【課題を解決するための手段】
【0014】
この課題は、驚くべきことに、発酵と、ガスストリッピング、吸着、脱着および触媒反応による生成物分離とを組み合わせ、これによりバイオマスを有機化合物に転換することを可能し、この場合に全ての方法ステップを並行して行うことができることにより解決される。
【0015】
したがって、本発明によれば、有機化合物を生成するための方法が提供され、この方法は次の方法ステップ:
a.生物反応器内における、バイオマスの揮発性有機化合物への発酵による転換;
b.担体ガスを用いたガスストリッピングによる揮発性有機化合物の除去;
c.ガス流からの揮発性有機化合物の吸着;
d.吸着された揮発性有機化合物の吸着剤からの脱着;
e.揮発性有機化合物の触媒反応;を含む。
【0016】
方法ステップdでは、脱着流体(desorbate stream)中の揮発性有機化合物の比率は、10%(w/w)〜90%(w/w)、特に好ましくは30%(w/w)〜70%(w/w)、さらに好ましくは35%(w/w)〜60%(w/w)である。
【0017】
次いで触媒反応の生成物は、例えば、生成物の凝縮および相分離によって、好ましくはデカンテーションを用いて、処理することができる。
【0018】
本発明の範囲内では、以下の方法ステップ:
a.生物反応器内における、バイオマスの揮発性有機化合物への発酵による転換;
b.担体ガスを用いたガスストリッピングによる揮発性有機化合物の除去;
c.ガス流からの揮発性有機化合物の吸着;
d.吸着された揮発性有機化合物の吸着剤からの脱着;
e.揮発性有機化合物の触媒反応;
を含む有機化合物を生成するための方法が提供される。個々の方法ステップを以下に詳細に説明する。
【0019】
a.発酵
発酵のために、バイオマスを含む溶液が準備される。ここでは、バイオマスは1つ以上の以下の成分:セルロース、ヘミセルロース、リグニン、ペクチン、スターチ、サッカロース、キチン、タンパク質および他の生体高分子、ならびに脂肪および油を含む生体物質として理解される。さらに、この概念は、糖、特にC5糖およびC6糖、アミノ酸、脂肪酸および他のバイオモノマー(biological monomer)を含有しているか、または好ましくは、加水分解によってこれらのモノマーを得ることができる生体物質を含む。好ましくは、溶液は、発酵の開始時には200g/L未満の糖、特に100g/L未満の糖を含む。好ましい実施形態では、溶液は、リグノセルロース系バイオマスから得られる糖を含み、糖は、特に好ましくは事前の酵素加水分解によって得られる。同様に好ましい方法は、加水分解および発酵が同時に行われるように発酵と酵素加水分解とを組み合わせることである。すなわち、以下にさらに説明する好ましい実施形態では、発酵が以下のステップと同時に行われる場合には、これらの実施形態を組み合わせることも可能である。すなわち、加水分解および発酵は以下のステップと同時に行われる。
【0020】
別の好ましい実施形態では、発酵液は、1つ以上の低分子炭素源、および随意に、1つ以上の低分子窒素源を含む。好ましい低分子炭素源は、グルコース、フルクトース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、マンノースなどの単糖類、サッカロース、ラクトース、マルトース、セロビオースなどの二糖類、ガラクツロン酸、グルコン酸などの糖酸、グリセリン、ソルビトールなどのポリオール、ならびに油、脂肪および脂肪酸である。好ましい窒素源は、アンモニア、アンモニア塩、硝酸塩、アミノ酸、尿素およびタンパク質加水分解物である。低分子とは、分子量が、好ましくは2500未満、特に好ましくは1000未満であるものとして理解される。
【0021】
この場合、アンモニアは特に窒素源として好ましい。なぜならアンモニアは、発酵前のpH値が低い場合には同時にpH調整剤として用いること、すなわち添加することができるからである。さらにアンモニアは、特別な実施形態では、発酵した微生物の物質代謝活性によってpH値が降下した場合には発酵中に添加することもできる。これにより、発酵の継続時間にわたってpHを調整もしくは制御することができる。発酵液には、微生物および酵素と並んで、他のpH調整剤および消泡剤などのさらなる添加剤を添加してもよい。微生物としては、酵母、菌類および/またはバクテリアが適している。アルコール、ケトン、アルデヒドおよび/または有機酸を生成する微生物が好ましい。特に好ましい生成物は、エタノールおよび/またはアセトンおよび/またはブタノールなどの低揮発性有機化合物である。