特許第5789511号(P5789511)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダート ニューロサイエンス (ケイマン) エルティーディーの特許一覧

特許5789511記憶剤の評価のための方法およびシステム
<>
  • 特許5789511-記憶剤の評価のための方法およびシステム 図000052
  • 特許5789511-記憶剤の評価のための方法およびシステム 図000053
  • 特許5789511-記憶剤の評価のための方法およびシステム 図000054
  • 特許5789511-記憶剤の評価のための方法およびシステム 図000055
  • 特許5789511-記憶剤の評価のための方法およびシステム 図000056
  • 特許5789511-記憶剤の評価のための方法およびシステム 図000057
  • 特許5789511-記憶剤の評価のための方法およびシステム 図000058
  • 特許5789511-記憶剤の評価のための方法およびシステム 図000059
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5789511
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】記憶剤の評価のための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/15 20060101AFI20150917BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20150917BHJP
   A01K 67/00 20060101ALI20150917BHJP
   A61K 31/404 20060101ALI20150917BHJP
   A61K 31/45 20060101ALI20150917BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   G01N33/15 Z
   G01N33/48 N
   A01K67/00 D
   A61K31/404
   A61K31/45
   A61P25/28
【請求項の数】12
【全頁数】59
(21)【出願番号】特願2011-518952(P2011-518952)
(86)(22)【出願日】2009年7月17日
(65)【公表番号】特表2011-528667(P2011-528667A)
(43)【公表日】2011年11月24日
(86)【国際出願番号】US2009051082
(87)【国際公開番号】WO2010009453
(87)【国際公開日】20100121
【審査請求日】2012年6月5日
(31)【優先権主張番号】61/081,945
(32)【優先日】2008年7月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512081063
【氏名又は名称】ダート ニューロサイエンス (ケイマン) エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】タリー,ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】ダバチ,ライラ
【審査官】 吉田 佳代子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/137181(WO,A1)
【文献】 特表2006−524243(JP,A)
【文献】 特開2002−020291(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/146199(WO,A1)
【文献】 国際公開第2004/016227(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0135510(US,A1)
【文献】 特表2002−541440(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/115282(WO,A1)
【文献】 特表2003−531857(JP,A)
【文献】 特表2006−508069(JP,A)
【文献】 特表2009−524587(JP,A)
【文献】 特表2009−532496(JP,A)
【文献】 特表2009−537568(JP,A)
【文献】 特表2009−541493(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0160534(US,A1)
【文献】 J.CP Yin et.al.,CREB and the formation of long-term memory,CURRENT OPINION IN NEUROBIOLOGY,1996年,Vol.6,No.2,p.264-268
【文献】 M.Ukai et.al.,Effects of Galanin on Passive Avoidance Response, Elevated Plus-Maze Learning, and Spontaneous Alternation Performance in Mice,Peptides,1995年,Vol.16,No.7,p.1283-1286
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/15
A01K 67/00
G01N 33/48
A61K 31/00−33/40
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/48
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長期記憶を増強することにおける第1の非ヒト霊長類に投与された記憶剤の有効性を評価するための方法であって、該記憶剤は、記憶障害または記憶機能不全に関して薬理学的活性を有する化合物であり、かつCREB経路機能を増強し、該方法は:
該第1の非ヒト霊長類および第2の非ヒト霊長類に複数の試験期間を実施する工程、ここで、各試験期間は、単一の日の間に実施され、該第1の非ヒト霊長類および第2の非ヒト霊長類に複数の対になった刺激を提示することを含み、該複数の対になった刺激の各々が、該対の第2の要素と連合性を有する第1の要素を含み、該対の各要素が、記号、文字、数字、形、線、色、絵、顔または前の1つ以上であり、各試験期間が、該第1の非ヒト霊長類および該第2の非ヒト霊長類が正しい応答を生じる能力を評価することをさらに含み、該評価が、該対の第1の要素の提示に基づいて該対の第2の要素を同定すること、および、必要に応じて、少なくとも50%の正しい応答という能力基準に達するまで、間違って同定された各対の第1の要素を、第1の非ヒト霊長類および第2の非ヒト霊長類に提示することを含む、ならびに
続いての試験期間において直ちに評価される場合に、第1の非ヒト霊長類および第2の非ヒト霊長類が能力基準に達するまで、各試験期間の間に少なくとも1日の間隔をおいて、複数日の期間にわたって試験期間を繰り返す工程
を含み、第2の非ヒト霊長類と比較しての第1の非ヒト霊長類が能力基準に達するのに要する日数の減少は、記憶剤が長期記憶を増強することを示す、方法。
【請求項2】
前記連合性が、顔-名前の連合性および言葉-言葉の連合性からなる群より選択される識別可能な連合性である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記非ヒト霊長類が、サル、キツネザル、マカクザルまたは類人猿である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記記憶剤が、構造:
【化1】

(式中、Y1、Y2、Y3およびY4は各々、独立して、-H;直鎖もしくは分枝C1〜C7のアルキル、モノフルオロアルキルもしくはポリフルオロアルキル;直鎖もしくは分枝C2〜C7のアルケニルもしくはアルキニル;C3〜C7シクロアルキルもしくはC5〜C7シクロアルケニル;-F、-Cl、-Brもしくは-I;-NO2;-N3;-CN;-OR4、-SR4、-OCOR4、-COR4、-NCOR4、-N(R4)2、-CON(R4)2もしくは-COOR4;アリールまたはヘテロアリールであるか;あるいは隣接する炭素原子上に存在するY1、Y2、Y3およびY4のうちの任意の2つがメチレンジオキシ基を構成し得る;ここで、各R4は、独立して、-H;直鎖もしくは分枝C1〜C7のアルキル、モノフルオロアルキルもしくはポリフルオロアルキル;直鎖もしくは分枝C2〜C7のアルケニルもしくはアルキニル;C3〜C7シクロアルキル、C5〜C7シクロアルケニル、アリールまたはアリール(C1〜C6)アルキルである;
