特許第5789368号(P5789368)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5789368電子デバイスの導電性フィーチャの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5789368
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】電子デバイスの導電性フィーチャの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/288 20060101AFI20150917BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20150917BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20150917BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20150917BHJP
   H01L 29/417 20060101ALI20150917BHJP
   H01L 29/423 20060101ALI20150917BHJP
   H01L 29/49 20060101ALI20150917BHJP
   H01L 21/3205 20060101ALI20150917BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20150917BHJP
   H01L 23/532 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   H01L21/288 Z
   H01B13/00 503D
   H01L29/78 616V
   H01B13/00 503Z
   B32B15/08 E
   H01L29/50 M
   H01L29/58 G
   H01L21/88 B
   H01L21/88 M
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-249432(P2010-249432)
(22)【出願日】2010年11月8日
(65)【公開番号】特開2011-109087(P2011-109087A)
(43)【公開日】2011年6月2日
【審査請求日】2013年11月5日
(31)【優先権主張番号】12/617,840
(32)【優先日】2009年11月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピン リウ
(72)【発明者】
【氏名】イリアン ウー
(72)【発明者】
【氏名】ナン−シン フー
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー ウイグルウォース
【審査官】 河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−135495(JP,A)
【文献】 特開2003−151362(JP,A)
【文献】 特開2006−104576(JP,A)
【文献】 特開2005−175472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/288
B32B 15/08
H01B 13/00
H01L 21/3205
H01L 21/768
H01L 23/532
H01L 29/417
H01L 29/423
H01L 29/49
H01L 29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子デバイスの導電性フィーチャの製造方法であって、
有機系安定剤が表面上に存在するナノ粒子を含有する組成物を、基材上に成膜して成膜組成物を形成し、
前記成膜組成物を100℃以下の温度で加熱し、
前記成膜組成物をアルカリ組成物に接触させて導電性フィーチャを形成する、
ことを含む電子デバイスの導電性フィーチャの製造方法
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法において、
前記アルカリ組成物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アンモニウム、アンモニア、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、有機アミン、イミダゾール、ピリジン、又はその混合物を含むことを特徴とする導電性フィーチャの製造方法
【請求項3】
請求項に記載の製造方法において、
前記アルカリ組成物は、少なくとも水酸化アンモニウムを含むことを特徴とする導電性フィーチャの製造方法
【請求項4】
請求項に記載の製造方法において、
前記アルカリ組成物は、水と、炭化水素溶媒、アルコール、エーテル、テトラヒドロフラン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ニトロベンゼン、シアノベンゼン、アセトニトリル、アセトン、及びこれらの混合物から選択される有機溶媒とを含有する水酸化アンモニウム水性溶液であることを特徴とする導電性フィーチャの製造方法