この場合、揮発性化合物とは、20℃で1.0hPa、好ましくは5.0hPaよりも高い蒸気圧を有する化合物として理解される。このような揮発性化合物は、20℃で1‐ブタノールの蒸気圧以上の蒸気圧を有する化合物、例えば、2‐ブタノール、tert‐ブタノール、エタノール、1‐プロパノール、イソプロパノールおよびアセトンなどを含む。すなわち、好ましい実施形態では、さらに本発明は、揮発性有機化合物が、アルコールおよび/またはケトンおよび/またはアルデヒドおよび/または有機酸であり、好ましくはエタノールおよび/またはブタノールおよび/またはアセトンであることを特徴とする方法を含む。ブタノールは、さらに特定されていない限りは、全てのブタノールを含み、しかしながら、特に好ましくは1‐ブタノールである。
【0022】
発酵は、概して10〜70℃、好ましくは20〜60℃、特に好ましくは30〜50℃の温度で行われる。発酵は、好ましくはバッチ操作で行われる。別の好ましい実施形態では、栄養培地は発酵中に連続的に供給される(流加操作)。さらに、発酵の連続的な操作は好ましい。さらに、反復バッチ、反復流加バッチなどの操作方式ならびに2段階方式およびカスケードが好ましい。
【0023】
発酵は、発酵液のために加えられた単離酵素によって行ってもよい。しかしながら、好ましくは、発酵は少なくとも1つの微生物を用いて行われる。この少なくとも1つの微生物は、好ましくは、好中温生物および好熱生物から選択される。好中温生物および好熱生物は、細菌、古細菌および真核生物からなるグループより選択することができ、この場合、真核生物は、特に菌類、とりわけ酵母が好ましい。特に好ましくは、例えばサッカロミケス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae:出芽酵母)、ピキア・スティピティス(Pichia stipitis)、ピキア・セゴビエンシス(Pichia segobiensis)、カンジダ・シャハタエ(Candida shehatae)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、カンジダ・ボイディニイ(Candida boidinii)、カンジダ・テヌイス(Candida tenuis)、パキソレン・タンノフィラス(Pachysolen tannophilus)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、カンジダ・ファマタ(Candida famata)、カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)、カンジダ・ソノレンシス(Candida sonorensis)、イサタケンキア・テリコーラ(Issatchenkia terricola)、クロエッケラ・アピス(Kloeckera apis)、ピキア・バルケリ(Pichia barkeri)、ピキア・カクトフィラ(Pichia cactophila)、ピキア・デセルティコラ(Pichia deserticola)、ピキア・ノルベゲンシス(Pichia norvegensis)、ピキア・メンブラナエファシエンス(Pichia membranaefaciens)、ピキア・メキシカーナ(Pichia Mexicana)およびトルラスポラ・デルブルエッキイ(Torulaspora delbrueckii)などの好中温性酵母が使用される。好中温性細菌は、例えば、クロストリジウム・アセトブチリクム(Clostridium acetobutylicum)、クロストリジウム・ベイジェリンキイ(Clostridium beijerincki)、クロストリジウム・サッカロブチリクム(Clostridium saccharobutylicum)、クロストリジウム・サッカロペルブチルアセトニクム(Clostridicum saccharoperbutylacetonicum)、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)である。特に好ましい代替的な実施形態では、好熱生物が用いられる。