特許第5789504号(P5789504)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5789504
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】永久磁石モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/27 20060101AFI20150917BHJP
   H02K 21/22 20060101ALI20150917BHJP
   H02K 1/22 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   H02K1/27 502G
   H02K1/27 502A
   H02K21/22 M
   H02K1/22 A
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-282683(P2011-282683)
(22)【出願日】2011年12月26日
(65)【公開番号】特開2012-217320(P2012-217320A)
(43)【公開日】2012年11月8日
【審査請求日】2014年2月5日
(31)【優先権主張番号】特願2011-73885(P2011-73885)
(32)【優先日】2011年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】100100310
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 学
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】税所 亮平
(72)【発明者】
【氏名】二瓶 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 政英
(72)【発明者】
【氏名】川島 博昭
(72)【発明者】
【氏名】澤田 享兵
【審査官】 宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−268200(JP,A)
【文献】 特開2006−025508(JP,A)
【文献】 特開昭60−096162(JP,A)
【文献】 特開2002−233122(JP,A)
【文献】 特開2004−357469(JP,A)
【文献】 特開2006−014521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
H02K 21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
概略円板形状を有し、中央が回転軸に接続されたロータと、巻線を施したステータとを有するアウターロータ型モータであって、
前記ロータが、
回転軸方向に積層された複数の積層電磁鋼板からなるロータコアと、該ロータコアの内径側の周面に、接着により固定された複数の永久磁石とを回転軸方向の一方端面側に有するものであり、
前記複数の電磁鋼板のうち、回転軸方向でロータ側に配置された少なくとも1つの電磁鋼板のみが、前記内径側の周面に永久磁石が固定された電磁鋼板よりも迫出した面を内径側に有するものであり、前記永久磁石のロータ側端面の少なくとも一部が、前記迫出した面と接触するものであるアウターロータ型モータ。
【請求項2】
請求項1に記載のアウターロータ型モータにおいて,前記積層電磁鋼板は,前記永久磁石の周方向幅と略同一もしくは大きい幅で,前記永久磁石の回転軸心方向の厚さの略二分の一以下の深さの溝を有し、前記迫出した面の回転軸心方向に延びた長さは,前記永久磁石の厚さの略二分の一以下であり、かつ前記迫出した面のモータ周方向に延びた長さは溝幅の略四分の一以下となるものであるアウターロータ型モータ。
【請求項3】
請求項2に記載のアウターロータ型モータにおいて、前記迫出した面が,前記溝の最外隅二箇所に設けられているものであるアウターロータ型モータ。
【請求項4】
請求項3に記載のアウターロータ型モータにおいて、前記迫出した面の形状が略三角形状であるアウターロータ型モータ。
