特許第5789324号(P5789324)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5789324
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】セーフティロック装置
(51)【国際特許分類】
   A47B 88/00 20060101AFI20150917BHJP
【FI】
   A47B88/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-83383(P2014-83383)
(22)【出願日】2014年4月15日
(62)【分割の表示】特願2012-1435(P2012-1435)の分割
【原出願日】2012年1月6日
(65)【公開番号】特開2014-147824(P2014-147824A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2014年4月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】591022195
【氏名又は名称】ダイシン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(72)【発明者】
【氏名】松村 光博
【審査官】 西村 直史
(56)【参考文献】
【文献】 実開平03−005875(JP,U)
【文献】 実開昭56−006252(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B88/00
E05B65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に配設された複数の引出体(2)(2)(2)を収納する前方開口状の筐体(1)に、最下位置の上記引出体(2)から最上位置の上記引出体(2)に沿って昇降自在なロックバー(30)と、各上記引出体(2)(2)(2)に対応すると共に該ロックバー(30)を上昇させるための弾発付勢部材(50)(50)(50)と、各上記引出体(2)(2)(2)に対応すると共に上記弾発付勢部材(50)の上方への弾発付勢力を上記ロックバー(30)に伝達するための伝達部(69)を有する連結部材(60)(60)(60)と、を設け、複数の上記引出体(2)(2)(2)の内、一つが引き出された一つ出し状態で、残りの上記引出体(2Y)(2Y)が引き出されるのを、上昇状態の上記ロックバー(30)にて防止するセーフティロック装置に於て、
各上記引出体(2)(2)(2)に対応するように上記ロックバー(30)に長孔(36)(36)(36)を設け、
上記ロックバー(30)の上記長孔(36)に上記連結部材(60)の伝達部(69)を差し込んで、上記弾発付勢部材(50)の上方への弾発付勢力を、上記伝達部(69)が上記長孔(36)の上縁部(36a)に当接して上記ロックバー(30)に伝達するように構成し
上記筐体(1)に、上記弾発付勢部材(50)を収容すると共に上記連結部材(60)を上下方向移動自在にガイドするケース型の部材保持部(11)を設けたことを特徴とするセーフティロック装置。
【請求項2】
上下に配設された複数の引出体(2)(2)(2)を収納する前方開口状の筐体(1)に、最下位置の上記引出体(2)から最上位置の上記引出体(2)に沿って昇降自在なロックバー(30)と、各上記引出体(2)(2)(2)に対応すると共に該ロックバー(30)を上昇させるための弾発付勢部材(50)(50)(50)と、各上記引出体(2)(2)(2)に対応すると共に上記弾発付勢部材(50)の上方への弾発付勢力を上記ロックバー(30)に伝達するための伝達部(69)を有する連結部材(60)(60)(60)と、を設け、複数の上記引出体(2)(2)(2)の内、一つが引き出された一つ出し状態で、残りの上記引出体(2Y)(2Y)が引き出されるのを、上昇状態の上記ロックバー(30)にて防止するセーフティロック装置に於て、
各上記引出体(2)(2)(2)に対応するように上記ロックバー(30)に長孔(36)(36)(36)を設け、
上記ロックバー(30)の上記長孔(36)に上記連結部材(60)の伝達部(69)を差し込んで、上記弾発付勢部材(50)の上方への弾発付勢力を、上記伝達部(69)が上記長孔(36)の上縁部(36a)に当接して上記ロックバー(30)に伝達するように構成し、