好熱性酵母は、例えば、カンジダ・ボビナ(candida bovina)、カンジダ・ピカコエンシス(Candida picachoensis)、カンジダ・エンベロルム(Candida emberorum)、カンジダ・ピントロペシイ(Candida pintolopesii)、カンジダ・サーモフィラ(Candida thermophila)、クルイベロミセス・マルキアヌス(Kluyveromyces marxianus)、クルイベロミセス・フラジリス(Kluyveromyces fragilis)、 カザフスタニア・テルリス(Kazachstania telluris)、イサチェンキア・オリエンタリス(Issatchenkia orientalis)およびラチャンケア・サーモレランス(Lachancea thermolerans)である。好熱性細菌は、とりわけクロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)、クロストリジウム・サーモヒドロスルフリクム(Clostridium thermohydrosulphuricum)、クロストリジウム・サーモサッカロリチキウム(Clostridium thermosaccharolyticium)、サーモアナエロビウム・ブロッキイ(Thermoanaerobium brockii)、テルモバクテロイデス・アセトエチリクス(Thermobacteroides acetoethylicus)、サーモアナエロバクター・エタノリクス(Thermoanaerobacter ethanolicus)、クロストリジウム・サーモアセチクム(Clostridium thermoaceticum)、クロストリジウム・サーモアウトトロフィクム(Clostridium thermoautotrophicum)、アセトゲニウム・キブイ(Acetogenium kivui)、 デスルホトマクルム・ニグリフィカンス(Desulfotomaculum nigrificans)およびデスルホビブリオ・サーモフィルス(Desulfovibrio thermophilus)、サーモアナエロバクター・テンコンジェンシス(Thermoanaerobacter tengcongensis)、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)およびサーモアナエロバクター・マトラニイ(Thermoanaerobacter mathranii)である。さらに好ましい代替的な実施形態では、遺伝子法によって変更された微生物が使用される。
【0024】
b.ガスストリッピング
本発明によれば、揮発性成分、特に揮発性有機生成物は、担体ガスによるストリッピングによってガス相へ移送される。ストリッピングとも呼ばれるガスストリッピングでは、揮発性化合物はガスを通過させることによって液相から除去され、ガス相に移送される。本実施形態では、このような移送は連続的に行ってもよい。この場合、揮発性成分の連続的な除去とは、発酵による揮発性成分の生成と並行したガスストリッピングによる揮発性成分の除去を意味する。担体ガスとしては、例えば、二酸化炭素、ヘリウム、水素、窒素または空気などの不活性ガス、およびこれらのガスの混合物が考慮される。この場合、極めて反応性の低い、すなわち、化学反応にほとんど関与することができないガスが不活性とみなされる。必要に応じて微好気的条件を調節することができる二酸化炭素および二酸化酸素と空気との混合物が特に好ましい。本発明による方法の利点は、発酵中に生成された発酵排ガスを直接に担体ガスとして使用できることである。すなわち、特別な実施形態では、発酵ガスが担体ガスとして使用される。
【0025】
本発明による方法では、発酵およびガスストリッピングは、好ましくは、撹拌タンク反応器、ループ反応器、エアリフト反応器またはバブルカラム反応器からなるグループから選択された反応器で行われる。特に好ましくは、ガスバブルの分散は、例えば、スパージャおよび/または適宜な撹拌機によって行われる。さらに、ガスストリッピングは、生体反応器に結合された外部のガスストリッピングカラムによって行うことが可能であり、ガスストリッピングカラムには随意に、発酵液を連続的に供給し、生成物を再び生物反応器内に再循環させることができる。特に好ましくは、このような外部のガスストリッピングカラムは、対流モードで、および/または、充填材、好ましくはラシヒリングと組み合わせて、物質移動速度を高めるために作動される。
【0026】
