(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、特許文献1の従来技術においては、天井吊り金具に天井フレームが固定され、この天井フレームの枠組みに、ランナー等を継ぎ足して出寸法を調整し、下地を固定している。
しかし、このような技術では、天井フレームより離れた位置に下地を配置する際には施工が難しく、下地が安定的に固定されないという問題点がある。
また、このような技術では、天井下地の端部からランナーを継足し、このランナーを介して野縁と梁とを連結する必要がある。
【0006】
更に、吊り金具本体が梁のフランジを把持する間隔は一定であるため、把持するものの厚さが限定されてしまうという問題点もあった。
つまり、梁として使用される鋼材は、H型鋼のみならず、断面コ字形状の溝型鋼等様々な鋼材が使用される。
【0007】
これら梁に使用される鋼材は、サイズ(特に、厚さ)が異なっており、どのような厚みの鋼材であっても容易に対応することが可能な金物が求められていた。
また、梁には、金物把持部分(フランジ部端部等)の厚さが一定ではないものもある。
【0008】
例えば、溝型鋼の場合には、その自由端辺部分(側壁端辺部分)の厚みが端部に近づくにつれて減少する(つまり、テーパ状に傾斜ができる)ものもあり、このような場合に、金物の一定の間隙内に自由端辺部分(側壁端辺部分)を確実に把持することは困難である。
また、部材には様々なサイズがあり、また、使用箇所により納まり寸法も異なるため、このようなサイズ・寸法の違いに柔軟に対応することが可能な金物が求められていた。
【0009】
本発明の目的は、上記各問題点を解決することにあり、様々な厚さの梁に柔軟に対応することが可能であり、取付け位置の調整も可能な梁取合い金物及びこれを用いた天井構造を提供することにある。
更に、本発明の他の目的は、他の部材を介さず、梁と下地桟を直接連結することが可能な施工性の優れた梁取合い金物及びこれを用いた天井構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、請求項1に係る梁取合い金物によれば、建物天井構成部材を梁に取付けるための梁取合い金物であって、該梁取合い金物は、前記建物天井構成部材が取付けられる本体部材と、該本体部材に取付けられ、前記本体部材とともに梁を挟持固定する移動部材と、を有して構成されており、前記本体部材は、前記建物天井構成部材が取付けられる構成部材固定部と、前記移動部材が取付けられる梁載置固定部を備え
るとともに、前記移動部材は、前記梁を挟持する梁挟持部と、該梁挟持部の前記梁端部が挿入される側と反対側から鈍角を成して延出するスライド部とを有して構成されており、前記梁載置固定部には、前記梁が配設される側から前記梁と離隔する方向へと穿たれたスライド孔が形成され、前記梁挟持部は、前記梁載置部と所定の間隔をもって対向するように配設されるとともに、前記スライド部は、先端部が前記スライド孔から前記梁挟持部が配設される側と反対側へ突出するように配設されており、前記移動部材と前記梁載置固定部には、締結部材が貫通しており、
前記締結部材を締結することにより、前記梁挟持部と前記梁載置固定部との間の間隙の形状が変化するとともに、前記移動部材と前記梁載置固定部との距離が変化し、前記移動部材と前記梁載置固定部との間に前記梁の端部が挿入されて挟持固定されることにより解決される。
【0011】
このように構成されていることにより、本発明に係る梁取合い金物では、締結部材を調整する(つまり、締結部材を締結する方向に回転する又は弛緩する方向に回転する)ことにより、移動部材と梁載置固定部との距離を変化させることができる。
つまり、移動部材と梁載置固定部との間に梁の端部が挿入されて挟持固定されるのであるが、梁の端部の厚さが異なっても、移動部材と梁載置固定部との間に梁の端部を挟持することが可能であり、このため作業性及び施工性が向上する。
また、耐力構造部である梁より直接固定されるため、従来技術に比して、吹抜け部壁がより強固に安定して固定される。
【0012】
また、具体的には
、前記締結部材を締結することにより、前記移動部材と前記梁載置固定部との距離が近接し、前記梁挟持部の前記梁端部が挿入される側が前記梁端部に圧接すると、前記スライド部は、前記梁挟持部との角度を押し広げられながら、前記スライド孔を前記梁と離隔する方向に移動すると好適である。
【0013】
