(54)【発明の名称】カーボンナノファイバーを用いた電極用多孔質体、電極、電池、キャパシタ、水処理装置、油田装置用の耐熱筐体、油田装置及び電極用多孔質体の製造方法
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、文部科学省、地域卓越研究者戦略的結集プログラム(エキゾチック・ナノカーボンの創生と応用)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数のカーボンナノファイバーが接合物質によって互いに接合した三次元的な網状構造を形成し、該網状構造を形成するカーボンナノファイバーと接合物質によって接合した活性炭を有し、
前記接合物質は、エラストマーの炭化物である、電極用多孔質体。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
本発明の一実施の形態にかかる電極用多孔質体は、複数のカーボンナノファイバーが接合物質によって互いに接合した三次元的な網状構造を形成し、該網状構造を形成するカーボンナノファイバーと接合物質によって接合した活性炭を有
し、前記接合物質は、エラストマーの炭化物である。
【0025】
本発明の一実施の形態にかかる電極は、前記電極用多孔質体によって形成される。
【0026】
本発明の一実施の形態にかかる電極は、前記電極用多孔質体が導電性部材に電気的に接触して形成される。
【0027】
本発明の一実施の形態にかかる電池は、正極及び負極の少なくとも一方が前記電極からなる。
【0028】
本発明の一実施の形態にかかるキャパシタは、正極及び負極の少なくとも一方が前記電極からなる。
【0029】
本発明の一実施の形態にかかる水処理装置は、前記キャパシタであって、処理前の水を供給する供給口と、処理後の水を取り出す取出口と、前記供給口と前記取出口との間にある流路と、を含み、前記正極及び前記負極は、前記流路を挟んで離間配置されることができる。
【0030】
本発明の一実施の形態にかかる油田装置
用の耐熱筐体は、前記電池を備える。
【0031】
本発明の一実施の形態にかかる
油田装置用の耐熱筐体は、前記キャパシタを備える。
【0032】
本発明の一実施の形態にかかる電極用多孔質体の製造方法は、エラストマーに複数のカーボンナノファイバーと活性炭とを混合し、かつ剪断力によって分散させて複合エラストマーを得る工程(a)と、熱処理炉内において、前記工程(a)で得られた前記複合エラストマーを熱処理し、複合エラストマー中のエラストマーを分解気化させ、複数のカーボンナノファイバーが接合物質によって互いに接合した三次元的な網状構造を形成し、かつ、該網状構造を形成するカーボンナノファイバーが接合物質によって活性炭と接合した電極用多孔質体を得る工程(b)と、を含み
、前記接合物質は、エラストマーの炭化物である。
【0033】
図1は、一実施の形態にかかる電極用多孔質体の構造を示す拡大斜視図である。
図2は、一実施の形態にかかる電極用多孔質体の構造を示す拡大斜視図である。
図3は、一実施の形態にかかる電極用多孔質体の構造を示す拡大斜視図である。
図4は、一実施の形態にかかる電極用多孔質体の構造を示す拡大斜視図である。
【0034】
図1〜
図4における電極用多孔質体41a、41b、41c、41dは、繊維状に描かれた複数のカーボンナノファイバー40a、40bが図示しない接合物質によって互いに接合して三次元的な網状構造を形成している。そして、この三次元的な網状構造を形成するカーボンナノファイバー40a、40bと図示しない接合物質によって接合した活性炭42a、42bが粒子状に描かれている。
【0035】
図1に示す電極用多孔質体41aは、
図3、4におけるカーボンナノファイバー40bに比べて細い直径を有するカーボンナノファイバー40aと、
図2,4における活性炭42bに比べて大きな粒径を有する活性炭42aを用いている。
【0036】
図2に示す電極用多孔質体41bは、
図3、4におけるカーボンナノファイバー40bに比べて細い直径を有するカーボンナノファイバー40aと、
図1、3における活性炭42aに比べて小さな粒径を有する活性炭42bを用いている。
【0037】
図3に示す電極用多孔質体41cは、
図1、2におけるカーボンナノファイバー40aに比べて太い直径を有するカーボンナノファイバー40bと、
図2,4における活性炭42bに比べて大きな粒径を有する活性炭42aを用いている。
【0038】
図4に示す電極用多孔質体41dは、
図1、2におけるカーボンナノファイバー40aに比べて太い直径を有するカーボンナノファイバー40bと、
図1、3における活性炭42aに比べて小さな粒径を有する活性炭42bを用いている。
【0039】
カーボンナノファイバー40a、40b及び活性炭42a、42bは、隣り合うカーボンナノファイバー40a、40bまたは活性炭42a、42bに対し部分的に接合物質によって接合され、多孔質体としての形態を維持することができる。活性炭42a、42bの周囲にはカーボンナノファイバー40a、40bが三次元的な網状構造を形成するため、多数のナノサイズの空隙(気孔)46が形成され、活性炭の表面を有効に利用することができる。
【0040】
カーボンナノファイバー40a、40bは、平均直径が0.5nm以上500nm以下であることができ、さらに平均直径が4nm以上250nm以下であることができ、特に平均直径が9nm以上100nm以下であることができる。
