特許第5789352号(P5789352)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5789352
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】一次中性子源増倍装置
(51)【国際特許分類】
   G21G 4/02 20060101AFI20150917BHJP
   G21C 3/326 20060101ALI20150917BHJP
   G21C 7/34 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   G21G4/02
   G21C3/32 G
   G21C7/34
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-532831(P2013-532831)
(86)(22)【出願日】2011年9月26日
(65)【公表番号】特表2013-543590(P2013-543590A)
(43)【公表日】2013年12月5日
(86)【国際出願番号】US2011053196
(87)【国際公開番号】WO2012047568
(87)【国際公開日】20120412
【審査請求日】2014年7月21日
(31)【優先権主張番号】12/899,596
(32)【優先日】2010年10月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【弁理士】
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】スタッカー、デヴィッド、エル
【審査官】 村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−063588(JP,A)
【文献】 特開昭48−016097(JP,A)
【文献】 R.C.Martin,“The U.S. Department of Energy Californium-252 Program”,Oak Ridge National Laboratory,[online],,2000年,[検索日:2015年4月7日],インターネット<http://web.ornl.gov/~webworks/cpr/pres/105904.pdf>
【文献】 R.C. Martin et al,“Production, distribution and applicaions of californium-252 neutron sources”,Applied Radiation and Isotopes,2000年,Vol.53 ,pp.785-792
【文献】 I.F. ZHEZHERUN,“A STUDY OF NEUTRON DIFFUSION IN SINTERED BERYLLIUM OXIDE USING THE PULSED-SOURCE TECHNIQUE”,Journal of Nuclear Energy Paris A/B,1964年,Vol.18,pp.279-287
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21G 4/02
G21C 3/326
G21C 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォイル又はワイヤから成る表面(69)上に付着され、増倍装置のセグメントとしてのベリリウムのセグメント(64)によりカプセル化され包囲された252Cfの駆動源(68)から成る高速中性子放出源増倍装置(62)。
【請求項2】
包囲する中空管(70)内に配置された、請求項1に記載の高速中性子放出源増倍装置(62)。
【請求項3】
前記ベリリウムのセグメント(64)が機械加工されている、請求項1に記載の高速中性子放出源増倍装置(62)。
【請求項4】
252Cfからのアルファ粒子及び核分裂生成物粒子のエネルギーが、前記粒子のエネルギーを中性子に変換するベリリウムによって捕捉される、請求項1に記載の高速中性子放出源増倍装置(62)。
【請求項5】
