(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、前記ウェーハのクラック判定位置において、該ウェーハの周囲に当接して位置決めするウェーハ位置決め手段を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のウェーハのクラック検出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記第1の技術では、ウェーハを湾曲させる構成上、クラックの成長を助長する虞があり、割れが発生するという問題を有する。
【0012】
また、第2の技術では、基板を固定する手段と音響センサをウェーハに対して非接触状態で対向配置しなければならないために、そのセンサ構造上、構成が複雑となるうえ、周囲の雑音を拾ってしまったりして、発生した音のみを効率よく検出することが困難であるという問題を有する。
【0013】
さらに、第3の技術では、赤外光を照射することで、ウェーハが膨張し、クラックが一時的にくっついてしまう虞を有し、また表面に凹凸があるようなウェーハの場合には凹凸とクラックの識別が難しく、信頼性の高い判定が困難であるという問題を有する。
【0014】
この発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、簡易な構成で、信頼性の高い確実なクラック検出を実現して、太陽電池或いは半導体素子の製造性の向上を図り得るようにしたウェーハのクラック検出装置、そのクラック検出方法、太陽電池或いは半導体素子の製造装置、
およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に係る発明
に係るウェーハのクラック検出装置は、ウェーハに当接され、前記ウェーハに伝わる振動波形を検出する
AEセンサと、前記
AEセンサ
により、または当該AEセンサと他部材とにより前記ウェーハを保持するウェーハ保持手段と、前記ウェーハの少なくとも一方の面に対して加振部が設けられた加振手段と、この加振手段の加振部が前記ウェーハの少なくとも一方の面を加振した状態で、前記
AEセンサで検出された振動波形から前記ウェーハがクラックを有することを示す周波数を抽出する信号処理手段と、この信号処理手段の抽出情報に基づいて前記ウェーハのクラックの有無を検出する判定手段
とを備え
、前記AEセンサは、その共振周波数がクラックの存在を示す周波数領域に対応して設定されていることを特徴とするものである。
【0016】
この場合、前記
ウェーハ保持手段と前記ウェーハの間、前記加振部と前記ウェーハの間の、少なくとも一つにおいて弾性素材を介在させることができる。
【0017】
上記構成によれば、ウェーハは、弾性素材が介在されて
AEセンサにより
、或いはAEセンサと他部材により挟まれて保持され、加振部が、その弾性素材を介在させて加振されることにより、加振時にウェーハを損傷したりすることなく、しかも
AEセンサによる振動波形の検出時、空気の影響を受けることなく高精度な検出が可能となる。これにより、構成の簡略化を図ったうえで、高精度なクラック検出が実現され、簡便にして容易にウェーハ製造の歩留まりを向上することが可能となる。
【0018】
請求項2に係る発明はさらに、前
記ウェーハ保持手段が、前記ウェーハの半導体が形成されていない面、及び/又は、前記ウェーハ周辺の半導体が正常に形成されていない部分にのみ当接するようにしてウェーハのクラック検出装置を構成した。
【0019】
この場合も、前
記ウェーハ保持手段と前記ウェーハの間、前記加振部と前記ウェーハの間の、少なくとも一つにおいて弾性素材を介在させることができるが、弾性素材は介在させなくてもよい。
【0020】
請求項11に係る発明によるウェーハのクラック検出方法は、
共振周波数がクラックの存在を示す周波数領域に対応して設定されたAEセンサ
、または当該AEセンサおよび他部材を含むウェーハ保持手段によってウェーハを保持するウェーハ保持ステップと、前記ウェーハの少なくとも一方の面に対して加振部によって加振する加振ステップと、この加振ステップで前記ウェーハに振動を加えた状態で、前記
AEセンサで前記ウェーハに伝わる振動波形を検出し、その振動波形から前記ウェーハがクラックを有することを示す周波数を抽出し、その抽出情報に基づいて前記ウェーハのクラックの有無を検出する判定ステップとを備え