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法において、
前記成膜組成物の加熱及び前記アルカリ組成物に対する接触は、同時に行われることを特徴とする導電性フィーチャの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイスの導電性フィーチャ、および金属ナノ粒子組成物を用いた電子デバイスの導電性フィーチャの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体成膜技術を用いた電子回路部品の製造は有益である。しかし、実際に使用するために、導電率、処理およびコストの要求に合わせて、機能電極、画素パッドおよび導電性トレース、ラインおよびトラックを、成膜および/又はパターニングすることには、大きな問題があった。
【0003】
金属の銀は、金に比べ非常にコストが低く、銅に比べて非常に良好な環境安定性を有するので、電子デバイス(電子素子)用の導電性要素として特に有用である。しかし、現行の銀ナノ粒子に関して主に2つの問題がある。第1に、柔軟性のある幅広いプラスチック基材について銀ナノ粒子の使用を可能にするためには、例えば、120℃以下の低い処理温度が、基材の寸法安定性を保持するのに好ましい。第2に、120℃以下の処理温度を実現しながら、十分な貯蔵安定性を有する銀ナノ粒子を開発することは困難であった。一般的に、古い銀ナノ粒子組成物から得られる焼成フィルム又は印刷ラインは、著しく導電性が減退する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7270694号明細書
【特許文献2】米国特許第7306969号明細書
【特許文献3】米国特許第7494608号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
即ち、本発明の目的は、長期間貯蔵された古い金属ナノ粒子組成物を用いた場合であっても、高い導電性を有する電子デバイスの導電性フィーチャを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は、各種実施の形態において、金属ナノ粒子組成物を調製する方法、さらにはこのように製造される組成物を開示する。また、ナノ粒子組成物を用いた素子、例えば、薄膜トランジスタをも開示する。
【0007】
本発明に係る電子デバイスの導電性フィーチャ、つまり電子デバイスの導電要素部(導電部)は、表面上に有機安定剤を備える金属ナノ粒子を含有する組成物を、基材上に成膜して、成膜組成物とし、成膜組成物を加熱し、かつ成膜組成物をアルカリ組成物に曝して、導電性フィーチャを形成することを包含する方法によって形成される。
【0008】
アルカリ組成物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、アンモニア、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、有機アミン、イミダゾール、ピリジン、およびその混合物が例示できる。アルカリ組成物は、例えば、アンモニア、水、および有機溶媒を含有する。
【0009】
この導電性フィーチャは、少なくとも10,000S/cmの導電率を有することができる。
【0010】
約70℃〜約130℃、80℃〜約120℃、又は100℃以下の範囲の温度で加熱を行ってもよい。成膜組成物を、アルカリ組成物に曝す前に加熱してもよく、又はアルカリ組成物に曝した後に加熱してもよい。加熱は、約3分〜約1時間の間行ってもよい。
【0011】
有機安定剤は、チオール、アミン、カルボン酸又はカルボキシレート、ポリエチレングリコール、又はピリジン誘導体であってもよい。例えば、安定剤は、ドデシルアミン等の有機アミンである。
【0012】
また、電子デバイスの導電性フィーチャを形成するための方法は、表面上に有機安定剤を備える金属ナノ粒子を含有する組成物を、基材上に成膜して、成膜組成物とし、成膜組成物を加熱し、成膜組成物をアルカリ組成物に曝して、導電性フィーチャを形成することを包含する方法である。
【0013】
成膜組成物の加熱および成膜組成物のアルカリ組成物との接触を、同時に行ってもよい。場合によっては、成膜組成物を加熱する前にアルカリ組成物に曝してもよく、成膜組成物をアルカリ組成物に曝す前に加熱してもよい。
【0014】
加熱温度は、約70℃〜約130℃の範囲の温度、又は100℃以下の温度である。加熱は、約3分〜約1時間の間行ってもよい。
【0015】
また、実施の形態では、電子素子のフィーチャの導電率を上げるとともに、成膜組成物を加熱する際に必要な焼成温度を下げるための処理又は方法を開示する。この処理は、表面上に有機アミン安定剤を備える金属ナノ粒子を含有する組成物を調製し、基材上に組成物を成膜して、成膜組成物とし、成膜組成物を加熱し、成膜組成物をアルカリ組成物に曝して、導電性フィーチャを形成することを包含する。