このように構成されているため、締結部材を締結することにより、移動部材と梁載置固定部との距離が近接するのであるが、このとき、梁挟持部の梁端部が挿入される側が梁端部に圧接すると、スライド部は、梁挟持部との角度を押し広げられながら、スライド孔を梁と離隔する方向に移動することになる。
つまり、梁挟持部の梁端部が挿入される側が梁端部に圧接すると、この圧接地点はこれ以上動かないので、この圧接地点を中心として、スライド部は、梁挟持部との角度を押し広げられながらスライド孔を梁と離隔する方向に移動する。
換言すれば、梁挟持部と梁載置固定部との間の間隙の形状が変形し、梁端部を確実に把持することができるようになる。
このため、例えば、梁が溝型鋼で形成されており、梁端部がテーパ状になっているような場合であっても、この形状に沿うように梁挟持部と梁載置固定部との間の間隙の形状が変形可能であるため、圧接面積が大きくなり、確実に梁端部を把持することができる。
また、スライド部と梁挟持部との角度が押し広げられた反力として、梁挟持部の梁端部が挿入される側(圧接地点)には、梁挟持方向に力が加わるため、物理的にも更に確実に梁端部を固定することが可能となる。
よって、簡易かつ確実に梁の端部を固定することができる。
【0014】
このとき、前記構成部材固定部は、前記移動部材が配設される側と反対方向へ向けて、前記梁載置固定部から延出しており、前記構成部材固定部には、取付け位置を調整するための締結孔が複数形成されていると好適である。
このように構成されていると、下地桟の梁取合い金物への取付け位置を調整することが可能となる。
【0015】
また、このとき、前記梁挟持部と前記スライド部との成す角度は、120°乃至140°であると好適である。
例えば、梁挟持部とスライド部との成す角度が約90°若しくは鋭角であった場合、スライド部の摺動が阻害される。
よって、梁挟持部と連結部とが成す角度は鈍角となるように構成されると好適である。
【0016】
また、本発明に係る梁取合い金物は、さらに具体的には、建物天井構成部材を梁に取付けるための梁取合い金物であって、該梁取合い金物は、前記建物天井構成部材が取付けられる本体部材と、該本体部材に取付けられ、前記本体部材とともに梁を挟持固定する移動部材と、を有して構成されており、前記本体部材は、前記建物天井構成部材が取付けられる構成部材固定部と、該構成部材固定部から略垂直に延出する梁載置固定部を備え、前記梁載置固定部には、前記構成部材固定部が形成されている側から前記構成部材固定部から離隔する方向に穿たれた略楕円形状の長孔であるスライド孔が形成されているとともに、前記構成部材固定部には、前記建物天井構成部材側への取付け位置を調整するための締結孔が複数形成されており、前記移動部材は、前記梁の端部を挟持する梁挟持部と、該梁挟持部の前記梁端部が挿入される側と反対側から鈍角を成して延出するスライド部とを有して構成されており、前記スライド部は、前記梁挟持部から連続して延出する連結部と、該連結部の前記梁挟持部と連続する側と反対側略中央部から延出する係止部とを有しており、前記梁挟持部は、前記梁載置部と所定の間隔をもって対向するように配設されるとともに、前記係止部は、先端部が前記スライド孔から前記梁挟持部が配設される側と反対側へ突出するように配設されており、前記梁挟持部にはナットが配設された移動部材ネジ貫通孔が形成され、締結部材が前記スライド孔から移動部材ネジ貫通孔に向かって貫通するとともに前記ナットに螺合しており、前記締結部材を締結することにより、前記梁挟持部が前記梁載置固定部側に引寄せられて前記梁挟持部と前記梁載置固定部との距離が近接し、前記移動部材の前記スライド部が形成されている側と反対側の端部が、当該端部に挿入された前記梁の端部に圧接すると、前記係止部は、前記スライド部と前記梁挟持部との角度が押し広げられることに連動して、前記スライド孔に沿って前記梁と離隔する方向に移動するよう構成されている。
【0017】
また、本発明に係る天井構造は、請求項1乃至
請求項4記載の梁取合い金物により、
前記建物天井構成部材を鋼製の梁に固定したことにより構成されている。
この梁取合い金物は、通常、複数個使用される。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る梁取合い金物によれば、様々な厚さの梁に柔軟に対応することが可能である。
