(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5789426
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】表皮ターンオーバー促進剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/192 20060101AFI20150917BHJP
A61K 31/196 20060101ALI20150917BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20150917BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20150917BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20150917BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20150917BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20150917BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
A61K31/192
A61K31/196
A61P17/16
A61P43/00 107
A61K8/44
A61K8/36
A61Q19/08
A61Q19/00
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-135181(P2011-135181)
(22)【出願日】2011年6月17日
(65)【公開番号】特開2013-1684(P2013-1684A)
(43)【公開日】2013年1月7日
【審査請求日】2014年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102496
【氏名又は名称】エスエス製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】猪田 利夫
(72)【発明者】
【氏名】森 陽子
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 一朗
【審査官】
深谷 良範
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−017115(JP,A)
【文献】
特開平08−099822(JP,A)
【文献】
特開平10−279468(JP,A)
【文献】
特開平10−279464(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0020414(US,A1)
【文献】
特開2009−227632(JP,A)
【文献】
特開2002−212052(JP,A)
【文献】
特開2002−201122(JP,A)
【文献】
特表平07−501540(JP,A)
【文献】
特表平07−501541(JP,A)
【文献】
特開2013−001642(JP,A)
【文献】
特開2013−082631(JP,A)
【文献】
日本薬学会第129年会要旨集,2009年,Vol.3,p.223,28P-pm278
【文献】
Biological and Pharmaceutical Bulletin,2008年,Vol.31, No.1,p.33-37
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K,A61Q
CAplus/REGISTRY(STN)
MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジクロフェナク、フェルビナク、イブプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェン又はそれらの塩を有効成分とする表皮ターンオーバー促進剤。
【請求項2】
ジクロフェナク、フェルビナク、イブプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェン又はそれらの塩を有効成分とする表皮細胞増殖促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表皮のターンオーバーを促進して皮膚を正常化する薬剤及び化粧品に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、生体と外界との境界壁として種々の機能を有している。すなわち、外部からの物理的力に対する保護作用、化学的刺激や病原微生物に対する保護作用、紫外線に対する保護作用等を有する。また組織からの水分や生体成分の損失を防ぎ、体温調節も行っている。
これらの機能のうちのほとんどは、表皮の最外層である角層が担っている。すなわち、表皮機能を形成する上で最も重要な役割を果たす表皮細胞は、表皮の最も内側の基底層で分裂増殖し、有棘細胞、顆粒細胞と形を変え、タンパク質や脂質などを合成、分泌しながら、最終分化して角質細胞となり最外層である角層を形成し、その後垢となって脱落するというターンオーバーを繰り返している。このターンオーバーにより、表皮機能が維持されていると考えられている。
【0003】
しかし、乾燥、紫外線、化学物質等の外的要因及び酸化ストレスや加齢などの内的要因により、表皮のバリア機能が低下することが知られており、これらの要因により表皮のターンオーバーが低下することも知られている。
