(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5789473
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04B 39/00 20060101AFI20150917BHJP
【FI】
F04B39/00 102T
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-222456(P2011-222456)
(22)【出願日】2011年10月7日
(65)【公開番号】特開2013-83179(P2013-83179A)
(43)【公開日】2013年5月9日
【審査請求日】2014年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】100100310
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 学
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】三橋 博
(72)【発明者】
【氏名】三原 宏之
(72)【発明者】
【氏名】真土 学
(72)【発明者】
【氏名】井口 治
(72)【発明者】
【氏名】福島 大
【審査官】
松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−167060(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3065591(JP,U)
【文献】
特開平04−318292(JP,A)
【文献】
特開平10−205448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を圧縮する圧縮機本体と、
前記圧縮基本体にベルトを介して接続され、前記圧縮機本体を駆動するモータと、
前記圧縮機本体によって圧縮された空気を貯留する円筒状のタンクと、
前記タンクの下に配置され、フレームに設けられた複数の振動吸収部材により前記圧縮機本体の振動を低減する防振装置とを備え、
前記圧縮機本体と前記モータとを前記タンクの上に前記タンクの長手方向に並べて配置し、
前記防振装置は、前記タンクの荷重を支持する支持部が配置されるステーを有し、
前記フレームは、前記タンクの長手方向の両端に配置された2本の短辺と、前記タンクの径方向の端部に配置された2本の長辺とから形成され、複数の前記振動吸収部材のうち、前記タンクの長手方向両端に配置された振動吸収部材は前記短辺よりも内側で前記ステーよりも外側に配置されることを特徴とする圧縮機。
【請求項2】
前記振動吸収部材は前記2本の短辺には配置されず、前記2本の長辺に配置されることを特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記防振装置は、上フレームと下フレームとを有し、前記上フレームと下フレームとの間に振動吸収部材を配置することを特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記圧縮機本体のベルトを前記フレームの長辺よりも径方向内側に配置することを特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば、防振装置が設けられた圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の圧縮機組立体は振動と騒音を効率よく低減するため圧縮機本体の重心と防振部材の幾何学的中心を合わせる様に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−89445
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1はモータと圧縮機本体が一体に形成された小型の圧縮機に関するものである。ベルトで接続されたモータと圧縮機本体とが円筒状のタンク上の長手方向に並べて配置された大型の圧縮機においては、圧縮機本体の起動時に特に大きな振動が発生する。この場合、タンクの径方向の振動がタンクの長手方向の振動よりも大きくなり、空気タンクに溶接している圧縮機取り付け台やベルトオオイ取り付け板の空気タンク溶接部に大きな応力が発生し亀裂を生じるおそれがあり、信頼性を向上させることができなかった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み、円筒状のタンクの径方向の振動をタンクの長手方向の振動に変換することで、信頼性を向上させた圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑み、本発明は、空気を圧縮する圧縮機本体と、前記圧縮基本体にベルトを介して接続され、前記圧縮機本体を駆動するモータと、前記圧縮機本体によって圧縮された空気を貯留する円筒状のタンクと、前記タンクの下に配置され、フレームに設けられた複数の振動吸収部材により前記圧縮機本体の振動を低減する防振装置とを備え、 前記圧縮機本体と前記モータとを前記タンクの上に
前記タンクの長手方向に並べて配置し、
前記防振装置は、前記タンクの荷重を支持する支持部が配置されるステーを有し、前記フレームは、前記タンクの長手方向の両端に配置された2本の短辺と、前記タンクの径方向の端部に配置された2本の長辺とから形成され、複数の前記振動吸収部材のうち、前記タンクの長手方向両端に配置された振動吸収部材は前記短辺よりも内側で前記ステーよりも外側に配置されることを特徴とする圧縮機を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、円筒状のタンクの径方向の振動をタンクの長手方向の振動に変換することで、信頼性を向上させた圧縮機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】本発明の実施例1における防振装置のばね配置
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0009】
図1、
図2、
図3を用いて、本発明の実施例1における構成を説明する。
【0010】
図1、