252Cfにより直接生成される中性子及びベリリウムによるアルファ粒子及び核分裂生成物粒子の前記変換により生成される中性子が、前記高速中性子放出源増倍装置から放出される前に、更にベリリウム(n、2n)反応によって増倍される、請求項に記載の高速中性子放出源増倍装置(62)。
【請求項6】
前記表面(69)がパラジウムのフォイル又はワイヤである、請求項1に記載の高速中性子放出源増倍装置(62)。
【請求項7】
上部端栓(84)及び下部端栓(84’)により封止されたカプセル内に更に封入され、前記端栓(84、84’)の1つに対してばね(78)によって定位置に保持されている、請求項2に記載の高速中性子放出源増倍装置(62)。
【請求項8】
前記高速中性子放出源増倍装置での反応から発生するヘリウム・ガスが、前記カプセル内の空の体積部(86)内に保持される、請求項に記載の高速中性子放出源増倍装置(62)。
【請求項9】
原子炉の安全な起動のための安定的な中性子源を提供することに用いられる、請求項に記載の高速中性子放出源増倍装置(62)。
【請求項10】
材料組成及び濃度の非破壊評価のための安定的な中性子源を提供することに用いられる、請求項に記載の高速中性子放出源増倍装置(62)。
【請求項11】
原子炉の炉心(12)に配置される、請求項に記載の高速中性子放出源増倍装置(62)。
【請求項12】
アルファ粒子を停止させることができる材料からなる遮蔽カーテンを、前記252Cf駆動源と前記ベリリウムのセグメント(64)との間に介在させ、前記ベリリウムのセグメント(64)へのアルファ粒子の透過を妨げることによって前記高速中性子放出源増倍装置の強度を調整する、請求項1に記載の高速中性子放出源増倍装置(62)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次駆動同位体の放射性エネルギーの増倍及び効率的な変換を行うことに加え、増倍装置の物理レイアウトを単純に調整することにより強度を変化できる、安定的な高エネルギー中性子源を生成する手段及び機構を提供する。結果として得られる中性子源は、原子炉の起動源、材料の非破壊試験、中性子放射化分析(neutron activation analysis)、サンプル水分分析、油井検層、癌の治療、爆発物検知、金属疲労の検知、並びに、発電所及びセメント・キルンにおける燃焼の最適化等、プロセス・ストリームの化学組成及び水分含有量のリアルタイム評価を含むが、これらに限定されない、多くの実際的な用途を有する。
【背景技術】
【0002】
原子炉の炉心を安全に起動させるために、一般に、多数の中性子源(放出源)が必要である。この目的に用いられる原子炉起動源は、「一次源」及び「二次源」と称される。一次源は、外部電力又は原子炉自体からの照射を必要とすることなく中性子を供給する、自蔵型中性子源である。
【0003】
二次原子炉起動源は、一般的に、ベリリウムと均一に混合した最初は非放射性の駆動材料から成る。二次源駆動材料(典型的にアンチモン)は、製造時には非放射性である。このため、原子炉において駆動材料が照射されるまで、二次源は中性子源を生成しない。二次源は、駆動材料の放射性崩壊による高エネルギー・ガンマ放射線とベリリウムとの相互作用の結果として中性子を生成する。現行技術の一次源駆動材料の代表的なものは、ポロニウム、ラジウム、プルトニウム、アメリシウム、又はキュリウムの強力なアルファ粒子放出同位体であり、全てベリリウムと組み合わせて用いられる。ベリリウム混合物を用いない商用アプリケーションのための実際的な一次源である唯一の材料は、カリホルニウム−252又は252Cfである。
【0004】
原子炉内における「二次源」放射性同位体の生成は、Ransohoff等及びBodnarescu(それぞれ米国特許第3,269,915号及び第3,396,077号)によって概ね記述されている。「一次源」の使用及び中性子源の一般的な使用については、Impink, Jr.(1980年6月に発行された米国特許第4,208,247号。以下「Impink」と称する)によって詳細に記述されている。その特許では、好ましくは、プルトニウム−238とベリリウムが、熱中性子の透過を許さない、即ち熱中性子に対して本質的に「ブラック」である合金、例えば、純粋なカドミウム、65%銀/カドミニウム、又は80%銀/15%インジウム/カドミウム、にカプセル化される。
