特許第5789409号(P5789409)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5789409
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】光学スケール
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/38 20060101AFI20150917BHJP
   G01D 5/347 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   G01D5/38 G
   G01D5/347 110C
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-103497(P2011-103497)
(22)【出願日】2011年5月6日
(65)【公開番号】特開2012-27007(P2012-27007A)
(43)【公開日】2012年2月9日
【審査請求日】2013年12月16日
(31)【優先権主張番号】特願2010-141964(P2010-141964)
(32)【優先日】2010年6月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100096677
【弁理士】
【氏名又は名称】伊賀 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 稔也
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(74)【代理人】
【識別番号】100150898
【弁理士】
【氏名又は名称】祐成 篤哉
(72)【発明者】
【氏名】石川 博一
【審査官】 吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−15514(JP,A)
【文献】 特開2008−292929(JP,A)
【文献】 特開平5−332792(JP,A)
【文献】 特開2002−91271(JP,A)
【文献】 特開平7−326553(JP,A)
【文献】 特開2006−10778(JP,A)
【文献】 特開2005−157041(JP,A)
【文献】 特開2000−241617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/26−5/38
G01B 7/00−7/34、
11/00−11/30
G02B 5/00−5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基板と、
上記ベース基板上に形成された回折格子を有する回折格子膜と、
上記回折格子膜上に形成され、上記回折格子の凹凸に対応して形成された表面の凹凸が除去されて平坦化された保護膜とを有し、
上記保護膜は、その最表面に上記回折格子膜のうねりに合せて形成されたうねりを有し、上記回折格子膜底面と上記保護膜最表面との間の光学距離が、上記回折格子膜により回折された光を読み取るエンコーダーの参照波長の1/4以上であり、上記回折格子膜底面と上記保護膜最表面との間の物理的な距離が20μm以下で、光学的な距離の局所的な変化が上記参照波長の1/16以下であることを特徴とする光学スケール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検出装置に用いられる光学スケールであり、回折格子上に保護膜を有する光学スケールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から直線変位や角度変位の精密な測定を行うことができる位置検出装置として、光学スケールと検出ヘッドを備えた光学式変位測定装置が知られている。この光学式変位測定装置は、工作機械や半導体製造装置等の可動部の相対位置を高精度に検出することができる。
【0003】
光学式変位測定装置は、一般に、可動部の変位を検出する部材に固定され、回折格子が形成された光学スケールと、この光学スケールの変位を検出する検出ヘッドとを備えている。検出ヘッドは、光学スケールに沿って移動可能とされている。
【0004】
検出ヘッドは、光学スケールに光ビームを照射する光源と、光学スケールを透過又は光学スケールで反射された回折光を検出するための光検出部とを有しており、光検出部で受光した光信号の変化によって光学スケールの移動を検出する。この光学式測定装置では、光学スケールの変位によって、工作機械や半導体製造装置等の可動部の変位を知ることができる。
【0005】