図1、2に示したカーボンナノファイバー40aは、例えば、平均直径が4nm以上20nm以下であることができ、特に、平均直径が9nm以上15nm以下であることができる。また、
図3,4に示したカーボンナノファイバー40bは、例えば、平均直径が70nm以上250nm以下であることができ、特に、平均直径が70nm以上100nm以下であることができる。カーボンナノファイバーの配合量にも大きく依存するが、カーボンナノファイバーの平均直径を変更することで三次元的な網状構造における空隙の大きさを制御することができると考えられる。すなわち、カーボンナノファイバーの平均直径が太くなると空隙が大きくなり、カーボンナノファイバーの平均直径が細くなると空隙は小さくなる傾向がある。空隙が小さくなりすぎると、多孔質体中に保持できる活性炭の量が少なくなる傾向がある。また、カーボンナノファイバーは細いほど価格が高くなる傾向があり、加工性も低下する。したがって、カーボンナノファイバーの平均直径が0.5nm以上であると経済的で加工性も向上することができ、500nm以下であると空隙に活性炭を保持し易く、水処理装置に用いた場合には比較的大きな物質やエマルジョンを除去しやすくなる。カーボンナノファイバーの平均直径は、繊維の外径である。カーボンナノファイバーは、ストレート繊維状、あるいは湾曲繊維状であることができる。カーボンナノファイバーの平均直径は、電子顕微鏡による例えば5,000倍の撮像(カーボンナノファイバーのサイズによって適宜倍率は変更できる)から200箇所以上の直径を計測し、その算術平均値として計算して得ることができる。
【0041】
カーボンナノファイバーとしては、例えば、いわゆるカーボンナノチューブなどが例示できる。カーボンナノチューブは、炭素六角網面のグラファイトの1枚面を1層に巻いた単層カーボンナノチューブ(シングルウォールカーボンナノチューブ:SWNT)、2層に巻いた2層カーボンナノチューブ(ダブルウォールカーボンナノチューブ:DWNT)、3層以上に巻いた多層カーボンナノチューブ(MWNT:マルチウォールカーボンナノチューブ)などが適宜用いられる。また、部分的にカーボンナノチューブの構造を有する炭素材料も使用することができる。なお、カーボンナノチューブという名称の他にグラファイトフィブリルナノチューブや気相成長炭素繊維といった名称で称されることもある。
【0042】
単層カーボンナノチューブもしくは多層カーボンナノチューブは、アーク放電法、レーザーアブレーション法、気相成長法などによって望ましいサイズに製造される。なお、カーボンナノファイバーは、エラストマーと混練される前に、あらかじめ表面処理、例えば、イオン注入処理、スパッタエッチング処理、プラズマ処理などを行うことによって、エラストマーとの接着性やぬれ性を改善することができる。
【0043】
活性炭42a、42bは、ヤシ殻やセルロース等の植物質、フェノール樹脂やポリアクリロニトリル(PAN)等の樹脂質、及び石油ピッチや石炭質等の石油質などの炭素質原料を炭化・賦活して得られた一般的な活性炭、ポリ塩化ビニリデン系樹脂(PVDC系樹脂)やポリ塩化ビニル系樹脂(PVC系樹脂)等を炭化・賦活して得られた活性炭などから適宜選択して含むことができる。活性炭42a、42bの形態は、特に限定されないが、粉末や顆粒などであることが、炭化・賦活を円滑に行う上でもカーボンナノファイバーと円滑に混合する上でも望ましい。活性炭42a、42bのBET法による窒素吸着比表面積は、例えば、500m
2/g以上5000m
2/g以下であることができ、さらに800m
2/g以上3000m
2/g以下であることができ、特に1000m
2/g以上2000m
2/g以下であることができ、る。粉末や顆粒の活性炭42a、42bは、顕微鏡観察して測定してその算術平均地として計算した平均粒径が0.5μm以上5mm以下であることができるが、後述するエラストマーとの混合工程において粉砕されることで粒径は小さくなり、例えば平均粒径が0.3μm以上300μm以下になる傾向がある。
図1、3に示した活性炭42aは、例えば、平均粒径が1.0μm以上300μm以下であることができ、
図2、4に示した活性炭42bは、例えば、平均粒径が0.3μm以上300μm以下であることができる。
【0044】
接合物質は、後述するように、カーボンナノファイバー40a、40bを解繊して分散するために用いられ
たエラストマーが炭化した炭素系物質であ
る。
【0045】
空隙46は、カーボンナノファイバー40a、40bを解繊して分散するために用いられた高分子物質、例えばエラストマーを分解気化することで形成され、繊維物質であるカーボンナノファイバーの間に多数形成されている。これらの空隙の中に活性炭42a、42bを配置することもできるし、あるいは空隙よりも大きな活性炭42a、42bを用いる場合にはカーボンナノファイバーと活性炭との間に空隙を形成することができる。空隙46は、電子顕微鏡観察して測定した平均直径が1nm以上5μm以下であることができ、さらに5nm以上1μm以下であることができ、特に10nm以上500nm以下であることができる。空隙46の平均直径は、カーボンナノファイバーの平均直径や配合量などによって変わるが、例えば平均直径が約100nmのカーボンナノファイバーを用いた場合には50nm以上1μm以下であることができ、平均直径が約10nmのカーボンナノファイバーを用いた場合には5nm以上500nm以下であることができる。
