ座15Gよりも下側に配置されている。
【0042】
一方、
図6ないし
図9に示すように、燃料タンク16の底面は、その右側部分が深底部16Fとなり、左側部分が浅底部16Gとなっている。深底部16Fの左端側と浅底部16Gの右端側との間には、段差面部16Hが設けられている。段差面部16Hの高さ寸法は、後述する取付部材17の縦板部17Aの高さ寸法とほぼ等しく形成されている。
【0043】
このように、燃料タンク16の底面は、深底部16Fと浅底部16Gとにより段付形状として形成され、深底部16Fは、旋回フレーム5の右ビーム5G,5H上に載置され、浅底部16Gは、取付部材17の横板部17B上に載置されている。段差面部16Hは、取付部材17の縦板部17Aに当接している。従って、燃料タンク16は、浅底部16Gをスイングシリンダ14上に配置することにより、スイングシリンダ14の上方の空間を有効に利用して旋回フレーム5上に搭載されている。
【0044】
燃料タンク16の前面部16Aの左,右方向の中央部には、縦溝部18が設けられている。この縦溝部18は、上面部16Eと浅底部16Gとの間を上,下方向に延び、後述するベルト部材22のベルト部22Aを位置決めするものである。一方、燃料タンク16の右側面部16Dの下端側には、横溝部19が設けられている。この横溝部19は、後面部16Bと段差面部16Hとの間を前,後方向および左,右方向(水平方向)に延び、後述する横拘束具25のベルト部材25Aを位置決めするものである。
【0045】
次に、17は旋回フレーム5の前部右側に設けられた取付部材を示し、この取付部材17は、支持ブラケット5Fの近傍に位置して、旋回フレーム5の右ビーム5Gと右縦板5Cとの間に配置されている。従って、取付部材17は、燃料タンク16の下側に位置して、スイングシリンダ14の一部(ロッド14B側)を跨いで設けられている。
【0046】
ここで、該取付部材17は、旋回フレーム5の右ビーム5Gから上向きに立ち上る縦板部17Aと、該縦板部17Aの上端からスイングシリンダ14の上方を通って右縦板5C側へと水平方向に延出する横板部17Bとにより構成されている。つまり、取付部材17は、縦板部17Aと横板部17Bとにより逆L字状に形成され、縦板部17Aの下端部が旋回フレーム5の右ビーム5Gに固着され、横板部17Bの左端部が右縦板5Cに固着されている。従って、取付部材17は、スイングシリンダ14のロッド14Bを取り囲むように跨いでいる。これにより、スイングシリンダ14が、旋回フレーム5とのピン結合部(図示せず)を中心として左,右方向に揺動するときに、ロッド14Bの移動経路が、取付部材17によって確保される。
【0047】
縦板部17Aの前方上端側には、後述する縦拘束具20の下端側を係止する係止孔17Cが設けられている。係止孔17Cの下側には、後述する横拘束具25の雄ねじ部25Cが挿通されるねじ部挿通孔17Dが設けられている。この場合、係止孔17Cとねじ部挿通孔17Dは、取付部材17上に燃料タンク16の浅底部16Gを載置した際に、燃料タンク16の前面部16Aに設けられた縦溝部18の底部、および横溝部19の底部よりも前側に位置するものである。
【0048】
次に、燃料タンク16を固定するために用いられる縦拘束具20と横拘束具25について、
図5ないし
図8を参照して説明する。
【0049】
20は作動油タンク15の上部位置と取付部材17との間に設けられた縦拘束具を示している。縦拘束具20は、燃料タンク16の前,後方向および上,下方向への移動を規制するものである。この縦拘束具20は、後述の連結部材21とベルト部材22とが連結されることにより一体物として構成されている。
【0050】
連結部材21は、作動油タンク15の前面板15Aに取付けられるもので、該連結部材21は、例えば金属製の板状体を折曲げることにより形成されている。この連結部材21は、燃料タンク16の上面部16Eよりも上側に位置して作動油タンク15のねじ座15Gに取付けられるものである。ここで、連結部材21は、前,後方向に延びる平板状の平板部21Aと、該平板部21Aの前端側から上方に屈曲した前板部21Bと、前記平板部21Aの後端側から上方に屈曲した後板部21Cとにより形成され、該連結部材21は、全体としてL字状をなしている。