各上記引出体(2)(2)(2)に、引出収納状態で上記連結部材(60)を下方に押圧して上記弾発付勢部材(50)の上方への弾発付勢力を無効化する弾発力無効化壁部(26)と、上記ロックバー(30)の上昇状態で、上記ロックバー(30)に当接可能となる当り壁部(27)と、を樹脂で一体に形成して固設したことを特徴とするセーフティロック装置。
【請求項3】
上記一つ出し状態で上記ロックバー(30)が上昇した際に、上記ロックバー(30)の長孔(36)(36)(36)の下縁部(36b)を、残りの上記引出体(2Y)(2Y)に対応する上記連結部材(60)(60)の上記伝達部(69)(69)に当接しないように形成した請求項1又は2記載のセーフティロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セーフティロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
引出体が上下に配設されたキャビネットやタンスは、前方開口状の筐体から複数の引出体を引き出すと、前倒れする危険があるため、複数の引出体の内一つが引き出された一つ出し状態で、残りの引出体が引き出されるのを防止するセーフティロック装置を設けていた。
例えば、従来のセーフティロック装置は、各引出体の側面に接触子を突設し、箱体の内側面に各引出体に対応するカム板を枢設すると共に最下位置の引出体から最上位置の引出体に沿って1本のワイヤを張設していた。
そして、引き出された引出体によって揺動したカム板がワイヤを緊張状態にし、その緊張状態の張力をもって、残りの引出体に対応するカム板を揺動不可能にし、揺動不可能になったカム板が、残りの引出体の接触子に対するストッパとなって、残りの引出体の引き出しを防止するものであった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−327953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ワイヤは、長期使用による緊張状態と非緊張状態の繰り返しや、温度変化等によって、伸びが発生し、アソビが大きくなって、外れやガタつきが発生して、正常に作動しなくなる虞があった。
また、セーフティロック装置を知らずに、使用者が無理な力で引出体を引き出すと、ワイヤの張力が負けて、残りの引出体が引き出される虞があった。
そこで、本発明は、1つの引出体が引き出された状態で、残りの引出体が引き出されるのを確実に防止でき、安全性の高いセーフティロック装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の引出用セーフティロック装置は、上下に配設された複数の引出体を収納する前方開口状の筐体に、最下位置の上記引出体から最上位置の上記引出体に沿って昇降自在なロックバーと、各上記引出体に対応すると共に該ロックバーを上昇させるための弾発付勢部材と、各上記引出体に対応すると共に上記弾発付勢部材の上方への弾発付勢力を上記ロックバーに伝達するための伝達部を有する連結部材と、を設け、複数の上記引出体の内、一つが引き出された一つ出し状態で、残りの上記引出体が引き出されるのを、上昇状態の上記ロックバーにて防止するセーフティロック装置に於て、各上記引出体に対応するように上記ロックバーに長孔を設け、上記ロックバーの上記長孔に上記連結部材の伝達部を差し込んで、上記弾発付勢部材の上方への弾発付勢力を、上記伝達部が上記長孔の上縁部に当接して上記ロックバーに伝達するように構成し、上記筐体に、上記弾発付勢部材を収容すると共に上記連結部材を上下方向移動自在にガイドするケース型の部材保持部を設けたものである。
【0006】