ここで、このような光学式変位測定装置に用いられる光学スケールは、基板上に回折格子が形成された樹脂層が積層され、この樹脂層上に必要に応じて反射膜を形成し、樹脂層や反射膜に汚れや傷が付くことを防止するため、保護膜が形成されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されている光学スケールでは、保護層は回折格子の形状に比して薄いため、回折格子の形状が保護層にも現われてしまい、保護膜の表面に回折格子の凹凸形状に対応する凹凸が形成されてしまう。表面に凹凸が形成された光学スケールでは、保護層が回折格子と光学的に一体の物として捕らえられ、保護層自体の欠陥が回折格子の欠陥となり、測定精度に影響してしまう。
【0007】
また、特許文献2には、光学スケールの保護膜としてポリカーボネート(PC)やポリエチレンテレフタレート(PET)等のフィルム又は樹脂を塗布すること等が記載されている。保護膜をフィルムで形成した場合には、フィルム自体の厚さムラや接着ムラが測定精度に影響し、樹脂を塗布する場合には厚さムラと回折格子に対する保護能力が問題となる。
【0008】
したがって、光学スケールの保護層としては、回折格子を保護すると共に、測定に影響が出ないように表面に凹凸がなく、厚さムラや接着ムラが抑えられたものが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−15514号公報
【特許文献2】特開2008−256655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、回折格子上に形成した保護膜の影響が抑えられ、高精度に測定が可能な信頼性の高い光学スケールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成する本発明に係る光学スケールは、ベース基板と、ベース基板上に形成された回折格子を有する回折格子膜と、回折格子膜上に形成され、回折格子の凹凸に対応して形成された表面の凹凸が除去されて平坦化された保護膜とを有し、保護膜は、その最表面に回折格子膜のうねりに合せて形成されたうねりを有し、回折格子膜底面と保護膜最表面との間の光学距離が、回折格子膜により回折された光を読み取るエンコーダーの参照波長の1/4以上であり、回折格子膜底面と保護膜最表面との間の物理的な距離が20μm以下で、光学的な距離の局所的な変化が参照波長の1/16以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、回折格子膜上に積層した保護膜の表面に形成された回折格子の凹凸に対応して形成された凹凸を除去して平坦化することによって、保護膜の表面に凹凸がなくなり、光学的な影響を抑制でき、高精度に測定することができる信頼性の高い光学スケールである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明を適用した光学スケールを用いた場合の回折を説明する図である。
図2】同光学スケールの回折格子をスンタンパを用いて形成する状態を示す図である。
図3】従来の光学スケールを用いた場合の保護膜の凹凸表面による回折への影響を説明する図である。
図4】本発明の適用した光学スケールの保護層の厚みが均一になっている状態を示す断面図である。
図5】回折格子膜及び保護層にうねりが発生している状態を示す断面図である。
図6】保護層に厚さムラが生じている状態を示す断面図である。
図7】保護層の厚さムラが生じている状態を示す図であり、(A)は、断面図であり、(B)は、上面図である。
図8】光学薄膜を設けた光学スケールの断面図である。
図9】正弦波状の回折格子を有する回折格子膜及び反射膜を形成した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した保護膜を有する光学スケールについて、図面を参照して詳細に説明する。先ず、第1の実施の形態として、矩形状の回折格子を有する反射型の光学スケールについて説明する。
【0015】
位置検出システムでは、例えば直線変位を測定するものである場合、図1に示すように、長尺状からなり、回折格子4が形成された光学スケール1と、この光学スケール1と相対的に移動可能なエンコーダ2とを備える。位置検出システムでは、光学スケール1に形成された回折格子4の物理的な凹凸にレーザ光を照射し、光学スケール1とエンコーダ2との相対位置変化に伴う回折光の位相の回転をエンコーダ2にて読み取り、位置を検出する。この位置検出システムは、分解能がnm以下であり、優れたものである。
【0016】
このような位置検出システムに用いられる光学スケール1は、図1に示すように、ベース基板3と、このベース基板3上に回折格子4が形成された回折格子膜5と、この回折格子膜5上に形成された反射膜6と、この反射膜6上に形成され、回折格子膜5と反射膜6とを保護する保護膜7とから構成されている。