図8に示すように、前板部21Bには、後述するベルト部材22の雄ねじ部22Cが挿通される1個のねじ部挿通孔21B1が設けられ、後板部21Cには、後述のボルト24が挿通される複数個のボルト挿通孔21C1が上,下方向に並んで設けられている。
【0051】
ベルト部材22は、例えば金属製または樹脂製の長尺な板体により形成され、該ベルト部材22は、上端側が連結部材21に連結されると共に下端側が取付部材17に取付けられている。このベルト部材22は、燃料タンク16の前面部16Aに当接することにより、燃料タンク16の前,後方向への移動を規制するものである。ここで、ベルト部材22は、燃料タンク16の前面部16Aに形成された縦溝部18に沿って上,下方向に延びるベルト部22Aと、該ベルト部22Aの下端側に固着して設けられ、下端部がJ字状に屈曲した係止フック22Bと、前記ベルト部22Aの上端側に固着して設けられた雄ねじ部22Cとにより構成されている。
【0052】
図8に示すように、ベルト部材22の雄ねじ部22Cは、連結部材21の前板部21Bに設けられたねじ部挿通孔21B1に挿通され、当該雄ねじ部22Cにはナット23が螺着される。これにより、連結部材21とベルト部材22とが一体物となった縦拘束具20が形成される。連結部材21の後板部21Cに設けたボルト挿通孔21C1には、ボルト24が挿通され、このボルト24は作動油タンク15のねじ座15Gに螺着される。これにより、連結部材21の後板部21Cは、作動油タンク15の前面板15Aの上部位置に固定され、連結部材21の平板部21Aを燃料タンク16の上面部16Eに当接させることができる。
【0053】
この状態で、ベルト部材22の係止フック22Bを、取付部材17の縦板部17Aに設けられた係止孔17Cに係止する。一方、ベルト部材22のベルト部22Aを、燃料タンク16の縦溝部18に沿って配置した後、ベルト部材22の雄ねじ部22Cに螺着したナット23を締め込む。これにより、連結部材21とベルト部材22は一体化され、連結部材21の平板部21Aを、燃料タンク16の上面部16Eに当接させることができる。しかも、ベルト部材22のベルト部22Aを、適度な締付力をもって燃料タンク16の前面部16Aに当接させることができる。このように、燃料タンク16を旋回フレーム5、作動油タンク15に押し付けることにより、燃料タンク16の上,下方向と前,後方向の移動を規制することができる。
【0054】
横拘束具25は、例えば金属製または樹脂製の長尺な板体により形成され、該横拘束具25は、作動油タンク15の左,右方向の外側となる右側面板15Dと取付部材17との間に設けられている。この横拘束具25は、燃料タンク16の右側面部16Dに当接することにより、燃料タンク16の左,右方向への移動を規制するものである。ここで、横拘束具25は、燃料タンク16の前面部16Aおよび右側面部16Dに形成された横溝部19に沿って左,右方向および前,後方向(水平方向)に延びるベルト部材25Aと、該ベルト部材25Aの後端側に固着して設けられ、後端部がJ字状に屈曲した係止フック25Bと、前記ベルト部材25Aの前端側に固着して設けられた雄ねじ部25Cとにより構成されている。
【0055】
図7に示すように、横拘束具25の係止フック25Bは、作動油タンク15の右側面板15Dの下端側に設けられた係止部材15Hに係止され、ベルト部材25Aは、燃料タンク16の横溝部19に沿って配置される。
図8に示すように、横拘束具25の雄ねじ部25Cは、取付部材17の縦板部17Aに設けられたねじ部挿通孔17Dに挿通され、当該雄ねじ部25Cにはナット26が締め込まれる。これにより、横拘束具25のベルト部材25Aを、適度な締付力をもって燃料タンク16の右側面部16Dに当接させることができる。このように、燃料タンク16を取付部材17の縦板部17Aに押し付けることにより、燃料タンク16の左,右方向と前,後方向の移動を規制することができる。
【0056】