また、上下に配設された複数の引出体を収納する前方開口状の筐体に、最下位置の上記引出体から最上位置の上記引出体に沿って昇降自在なロックバーと、各上記引出体に対応すると共に該ロックバーを上昇させるための弾発付勢部材と、各上記引出体に対応すると共に上記弾発付勢部材の上方への弾発付勢力を上記ロックバーに伝達するための伝達部を有する連結部材と、を設け、複数の上記引出体の内、一つが引き出された一つ出し状態で、残りの上記引出体が引き出されるのを、上昇状態の上記ロックバーにて防止するセーフティロック装置に於て、各上記引出体に対応するように上記ロックバーに長孔を設け、上記ロックバーの上記長孔に上記連結部材の伝達部を差し込んで、上記弾発付勢部材の上方への弾発付勢力を、上記伝達部が上記長孔の上縁部に当接して上記ロックバーに伝達するように構成し、各上記引出体に、引出収納状態で上記連結部材を下方に押圧して上記弾発付勢部材の上方への弾発付勢力を無効化する弾発力無効化壁部と、上記ロックバーの上昇状態で、上記ロックバーに当接可能となる当り壁部と、を樹脂で一体に形成して固設したものである。
また、上記一つ出し状態で上記ロックバーが上昇した際に、上記ロックバーの長孔の下縁部を、残りの上記引出体に対応する上記連結部材の上記伝達部に当接しないように形成したものである
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数の引出体の内一つが引き出された一つ出し状態で、残りの引出体が引き出されるのを阻止できる。これによって、キャビネット等全体が前方へ倒れる危険を確実に防ぐことができる。耐久性に優れ、長期間安全に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の一形態を示し、引き出し自由状態の要部側面図である。
図2】引き出し自由状態の要部断面側面図である。
図3】引き出し自由状態の要部断面正面図である。
図4】セーフティロック状態の要部側面図である。
図5】セーフティロック状態の要部断面側面図である。
図6】セーフティロック状態の要部断面正面図である。
図7】オールロック状態の要部側面図である。
図8】他の実施の形態を示す要部拡大側面図である。
図9】他の実施の形態を示す要部拡大側面図である。
図10】他の実施の形態を示す要部拡大側面図である。
図11】他の実施の形態を示す要部拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図示の実施形態に基づき本発明を詳説する。
本発明に係る引出用セーフティロック装置は、図1乃至図7に示す実施の形態に於て、前方開口状の筐体1に、3つの引出体2,2,2を上下に配設したキャビネットに設けられ、図4に示すように、3つの引出体2,2,2の内、一つが引き出された一つ出し状態で、残りの引出体2(2Y),2(2Y)が引き出されるのを防止するための装置である。
【0010】
図1に於て、筐体1の左右内側面の一方側に、最下位置の引出体2から最上位置の引出体2に沿って、鉛直状に配設される側面視帯板状のロックバー30を1本設けている。
ロックバー30は、各引出体2,2,2に対応すると共に、水平状に突出するストッパ部37,37,37を有している。また、ロックバー30は、上端部30aが吊持部材81によって保持され昇降自在(上下方向移動自在)に垂設されている。ロックバー30(ストッパ部37)は、図1に示すように所定位置(下位置)の基準状態と、図4及び図7に示すように所定位置から上方に移動した上昇状態(上位置)と、に切り換わる。
【0011】
図2及び図3に於て、筐体1の左右一方の内側面側に、各引出体2,2,2に対応させて、ロックバー30を上昇させるためのコイルバネから成る弾発付勢部材50,50,50と、ロックバー30に連結されると共に弾発付勢部材50によって上方へ弾発付勢され、その弾発付勢力をロックバー30に伝達するための連結部材60,60,60と、弾発付勢部材50を保持すると共に連結部材60の先端側を上下方向移動自在に保持するケース型(箱状)の部材保持部11と、を設けている。
【0012】
部材保持部11は、筐体1の左右一方の内側面から引出体2側へ突設され、連結部材60の先端側の上壁61が上方へ突出可能な上方開口部11eを有する上壁部11aと、弾発付勢部材50(コイルバネ)の下端側に差し込まれる位置決め用凸部11fを有する下壁部11bと、連結部材60が外嵌状に取着されその連結部材60を上下方向移動自在にガイドすると共に連結部材60の姿勢を保持するためのレール部と、を具備している。なお、部材保持部11は、上壁部11aと下壁部11bとレール部を樹脂で一体状にケース型に形成し、筐体1の内側面に固設することで製造を容易としている。
【0013】