Aは、A’、直鎖もしくは分枝C1〜C7アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール(C1〜C6)アルキルまたはヘテロアリール(C1〜C6)アルキルであり;ここで、A’は、
【化2】

であり、R1およびR2は各々、独立して、H、直鎖もしくは分枝C1〜C7アルキル、-F、-Cl、-Br、-I、-NO2または-CNであり;R3は、H、直鎖もしくは分枝C1〜C7アルキル、-F、-Cl、-Br、-I、-NO2、-CN、-OR6、アリールまたはヘテロアリールである;
R5は、直鎖もしくは分枝C1〜C7アルキル、-N(R4)2、-OR4またはアリールである;
R6は、直鎖もしくは分枝C1〜C7アルキルまたはアリールである;
Bは、アリール、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、インドリジニル、インドール-4-イル、インドール-5-イル、インドール-6-イル、インドール-7-イル、イソインドリル、ベンゾ[b]フラン-4-イル、ベンゾ[b]フラン-5-イル、ベンゾ[b]フラン-6-イル、ベンゾ[b]フラン-7-イル、ベンゾ[b]チオフェン-4-イル、ベンゾ[b]チオフェン-5-イル、ベンゾ[b]チオフェン-6-イル、ベンゾ[b]チオフェン-7-イル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾ[b]チアゾリル、プリニル、イミダゾ[2,1-b]チアゾリル、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、2,1,3-ベンゾチアゾリル、フラニル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、シンノリニル、キノキサリニル、1,8-ナフチリジニル、プテリジニル、またはフタルイミジルである;ただし、イミン結合の窒素原子に対してオルトである1つまたは複数の炭素原子が、以下-F、-Cl、-Br、-I、-CN、メチル、エチルまたはメトキシの1つ以上でだけ置換され得る;
nは、1〜4の整数(両端を含む)である;
ここで、アリールは、フェニルまたはナフチルであり、以下:-F、-Cl、-Br、-I、-NO2、-CN、直鎖もしくは分枝C1〜C7アルキル、直鎖もしくは分枝C1〜C7モノフルオロアルキル、直鎖もしくは分枝C1〜C7ポリフルオロアルキル、直鎖もしくは分枝C2〜C7アルケニル、直鎖もしくは分枝C2〜C7アルキニル、C3〜C7シクロアルキル、C3〜C7モノフルオロシクロアルキル、C3〜C7ポリフルオロシクロアルキル、C5〜C7シクロアルケニル、-OR4、SR4、-OCOR4、-COR4、-NCOR4、-CO2R4または-CON(R4)21つ以上で置換されたフェニルおよびナフチルを含む)
を有する化合物またはその薬学的に許容され得る塩からなる群より選択される1種類以上である、請求項1〜いずれか記載の方法。
【請求項5】
前記記憶剤が、構造:
【化3】

を有する化合物またはその薬学的に許容され得る塩からなる群より選択される1種類以上である、請求項1〜いずれか記載の方法。
【請求項6】
前記記憶剤が、構造:
【化4】

(式中、前記記憶剤の3位および5位の炭素は、S立体配置である)
を有する、請求項1〜いずれか記載の方法。
【請求項7】
長期記憶を障害することにおける第1の非ヒト霊長類に投与された記憶剤の有効性を評価するための方法であって、該記憶剤である記憶障害剤は、残留記憶に関して薬理学的活性を有する化合物であり、該方法は:
該第1の非ヒト霊長類および第2の非ヒト霊長類に複数の試験期間を実施する工程、ここで、各試験期間は、単一の日の間に実施され、該第1の非ヒト霊長類および第2の非ヒト霊長類に複数の対になった刺激を提示することを含み、該複数の対になった刺激の各々が、該対の第2の要素と連合性を有する第1の要素を含み、該対の各要素が、記号、文字、数字、形、線、色、絵、顔または前の1つ以上であり、各試験期間が、該第1の非ヒト霊長類および該第2の非ヒト霊長類が正しい応答を生じる能力を評価することをさらに含み、該評価が、該対の第1の要素の提示に基づいて該対の第2の要素を同定すること、および、必要に応じて、少なくとも50%の正しい応答という能力基準に達するまで、間違って同定された各対の第1の要素を、第1の非ヒト霊長類および第2の非ヒト霊長類に提示することを含む、ならびに
続いての試験期間において直ちに評価される場合に、第1の非ヒト霊長類および第2の非ヒト霊長類が能力基準に達するまで、各試験期間の間に少なくとも1日の間隔をおいて、複数日の期間にわたって試験期間を繰り返す工程
を含み、第2の非ヒト霊長類と比較しての第1の非ヒト霊長類が能力基準に達するのに要する日数の増加は、記憶剤が長期記憶を障害することを示す、方法。
【請求項8】
前記連合性が、顔-名前の連合性および言葉-言葉の連合性からなる群より選択される、請求項記載の方法。
【請求項9】
前記非ヒト霊長類が、サル、キツネザル、マカクザルまたは類人猿である、請求項または記載の方法。
【請求項10】
前記複数の試験期間が、毎週、2週毎または1ヶ月毎に繰り返される、請求項1〜いずれか記載の方法。
【請求項11】
前記複数の対になった刺激の各対が、正の要素を含む、請求項1〜10いずれか記載の方法。
【請求項12】
前記複数の対になった刺激の各対が、負の要素を含む、請求項1〜11いずれか記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2008年7月18日に出願された米国特許仮出願第61/081,845号の35 U.S. C. § 119に基づく優先権を主張し、その全内容は参照により本明細書に完全に援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、被検体に投与される記憶剤(memory agent)および/または訓練プロトコルの有効性を評価、同定または評定する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
記憶とは、過去の経験の回想である。人は、新しい情報を銘記し、保存し、次いで、後に時々想起することができる。事実および事象の回想は、意識的または明確な記憶の形態である。また、人は、より潜在的な記憶の形態である自転車に乗る、楽器を弾く、または単純な手掛かりを報酬もしくは罰と関連付けるなどの意識性の低い能力も思い出せる。これらのどちらの場合も、記憶の形成プロセスは、3つの一般的な段階を経て進行するようである。習得 (学習)は、新しい経験の最初の知覚を伴う。この新たに獲得された経験の短期記憶は、そのときは、一過性で不安定なようである。しばしば、反復と安静が必要とされる適切な条件下において、 経験の短期記憶は、次いで、より持続性の長期記憶へと「強固にされ」得る。
【0004】
この記憶プロセスの毎日の例は電話番号の使用を伴うものである。人は、最初に新しい電話番号を調べた場合、数回暗唱して覚える(学習)。次いで、人は、気をそらされなければ、数秒から数分以内で成功裡に番号をダイヤルできる。他方において、妨害があると、ほぼ必ず人は番号を忘れる。番号をダイヤルしてから数分から数時間後では、番号はほとんど思い出され得ない(短期記憶)。しかしながら、電話番号が友人の新しい携帯電話に対応する場合、人は、毎日くらい繰り返しダイヤルしていることに気付き得る。充分繰り返すと、人は、長期記憶により、最終的に電話番号を思い出すことができる。
【0005】
ヒトの脳は、進化的に、その内部および外部環境を感知し、刺激間の因果関係を知覚し、その応答を適合的に変化させるように設計されている。この素晴らしい仕事を成し遂げるため、4万個の遺伝子の自己調節性ネットワークによって、内部に100兆の連結部を有する1000億のニューロンの細胞性ネットワークの発生が指令される。かかる複雑さは驚異的である。他の動物において脳機能を試験することにより、どのようにしてヒトの脳が作用するかの神経生物学者の理解は、一部においてまだ始まったばかりである。
【0006】
新しい経験は、明らかにかなり複雑であり得るが、研究室内で単純で制御可能な2つの特定の刺激間の「連合性」の試験に縮小すると(例えば、パヴロフの学習)、記憶の形成プロセスが、昆虫から哺乳動物までの範囲にわたる多くの異なる動物で試験され得る。これらの動物試験は、記憶の形成がどのようにして進行するかの本発明者らの現状での理解に寄与し、脳の神経解剖学および生化学の局面が明らかになった。注目すべきことに、これらの試験により、記憶の形成の基礎生化学および行動現象学の多くは、神経解剖学的には種間で明白に異なるにもかかわらず、動物界全体で進化的に保存されていることが確立された。