所定通気量(ガス体積流量)は、好ましくは0.1〜10vvm、特に好ましくは0.5〜5vvm(vvmは、「ガス体積/生物反応器体積/分」を意味する)である。ガスストリッピングは、好ましくは0.05〜10bar、特に好ましくは0.5〜1.3barの圧力で実施される。特に好ましくは、ガスストリッピングは低圧(もしくは負圧)で、すなわち、概して約1barである周辺の基準圧力よりも低い圧力で行われる。好ましくは、ガスストリッピングは発酵温度で行われる。さらに好ましい代替的な実施形態では、ガスストリッピングは、発酵液が付加的に加熱されるように行われる。このような付加的な加熱は、温度が上昇され、ガスストリッピングが実施される外部のカラムに発酵液の一部が移送されることによって行われ、これにより、ガスストリッピングは発酵温度の場合よりも効率的に行われる。
【0027】
本発明による方法の別の利点は、液体からガス相への揮発性化合物の変化により得られた蒸発エンタルピーが生物反応器を冷却するために役立てられ、これにより、生物反応器内の温度を一定に保つために必要な冷却出力が減じられることである。本発明による方法の特に好ましい実施形態では、消散された蒸発エンタルピーと周辺への熱損失との合計が生物学的に生成された熱よりも大きいので、冷却出力はもはや必要ではない。
【0028】
c.吸着
本発明による方法によれば、生物反応器を出たガス流は、1つ以上の吸着剤が充填された1つ以上のカラムを通過する。吸着剤としては、ゼオライト、シリカ、ベントナイト、シリカライト、クレイ、ハイドロタルサイト、ケイ酸アルミニウム、酸化物粉末、マイカ、ガラス、アルミン酸塩、クリノプチロライト、ギスモンド沸石、石英、活性炭、骨炭、モンモリロナイト、ポリスチロール、ポリウレタン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリレート、ポリビニルピリジンまたはこれらの混合物が適している。好ましい実施形態では、ゼオライトが吸着剤として使用される。ベータ型またはMFI型のゼオライトが特に好ましい。好ましくは、ゼオライトは、5〜1000のSiO
2/Al
2O
3比を備え、特に好ましくは100〜900のSiO
2/Al
2O
3比を備える。US7,244,409に記載の合成ゼオライトは特に好ましい。
【0029】
吸着剤と吸着されるエタノールとの質量比は、好ましくは1〜1000、特に好ましくは2〜20である。エタノール吸着時の温度は、好ましくは10〜100℃、特に好ましくは20〜70℃である。圧力は、好ましくは0.5〜10bar、特に好ましくは1〜2barである。
【0030】
吸着材料は、複数のカラム内に含まれていてもよい。好ましくは、複数のカラム、特に好ましくは2個以上のカラム、さらに好ましくは2〜6個のカラムを使用してもよい。これらのカラムは、直列または並列に接続されていてもよい。並列接続の利点は、いわば連続的な作動が可能となり、この場合に2個以上のカラムが吸着と脱着(ポイントdにさらに詳しく説明する)との間で入れ代り、したがって、異なるカラムで吸着と脱着とを同時に行うことができることである。これらのカラムは、好ましくはリボルバー配置で提供されている。特に好ましい実施形態では、2〜6個のカラムが接続され、吸着が行われている1個または複数のカラムは、脱着が行われている1個または複数のカラムに並行に接続される。2個以上のカラムで吸着が行われる場合、これらのカラムを直列または並列に接続してもよい。したがって、例えば6個のカラムを「リボルバー」方式で使用した場合には、カラム1〜3で吸着を行い、カラム4を脱着のために加熱し、カラム5では脱着を行うことができ、カラム6は冷却させる。吸着剤の充填量があらかじめ規定された値に達した場合、または遅くとも完全に充填され、揮発性有機化合物がカラム端部から飛び出し、すなわち、もはや揮発性有機化合物を完全に吸着することができなくなったときに、吸着カラムは交換される。
【0031】
概して、ガス流は、揮発性有機化合物よりも多くの水を含み、したがって、吸着剤はまず水により飽和される。次いで第2期間で、揮発性有機化合物の充填量は、この場合にも飽和されるまで連続的に増大する。この第2期間で、揮発性化合物と水との比率は連続的に増大する。後続の触媒反応に関して、この方法の特に好ましい実施形態では、適切なサイクル時間および/または適切な吸着剤量の選択により、揮発性有機化合物と水との間の比率は調節され、これにより、触媒反応のために特に適した揮発性有機化合物の混合比、すなわち、特に適した、または最適な比率が得られる。触媒反応のために特に好ましい、または最適なサイクル時間および/または吸着剤量を予備試験によって決定することができる。特に適した揮発性有機化合物の比率は、10%(w/w)〜90%(w/w)、特に好ましくは30%〜70%(w/w)、さらに好ましくは35%(w/w)〜60%(w/w)である。残りの比率は、水および/または担体ガスから構成される。