【請求項5】
請求項2に記載のアウターロータ型モータにおいて、前記迫出した面の形状が略矩形状であるアウターロータ型モータ。
【請求項6】
請求項2に記載のアウターロータ型モータにおいて、前記迫出した面は,前記溝の中央部に局所的に設けられているであるアウターロータ型モータ。
【請求項7】
請求項1に記載のアウターロータ型モータにおいて,前記積層電磁鋼板は,前記永久磁石の周方向幅と略同一もしくは大きい幅で,前記永久磁石の回転軸心方向の厚さの略二分の一以下の深さの溝を有し、前記迫出した面の回転軸心方向に延びた長さは,前記永久磁石の厚さの略二分の一以下となるものであるアウターロータ型モータ。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか一項に記載のアウターロータ型モータにおいて、前記積層電磁鋼板の磁石接着面と電磁鋼板の境界部位に段差を設けたアウターロータ型モータ。
【請求項9】
請求項に記載のアウターロータ型モータにおいて、前記段差は前記溝の周方向の両端部に形成されるものであるアウターロータ型モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は永久磁石モータに関し,特に表面型永久磁石を設けたロータ構造に係る。
【背景技術】
【0002】
従来のモータでは,例えば,特許文献1に記載のように,永久磁石を設けたロータ鉄心の軸方向両端に非磁性の当板を設けて,この当板により永久磁石の軸方向のズレを防止する構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−110117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来例では永久磁石の軸方向へのズレを抑えるために非磁性の当板をロータの両側に取付けている。本来,永久磁石は接着材によりロータに取付けられるので,接着材が硬化後には永久磁石の軸方向へのズレは生じない。あえて,永久磁石の移動防止手段をこのように二重に講じることにより信頼性を向上させているのである。
【0005】
しかしながら,専用の当板を設けるため,そのための寸法が必要となり,モータが大きくなるという問題がある。また,当板取付けの手間がかかるという問題もある。
【0006】
本発明を適用するモータは小型化・薄型化を指向するもので,例えばエレベータ装置の巻上機に用いることを想定すると,そのような用途では,エレベータの乗りかごが昇降する昇降路内の限られた空間にモータを組み込んだ巻上機を設置せざるを得ない。したがって,モータの小型,薄型の要求は顕著である。
【0007】
この場合,モータ寸法を大きくするのは避けなければならない。特に,単に当板を追加すると,軸長方向の寸法が大きくなり,モータの薄型化を実現することができない。
【0008】
したがって,永久磁石の軸長方向のズレを抑える構造を,薄型化を満足できる範囲で実現できることが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
概略円板形状を有し、中央が回転軸に接続されたロータと、巻線を施したステータとを有するアウターロータ型モータであって、前記ロータが、回転軸方向に積層された複数の積層電磁鋼板からなるロータコアと、該ロータコアの内径側の周面に、接着により固定された複数の永久磁石とを回転軸方向の一方端面側に有するものであり、前記複数の電磁鋼板のうち、回転軸方向で前記ロータ側に配置された少なくとも1つの電磁鋼板が、前記内径側の周面に永久磁石が固定された電磁鋼板よりも迫出した面を内径側に有するものであり、前記永久磁石のロータ側端面の少なくとも一部が、前記迫出した面と接触するものであることにより、上記課題は解決できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ロータを構成する積層電磁鋼板うち回転軸方向でロータ側に配置された少なくとも1つの電磁鋼板自体に、回転軸心方向に迫出した面を設けて永久磁石の軸長方向の移動を阻止することができので、薄型構造を保ったまま永久磁石固定を実現できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態の永久磁石モータの横断面図