ることを特徴とするものである。
【0021】
この場合、前
記ウェーハ保持手段と前記ウェーハの間、前記加振部と前記ウェーハの間の、少なくとも一つにおいて弾性素材を介在させることができる。
【0022】
上記構成によれば、ウェーハは、ウェーハ保持ステップにおいて弾性素材が介在され
た状態でウェーハ保持手段により挟まれて保持され、加振ステップにおいて加振部が、その弾性素材を介在させて加振されることにより、加振時にウェーハを損傷したりすることなく、しかも、判定ステップにおいて
AEセンサによる振動波形の検出時、空気の影響を受けることなく高精度な検出が可能となる。これにより、構成の簡略化を図ったうえで、高精度なクラック検出が実現され、簡便にして容易にウェーハ製造の歩留まりを向上することが可能となる。
【0023】
請求項12に係る発明によるウェーハのクラック検出方法はさらに、前記ウェーハ保持ステップにおいて、前
記ウェーハ保持手段が、ウェーハの半導体が形成されていない面、及び/又は、前記ウェーハ周辺の半導体が正常に形成されていない部分にのみ当接
することを特徴とするものである。
【0024】
この場合も、前記各々の音響センサと前記ウェーハの間、前記加振部と前記ウェーハの間の、少なくとも一つにおいて弾性素材を介在させることができるが、弾性素材は介在させなくてもよい。
【0025】
請求項21に係る発明における太陽電池或いは半導体素子の製造装置は、ウェーハに半導体を生成して太陽電池或いは半導体素子を製造する装置であって、前記請求項1
または請求項2
記載のウェーハのクラック検出装置によるクラック検出を含めて構成した
ことを特徴とするものである。
【0026】
上記構成によれば、クラックの無いウェーハを用いて太陽電池或いは半導体素子を製造することができることにより、製造における歩留まりを向上することが可能となる。
【0027】
請求項22に係る発明による太陽電池或いは半導体素子の製造方法は、ウェーハに半導体を生成して太陽電池或いは半導体素子を製造する方法であって、前記請求項
11または12記載のウェーハのクラック検出方法によるクラック検出を含め
ることを特徴とするものである。
【0028】
上記構成によれば、クラックの無いウェーハを用いて太陽電池或いは半導体素子を製造することができることにより、製造における歩留まりを向上することが可能となる。
【発明の効果】
【0033】
以上述べたように、この発明によれば、簡易な構成で、信頼性の高い確実なクラック検出を実現して、太陽電池或いは半導体素子の製造性の向上を図り得るようにしたウェーハのクラック検出装置、そのクラック検出方法、太陽電池或いは半導体素子の製造装置、
およびその製造方
法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、この発明の実施の形態に係るウェーハのクラック検出装置、そのクラック検出方法、太陽電池或いは半導体素子の製造装置、その製造方法、及び太陽電池或いは半導体素子について、図面を参照して詳細に説明する。
【0036】
図1は、この発明の一実施の形態に係るウェーハのクラック検出装置を示すもので、ベース10上には、例えば略中央部に支柱部材11が立設される(
図2及び
図3参照)。そして、この支柱部材11には、弾性素材12が被着され(
図4参照)、この弾性素材12上には、例えば太陽電池用の半導体が生成された太陽電池ウェーハ等のウェーハ13の一方の面が載置される。
【0037】
上記ベース10には、ウェーハ位置決め手段を構成する複数、例えば3本の位置決めピン14が、支柱部材11の周囲に所定の間隔を有して立設されている。この位置決めピン14は、ウェーハ13が支柱部材11に弾性素材12が介在されて載置された状態で、該ウェーハ13の周囲の3箇所が当接され、該ウェーハ13の面方向の移動を規制して、ウェーハ13をクラック検出位置に位置決めする。
【0038】
また、ベース10には、接触型音響センサ15が支柱部材11に対向して設けられる。この音響センサ15は、先端部に弾性素材12が被着され、この弾性素材が上記支柱部材11の弾性素材12上に載置されたウェーハ13の他方の面に密着されることで、上記支柱部材11と協働してウェーハ13を挟み込んで位置決め保持する(
図4参照)。ベース10上に搬送されてきたウェーハ13を、支柱部材11が下から押し上げて位置決め保持するような構成も可能である。