【0032】
使用される吸着材料は、好ましくは、選択的な吸着が可能である。吸着材料における選択的な吸着とは、この場合、吸着材料が、不都合な化合物よりも高い質量分率で所望の化合物をガス流から吸着することができることとして理解される。本発明における所望の化合物は、揮発性有機化合物である。本発明における不都合な化合物とは、以下の段落で特定するように、例えばアンモニアなどの触媒毒である。すなわち、ガス流が、等しい質量分率の揮発性有機化合物と不都合な化合物とからなっている場合には、不都合な有機化合物より多く揮発性有機化合物が吸着される。好ましくは、揮発性有機化合物と不都合な化合物との比率は少なくとも5:1、特に好ましくは、少なくとも20:1である。
【0033】
好ましい実施形態では、吸着材料は、後続の触媒反応のために不都合な化合物、例えば触媒毒が、無視できる量または測定不能な量しか吸着されないように選択される。単独で、または結合して触媒毒と生じる場合のある典型的な不都合な化合物は、アンモニア、フラン、フルフラールおよびヒドロキシメチルフルフラール(HMF)などのフルフラールの誘導体である。特に好ましい実施形態では、わずかな酸性中心を備える吸着材料が使用された場合、アンモニアの吸着が広範囲に防止されるか、または完全に防止される。このためには、例えば、少なくとも100のSiO
2/Al
2O
3比を備えるゼオライトが適している。それ故、これらのゼオライトは、この実施形態のための吸着材料として特に好ましい。吸着剤および触媒の両方がゼオライトである場合、一実施形態では、好ましくは、吸着剤は触媒のSiO
2/Al
2O
3比よりも大きいSiO
2/Al
2O
3を備える。
【0034】
図4および
図5は、ゼオライトがエタノールの選択的吸着に適しており、不都合な化合物であるアンモニアの吸収を無視できることを示す。
【0035】
揮発性有機化合物が低減されたガス流が吸着器から流出する。上記選択的吸着が可能となることにより、このような流出時に、さらに処理される生成物流れ(以下のd.およびe.で説明する)から上記の不都合な化合物が低減されるか、または除去される。ステップdおよびステップeにより、すなわち、例えばWO2008/066581A1に記載された随意の蒸留とは異なり、不都合な化合物が効果的に低減または除去される。吸着カラムから流出した後に生物反応器に再循環させることができ、次いで再びガスストリッピングのために使用することができる。吸着は、流動床で行ってもよい。同様に、ラジアル吸着器または回転吸着器を使用してもよい。この実施形態では、再循環されたガス流の有機化合物は低減されているので、ガス再循環にも関わらず発酵媒体中の揮発性有機化合物の濃度を低く保持することができる。
【0036】
ゼオライトにおけるin situ ガスストリッピングと吸着とを本発明にしたがって組み合わせることにより、発酵液中の揮発性有機化合物の濃度を発酵継続時間にわたって所定値未満に保持することができる。このことは、例えばエタノール、ブタノールまたはアセトンの場合のように、揮発性有機化合物が微生物に対して阻害性または毒性作用を及ぼす場合には特に好ましい。吸着は、好ましくは少なくとも揮発性有機化合物の生成継続時間にわたって、すなわち、揮発性有機化合物が生じている間は実施される。発酵媒体中の揮発性有機化合物の低濃度とは、例えば、発酵媒体中の揮発性有機化合物の総量が10%(w/v)未満、好ましくは発酵媒体中の揮発性有機化合物が5%(w/v)未満、特に好ましくは発酵媒体中の揮発性有機化合物が3.5%(w/v)未満、最も好ましくは発酵媒体中の揮発性有機化合物が2%(w/v)未満であることを意味する。個々の成分に関しては、発酵媒体中のエタノールが、好ましくは10%(w/v)未満、より好ましくは5%(w/v)未満、もしくは発酵媒体中のブタノールが好ましくは3%(w/v)未満、より好ましくは2%(w/v)未満、さらに好ましくは1.5%(w/v)未満として理解され、この場合、ブタノールは、ここでは全てのブタノール、すなわち、1‐ブタノール、2‐ブタノールおよびtert‐ブタノールを含む。
【0037】
d.脱着
本発明による方法は、吸着剤からの揮発性有機化合物の脱着を可能にする。この場合、脱着流体中の揮発性有機化合物の比率は、本発明による方法の方法ステップd.では、好ましくは10%(w/w)〜90%(w/w)、特に好ましくは30%(w/w)〜70%(w/w)、さらに好ましくは35%(w/w)〜60%(w/w)である。