図2】本発明の実施形態の永久磁石モータの縦断面図
図3】本発明の実施形態の永久磁石モータロータの1極分の外観図
図4】本発明の実施形態の永久磁石モータロータの1極分の永久磁石取付け前の外観図
図5】本発明の実施形態の永久磁石モータロータの縦断面の拡大図
図6】本発明の実施形態の永久磁石モータロータの永久磁石の無い状態での上面図
図7】本実施形態を実現するための磁石固定部位が設けられたコア形状概略図
図8】専用の形状調整用の抜き型形状概略図
図9】本実施形態を実現するための磁石固定部位が設けられていないコア形状概略図
図10】本発明の他の実施形態の永久磁石ロータの永久磁石の無い状態での上面図
図11】本発明の他の実施形態の永久磁石ロータの永久磁石の無い状態での上面図
図12】本発明の他の実施形態の永久磁石ロータの永久磁石の無い状態での上面図
図13】実施形態を応用した1極分の永久磁石取付け前の外観図
図14】他の実施形態の構造を示した永久磁石取付け前の外観図
図15】実施形態を応用した永久磁石ロータモータの永久磁石の無い状態での上面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に本発明の実施形態の永久磁石モータの横断面図を示す。図2に本発明の実施形態の永久磁石モータの縦断面図を示す。図3に本発明の実施形態の永久磁石モータロータの1極分の外観図を示す。図4に本発明の実施の形態の永久磁石モータロータの1極分の永久磁石取付け前の外観図を示す。図5に本発明の実施形態の永久磁石モータロータの縦断面の拡大図,図6に本発明の実施形態の永久磁石モータロータに永久磁石の無い状態での上面図を示す。
【0013】
図1に示すように,本実施の形態の永久磁石モータはロータ1がロータコア11と永久磁石12から構成されている多極のアウターロータ型のモータである。ロータコア11には溝が形成され,そこに永久磁石12が配置されるようになっている。ステータ2にはステータコア21にステータコイル22が施された集中巻きの構成で,ステータコア分割位置31にて複数のステータコアに分割されている。
【0014】
図2に示すように,本実施の形態の永久磁石モータは,ステータコイル22を巻いたステータコア21から成るステータ2がフレーム23に圧入され,フレーム23には固定シャフト24が圧入されており,この固定シャフト24に対して,永久磁石12を設けたロータコア11とが固定されて成るロータ1が軸受13によって回転自在に支承されている。
【0015】
この実施の形態では,永久磁石12が40個,ステータコイルが48個と,スロット数対極数が48対40すなわち,12対10の系列の多極集中巻きモータを構成している。
【0016】
このスロット数極数については,モータの用途の回転数,出力等に応じて,種々選定することができるのはいうまでも無く,本実施の形態で開示しているのはその一例に過ぎない。本実施の形態では,ロータコアと永久磁石の構成に着目して,以下,詳細を説明する。
【0017】
図3に本実施形態の永久磁石モータのロータコアの1極分の外観図について示すように,永久磁石12はロータコア11の凹状の溝部14に接着剤を介して接着固定されている。図4に本発明の永久磁石モータのロータコアの1極分について,永久磁石12を固定する前の外観図を示すが,ロータコア11の最下部に磁石固定部位15が設けられている。このロータコアは,最下部の1枚の電磁鋼板についてのみ,当該溝部14の当該部位の部分を張り出させるような形状として打ち抜いたものであり,当該電磁鋼板を最下部に配置し,その上に通常の溝形状をほどこした電磁鋼板を必要枚数打ち抜き,積層したものである。
【0018】
図5に本実施形態の永久磁石モータのロータの断面図を示す。この図のように,ロータ1の円筒部位に対して,ロータコア11,永久磁石12が順次固定され,ロータを形成する。ここで,ロータは回転体を構成するためにロータコア11,永久磁石12が形成される円筒部位のみでなく,それらを出力軸に対して連結するために円板状の構造物と一体となって,概略カップ形状を成している。例えば,図2に示すように,ロータコア11の被取付体としてのロータ1がステータコア21を覆うようにして延在しており,ステータ2の外周部に突出するロータコア取付部の形状とあわせてカップ形状となっている。