本実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、本実施の形態に用いる燃料タンク16を取付ける作業について説明する。
【0057】
まず、燃料タンク16を、作動油タンク15よりも前側の位置で旋回フレーム5上に載置する。ここで、燃料タンク16の底面は、深底部16Fと浅底部16Gとにより段付底面形状をなしているので、深底部16Fは、旋回フレーム5の右ビーム5G,5H上に載置する。一方、浅底部16Gは、旋回フレーム5の右ビーム5Gと右縦板5Cとの間に設けられた取付部材17の横板部17B上に載置する。この場合、横板部17Bの下側空間には、スイングシリンダ14が配設されている。これにより、スイングシリンダ14の上側空間を有効に利用して、容量の大きな燃料タンク16を狭隘な旋回フレーム5上に配置することができる。
【0058】
次に、縦拘束具20と横拘束具25とを用いて燃料タンク16を固定する。まず、ベルト部材22の雄ねじ部22Cを、連結部材21の前板部21Bに設けられたねじ部挿通孔21B1に挿通する。この状態で、雄ねじ部22Cにナット23を螺着することにより、連結部材21とベルト部材22とを連結して縦拘束具20を形成する。一方、連結部材21の後板部21Cに設けたボルト挿通孔21C1にボルト24を挿通し、このボルト24を作動油タンク15のねじ座15Gに螺着する。これにより、連結部材21の後板部21Cが、作動油タンク15の前面板15Aに固定され、連結部材21の平板部21Aを、燃料タンク16の上面部16Eに当接させることができる。
【0059】
この状態で、ベルト部材22の係止フック22Bを、取付部材17の縦板部17Aに設けられた係止孔17Cに係止する。ベルト部材22のベルト部22Aを、燃料タンク16の縦溝部18に沿って配置し、ベルト部材22の雄ねじ部22Cに螺着したナット23を締め込む。これにより、連結部材21の平板部21Aを、燃料タンク16の上面部16Eに当接させると共に、ベルト部材22のベルト部22Aを、適度な締付力をもって燃料タンク16の前面部16Aに当接させることができる。従って、燃料タンク16を、旋回フレーム5、作動油タンク15に押し付けることにより、燃料タンク16の上,下方向と前,後方向の移動を規制することができる。
【0060】
次に、横拘束具25の係止フック25Bを、作動油タンク15の右側面板15Dの下端側に設けられた係止部材15Hに係止し、横拘束具25のベルト部材25Aを燃料タンク16の横溝部19に沿って配置する。一方、横拘束具25の雄ねじ部25Cを、取付部材17の縦板部17Aに設けられたねじ部挿通孔17Dに挿通し、当該雄ねじ部25Cに螺着したナット26を締め込む。これにより、横拘束具25のベルト部材25Aを、適度な締付力をもって燃料タンク16の右側面部16Dに当接させることができる。従って、燃料タンク16を、取付部材17の縦板部17Aに押し付けることにより、燃料タンク16の左,右方向と前,後方向の移動を規制することができる。
【0061】
以上のように、本実施の形態によれば、燃料タンク16を、縦拘束具20と横拘束具25とによって、水平方向(前,後方向および左,右方向)と垂直方向(上,下方向)の2方向(具体的には、前,後方向、左,右方向、上,下方向の3軸方向)に確実に固定することができる。従って、油圧ショベル1の走行時や作業時の振動によって、燃料タンク16が旋回フレーム5に対して位置ずれするのを確実に抑えることができ、燃料タンク16がずれて周囲の搭載機器と接触するのを防止することができる。従って、燃料タンク16と周囲の搭載機器との間のクリアランスを小さく設定することができ、この分、燃料タンク16の容量を大きく確保することができる。
【0062】
本実施の形態においては、縦拘束具20の一端側に設けられた係止フック22Bを取付部材17の係止孔17Cに係止し、他端側に設けられた雄ねじ部22Cを、連結部材21の前板部21Bに固定している。一方、横拘束具25の一端側に設けられた係止フック25Bを作動油タンク15の係止部材15Hに係止し、他端側に設けられた雄ねじ部25Cを取付部材17の縦板部17Aに固定している。これにより、スイングシリンダ14のメンテナンス時に、燃料タンク16を旋回フレーム5上から取外す場合には、容易に縦拘束具20と横拘束具25とを着脱することができ、燃料タンク16の取付け、取外し作業を迅速かつ容易に行うことができる。