【0007】
これらの動物試験により、記憶の形成は、 一般的に、いくつかの機能的に異なる時間的な段階を経て進行することが示された。習得(LRN)には、通常、反復が必要とされ、通常、かかる経験を銘記する基礎となる神経回路の最大限の関与が漸増すると考えられている。いったん学習されると、初期記憶は急速に崩壊する傾向になり、気が散ることおよび知覚麻痺による破壊に対して感受性となる(すなわち、知覚麻痺感受性記憶;ASM)。ショウジョウバエにおけるASMの遺伝的分析により、ASMは、短期記憶(STM)および中期記憶(ITM)にさらに崩壊され得ることが示された。
【0008】
対照的に、長期持続性記憶は破壊に対して抵抗性であり(すなわち、知覚麻痺抵抗性記憶;ARM)、長期間持続する。重要なことには、これらの動物試験で、一般的に、長期記憶(LTM)の出現にタンパク質の合成が必要とされることが明らかになった。この場合も、ショウジョウバエの試験により、(i)ARMではなくLTMにタンパク質の合成が必要とされること、ならびに(ii)ARMおよびLTMは、遺伝的に、機能的に独立した記憶段階に分析され得ることが明らかになった。
【0009】
また、動物試験により、脳の基礎回路ダイアグラムは発生中に出現することが明らかになった。しかしながら、ニューロン間のほとんどの連結部(シナプス)は、粗野で非機能性である。これらのシナプス連結部が精密化され、それにより種々の回路の機能が微調整されるには、その後の経験が必要である。活性依存性シナプス認識は成人の脳でも継続される。新しい経験を学習することによって神経作用が開始され、最終的に、関連回路内のニューロン間にシナプス認識がもたらされる。これらのシナプス変化(シナプス可塑性)は、神経回路全体に分布しており、長期記憶の物理的根拠であるとみなされている。
【0010】
神経作用の経験依存性変化により、ニューロン内で複雑な生化学的応答が開始される。この生化学反応の最終的な効果により、短期(一過性)および長期(長期持続性)シナプス可塑性がもたらされることになる。さらなるシグナル伝達経路を特定するための基礎研究、およびこのシナプス可塑性の基礎となる他の細胞生物学研究は継続されている。これらのうち最初に発見されたものは、細胞外神経伝達物質の放出を多くのタンパク質が機能性の状態である細胞内変化に伝達する酵素反応のカスケードであるcAMP経路であった。神経伝達物質、その対応する受容体、および細胞質PKAは、短期可塑性を調節しているようであり、一方、長期可塑性の生成には、転写因子CREB(cAMP応答要素結合タンパク質)の活性化が必要とされる。
【0011】
これまでに試験された種では、CREB遺伝子は、2つの反対の形態-下流のCRE媒介性遺伝子の転写の活性化因子または抑制因子で発現される。長期記憶の形成におけるCREBの重要な役割は、最初に、ショウジョウバエでの鍵となる行動の実験によって確立された。正常なショウジョウバエは、特定の臭いとフットショックの罰との連合性を学習することができる。1回の訓練期間後、ほとんどのハエは、T迷路内で先のショックとペアの臭いと中性的な臭いとの選択を与えた場合、ショックとペアの臭いを回避する。かかる学習は、最初はかなり強固であるが、記憶は、その後一過性となり、その日のうちに薄れる。対照的に、間に15分の休息期間を設けて10回の訓練期間に供すると、正常なハエでは、1週間より長く持続するbona fideタンパク質合成依存性LTMがもたらされ得る。高レベルのCREB抑制因子がもたらされるように遺伝子操作されたハエでは、学習または初期記憶に対する影響なくLTMが特異的にブロックされる。高レベルのCREB活性化因子がもたらされるように遺伝子操作されたハエでは、間隔を空けた訓練後のLTMは、影響を受けないが、驚くべきことに、たった1回の訓練期間後に誘導される。つまり、CREB活性化因子の過剰発現によって、LTM(鮮明な記憶と機能的に等価)の形成に誘導されるのに必要とされる訓練期間の回数が減ることにより記憶が増強される。可塑性の生化学をさらに解明するため、およびシナプス可塑性の種々の局面を記憶の形成と関連付けるために、いくつかの動物モデルでの分子試験が開始され、脳の可塑性に対する以下の一般的な見解がもたらされた:新しい経験は、特定の神経回路内に神経作用の変化として銘記される。この神経作用により、依然として発見対象である複雑な細胞間および細胞内生化学的応答が誘導される。しかしながら、これまで、該プロセスのいくつかの重要な局面が進化的に保存されているようである。NMDA受容体の刺激は、シナプスでの局所性一過性生化学的応答および細胞核内での長期持続性生化学的応答(CREBのリン酸化)の両方の誘導に中心的なようである。神経作用によって最初にいくつかの細胞内シグナル伝達経路が誘導されるようであるが、それでもなお、CREBは、主な「下流」標的であり、初期記憶の持続性記憶への変換を調節するようである。CREBの下方調節は、シナプスにおける持続性の機能的および構造的可塑性をもたらすシナプス伸長プロセスの原因である遺伝子の転写応答を抑制するが、CREBの上方調節は該遺伝子の転写応答を増強する。本質的に、CREBは、神経作用が回路内の持続的な構造変化をもたらす時点を決定するマスタースイッチとして作用するようである。このスイッチに影響を及ぼす重要な要素は反復である;CREB経路が上方調節されると、長期記憶の形成に必要とされる訓練期間の回数は減少する。
【0012】
4つの基本的な課題により、「CREB経路」を調節する薬物をスクリーニングするためのアプローチが誘導された。第1に、効率のため、スクリーニングは、ハイスループットであり、96ウェルプレート形式でのロボット操作に適していなければならなかった。第2に、任意の同定された薬物は最終的にヒトに使用されるため、好ましい標的はヒトCREBの内在(ニューロン)形態であった。第3に、スクリーニングの設計時、記憶の形成時にCREBの機能に影響を及ぼし得る重要な上流シグナル伝達経路はまだすべてわかっていなかった。したがって、CREB経路の機能の読み値としてCREB依存性遺伝子発現をモニタリングする広範型のスクリーニングは、任意の見つかっていないが潜在的に重要である生化学的シグナル伝達を、より多く含むようであった。最後に、スクリーニングには、CREBの機能に対して単独では効果はないが、cAMPシグナル伝達の共活性化と相乗作用する薬物を同定することが必要であった。この要件は、元の行動の実験を模倣するように設計された。ハエでは、CREBの過剰発現単独ではハエの行動に影響はなかった。むしろ、神経作用の経験誘導性増大によってcAMP経路が活性化されるため、訓練それ自体が、記憶の増強をもたらすために必要であった。
【0013】
これらの考慮が、CRE-ルシフェラーゼレポーター遺伝子で安定的にトランスフェクトした培養ヒト神経芽細胞腫細胞のハイスループットスクリーニング(HTS)に組み込まれた。このようにして、ルシフェラーゼのCREB依存性転写の変化は、蛍光によってモニタリングすることができた。記憶の形成のための連合要件を模倣するため(生化学的レベルで)、それ自体ではルシフェラーゼ活性に変化をもたらさないが、最適以下用量のフォルスコリン(これは、cAMP経路を活性化する(神経作用と同様インビボで))と相乗作用する(>2倍)薬物を探索した。これらの細胞を96ウェルプレートにおいてスクリーニングするロボットシステムを使用し、薬物化合物の大型ライブラリーを効率的にスクリーニングして、数多くの「活性ヒット」を得た。確認のため、次いで、これらの活性ヒットを4つの異なる濃度で、フォルスコリンとともに、またはなしで評価した。このスクリーニングプロセスにより、 いくつかの活性体が確認された。
【0014】
興味深いことに、有効な分子標的は、ホスホジエステラーゼ-4(PDE4)であることが見い出された。一般的かつ具体的に、この知見は道理にかなう。ほとんどの生化学的経路は、充分に調節された最適条件で機能を果たし、一部の分子成分はシグナルの伝播を加速し(正の調節因子)、一部は遅延させる(負の調節因子)。CREB活性化因子および抑制因子のアイソフォームの反対の機能を考慮すると、この概念は、長期記憶の形成時のCREBスイッチの調節にあてはまる。遺伝子変異と同様、ほとんどの薬物化合物は、実際に、標的機能のインヒビター(薬物の「アンタゴニスト」および変異の「ハイポモルフ」)としての機能を果たす。したがって、しばしば、機能の増強に関するスクリーニングから、経路の負の調節因子と拮抗する薬物化合物が発見されることが予測され得る。これは、もちろんPDEインヒビターの場合である。PDE活性の低下によって、通常アデニリルシクラーゼ(AC)によって合成されるcAMPの増加がもたらされ、cAMPの上昇によってPKAによるCREBの活性化がもたらされる。さらに、PDEインヒビターは、ACのフォルスコリン誘導性の活性化(またはインビボでのACの神経作用誘導性の活性化)の非存在下では、単独での効果は最小限であることが予測され得る。