【0039】
上記音響センサ15は、支持部材を構成する例えば支持アーム17の先端部に着脱自在、且つ、上下方向及び矢印A,B方向に移動調整自在に設けられる。そして、この支持アーム17の基端部は、移動機構18を介してベース10に対して矢印C,D方向に移動自在に設けられている。これにより、音響センサ15は、支持アーム17及び移動機構18を介してベース10の支柱部材11に対向するように移動調整される。
【0040】
ここで、上記ウェーハ13は、支柱部材11と音響センサ15とにより、弾性素材12が介在された状態で、挟み込まれてクラック検出が行われることで、支持構造が簡単化され、製作上のコスト低下が図れる。
【0041】
また、ベース10には、加振手段を構成する、例えば1g程度の棒状の加振部19が支持部材を構成する支持アーム20に対して落下操作自在で、且つ、矢印A,B方向に移動調整自在に設けられる。そして、この支持アーム20は、移動機構21を介してベース10に対して矢印C,D方向に移動調整自在に設けられる。これにより、加振部19は、支持アーム20及び移動機構21を介してベース10に対して移動調整されて、例えば上記音響センサ15よりベース10の周囲方向に移動調整される。
【0042】
最近の太陽電池ウェーハの形状は、四隅が丸く欠けた正方形が多い。本実施例においては一例として、加振部19は、音響センサ15から上記正方形の辺におろした垂線上の、外から1/3程度の点を加振しており、好結果を得ている。
【0043】
この加振部19は、例えばその先端部に粘弾性を示す素材を含む弾性素材22が被着され、一旦、支持アーム20より持ち上げて1cm程度の高さから落下される。すると、加振部19は、その弾性素材22からウェーハ13の面に衝突されて該ウェーハ13を加振する。
【0044】
ここで、加振部19は、ウェーハ13を効率的に振動させるために、音響センサ15よりも端に近いウェーハ13上に落下させることが好ましい。このように、先端に弾性素材22を被着した1g程度の軽い加振部19を、1cm程度の低い高さ位置からウェーハ13上に落下させて加振していることで、衝突時に、弾性素材12がウェーハ13に衝突することによるストレスを小さく抑えることができるため、その割れや損傷を効果的に防止することができる。
【0045】
なお、上記加振手段としては、加振部19をウェーハ下面に設置し、バネ等の手段ではね上げてウェーハ下面に衝突させるように構成したり、例えば弾性素材の小さな球体を用いて、ウェーハ13上に落下させたり、斜めに発射させてウェーハ13に当てるように構成したり、あるいは圧電アクチュエータ、ボイスコイル、超音波振動子などを用いて構成することも可能である。
【0046】
また、上記弾性素材12,22は、粘弾性を示す素材でもよく、例えばシリコンゴム、その他のゴム系素材やプラスチック系素材、あるいは液体やゲル状物質を袋などの中に充填したものなどで形成され、音響センサ15、支柱部材11、加振部19とウェーハ13との間に介在することで、音響センサ15及び支柱部材11との間の空気が介入するのを防止した状態でウェーハ13に対して密着させて対向配置する。
【0047】
即ち、ウェーハ13と空気では、音響インピーダンスが大きく異なるため、音響センサ15とウェーハ13との間に空気が存在すると、ウェーハ13に発生した音響信号が、音響センサ15に効率よく伝わらず、測定効率が低下するが、音響センサ15とウェーハ13との間に弾性素材12が存在されることで、ウェーハ13との間に空気が進入せず、直接的に密着された状態となる。この結果、音響インピーダンスの不整合を抑制することができ、反射を抑えて高感度な性能が得られると共に、所望の対雑音性が得られて周囲の雑音の影響を受けることがなくなり、振動を効率よく電圧信号に変換することが可能となる。
【0048】
また、ウェーハ13を、
図4に示すように弾性素材12を介在させて支柱部材11と音響センサ15で挟み込んで保持していることにより、上述したように効率よく振動を電気信号に変換可能なので、ウェーハ13を挟み込む力を比較的弱くすることが可能となる。この結果、クラック検出時、ウェーハ13に与えるストレスを小さく抑えることができ、信頼性の高いクラック検出ができる。この支柱部材11及び音響センサ15とウェーハ13との間に介在される弾性素材12は、例えば支柱部材11及び音響センサ15の各端部にそれぞれ被着されて設けられる。