つまり、本発明に係る梁取合い金物では、締結部材を締結する方向に回転する又は弛緩する方向に回転することにより、移動部材と梁載置固定部との距離を変化させることができる。
本発明においては、移動部材と梁載置固定部との間に梁の端部が挿入されて挟持固定されるよう構成されており、梁の端部の厚さが異なっても、この移動部材と梁載置固定部との間の距離が調整可能であるため、梁の端部を挟持することが可能であり、このため作業性及び施工性が向上する。
【0019】
また、スライド部は、梁挟持部との角度を押し広げられながら、スライド孔を梁と離隔する方向に移動することとなるため、梁挟持部と梁載置固定部との間の間隙の形状が変形し、梁端部を確実に把持することができるようになる。
例えば、本発明に係る梁取合い金物においては、梁が溝型鋼で形成されており梁端部がテーパ状になっているような場合であっても、この形状に沿うように梁挟持部と梁載置固定部との間の間隙の形状が変形可能であるため、圧接面積が大きくなり、確実に梁端部を把持することができる。
また、スライド部と梁挟持部との角度が押し広げられた反力として、梁挟持部の梁端部が挿入される側(圧接地点)には、梁挟持方向に力が加わるため、物理的にも更に確実に梁端部を固定することが可能となる。
よって、簡易かつ確実に梁の端部を固定することができる。
【0020】
更に、構成部材固定部には、取付け位置を調整するためのボルト孔が複数形成されているため下地桟等への取付け位置の調整も可能である。
更に、他の部材(ランナー等)を介さず、梁より下地桟を直接施工することが可能であり、このため施工性の優れた梁取合い金物及びこれを用いた天井構造を提供することが可能となる。
このように、本発明においては、耐力構造部である梁より直接固定されるため、吹抜け部壁がより強固に安定して固定されるとともに、天井パネルの位置に左右されずに、施工における自由度が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下に説明する構成は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
【0023】
本実施形態は、様々な厚さの梁に柔軟に対応することが可能であるとともに、取付け位置の調整も可能な梁取合い金物及びこれを用いた天井構造に関するものである。
【0024】
図1乃至
図8は、本発明に係る一実施形態を示すものであり、
図1は梁取合い金物を示す斜視図、
図2は梁取合い金物の分解図、
図3は本体部材を示す3面図、
図4は移動部材の4面図、
図5は梁取合い金物の使用状態を示す説明図、
図6は梁取合い金物の梁固定機構を示す説明図、
図7は梁取合い金物の使用状態を示す説明図、
図8は天井構造を示す説明図である。
【0025】
まず、
図1乃至
図4により、本実施形態に係る梁取合い金物Sの構成について説明する。
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る梁取合い金物Sは、本体部材1、移動部材2、締結部材3を有して構成されている。
【0026】
本実施形態に係る本体部材1は、構成部材固定部11、梁載置固定部12を有して構成されている。
図3に示すように、構成部材固定部11は、略矩形平板形状に形成されており、6個のネジ貫通孔11aが形成されている。
このネジ貫通孔11aが特許請求の範囲に記載の「締結孔」に相当する。
本実施形態においては、6個のネジ貫通孔11aは、下方(
図1のY方向:後述する梁載置固定部12が形成されている側と反対側)両内隅部に1個ずつ並列して2個、この両内隅部に形成された2個のネジ貫通孔11aの上方(
図1のX方向:後述する梁載置固定部12が形成されている側)に、上下方向(
図1のX−Y方向)に等間隔に並列するように各々2個ずつ形成されている。
【0027】
なお、このネジ貫通孔11aの形成個数及び形成箇所は、これに限られることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜設計することができる。
このネジ貫通孔11aは、梁取合い金物Sの取付け位置を調整するためのものである。
つまり、このネジ貫通孔11aを複数個形成することにより、梁取合い金物Sの構成部材側への取付け位置を微調整することが可能となり、施工性が向上する。
【0028】