【0046】
電極用多孔質体41a、41b、41c、41dは、カーボンナノファイバー40a、40bの他に、導電性物質を含んでいてもよく、これら導電性物質も隣接するカーボンナノファイバー40a、40bや活性炭42a、42bに対して接合物質によって部分的に接合することができる。導電性物質としては、金属、黒鉛、カーボンブラック、カーボンウィスカー、フラーレン及び炭素繊維などを挙げることができる。電極用多孔質体41a、41b、41c、41dは、そのまま電極として形成することができ、また、金属基板のような導電性部材に接合して電極を形成することができる。
【0047】
本発明の一実施の形態にかかる電極用多孔質体の製造方法は、エラストマーに複数のカーボンナノファイバーと活性炭とを混合し、かつ剪断力によって分散させて複合エラスト
マーを得る工程(a)と、熱処理炉内において、前記工程(a)で得られた前記複合エラストマーを熱処理し、複合エラストマー中のエラストマーを分解気化させ、複数のカーボンナノファイバーが接合物質によって互いに接合した三次元的な網状構造を形成し、かつ、該網状構造を形成するカーボンナノファイバーが接合物質によって活性炭と接合した電極用多孔質体を得る工程(b)と、を含
み、前記接合物質は、エラストマーの炭化物である。
【0048】
図5〜
図7は、工程(a)におけるオープンロール法による複合エラストマーの製造方法を模式的に示す図である。
図8は、導電性部材に複合エラストマーを圧着する工程を説明する概略構成図である。
図9は、工程(b)を説明する概略構成図である。
【0049】
工程(a)は、例えば、
図5〜
図7に示すようにオープンロールを用いて行うことができる。2本ロールのオープンロール2における第1のロール10と第2のロール20とは、所定の間隔d、例えば0.5mm〜1.5mmの間隔で配置され、矢印で示す方向に回転速度V1,V2で正転あるいは逆転で回転する。
【0050】
まず、
図5に示すように、第1のロール10に巻き付けられたエラストマー30の素練りを行ない、エラストマー分子鎖を適度に切断してフリーラジカルを生成する。素練りによって生成されたエラストマーのフリーラジカルがカーボンナノファイバーと結びつきやすい状態となる。
【0051】
次に、
図6に示すように、第1のロール10に巻き付けられたエラストマー30のバンク34に、複数のカーボンナノファイバー及び活性炭を含む配合剤80を投入し、混練して混合物36を得ることができる。工程(a)は、オープンロール法に限定されず、例えば密閉式混練法あるいは多軸押出し混練法を用いることもできる。また、配合剤80には、カーボンナノファイバー及び活性炭以外に、他の導電性物質などを含むことができる。
【0052】
さらに、
図7に示すように、第1のロール10と第2のロール20とのロール間隔dを、例えば0.5mm以下、より好ましくは0〜0.5mmの間隔に設定し、
図6で得られた混合物36をオープンロール2に投入して薄通しを1回〜複数回行なう。薄通しの回数は、例えば1回〜10回程度行なうことができる。第1のロール10の表面速度をV1、第2のロール20の表面速度をV2とすると、薄通しにおける両者の表面速度比(V1/V2)は、1.05〜3.00であることができ、さらに1.05〜1.2であることが好ましい。このような表面速度比を用いることにより、所望の剪断力を得ることができる。このように狭いロール間から押し出された複合エラストマー50は、さらにエラストマー30の弾性による復元力で
図7のように大きく変形し、その際にエラストマー30と共にカーボンナノファイバーが大きく移動する。薄通しして得られた複合エラストマー50は、ロールで圧延されて所定厚さ、例えば100μm〜500μmのシート状に分出しされる。シートの厚さが100μm〜200μmであれば、そのまま工程(b)に用いることができる。また、シートの厚さが200μmを超えて500μm以下であれば、プレス機によってシートの厚さが100μm〜200μmになるように圧縮成形することができる。この薄通しの工程では、できるだけ高い剪断力を得るために、ロール温度を例えば0〜50℃に設定して行うことができ、さらに5〜30℃の比較的低い温度に設定して行うことができる。エラストマー30の実測温度も0〜50℃に調整されることができ、さらに5〜30℃調整されることができる。このような温度範囲に調整することによって、エラストマー30の弾性を利用してカーボンナノファイバーを分散することができる。このようにして得られた剪断力により、エラストマー30に高い剪断力が作用し、凝集していたカーボンナノファイバーがエラストマー分子に1本ずつ引き抜かれるように相互に分離し、エラストマー30中に分散される。特に、エラストマー30は、弾性と、粘性と、カーボンナノファイバーとの化学的相互作用と、を有するため、カーボンナノファイバーを容易に分散することができる。そして、カーボンナノファイバーの分散性および分散安定性(カーボンナノファイバーが再凝集しにくいこと)に優れた複合エラストマー50を得ることができる。
【0053】