【0004】
このような観点から、表皮のターンオーバーを促進して皮膚を正常化しようとする試みはいくつかなされており、種々の植物抽出物、ヒドロキシカルボン酸、トラネキサム酸、魚鱗等が報告されている(特許文献1〜3)。レチノイン酸及びその誘導体、あるいはその受容体作動薬が、表皮のターンオーバーを促進するとの知見もあるが(非特許文献1〜3)、これらは紅斑の誘発、表皮の肥厚といった好ましからぬ副作用を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08−259420号公報
【特許文献2】特開平08−259443号公報
【特許文献3】特開2000−247894号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】吉村 浩太郎,日皮会誌,110,p.2185−2190,2000
【非特許文献1】医薬品インタビューフォーム,オルセノン 軟膏0.25%,2010年改定
【非特許文献1】医薬品インタビューフォーム,ディフェリンゲル0.1%,2009年改定
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これら従来の組成物では、表皮のターンオーバー促進作用は十分でなく、あるいは副作用が強く、さらに新たな薬剤、化粧品が望まれていた。
従って、本発明の課題は、表皮のターンオーバーを促進し、皮膚の機能を正常化できる薬剤、化粧品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者は、種々の薬物についての表皮のターンオーバーに対する作用を検討したところ、非ステロイド系抗炎症剤のうち、ジクロフェナク、フェルビナク、イブプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェンが優れた表皮基底細胞の増殖促進活性を有し、表皮を肥厚させる副作用を生じないことから、これらの成分が表皮のターンオーバー促進剤として有用であることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、ジクロフェナク、フェルビナク、イブプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェン又はそれらの塩を有効成分とする表皮ターンオーバー促進剤を提供するものである。
また本発明は、ジクロフェナク、フェルビナク、イブプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェン又はそれらの塩を有効成分とする表皮細胞増殖促進剤を提供するものである。
また本発明は、ジクロフェナク、フェルビナク、ケトプロフェン、ロキソプロフェン又はそれらの塩を有効成分とする皮膚老化防止剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
ジクロフェナク、フェルビナク、イブプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェン又はそれらの塩は、若年者又は老年者の表皮基底細胞の増殖を促し、かつ表皮を肥厚促進しないことから、表皮ターンオーバー促進剤として有用である。従って本発明の表皮ターンオーバー促進剤を皮膚に適用すれば、肌あれ、皮膚の老化、沈着した色素の排出、皮膚のバリア機能等が改善され、医薬品、化粧品として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】ジクロフェナクナトリウム(DF−Na)、フルルビプロフェン(FLB)、イブプロフェン(IBU)、ケトプロフェン(KTP)及びロキソプロフェンナトリウム(LXP)各製剤をヘアレスマウス皮膚に5日間塗布したときのPCNA染色皮膚切片像を示す。
【
図2】DF−Na、FLB、IBU、KTP及びLXP各製剤をヘアレスマウス皮膚に5日間塗布したときのPCNA陽性細胞数を示す。
【
図3】DF−Na、FLB、IBU、KTP及びLXP各製剤をヘアレスマウス皮膚に5日間塗布したときの表皮の厚さを示す。
【
図4】週齢の異なるヘアレスマウス皮膚基底細胞におけるPCNA陽性細胞数及びDF−Naによるその回復効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の表皮ターンオーバー促進剤、表皮細胞増殖促進剤及び皮膚老化防止剤の有効成分は、ジクロフェナク、フェルビナク、イブプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェン又はそれらの塩である。ジクロフェナクは、2−(2−(2,6−ジクロロフェニルアミノ)フェニル酢酸であり、フェルビナクは4−ビフェニル酢酸であり、イブプロフェンは2−(p−イソブチルフェニル)プロピオン酸であり、ケトプロフェンは2−(3−ベンゾイルフェニル)プロピオン酸であり、これらはいずれも非ステロイド系抗炎症剤として知られている。しかし、これらの抗炎症剤が、表皮細胞の増殖及び表皮のターンオーバーを促進する作用を有することは知られていない。
【0013】
ジクロフェナク、フェルビナク、イブプロフェン、ケトプロフェン、及びロキソプロフェンの塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。
【0014】
