特許第5789510号(P5789510)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5789510自動車用のトーションビーム式後ろ車軸懸架装置の横部材およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5789510
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】自動車用のトーションビーム式後ろ車軸懸架装置の横部材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60G 9/04 20060101AFI20150917BHJP
【FI】
   B60G9/04
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-517252(P2011-517252)
(86)(22)【出願日】2008年12月4日
(65)【公表番号】特表2011-527262(P2011-527262A)
(43)【公表日】2011年10月27日
(86)【国際出願番号】IB2008055103
(87)【国際公開番号】WO2010004370
(87)【国際公開日】20100114
【審査請求日】2011年11月11日
【審判番号】不服2014-8870(P2014-8870/J1)
【審判請求日】2014年5月13日
(31)【優先権主張番号】TO2008A000521
(32)【優先日】2008年7月8日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】503336534
【氏名又は名称】システミ・ソスペンシオーニ・ソシエタ・ペル・アチオニ
【氏名又は名称原語表記】SISTEMI SOSPENSIONI S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(72)【発明者】
【氏名】グイド・セバスティアーノ・アレッソ
(72)【発明者】
【氏名】マッシモ・トリンケーラ
(72)【発明者】
【氏名】ロレンツォ・カスターニョ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア・サンティーニ
(72)【発明者】
【氏名】ピエーロ・モンキエロ
【合議体】
【審判長】 島田 信一
【審判官】 氏原 康宏
【審判官】 出口 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2002/105159(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/197372(US,A1)
【文献】 米国特許第5520376(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のトーションビーム式車軸懸架装置(10)の横部材(12)であって、
前記横部材(12)は、閉じた横断面を有する1つの鋼管製品で構成されており、
前記横部材(12)は、
・水平軸の中央を下方に向けて凹状に湾曲した軸に沿って延びており、前記湾曲した軸を含む第1の面を前記水平軸の周りで所定角度(α)だけ回転してなる第2の面に沿って上方に向けて凹状に押しつぶされた横断面を有するアーチ状の中央部(12a)と、
・トーションビーム式車軸懸架装置(10)のそれぞれのトレーリングアーム(14)へと堅固に接続されるように構成された一対の端部(12b)と、
・前記中央部(12a)とそれぞれの端部(12b)との間にそれぞれ介装され、それぞれが上方に向けて凹状に湾曲した一対のアーチ状の接続部(12c)を備えていることを特徴とする横部材。
【請求項2】
前記端部(12b)が、トレーリングアーム(14)に向かって真っ直ぐに伸びる部位である請求項1に記載の横部材。
【請求項3】
前記鋼製品の鋼が、
・マンガンボロン鋼、
・冷間または熱間圧延による低合金高強度鋼、
・冷間または熱間圧延による多相高強度鋼、
・二相高強度鋼、
・フェライトベイナイト高強度鋼、又は
・高合金クロムステンレス鋼
のいずれかである請求項1または2に記載の横部材。
【請求項4】
前記端部(12b)が、前記中央部(12a)の横断面の外周よりも大きい外周を有する断面を有している請求項1〜3のいずれか一項に記載の横部材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の横部材(12)と、該横部材(12)のそれぞれの端部(12b)へとそれぞれ堅固に接続された一対のトレーリングアーム(14)と、を備えている自動車のトーションビーム式車軸懸架装置。