【0019】
先に述べたように,本永久磁石モータをエレベータ装置等に用いるには,モータを薄型にする必要がある。図4で示すと上下方向の寸法を小さくする必要がある。このため,モータの機能特性上必須であるロータコア,永久磁石の上下方向の寸法,すなわち積厚は必要十分な寸法を確保し,また,ロータはその使用状況から必要とする強度確保するために板の厚さを保たねばならない。よって,モータの積厚方向の寸法を小さく,薄型にするためには,図5上で示している永久磁石とロータ板との距離Aを極力小さくすることが重要となることは明白である。
【0020】
ところで,通常,ロータ1は強度の観点から鋳鉄等で成形されており,磁性体である。したがって,永久磁石12とロータ1の間には磁気的吸引力が発生する。永久磁石12は接着材にてロータコア11に接着固定されるが,接着材が硬化するまでに若干の時間が要する。その間,永久磁石12がロータ1に引きつけられて,永久磁石12のロータコア11への取付け工程において,永久磁石12の位置がずれてしまう可能性がある。そこで,本実施形態のようにロータの円板上部分に近い側の電磁鋼板の一部を溝部14に張り出すような形状として,永久磁石12を保持することにより,永久磁石12がロータ1側にずれないようにできる。この形状を設ける電磁鋼板は1枚で十分であるため,以下では1枚の電磁鋼板の一部を溝部14に張り出す形状を設けたものとして説明する。
【0021】
各部品の寸法により異なるが,永久磁石寸法として数十mm角で,厚さ十mm以下程度では,距離が数mm程度であれば,永久磁石12とロータ1との間の磁気吸引力は,数N程度であり,十分電磁鋼板の一部により永久磁石を保持することは可能である。
【0022】
図6に本発明の実施の形態の永久磁石モータロータの永久磁石が無い状態での上面図を示す。仮想的な永久磁石を点線で示し,その永久磁石の厚さDmに対して,ロータコア11の溝部14に積層電磁鋼板の最下部の1枚の電磁鋼板によりもうけた永久磁石固定部位15が永久磁石厚さ方向にH1,永久磁石の幅方向(ロータの回転方向)にL1の辺を有する三角形の形状を成して形成されている。H1は永久磁石厚さDmに対して,以下の関係がある。
【0023】
Dm>2×H1 ・・・(1)
すなわち,H1はDmの略二分の一以下である。
【0024】
また,L1は,永久磁石幅Lmの略四分の一以下である。
【0025】
この程度であれば,永久磁石の磁路を短絡するような影響も少なく,永久磁石の発揮する磁束を低減させて,モータ特性を悪化させるということもほとんど無い。
【0026】
また,図6に示す溝部位の幅Lcに対して,永久磁石が溝からはみ出ることがないように,永久磁石の幅Lmはマイナス公差で形成されている。したがって,永久磁石は図の左右方向に若干バラついて取付けられる。この際,永久磁石固定部位15の長さL1はこのバラつきを考慮した余裕のある寸法を選択することはいうまでも無い。
【0027】
更に,永久磁石固定部位15は,概略三角形を形成しており,永久磁石固定部位15の張り出し部分に対してその根元部分を大きめに配分しているので,永久磁石固定部位15の図の奥行き方向への外力に対する強度を高めることができ,永久磁石のロータへの吸引力による変位を十分抑制することができる。
【0028】
図7に本発明の実施形態を実現するための磁石固定部位が設けられたコア形状概略図を示し、図8に本発明の実施形態を実現するための専用の形状調整用の抜き型形状概略図を示し、図9に本発明の実施形態を実現するための磁石固定部位が設けられていないコア形状概略図を示す。
【0029】
磁石固定部位15が設けられた電磁鋼板の形状と設けられていない電磁鋼板の形状は違うため、抜き型も別のものを用意する必要があり,2種類の型が必要となる。しかし、専用の形状調整用の抜き型を用意することにより、1種類の型で,本発明の実施形態が実現可能となる。具体的には次の通りである。
【0030】