【0016】
上記方法により得られる導電性フィーチャは、長期間貯蔵された古い金属ナノ粒子を含有する組成物を用いて形成された場合であっても、高い導電性を有する。当該導電性フィーチャ、つまり導電要素部(導電部)は、各種電子デバイスの導電性電極、導電性パッド、導電性ライン、導電性トラック等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本開示により製造された薄膜トランジスタの第1実施形態を示す図である。
図2】本開示により製造された薄膜トランジスタの第2実施形態を示す図である。
図3】本開示により製造された薄膜トランジスタの第3実施形態を示す図である。
図4】本開示により製造された薄膜トランジスタの第4実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
「金属ナノ粒子」で使用される「ナノ」という用語は、約1000nm以下の粒子サイズを示す。実施の形態では、金属ナノ粒子は、約1nm〜約1000nm、約1nm〜約500nm、約1nm〜約100nm、特に約1nm〜約20nmの粒子サイズを有する。ここで、粒子サイズは、表面上のいずれの安定剤も取り除いた粒子の平均直径として規定され、TEM(透過型電子顕微鏡)によって決定される。
【0019】
本開示の方法は、例えば、薄膜トランジスタにおける電極のような、電子デバイスの基材に高導電性の導電要素部を形成するものである。一般的に、この方法は金属ナノ粒子組成物の使用し、これを基材上に成膜するものである。成膜組成物に塩基性(アルカリ)媒体を接触させる。また、成膜組成物を加熱乾燥して導電性フィーチャを形成する。加熱と塩基性媒体への暴露はいかなる順序でもよい。特に、これらの処理の有益性は、長期間貯蔵された古い金属ナノ粒子組成物を用いても、新しく調製した金属ナノ粒子組成物を用いて導電性フィーチャを形成した場合に得られる導電率と、同等の導電率を有する導電性フィーチャを形成することができる。
【0020】
金属ナノ粒子を、いずれの好適な方法、例えば、化学的方法および物理的方法によって調製してもよい。例えば、約5〜7nmのサイズのコロイド状銀ナノ粒子を、物理的方法(例えば、“Ultrafine Particles(超微粒子)”J.Vacuum Sci.Technol.A,Vol.5,NO.4,pp.1375 −1384(Jul/Aug 1987))に開示されるような物理的方法)によって形成してもよい。
【0021】
実施の形態では、銀を含むナノ粒子を含有する組成物を形成する化学的方法は、銀化合物を、初期安定剤と共に、水性媒体又は非水性媒体中で激しく攪拌しながら混合し、次いで、還元剤を添加することを包含してもよい。金属ナノ粒子の表面上に初期安定剤の分子を有する金属ナノ粒子を含有する組成物を形成するために、いずれの好適な化学的方法を用いてもよい。
【0022】
組成物のナノ粒子の金属は、遷移金属、例えば、銀、金、銅、ニッケル、コバルト、パラジウム、白金、インジウム、錫、亜鉛、チタン、クロム、タンタル、タングステン、鉄、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、および鉛から選択されてもよい。所望金属の非限定的な例には、銀、金、銅、ニッケル、コバルト、ロジウム、パラジウム、および白金がある。銀、銅およびニッケルは、特に好ましい金属であり、銀は最も好ましい金属である。
【0023】
実施の形態では、金属ナノ粒子は、銀又は銀複合材から成り、すなわち、銀含有ナノ粒子である。銀以外に、銀複合材は(i)1以上の他の金属および(ii)1以上の非金属のいずれか又は両方を含有してもよい。好適な他の金属としては、例えば、Al、Au、Pt、Pd、Cu、Co、Cr、In、およびNi、特に遷移金属、例えば、Au、Pt、Pd、Cu、Cr、Niおよびその混合物が挙げられる。例示的な金属複合材は、Au−Ag、Ag−Cu、Au−Ag−Cu、およびAu−Ag−Pdである。金属複合材中の好適な非金属の例としては、例えば、Si、CおよびGeがある。銀複合材の各種成分は、例えば、約0.01重量%〜約99.9重量%、特に約10重量%〜約90重量%の範囲の量で存在してもよい。実施の形態では、銀複合材は、銀と1、2又はそれ以上の他の金属からなり、例えば、銀がナノ粒子の少なくとも約20重量%、特にナノ粒子の約50重量%以上含まれる金属合金である。
【0024】
安定剤を粒子表面上に存在させることによって金属ナノ粒子を安定化する。安定剤は金属ナノ粒子を最小化し、金属ナノ粒子が凝集するのを防ぐ機能を有し、液体中での金属ナノ粒子の溶解性又は分散性を提供し又は向上させる。実施の形態では、安定剤は、「加熱除去可能」であり、安定剤がある条件、例えば、加熱、レーザ照射、およびその組み合わせを通じて、金属ナノ粒子の表面から分離除去できることを意味する。
【0025】
実施の形態では、安定剤は有機安定剤である。「有機安定剤」の「有機」という用語は、炭素原子の存在を言うが、有機安定剤は、1以上の非金属ヘテロ原子、例えば、窒素、酸素、硫黄、シリコン、ハロゲン等を含有してもよい。