【0017】
ベース基板3は、一方の面に回折格子膜5、反射膜6、保護膜7が形成される。このベース基板3は、測定軸X方向に長尺状であり、ガラスやセラミック等の一般に光学スケールのベース基板として用いられるものである。
【0018】
回折格子膜5は、ベース基板3の測定軸X方向に、物理的な凹凸によって形成された回折格子4が形成されている。回折格子膜5には、例えば、アクリル系、エポキシ系等の紫外線硬化型樹脂、アクリル系、エポキシ系等の熱硬化型樹脂、及び電子線やX線等によって活性化する各種エネルギー線硬化型樹脂等のレジストや乳剤を用いることができる。回折格子4は、回折格子4の凸部の頂点から凹部の底辺までの光学的深さを概ね参照波長(λ)の1/4にしておくことが好ましい。回折格子4の深さがλ/4である場合には、0次回折光の反射強度が反射防止の効果のため小さくなり、そのエネルギーが1次回折光他へ分散されるため、回折光の効率を上げることができる。最適な深さは、入射光の角度により決定されるが、おおむね波長の1/4である。
【0019】
反射膜6は、回折格子膜5上に形成され、エンコーダ2で用いるレーザ光源の波長に対しての反射率が高い物が好ましい。反射膜6としては、一般に反射率の高い金属膜を用いるが、同時に膜の信頼性も必要となる。例えば、790nm等の近赤外で用いる場合には、赤色の反射率が高い金属膜が好ましく、金、白金、銅、銅合金、アルミ、アルミ合金、銀、銀合金等の金属膜等によって形成され、実用上、銀パラジウム合金で形成することが好ましい。前述の金属膜の中でも、純金属の金、プラチナ、銅、銀等は、反射が高いものであり、銅合金や銀合金等は、酸化や硫化して膜が改質しないものである。金とプラチナは、合金でなくても酸化等に対する耐性は十分に高いものである。金等は、信頼性が高く、成膜もしやすくて扱いやすい材料である。また、金やプラチナは、高価であるが、耐環境特性は良いものである。銀合金は、硫化を抑えた銀パラジウム合金等が実用上適し、エンコーダ2の790nmのレーザ光に対する反射率も、金と同様95%を超えており、スパッタターゲットの金額は1/10以下で低コストである。例えば、エンコーダ2の構成が回折格子面にレーザ光が2回当たる場合には、反射率がエンコーダ2の出力に与える影響は二乗で効いてくるようになる。このようなエンコーダ2の構成の場合、反射率が高いほど良いが、例えば、反射率が70%に落ちた反射面ではエンコーダ出力は49%にまで低下してしまうため、実用上、70%以上の反射率、より好ましくは90%以上である。又、回折格子膜5と反射膜6の密着性を向上させるために、下地にCrやTi、Si、SiOx等をつけると良い。
【0020】
保護膜7は、反射膜6上に形成され、回折格子膜5及び反射膜6の剥がれや割れ、外部部品との接触等により傷が付くことを防止するものである。保護膜7は、エンコーダ2から出射されるレーザ光及び回折光を透過させる透明な部材からなり、環境変化に対して安定しているものが好ましい。保護膜7は、SiO等、その他の金属の酸化膜やSi等の窒化膜、又はこれらの混合物等により形成される。透明度と強度が高いという観点から、SiO、Siを用いることが好ましい。保護膜7は、反射膜6上に、種々の膜を所望の緻密さで成膜することが可能な物理気相成長法(PVD)、スピンコート法、塗布法により形成することができる。
【0021】
この保護膜7は、後述するように、回折格子膜5上に形成すると最表面7aに回折格子22の凹凸に対応して凹凸が形成されてしまうが、その凹凸が除去されて、平坦となっている。これにより、保護膜7の最表面7aでは、凹凸による光学的な影響を抑えることができ、図1に示すように、回折光が適切にエンコーダ2に入り込み、出力強度が高くなり、測定精度を上げることができる。
【0022】
保護膜7は、回折格子4の深さ以上の光学膜厚を持ち、さらに20μm以下の物理膜厚を持つことが好ましい。ここで、膜厚とは、反射膜6の凹部部分から保護膜7の最表面7aまでの距離をいう。
【0023】
保護膜7では、回折格子4の深さとして参照波長(λ)の1/4とすることが好ましいことから、λ/4以上の光学膜厚とすることが好ましい。また、保護膜7では、物理膜厚を20μm以下とすることによって、ベース基板3から剥離しにくくなり、強度も得られるようになる。
【0024】
以上のような構成からなる光学スケール1は、回折格子膜5及び反射膜6上に形成した保護膜7の光学スケール1の光が入射する側の最表面7aが平坦となっていることによって、光学的な影響が少なく、測定誤差の発生が抑制され、高精度に測定することができる信頼性の高いものである。また、光学スケール1は、保護膜7が薄いため、複数のエンコーダ2で読み取った場合であっても、読取り誤差を小さくすることができる。