連結部材60は、先端側に弾発付勢部材50によって上方への弾発力を受ける側面視円弧状(丸山型)の上壁61を有している。基端側にロックバー30に貫設された長孔36に差し込まれ、長孔36の上縁部36aに当接して、ロックバー30に上方への弾発付勢力を伝達する伝達部69を有している。
【0014】
また、連結部材60は、先端側に前後壁62,62から前後外方に突出し、弾発付勢力による上昇状態において、部材保持部11の上壁部(係止壁部)11aに当接して、上方開口部11eからの抜けを防止する抜け止め凸部62a,62aを有している。また、上壁61に下方へ突出し弾発付勢部材50(コイルバネ)の上端側に差し込まれる位置決め凸部61fを有している。また、部材保持部11のレール部に抱き込み状に係止する前後一対の爪部を有している。
【0015】
次に、筐体1の左右一方の内側面と対面状の各引出体2の左右一方の外側面に、引出体2が筐体1に収納されている引出収納状態で、連結部材60の上壁61を下方に押圧して、弾発付勢部材50の上方への弾発付勢力を無効にする弾発力無効化壁部26を、正面視水平状に突設している。
なお、「引出収納状態で、弾発付勢部材50の上方への弾発付勢力を無効にする」とは、引出収納状態で、弾発付勢部材50が連結部材60を介してロックバー30を上昇させようとしている弾発付勢力(弾発力)を、ロックバー30に伝達させないようにすることである。
【0016】
弾発力無効化壁部26は、引出収納状態で連結部材60の上壁61に当接する側面視水平状の押圧面26aを有し、側面視後方下傾状としたガイド面26bを後部に有している。
ガイド面26bは引出体2が引き出された後に、再び収納される場合に(後方へ移動する場合に)連結部材60の上壁61に摺接してスムーズに連結部材60を下方へ移動させるための誘導勾配面である。
【0017】
また、各引出体2の左右一方の外側面に、ロックバー30の上昇状態でストッパ部37に当接可能となる当り壁部27を、正面視水平状に突設している。当り壁部27は、引出収納状態で、ストッパ部37よりも後方位置に配設される。
なお、「ロックバー30の上昇状態で、ストッパ部37に当接可能となる当り壁部27」とは、より詳しく説明すると、ロックバー30の上昇状態で、引出体2が引き出されようとすると(前方へ移動しようすると)上昇状態のストッパ部37に当接する位置に、当り壁部27が設けられていることである。
言い換えると、各ストッパ部37,37,37は、ロックバー30が上昇状態となると、収納状態の引出体2の当り壁部27に当接可能となるように、つまり、当り壁部27の前方位置かつ上下方向略同位置(正面視でストッパ部37と当り壁部27が一部乃至全部重なる上下方向位置)に配設されるように設けられている。さらに言い換えると、引き出される際に当り壁部27が通過する予定の軌道(軌跡)上にストッパ部37が配設されるように設けている。
【0018】
当り壁部27は、前部にロックバー30の上昇状態で、引出体2が引き出されようとすると、ストッパ部37の鉛直面状の後面に当接する側面視鉛直状の当り壁面27aを有し、後部に側面視後方下傾状のガイド面27bを有している。
ガイド面27bは引出体2が引き出された後に収納される場合に、ストッパ部37の前面に摺接して、ストッパ部37(ロックバー30)を下方へ移動させ、引出体2をスムーズに後方へ移動させるための誘導勾配面である。
なお、弾発力無効化壁部26と当り壁部27とを、樹脂で一体状に形成し、引出体2の外側面に固設することで、製造を容易としている。
【0019】
図4乃至図6に於て、一つ出し状態で、引き出された引出体2Aの弾発力無効化壁部26による弾発付勢力の無効が解除され、引き出された引出体2Aに対応する弾発付勢部材50の弾発力で(連結部材60を介して)ロックバー30が上昇する際に、残りの引出体2Y,2Yに対応する連結部材60,60が、上方へ持ち上げられるのを防止する非連動手段9を備えている。
言い換えると、一つ出し状態で、残りの引出体2Y,2Yに対応する連結部材60,60が、引き出された引出体2Aに対応する弾発付勢部材50の弾発力で押し上げられたロックバー30によって、押し上げ力を受けるのを防止する非連動手段9を備えている。
【0020】
図6に於て、非連動手段9は、各引出体2,2,2(各連結部材60,60,60)に対応するようにロックバー30に設けられた逃がし用の長孔36,36,36と、各長孔36,36,36に差し込まれる連結部材60,60,60の伝達部69,69,69と、から成る。