梁載置固定部12は、構成部材固定部11の一辺から、構成部材固定部11に対して略垂直に延出しており、その中央部には長手方向(つまり、構成部材固定部11に近接する側から離隔する方向に向けて)に略長楕円形状のスライド孔12aが形成されている。
【0029】
また、両長辺は、略垂直下方に折り曲げられており、この折り曲げ部分が本体部材補強リブ12b,12bとなっている。
このように、本体部材1は、構成部材固定部11及び梁載置固定部12により、略L字形状の部材として構成されている。
【0030】
本実施形態に係る移動部材2は、梁挟持部21、スライド部22を有して構成されている。
図4に示すように、梁挟持部21は、略矩形平板状に構成されており、その相対向する2辺は同方向略垂直に折り曲げられ、移動部材補強リブ21b,21bとなっている。
なお、この移動部材補強リブ21b,21bが起立する方向(
図1のX方向)を上方と記す。
また、梁挟持部21の略中央部分には、移動部材蝶ネジ貫通孔21aが形成されており、この移動部材蝶ネジ貫通孔21aと連通するように、蝶ネジナット21cが固定されている。
なお、この移動部材蝶ネジ貫通孔21aが、特許請求の範囲の移動部材ネジ貫通孔に相当するとともに、蝶ネジナット21cが、特許請求の範囲のナットに相当する。
【0031】
スライド部22は、連結部22Aと係止片22Bとを有して構成されている。
連結部22Aは、梁挟持部21の一辺(補強リブ21b,21bが起立している辺と直交する一辺)から、梁挟持部21に対して鈍角を成して下方(
図1のY方向)に延出した略矩形部である。
【0032】
そして、梁挟持部21と連結部22Aとが成す角度は鈍角となっている。
なお、梁挟持部21と連結部22Aとが成す角度は、鈍角であればよいが、120°〜140°程度が好ましい。
本実施形態においては、梁挟持部21と連結部22Aとが成す角度は、130°となるように形成されている。
これは、後述するが、梁挟持部21と梁載置固定部12とで、梁H1の端部を確実に挟持するために好適な角度となる。
【0033】
また、連結部22Aの下方側の辺(梁挟持部21と連続している辺と対向する辺)の略中央部からは、係止片22Bが下方向に連結部22Aと連続するように延出している。
この係止片22Bの幅は、連続部22Aの幅よりも小さくなるように構成されており、よって、連側部22Aと係止片22Bとの境界部分には、係止片22Bの両側に段差が形成される。
この連続部22Aと係止片22Bとの境界部分の段差を段差係止部K1,K1と記す。
【0034】
また、係止片22Bは、略矩形平板状の基端部分22aと略矩形平板状の先端部22bとで構成されており、基端部分22aの幅が先端部22bの幅よりも小さくなるように構成されている。
【0035】
この幅の違いにより、基端部分22aと先端部22bとの境界部分には、抜け止め係止部K2,K2が形成される。
なお、基端部分22aの幅は、スライド孔12aの幅よりも若干小さくなるように構成されるとともに、先端部分22bの幅はスライド孔12aの幅よりも若干大きくなるように構成されている。
【0036】
このように構成されているため、係止片22Bをスライド孔12aの上部(
図1のX方向側:構成部材固定部11が延出している側と反対側)より挿入して、抜け止め係止部K2,K2がスライド孔12aの長手方向長辺に引っ掛かるように向きを調整することにより、先端部22bがスライド孔12aから抜け出すことのないように移動部材2を配設することができる。
【0037】
また、基端部分22aの幅は、スライド孔12aの幅よりも若干小さくなるように構成されているので、係止片22Bが抜け止め係止部K2,K2によってスライド孔12aに抜け止めされた状態で、スライド孔12aに沿って長手方向に移動することができる。
このようにして、移動部材2のスライド部22は、本体部材1に対して、スライド孔12aに沿って、移動することができる。
【0038】
本実施形態に係る締結部材3は、蝶ネジ31、バネ座金32、平座金33を有して構成されている。
これら蝶ネジ31、バネ座金32、平座金33は、公知の金物が使用されている。
なお、バネ座金32を使用することにより、より大きな締結力を得ることができる。
【0039】
図1及び
図2に示すように、移動部材2は、本体部材1の梁載置固定部12の上面(
図1のX方向側の面:構成部材固定部11が延出する側と反対側の面)に取付けられる。
このとき、係止片22Bの先端部22bは、スライド孔12aから下方(