【0015】
高等なPDE-4インヒビターであるHT-0712は、HT-0712に加えていくつかの他のCREB経路向上薬とともに、臨床的開発に有効な化合物であることが示された。これまで、記憶の形成の齧歯類モデルにおける行動の評定および生化学的実験により、これらの化合物は有効に記憶を増強することが示された。
【0016】
かかる化合物および治療を開発、同定および評価することは重要である。かかる治療は、特定の訓練プロトコルおよび/またはかかる化合物(1種類または複数種)、例えば、記憶剤としての機能を果たし、CREB経路を特異的に上方調節する記憶向上薬ならびに記憶障害薬であり得る化合物の投与を含み得る。
【発明の概要】
【0017】
発明の概要
本発明は、被験体に投与される記憶剤の有効性を評定する工程を含む方法を含み、前記評定工程は、被験体に刺激のセットを提示すること、および該刺激に対する被験体の応答を評価することを含む。評定工程は、被験体に数セットで連合された刺激を提示することおよび刺激に対する被験体の応答を評価して基準を確立することを含む第一の期間、ならびに被験体に複数セットで連合された刺激を提示することおよび該刺激に対する被験体の応答を評価して、長期成功測定(long term success measurement)を確立することを含む第二の期間を含み得る。いくつかの態様において、第二の期間は、第一の期間の完了の少なくとも一日後に開始される。被験体の応答の評価は、基準と長期成功測定を比較することを含む。刺激のセットは、複数の刺激のペアを含み得る。いくつかの態様において、複数の刺激のペアのそれぞれは、正の要素および/または負の要素を含み得る。他の態様において、複数の刺激のペアのそれぞれは、他方のペアの要素と識別可能な連合性(identifiable association)を有する要素を含み得る。いくつかの態様において、この識別可能な連合性は、顔-名前連合性であり得るか、または言葉-言葉連合性であり得る。被験体は動物であり得る。特定の態様において、動物は霊長類、哺乳動物、マウスまたはラットであり得る。いくつかの態様において、霊長類は、ヒト、サル、キツネザル、マカークまたは類人猿であり得る。いくつかの態様において、第一の期間は、約1日〜約10日であり得る。いくつかの態様において、第二の期間は約1日であり得る。いくつかの態様において、対照群および実験群を含み得る複数の被験体があり得る。特定の態様において、評定工程は、対照集団と実験集団を比較することを含み得る。いくつかの態様において、被験体の応答の評価は、長期成功測定対基準の比、長期記憶保持、特定の基準を達成するのに必要な時間、および/または長期成功測定対基準の比率が一定、ほぼ一定に維持もしくは改善された状態である第一の期間から第二の期間までの時間からなる群より選択される1つ以上の局面を計算および/または測定することを含む。
【0018】
他の態様において、本発明は、薬物候補として記憶剤を選択することを含む方法を含み得、前記選択は、被験体に記憶剤を投与する工程、および被験体に刺激のセットを提示して、該刺激に対する被験体の応答を評価する工程を含む。評定工程は、さらに、被験体に数セットで連合された刺激を提示し、該刺激に対する被験体の応答を評価して基準を確立することを含む第一の期間、および被験体に数セットで連合された刺激を提示し、該刺激に対する被験体の応答を評価して長期成功測定を確立することを含む第二の期間を含み得る。いくつかの態様において、第二の期間は、第一の期間の完了の少なくとも約1日後に開始される。特定の態様において、被験体の応答の評価は、長期成功測定対基準の比、長期記憶保持、特定の基準を達成するのに必要な時間、および/または長期成功測定対基準の比率が一定、ほぼ一定に維持もしくは改善された状態である第一の期間から第二の期間までの時間からなる群より選択される1つ以上の局面を計算および/または測定することを含む。いくつかの態様において、刺激のセットは、複数の刺激のペアを含む。いくつかの態様において、被験体は、霊長類、マウスおよびラットなどの哺乳動物を含む動物であり得る。
【0019】
さらに他の態様において、本発明は、長期記憶増強因子として記憶剤を試験することを含む方法に関し、前記試験は、被験体に記憶剤を投与する工程、および被験体に刺激のセットを提示して、該刺激に対する被験体の応答を評価する工程を含む。特定の態様において、評定工程は、被験体に数セットで連合された刺激を提示し、刺激に対する被験体の応答を評価して基準を確立することを含む第一の期間、および被験体に数セットで連合された刺激を提示し、刺激に対する被験体の応答を評価して長期成功測定を確立することを含む第二の期間をさらに含む。いくつかの態様において、第二の期間は、第一の期間の完了の少なくとも一日後に開始される。いくつかの態様において、被験体の応答の評価は、長期成功測定対基準の比、長期記憶保持、特定の基準を達成するのに必要な時間、および/または長期成功測定対基準の比率が一定、ほぼ一定に維持もしくは改善された状態である第一の期間から第二の期間までの時間からなる群より選択される1つ以上の局面を計算および/または測定することを含む。特定の態様において、刺激のセットは、複数の刺激のペアを含む。いくつかの態様において、被験体は、霊長類、哺乳動物、マウスおよびラットからなる群より選択される動物などの動物であり得る。
【0020】
またさらなる態様において、本発明は、記憶剤の有効性を評定することを含む方法であり得、前記評定は、同じ種である第一の被験体および第二の被験体を提供する工程、第一の被験体に記憶剤を投与する工程、第一の期間に第一の被験体および第二の被験体に複数の刺激のペアを提示し、刺激に対する第一の被験体および第二の被験体の応答を評価して第一の被験体および第二の被験体のそれぞれについて基準を確立する工程、第二の期間に、第一の被験体および第二の被験体に複数の刺激のペアを提示し、刺激に対する第一の被験体および第二の被験体の応答を評価して第一の被験体および第二の被験体のそれぞれについて長期成功測定を確立する工程、第一の被験体および第二の被験体の基準とそれらの長期成功測定を比較する工程を含む。いくつかの態様において、第二の期間は、第一の期間の完了の少なくとも約一日後に開始される。いくつかの態様において、第二の期間は、第一の期間の完了の約1日〜約10日後に開始される。特定の態様において、長期成功測定と基準の比較は、第一の被験体の長期成功測定対第一の被験体の基準の第一の比を確立すること、第二の被験体の長期成功測定対第二の被験体の基準の第二の比を確立すること、および第一の比と第二の比を比較することを含む。特定の態様において、刺激のセットは、複数の刺激のペアを含む。いくつかの態様において、複数の刺激のペアは正の要素および/または負の要素を含む。他の態様において、複数の刺激のペアのそれぞれは、他の要素と識別可能な連合性を有する要素を含む。いくつかの態様において、識別可能な連合性は、顔-名前連合性および言葉-言葉連合性からなる群より選択される。いくつかの態様において、第一の被験体および第二の被験体のそれぞれは、霊長類(ヒト、サル、キツネザル、マカークおよび類人猿など)、哺乳動物、マウスおよびラットからなる群より選択される動物などの動物である。特定の態様において、第一の期間は約1日〜約10日である。いくつかの態様において、第二の期間は約1日である。いくつかの態様において、第一の被験体および第二の被験体のそれぞれは複数の被験体である。
【0021】
いくつかの態様において、本発明は、上述のものと同様の方法であるが、記憶剤よりもむしろ、または記憶剤に加えて訓練プロトコルを評価することに焦点が当てられた方法を含む。いくつかの態様は、被験体に施与された訓練プロトコルの有効性を評定する工程を含む方法に関するものであり、前記評定工程は、被験体に刺激のセットを提示して、該刺激に対する被験体の応答を評価することを含む。他の態様は、長期記憶増強因子として訓練プロトコルを試験することを含む方法に関し、前記試験は、被験体に訓練プロトコルを施与する工程、および被験体に刺激のセットを提示して、該刺激に対する被験体の応答を評価する工程を含む。さらなる態様は、訓練プロトコルの有効性を評定することを含む方法に関するものであり、前記評定は、同一種である第一の被験体および第二の被験体を提供する工程、第一の被験体に訓練プロトコルを施与する工程、第一の期間に第一の被験体および第二の被験体に複数の刺激のペアを提示し、該刺激に対するそれらの応答を評価して第一の被験体および第二の被験体のそれぞれについての基準を確立する工程、第二の期間中に第一の被験体および第二の被験体に複数の刺激のペアを提示し、該刺激に対するそれらの応答を評価して第一の被験体および第二の被験体のそれぞれについての長期成功測定を確立する工程、第一の被験体および第二の被験体の基準とそれぞれの長期成功測定を比較する工程を含む。