また、長孔36の上縁部36aは、一つ出し状態で、引き出された引出体2Aに対応する伝達部69から上昇方向の押圧力を受けるように形成されている。
また、長孔36の下縁部36bは、一つ出し状態で、残りの引出体2Y,2Yに対応する伝達部69,69に、ロックバー30が上昇しても当接しないように形成されている。つまり、残りの引出体2Y,2Yに対応する連結部材60,60がロックバー30から上昇方向の押圧力(押し上げ力)を受けないように設けている。
また、長孔36の上縁部36aは、図3に示すように、複数の引出体2,2,2の全てが引出収納状態かつロックバー30が基準状態である引き出し自由状態において、伝達部69に当接乃至接近するように形成されている。
即ち、非連動手段9は、連結部材60からロックバー30へ押し上げ力を伝達可能に設けると共に、ロックバー30から連結部材60へ押し上げ力を伝達不可能とする手段である。
【0021】
また、図1に示す引き出し自由状態から、図7に示す各引出体2,2,2が引出収納状態で、ロックバー30を上昇状態に保持して、全ての引出体2,2,2の引き出しが阻止されオールロック状態にするオールロック手段8を備えている。
【0022】
図1及び図7に於て、オールロック手段8は、ロックバー30の上端部30aを支持すると共に筐体1に支持される吊持部材81と、筐体1に設けられ前後方向の水平状軸心L1廻りに吊持部材81を揺動させてその揺動位置で固定(ロック)可能なシリンダー錠等の錠前部材80と、錠前部材80の鍵穴に係合して錠前部材80を操作可能な図示省略の鍵と、から成る。
【0023】
図1に示す引き出し自由状態で、錠前部材80を鍵で施錠操作すること、吊持部材81が揺動して、ロックバー30を吊り上げて上昇状態にし、さらに錠前部材80にて吊持部材81を揺動位置で固定することで、ロックバー30を上昇状態に保持するように構成されている。
図7に示すように、全ての引出体2,2,2が引出収納状態、かつ、ロックバー30が上昇状態となり、ロックバー30の各ストッパ部37,37,37が上昇状態となって、各引出体2の当り壁部27に当接可能となり、全ての引出体2,2,2の引き出しが阻止されオールロック状態となる。
【0024】
また、図7に示すオールロック状態で、錠前部材80を鍵で開錠操作すること、吊持部材81が揺動して、ロックバー30を降下させ基準状態にし(ロックバー30が降下して下位置となり)、ロックバー30の各ストッパ部37,37,37が下がって、図1に示す引き出し自由状態に戻る。
【0025】
次に、本発明の引出用セーフティロック装置の使用方法(作用)について説明する。
図1に示すように、全ての引出体2,2,2が引出収納状態、かつ、錠前部材80が開錠状態である引き出し自由状態では、図2及び図3に示すように、各弾発付勢部材50は各連結部材60を上方へ弾発付勢している。しかし、各弾発力無効化壁部26によって、各連結部材60は上方への移動が阻止され、弾発付勢力がロックバー30に伝達されておらず、ロックバー30は基準状態である。ロックバー30の各ストッパ部37,37,37は、各引出体2,2,2の当り壁部27,27,27よりも下位置にある。したがって、複数の引出体2,2,2のいずれも引き出しが可能である。
【0026】
例えば、図4に示すように、上下中間位置の引出体2を引き出すと、図5に示すように、引き出された引出体2Aに対応する弾発力無効化壁部26が連結部材60よりも前方へ移動し、弾発付勢力の無効が解除され、図5及び図6に示すように、連結部材60の上壁61が上昇すると共に伝達部69が上昇する。引き出された引出体2Aに対応する伝達部69が長孔36の上縁部36aを押圧して、ロックバー30が上昇状態となる。
【0027】
また、引き出された引出体2Aに対応する連結部材60によってロックバー30が上昇する際に、その連結部材60によるロックバー30を上昇させる力は、非連動手段9(長孔36の逃がし作用)で、残りの引出体2Y,2Yに対応する連結部材60には伝達されず、残りの引出体2Y,2Yに対応する連結部材60や弾発力無効化壁部26の変形や損傷を防止する。
【0028】
また、ロックバー30の上昇によって、各ストッパ部37,37,37が上昇し、残りの引出体2Y,2Yの当り壁部27,27の前方位置かつ上下方向略同位置に、残りの引出体2Y,2Yに対応するストッパ部37,37が配設され、残りの引出体2Y,2Yが引き出されるのを阻止するように、当接可能となり、セーフティロック状態となる。