図1のY方向:構成部材固定部11が延出する側)に突出している。
【0040】
また、本体部材1に移動部材2を取付けた状態においては、梁挟持部21の略中央部分に形成された移動部材蝶ネジ貫通孔21a及び蝶ネジナット21cの内孔は、スライド孔12aと連通するように構成されており、この連通孔に蝶ネジ31がバネ座金32及び平座金33を介して下方(
図1のY方向:構成部材固定部11が延出する側)より挿入される。
【0041】
図5により、梁取合い金物Sにおいて、梁H1に下地桟D1を固定した状態を説明する。
梁H1の端部は、本体部材1を構成する梁載置固定部12の上面(構成部材固定部11が延出する側と反対側の面)と、移動部材2を構成する梁挟持部21の下面(移動部材補強リブ21b,21bが起立する側と反対側)との間に挟持された状態で、蝶ネジ31を締結することにより固定される。
【0042】
また、本体部材1を構成する構成部材固定部11は、ネジ貫通孔11aから木ネジを締結することによって下地桟D1を固定する。
このようにして、下地桟D1は、梁取合い金物Sを介して梁H1に固定されることとなる。
【0043】
次いで、
図6により、本体部材1と移動部材2との間に梁H1が固定される機構を説明する。
なお、
図6は、説明のために間隔や変形を大きく図示しているが、あくまでもこのような動きが実現されるという説明であり、各程度(角度変化や変形の程度等)についてはこの図に拘束されるものではない。
【0044】
図6(a)に示すように、梁H1の端部は、本体部材1を構成する梁載置固定部12の上面(構成部材固定部11が延出する側と反対側の面)と、移動部材2を構成する梁挟持部21の下面(移動部材補強リブ21b,21bが起立する側と反対側)との間に差し込まれる。
【0045】
この状態で蝶ネジ31を締めると、移動部材2は本体部材1の方向に引き寄せられるが、スライド部22に形成された段差係止部K1,K1が、スライド孔12aの長辺上に係止されているため、スライド部22側は本体部材1の方向に引き寄せられ難い。
つまり、移動部材2の後端部(スライド部22が形成されている辺と対向する側の端辺部)が先に本体部材1側へと引き寄せられる。
【0046】
よって、
図6(b)に示すように、蝶ネジ31を締めた当初は、梁挟持部21の後端部(スライド部22が形成されている辺と対向する側の端辺部)が先に本体部材1側に引き寄せられて、梁挟持部21は水平に対して傾いた状態となる。
そして更に、蝶ネジ31を締め込んでいくと、梁挟持部21の後端部(スライド部22が形成されている辺と対向する側の端辺部)は本体部材1を構成する梁載置固定部12に載置された梁H1端部の上面に圧接してこれ以上動けなくなる。
【0047】
これと同時に、
図6(c)に示すように、今度は、梁挟持部21とスライド部22とが成す角度が押し広げられながら、スライド部22が本体部材1のスライド孔12aに沿って前方(構成部材固定部11が形成される側と反対側)に向かってスライド(摺動)する。
そして、梁挟持部21とスライド部22とが成す角度が押し広げられることにより、この反力として、梁挟持部21の後端部側(連結部22Aが延出している側と反対側の端部)に、梁載置固定部12方向への力が加わる。
よって、梁挟持部21と梁載置固定部12との間に梁H1が強力な保持力で挟持されることとなる。
以上のようにして、本体部材1と移動部材2との間に梁H1が固定されることとなる。
【0048】
なお、前述した通り、梁挟持部21と連結部22Aとが成す角度は鈍角であると好適であるのは、このスライド(摺動)を確実に行うためである。
つまり、例えば、約90°以下の角度に設定した場合には、段差係止部K1,K1がスライド孔12aの両サイドに載った状態で固定されてしまい、係止片22Bのスライドが阻害される。
よって、梁挟持部21と連結部22Aとが成す角度は鈍角となるように構成されており、本実施形態においては、130°となるように構成されている。
この角度は、移動部材2と本体部材1の間隙の状態、移動部材2の後端部の圧接力の確保等において好適である。
【0049】
更に、本実施形態に係る梁取合い金物Sの更なる有用性を
図7に示す。
本実施形態に係る梁取合い金物Sは、H型鋼等のフランジ部分のように厚さが一定の梁端部ばかりではなく、溝型鋼のように係止部分の厚さが一定ではなく、テーパ状になった梁H2をもまた有効に固定することができる。
【0050】
つまり、