より具体的には、オープンロールでエラストマーとカーボンナノファイバーとを混合すると、粘性を有するエラストマーがカーボンナノファイバーの相互に侵入し、かつ、エラストマーの特定の部分が化学的相互作用によってカーボンナノファイバーの活性の高い部分と結合する。カーボンナノファイバーの表面が例えば酸化処理によって適度に活性が高いと、特にエラストマー分子と結合し易くできる。次に、エラストマーに強い剪断力が作用すると、エラストマー分子の移動に伴ってカーボンナノファイバーも移動し、さらに剪断後の弾性によるエラストマーの復元力によって、凝集していたカーボンナノファイバーが分離されて、エラストマー中に分散されることになる。特に、オープンロール法は、ロール温度の管理だけでなく、混合物の実際の温度を測定し管理することができるため、好ましい。
【0054】
このようにして得られた複合エラストマーは、エラストマーと、該エラストマー中に均一に分散したカーボンナノファイバー及び活性炭を含み、カーボンナノファイバーによって囲まれたエラストマーの微細なセルを多数形成した構造を全体に有する。複合エラストマーは、カーボンナノファイバー以外に、さらに上述した他の導電性物質を適量含むことができる。また、複合エラストマーは、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって150℃、観測核が
1Hで測定した、無架橋体における、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は100〜3000μ秒であり、第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)は0〜0.2であることができる。複合エラストマーの150℃で測定したT2n及びfnnは、マトリックスであるエラストマーにカーボンナノファイバーが均一に分散されていることを表すことができる。つまり、エラストマーにカーボンナノファイバーが均一に分散されているということは、エラストマーがカーボンナノファイバーによって拘束されている状態であるともいえる。この状態では、カーボンナノファイバーによって拘束を受けたエラストマー分子の運動性は、カーボンナノファイバーの拘束を受けない場合に比べて小さくなる。そのため、複合エラストマーの第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)及びスピン−格子緩和時間(T1)は、カーボンナノファイバーを含まないエラストマー単体の場合より短くなり、特にカーボンナノファイバーが均一に分散することでより短くなる。また、エラストマー分子がカーボンナノファイバーによって拘束された状態では、以下の理由によって、非ネットワーク成分(非網目鎖成分)は減少すると考えられる。すなわち、カーボンナノファイバーによってエラストマーの分子運動性が全体的に低下すると、非ネットワーク成分は容易に運動できなくなる部分が増えて、ネットワーク成分と同等の挙動をしやすくなること、また、非ネットワーク成分(末端鎖)は動きやすいため、カーボンナノファイバーの活性点に吸着されやすくなること、などの理由によって、非ネットワーク成分は減少すると考えられる。そのため、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)を有する成分の成分分率(fnn)は、fn+fnn=1であるので、カーボンナノファイバーを含まないエラストマー単体の場合より小さくなる。したがって、複合エラストマーは、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって得られる測定値が上記の範囲にあることによってカーボンナノファイバーが均一に分散されていることがわかる。
【0055】
工程(a)に用いるエラストマーは、主鎖、側鎖および末端鎖の少なくともひとつに、カーボンナノファイバーの末端のラジカルに対して親和性を有する不飽和結合または基を有するか、もしくは、このようなラジカルまたは基を生成しやすい性質を有することができる。かかる不飽和結合または基としては、二重結合、三重結合、カルボニル基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、ニトリル基、ケトン基、アミド基、エポキシ基、エステル基、ビニル基、ハロゲン基、ウレタン基、ビューレット基、アロファネート基および尿素基などの官能基から選択される少なくともひとつであることができる。
【0056】
カーボンナノファイバーは、先端が5員環が導入されて閉じた構造となっているため、ラジカルや官能基を生成しやすくなっている。エラストマーの主鎖、側鎖および末端鎖の少なくともひとつに、カーボンナノファイバーのラジカルと親和性(反応性または極性)が高い不飽和結合や基を有することにより、エラストマーとカーボンナノファイバーとを結合することができる。このことにより、カーボンナノファイバーの凝集力にうち勝ってその分散を容易にすることができる。そして、エラストマーと、カーボンナノファイバーと、を混練する際に、エラストマーの分子鎖が切断されて生成したフリーラジカルは、カーボンナノファイバーの欠陥を攻撃し、カーボンナノファイバーの表面にラジカルを生成すると推測できる。
【0057】