【0022】
本発明はまた、本明細書に開示される方法と共に使用するためのシステムなどの、システムを含む。例えば、いくつかの態様において、該システムは、本発明の方法の態様を実施するために必要な全ての要素を含み得る。本発明のシステムは、薬物候補としての記憶剤の選択、記憶剤の有効性の評定、訓練プロトコルの有効性の評定、および/または長期記憶増強因子としての記憶剤の試験、および/または長期記憶増強因子としての、記憶剤および訓練プロトコルの試験に有用であり得る。
【0023】
いくつかの態様において、本発明のシステムは刺激のセットを含み、前記刺激のセットは、該刺激のセットに対する被験体の応答の評価、それによる被験体に施与される訓練プロトコルの有効性の評定を可能にするように構築される。いくつかの態様において、刺激のセットは、複数の刺激のペアを含む。特定の態様において、複数の刺激のペアのそれぞれは、正の要素および/または負の要素を含む。いくつかの態様において、複数の刺激のペアのそれぞれは、他方のペアの要素と識別可能な連合性を有する要素を含む。さらなる態様において、識別可能な連合性は、顔-名前連合性および言葉-言葉連合性からなる群より選択される。他の態様において、該システムは、さらに、試験プロトコル、試験スケジュール、および/または記憶剤投与量ならびに投与スケジュールを含み得る。
【0024】
他の態様において、本発明のシステムは刺激のセットを含み、前記刺激のセットは、該刺激のセットに対する被験体の応答の評価、それによる被験体に投与される記憶剤の有効性の評定を可能にするように構築される。いくつかの態様において、刺激のセットは複数の刺激のペアを含む。種々の態様において、複数の刺激のペアのそれぞれは、正の要素および/または負の要素を含む。他の態様において、複数の刺激のペアのそれぞれは、他方のペアの要素と識別可能な連合性を有する要素を含む。特定の態様において、識別可能な連合性は、顔-名前連合性および言葉-言葉連合性からなる群より選択される。他の態様において、該システムは、試験プロトコル、試験スケジュール、および/または記憶剤投与量ならびに投与スケジュールをさらに含み得る。
【0025】
いくつかの態様において、本発明の方法およびシステムは、構造:

(式中、Y1、Y2、Y3、およびY4のぞれぞれは独立して、-H;直鎖もしくは分岐鎖C1〜C7アルキル、モノフルオロアルキルまたはポリフルオロアルキル;直鎖もしくは分岐鎖C2〜C7アルケニルまたはアルキニル;C3〜C7シクロアルキルまたはC5〜C7シクロアルケニル;-F、-Cl、-Br、または-I;-NO2;-N3;-CN;-OR4、-SR4、-OCOR4、-COR4、-NCOR4、-N(R4)2、-CON(R4)2、または-COOR4;アリールまたはヘテロアリールであるか;あるいは隣接する炭素原子上に存在するY1、Y2、Y3およびY4の任意の2つは、メチレンジオキシ基を構成し得る;ここで各R4は、独立して-H;直鎖もしくは分岐鎖C1〜C7アルキル、モノフルオロアルキルまたはポリフルオロアルキル;直鎖もしくは分岐鎖C2〜C7アルケニルまたはアルキニル;C3〜C7シクロアルキル、C5〜C7シクロアルケニル、アリールまたはアリール(C1〜C6)アルキルである;AはA'、直鎖もしくは分岐鎖C1〜C7アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール(C1〜C6)アルキルまたはヘテロアリール(C1〜C6)アルキルである;ここでA'は

(式中、R1およびR2はそれぞれ独立して、H、直鎖もしくは分岐鎖C1〜C7アルキル、-F、-Cl、-Br、-I、-NO2、または-CNである;R3はH、直鎖もしくは分岐鎖C1〜C7アルキル、-F、-Cl、-Br、-I、-NO2、-CN、-OR6、アリールまたはヘテロアリールである;R5は直鎖もしくは分岐鎖C1〜C7アルキル、-N(R4)2、-OR4またはアリールである;R6は直鎖もしくは分岐鎖C1〜C7アルキルまたはアリールである;Bはアリール、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、インドリジニル、インドール-4-イル、インドール-5-イル、インドール-6-イル、インドール-7-イル、イソインドリル、ベンゾ[b]フラン-4-イル、ベンゾ[b]フラン-5-イル、ベンゾ[b]フラン-6-イル、ベンゾ[b]フラン-7-イル、ベンゾ[b]チオフェン-4-イル、ベンゾ[b]チオフェン-5-イル、ベンゾ[b]チオフェン-6-イル、ベンゾ[b]チオフェン-7-イル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾ[b]チアゾリル、プリニル、イミダゾ[2,1-b]チアゾリル、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、2,1,3-ベンゾチアゾリル、フラニル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、シンノリニル、キノキサリニル、1,8-ナフチリジニル(napthyridinyl)、プテリジニル、またはフタルイミジルである;ただし、イミン結合の窒素原子に対してオルトの1つまたは複数の炭素原子は、以下:-F、-Cl、-Br、-I、-CN、メチル、エチルまたはメトキシの1つ以上でだけで置換され得るものとする;nは1以上4以下の整数である;ここでアリールは、フェニルまたはナフチル、例えば以下:-F、-Cl、-Br、-I、-NO2、-CN、直鎖もしくは分岐鎖C1〜C7アルキル、直鎖もしくは分岐鎖C1〜C7モノフルオロアルキル、直鎖もしくは分岐鎖C1〜C7ポリフルオロアルキル、直鎖もしくは分岐鎖C2〜C7アルケニル、直鎖もしくは分岐鎖C2〜C7アルキニル、C3〜C7シクロアルキル、C1〜C7モノフルオロシクロアルキル、C3〜C7ポリフルオロシクロアルキル、C5〜C7シクロアルケニル、-OR4、SR4、-OCOR4、-COR4、-NCOR4、-CO2R4、-CON(R4)2または(CH2)n-O-(CH2)mCH3の1つ以上で置換されるフェニルおよびナフチルである)である)
を有する化合物または薬学的に許容され得るその塩からなる群より選択される1つ以上である記憶剤を利用する。
【0026】
いくつかの態様において、本発明の方法およびシステムは、構造:

(式中、Meはメチルであり、cPentはシクロペンチルであり、第3炭素および第5炭素はS配置である)
を有する化合物からなる群より選択される1つ以上である記憶剤を利用する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1A図1Aは、実施例1に記載される本発明の態様の結果を示すグラフを示す。結果は、処理当たり平均日数±s.e.mで表され、* ビヒクルに対してp < 0.05である。
図1B図1Bは、実施例1に記載される本発明の態様の結果を示すグラフを示す。結果は、処理当たり平均日数±s.e.mで表され、* ビヒクルに対してp < 0.05である。
図2A図2Aは、実施例1に記載される本発明の態様の結果を示すグラフを示す。結果は、処理当たり平均能力(performance)%±s.e.m.で表される。
図2B図2Bは、実施例1に記載される本発明の態様の結果を示すグラフを示す。結果は、処理当たり平均能力%±s.e.m.で表される。
図3A図3Aは、実施例1に記載される本発明の態様の結果を示すグラフを示す。結果は、処理当たり平均能力%±s.e.m.で表される。
図3B図3Bは、実施例1に記載される本発明の態様の結果を示すグラフを示す。結果は、処理当たり平均能力%±s.e.m.で表される。
図4図4A〜4Dは、実施例1に記載される本発明の態様に使用され得る視覚刺激の実験ペアを示す。
図5図5は、実施例2に記載される対連合(顔-名前)記憶アッセイ態様における健常高齢志願者の能力を示すグラフを示す。被験体は、6日間(d2〜d7)、40組の顔と名前(職業)の1セットを記憶させられた。訓練日に、被験体は40組のリストに一度だけ目を通した。被験体はまず彼らの想起力を問われ、次に正解を示されて訓練を続けた。訓練後、顔-名前ペア1〜20のみを使用して、3日記憶保持を量化した(d10)。これらの顔-名前ペア1〜20について、7日記憶保持を再度量化した(d14b)。想起想期間ごとに1分の間隔をあけて、顔-名前ペア21〜40についても7日保持を2回(d14aおよびd14a2)量化した。