図2は本発明の実施例1における圧縮機の全体構造である。円筒状のタンク1の上に圧縮機本体2とモ−タ3が配置される。圧縮機本体2はタンク1上に設けられた圧縮機取り付け台19に固定されている。また、ベルトオオイ18はタンク1に溶接されたベルトオオイ取り付け板17でベルトオオイ18の下側のみで支えられている。圧縮機本体2は、モ−タ3の回転がVベルト4により圧縮機本体2に伝達されることにより駆動され、サイレンサ5から空気を吸込む。圧縮機本体2によって圧縮された空気は吐出配管6を通ってタンク1内に貯留される。圧縮機本体2とモータ3とは、タンク1の上にタンク1の長手方向に並べて配置される。吐出口7は空気用途の機器に接続され貯留された空気を使用する際に用いられる。タンク1の下部にはタンク1の荷重を支持する支持部としての足8が長手方向に並んで2つ設けられており防振装置の上フレーム9に固定されている。また、防振装置の下フレーム10は図示していない基礎ボルトで基礎に固定され、上フレーム9と下フレーム10の間には振動吸収部材としてのばね11が設けられている。振動吸収部材は弾性があり、振動を吸収できるものであれば、ばねに限られない。また、過剰な振動からばねを保護するためストッパ21がフレームの四隅に設けられている。
【0011】
図3は防振装置を上方から様子である。上フレーム9、下フレーム10はそれずれ、長手方向の両端に設けられた短辺14−1、14−2と、タンク径方向の両側に設けられた長辺15−1、15−2により長方形の枠として形成されている。上フレーム9にはタンク1を固定するステー12−1、12−2が設けられており4箇所のボルト穴13によりタンク1を支持する支持部である足8と固定される。破線の丸印で示したのはばね11の位置を示している。ばね11の位置はフレームの短辺14−1、14−2には設けられてはおらず、フレームの長辺15−1、15−2にのみ各3個が設けられている。その位置関係は、長辺と短辺の交点である4隅とステーの間に4個、その間に2個設けられている。即ち、フレームの長辺15−1、15−2に配置されたばね11のうち、左右の両端に配置された4つのばね11は、長手方向の両端部であるフレームの短辺14−1、14−2よりもタンク1の長手方向内側であって、タンク1の足8(ステー12−1、12−2)よりもタンク1の長手方向外側にそれぞれ配置されている。また、これらの4つのばねの間にも長辺15−1、15−2上にばね11がそれぞれ1つずつ配置されており、合計で6個のばね11が配置されている。このばね11はばね11よりも上の重量に耐えられる耐荷重と振動伝達率を満足するように設計され、
図3では6個のばねで満足する場合を示している。なお、ばねの個数は、耐荷重と振動伝達率を満足すれば4個以上の任意の偶数の組み合わせが可能である。
【0012】
次に、本実施例における圧縮機において発生する振動について説明する。
【0013】
圧縮機が停止している状態でモータ3に通電すると圧縮機本体2とモータ3の回転系(モータプーリ20、圧縮機プーリ16や図示していないモータ3内のロータなども含む)の慣性力が大きいのでモータの起動トルクの反力とVベルト4に働く張力Fが発生によりフレーム9から上の圧縮機全体が振動する。
【0014】
このとき、Y方向(タンク1の径方向)に振動するとベルトオオイ18に働いた慣性力でベルトオオイ18を支えているベルトオオイ取り付け板17の上下17−1、17−2のタンク溶接部に応力が発生する。また、同様に振動が原因で圧縮機本体2に働いた慣性力で圧縮機取り付け台のコーナ19−1、19−2に応力が発生する。これらの部分は、X方向(タンク1の長手方向)の振動に対しては例えばベルトオオイ18取り付け板17がX方向に距離をもって配置されているため剛性が高い。また、圧縮機本体2取り付け台は概略コの字形上でX方向を長手として溶接しているためX方向の振動に対して強度を有している。一方、Y方向についてはベルトオオイ取り付け板17、圧縮機取り付け台のコーナ19−1、19−2ともに、長手方向であるX方向ほど距離をもって配置することはできないため、Y方向の振動に対するの強度はX方向の振動に対する強度よりも弱くなる。
【0015】
次に、本実施例における効果を説明する。
【0016】
本実施例では、長辺15−1、15−2にそれぞれ配置された左右両端のばね11を長手方向の両端部であるフレームの短辺14−1、14−2よりもタンク1の長手方向内側であって、タンク1の足8(ステー12−1、12−2)よりもタンク1の長手方向外側に配置した。短辺14−1、14−2にばねを配置しないことにより、X方向に振動しやすくして、長辺15−1、15−2にばねを配置することにより、Y方向に振動しにくくした。この結果、Y方向の振動がX方向の振動によって吸収されるため、起動時の振動は応力的に強度を有するX方向に生じやすくなり、Y方向の振動は小さくなる。一方で、ばねをタンク1の足8を支持するステー12−1、12−2の位置より外側に配置することにより、X方向の振動が必要以上に大きくならないようにした。これにより、Y方向の振動に対するの強度がX方向の振動に対する強度よりも弱いベルトオオイ18取り付け板の上下部17−1、17−2や圧縮機本体2の取り付け台のコーナ19−1、19−2のY方向の応力が低減でき信頼性を向上することが可能となる。
【実施例2】
【0017】
実施例2を
図2、
図4を用いて説明する。
図4は圧縮機を側面から見た図である。圧縮機プーリ16はベルトオオイ18内に破線で示した。圧縮機プーリ16にはベルト4が組みつけられているため圧縮機の中心からL2の位置に張力F(
図2のベルト下側に記載)が作用する。張力Fは、圧縮機本体の重心からY方向外側にずれた位置で生じるため、Y方向のモーメントが発生し、Y方向の振動原因の1要素になっている。
【0018】
そこで、本実施例では、ベルト4、圧縮機プーリ16をばねが配置されたフレーム9の長辺15−1、15−2よりもタンク1の径方向内側に配置した。即ち、短辺側から見てばね位置L1を圧縮機プーリ16の位置L2よりも外側に配置することでそれぞれのばねの弾性力を変化させることなく全体としてのばねの反力を大きくすることが出来る。すなわち、先に述べたY方向モーメントを吸収する力が大きくなり実施例1と比較してさらにY方向の振動を発生しにくくすることが可能となる。
【符号の説明】
【0019】
1 タンク
2 圧縮機本体
3 モ−タ
4 ベルト
5 サイレンサ
6 吐出配管
7 吐出口
8 足
9 防振装置の上フレーム
10 防振装置の下フレーム
11 ばね
12−1 支え
12−2 支え
13 足の固定用穴
14−1 フレームの短辺
14−2 フレームの短辺
15−1 フレームの長辺
15−2 フレームの長辺
16 圧縮機プーリ
17 ベルトオオイ取り付け板
17−1 ベルトオオイ取り付け板溶接部上端
17−2 ベルトオオイ取り付け板溶接部下端
18 ベルトオオイ
19 圧縮機取り付け台
19−1 圧縮機取り付け台溶接部コーナ
19−2 圧縮機取り付け台溶接部コーナ
20 モータプーリ
21 ストッパ