エラストマーとしては、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPR,EPDM)、ブチルゴム(IIR)、クロロブチルゴム(CIIR)、アクリルゴム(ACM)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM)、ブタジエンゴム(BR)、エポキシ化ブタジエンゴム(EBR)、エピクロルヒドリンゴム(CO,CEO)、ウレタンゴム(U)、ポリスルフィドゴム(T)などのエラストマー類;オレフィン系(TPO)、ポリ塩化ビニル系(TPVC)、ポリエステル系(TPEE)、ポリウレタン系(TPU)、ポリアミド系(TPEA)、スチレン系(SBS)、などの熱可塑性エラストマー;およびこれらの混合物を用いることができる。エラストマーは、ゴム系エラストマーあるいは熱可塑性エラストマーのいずれであってもよい。また、ゴム系エラストマーの場合、エラストマーは未架橋体が好ましい。エラストマーに代えて、カーボンナノファイバーが均一に分散できる他の高分子物質を用いることもできる。
【0058】
図8に示すように、工程(a)で得られた複合エラストマー50を例えば薄板状の導電性部材54に圧着することができる。圧着する工程は、導電性部材54の表面に複合エラストマー50を載せて所定圧力で加圧する。工程(b)において複合エラストマー50を熱処理することで、導電性部材54の表面にカーボンナノファイバーが接合物質によって接合した状態で得られるため、複合エラストマー50と導電性部材54とを接着剤で接着しなくてもよい。また、導電性部材54としては、導電性を有する材質とすることができ、例えば、金属、炭素などを挙げることができる。導電性部材54に用いる金属としては、優れた導電性を有し耐食性に優れた金属とすることができ、例えばステンレス、チタン及びこれらの合金の中から適宜選択することができる。また、このように導電性部材54と一体化して用いない場合には、この工程を省略し、工程(b)においては複合エラストマー50を単体で熱処理することができる。
【0059】
図9に示すように、工程(b)は、熱処理炉60内において、圧着工程で得られた複合エラストマー50が圧着された導電性部材54を熱処理し、複合エラストマー50中のエラストマーを分解気化させ、導電性部材54の表面に接合物質によって接合した電極用多孔質体が形成された電極を得る。工程(a)で得られた複合エラストマー50中にはエラストマーがカーボンナノファイバーによって囲まれた微細なセル構造が形成されており、工程(b)によってエラストマーを分解気化させることによって、そのセル構造からエラストマーが除かれた微細な空隙が形成される。接合物質は、残留したエラストマーの炭化物である。
【0060】
熱処理炉60は、不活性ガスとして例えば窒素ガスの供給源62として窒素ガスボンベが開閉バルブ64を介して接続され、内部に窒素ガスを供給することができる。また、熱処理炉60は、開閉バルブ66を介して真空ポンプ68が接続され、内部のガスを排気することができるとともに、減圧雰囲気とすることができる。
【0061】
工程(b)について、さらに詳細に説明する。熱処理炉60は、内部を真空ポンプ68によって真空にした後、窒素ガスを供給源62から供給して大気圧と同じかそれより低い圧力の窒素雰囲気とする。そして、熱処理炉60は、内部をエラストマーの分解気化温度以上、例えばエラストマーが天然ゴム(NR)の場合、400℃の熱処理温度で加熱する。この熱処理によって、エラストマーは分解気化する。分解気化したエラストマーは、例えば分子量200以下であってC8の化学構造を有する炭素系物質となり、熱処理炉60内の雰囲気の一部を構成する。この炭素系物質のガスは、熱処理炉60内に供給される窒素ガスとともに熱処理炉60内から一部は排出され、一部はそのまま熱処理炉60内に残って雰囲気の一部を構成する。熱処理炉60内を降温させることで熱処理炉内に残った炭素系物質がカーボンナノファイバー40に付着して、カーボンナノファイバー40を互いに接合する炭素樹脂のような接合物質となる。なお、分解気化温度は、エラストマーが分解気化する温度であり、エラストマーの種類、熱処理炉内の雰囲気、圧力などによって異なるが、熱処理の温度は200〜500℃とすることができ、熱処理時間は10分〜3時間とすることができる。熱処理の温度が200℃以上であれば接合物質はタール状になりにくく、熱処理の温度が500℃以下であれば適度に接合物質が残るので多孔質の状態で形状を維持することができる。
【0062】
こうして得られた電極用多孔質体が形成された導電性部材54は、電極として利用することができる。また、導電性部材54と一体化していない電極用多孔質体はそのままで電極として使用することができる。三次元的な網状構造は、エラストマーが除去された部分が空隙となり、カーボンナノファイバーは分散した状態を維持したまま少量の接合物質によって部分的に接合される。
【0063】
カーボンナノファイバーを適度に接合させる程度に炭素系物質を熱処理炉60内に残留させ、滞留させるためには、工程(b)の間、熱処理炉60内から外部への排気量及び熱処理炉60内への給気量を制御することによって調整することができる。接合物質の量を多くしたい場合には排気量を少なくし、接合物質の量を少なくしたい場合には排気量を多くする。
【0064】
このように、接合物質の量を制御する方法は、熱処理炉60内の排気量・供給量の制御の他、上述のような熱処理温度や熱処理時間でも制御することができる。例えば、熱処理温度がエラストマーが分解気化する温度よりも十分に高ければ、エラストマーは短時間で分解気化し、接合物質の量が少なくなる。その反対に、熱処理温度がエラストマーの分解気化し始める温度に近ければ、接合物質の量が多くなる。熱処理時間は、熱処理温度にも依存する。短時間で熱処理を行なうということは、短時間でエラストマーを分解気化させることになり、結果的に熱処理温度が高くなるので、接合物質の量は少なくなる。反対に、長時間で熱処理を行なうということは、長時間かけてエラストマーを分解気化させればよいため、熱処理温度は低く設定されるので、接合物質の量は多くなる。