例示的な有機安定剤には、チオールおよびその誘導体、アミンおよびその誘導体、カルボン酸およびカルボキシレート誘導体、ポリエチレングリコールおよび他の有機界面活性剤がある。また、有機安定剤としては、チオール、例えば、ブタンチオール、ペンタンチオール、ヘキサンチオール、ヘプタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、およびドデカンチオール、アミン、例えば、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミンおよびヘキシルデシルアミン、ジチオール、例えば、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオールおよび1,4−ブタンジチオール、ジアミン、例えば、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、チオールおよびジチオールの混合物、およびアミンおよびジアミンの混合物からなる群から選択できる。銀含有ナノ粒子を安定化させることができるピリジン誘導体、例えば、ドデシルピリジン、および/又は有機ホスフィンを含有する有機安定剤を選択することもできる。
【0026】
安定剤としては、有機アミン、例えば、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オレイルアミン、オクタデシルアミン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン、ジアミノヘプタン、ジアミノオクタン、ジアミノノナン、ジアミノデカン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、メチルプロピルアミン、エチルプロピルアミン、プロピルブチルアミン、エチルブチルアミン、エチルペンチルアミン、プロピルペンチルアミン、ブチルペンチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、およびその混合物が例示できる。また、有機アミン安定剤は、約6〜約18個の炭素原子、又は約8〜約18個の炭素原子を有し、例えば、ドデシルアミンである。
【0027】
他の有機安定剤の例には、例えば、チオールおよびその誘導体、−OC(=S)SH(キサントゲン酸)、ポリエチレングリコール、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリドンおよび他の有機界面活性剤がある。また、有機安定剤は、チオール、例えば、ブタンチオール、ペンタンチオール、ヘキサンチオール、ヘプタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、およびドデカンチオール、ジチオール、例えば、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオールおよび1,4−ブタンジチオール、又はチオールおよびジチオールの混合物からなる群から選択されてもよい。また、有機安定剤は、キサントゲン酸、例えば、O−メチルキサンテート、O−エチルキサンテート、O−プロピルキサントゲン酸、O−ブチルキサントゲン酸、O−ペンチルキサントゲン酸、O−ヘキシルキサントゲン酸、O−ヘプチルキサントゲン酸、O−オクチルキサントゲン酸、O−ノニルキサントゲン酸、O−デシルキサントゲン酸、O−ウンデシルキサントゲン酸、O−ドデシルキサントゲン酸からなる群から選択されてもよい。金属ナノ粒子を安定化させることができるピリジン誘導体(例えば、ドデシルピリジン)および/又は有機ホスフィンを含有する有機安定剤を、潜在的安定剤として使用してもよい。
【0028】
実施の形態では、2以上の安定剤を用いてもよく、この場合、各安定剤はいずれの好適な重量又はモル比で、例えば、第1安定剤:第2安定剤=約99:1〜約1:99で存在してもよい。安定剤の全重量は、いずれの好適な量、例えば、金属化合物1モル当たり1〜20(又はそれ以上)モル当量であってもよい。
【0029】
好適な液体又は溶媒を本方法に用いて、金属ナノ粒子の分散又は溶解を助け、金属ナノ粒子含有組成物(すなわち、溶液又は分散液)を形成してもよい。好適な液体には、有機溶媒および/又は水がある。例示的な有機溶媒には、例えば、炭化水素溶媒(例えば、イソパー(ISOPAR(登録商標))流体、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、メシチレン等)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等)、テトラヒドロフラン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ニトロベンゼン、シアノベンゼン、アセトニトリル、およびその混合物がある。
【0030】
金属ナノ粒子は、金属ナノ粒子含有組成物の約5重量%〜約98重量%であってもよい。言い換えれば、使用される液体の量は、金属ナノ粒子含有組成物の約2重量%〜約95重量%、特に約10重量%〜約95重量%であってもよい。ある実施の形態では、金属ナノ粒子は、金属ナノ粒子含有組成物の約10重量%〜約25重量%である。