【発明を実施するための形態】
【0028】
詳細な説明
以下の段落において、本発明は添付の図面を参照した例により説明される。この説明を通じて、示される好ましい態様および例は、本発明の限定としてではなく例示として見なされるべきである。本明細書で使用する場合、「本発明」は、本明細書に記載される発明の態様のいずれか1つおよび任意の均等物のことをいう。さらに、この文書を通じての「本発明」の種々の特徴(1つまたは複数)についての言及は、全ての特許請求される態様または方法が言及された特徴(1つまたは複数)を含まなければならないということを意味するものではない。
【0029】
本明細書において使用される専門用語は、特定の態様を説明するためだけのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。本明細書におよび添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈においてそうではないと明らかに示されない場合は、複数形の言及を含む。従って、例えば「a compound」についての参照は、1つ以上の化合物についての言及であり、当業者などに公知のそれらの均等物を含む。
【0030】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本発明が属する分野における当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の実施または試験において、具体的な方法、デバイスおよび材料が記載されるが、本明細書に記載されるものと同様または同等の任意の方法および材料を使用することができる。
【0031】
本発明は、記憶剤としての種々の化合物を同定、評価および試験するための方法ならびにシステム、ならびに訓練プロトコルとしての計画を提供する。かかる方法およびシステムにより、本明細書に記載される記憶剤および訓練プロトコルなどの任意の化合物またはプロトコルを試験し得る。該方法は、訓練プロトコルと記憶剤の一般的な投与を組み合わせることを含み得る。いくつかの態様において、本発明は、記憶剤のための薬物候補として、例えば記憶を増強するのに有効な薬物候補としての化合物を同定、選択、試験、評価または評定することを含み得る。
【0032】
薬物候補は、創薬プロセスを通じて同定され、合成、特徴づけ、最適化、および/またはスクリーニングもしくはアッセイされた化合物であり得る。例えば本発明の方法またはシステムを用いて、化合物が、所定の活性または効果についての能力を有することが示されると、それは薬物候補-すなわち最終的に市販されることを目的として臨床試験を受けることになり得る薬物候補であり得る。
【0033】
記憶剤および訓練プロトコルの同定、評価ならびに試験の方法
いくつかの態様において、本発明は、動物の記憶能力の1つ以上の局面を評定するための特定の課題の使用を含む。例えば、動物の学習能力、短期記憶または長期記憶保持を試験および/または評価し得る。本明細書で使用する場合、用語「記憶」は、更なる修飾語(例えば短期記憶)がなければ長期記憶のことをいう。本明細書で使用する場合、用語「記憶剤(memory agent)」は、記憶増大剤または記憶抑制剤をいう。記憶増大剤および記憶抑制剤としては、限定されないが、例えば開示が全体において参照により本明細書に援用される米国特許第5,929,223号、6,051,559号、6,689,557号および6,890,516号、ならびに米国特許出願第11/066,125号に記載されるように、CREB経路に作用する分子、化合物および/または薬剤が挙げられる。
【0034】
本明細書において使用される場合、用語「動物」としては、哺乳動物、ならびに脊椎動物、無脊椎動物(例えば、鳥類、魚類、爬虫類、昆虫類(例えばショウジョウバエ種)および軟体動物(例えばアメフラシ))が挙げられる。用語「哺乳動物」および「哺乳類」は、本明細書使用される場合、任意の脊椎動物、例えば子供に授乳し、生きた子供を出産する(真獣類(eutharian)または胎盤性哺乳動物)かまたは卵生である(後獣類(metatharian)または非胎盤性哺乳動物)かいずれかの単孔類、有袋類および胎盤類(placental)をいう。哺乳類類種の例としては、限定されないが、ヒトおよび霊長類(例えば、サル、チンパンジー、ヒト、猿人類、キツネザル、またはマカーク)、げっ歯類(例えば、ラット、マウス、モルモット)および反芻動物(ruminents)(例えば、ウシ、ブタ、ウマ)が挙げられる。
【0035】
動物は、ある形態およびある程度の記憶の障害を有する動物、または正常な記憶能力を有する動物(つまりいずれの形態の記憶の機能不全(すなわち何らかの記憶の障害または損失)も有さない動物)であり得る。一種以上の動物を使用してもよく、かかる動物を1つ以上の群の中に置いてもよい(例えば1つ以上の対照群および/または1つ以上の実験群)。動物は任意の適切な齢であり得る。
【0036】
課題は、被験体への特定の刺激の提示を含み得る。刺激は任意の適切な感覚刺激であり得、限定されることなく聴覚、視覚、触覚、嗅覚、味覚および/またはそれらの組合せを含む。いくつかの態様において、刺激は視覚的であり得、記号、文字、数字、線、形、色、絵またはそれらの組合せの1つ以上であり得る。刺激はセットで連合されて、該セットの一員の間に特定の連合性が確立される。刺激は、約2、3、4、5、6、7、8、9または10の群で連合され得る。いくつかのかかる態様において、刺激はペアで連合される。いくつかの態様において、対になったそれぞれの刺激は同じ型のもの(つまり聴覚的、視覚的または触覚的)であるが、他の態様においては、ペアは異なる型であり得る。いくつかの態様において、ペアの要素は、ペアの他の要素といくつかの識別可能な連合性を有する。識別可能な連合性は、視覚的、聴覚的、論理的またはペアの要素とその対応する要素を連合させるペアの1つ以上の要素の他の局面であり得る。他の態様において、識別可能な連合性がないことがある。例えば、ペアは言葉-言葉ペアであり得、ここで1つの言葉は他の言葉との識別可能な連合性を有さない(例えば、櫛-リンゴ)。視覚的ペア刺激の例を図4A〜4Dに示す。識別可能な連合性を有する刺激ペアの別の例は、顔-名前ペアおよび/または職業-顔/名前ペアであり得る。いくつかの態様において、顔-名前ペアと共に列挙される職業もあり得る。
【0037】
いくつかの態様において、被験体に1つ以上の刺激のペアを提示し得る。いくつかの態様において、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、50、100、120、150、または任意の他の適切な数の刺激のペアを被験体に提示し得る。いくつかの態様において、ペアの1つの要素は、正-この要素が選択された場合に被験体が見返りを受けることを意味する-であるように設計される。他の態様において、ペアの1つの要素は、負-この要素が選択された場合に被験体が負のフィードバックを受けることを意味する-であるように設計される。いくつかの態様において、被験体は要素に触れて要素を選択するが、他の態様においては、任意の他の適切な選択方法が使用されてもよい。いくつかの態様において、見返りは食物であり得るが、他の態様において、見返りは気持ちのよい音、ある玩具または品物の入手、または被験体から正の応答を引き出させる何かであり得る。いくつかの態様において、負のフィードバックは、ショック、音、罰または特権の差し控え、または被験体に負のフィードバックを与える任意の適切な作用である。
【0038】
フィードバックの種類、刺激のペアの選択、刺激のペアのセット、被験体の種および年齢、ならびに課題の他の局面を改変して、被験体の記憶の異なる局面を試験および/または評価し得る。例えば、それぞれの要素が他の要素に対して識別可能な連合性を有する刺激ペアを使用して、それを被験体の関連記憶(relational memory)の評価に使用してもよい。
【0039】
他の態様において、該見返りおよび/または負のフィードバック評価方法以外の他の評価方法を使用してもよい。例えば、いくつかの態様において、被験体がヒトである場合など、刺激は関連性を有し、ペアリングまたは他の連合性が正しいか正しくないかを被験体が決定し得る(例えば、ペアの1つの要素とペアの他の要素の間に意図される識別可能な連合性が存在するように刺激が対になっている)。例えば、顔-名前ペアリングが被験体に教えられる場合、被験体は、正しい顔-名前ペアリングが乱されるようにごたまぜにされた刺激のペアを提示される。次いで被験体は、提示された顔-名前ペアリングを、教えられた正しい顔-名前ペアリングであるかどうかということを連絡し得る。かかる態様において、別個の見返りは必要ないか、または見返りは単にヒトの応答の正しさに対するフィードバックであり得る。刺激のペアは、任意の適切な様式で提示されてもよい。例えば、該ペアは、それぞれの試験期間中に無作為に、組織化されてまたは擬似乱数順で提示され得る。