【請求項6】
前記トレーリングアーム(14)の軸が、1つの平面内を延びており、前記横部材(12)の前記端部(12b)の軸が、前記平面内を延びている請求項5に記載の懸架装置。
【請求項7】
自動車のトーションビーム式車軸懸架装置(10)の横部材(12)を製造するための方法であって、
a)水平軸を有する真っ直ぐな鋼製の管状部品を所望の長さへと切断するステップ、
b)前記水平軸の中央を下方に向けて凹状に湾曲した軸に沿うように前記管状部材の中央部(12a)をアーチ状に曲げるステップ、
c)前記管状部材の中央部(12a)と前記管状部材の両端部(12b)との間を繋ぐ一対の接続部(12c)を上方に向けて凹状にアーチ状に曲げるステップ、
d)前記水平軸の周りで前記管状部材を所定角度(α)だけ回転するステップ、
e)前記湾曲した軸を含む第1の面を前記水平軸の周りで所定角度(α)だけ回転してなる第2の面に沿って前記中央部(12a)を押しつぶして該中央部(12a)の横断面を凹状にするステップを含む方法。
【請求項8】
f)前記部品の前記端部(12b)の各々を、該端部(12b)の断面が、前記中央部(12a)の前記中央断面よりも大きい外周を有するように拡大させるステップをさらに含んでいる請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用のトーションビーム式車軸懸架装置(特に、後輪の懸架装置)の横部材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中央の横部材と、この横部材の横方向の両端に剛に接続され、後端に車輪の軸を支持するためのそれぞれの部材を保持しており、前端に車体への取り付けのためのそれそれの部材を保持している一対のトレーリングアームと、を備えている自動車用のトーションビーム式後ろ車軸懸架装置が、知られている。トレーリングアームを、通常の荷重の条件下で無視できる程度の変形しか被らないという点で、剛体部品と考えることができる一方で、横部材は、トレーリングアームを互いに他方に対して弾性的に回転させることができるよう、特にねじりのもとでの特定の弾性を有していなければならない。
【0003】
横部材の長さは、車両のトレッドに関係し、したがって基本的に個々の用途によって決まるため、横部材のねじり剛性を、横部材の断面(特に、中央面における断面)を適切に形作ることによって、所与の設計値をとるように変えることができる。これに関し、現時点において自動車用のトーションビーム式車軸懸架装置に使用されている横部材を、2つの別々の種類に分類することができる。一方では、通常はプレスまたは他の塑性変形プロセスによって得られ、さまざまな形状(例えば、C字、U字、V字、またはΩ状の形状)の輪郭を備える断面を有している金属薄板製の梁で構成される開断面の横部材が存在する。他方では、金属製の管状の梁で構成され、そのような梁が、梁に所望のねじり剛性の特徴をもたらすために、断面に所定の形状を与えるべく例えばプレスまたはハイドロ成形プロセスによって塑性変形させられている閉断面の横部材が存在する。特に、横部材の断面について最も重要な特徴は、せん断中心の垂直位置である。なぜならば、せん断中心の垂直位置が、操縦性に関する懸架装置の性能の評価のための最も重要なパラメータの1つであるロール時の懸架装置の先端部の変化に、直接的かつ大きな影響を及ぼすからである。縦方向のサイズが同じであるが、形状および向きが異なる中央断面を有する横部材においては、せん断中心が異なる高さに位置し、したがって懸架装置の運動および弾性運動性能に異なる様相で影響を及ぼす。
【0004】
断面の形状にかかわらず、現時点において自動車用のトーションビーム式車軸懸架装置に使用されている横部材は、おおむね水平方向に延びており、すなわち横部材の軸が、実質的に水平な平面内にある。そのような横部材の構造は、トーションビーム式車軸懸架装置のトレーリングアームによって保持される車輪が駆動輪である場合に、利用できる空間の問題を引き起こす。例えば、四輪駆動または後輪駆動の自動車のトーションビーム式後ろ車軸懸架装置の場合が該当する。利用できる空間の問題は、基本的には、縦方向(すなわち、横部材に対して直角)に延び、したがって横部材そのものと「交差」する駆動軸の存在に起因する。
【0005】