【0031】
金属ナノ粒子組成物(実施の形態では、これらの組成物を「インク」と呼んでもよい)からの導電性部品の製造は、いずれの好適な液体成膜技術、例えば、(i)印刷、例えば、スクリーン/ステンシル印刷、スタンピング、ミクロ接触印刷、インクジェット印刷等、および(ii)コーティング、例えば、スピンコーティング、ディップコーティング、ブレードコーティング、キャスティング、ディッピング等を用いて行われてもよい。成膜された金属ナノ粒子フィーチャは、この段階では導電性を有しても、有さなくてもよい。
【0032】
いくかの処理で、成膜された金属ナノ粒子組成物を加熱すると共に、塩基性(アルカリ)組成物、溶液又は媒体に曝して、導電性フィーチャを形成する。言い換えれば、加熱とアルカリ組成物への暴露は同時に行われる。
【0033】
また、成膜された金属ナノ粒子組成物を、アルカリ組成物に接触させて、次に加熱し、導電性フィーチャを形成することもできる。言い換えれば、成膜組成物は加熱の前にアルカリ組成物に曝される。
【0034】
また、成膜された金属ナノ粒子組成物を、加熱して導電性フィーチャを形成し、次いでアルカリ組成物に曝し、そして、加熱せずに空気中でフィーチャを貯蔵することによって乾燥するか、又は加熱することによって乾燥して、導電性フィーチャを得ることもできる。言い換えれば、成膜組成物は加熱の後にアルカリ組成物に曝される。
【0035】
塩基性又はアルカリ組成物は純粋な塩基であってもよく、又は好適な溶媒で希釈され又は溶媒中に溶解した塩基であってもよい。一般的に、塩基性組成物は、成膜された金属ナノ粒子フィーチャにダメージを与えないように選択される。アルカリ組成物は、いずれかの好適な溶媒と共に、いずれかの好適な塩基又はアルカリ成分を含有するなら、気体でも液体でもよい。実施の形態では、塩基性組成物用の溶媒は水又は他の好適ないずれかの一般的有機溶媒、例えば、炭化水素溶媒(例えば、イソパー流体、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、トルエン、キシレン、メシチレン等)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テルピネオール等)、ケトン(例えば、アセトン、メチルイソブチルケトン等)、エーテル、テトラヒドロフラン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ニトロベンゼン、シアノベンゼン、アセトニトリルおよびその混合物でもよい。
【0036】
塩基自身は、強塩基、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等でも、弱塩基、例えば、アンモニア、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、有機アミン、イミダゾール、ピリジンでも、およびその混合物でもよい。例えば、アルカリ組成物は、水酸化アンモニウム水性溶液、すなわち、水および有機溶媒中にあるアンモニアである。実施の形態では、アルカリ組成物中の塩基濃度は、例えば、約0.01〜約0.3Mである。
【0037】
成膜組成物(すなわち、加熱前のナノ粒子の状態又は加熱後の薄膜/フィーチャの状態)をアルカリ組成物に曝してもよく、ここでアルカリ組成物は気体又は液体である。例えば、いくつかの実施の形態では、アルカリ組成物は蒸気の形態である。他の実施の形態では、アルカリ組成物を成膜組成物上にドリップしてもよい。また、成膜組成物をアルカリ組成物に浸漬してもよい。
【0038】
成膜組成物又はフィーチャを、例えば、約70℃〜約130℃の範囲、また、約85℃〜約130℃の範囲の低温で加熱乾燥する。また、加熱/乾燥は約80℃〜約120℃の範囲の温度で行われてもよい。例えば、焼成温度は100℃以下であり、約85℃程度と低くてもよい。このような低温は、塩基性溶液処理なしでの約120℃の焼成温度に匹敵する。成膜組成物がアルカリ組成物に曝された後に加熱するなら、いかなる加熱を乾燥として行ってもよいことを記載しておく。加熱時間としては、例えば、約3分〜約1時間、5分〜30分、又は5分〜15分間である。
【0039】
成膜された金属ナノ粒子組成物を加熱し、これをアルカリ処理に接触させることによって製造され、得られた金属含有部品の導電率は、例えば、少なくとも1000S/cmである。例えば、導電率は、四探針法(four−probe method)での測定では、少なくとも10000S/cmである。本方法により得られた金属ナノ粒子組成物によれば、少なくとも1ヶ月又は3ヶ月を越えて貯蔵された場合であっても、このように高い導電率が得られる。つまり、本方法によれば、組成物の貯蔵期間を伸ばす(貯蔵安定性を向上させる)ことができる。
【0040】