【0040】
被験体は、任意の適切な期間、任意の適切な頻度で試験され得る。例えば、被験体は、試験事象当たり1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、50、60、75、100、150、200、250、365回、または任意の他の適当な回数試験され得る(例えば、試験が毎日の場合、被験体は、1回、2回、3回などで試験され得る)。かかる試験において、被験体は、任意の適切な回数の刺激または刺激のペアを示され得る。被験体は、毎日、一日おき、毎週、一週おき、毎月、または任意の他の適切な頻度で試験を有し得る。さらに、任意の適切な数の被験体を試験し得る。いくつかの態様において、試験は、被験体に刺激のペアの連合性についての情報を教えようとしてまたは暗号化しようとして行われる。例えば、試験は、ペアのどの要素が正および/または負の要素であるかを、被験体に教えるようになされ得る。他の態様において、試験は、刺激のセット中の要素の正しいペアリング(例えば、正しい顔-名前、職業-名前、または職業-顔/名前連合性)を被験体に教えるようになされ得る。かかる態様において、数段階の試験が必要なことがある。第1教示段階の後に、質問により被験体の知識が試験される第二段階が続くが、提示されたペアリングが正しい場合、適切な方法は被験体の型(例えばヒト対ラット)に依存する。
【0041】
被験体は任意の適切な様式で評価され得る。いくつかの態様において、被験体に、1つ以上の刺激のペアが提示されるが、該ペアの1つの要素は正であり、および/または該ペアの1つの要素は負である。かかる態様において、どのペアの要素が正の要素および/または負の要素であるかを学習した被験体は、正および/または負の要素を選択する、および/または正および/または負の要素を選択しない回数に関して評価される。他の態様において、刺激のペアは、互いに関連性(例えば、顔-名前関連性、職業-名前関連性、職業-顔/名前関連性、言葉のペア、文字または数字のセット、絵または記号の部分)を有し得る。かかる態様において、被験体は、ペアの要素間の正しい関連性を学習した能力について評価され、適切なペアが再度確立され得る(例えば、名前の要素を対応する絵の要素等と共に配置する)。いくつかの態様において、ペアはいくつかの様式で代えてもよく、被験体は、ペアが代わった様式を識別できるか尋ねられる(例えば、応答は「完全」、「入れ換え」、「1つ新しい」または「両方新しい」であり得る)。
【0042】
いくつかの態様において、被験体の長期記憶が試験され得る。かかる態様において、規準結果を確立することができる。かかる基準は種々の方式で確立され得る。例えば、ペアの1つが正でありおよび/またはペアの1つが負である刺激のペアが被験体に提示される場合、被験体が正および/または負の要素を特定の頻度で識別するまで、被験体にペア(またはペアのセット)が提示され得る。次いで、この頻度は、後半の結果を評価し得る基準となる。同様に、刺激のペアの要素間の関連性の正しい確立の頻度を使用して、基準が確立され得る。いくつかの態様において、被験体は、特定の成功率に達するまで評価される。例えば、約50%、55%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、100%または任意の他の適切なパーセントの基準または正しい結果の数を目標として使用することができる。他の態様において、被験体は、ある回数またはある期間試験され得、基準を確立するために最後の評価が使用され得る。例えば、基準を確立するために、約1〜23時間もしくは約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、50、60、75、100、150、200、250もしくは365日の期間、または任意の他の適切な時間数または日数が、使用され得る。また、基準を確立するために、被験体は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、50、60、75、100、150、200、250、365、または任意の他の適切な時間試験され得る。基準はまた、被験体の実際の結果の平均、中位点または他の統計学的な測定値を用いて確立され得る。
【0043】
いくつかの態様において、一旦基準が確立されたら、被験体は基準を確立するために使用された刺激のペアのいずれも一定期間評価されないかまたは示されない。この時間は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、50、60、75、100、150、200、250、365、または任意のほかの適切な日数である。この遅延(delay)期間後、被験体は再度1回、基準の確立に使用されたものと同じ刺激のペアを用いて試験される。いくつかの態様において、これらの試験は、基準の確立に使用されたものと同一、同様または異なる条件下で繰り返される。さらに、任意の適切な様式で、長期成功測定を確立することにより被験体の能力を評価し得る。いくつかの態様において、一般的に関連のある基準を再学習するよりも短い期間を使用して、長期成功測定が被験体の記憶を示したとしても、長期成功測定を確立する様式は、基準の確率に関して記載されたものと同様であり得る。次いで、長期成功測定と基準を比較して被験体を評価し得る。
【0044】
いくつかの態様において、本発明の方法は、潜在的記憶剤および/または潜在的訓練プロトコルの有効性を評価するために使用され得る。例えば、本発明の方法は、選択された能力レベルを達成するために必要な訓練の量の減少を識別するために使用され得る。かかる態様において、被験体は、まず記憶剤の非存在下で評価され得、続いて記憶剤を投与されて評価され得る。また、被験体の対照群は、特定の刺激のペアおよび一量化の記憶剤を投与された被験体の群と比較した結果を用いて試験され得る。記憶剤および/または訓練プロトコルの評価は、種々の形式をとり得る。例えば、記憶剤は、一定の基準を確立するかもしくは満たすために、または任意の他の適切な有効性の測定に必要な訓練期間の回数および/または日数を低減し得る。
【0045】
本発明のいくつかの態様において、能力の基準に達するための訓練期間の回数または日数を記憶剤が変える(例えば減らすまたは増やす)かどうかを調べるために評価される。本明細書で使用する場合、用語「基準」は、所望の結果および/または能力の所望のレベルの測定基準、例えば被験体または被験体の群由来の正しい応答(例えば正しく対になった刺激)のパーセントなどのことをいう。基準は、プロトコル、試験、課題の施与および/または本発明の他の態様により、所望のように改変または選択され得る。これらの態様において施与される訓練の複雑さは、例えば基準、対になる刺激の数および/または種類、訓練の日数、訓練の量、および/または訓練の種類によって操作され得る。さらなる態様において、記憶剤有または無しの訓練は、長期記憶におけるCREB依存的な変化、例えばCREB依存的な長期記憶の増強を生じるのに充分である。
【0046】
いくつかの態様において、本発明の方法は、記憶障害剤の有効性を評価するために使用され得る。かかる態様は、記憶剤の評価方法と同様または同じ工程を含み得る。しかしながら、かかる態様において、評価される特徴は異なる。例えば、記憶障害剤は、特定の基準の確立に要する時間を増加、基準に達するために要する訓練期間の数を増加、基準に対する長期成功測定の比率を減少し得るか、または任意の他の適切な様式で評価され得る。
【0047】
任意の適切な記憶剤または記憶障害剤は、任意の適切な送達システムで任意の適切な送達スケジュールおよび用量を使用して、任意の適切な方法により提供され得る。また、任意の適切な訓練プロトコルが使用されてもよい。例示的な訓練プロトコル、記憶剤および記憶障害剤は以下のセクションに具体的に記載される。
【0048】
本発明はまた、本明細書に開示される方法と共に使用するためのシステムなどのシステムを含む。例えば、いくつかの態様において、該システムは、本発明の方法の態様を実施するのに必要な全ての要素を含み得る。本発明のシステムは、薬物候補としての記憶剤の選択、記憶剤の有効性の評定、訓練プロトコルの有効性の評定、長期記憶増強因子としての記憶剤の試験、特定のもしくは一般的な記憶の障害剤としての記憶剤の試験、および/または長期記憶増強因子としての記憶剤および訓練プロトコルの試験に有用であり得る。かかるシステムは、ペアになった刺激などの上記の刺激のセットの使用、ならびに上記の試験スケジュールおよびプロトコルを含み得る。