【0029】
このセーフティロック状態で、残りの引出体2Yを引き出そうとしても、ストッパ部37の鉛直面状の後面と、当り壁部27の当り壁面27aが面接触して、強い力(阻止力)で、引き出しが阻止される。
【0030】
また、引き出した引出体2Aを後方に移動させて筐体1に収納する(戻す)際は、引き出した引出体2Aの当り壁部27のガイド面27bが上昇状態のストッパ部37に摺接して、ストッパ部37を下方へ押し下げて、ロックバー30を下位置にすると共に、弾発力無効化壁部26のガイド面26bが、連結部材60の円弧状の上壁61に摺接して、連結部材60を押し下げ、押圧面26aによって弾発付勢力を無効にし、連結部材60の伝達部69が下がり、ロックバー30が降下する。スムーズに小さな力で楽に引出体2を戻せる。
【0031】
また、移設や輸送の際、或いは、管理や防犯の目的で、全ての引出体2,2,2の引き出しを阻止したい場合は、鍵で錠前部材80を施錠操作することで、図7に示すように、ロックバー30が上昇状態となって、各引出体2,2,2の当り壁部27の前方位置かつ上下方向略同位置にストッパ部37が配設されて、オールロック状態となる。このオールロック状態では、非連動手段9によって、上昇状態のロックバー30は連結部材60を押し上げず、連結部材60及び弾発力無効化壁部26の変形や破損を防止している。
【0032】
次に、図8乃至図11に他の実施の形態を示す。なお、他の実施の形態は、上述した図1図4図7に示したオールロック手段8の構成(吊持部材81及び筐体1に設けられた錠前部材80)以外は、図1乃至図7を用いて説明した構成である。
図8及び図9に示す他の実施形態に於て、オールロック手段8は、最上位置の引出体2に設けられるシリンダー錠等の錠前部材80と、錠前部材80の施錠操作によって上昇すると共に開錠操作によって降下する(施錠・開錠操作によって上下移動する)連動バー89と、筐体1の天板部1a側に設けられ上昇した連動バー89の先端89aに一端(前端)部88aが押されて上昇し横方向(左右方向)の水平状枢着軸心S1廻りにシーソー揺動して他端(後端)部88bが降下する揺動部材88と、揺動部材88の他端部88bに当接して力を突片部87aで受けて横方向の水平状揺動軸心S2廻りに揺動する操作力受け部材87と、操作力受け部材87が外嵌状に取着され操作力受け部材87の揺動に伴って揺動軸心S2廻りに回転する角棒状の伝達軸86と、伝達軸86に連結され伝達軸86の回転によって揺動軸心S2廻りに揺動すると共にロックバー30の上端部30aに連結されロックバー30を上下動させるための揺動連結部材85と、錠前部材80の鍵穴に係合して錠前部材80を操作可能な図示省略の鍵と、から成る。
【0033】
錠前部材80と連動バー89は、最上位置の引出体2の前壁部の内部空間に内装されている。
揺動部材88と操作力受け部材87と伝達軸86と揺動連結部材85は筐体1の天板部1a近傍に配設している。また、揺動部材88と操作力受け部材87は、筐体1の左右方向中間部に設けられている。また、揺動連結部材85はロックバー30が設けられる左右内側面の一方側に設けられている。伝達軸86は、左右内側面の一方側から他方側に渡って設ける、或いは、操作力受け部材87からロックバー30が設けられる左右内側面の一方側まで設ける。
また、錠前部材80が開錠状態(開錠操作)の場合に、連動バー89の先端89aは、引出体2の収納状態で筐体1の天板部1aと対面状に配設される引出体2の前壁部の後面上縁2aよりも、下方位置に配設されている。
【0034】
そして、全ての引出体2が筐体1に収納された状態で、錠前部材80を施錠操作すること、図9に示すように、連動バー89が上昇し、連動バー89を上昇させた力を、揺動部材88、操作力受け部材87、伝達軸86を介して、揺動連結部材85に伝達して、ロックバー30を吊り上げて上昇状態にし、オールロック状態となる。
また、オールロック状態で、錠前部材80を開錠操作すること、図8に示すように、連動バー89が下降し、ロックバー30が降下して基準状態(下位置)となり、引き出し自由状態に戻る。
【0035】
さらに、図10に於て、最上位置の引出体2が引き出された状態で錠前部材80を開錠操作するような誤操作を防止する錠前部材誤操作防止手段(連動バー破損防止手段)7を備えている。