【0005】
原子炉起動中性子源は、原子炉の初期装荷炉心における核連鎖反応の始動を安全に支援するために用いられる。原子炉起動源は、新しい未照射原子燃料のみを含有する初期炉心を安全に始動するために必要である。なぜなら、全ての源(例えば燃料の自発核分裂、宇宙放射、重水素光中性子)からの中性子数密度が、原子炉の起動を安全確実に行うために、原子炉中性子数を高い信頼度で監視するには不充分であるからである。原子炉で低中性子束が生起するのは、初期炉心に中度に放射性である燃料のみが存在する場合、又は、長期に亘って停止し、その間に照射済燃料が崩壊して、前述の機構に由来する原子炉の固有の中性子源が減った後である。原子炉の固定一次及び二次起動中性子源は、発電所の計測器が高い信頼度で原子炉の電力及び反応度を測定して、その情報を原子炉オペレータに提供することにより原子炉の安全な起動を可能とし、また、原子炉保護系統に提供して、安全でない状況が検知された場合にはオペレータをオーバーライドして原子炉始動を停止するのに充分な数の中性子を原子炉の炉心に供給する。原子炉起動中性子源がなければ、起動中、原子炉保護系統が介入して起動を終了させ得る前に、原子炉出力が速い速度で変動する恐れがある。起動源は典型的には、原子炉炉心内の相互に規則的に離隔した位置において、いくつかの燃料棒の代わりに、又は炉心内部の構造内に挿入される。
【0006】
中性子源は、原子炉の起動に加えて、他の産業的用途を多数有する。中性子源のこれらの産業的な利用は、典型的には、中性子源を用いて源近傍で放射性同位体を生成した後、評価中のプロセスにおける生成した放射性同位体同位体の独特な核崩壊の特徴を測定し、その測定値から濃度又は組成を推測する、現行技術分野で通常、中性子放射化分析と称されるプロセスがある。結果として得られる産業的用途は、材料の非破壊試験、中性子放射化分析、サンプル水分分析、油井検層、癌の治療、爆発物検知、金属疲労検知、並びに、発電所及びセメント・キルンにおける燃焼の最適化等、プロセス・ストリームの化学組成及び水分含有量のリアルタイム評価を含むが。これらに限定されない。
【0007】
Impink(先に引用した)は、更に、(その特許の時点で)商用原子炉の中性子源が炉心内に配置されており、少なくとも1つの運転サイクル全体を通して炉心内に保持されることを教示している。中性子源は固定位置に維持される。原子炉において、中性子源は選択した燃料集合体に挿入され、燃料集合体の構造体を提供すると共に原子炉内に挿入される制御要素を案内するように設計された燃料集合体案内シンブル管内を延びる。また、中性子源は、原子炉容器の外側にある検出及び監視装置の検出範囲内に位置するように炉心周縁部に近い集合体内に配置される。
【0008】
ベリリウムは、http://en.wikipedia.org.wiki/berylliumの2010年7月7日付けの記事において、軽量で強度が高いがもろく、薄い灰色のアルカリ土類金属として記載されている。ベリリウムは、合金、とりわけベリリウム銅における硬化剤として非原子力の用途に主に用いられる。構造的に、極めて低い密度(水の1.85倍)、高い融点(1287℃)、高温度安定性、及び低い熱膨張係数を有するため、ベリリウムは航空宇宙及び原子力の用途において多くの面で理想的な高温材料である。ベリリウム金属の商業的使用には、ベリリウム含有粉塵の毒性(特に吸引による)のため技術的な課題がある。ベリリウムは組織に対する直接的な腐食効果があり、敏感な人ではベリリウム症と呼ばれる慢性の致死的なアレルギー性疾患を引き起こす恐れがある。
【0009】
原子力分野でベリリウムは、自然に存在するベリリウムの実質的に全てがBe同位体であり、その最後の中性子に対する結合エネルギーが極めて低い(1.69MeV)ということで極めて特殊な元素である。ベリリウムのこの原子核物理学的特性のため、以下に示す閾値エネルギーよりも高いエネルギーの放射線によって励起された場合、Beは、中性子を放出して以下に示すように壊変し、はるかに安定的なヘリウム又は炭素原子を形成する。
BeHe12α=0(発熱)
Be+γ→2・He≧1.6MeV
Be→2・He+2・≧1.6MeV