初めに、図7のように1種類の型にて,永久磁石固定部位15が設けられた形状の電磁鋼板を作成する。その後、図8に点線で示した専用の形状調整用の抜き型16を用いて電磁鋼板を抜く。この抜き型16は局所的に形成された永久磁石固定部位15を取り除くために用いられる補助的な型であり、これにより、図9のような磁石固定部位15が設けられていない形状の電磁鋼板が作成でき,図7図9の形状の電磁鋼板を組み合わせて積層することで本発明の実施形態に係るコアが作成できる。すなわち、補助的な型16を用い、二段階のステップでコア形状を形成することにより、1種類の主型で二種類のコアを作成することが可能となる。
【0031】
専用の形状調整用の抜き型16の寸法は、永久磁石厚さ方向の長さをDb,永久磁石の幅方向(ロータの回転方向)の長さをLbとしたとき、DbはH1以上、LbはL1以上とするのが望ましい。なお、このコア形状作成方法は一例であり、作成方法はこれに限らない。
【0032】
図10に,本発明の他の実施形態の永久磁石ロータの永久磁石の無い状態での上面図を示す。
【0033】
これは,ロータコア11に永久磁石固定部位15として,積層電磁鋼板の最下部の1枚の電磁鋼板について,溝の両端に概略矩形の部位を突出させたものである。その永久磁石厚さ方向の寸法H1は永久磁石厚さDmの略二分の一以下で,永久磁石幅方向の寸法L1は,永久磁石幅Lmの略四分の一以下である。
【0034】
この程度であれば,永久磁石の磁路を短絡するような影響も少なく,永久磁石の発揮する磁束を低減させて,モータ特性を悪化させるということもほとんど無い。
【0035】
また,出張り寸法H1,L1を図6の実施形態の永久磁石固定部位15と同一としても,図6での永久磁石固定部位15の形状の場合よりも永久磁石を保持する面積が大きくなるので,永久磁石固定の機能を確実に実現できるという効果がある。
【0036】
図11に,本発明の他の実施形態の永久磁石ロータの永久磁石の無い状態での上面図を示す。
【0037】
これは,ロータコア11に永久磁石固定部位15として,積層電磁鋼板の最下部の1枚の電磁鋼板について,溝の中央部に概略矩形の部位を局所的に突出させたものである。その永久磁石厚さ方向の寸法H1は,永久磁石厚さDmの略二分の一以下で,永久磁石幅方向の寸法L1は,永久磁石幅Lmの略二分の一以下である。
【0038】
この程度であれば,永久磁石の磁路を短絡するような影響も少なく,永久磁石の発揮する磁束を低減させて,モータ特性を悪化させるということもほとんど無い。
【0039】
また,図6乃至,図10の実施形態の永久磁石固定部位15と比較して,溝中央部に配置されるので,永久磁石の溝に対する幅方向のズレが多少存在しても,永久磁石を確実に固定できるという効果がある。
【0040】
図9に,本発明の他の実施形態の永久磁石ロータの永久磁石の無い状態での上面図を示す。
【0041】
これは,ロータコア11に永久磁石固定部位15として,積層電磁鋼板の最下部の1枚の電磁鋼板について,溝の全幅に渡って概略矩形の部位を突出させたものである。その永久磁石厚さ方向の寸法H1は,永久磁石厚さDmの略二分の一以下である。
【0042】
この程度であれば,永久磁石の磁路を短絡するような影響も少なく,永久磁石の発揮する磁束を低減させて,モータ特性を大きく悪化させるということは無い。ただし,図6,乃至図10図11の実施形態の永久磁石固定部位15に比べて,その面積が大きくなるので,若干の特性への影響が生じる可能性は否めない。
【0043】
ただし,薄型化のために永久磁石とロータ間距離を極力切り詰めるためには有効な構造であり,特性と寸法のトレードオフを鑑みて,本構成を採用することもありえる。
【0044】
図13に,本発明の実施形態を応用した永久磁石モータのロータコアの1極分を示す。この例は,積厚方向に複数の永久磁石を並べて貼り付けるロータを対象としている。そして、積層方向に互いに隣り合う永久磁石の間に中間磁石固定部位17を設けたものである。このため、永久磁石12が複数配置される部分の電磁鋼板は、既に述べた方法で作成された固定部位15と同様の形状であり、これを中間磁石固定部位17として利用するものとなっている。
【0045】
中間磁石固定部位17により、各々の永久磁石12に対し中間磁石固定部位17が隣接するため、積厚方向位置が固定され、積厚方向に並ぶ全ての永久磁石の積厚方向位置決めが可能となる。また、永久磁石12は磁石固定部位に挟まれる構造になるため、永久磁石12が積厚方向両方の位置決めが可能となる。