【0049】
そして、加振部19に設けた弾性素材22は、ウェーハ13の面に落下されて衝突した際、その材質により高調波成分の発生を防止して、音響センサ15による測定精度を高める働きと、衝突時におけるウェーハ13の損傷等を防止する働きを奏する。
【0050】
ここで、音響センサ15は、例えばAEセンサ(圧電素子による超音波センサ)が用いられ、その他、弾性素材12が介在された状態で接触可能な動電型、静電型、圧電型、ストレインゲージ等が有効である。この結果、音響センサ15は、弾性素材12を介してウェーハ13に密着され、相互間に空気が存在しないことで、上述したように高感度な性能が確保され、しかも、所望の対雑音性が得られて周囲の雑音の影響を受けにくくなり、高精度な測定が実現される。さらに、音響センサの共振周波数が、クラックの存在を示す周波数領域に近いものを使用すれば、より高感度でかつ対雑音性に優れた結果を得ることができる。
【0051】
上記音響センサ15は、その出力が、例えば増幅部23を介して信号処理手段を構成する信号処理部24に接続され、上記加振部19をウェーハ13上に落下させて衝撃を与えた状態で、ウェーハ13に伝わる振動波形に基づく電圧信号1を増幅部23に出力する。この増幅部23は、入力した電圧信号1を増幅して電圧信号2を生成して信号処理部24に出力する。
【0052】
信号処理部24は、音響センサ15の性能やウェーハ13の種類に応じて例えばハイパスフィルタやバンドパスフィルタを用いてカットオフ周波数が設定される。即ち、ウェーハ13は、共振により共振周波数のような主に低い周波数(主に可聴周波数)のみが発生するが、クラックが存在すると、共振周波数よりも高い周波数(主に超音波)が発生することが知られている。そこで、信号処理部24は、ハイパスフィルタのカットオフ周波数をウェーハの共振周波数よりも高い周波数(主に超音波)、例えば約1kHz〜10MHz程度に設定される。もしくは、ウェーハのクラックにより特徴的に発生する周波数成分を、バンドパスフィルタで抽出するようなことも可能である。
【0053】
信号処理部24は、入力した電圧信号2から共振周波数よりも高い周波数を抽出した電圧信号3を、判定手段を構成する判定部25に出力する。判定部25は、入力した電圧信号3の時間領域波形の予め定めた時間内において、予め定めた電圧閾値、
図5や
図6において例えば電圧±10を越えるポイント数をカウントし、そのポイント数が予め設定した閾値、例えば20回以上越えたか否かを判定し、
図5に示すように閾値を越えない場合、クラック無し、と判定し、
図6に示すように閾値を越える場合、クラック有り、と判定する。
【0054】
上記クラック検出に供するウェーハ13としては、シリコンウェーハ、太陽電池を構成する半導体の生成された太陽電池ウェーハ、半導体の生成された半導体ウェーハ、或いは、SiC、GaN等の化合物半導体ウェーハのいずれにも有効である。
【0055】
次に、ウェーハ13のクラック検出手順について説明する。
【0056】
先ず、ウェーハ保持ステップでは、ウェーハ13を支柱部材11の弾性素材12上に載置すると共に、その周囲を複数の位置決めピン14に当接させ、音響センサ15を、移動機構28、支持アーム17を操作して支柱部材11に対向させて、弾性素材12を介在させてウェーハ13の上面に当接させて密着させる。ここで、音響センサ15及び支柱部材11は、弾性素材12が介在されてウェーハ13の両面を挟んで相互間に空気の進入が阻止された状態で対向配置され、ウェーハ13を位置決め保持する。
【0057】
そして、加振ステップでは、加振部19が上述したようにウェーハ13上の音響センサ15よりも端側に対向され、この加振部19を上述したように所定の高さに持ち上げて、ウェーハ13上に落下させて、その先端の弾性素材22から衝突させて加振する。このウェーハ13を加振した状態で、判定ステップに移行される。
【0058】
この判定ステップでは、音響センサ15がウェーハ13に伝わる振動波形に基づく電圧信号1を検出して増幅部23に出力し、この増幅部23において入力した電圧信号1が増幅されて電圧信号2が生成され、この電圧信号2が信号処理部24に入力される。信号処理部24は、入力した電圧信号2からウェーハ13の共振周波数よりも高い周波数の電圧信号3が抽出されて判定部25に出力される。この判定部25は、入力した電圧信号3に基づいて上述したようにウェーハ13のクラックの有無が検出され、このクラックの有無に応じてウェーハ13の良否が判定される。