図7に示すように、本実施形態に係る梁取合い金物Sは、梁挟持部21と梁載置固定部12との間隙の幅を自由に調整することができる。
このとき、上述したように、蝶ネジ31を締め込んでいき、梁挟持部21の後端部(スライド部22が形成されている辺と対向する側の端辺部)が本体部材1に載置された梁H2上面に圧接してこれ以上動けなくなった後、梁挟持部21とスライド部22とが成す角度が押し広げられながら、スライド部22が本体部材1のスライド孔12aに沿って前方(構成部材固定部11が形成される側と反対側)に向かってスライドする。
【0051】
このとき、スライド部22は、梁挟持部21と梁載置固定部12との間隙に梁H2が確実に把持される状態までスライドする。
つまり、梁挟持部21の後端である圧接部分を中心に、梁挟持部21とスライド部22とが成す角度が押し広げられながら、スライド部22が本体部材1のスライド孔12aに沿って前方(構成部材固定部11が形成される側と反対側)に向かってスライドするため、梁H2端部の形状に最大限に沿うように梁挟持部21が傾くことができる。
よって、梁挟持部21の梁H2への押圧面積を最大限に確保することができる。
このようにして、本体部材1と移動部材2との間に梁H2は確実に固定されることとなる。
【0052】
次いで、
図8に梁取合い金物Sを使用した天井構造Tについて説明する。
この天井構造Tは、吹抜け部Eの構造を例示した。
一階天井部分は、天井パネルP1と、石膏ボードである天井板体P2とで構成されている。
【0053】
吹抜け部E側の端部には、下地桟D1を介して吹抜け部壁W1が立設している。
そして、梁取合い金物Sの構成部材固定部11に、下地桟D1の天井パネルP1配設側の側面が固定されている。
本実施形態においては、梁取合い金物Sは複数個使用され、下地桟D1を固定している。
そして、梁H1の側壁端部が、梁取合い金物Sの梁挟持部21と梁載置固定部12との間隙に挟持された状態で固定されている。
【0054】
このようにして、複数の梁取合い金物Sを介して、下地桟D1は梁H1に固定される。
この梁H1上部に、ALC(autoclaved lightweight aerated concrete)の2階床F1が配設されるとともに、その上面が防湿フィルムF2及びフローリングF3等で覆われる。
【0055】
吹抜け部壁W1は、下地桟D1を下地として立設される。
また、2階床F1の吹抜け部E側端部には、内壁W2が立設しており、吹抜け部壁W1は、この内壁W2と吹抜け部E側に対向し、梁H1及び下地桟D1等の構造物を覆い隠すように立設している。
【0056】
以上のように、本実施形態に係る梁取合い金物Sによれば、簡易かつ確実に下地桟D1を梁H1,H2に固定することができる。
つまり、本実施形態に係る梁取合い金物Sは、本体部材1を構成する梁載置固定部12と、移動部材2を構成する梁挟持部21との距離を調整することが可能であるため、梁H1,H2のサイズ(厚さ)を問わず、施工性が高い。
【0057】
また、本体部材1を構成する梁載置固定部12の上面(構成部材固定部11が延出する側と反対側の面)と、移動部材2を構成する梁挟持部21の下面(移動部材補強リブ21b,21bが起立する側と反対側)との間に梁H1,H2の端部を差し込み、蝶ネジ31を締め込むことにより間隙を縮めて、梁載置固定部12の上面と梁挟持部21の下面とで梁H1,H2の端部を挟み込むため、確実に梁H1,H2の端部に固定される。
【0058】
また、スライド部22がスライド孔12aに沿って移動することができるため、蝶ネジ31の締結力が加わり続けると、梁挟持部21とスライド部22とが成す角度が押し広げられながら、スライド部22が本体部材1のスライド孔12aに沿って前方(構成部材固定部11が形成される側と反対側)に向かってスライドし、梁載置固定部12の上面と、梁挟持部21の下面との間が縮まるとともに、梁H1,H2の端部の形状に沿って圧接する。
【0059】
よって、梁H2のように、溝型鋼であっても、つまり、梁H2端部がテーパ状に形成されていても、このテーパの形状に沿って、本体部材1と移動部材2との間に梁H2が確実に固定されることとなる。
【0060】
更に、構成部材固定部11には、複数のネジ貫通孔11aが形成されているため、一階天井部を構成する石膏ボードのサイズ(厚さ)が変わり、下地桟D1の位置が変わっても、柔軟に対応することが可能であり、施工性が向上する。