後輪駆動または四輪駆動の自動車にトーションビーム式車軸懸架装置を使用できるようにするために、少なくとも中央部において弓状またはアーチ状に曲げられている横部材が、欧州特許出願EP−A−0733501から知られている。横部材の中央部が上方へと延びているという事実ゆえに、後輪を駆動する目的の駆動軸が、横部材と干渉することなく中央部の下方を通過することができる。横部材を、その全幅にわたってアーチ状にすることができ、あるいは中央部だけを、真っ直ぐであるそれぞれの端部に滑らかにつながるようにアーチ状にしてもよい。横部材の両端部は、アーチ状であっても、真っ直ぐであっても、水平に対して傾いている。他方で、トレーリングアームは水平に延びているため、横部材の端部とトレーリングアームとの間の溶接接合部は、結果的にかなり不規則かつ複雑な形状を有し、このことが構造的な問題を引き起こしかねないピーク値を有する不規則な応力分布につながる。
【0006】
さらには、欧州特許出願EP−A−0733501から公知の横部材は、開いたU字形の断面を有している。開断面が選択されているため、きわめて高いねじり剛性の値を達成することが不可能であり、結果として横部材が、高いねじり剛性を必要とする用途には適さないものになっている。さらに、アーチ形の横部材では、横部材のねじり剛性を高めるためにトーションバーを追加することが不可能である。
【0007】
欧州特許出願EP−A−1080954号が、鋼管の冷間成形によって得られる自動車用のトーションビーム式後ろ車軸懸架装置の横部材を開示している。横部材が、水平方向に延びており、二重壁の実質的にU字形の断面を有している中央部と、円形の断面(この横部材の素材である鋼管の断面に対応する)を有している一対の端部と、中央部をそれぞれの端部に接続する一対の中間部とを備えており、中間部が、横方向外側の端部における円形の形状から横方向内側の端部におけるU字状の形状へと連続的に変化する断面形状を有している。
独立請求項1の前提部に係るツイストビーム軸サスペンション用横部材と、独立請求項7の前提部に係るそのような横部材の製造方法は、WO2006/061424で公知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、自動車のトーションビーム式後ろ車軸懸架装置の弓状の横部材であって、高い機械的強度を有しており、中央断面のせん断中心の位置について設計者に大きな自由度を提供し、駆動軸および他の部品(例えば、給油口をタンクへと接続する管)の存在によって利用可能な空間が少なくなっている用途にも使用することができる横部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的および他の目的が、本発明によれば、添付の独立請求項1に記載の特徴を有する自動車のトーションビーム式車軸懸架装置の横部材によって、充分に達成される。
【0010】
本発明による自動車のトーションビーム式車軸懸架装置の横部材の好都合な実施の形態が、従属請求項の主題であり、従属請求項の内容は、本明細書の一体の一部分として意図される。
【0011】
本発明の別の態様によれば、上述の目的および他の目的が、自動車のトーションビーム式車軸懸架装置の横部材を製造するための方法であって、添付の独立請求項に記載の段階を含む方法によって、充分に達成される。

【0012】
要約すると、本発明は、トーションビーム式車軸懸架装置の弓状の横部材であって、アーチ状の中央部と、それぞれが懸架装置のそれぞれのトレーリングアームへと堅固に接続されるように意図された一対の端部と、前記中央部とそれぞれの端部との間にそれぞれ介装され、それぞれが凹部を前記中央部とは反対の側に向けている一対のアーチ状の接続部と、を有するように適切に形作られた閉じた断面のただ1つの鋼製部品で構成された横部材を提供するという考え方にもとづいている。
【0013】
前記端部は、好ましくは水平方向の真っ直ぐな部位である。横部材は、好ましくは、管をアーチ状の中央部の少なくとも一部分において適切に押しつぶすことで、中央断面の形状を必要とされる慣性特性をもたらすような形状とすることによって得られる。
【0014】
アーチ状の中央部のおかげで、横部材を、四輪駆動または後輪駆動の自動車のトーションビーム式後ろ車軸懸架装置において、駆動軸との干渉を生じることなく使用することができる。同時に、水平方向の真っ直ぐな端部のおかげで、横部材が、一方では、上述した従来技術に比べて利用可能な空間の問題を抱えることが少なく、他方では、上述した従来技術よりもより規則的な形状を有するトレーリングアームとの接合縁を有し、したがって応力のピークの発生に起因する上述の問題が生じない。さらには、押しつぶされた管の使用ゆえ、一方では、閉じており、したがってたとえトーションバーがなくても(横部材が弓状の形状であるがゆえに、そもそも使用できない可能性もある)高いねじり剛性の値をもたらすことができ、他方では、懸架装置の運動および弾性運動の要件に照らして、所望の位置にせん断中心を位置させるように適切に形作ることができる中央断面が得られる。