【0010】
カリホルニウム(元素98)は、希少で、もっぱら人造の元素であり、高次アクチノイド同位体を生成するように特別に設計された特殊な高中性子束原子炉において、プルトニウム又はキュリウム等の他の希少な人造同位体を長期間照射することによって合成される。カリホルニウム(Cf)は、その強力な中性子放出特性を利用する用途にもっぱら用いられる。252Cf同位体は、その高い中性子源強度、生成歩留まり、及び比較的長い半減期により、中性子源に群を抜いて最も広く用いられるカリホルニウム同位体である。現在、252Cfを合成し分離する設備は世界で2つしかない。現時点で、テネシー州にあるオーク・リッジ国立研究所の築50年の高中性子束同位体原子炉において、〜200ミリグラムである世界の年間生産量の〜90%が生成されている。この原子炉で生成される252Cfは、ホット・セル施設において遠隔で実行される複雑な放射化学プロセスでのターゲット照射から得られる他のアクチノイド及び核分裂生成物の全てから252Cfを分離することにより、該原子炉施設で最初の精製が行われる。この分離プロセスは、ワイヤ、フォイル又は他の形態の不活性材料を、分離プロセス由来の252Cf化学化合物で覆い、その結果得られたものを、生成された252Cf源材料を遮蔽するキャスク内に置き、ホット・セル施設から材料を取り出すことができるようにすることによって完了する。252Cfは高い中性子強度を有するため、Cfを他のアクチノイド及び核分裂生成物の全てから分離した後の如何なる源の製造工程も、製造スタッフを保護するために充分に遮蔽した設備において遠隔で行う必要がある。その結果、252Cfを用いる中性子源の製造に簡単なプロセスを用いることが唯一実際的である。カリホルニウムは重量の点で利用可能なあらゆる放射性同位体の中で既に最強の中性子源であるので、先に引用した特許を考慮しても、中性子源としてのカリホルニウムに何かを追加しようとすることには論理的な理由がないように思われる。
【0011】
ここで図1を参照すると、複数の燃料集合体14(図2Aに示す)から成る炉心12を収容する密閉原子炉容器10を含む典型的な熱原子炉の一実施形態が示されている。例えば水を含むものである原子炉冷却材は、入口ノズル16を経て容器に入り、容器と炉心支持構造物との間の環状領域を下方に流れた後、向きを変えて上方に流れ、穴の開いた板20及び炉心12を通って出口ノズル22から排出される。
【0012】
燃料集合体14は、従来技術の図2Aに示されるが、原子燃料ペレット26を含む複数の燃料ピン24が束になったものを含む。この集合体は、集合体の骨格的支持を与え、制御要素30の制御棒29を着脱可能に受容するサイズであって、制御棒29を制御要素30に着脱可能に接続されたシャフト34(図1)に作用する電磁石32等の手段によって炉心領域の上及び内部に配置することが可能な、複数の案内シンブル管28も含む。
【0013】
炉心内の中性子束は、炉心12の高さに整合する高さに配置した中性子検出器36(図1)等の検出装置によって継続的に監視されている。検出器は容器の外部に配置されるが、固定してもよいし、位置決めバー38によって横方向に移動可能にしてもよい。
【0014】
燃料集合体14の案内シンブル管28は、図2Aに示す制御棒29を受容することに加えて、図2Bに示す中性子源カプセルを受容するサイズである。このカプセルは中性子放出源44を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第3,269,915号
【特許文献2】米国特許第3,396,077号
【特許文献3】米国特許第4,208,247号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
中性子源44は、被覆48によってカプセル化され定位置に保持された多量の高速中性子放出材料を含む。現行技術の原子炉起動源に好適な中性子源材料は、源強度を含むいくつかの要因の組み合わせにより252Cfである。そうであっても、252Cf中性子源材料は極めて高価であり、限られた量しか利用できないので、これらの材料の必要性を最小限に抑えることが極めて重要である。一次源のための最適な解は、必要な機能を達成するために必要な252Cfの量を最小限に抑えることである。