【0059】
上記ウェーハのクラック検出装置を用いてクラック検出が行われたウェーハ13は、半導体が生成されて、配線やパッケージング等が施され、太陽電池或いは半導体素子が形成される。これにより、良好なウェーハ13のみを用いて太陽電池或いは半導体素子を製造することが可能となるため、製造した太陽電池或いは半導体素子の歩留まりを向上することができる。
【0060】
また、上記ウェーハのクラック検出方法によりクラック検出の行われたウェーハ13は、半導体が生成された後、配線やパッケージング等が施されて太陽電池或いは半導体素子が形成される。これにより、良好なウェーハ13のみを用いて太陽電池或いは半導体素子を製造することが可能となるため、製造した太陽電池或いは半導体素子の歩留まりを向上することができる。
【0061】
また、上記ウェーハのクラック検出装置によりクラック検出が行われたウェーハ13は、太陽電池或いは半導体素子の製造装置を用いて半導体が生成されて、配線やパッケージング等が施されて太陽電池或いは半導体素子が製造される。これにより、良好なウェーハ13のみを用いて太陽電池或いは半導体素子を製造することが可能となるため、太陽電池或いは半導体素子の製造における歩留まりの向上を図ることができる。
【0062】
また、上記ウェーハのクラック検出方法による手順でクラック検出が行われたウェーハ13は、太陽電池或いは半導体素子の製造方法を用いて半導体が生成された後、配線やパッケージング等が施されて太陽電池或いは半導体素子が製造される。これにより、良好なウェーハ13のみを用いて太陽電池或いは半導体素子を製造することが可能となるため、太陽電池或いは半導体素子の製造における歩留まりの向上を図ることができる。
【0063】
なお、上記実施の形態では、増幅部23を信号処理部24と別体に配置するように構成した場合について説明したが、これに限ることなく、その他、音響センサ15の出力が信号処理に必要な所望の出力電圧を有する場合や、信号処理部24に増幅機能を備えるように構成した場合には、増幅器23を、別体に設けることなく構成することも可能で、同様に有効な効果が期待される。
【0064】
また、上記実施の形態では、電圧信号を用いて電圧閾値を超える回数によってウェーハ13の良否を判定するように構成した場合について説明したが、これに限ることなく、その他、例えばフーリエ変換等により周波数解析を実行して、その周波数成分に基づきウェーハ13の良否を判定するように構成することも可能である。
【0065】
そして、電圧閾値を超える回数以外に平均値検波や実効値検波を行い、所定の時定数で平滑化した結果、あるいはピークホールド等の結果を用いて、その大きさで良否の判定を行い、あるいはこれらの積分値が一定以上となった状態で不良を判定するように構成することも可能である。
【0066】
さらに、この発明は、上記実施の形態に限ることなく、例えば
図7に示すようにベース10に一対の音響センサ151,151を対向配置して、この一対の音響センサ151,151でウェーハ13を挟み込んで位置決め保持してクラック検出を行うように構成することも可能である。但し、この
図7の説明においては、便宜上、上記
図1乃至
図4と同一部分について、同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0067】
即ち、この実施の形態では、一対の音響センサ151,151の一方が、その弾性素材12が被着された先端部を上にしてベース10上に立設する如く設けられる。そして、音響センサ151,151の他方は、同様に対向配置される先端部に弾性素材12が被着され、その弾性素材12を下に向けた状態で、上記支持アーム14を介して他方に対応して移動自在に設けられる。
【0068】
この音響センサ151,151は、その一方の弾性素材12上にウェーハ13の一方の面が載置され、このウェーハ13の他方の面に対して該音響センサ151,151の他方が移動調整されて、その弾性素材12が密着されることにより、双方で該ウェーハ13を挟み込んで位置決め保持する。この状態で、ウェーハ13は、上述したように加振部19を用いて加振され、例えば双方の音響センサ151,151でウェーハ13に伝わる振動波形に基づく電圧信号を測定し、同様にクラック検出が行われる。
【0069】