錠前部材誤操作防止手段7は、最上位置の引出体2の前壁部の上面から上方突出状の凸部29に前後方向スライド自在に設けられ、最上位置の引出体2を引き出した状態で、連動バー89の先端89aに対して施蓋状に配設される連動バー突出防止用のスライド部材71と、最上位置の引出体2の凸部29に設けられ、スライド部材71を常時筐体1側(後方へ)押圧するスライド用弾発付勢部材72と、を備えている。
【0036】
図8乃至図10に於て、最上位置の引出体2には、前壁部の後面上縁2aよりも上方へ突出して(引出収納状態で)筐体1の上部前壁部1bと対面状に配設される中空状の凸部29が設けられている。そして、スライド部材71及びスライド用弾発付勢部材72は、凸部29の内部空間内で保持されている。
【0037】
図8及び図9に於て、最上位置の引出体2が筐体1に収納されている状態で、スライド部材71は、筐体1の上部前壁部1bによって前方へ押され、凸部29内に大部分(前後方向長さ70〜100%)が押し込まれ待機状態となっている。
そして、図10に示すように、最上位置の引出体2が引き出されると、スライド用弾発付勢部材72によって、スライド部材71が後方へスライドし、スライド部材71の後部が連動バー89の先端89aの上方位置に施蓋状に配設される。
【0038】
つまり、最上位置の引出体2が引き出された状態で、錠前部材80を開錠操作しようとすると、連動バー89の先端89aがスライド部材71の後部に当接して上昇が阻止され、錠前部材80の開錠操作を阻止する。したがって、最上位置の引出体2が引き出された状態で、錠前部材80が開錠操作され、連動バー89の先端89aが引出体2の後面上縁2aから突出したまま後方(筐体1側)へ押され、筐体1の上部前壁部1bと連動バー89の先端89aが接触して相互に破損するのを防止する。
【0039】
即ち、錠前部材誤操作防止手段7は、スライド部材71と、スライド用弾発付勢部材72と、スライド部材71をスライド自在に保持すると共にスライド用弾発付勢部材72を保持し筐体1の上部前壁部1bと対面状に配設される引出体2の凸部29と、筐体1の上部前壁部1bと、から成る。
【0040】
さらに、図10及び図11に於て、最上位置の引出体2が引き出された状態で、残りの引出体2Y,2Y(図10及び図11に於ては図示省略)の引き出しが防止されたセーフティロック状態で、ロックバー30を降下させて残りの引出体2Y,2Yを引き出し可能にするセーフティロック解除手段6を備えている。
【0041】
セーフティロック解除手段6は、ロックバー30が上昇すると伝達軸86を回転させる揺動連結部材85と、伝達軸86に外嵌状に取着され伝達軸86の回転によって揺動軸心S2廻りに揺動する操作レバー突片部87bを有する操作力受け部材87と、最上位置の引出体2が引き出された一つ出し状態で操作力受け部材87の操作レバー突片部87bを指(手又は工具)によって操作可能な操作空間部Kと、から成る。
操作力受け部材87は、ロックバー30の上昇によって伝達軸86が回転した際に、揺動軸心S2廻りに揺動して操作レバー突片部87bが上昇するように設けられている。言い換えると、操作力受け部材87は、伝達軸86に外嵌する筒部と、筒部から前方に突出する受け突片部87aと、筒部から後方に突出する操作レバー突片部87bと、を有し、揺動軸心S2廻りにシーソー作動する。そして、錠前部材80(揺動部材88)からの力を伝達軸86に伝える部材と、人の手から直接的に得た操作力を伝達軸86に伝える部材と、を併用(共用)した部材である。
【0042】
図10に示すように、最上位置の引出体2を引き出した状態では(図1乃至図7に示す実施形態で説明したように)、ロックバー30が上昇位置となり、残りの引出体2Y,2Yは、引き出しが防止されたセーフティロック状態である。
しかし、修理や保守等の理由で、全ての引出体2を引き出し状態にしたい場合は、最上位置の引出体2を引き出した後、図11に示すように、操作力受け部材87の操作レバー突片部87bを手の指(又は治具等の工具)で下方へ押し下げる。すると、操作力受け部材87が揺動して伝達軸86を回転させ、伝達軸86の回転によって揺動連結部材85が揺動しロックバー30を弾発付勢部材50(図5及び図6参照)の弾発力に抗して強制的に降下させる。
【0043】