ジクロフェナク、フェルビナク、イブプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェン又はこれらの塩は、自体公知の合成方法により製造することができる。
【0015】
ジクロフェナク、フェルビナク、イブプロフェン、ケトプロフェン、及びロキソプロフェンと類似の作用を発揮すると期待されるものとして、サリチル酸、アスピリン、サリチルアミド、フルフェナム酸、メフェナム酸、スリンダク、インドメタシン、アンフェナク、アセメタシン、プログルメタシン、ナブメトン、エトドラク、モフェゾラク、フルルビプロフェン、オキサプロジン、チアプロフェン酸、ナプロキセン、アルミノプロフェン、ザルトプロフェン、ブコローム、ピロキシカム、アンピロキシカム、テノキシカム、メロキシカム、ロルノキシカム及びその塩などの非ステロイド系抗炎症剤が挙げられる。
【0016】
本発明の表皮ターンオーバー促進剤、表皮細胞増殖促進剤及び皮膚老化防止剤(以下、表皮ターンオーバー促進剤等という)は、皮膚のターンオーバーを促進して低下した皮膚の機能を回復するための医薬、医薬部外品又は化粧品である。本発明により回復する低下した皮膚機能としては、肌あれ、皮膚の老化(シミ、ソバカス、しわなど)が挙げられる。
【0017】
本発明の表皮ターンオーバー促進剤等の投与形態は、外用剤、内服剤など任意の公知の投与経路で投与されうるが、皮膚外用剤の形態が好ましい。当該皮膚外用剤としては、水溶液、W/O型又はO/W型エマルション、軟膏等が挙げられる。より具体的には、クリーム、乳液、化粧水、パック、ジェル、シート、パップ、軟膏、テープ、硬膏、リニメント、ローション、エアゾール、パウダー等が挙げられる。なお、内服剤としては、錠剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、液剤、トローチ剤、ゼリー剤等が挙げられる。
【0018】
本発明の表皮ターンオーバー促進剤等中のジクロフェナク、フェルビナク、イブプロフェンケトプロフェン、ロキソプロフェン又はそれらの塩の含有量は、剤形によっても異なるが、0.001〜20質量%が好ましく、さらに0.1〜10質量%がより好ましい。これらの含有量とすることにより、良好な表皮ターンオーバー促進作用が得られるとともに、皮膚刺激、表皮細胞等の副作用も生じない。
【0019】
本発明の表皮ターンオーバー促進剤等には、上記成分の他、従来公知の美白成分など、例えばアスコルビン酸及びその誘導体、プラセンタエキス、ハイドロキノン及びその配糖体、コウジ酸、トラネキサム酸、エラグ酸、レチノイン酸及びその誘導体、あるいはその受容体作動薬等を配合することができる。また、さらに、保湿剤、着色顔料、防腐剤、シリコーン油、炭化水素類、植物油、ロウ類、エステル油、低級アルコール、高級アルコール、界面活性剤、抗酸化剤、増粘剤、中和剤、紫外線吸収剤、紫外線防御剤等を配合することができる。
【0020】
本発明の表皮ターンオーバー促進剤等は、経口または皮膚に適用すればよく、その適用量は投与経路によっても異なるがジクロフェナク、フェルビナク、イブプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェン又はそれらの塩の量として通常1日あたり1mg〜1000mg程度が好ましい。
【実施例】
【0021】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0022】
実施例1
(表皮細胞増殖促進試験)
ヘアレスマウス皮膚を用い、細胞増殖マーカーであるPCNA(Proliferating cell nuclear antigen)発現を評価することで表皮の細胞増殖促進作用を有する成分の探索を行った。
PCNAは、核内増殖抗原で、PCNA合成レベルは、細胞周期中の細胞増殖及びDNA合成の程度に相関すると言われている。PCNAは非増殖細胞中では非常に低いレベルで存在しており、長い休止期のために細胞を静止状態に保つが、細胞が細胞分裂周期に入るとPCNAレベルは急激に増加する。これを利用して非増殖細胞集団から増殖細胞集団への移行を検出することが可能である。
【0023】
A.試験方法
(1)動物
HR−1ヘアレスマウス♂16匹、5−20週齢
(2)被験物質
ジクロフェナクナトリウム、フェルビナク、インドメタシン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェンナトリウム
なお、陽性対照としてディフェリン(レチノイン酸受容体作動薬)0.1%含有外用剤を用いた。
【0024】
(3)投与方法
マウス1頭あたり1製剤を背部に1日1回、5日間塗布した(5回塗布)。また、何も処置しない無処置も実施した。塗布量は、1製剤あたり30μLとした。無処置及び製剤塗布群の内容を下記に示した。
1:無処置(略号:NT)
2:陽性対照(レチノイン酸受容体作動薬ディフェリン0.1%含有外用剤、略号:PC)
3:ジクロフェナクナトリウム1%含有外用剤(略号:DF−Na)
4:フェルビナク3%含有外用剤(略号:FLB)
5:インドメタシン1%含有外用剤(略号:IM)
6:イブプロフェン2%含有外用剤(略号:IBU)
7:ケトプロフェン3%含有外用剤(略号:KTP)
8:ロキソプロフェンナトリウム1%含有外用剤(略号:LXP)
【0025】
(4)組織切片の作成及び免疫染色
最終塗布後、3日目に皮膚を約1cm四方採取し、10%中性ホルマリン液で一晩固定した。固定した皮膚切片は、自動固定包埋装置(RH−12、サクラ)にて、パラフィン包埋を行った。