そして、この実施の形態においては、例えば音響センサ151,151の一方で電圧信号の測定が困難な状態でもウェーハ13の不良を判定することも可能となり、検出の多様化が図れることで、さらに良好な効果が期待される。または、音響センサ151,151出力のいずれか一方、もしくは両方に基づいて判定を行うことにより、判定の信頼性を向上させることも可能である。
【0070】
また、この発明は、
図8に示すように、弾性素材12を被着した音響センサ152をベース10上に立設する如く設け、真空吸着パッド26を用いてウェーハ13の中心部位が音響センサ152上に位置するように搬送し、真空吸着パッド26と音響センサ152を対向して当接させることによってウェーハ13を位置決め保持するように構成してもよい。ここで真空吸着パッド26先端のウェーハ13に接する部位にも弾性素材12が設けられており、他の実施形態と同様の効果を奏している。
【0071】
特に半導体が形成されたウェーハにあっては、下記に説明される更に他の実施の形態のように半導体ウェーハが保持され、加振されることが好ましい。
【0072】
ウェーハ13は、その表面側に半導体が微細プロセスで作り込まれている。従って、このようなウェーハ13の表面側13Aは、
図9に斜線で示すような半導体が形成され、損傷を受けやすい半導体形成領域13−1及びこの半導体形成領域13−1を囲む周辺の半導体が正常に形成されない周辺領域13−2を有するように製造される。この表面13Aの側の半導体形成領域13−1にあっては、支柱部材11、音響センサ15或いは加振部19が弾性素材12、22を介してであっても接触することは好ましくなく、ウェーハ13の表面側においては、弾性素材12、22を介してその周辺領域13−2のみが接触されるように支柱部材11、音響センサ15或いは加振部19が配置されることが好ましい。また、ウェーハ13の裏面13Bの側は、半導体基板そのもの或いはこの半導体基板に層構造が形成されるのみであることから、損傷を受ける虞がなく、表面13Aの側に代えて裏面13Bの側が支柱部材11、音響センサ15或いは加振部19が弾性素材12、22を介して接触させても良い。更に、ウェーハ13の側端面も周辺領域13−2に連接される領域であり、同様に支柱部材11或いは音響センサ15を弾性素材12、22を介して接触させて保持しても良い。
【0073】
このようなウェーハ13の構造上の特性を前提とした種々の実施の形態について
図10から
図16(a)及び(b)を参照して以下に説明する。ここで、
図10から
図16(a)及び(b)に示す弾性素材12、22、支柱部材11、音響センサ15或いは加振部19は、
図1に示すウェーハのクラック検出装置に備えられることを前提としていることから、その装置の詳細は既に述べた実施の形態を参照されたい。また、以下の実施の形態及び
図10から
図16(a)及び(b)においては、既に述べた実施の形態で用いたと同一に符号を用い、その詳細な説明を省略することから、その詳細に関しては、同様に既に述べた実施の形態を参照されたい。
【0074】
図10に示される実施の形態では、ウェーハ13は、その裏面13B側が弾性素材12を介して音響センサ15に接触するように音響センサ15上に載置され、その表面13Aの側の周辺領域13−2が弾性素材12を介して支柱部材11に接触されてウェーハ13に適度な支持圧が付されて移動不能に支持されている。そして、このウェーハ13には、その裏面13Bの側に配置された加振部19(図示せず)から矢印で示すように上方に向けて加振圧が与えられてウェーハ13に振動が与えられる。このウェーハ13の加振によって既に説明したと同様にウェーハ13のクラックの有無が検出される。
【0075】
尚、
図10における支持構造においては、支柱部材11からウェーハ13に与えられる支持圧はウェーハ13自体に生じているクラックを拡大しないように最適な支持圧に調整されることが好ましい。また、加振部19は、ウェーハ13の裏面13Bの側から加振することから、加振部19の落下による加振を採用することはできず、バネ等の手段によって加振部19を衝突させる等の構造或いは既に述べた圧電アクチュエータ等の電気機械的な加振素子で構成することができる。更に、
図10における支持構造においては、ウェーハ13の自重のみで音響センサ15がウェーハ13を支持することが可能で、加振がウェーハ13の移動を生じさせない場合には、支柱部材11が設けられなくとも良い。この構造では、外部からの振動でウェーハ13が音響センサ15から外れて落下する虞があることから、