最上位置の引出体2が引き出された一つ出し状態でありながら、ロックバー30を降下させることが可能で、ロックバー30の降下により、残りの引出体2Y,2Yの引き出しを阻止していたストッパ部37(図2参照)も降下して、セーフティロック解除(セーフティロック無効)状態となる。
【0044】
また、操作力受け部材87の下方位置に水平面状の仕切り壁部1dを設けている。最上位置の引出体2が収納状態かつ他の引出体2が引き出されたセーフティロック状態において、最上位置の引出体2の収納物が地震等で飛び跳ねた場合に、その飛び跳ねた収納物が受け突片部87aに接触してセーフティロックが解除されるのを仕切り壁部1dによって防止している。
【0045】
なお、本発明は、設計変更可能であって、引出体2は、2つ或いは4つ以上でも良い。
図面に例示したキャビネットに限らず、デスクや収納棚等、上下に複数の引出体2が配設されるものに適用可能である。また、非連動手段9は、ロックバー30から連結部材60へ、押し上げ力が伝達されなければ良い。
【0046】
以上のように、本発明の引出用セーフティロック装置は、前方開口状の筐体1に上下に配設された複数の引出体2,2,2の内、一つが引き出された一つ出し状態で、残りの引出体2Y,2Yが引き出されるのを防止するためのセーフティロック装置に於て、筐体1に、最下位置の引出体2から最上位置の引出体2に沿って昇降自在に設けられると共に、各引出体2,2,2に対応するストッパ部37,37,37を有するロックバー30を設け、さらに、筐体1に、各引出体2,2,2に対応させて、ロックバー30を上昇させるための弾発付勢部材50,50,50と、ロックバー30に連結され弾発付勢部材50の上方への弾発付勢力をロックバー30に伝達するための連結部材60,60,60と、を設け、各引出体2,2,2に、引出収納状態で連結部材60を下方に押圧して弾発付勢部材50の上方への弾発付勢力を無効にする弾発力無効化壁部26と、ロックバー30の上昇状態でストッパ部37に当接可能となる当り壁部27と、を設け、一つ出し状態で、引き出された引出体2Aの弾発力無効化壁部26による弾発付勢力の無効が解除され、ロックバー30が上昇し、ロックバー30のストッパ部37,37が残りの引出体2Y,2Yの当り壁部27,27に当接可能となって、残りの引出体2Y,2Yの引き出しが防止されるように構成したので、複数の引出体2,2,2の内一つが引き出された一つ出し状態で、残りの引出体2Y,2Yが引き出されるのを確実に防止して、前倒れ等の事故を確実に防止できる。強い力で、残りの引出体2Y,2Yが引き出されるのを防ぐことができる。耐久性に優れ、長期間安全に使用できる。引出体2の外側面や筐体1の内側面にギヤ部材やカム部材等特殊で複雑な部材を設ける必要がなく、容易に製造できる。
【0047】
また、上記一つ出し状態で、残りの引出体2Y,2Yに対応する連結部材60,60がロックバー30によって上方へ持ち上るのを防止する非連動手段9を設けたので、連結部材60や弾発力無効化壁部26の変形や損傷が防止され、耐久性に優れ、長期間使用できる。故障が少なく確実な動作を実現できる。
【0048】
また、ロックバー30を上昇状態に保持して、複数の引出体2,2,2の全ての引き出しを阻止するオールロック手段8を備えたので、引出体2が飛び出るような誤作動を防止でき、安全に搬送できる。防犯性や管理性に優れたものを得ることができる。セーフティロック状態にするためのロックバー30を使用してオールロック状態にでき、構造を簡素化でき容易に製造できる。
【0049】
残りの上記引出体2Y,2Yの引き出しが防止されたセーフティロック状態で、ロックバー30を降下させて残りの引出体2Y,2Yを引き出し可能にするセーフティロック解除手段6を備えたので、全ての引出体2を筐体1から引き出した全引き出し状態にすることができ、保守や点検、修理、清掃等のメンテナンス作業を容易かつスムーズに行なうことができる。
【符号の説明】
【0050】
1 筐体
2 引出体
2A 引き出された引出体
2Y 残りの引出体
6 セーフティロック解除手段
8 オールロック手段
9 非連動手段
26 弾発力無効化壁部
27 当り壁部
30 ロックバー
36 長孔
37 ストッパ部
50 弾発付勢部材
60 連結部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11