【0017】
更に、中性子源の寿命は、必要な機能を達成する最小源強度によって決定される。従って、本発明の主な目的の1つは、中性子源に必要な252Cfの量を減らすため、又は所与の量の252Cfの有効寿命を延ばすために、252Cfをより効率的に用いることである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述の問題の解決及び目的の達成は、252Cf駆動源からの放射性崩壊エネルギーの大きな部分をベリリウム増倍装置(「増倍管アセンブリ」)によって中性子に変換し、これによって得られた中性子をベリリウム(n、2n)反応によって増倍することができるように、252Cf駆動源とベリリウム増倍管アセンブリとを組み合わせることによって行われる。本発明は、本質的にフォイル又はワイヤから成る表面に付着させた252Cfの駆動源から本質的に成り、増倍装置のセグメントとしてのベリリウムのセグメントによりカプセル化され包囲された高速中性子放出源増倍装置に係る。現行技術の一次源の設計は、自発核分裂事象である252Cfの崩壊事象のわずか3.1%を利用する。崩壊事象の残りは高エネルギー・アルファ崩壊であり、そのエネルギーは、従来技術の図2Bに示すように252Cf源(44)を包囲する源被覆(48)によって完全に遮蔽されている。本発明の駆動源の好適な実施形態は、簡単な機械加工のベリリウム増倍装置内のくぼみに埋め込まれた、252Cfで覆ったワイヤ又はフォイルである。好ましくは、駆動源68の挿入を容易にするため、図3A及び図3Bに示すようにベリリウムは2つの部分から成る。ベリリウム増倍装置内でアルファ粒子及び自発核分裂生成物のエネルギーが捕捉される限りにおいて、ベリリウム増倍装置の寸法は重要である。これらの粒子は高質量で且つ帯電していることにより、エネルギーを吸収するために必要なベリリウムの量は、駆動源装置の構造的に適切な容器を形成するに必要な量よりはるかに少ない。252Cfのアルファ及び自発核分裂崩壊のエネルギーの捕捉により、現行技術の252Cf一次源に比べて、252Cf駆動材料の単位質量当たり中性子源強度が約9倍に増大する。また、252Cf駆動源とベリリウム増倍装置との間に置くことができる遮蔽カーテンを介在させることによって、本発明の中性子源の強度を調整することができる。この遮蔽カーテンは、アルファ粒子を停止させることができ、ベリリウム増倍装置へのアルファ粒子の透過を妨げる。
【0019】
増倍装置の質量を増大させると、自発性核分裂によって252Cfから直接生成される中性子のみならず、252Cf崩壊から生じる高エネルギー・アルファ粒子及び核分裂生成物との相互作用の結果としてベリリウムで生成される中性子によるベリリウム(n、2n)反応を増大させることにより、中性子源の強度が更に高くなる。好適な実施形態では、増倍装置を密閉源カプセル内にカプセル化する。このカプセルは、好ましくはばねである増倍装置を保持するための手段と、源カプセルに過剰な圧力を加えることなくベリリウム壊変反応から発生するヘリウム・ガスを集める空間を与える中空の体積部と、を含む。本発明の増倍装置では、252Cfにより直接生成される中性子と、ベリリウム増倍装置によるアルファ及び核分裂生成物の変換により生成される中性子とが、源装置から放出される前にベリリウム(n、2n)反応によって更に増倍される。
【0020】
本発明の主な革新点は、既に強力な中性子源である252Cfを異質のベリリウム増倍装置と組み合わせて、252Cf放射性エネルギーの中性子への変換を完遂させることである。本発明品の製造には、カプセル構造にする前に252Cf駆動源を増倍装置に挿入することが必要である。更に、金属ベリリウム又はベリリウム酸化物の機械加工及び作製が必要である。最後に、製造は全て、強力な中性子源の存在下で、遠隔操作により行わなければならない。
【0021】
252CfとBeが協働して相乗効果が得られ、ベリリウム励起による中性子の増倍により、252Cfの重量を増倍装置当たり約260マイクログラムから約30マイクログラムの、8分の1以下に低減することができる。
【0022】