パラフィン包埋後、Tissue−Tek(サクラ)にてパラフィンブロックを作成した。その後、ミクロトーム(ROM−380、Yamato)を用いて2−3μmの厚さで薄切し、スライドグラスに貼り付け、40℃で一晩乾燥し、脱パラフィンを行い標本を作成した。
PCNA免疫染色法に先立ち、3%H
2O
2(MeOH)で10分浸し、その後、リン酸緩衝液、pH7.2(PBS)で3回洗浄(1回あたり2分)した。PCNA免疫染色は、PCNA Staining Kit(invitrogen)のマニュアルに従って行った。作成した切片は、光学顕微鏡(BIOZERO、Keyence)を用いて観察した。
【0026】
(5)データ解析
・PCNA陽性及び陰性細胞のカウント
PhotoShopCS4(Adobe Systems)を用いて、撮影した画像を基に解析した。サンプルあたり、異なる5枚の画像から、基底細胞全数をカウントし、PCNA免疫染色法によって茶色に染色された基底細胞(PCNA陽性細胞)の割合を求めた。
・表皮の厚さ
PhotoShopCS4(Adobe Systems)を用いて、撮影した画像を基に解析した。サンプルあたり、異なる3−5枚の画像から、それぞれ10か所の表皮の厚さを測定し(計30−50データ)、その平均値とSD(標準偏差)を求めた。
【0027】
B.結果
無処置、製剤塗布及び陽性対照塗布時における塗布部位の皮膚切片像を
図1に示した。このときのPCNA陽性細胞数を
図2、表皮の厚さの計測値を
図3に示した。
【0028】
無処置に比べ、ジクロフェナクナトリウム、フェルビナク、イブプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェンナトリウム塗布及び陽性対照塗布で、基底細胞中におけるPCNA陽性細胞数が増加していることが観察された。ケトプロフェンでは、他製剤塗布よりも若干低い値を示し、インドメタシンではマウスが死亡した。全基底細胞数に対するPCNA陽性細胞の割合は、ジクロフェナクナトリウム、フェルビナク、イブプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェンナトリウム塗布及び陽性対照塗布で、著しく増加していることが分かる。PCNAは細胞増殖のマーカーであることから、細胞増殖活性が活発に行われていることを示している。
撮影した画像を基に表皮の厚さを測定し(計30−50データ)、その平均値とSDを求めた。陽性対照塗布では、無処置に比べ、表皮の厚さの著しい増加が認められた。陽性対照塗布と比較すると、ジクロフェナクナトリウム、フェルビナク、イブプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェンナトリウム塗布における表皮の厚さの増加は低い値であった。陽性対照であるアダパレンはレチノイン酸受容体作動薬である。レチノイン酸類は皮膚のターンオーバーを促進するが、表皮の肥厚(表皮の厚さの増加)や、炎症を惹起する副作用もある。ジクロフェナクナトリウム、フェルビナク、イブプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェンナトリウムは細胞増殖を促進するが、明確な肥厚は認められておらず、その作用はレチノイン酸類とは異なるメカニズムを介しているものと推察された。
【0029】
実施例2
ヘアレスマウス皮膚を用い、細胞増殖マーカーであるPCNA(Proliferating cell nuclear antigen)発現を評価することで、加齢に伴う表皮の細胞増殖活性を検討した。また、実施例1で効果があったジクロフェナクナトリウムの影響についても検討した。
【0030】
A.試験方法
(1)動物
HR−1ヘアレスマウス♂8匹、5−20週齢
(2)被験物質
ジクロフェナクナトリウム
(3)投与方法
19−20週齢のマウス背部に1日1回、5日間塗布した(5回塗布)。また、5、8、19−20週齢の各無処置群を設けた。
(4)投与群
1:5週齢、無処置(略号:5W)
2:8週齢、無処置(略号:8W)
3:19−20週齢、無処置(略号:19−20W)
4:19−20週齢、ジクロフェナクナトリウム1%含有外用剤(略号:19−20W_DF−Na)
【0031】
(5)組織切片の作成及び免疫染色
実施例1と同様に行った
(6)データ解析
PhotoShopCS4(Adobe Systems)を用いて、撮影した画像を基に解析した。サンプルあたり、異なる5枚の画像から、基底細胞全数をカウントし、PCNA免疫染色法によって茶色に染色された基底細胞(PCNA陽性細胞)の割合を求めた。
【0032】
B.結果
各週齢の無処置ヘアレスマウスのPCNA陽性細胞数並びに19−20週齢ヘアレスマウスにジクロフェナクナトリウムを5日間塗布したときのPCNA陽性細胞数を
図4に示した。
無処置ヘアレスラットにおける表皮基底細胞のPCNA陽性細胞数は、5週齢では著しく高かったが、8週齢ではそれより低く、19−20週齢では5週齢の1/2以下に低下していた。表皮の細胞増殖活性は加齢に伴い低下することが示唆された。一方、19−20週齢ヘアレスマウスにジクロフェナクナトリウムを5日間塗布することで、5週齢ヘアレスマウスと同程度のPCNA陽性細胞数となった。このことから、ジクロフェナクナトリウムは、皮膚のターンオーバーを促進することで、老化した皮膚機能を回復する働きがあると思われた。
また、ジクロフェナクナトリウム同様実施例1で活性を示した抗炎症剤フェルビナク、イブプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェンナトリウムについても同様の効果があると推察される。