【0015】
本発明の別の好都合な特徴によれば、横部材のアーチ状の中央部の押しつぶしの中央面(以下では、単に「押しつぶしの平面」と称する)の向きを、横部材の湾曲した軸が延在する中央面(以下では、単に「反りの平面」と称する)の向きとは別個独立に設定することができる。したがって、押しつぶしの平面(その向きは、中央断面のせん断中心の位置に関連しており、したがって懸架装置の運動および弾性運動性能に影響する)および反りの平面(その向きは、横部材が従わなければならないサイズの制約に関連する)を、一致させる必要がなく、お互いに対して傾けることもできる。その結果、懸架装置の設計者が、懸架装置の配置ならびに運動および弾性運動性能の両者に関する種々の要件の間の最良の妥協の追求において、広い自由度を手にする。
【0016】
本発明の別の特徴によれば、トーションビーム式車軸のトレーリングアームへと堅固に接続されるように意図された横部材の前記端部が、拡大された断面を有しており、すなわち横部材の中央部の断面の外周よりも大きい外周の断面を有している。中央部に対する端部の外周の増加の程度は、当然ながら横部材の素材の変形吸収能力に関係する限界の範囲内で、個々の用途に応じてさまざまである。得られるトレーリングアームとの接合領域の慣性特性の増加が、機械的強度の向上につながり、したがってより大きなねじりモーメントを伝達できるようになるとともに、横方向の荷重に対するトーションビーム式車軸の剛性を向上させ、車両の操縦性の改善をもたらす。
【0017】
本発明のさらなる特徴および利点が、添付の図面を参照しつつ、あくまでも本発明を限定するものではない例として提示される以下の詳細な説明から、さらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の好ましい実施の形態による横部材を有している自動車の後輪の懸架装置のトーションビーム式車軸の斜視図である。
図2図1のトーションビーム式車軸の横部材の斜視図である。
図3図1のトーションビーム式車軸の横部材の正面図である。
図4図1のトーションビーム式車軸の横部材の側面図である。
図5図1のトーションビーム式車軸の横部材の中央断面を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の説明および特許請求の範囲において、「長手方向」および「横方向」、「内側」および「外側」、「前方」および「後方」、「上方」および「下方」、などといった用語は、横部材が自動車に取り付けられた状態に関するものとして意図されている。
【0020】
まず図1を参照すると、自動車の懸架装置(特に、後輪の懸架装置)のトーションビーム式車軸の全体が、10で指し示されており、基本的に、弓状の横部材12と、横部材12の横方向の両端にそれぞれ堅固に接続された一対のトレーリングアーム14とを備えている。トレーリングアーム14の各々が、車輪保持部材16と、トーションビーム式車軸10を車体(図示されていない)へと関節接続するためのブッシュ座18と、ばね(図示されていない)を支持するためのプレート20と、ショックアブソーバ(やはり図示されていない)のための取り付け部材22とを保持している。
【0021】
横部材12は、好ましくはマンガンボロン鋼(例えば、20MnB5鋼)からなり、あるいは低合金高強度鋼(冷間または熱間圧延による)、多相高強度鋼(冷間または熱間圧延による)、二相高強度鋼(例えば、DP600鋼)、フェライトベイナイト高強度鋼、または高合金クロムステンレス鋼からなる、1本の鋼管で構成されている。ここで、図2〜4も参照すると、横部材12が、中央部12aと、横部材をトレーリングアーム14に接続するための一対の横方向の両端部12bと、それぞれの端部12bを中央部12aにつないでいる一対の接続部12cと、を一体的に備えている。
【0022】
横部材12の中央部12aは、アーチ状の形状を有しており、すなわち、その軸が直線に沿って延びているのではなく、凹部を下向きに有しているアーチ状の曲線に沿って延びており、したがって端部12bよりも高い高さに位置している。横部材12の上反り、すなわち中央部12aと端部12bとの間の垂直距離は、好ましくは100mmよりも大きいかなり大きな値をとることができる。したがって、自動車の駆動軸を干渉を生じることなく横部材の中央部12aの下方に通すことができるため、横部材12を、後輪または四輪駆動の自動車のトーションビーム式後ろ車軸懸架装置に使用することができる。中央部12aは、例えばC字、U字、V字、またはΩ状の形状などの適切な形状を備え、あるいは横部材を形成する鋼管を押しつぶすことによって得られるつぶれた耳たぶ状の部位を有する形状を備えている閉じた断面を有している。横部材の中央断面の特定の例が、図5に示されている。本明細書の導入部においてすでに述べたように、閉じた断面を使用することで、トーションバーに頼ることなく、高いねじり剛性の値を達成することが可能になる。