本発明の利点、性質、及び追加の特徴は、以下の説明を添付図面と関連付けて読むことから、より良く理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】典型的な原子炉の一実施形態の原子炉容器を示す従来技術の部分断面正面図である。
図2A】制御要素が挿入された燃料集合体を示す従来技術の斜視図である。
図2B】燃料集合体に挿入された従来技術の中性子源を示す。
図3A】原子炉シンブル管内に配置された本発明の中性子源カプセルの断面図である。
図3B】原子炉起動源としての本発明の最も広い実施形態を最もよく示す中性子源の3次元図であり、コンポーネントとしての252Cf、ワイヤ、及びベリリウムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明においては、以下で論じ、図3Aに示すように、多量のベリリウムを用いて、少量の252Cfを収容/包囲/カプセル化する。本発明の増倍装置では252Cf及びBeのみを用いる。増倍装置は、ワイヤ又はフォイル上に被覆された252Cfと、Beとから成る。本明細書に記載する本発明の好適な実施形態は、効率的に中性子に変換されるように、252Cfからの様々なタイプの放射線を全て利用する。252Cfは極めて強力な中性子源であるが、中性子は自発核分裂である崩壊の3.1%から直接生成されるだけで、1回の核分裂で平均3.77個の中性子が放出される。現行技術の252Cf中性子源では、標準設計の源ステンレス鋼外装で熱としてエネルギーを放散することにより、アルファ粒子としての252Cf放射性エネルギーの残り96.9%が無駄になる。
【0025】
好適な実施形態は、アルファ粒子及び核分裂生成物エネルギーのための極めて有効な遮蔽体でもある源の外装を用いずに、252Cfを原子炉からの様々な照射生成物から分離し後に付着させた、典型的にはパラジウムであるむき出しのワイヤを利用する。ワイヤを遮蔽体内にカプセル化するのではなく、簡単なベリリウム増倍装置内にカプセル化し、次いでこれに対して、252Cfの崩壊により生じるアルファ粒子、核分裂生成物、即発核分裂ガンマ線、及び高エネルギー中性子を照射する。このため、252Cfで覆ったむき出しのワイヤの中性子源強度は約8乃至10倍に増倍され、結果として、同一量の252Cfで著しく強力もしくは長寿命の源を得ること、又は一定の源強度に必要な252Cfの量を9分の1に削減することが可能となる。計算によれば、現行技術の非増倍源を有する典型的な600MBq原子炉起動一次源は約260μgの252Cfを必要とするが、増倍した源ではわずか29μgしか必要としない。
【0026】
ここで図3Aを参照すると、一次源カプセル60が示されている。一次源カプセルは、基体ワイヤ69上に被覆された68で示す252Cfの駆動源と、これを収容し、包囲し、カプセル化するベリリウム・セグメント64とを含んで成り、増倍装置62を形成する。図3Bにこの増倍装置62は更によく示される。増倍装置62は、原子力発電所、油井検層等において多種多様な用途を有し得る。
【0027】
ここで、基体/表面69上に被覆され、64で示すBeにより包囲された68で示す252Cfから成る増倍装置62は、それを包囲する中空の管/棒70内に挿入又は含有/収容することができる。一次源カプセルの端部は、最も簡単にはばね78である位置決め要素が、収容/カプセル化された増倍装置62を、下部端栓84’の近傍又はこれと隣接した定位置に保持する状態で、上部端栓84及び下部端栓84’によって封止することができる。図示する一次源カプセル内の空の体積部を86として示すが、これは252Cfアルファ崩壊によって直接放出されるヘリウム・ガスのみならず、ベリリウム分解反応によって発生するヘリウム・ガスをも捕捉することができる。
【0028】
本発明の特定の実施形態について詳細に記載したが、本開示の全体的な教示に鑑み、それらの詳細例に対して様々な変形及び代替を開発可能であることが当業者には認められよう。従って、開示した特定の実施形態は、例示のみを意図しており、添付の特許請求の範囲の全範囲及びそのあらゆる均等物である本発明の範囲に関して限定を加えることを意図するものではない。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B