図1に示す位置決めピン14が設けられ、ウェーハ13の音響センサ15上での移動が阻止されることが好ましい。更に、位置決めピン14と共に或いは位置決めピン14に代えて、ウェーハ13のずれ或いは傾きを防止する為に、ウェーハ13の側面或いは裏面に非接触のストッパーを設けても良い。
【0076】
図10に示された保持加振構造では、音響センサ15がウェーハ13の裏面13B側の中央領域に配置されているが、
図11に示されるように支柱部材11に対向するように音響センサ15が配置されてもよい。この
図11における保持加振構造では、一例として3つの音響センサ15上に弾性素材12を介してウェーハ13が載置され、この3つの音響センサ15の端面に対向するように支柱部材11が弾性素材12を介してウェーハ13に接触され、このウェーハ13を3点支持するように音響センサ15及び支柱部材11が配置される。この配置構造においてもウェーハ13に与えられる保持力(支持力)は、好ましくは、加振の際にあってもウェーハ13中に生じているクラックを拡大しないように調整されている。この観点から音響センサ15及び支柱部材11がウェーハ13を支持する端面は、略同型同面積に形成されていることが好ましい。
【0077】
尚、
図11に示される保持加振構造では、複数の音響センサ15にウェーハ13が載置されているが、少なくとも1つの音響センサ15及び音響センサ15に代えた音響センサ15と略同型の載置用の支持体(図示せず)がウェーハ13の下方に配置され、ウェーハ13が少なくとも1つの音響センサ15及びこの載置用の支持体(図示せず)に弾性素材12を介して載置されても良い。音響センサ15は、ウェーハ13のクラック検出に最適な数が最適に位置に配置されることが好ましい。また、
図11に示される保持加振構造では、ウェーハ13の下方からウェーハ13を加振することによって既に説明したと同様にウェーハ13のクラックの有無が検出される。更に、
図11における支持構造においても、ウェーハ13の自重のみで音響センサ15がウェーハ13を支持することが可能で、加振がウェーハ13の移動を生じさせない場合には、表面13A側の支柱部材11が設けられなくとも良い。この構造では、外部からの振動でウェーハ13が音響センサ15から外れて落下する虞があることから、同様に
図1に示す位置決めピン14が設けられ、ウェーハ13の音響センサ15上での移動が阻止されることが好ましい。更に、位置決めピン14と共に或いは位置決めピン14に代えて、ウェーハ13のずれ或いは傾きを防止する為に、ウェーハ13の側面或いは裏面に非接触のストッパーを同様に設けても良い。
【0078】
図10及び
図11においては、ウェーハ13を保持(支持)する支柱部材11がウェーハ表面13Aの側の周辺領域13−2に弾性素材12を介して接触され、音響センサ15がウェーハ裏面13Bの周辺領域に配置されているが、
図12に示すようにウェーハ13の側端面13Cが対向する音響センサ15に弾性素材12を介して圧接され、対向する音響センサ15間に支持されても良い。
図12に示される圧接支持構造にあっては、対向する音響センサ15でウェーハ13を支持するに代えて、例えば3つの音響センサ15がウェーハ13の側端面13Cの周囲3点で弾性素材12を介して接触され、ウェーハ13を圧接支持しても良い。
【0079】
図12の保持構造(支持構造)では、音響センサ15の端部は、平坦に形成され、この平坦部に設けた平坦な弾性素材12でウェーハ13を圧接支持しているが、
図13に示されるように音響センサ15の端部がウェーハ13の側端を受け入れ可能な凹部に形成され、この凹部内に設けた弾性素材12の弾性層で
図12と同様にウェーハ13を圧接支持しても良い。また、
図14に示されるように音響センサ15の端部には、ウェーハ13の裏面13Bの周辺及びその側端を接触支持可能なように段部(ステップ)に形成され、この段部(ステップ)内に設けた弾性素材12のL字型の弾性層で音響センサ15が
図12と同様にウェーハ13を圧接支持しても良い。
【0080】
図12から
図14に示す保持構造(支持構造)の説明では、加振に関しての説明を省略しているが、既に
図10を参照して説明したように下方から加振すれば、既に説明したと同様に音響センサ15で音響振動が検出されてウェーハ13のクラックの有無が検出される。