【0025】
以下に、この光学スケール1の製造方法を説明する。
【0026】
まず、ベース基板3上に回折格子膜5を形成する。ベース基板3上にレジストや乳剤を塗布し、それにホログラム露光やレーザ描画、マスク等で露光し、現像することによって、回折格子4を有する回折格子膜5をベース基板3上に形成する。
【0027】
回折格子膜5の他の形成方法としては、図2に示すように、回折格子4に対応する型10aが形成されたスタンパ10をベース基板3上に塗布した回折格子膜5を形成する樹脂層に押し当て、樹脂層にスタンパ10を押し付けた状態で樹脂層を硬化させる。これにより、硬化された樹脂層からスタンパ10を剥がすと、図2に示すように、回折格子4が型10aによって形成された回折格子膜5を形成することができる。
【0028】
次に、回折格子膜5上に反射膜6を成膜する。反射膜6は、金属膜を蒸着又はスパッタ等により回折格子膜5の表面に成膜して形成する。
【0029】
次に、反射膜6上に保護膜7を成膜する。反射膜6上に保護膜7を成膜等により形成した場合には、図3に示すように、回折格子4の凹凸形状が保護膜7の最表面7aにも現われ、保護膜7の最表面7aに回折格子4に対応して凹凸が形成されてしまう。これは、保護膜7の膜厚が厚くなるにつれて、回折格子4の格子面の凹凸が再現されにくくなり、回折格子4の凹凸の忠実度が悪くなるが、保護膜7の膜厚が必要以上に厚くなってしまう。保護膜7の膜厚が数μm程度では、図3に示すように、回折格子4の形状が確実に最表面7aに残ってしまう。このように保護膜7の最表面7aに凹凸が形成されている場合には、保護膜7の最表面7aの凹凸も、回折格子4と同じピッチとなるため、エンコーダ2で格子面の信号を読み取る際に、保護膜7が第二の回折格子として作用し、回折光や迷光がエンコーダ2に入り込み、測定誤差の要因となる。
【0030】
そこで、保護膜7の最表面7aに形成されている凹凸を除去する平坦化処理を行う。
【0031】
光学スケールにおいては、上述した光学スケール1のように、回折格子膜5及び保護膜7がベース基板3上に図1に示すようにベース基板3の表面を基準にして平坦に形成されることが好ましいが、図4に示す光学スケール8のように、回折格子膜5に膜厚ムラによりうねりが生じる場合がある。このような光学スケール8では、保護膜7を回折格子膜5のうねりに合せて、膜厚を均一にすることによって、回折格子膜5にうねりが生じていても出力強度を向上させて、測定精度を高くすることができる。なお、光学スケール8については、ベース基板3、回折格子4を有する回折格子膜5、反射膜6、保護膜7は上述した光学スケール1と同様であるため、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0032】
回折格子膜5のうねりは、回折格子膜5の厚さをなるべく薄くする等の手法によって極力小さくすることができるものの、図5に示すようにうねりが発生してしまう場合がある。そして、このような回折格子膜5上に反射膜6を真空蒸着等により成膜し、形成した反射膜6上に保護膜7を成膜すると、図5に示すように、保護膜7の膜厚が不均一となりうねりが発生する。保護膜7のうねりの原因となる膜厚のムラは、成膜に起因する場合が多く、例えばPVDで透明膜を成膜する場合、場所による成膜の厚さムラが回折格子4の格子面に対する保護膜7の厚さムラとなってしまう。この保護膜7のうねりは、測定の際に出力ムラを発生させ、測定誤差の要因となる。
【0033】
そこで、保護膜7のうねりを解消するために、ベース基板3の下面を基準に保護膜7の研磨面を設定すると、図6に示すように、保護膜7の最表面7aはベース基板3の下面に合せて平坦になるが、回折格子膜5のうねりは残ったままとなる。このため、回折格子膜5の反射面から保護膜7の最表面7aまでの保護膜7の厚さにムラができてしまう。この場合、保護膜7と雰囲気との界面、及び回折格子4の反射面にて光の干渉が生じ、エンコーダ2へ入る光の強度が著しく変わってしまう。この干渉強度によるエンコーダ測定の影響は、回折格子膜5のうねりよりも深刻な問題である。なぜならば、エンコーダ2の出力強度そのものに影響するので、出力変動が大きいと、電気的な回路が追従できず、システムエラーとなってしまうからである。
【0034】
そこで、このような問題を解消する方法として、回折格子膜5に対する保護膜7の厚さムラが極小になるように、言い換えれば、回折格子膜5のうねりと同様なうねりを持った図4の様な膜厚が均一な保護膜7とする。保護膜7の膜厚を調整する際は、回折格子膜5に対する保護膜7の最表面7aまでの厚さムラによってエンコーダ出力強度が変化するため、この出力強度が均一となるように膜厚を調整する。出力強度は、エンコーダの参照波長(λ)の1/4の光学厚さの変化で、極小から極大へ変化する。したがって、保護膜7の局所的な厚さムラは、参照波長(λ)の1/16程度の光学厚さ以内とし、20μm以下の物理的膜厚とする。このように、保護膜7の膜厚を調整することによって、エンコーダ2による出力強度が均一となり、測定精度を上げることができる。