【0063】
さらに、本実施の形態によれば、取付部材17の縦板部17Aに設けられた係止孔17Cとねじ部挿通孔17Dとが、燃料タンク16の前面部16Aに設けられた縦溝部18の底部と横溝部19の底部よりも前側に位置するように設けられている。これにより、取付部材17の縦板部17Aに係止孔17Cと横拘束具25
のねじ部挿通孔17Dとを設け、係止孔17Cには縦拘束具20の係止フック22Bを係止し、ねじ部挿通孔17Dには横拘束具25の雄ねじ部25Cを挿通することができる。この結果、2つの拘束具(縦拘束具20と横拘束具25)を同一の部材である取付部材17に固定することにより部品点数を削減することができ、製造コストを抑えることができる。
【0064】
なお、本実施の形態では、作動油タンク15の前面上部位置、即ち、前面板15Aの上端側にねじ座15Gを設け、縦拘束具20の連結部材21を、ねじ座15Gを介して作動油タンク15の前面上部位置に取付けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば
図9に示す変形例のように、縦拘束具20′の連結部材21′を、作動油タンク15の上面前部位置に取付ける構成としてもよい。
【0065】
この場合には、作動油タンク15の上面板15Eの前端側にねじ座15G′を固着する。一方、縦拘束具20′は、連結部材21′とベルト部材22とにより構成する。連結部材21′は、前,後方向に延びる平板部21A′と、平板部21A′の前端側から上方に屈曲した前板部21B′と、平板部21A′の後端側から上方に屈曲した後板部21C′と、後板部21C′の上端側から後方に屈曲した後平板部21D′とにより構成する。前板部21B′には、ベルト部材22の雄ねじ部22Cが挿通される1個のねじ部挿通孔21B1′を設け、後平板部21D′には、ボルト24が挿通される複数のボルト挿通孔21D1′を設ける。
【0066】
従って、連結部材21′の後平板部21D′に設けたボルト挿通孔21D1′にボルト24を挿通し、このボルト24を作動油タンク15のねじ座15G′に螺着することにより、縦拘束具20′の連結部材21′を作動油タンク15の上面前部位置に取付けることができる。このように構成しても、実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0067】
本実施の形態では、縦拘束具20の下端側に設けられた係止フック22Bを、取付部材17の縦板部17Aに設けられた係止孔17Cに係止し、上端側に設けられた雄ねじ部22Cを連結部材21の前板部21Bに固定した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、係止フック22Bを連結部材21に係止し、雄ねじ部22Cを取付部材17に固定する構成としてもよい。同様に、横拘束具25の係止フック25Bを取付部材17に係止し、雄ねじ部25Cを作動油タンク15の右側面板15Dに固定する構成としてもよい。
【0068】
本実施の形態では、旋回フレーム5を構成する左,右の縦板5B,5Cと支持ブラケット5Fの位置を基準として、左側にキャブ7が搭載され、右側にスイングシリンダ14、作動油タンク15、燃料タンク16が搭載された油圧ショベル1を例示している。しかし、これとは逆に、左,右の縦板5B,5Cと支持ブラケット5Fの位置を基準として、左側にスイングシリンダ14、作動油タンク15、燃料タンク16が搭載され、右側にキャブ7が搭載された油圧ショベルにも適用することができる。
【0069】
さらに、本実施の形態では、運転席6の周囲をキャブ7によって覆うキャブ式の油圧ショベル1に適用した場合を例に挙げて説明したが、これに替えて、運転席6の上側をキャノピによって覆うキャノピ式の油圧ショベルに適用してもよい。