【0065】
このように、電極用多孔質体の製造方法によれば、大きな表面積を有する活性炭とカーボンナノファイバーを利用しながら、三次元的な網状構造の空隙と活性炭の表面にイオン化した物質を吸着する電極用多孔質体を製造することができる。
【0066】
水処理装置について説明する。
図10は、一実施の形態にかかる水処理装置の概念図である。
図11は、一実施の形態にかかる水処理装置に用いる電極の構造を示す拡大断面図である。
【0067】
図10に示す水処理装置100は、供給口1、流路3、取出口2、正極4、負極5及び電源6を有している。水処理装置100は、正極及び負極の少なくとも一方が電極用多孔質体によって形成された電極、もしくは正極及び負極の少なくとも一方が電極用多孔質体が導電性部材に電気的に接触して形成された電極からなるキャパシタであることができる。
【0068】
供給口1から水処理装置100へ供給された処理前の水7は、所定間隔を有して離間配置された正極4と負極5との間に形成された流路3を通り、取出口2から処理後の水8として取り出される。水処理装置100は、FTCであることができ、処理前の水7に含まれるイオン化した物質を取り除くことができる。より具体的には、電源6によって正極4と負極5の間に電圧を印加すると、処理前の水7に含まれる陽イオンは負極5へ移動し、陰イオンは正極4へ移動する。正極4及び負極5の表面4a,5aには処理前の水7に含まれていた陰イオン及び陽イオンが吸着し、したがって、イオン化した物質が取り除かれた処理後の水8が取出口2から取り出される。
【0069】
例えば、処理前の水7が海水であれば、処理後の水8は淡水であることができる。処理前の海水7の中には陰イオンとして塩素イオン(Cl
−)と陽イオンとしてナトリウムイオン(Na
+)とが含まれるが、それ以外にも例えばマグネシウムイオン(Mg
+)や硫酸イオン(SO
42−)なども存在している。処理後の水8は、難溶解性塩を除去する必要はあるが、これらのイオン化した物質が取り除かれた淡水となる。
【0070】
水処理装置100の性能は、正極4及び負極5における処理用の水に接する表面4a,5aの表面積に大きく依存するので、正極4及び負極5の構造が非常に重要である。
【0071】
図11は、
図10の水処理装置100の正極4における表面4aの構造を拡大して示す断面図である。負極5の表面5aも正極4と基本的に同様の構成とすることができるので、ここでは正極4についてのみ説明する。流路3側に面した正極4の表面4aには、電極用多孔質体41が形成されている。電極用多孔質体41は、複数のカーボンナノファイバー40が接合物質48によって互いに接合した三次元的な網状構造が形成され、カーボンナノファイバー40に接合する活性炭42を有している。正極4は、
図5〜
図9を用いて説明した製造方法で製造することができる。その場合、正極4は
図8及び
図9における導電性材料54であることができる。また、正極4の表面4aに
図1〜
図4の電極用多孔質体41a〜41dを接合することで製造することもできる。このような電極4,5を用いることによって、三次元的な網状構造の空隙46を通って、大きな比表面積を有する活性炭42とカーボンナノファイバー40にイオン化した物質を効率よく吸着することができる。また、三次元的な網状構造によって活性炭42の表面を有効に利用することができるので、カルシウム、シリカ、鉄、マンガンなどの難溶解性塩や微生物などが電極に付着して電極が劣化するファウリングの発生までに時間がかかり、長期使用が可能になる。
【0072】
電極用多孔質体41は、少なくとも正極4の表面4a及び負極5の表面5aのいずれか一方に1μm〜1000μmの厚さで形成されることができ、さらに50μm〜500μmの厚さに形成されることができ、特に100μm〜300μmの厚さに形成されることができる。電極用多孔質体41の厚さが1μm以上であれば比較的製造しやすい傾向があり、1000μm以下であれば水にたいする内部抵抗も大きくなり過ぎない傾向がある。また、カーボンナノファイバー40は接合物質48により正極4に強固に接着しており、流路3を水が流れても剥がれおちることはない。また、正極4の機械的強度も向上することができる。さらに、電極用多孔質体41は、カーボンナノファイバー40を熱処理によって得られた炭化物によって接合しているので、耐熱性に優れている。
【0073】
本発明の一実施の形態にかかる電池について説明する。
図12は、一実施の形態にかかる電池の概念図である。電池110は、
図1〜
図4または
図11で説明した電極用多孔質体を用いて形成された正極4bと、負極5bと、筒体6bと、複極剤7bと、電解液8bと、を有する。このように、電池110の正極4bに電極用多孔質体を用いることによって、充放電速度の向上と電池の大容量化を達成することができる。また、電極の機械的強度も向上することができる。本実施の形態の電池110においては正極4bに電極用多孔質体を用いたが、これに限らず、公知の電池の構造における正極及び負極の少なくとも一方に電極用多孔質体を用いることができる。
【0074】
本発明の一実施の形態にかかるキャパシタについて説明する。