金属ナノ粒子組成物を用いて、良好な電気特性を有する複雑で高精度の電気回路を形成することができる。例えば、本開示の組成物および方法を用いて、いずれかの好適な基材、例えば、プラスチック、ガラス、金属およびシリコンウェハー上に導電性フィーチャ、例えば、導電性電極等の導電部を形成することができる。このフィーチャは、例えば、25μm程度の小さいフィーチャサイズを有する。
【0041】
得られた導電性フィーチャを、電子デバイス、例えば、薄膜トランジスタ、有機発光ダイオード、RFID(無線周波数識別)タグ、光起電装置、および導電性部品を必要とする他の電子デバイス等における、導電性電極、導電性パッド、導電性ライン、導電性トラック等として使用することができる。
【0042】
図1では、薄膜トランジスタ(「TFT」)構造10を概略的に示しており、TFT構造10は、基材とゲート電極の両方としての役割を果たすヘビーn−ドープシリコンウェハー18、熱成長させた酸化シリコン絶縁層14、絶縁層14の表面に成膜された2つの金属接点であるソース電極20、およびドレイン電極22から成る。金属接点であるソース電極20、ドレイン電極22上、およびその間には、半導体層12がある。
【0043】
図2は、別のTFT構造30を概略的に示しており、TFT構造30は、基材36、ゲート電極38、ソース電極40およびドレイン電極42、絶縁層34、および半導体層32から成る。
【0044】
図3は、さらなるTFT構造50を概略的に示しており、TFT構造50は、基材とゲート電極の両方としての役割を果たすヘビーn−ドープシリコンウェハー56、熱成長させた酸化シリコン絶縁層54、半導体層52、半導体層52の表面に成膜されたソース電極60およびドレイン電極62から成る。
【0045】
図4は、さらなるTFT構造70を概略的に示しており、TFT構造70は、基材76、ゲート電極78、ソース電極80、ドレイン電極82、半導体層72、および絶縁層74から成る。
【0046】
絶縁層、ゲート電極、半導体層、ソース電極およびドレイン電極は、特に実施の形態では、ゲート電極と半導体層が共に絶縁層と接触し、ソース電極とドレイン電極が共に半導体層と接触する場合には、何らかの手順で形成される。「何らかの手順で」という用語は、順次および同時形成を含む。例えば、ソース電極とドレイン電極は同時に形成されても、順次形成されてもよい。
【実施例】
【0047】
<比較例1>
新しく調製したドデシルアミン安定化銀ナノ粒子を用いた。15重量%の銀ナノ粒子のトルエンへの分散液を調製し、ガラススライド上にスピンコーティングした。成膜組成物を約115℃で10分間焼成して、94nmの厚さを有する薄膜を得た。導電率は、四探針法を用いて測定したところ、3.04×104S/cmであった。明らかに、新しく調製したドデシルアミン安定化銀ナノ粒子は、約115℃での処理温度での焼成後、高い導電率を示した。
【0048】
<比較例2>
同じバッチの銀ナノ粒子を、所定の期間(3ヶ月以上)貯蔵後に使用した。銀ナノ粒子のトルエンへの分散液(15重量%)を調製し、ガラススライド上にスピンコーティングした。成膜組成物を約120℃で20分未満焼成して、93nmの厚さを有する薄膜を得た。四探針法を用いて測定したところ、焼成された薄膜は導電性ではなかった。即ち、ドデシルアミン安定化銀ナノ粒子の導電率は、長期間貯蔵後に著しく減退した。
【0049】
<実施例1>
比較例2の貯蔵後分散液を使用した。成膜組成物を約110℃で10分間加熱すると共に同時に、水酸化アンモニウムの塩基性蒸気を施した。この蒸気はホットプレート表面上に水酸化アンモニウム溶液を数滴ドリップすることによって作成した。これらの条件で加熱処理した後、得られた薄膜の導電率は、四探針法を用いて測定したところ、3.82×104S/cmであった。
【0050】
<実施例2>
比較例2の貯蔵後分散液を使用した。成膜組成物をアセトンで希釈した水酸化アンモニウム溶液に1〜2分間浸漬し、次いで約95℃で10分間加熱処理した。得られた膜(84nmの厚さ)は高導電性となり、その導電率は3.06×104S/cmに達した。
【0051】
<実施例3>
比較例2の貯蔵後分散液を使用した。成膜組成物を約95℃で10分間焼成したところ、焼成された薄膜(86nmの厚さ)は導電性ではなかった。この薄膜を次に、アセトンで希釈した水酸化アンモニウム溶液に約1〜2分間浸漬し、次いで約95℃で10分間乾燥した。薄膜は非常に導電性となり、その導電率は4.27×104S/cmに達した。
【0052】
<実施例4>
比較例2の貯蔵後分散液を使用した。成膜組成物を約85℃で15分間焼成したところ、焼成された薄膜(88nmの厚さ)は導電性ではなかった。この薄膜を次に、アセトンで希釈した水酸化アンモニウム溶液に約1〜2分間浸漬し、次いで約10分間加熱せずに空気乾燥した。得られた薄膜は高導電性となり、その導電率は4.87×103S/cmに達した。さらに乾燥させるために、室温で、空気中で一晩放置した後、導電率は1.11×104S/cmに増加した。
【符号の説明】
【0053】
10,30,50,70 TFT構造、12,32,52,72 半導体層、18,56 ヘビーn−ドープシリコンウェハー、20,40,60,80 ソース電極、22,42,62,82 ドレイン電極、38,78 ゲート電極。
図1
図2
図3
図4