【0038】
脱着は、カラム内の温度の上昇および/または圧力の低減によって行うことができる。好ましくは、温度は、25〜300℃、絶対圧は0〜10barである。特に好ましくは、温度は80〜300℃、絶対圧は0.1〜3barである。
【0039】
本発明による方法の好ましい実施形態では、脱着された揮発性有機化合物をカラムから除去するためには担体ガスが使用される。特に好ましくは、この場合、ガスストリッピングにも使用される担体ガスと同じ不活性の担体ガスが使用される。「同じ担体ガス」とは、同様のガスが使用されるという意味である。例えば、ステップb.の担体ガスがガスA(二酸化炭素であってもよい)の場合、「同じ」担体ガスの実施形態ではガスはステップd.においてもガスA(二酸化炭素であってもよい)である。しかしながら、好ましくはステップd.では、ステップb.で使用されたガス流と同じガス流が使用されないことが重要である。その理由は、ステップb.で使用されたガス流は、後続のステップc.(すなわち、ガス流が吸着器を出る際)では、上述のように概して不都合な化合物を含むことである。これにより、ステップd.で脱着のために使用され、ステップe.(以下に説明する)に供給されるガス流中の不都合な化合物は低減されている。本発明による方法の別の好ましい実施形態では、担体ガスの温度および絶対圧は、カラム内の上記温度および絶対圧に応じて調節される。このためには、上流側の熱交換器および/または絞りもしくはコンプレッサが適している。
【0040】
脱着は、流動床モードで行ってもよい。同様にラジアル吸着器または回転吸着器を使用してもよい。
【0041】
e.触媒反応
本発明にしたがって、セクションdで説明した脱着流体は、触媒を充填された1つ以上の反応器に移送され、この場合、流入した流体を随意に上流側の熱交換器および絞りもしくはコンプレッサにより反応温度および反応圧力に設定することができる。選択した反応条件に応じて、反応器内には、特にオレフィン類、脂肪族、芳香族、酸素化物のグループに割り当てることのできる個々の有機化合物またはこれらの混合物が生じる。
【0042】
反応器としては、好ましくは、流動床反応器、ラジアルフロー反応器、噴流床反応器、移動床反応器、ループ反応器または固定床反応器を使用してもよい。同じまたは異なる構成の複数の反応器を組み合わせることも可能である。
【0043】
触媒としては、例えば、ゼオライト、シリカ‐アルミナ、アルミナ、メソ多孔質の分子ふるい、ヒドロキシアパタイト、ベントナイト、硫酸化ジルコニアおよびシリカアルミノフォスフェートなどのブロンステッド酸および/またはルイス酸が適している。好ましい実施形態では、ゼオライトが触媒として使用される。好ましいゼオライトは、水素型(H‐ZSM‐5)のMFI型ゼオライトである。好ましくは、ゼオライトは、5以上、例えば5〜1000のSiO
2/Al
2O
3比、特に好ましくは20〜200のSiO
2/Al
2O
3比を有する。好ましくは、吸着剤および触媒の両方がゼオライトである場合、触媒‐ゼオライトは、吸着器‐ゼオライトよりも低いSiO
2/Al
2O
3比を有する。しかしながら、特にこの実施形態では、上記比率に制限されておらず、触媒‐ゼオライトは、100よりも低い値のSiO
2/Al
2O
3比を有する。
【0044】
触媒反応のために好ましい反応条件は、150℃〜500℃の温度、0.5〜100barの絶対圧、および100〜20000h
−1の気体時空間速度(gas hourly space velocity)(GHSV=気体反応物フローレート/触媒容積)である。特に好ましい実施形態では、温度は、250℃〜350℃の範囲、絶対圧は1〜5barの範囲、GHSVは2000〜8000h
−1の範囲である。
【0045】
従来技術に対して本発明の利点は、セクションc/dに記載の吸着/脱着と本明細書に記載の触媒反応とを組み合わせたことである。吸着もしくは脱着条件の意図的な選択により、脱着流体中、ひいては触媒反応のインプット流体中の水の比率および揮発性有機化合物の比率を調節することがはじめて可能となる。揮発性有機化合物の比率を適宜に選択することにより、揮発性有機化合物の収率に著しい影響が及ぼされ、水の比率を適宜に選択することにより、触媒の失活特性に著しい影響が及ぼされる。セクションc/dに記載の吸着/脱着と本明細書に記載の触媒反応とを組み合わせることにより、ガス流から不都合な化合物を取り除くこともできる。これにより、触媒が、例えば、吸着ステップを含まないWO2008/066581A1に記載の方法のように、触媒毒にさらされることが防止される。