図13は、一実施の形態にかかるキャパシタの概念図である。キャパシタ120は、
図1〜
図4または
図11で説明した電極用多孔質体を用いて形成された正極4c及び負極5cと、電源6cと、電解液7cと、セパレータ8cと、を有する。このように、キャパシタ120の正極4c及び負極5cに電極用多孔質体を用いることによって、充電容量を増やすことができ、さらに長寿命化を達成することができる。また、電極の機械的強度も向上することができる。本実施の形態のキャパシタ120においては正極4c及び負極5cに電極用多孔質体を用いたが、これに限らず、公知のキャパシタの構造における正極及び負極の少なくとも一方に電極用多孔質体を用いることができる。
【0075】
本発明の一実施の形態にかかる油田装置(Oilfield Apparatus)について説明する。前記電池もしくは前記キャパシタは、油田装置に用いることができる。油田装置としては、例えば、検層装置(logging tool)などに用いることができる。油田装置の代表的な実施形態について以下に説明する。
【0076】
検層装置は、例えば掘削された坑井(borehole)内及び坑井周辺の地層、油層などの物理的特性や坑井あるいはケーシングの幾何学的特性(孔径、方位、傾斜等)、油層の流れの挙動などを深度毎に記録するための装置であって、例えば油田(oilfield)において用いることができる。油田用途の検層装置としては、例えば、
図14に示す地下(underground)用途と、
図15に示す海底(subsea)用途と、を挙げることができる。検層装置には、ワイヤーライン検層(Wireline log/logging)や泥水検層(Mud logging)などがあり、測定機器が掘削編成に装備されている掘削同時検層LWD:Logging While Drillingや掘削同時測定(MWD:Measurement While Drilling)などがある。これらの検層装置は、地中の深い位置で作業するため、周囲環境は電池及びキャパシタの電極にとって苛酷になり、高い耐熱性が要求されることがある。
【0077】
図14は、一実施の形態にかかる地下用途の検層装置を模式的に示す断面図である。
図15は、一実施の形態にかかる海底用途の検層装置を模式的に示す断面図である。
【0078】
図14に示すように、地表155における、掘削編成に装備された測定機器による地下資源の探査は、例えば坑井(borehole)156の上方に配置されたプラットホーム及びデリック編成151と、デリック編成151から地下に設けられた縦穴や横穴などで構成される坑井156内に配置された検層装置として例えば坑底機器編成(BHA:bottom hole assembly)160と、を有する。デリック編成151は、例えば、フック151aと、回転スイベル(rotary swivel)151bと、ケリー(kelly)151cと、回転テーブル151dと、を含むことができる。坑底機器編成160は、例えばデリック編成151から延びる長いドリル・ストリング(drill string)153の先端に固定される。ドリル・ストリング153の内部には、図示していないポンプから回転スイベル151bを介して泥水が送り込まれ、坑底機器編成160の流体駆動モータを駆動させることができる。坑底機器編成160は、複数のモジュールを有し、例えば、先端から順に、ドリルビット162、回転操作システム(RSS:rotary steerable system)164、マッドモータ(Mud moter)166、掘削同時測定モジュール168、及び掘削同時検層モジュール170を連結して有することができる。ドリルビット162は、坑井156の坑底部156aにおいて回転によって掘削を進めることができる。坑底機器編成(BHA:bottom hole assembly)160を坑井156へ進入させ、地中の地質構造などを探査し、目標物質である例えば石油の有無を探査する。
【0079】
掘削同時測定モジュール168は、ドリルカラー(drill collar)と呼ばれる厚い壁を有するパイプの壁部に設けられたチャンバー内に図示しないを掘削同時測定器具が配置されている。掘削同時測定器具は、電池、コンデンサ及び各種センサを探査の目的に合わせて選択して含み、例えば、方位、傾斜、ビットの向き、荷重、トルク、温度、圧力等の坑底データを計測するとともに、これらの計測データをリアルタイムに地上へ伝送することができる。
【0080】
掘削同時検層モジュール170は、ドリルカラー(drill collar)と呼ばれる厚い壁を有するパイプの壁部に設けられたチャンバー内に図示しない掘削同時検層機器が配置されている。掘削同時検層機器は、電池、コンデンサ及び各種センサを探査の目的に合わせて選択して含み、例えば、比抵抗、孔隙率、音波速度及びガンマ線等を測定し、物理検層データを取得することができ、この物理検層データをリアルタイムに地上へ伝送することができる。
【0081】
なお、坑底機器編成160は、一実施形態として、ドリルビット162と、回転操作システム164と、マッドモータ166と、掘削同時測定モジュール168と、掘削同時検層モジュール170と、を有する例について説明したが、これに限らず、検層用途に合わせて選択して組み合わせることができる。
【0082】