【0081】
尚、
図12から
図14に示す保持構造(支持構造)では、少なくとも1つの音響センサ15及び音響センサ15に代えた支持部11でウェーハ13が保持され、1つの音響センサ15で音響振動が検出されてウェーハ13のクラックの有無が検出されても良い。ここで、
図9に示すような円盤形状を有し、その一部が直線的に切欠された切欠部13Dを有するウェーハ13にあっては、この切欠部13Dの直線状端部に少なくとも1つの音響センサ15が音響振動検出の為に接触されることが好ましい。また、
図12から
図14に示す保持構造(支持構造)おいて、全ての音響センサ15に代えた支持部11でウェーハ13が保持され、別途ウェーハ13の振動を検出する音響センサ15が
図10或いは
図11と同様に配置されてこの独立に設けられた音響センサ15で音響振動が検出されてウェーハ13のクラックの有無が検出されても良い。
【0082】
図10〜
図14の保持加振構造では、ウェーハ13の表面13Aの側が上方に向けられていることを前提としているが、ウェーハ13の裏面13Bの側が上方に向けられ、回路素子が形成されているウェーハ13の表面13Aの側が下方に向けられても良い。そして、このウェーハ13の裏面13Bの側(ウェーハ13の上方側)からウェーハ13が加振部19によって加振され、ウェーハ13の側端に設けた音響センサ15から音響振動が検出されても良い。
【0083】
また、
図15に示すように、ウェーハ13の側端が一例として3つの支持部材41で3点支持され、ウェーハ13の裏面13Bの側(ウェーハ13の上方側)からウェーハ13が加振部19によって加振され、音響振動が検出されても良い。ウェーハ13の裏面13Bの側(ウェーハ13の上方側)からウェーハ13が加振される場合には、
図1を参照して説明したように加振部19が落下されてウェーハ13を加振させることができる。
【0084】
更に他の実施の形態として
図16(a)及び(b)に示すように音響センサ15の上部に支持材31が追加され、この支持材31上にウェーハ13が載置されても良い。
図16に示す保持構造では、支持材31は、一例としてリング状の保持接触部31Aを有し、このリング状の保持接触部31Aが支柱部31Bで支持されて音響センサ15の上部に固定されている。ウェーハ13の裏面13Bが保持接触部31Aに接触された状態でウェーハ13の裏面13Bの側からウェーハ13が加振される。ウェーハ13が保持接触部31A上から移動しないように加振圧が調整されて加振部19(図示せず)からウェーハ13に加振圧が与えられることが好ましい。この加振によってウェーハ13に生ずる音響振動は、支持材31を介して音響センサ15に伝達されて音響振動がこの音響センサ15で検出される。
図16(a)及び(b)に示す支持材31の保持接触部31Aは、リング状に限らず他の形状、例えば、矩形状或いは凹面状であってもよく、また、支持材31が保持接触部31Aを備えず、複数の支持材31の延出端が自由端に形成され、この複数の自由端上にウェーハ13が載置されても良い。支柱材11が細い場合は、少なくとも3本の支持材31が用意されることによってこの3本の支持材31の自由端でウェーハ13を支持することができる。支持材31は、ウェーハ13を3点支持する為の3本に限らず、3本以上であれば、安定してウェーハ13を支持することができる。
【0085】
図1から
図16の説明において、弾性素材12、22が支柱部材11或いは音響センサ15とウェーハ13との間に設けられる例について説明したが、ウェーハ13の裏面13B側あるいは周辺領域13−2部分に多少の傷等が生じても支障がない場合には、この弾性素材12、22は、省略されても良い。音響センサ15及びウェーハ13が共に十分な平坦性を有し、これらの間にほとんど空気層を有すること無く密着していれば、ウェーハ13に発生した音響信号は十分に効率よく音響センサ15に伝わるので、振動を効率よく電圧信号に変換することが可能である。
【0086】
よって、この発明は、上記実施の形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記実施の形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得る。
【0087】
例えば実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。