【0046】
触媒反応は、150〜500℃、好ましくは250〜350℃の温度、0.5〜100bar、好ましくは1〜5barの絶対圧、および100〜20000
h−1、好ましくは2000〜8000
h−1のGHSVにより行われる。
【0047】
好ましい実施形態では、インプット流体中の揮発性有機化合物の比率は、10〜90%(w/w)、特に好ましい実施形態では30〜70%(w/w)、さらに好ましい実施形態では35〜60%(w/w)である。100%(w/w)の内それぞれ残りの比率は、水もしくは担体ガスの比率から構成される。
【0048】
f.凝縮
本発明による方法は、好ましい実施形態では、さらに、上記方法ステップa〜eに続いて、随意に温度低下および/または圧力増大によって行うこともできる生成物流体の凝縮が行われることを特徴としていてもよい。この場合、温度を周辺温度未満の温度レベル、特に好ましくは10℃未満に低下させることが好ましい。このような冷却のためには、並流式、向流式または直交流式に作動する熱交換器が使用される。本発明による方法の好ましい実施形態では、凝縮は段階的に行われ、異なる材料組成を備える複数の留分が得られる。
【0049】
本発明は、さらに吸着後および/または触媒反応後に単数もしくは複数の担体ガスを再循環させることができることを特徴とする方法をも含む。この場合、発酵排ガスが担体ガスとして使用されることが好ましい。好ましくは、ガス流における凝縮できない部分は、好ましくは、触媒反応カラムに再循環されることにより、さらに触媒反応が行われる。
【0050】
本発明による方法の別の好ましい実施形態によれば、これらの凝縮できない部分は、反応物として1つ以上の他の化学反応、例えば重合反応のために使用される。エチレンからポリエチレンへの重合またはプロペンからポリプロピレンへの重合が特に好ましい。別の好ましい実施形態によれば、凝縮できない部分は燃焼させることにより熱として使用される。これら全ての実施形態では、成分を増大させるために別の吸着およびこれに続く脱着を行うことも可能である。この場合、吸着剤としてゼオライト様材料が使用される。特に好ましくは、cおよび/またはeに記載の方法ステップのためには同じ材料が使用される。
【0051】
本発明にしたがって、生じた凝縮物が収集される。好ましい実施形態では、生じた凝縮物は、蒸発による損失を防止するために冷却保持される。
【0052】
g.相分離
さらに、fで説明した方法は、別の好ましい実施形態では、凝縮に続いて相分離が行われることを特徴としていてもよい。有機化合物と水との間の溶解度間隙により、凝縮後には、好ましくは、有機相および水性相の2つの相が形成される。本発明による方法にしたがって、これらの相は互いに分離される。分離は、単純なデカンテーションによって行ってもよいし、遠心分離または専門家に既知の他の液液分離法によって行ってもよい。特に好ましい実施形態では、デカンテーション時に、より軽量の相、すなわち、水様相よりも軽量の相である有機化合物が分離される。本発明による方法の特別な利点は、これにより、高いエネルギー消費なしに大量の水を生成物から分離できることである。
【0053】
水様相は、プロセス水として他の方法段階に再循環させることができる。好ましい実施形態によれば、ガスストリッピングによって、場合によってはまだ水様相内に溶解している揮発性炭化水素が水様相から除去される。この方法の特に好ましい実施形態によれば、これらの揮発性炭化水素は再循環され、特にセクションcの脱着またはセクションeの触媒反応のために再循環され、この場合、担体ガス流としては、生物反応器のガスストリッピングのための場合と同じ担体ガス流が用いられるか、または触媒反応の場合と同じ担体ガス流が用いられる。
【0054】
有機相は、直接に得ることができるか、または別の処理の後に生成物として得ることができる。好ましい別の処理は、有機混合物を、それぞれ様々に用いることができる複数の留分および/または成分に分離することである。
【0055】
生成物または留分を燃料または燃料のための添加剤として用いることは、特に有利である。燃料は、ガソリン、ディーゼル燃料、航空燃料または類似の燃料であってもよい。さらに、生成物を燃料として、例えば加熱油として用いることも可能である。本発明による代替的な用途は、特に重合体を生成するために、後続の化学反応の際にさらに使用することである。
【0056】
並行配置