図15に示すように、海洋でのワイヤーライン検層を用いた地下資源の探査は、例えば海152に浮くプラットホーム150から海底154に設けられた縦穴や横穴などで構成される坑井156内に検層装置として例えばダウンホール装置(Downhole Apparatus)160’を進入させ、地中の地質構造などを探査し、目標物質である例えば石油の有無を探査する。ダウンホール装置160’は、例えばプラットホームから延びる長いケーブルもしくはコミュニケーション・リンクの先端に固定され、図示しない複数の圧力容器などの筐体を内部に有する。筐体の内部には、例えば電気検層(SP検層、ノルマル検層、インダクション検層、ラテロ検層、マイクロ比抵抗検層など)、放射能検層(ガンマ線検層、中性子検層、密度検層、核磁気共鳴検層など)、音波検層(弾性波検層、アレー音波検層、セメント・ボンド検層など)、地質情報検層(ディップメーター、FMIなど)、坑内地震探査(チェックショット速度検層、VSPなど)、サンプリング検層(サイドウォール・コアリング検層、流体分析検層、RFT,MDTなど)、補助検層(キャリパー(坑径)測定、坑井幾何学特性検層、温度検層など)、特殊目的検層(過酷条件下での検層(Logs in hostile environment)、掘削管経由検層(measurement through drill pipe)など)などの探査用電子機器、電池及びキャパシタが探査の目的に合わせて選択して封入されて配置され、地中の地質構造などを探査することが可能であるが、地下深く掘削された坑井156内部では高温にさらされるとともに、坑井156へ進入する際の振動や衝撃を受けるため、高い耐熱性が要求される筐体内の電池及びキャパシタの電極に採用することができる。
【0083】
なお、上記のように本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できよう。したがって、このような変形例はすべて、本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、本発明の実施の形態にかかる電極は、電池や水処理装置に使用されるだけでなく、酸化還元反応のような電気化学反応を用いた電気化学センサー、電気化学セル及び電気化学装置に適用可能である。電気化学センサーは、例えば、米国特許US2007/0272552号公報に開示されているように、流体分析検層に使用することができる。
【実施例】
【0084】
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0085】
工程(a):
6インチオープンロール(ロール温度10〜20℃、ロール間隔1.5mm)に、100質量部(phr)の重量平均分子量が約300万の天然ゴムを投入して、ロールに巻き付かせ、5分間素練りした後、50質量部(phr)の活性炭と30質量部(phr)の多層カーボンナノファイバーを投入し、混合物をオープンロールから取り出した。そして、ロール間隔を1.5mmから0.3mmへと狭くして、混合物を再びオープンロールに投入して薄通しを繰り返し5回行なった。このとき、2本のロールの表面速度比を1.1とした。さらに、ロール間隙を1.1mmにセットして、薄通しして得られた複合エラストマーを投入し、分出しした。分出しされた複合エラストマーは90℃、5分間プレス成形し、それぞれ厚さ1mmのシート状の複合エラストマー(無架橋体)に成形した。複合エラストマーの配合を表1に示す。実施例1の多層カーボンナノファイバー(表1ではMWCNT−1で示した)の平均直径は70nmであり、実施例2の多層カーボンナノファイバー(表1ではMWCNT−2で示した)の平均直径は9nmであった。また、実施例1、2で用いた活性炭の混練前におけるBET法による窒素吸着比表面積は1200m
2/gであった。
【0086】
【表1】
【0087】
この無架橋体の複合エラストマーについて、パルス法NMRを用いてハーンエコー法及びソリッドエコー法による測定を行った。この測定は、日本電子(株)製「JMN−MU25」を用いて行った。測定は、観測核が
1H、共鳴周波数が25MHz、90゜パルス幅が2μsecの条件で行い、ハーンエコー法のパルスシーケンス(90゜x−Pi−180゜x)にて、Piをいろいろ変えて減衰曲線を測定した。また、サンプルは、磁場の適正範囲までサンプル管に挿入して測定した。測定温度は、150℃であった。なお、同様に測定した原料エラストマーの天然ゴムの第1のスピンースピン緩和時間(T2n/30℃)は、700μ秒であった。
【0088】
工程(b):
シート状の無架橋体の複合エラストマーを熱処理炉内に配置し、熱処理炉内を真空にした後、窒素ガスを供給しつつ排気することで、約50kPaの窒素雰囲気に維持した炉内で2時間かけて400℃に昇温した後、400℃で2時間熱処理して、天然ゴムの一部を炭化物として残して分解気化させて、電極用多孔質体を得た。
図17は、実施例1の電極用多孔質体の10,000倍の電子顕微鏡写真である。
図18は、実施例1の電極用多孔質体の50,000倍の電子顕微鏡写真である。
図19は、実施例2の電極用多孔質体の10,000倍の電子顕微鏡写真である。
図20は、実施例2の電極用多孔質体の50,000倍の電子顕微鏡写真である。
図17〜
図20の電子顕微鏡写真における繊維状の物質がカーボンナノファイバーであり、粒子状の物質が活性炭であり、隣接するカーボンナノファイバー及び活性炭が接合物質で接合していることが観察された。また、カーボンナノファイバーが接合することで三次元的な多孔質体を形成していることが観察された。