【0046】
中間磁石固定部位17は、図7図10図12に示した磁石固定部位15の大きさや形状でも同様な効果が得られることはいうまでも無い。また、図11は積厚方向に1個のロータだけ増加させた図であるが、それ以上に増加させても同様の効果が得られることはいうまでも無い。
【0047】
図14に、本発明の他の実施形態を示す。図14図13と同様に永久磁石モータのロータコアの1極分を示している。この例は、図3で示したロータコアの溝部に段差18を設けた構造である。この段差18は、ロータコア11の凹状の溝部14からさらに凹形状を設けたものであり、溝部14の表面からさらに窪んだ段差となっている。また、段差18の形成位置は図14に示す位置に限られないが、溝部14の周方向の両端部に形成するのが好ましい。この場合でもロータコア11の端面を形成する電磁鋼板には段差を設けずに磁石固定部位15が存在している。
【0048】
この構造により、接着剤を余分に塗布した場合でも段差18が受け口となり、永久磁石12が余分に塗布された接着剤によって浮き出すことを抑制できる。また、段差18部分が接着剤の流動路となったとしても、磁石固定部位15が余分な接着剤が流出するのを妨げる壁となり、ロータコアの溝部14から接着剤が漏れ出すことを防止することができる。
【0049】
図15に、本発明の他の実施形態を応用した永久磁石ロータの永久磁石の無い状態での上面図を示す。段差18が永久磁石厚さ方向にDa,永久磁石の幅方向(ロータの回転方向)にLaとしたとき,Daは永久磁石の厚さDmの略四分の一以下,またLaも永久磁石幅Lmの略四分の一以下程度にすれば,永久磁石の磁路を短絡するような影響も少なく,永久磁石の発揮する磁束を低減させて,モータ特性を悪化させるということもほとんど無い。
【0050】
また、段差18はリサイクル時の永久磁石取り外し用の工具挿入部としても利用でき、ロータコア11から永久磁石12を引き剥がす時に有効となることが言える。
【0051】
段差18を付加した電磁鋼板の形状も、図8に示した塗部形状の専用の形状調整用の抜き型16を用いてコアを抜くことで作成できる。段差18を付加したコアを作成する際は、図8に示した塗部形状小型の型の寸法Dbを大きくしてコア部でオーバーハングさせて抜くことで作成できる。
【0052】
専用の形状調整用の抜き型16が小さいとコアに突部が残るので磁石を設置する障害となる。したがって,専用の形状調整用の抜き型16は寸法公差として-0,+αのように,マイナス側はゼロとして,プラス側に公差をとるように設定するのが望ましく,実態としてオーバーハングせざるを得ない。したがって,段差18が出現するのが一般的である。本実施形態はこの段差18を敢えて形成させ、これを利用するものといえる。
【0053】
なお、このコア形状作成方法は一例であり、作成方法はこれに限らない。
【0054】
本発明では,アウターロータの構成について実施形態を示し,説明したが,インナーロータの構成であっても,薄型化を測るためには外筐との寸法を切り詰めねばならず,同様な永久磁石固定部位を電磁鋼板に最端部に用いて,磁石を固定することを採用してもよい。その場合,同様な効果が得られることはいうまでも無い。
【産業上の利用可能性】
【0055】
積層電磁鋼板に溝を設けて永久磁石を接着固定する永久磁石モータにおいて,当該積層電磁鋼板の最端部の1枚の電磁鋼板に対して,永久磁石の軸長方向の移動を防止する永久磁石固定部位を突出させることにより,永久磁石モータのロータへの磁気吸引力による移動を防止し,薄型の永久磁石モータを容易に構成できる。
【0056】
特に,乗りかごが昇降する昇降路内に巻上機を配置する機械室レスエレベータ用の薄型巻上機用のモータに利用可能である。
【符号の説明】
【0057】
1…ロータ、11…ロータコア、12…永久磁石、13…軸受、14…溝部、15…永久磁石固定部位、16…抜き型、17…中間磁石固定部位、18…段差、2…ステータ、21…ステータコア、22…ステータコイル、23…フレーム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15