本発明による方法一般、および付加的に上記ステップfおよびgを含む本発明の実施形態は、さらに方法ステップaおよびeが並行して行われることを特徴としていてもよい。これについて、特に好ましい、しかしながら限定的ではない実施形態が以下に示されている。
これらに限定されるものではないが、本発明は以下の態様の発明を包含する。
[1]有機化合物を生成するための方法であって、次の方法ステップ:
a.生物反応器内における、バイオマスの揮発性有機化合物への発酵による転換;
b.担体ガスを用いたガスストリッピングによる揮発性有機化合物の除去;
c.ガス流からの揮発性有機化合物の吸着;
d.吸着された揮発性有機化合物の吸着剤からの脱着;
e.揮発性有機化合物の触媒反応;
を含む上記方法。
[2]前記方法ステップdにおいて、脱着流体中の揮発性有機化合物の比率が、好ましくは10%(w/w)〜90%(w/w)、特に好ましくは30%(w/w)〜70%(w/w)、さらに好ましくは35%(w/w)〜60%(w/w)である、[1]に記載の方法。
[3]前記方法ステップa〜eに続いて、生成物流体の凝縮を行い、該凝縮に続いて、好ましくは相分離を行う、[2]に記載の方法。
[4]前記方法ステップa〜eを並行して行う、[1]〜[3]のいずれかに記載の
方法。
[5]前記揮発性有機化合物が、アルコールおよび/またはケトンおよび/またはアルデヒドおよび/または有機酸であり、好ましくはエタノールおよび/またはブタノールおよび/またはアセトンである、[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6]吸着後および/または触媒反応後に単数もしくは複数の担体ガスを再循環させ、および/または、特に好ましくは発酵排ガスを担体ガスとして用いる、[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[7]1つ、好ましくは2つ、より好ましくは3つ、さらに好ましくは4つ、さらに好ましくは5つ以上の個々の方法ステップを以下の条件下:
a.10〜70℃、好ましくは20〜60℃、特に好ましくは30〜50℃の温度で発酵を行い、
b.ガスストリッピング時には、所定通気量が0.1〜10vvm、好ましくは0.5〜5vvmであり、
c.吸着時の温度が10〜100℃、好ましくは20〜70℃であり、圧力が0.5〜10bar、好ましくは1〜2barであり、
d.温度上昇および/または圧力低下により脱着を行い、
e.150〜500℃、好ましくは250〜350℃の温度、0.5〜100bar、好ましくは1〜5barの絶対圧、および100〜20000h
−1、好ましくは2000〜8000h
−1のGHSVにより触媒反応を行い、
f.温度低下および/または圧力上昇により凝縮を行い、
g.デカンテーション時に、より軽量な相である有機化合物を分離する、
で実施する、[3]〜[6]のいずれかに記載の方法。
[8]吸着剤がゼオライトであり、該ゼオライトが、好ましくは5〜1000、特に好ましくは100〜900のSiO
2/Al
2O
3比を備える、[1]〜[7]のいずれかに記載の方法。
[9]触媒がゼオライトであり、該ゼオライトが、好ましくはMFI型ゼオライトであり、特に好ましくは水素型のMFI型ゼオライトであり、
ゼオライト触媒は、好ましくは、5〜1000、特に好ましくは20〜200のSiO
2/Al
2O
3比を備える、[1]〜[8]のいずれかに記載の方法。
[10]触媒反応のために、触媒毒が吸着されないように吸着剤を選択する、[8]に記載の方法。
[11]ゼオライト吸着剤とゼオライト触媒とが同一の材料である、[1]〜[9]のいずれかに記載の方法。
[12]複数の並列したカラム内にゼオライト材を充填し、リボルバー方式の場合のように、複数の方法ステップの間に互いに時間的にずらしてカラムを入れ代え、吸着、脱着、触媒反応、および場合によっては再生から前記方法ステップを選択する、[11]に記載の方法。
[13]吸着、脱着および触媒反応を時間的にずらしてそれぞれ同じカラムで行い、好ましくは、脱着後にガス流を同じカラムに再循環させ、次いで該カラム内で触媒反応を行う、[11]に記載の方法。
[14]吸着、脱着および触媒反応を単一の装置内で行い、好ましくは、該装置が、ストリッピングガス流からの吸着を行うより低温の領域と、脱着および触媒反応を行うより高温の領域とを備える、[11]に記載の方法。
[15]前記装置が、ラジアル吸着器、移動床反応器または噴流床反応器である、[14]に記載の方法。