【0035】
膜厚ムラの調整は、ベース基板3上に積層した回折格子膜5と反射膜6上に透明な保護膜7を成膜すると、図7(A)に示す回折格子膜5の格子面に対する保護膜7の相対的な厚さムラそのものが図7(B)に示すような干渉縞となって現われ、この干渉縞は肉眼で容易に見ることができるため、この干渉縞を利用して容易に行うことができる。この干渉縞を目視で観察することにより、保護膜7の厚さムラの情報を得て、回折格子4の格子面に対する保護膜7の相対的な膜厚ムラを極小にすることが可能である。
【0036】
保護膜7について、回折格子4の格子面に対する保護膜7の相対的な膜厚ムラを上記の方法で制御したとしても、相対膜厚がエンコーダ2の出力強度の最大値近傍でなければ、エンコーダシステムでの信号が弱く、SNが十分に取れないことになる。このことはノイズにより、測定精度が悪化することを意味している。そこで、位置検出システムで使用するエンコーダ2による出力強度が最大近傍になるような保護膜7の膜厚を保持しなくてはならない。その為には、エンコーダシステムで光学スケール1の出力マップを作成し、この出力マップを参照して、出力強度が最大となるように、保護膜7の膜厚を調整する。干渉光が、エンコーダ2にとって強めあう保護膜7の膜厚が重要となる。
【0037】
以上のような光学スケール8では、回折格子膜5に膜厚ムラによるうねりが生じていても、保護膜7のうねりが回折格子膜5のうねりに合っており、保護膜7の膜厚が均一であることによって、出力強度を向上させることができ、測定精度を高くすることができる。
【0038】
更に、上述した光学スケール1、8において、保護膜7の最表面7a上には、図8に示すように、光学薄膜9を備えていてもよい。なお、図8では、光学スケール1に光学薄膜9を設けたものを示す。光学薄膜9としては、例えばエンコーダ2で用いるレーザ波長と角度に対しての反射防止膜等を挙げることができる。保護膜7の最表面7aは、位置検出システムに依存するが、レーザ光が2乃至4回通過することになる。例えば、レーザ光が4回通過するタイプのエンコーダ2に対しては、反射防止特性の影響は4乗で効くことになる。また、保護膜7がガラス程度の1.52の屈折率の場合には、4%が表面反射でロスとなり、それが4回あるので、15%もの光が有効利用されなくなる。このような光のロスは、保護膜7の表面7aに反射防止膜をつけることで大幅に回避することができる。更に、反射防止膜の反射特性が十分に機能すれば、上述の膜厚ムラに対する要求、例えば保護膜7の膜厚調整の程度を緩和することができる。
【0039】
次に、第2の実施の形態として、図9に示す正弦波状の回折格子22を有する反射型の光学スケール20について説明する。この光学スケール20は、ベース基板21上に、正弦波形状の回折格子22が形成された回折格子膜23と、この回折格子膜23上に形成された反射膜24とから構成されている。なお、ベース基板21及び反射膜24については、上述した光学スケール1のベース基板3及び反射膜6と同様の構成であるため、詳細な説明を省略し、上述した光学スケール1と異なる点については説明する。
【0040】
光学スケール20の回折格子膜23は、ベース基板21上に回折格子膜23を形成するレジストや乳剤を塗布し、例えばホログラム露光を使用することによって、図9に示すように、回折格子22の形状を正弦波に近い形にして形成することができる。回折格子22の形状が正弦波状の場合には、回折格子22の山の頂点から谷の底辺までの光学的深さを概ね参照波長(λ)の1/4にしておくことが好ましい。回折格子22の深さがλ/4である場合には、0次回折光の反射強度が反射防止の効果のため小さくなり、そのエネルギーが1次回折光他へ分散されるため、回折光の効率を上げることができる。最適な深さは、入射光の角度により決定されるが、おおむね波長の1/4である。また、正弦波形状の場合には、矩形状に比べて帯域が広くなり、参照光が多少ずれても、測定に影響が少ないロバストな特性となる。
【0041】
また、以上のような光学スケール1、8、20は、測定機器や工作機械、半導体製造装置の可動部の相対位置を検出することに用いることができる。
【符号の説明】
【0042】
1 光学スケール、2 エンコーダ、3 ベース基板、4 回折格子、5 回折格子膜
、6 反射膜、7 保護膜、7a 最表面、10a 型、10 原版、11 研磨機械
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9