【0023】
横部材12の端部12bは、好ましくは真っ直ぐな部位であり、好ましくは水平面内を延びており、すなわち実質的にトレーリングアーム14と同じ平面内を延びている。したがって、端部12bの各々が、かなり滑らかに延び、したがって構造的な問題を引き起こすような高いピークが存在しない滑らかな応力分布をもたらすそれぞれのトレーリングアーム14との溶接接続のための接合縁24を有している。本明細書の導入部においてすでに述べたように、水平方向の真っ直ぐな端部の使用は、横部材のサイズの問題の軽減も可能にする。
【0024】
一実施の形態によれば、横部材12の端部12bが、横部材12の素材である鋼管の外周よりも大きい外周を有しており、すなわち中央部12aの外周よりも大きい外周を有している。中央部12aに対する端部12bの断面の外周の増加の程度は、当然ながら横部材の素材の変形吸収能力ゆえの限界の範囲内で、個々の用途に応じてさまざまである。得られるトレーリングアームとの接合領域の慣性特性の増加が、機械的強度の向上につながり、したがってより大きなねじりモーメントを伝達できるようになるとともに、横方向の荷重に対するトーションビーム式車軸の剛性を向上させ、車両の操縦性の改善をもたらす。
【0025】
横部材12の接続部12cは、凹部を中央部12aとは反対側(上向き)に向けているアーチ状の部位である。したがって、横部材12は、接続部12cと中央部12aとの間の領域に凹面の2度の変化を有しているおおむね湾曲した輪郭を有している。
【0026】
横部材12は、鋼管の成形および押しつぶしによって得られる。より具体的には、第1の作業によって、必要とされる弓状の輪郭を有する横部材がもたらされる一方で、第2の作業によって、横部材(特に、横部材の中央部)に必要とされる断面がもたらされる。これら2つの作業は、所与の方向(典型的には、垂直方向)に動かされる専用の工具(すなわち、成形工具および曲げ工具)による鋼管の冷間または熱間変形によって実行される。本発明の好都合な特徴によれば、懸架装置の設計者が懸架装置の配置ならびに運動および弾性運動性能の両方に関して種々の要件の間の最良の妥協を選択できるよう、成形面の向きおよび上反りの平面の向きを、互いに別個独立に選択することができる。そのような可能性は、横部材の製造方法が、成形作業と曲げ作業との間に、被加工物を成形面と上反りの平面との間の所望の傾きの角度に等しい角度αだけ回転させることができる可能性を提供することによってもたらされる。この角度を、図4の側面図において明確に見て取ることができる。
【0027】
本発明による横部材の製造方法は、基本的に以下の工程、すなわち
a)適切な直径の鋼管を所望の長さへと切断するステップ、
b)必要とされる湾曲した輪郭を与えるように管を成形するステップ、
c)成形面と押しつぶしの平面との間の所与の傾きの角度を得るために、成形後の管を必要であれば回転させるステップ、
d)管を押しつぶし、特に管のアーチ状の中央部を押しつぶし、必要とされる形状を有する断面をもたらすステップ、
e)管を放置して回復させるステップ、
f)管の端部を、必要であれば、管の断面の外周よりも大きい外周の断面を有するような程度まで、拡大および調整するステップ、
g)管を熱処理するステップ、
h)管を調整するステップ、および
i)油圧式または機械式の切断工具あるいはレーザまたはプラズマ切断装置によって、管を最終的に切断するステップ
を含んでいる。
【0028】
上述の種々の工程の実行の順序は、上記開示の順序と異なってもよく、例えば横部材の端部の拡大を、横部材に必要とされるアーチ状の形状を与える前に実行してもよく、すなわち上記においてステップb)と称されている成形ステップの前に実行してもよい。いくつかの工程を、それらが不要である場合には、省略することさえ可能である。
【0029】
当然ながら、本発明の原理を変えないままで、添付の特許請求の範囲に定められる本発明の技術的範囲から離れることなく、実施の形態および構成の詳細を、あくまでも本発明を限定するものではない例として説明および図示した実施の形態および構成の詳細に関して、幅広く変更することが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5