【0049】
訓練プロトコル
本明細書に記載されるように、本発明の方法およびシステムを使用した評定は、二つの部分:(1) 特定の訓練プロトコルおよび(2) 記憶剤の投与を含み得る。いくつかの態様において、訓練プロトコルのみが使用される。他の態様において、訓練プロトコルおよび記憶剤の投与の両方が生じる。この組合せにより、訓練のみで得られた能力と比べて能力の向上を生じるために必要な訓練期間の日数を減少すること、または能力の向上を生じるための訓練期間の休息をより短くまたはなくすることによって、訓練プロトコルが補強され得る。また、この組合せにより、ニューロン活性のパターンの特定のニューロン回路(1つまたは複数)における誘導に必要な訓練期間の持続時間および/または数を低減すること、あるいはニューロン回路のシナプス結合におけるサイクリックAMP応答因子結合タンパク質(CREB)依存型長期構造的/機能(すなわち長期間持続)変化の誘導に必要な訓練期間またはニューロン活性の存在するパターンの持続時間および/または数を低減することによって、訓練プロトコルが補強され得る。このようにして、既存の訓練プロトコルの有効性を改善することができ、それにより有意な機能的および経済的恩恵をもたらすことができる。
【0050】
訓練プロトコル(例えば、集中(massed)訓練、分散(spaced)訓練)は、新しい言語の学習または新しい楽器の演奏の学習に使用される。訓練と組み合わせた記憶剤の投与により、能力の向上を生じるために要する訓練期間の時間および/または数が減少される。結果として、新しい言語の学習または新しい楽器の演奏の学習に必要な練習(訓練期間)が少なくなる。
【0051】
訓練プロトコルは、個体におけるニューロン活性または特定のニューロン回路(1つまたは複数)にあるニューロン活性のパターンの反復刺激に使用される。訓練と組み合わせた記憶剤の投与により、所定の結果、例えばニューロン回路のシナプス結合におけるCREB依存性長期構造/機能(つまり長期持続的)変化の誘導を達成するのに必要な訓練期間および/または存在するニューロン活性のパターンの時間および/または数が低減される。
【0052】
これらの方法は、(a) 動物に記憶剤、例えばCREB経路機能を増強するものを投与すること、および(b) 動物による目的の記憶課題の能力の改善をもたらすのに充分な条件下で動物を訓練することにより、記憶の特定の局面の増強を必要とする動物(特にヒトまたは他の哺乳動物または脊椎動物)における記憶の特定の局面を増強し得る。いくつかの態様において、記憶剤はCREB経路増強薬である。
【0053】
本記載の方法は、(a) 動物に記憶剤、例えばCREB経路機能を増強するものを投与すること、および(b) 動物による特定の記憶課題の能力の改善をもたらすのに充分な条件下で動物を訓練することによる、特定の中枢神経系(CNS)障害に伴う記憶障害または状態の治療を必要とする動物における該CNS障害または状態の治療のために使用され得る。CNS障害および状態としては、加齢関連記憶障害、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病(舞踏病)、他の老人痴呆)、精神医学的疾患(例えば、欝、統合失調症、自閉症、注意欠陥障害)、外傷依存性の機能損失(例えば、脳血管疾患(例えば、脳卒中、虚血)、脳腫瘍、頭部または脳傷害)、遺伝的欠損(例えば、ルービンスタイン-テービ症候群、ダウン症)、学習障害および/またはそれらの組合せが挙げられる。
【0054】
本記載の方法は、(a) 動物に記憶剤、例えばCREB経路機能を増強するものを投与すること、および(b) 動物におけるニューロン活性またはニューロン活性のパターンを刺激または誘導するのに充分な条件下で動物を訓練することを含む、動物におけるニューロン活性またはニューロン活性のパターン、例えば存在する特定のニューロン回路(1つまたは複数)の刺激の反復のためにも使用され得る。
【0055】
ヒトを含む多くの種における多くの課題では、分散訓練プロトコル(間に休息期間を有する複数の訓練期間)により、集合訓練プロトコル(間に休息期間を有さない複数の訓練期間)よりも強い、長期持続的な記憶がもたらされる。パブロフのショウジョウバエにおける嗅神経学習の行動-遺伝学的試験により、集合訓練は、少なくとも4日間で消えるがタンパク質合成依存的でなく、CREBリプレッサートランスジーンの過剰発現により崩壊されずに、radish変異体において崩壊される長期持続的記憶を生じることが確立されている(Tully, T. et al., Cell, 79(1):35-47 (1994);およびYin, J. C. et al., Cell, 79(1):49-58 (1994))。対照的に、分散訓練は、少なくとも7日間持続し、タンパク質合成依存的であり、CREBリプレッサートランスジーンの過剰発現により崩壊され、radish変異体においては正常である長期持続的記憶をもたらす(Tully, T. et al., Cell, 79(1):35-47 (1994);およびYin, J. C. et al, Cell, 79(1):49-58 (1994))。分散訓練の1日後、記憶保持は、タンパク質合成およびCREB依存的早期記憶(ARM)ならびにタンパク質合成およびCREB依存的長期記憶(LTM)の両方からなる。さらなる集合訓練は、LTMの誘導には不充分である(Tully, T. et al., Cell, 79(1):35-47 (1994);およびYin, J. C. et al., Cell, 79(1):49-58 (1994))。
【0056】
一連の証拠の増加により、これらの結果は無脊椎動物から哺乳動物に拡張される。例えば、アメフラシにおいて、ハエにおけるものと同様のCREB発現の分子的操作により、(i) 細胞培養における感覚運動モノシナプスでの促進静電気生理学的応答のLTMおよび(ii) 通常促進刺激の分散適用後に生じる感覚ニューロンおよび運動ニューロンの間のシナプス結合が抑制または増強される(Bartsch, D. et al, Cell, 83(6):979-992 (1995))。ラットにおいては、海馬または扁桃へのアンチセンスRNAオリゴヌクレオチドの注入により、これらの解剖学的領域のそれぞれにおける活性に依存的な2つの異なる課題のLTM形成が阻害されている(Guzowski, J. F. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94(6):2693-2698 (1997);およびLamprecht, R. et al., J. Neurosci., 17(21):8443-8450 (1997))。マウスにおいては、内的課題および外的課題の両方のためのLTM形成はCREB変異マウスでは欠損している(Bourtchuladze, R. et al., Cell, 79(1):59-68 (1994))。
【0057】
CRE依存性レポーター遺伝子(βガラクトシダーゼ)を有するトランスジェニックマウスの海馬依存的文脈恐怖条件付けまたは受動回避課題における訓練により、海馬の領域CA1およびCA3におけるCRE依存的レポーター遺伝子発現が誘導される。扁桃依存的恐怖条件付け課題におけるこれらのマウスの訓練により、海馬ではなく扁桃におけるCRE依存的レポーター遺伝子発現が誘導される。従って、LTM形成を誘導する訓練プロトコルは、哺乳動物の脳の特定の解剖学的領域におけるCRE依存的遺伝子転写も誘導する(Impey, S. et al., Nat. Neurosci., 1(7):595-601 (1998))。
【0058】
これらの動物モデルを用いて、LTM増強の3つの顕著な症例を示した。第1に、CREBアクチベータートランスジーンの過剰発現は、複数の分散訓練期間の必要性を取り除き、代わりに、わずか一回の訓練期間後にLTM形成を誘導する(通常は24時間後では記憶保持をほとんどまたは全く生じない)(Yin, J. C. et al, Cell, 81(1): 107-115 (1995))。第2に、ウイルス発現CREBアクチベータートランスジーンのラット扁桃への注入も、恐怖増強驚愕応答についての集合訓練後の記憶の増強に充分であり、分散訓練中の休息の必要性を取り除く(Josselyn, S. A. et al., Society for Neuroscience, Vol. 24, Abstract 365.10 (1998))。第3に、CREB欠損マウスにおけるLTM形成(Bourtchuladze, R. et al., Cell, 79(1):59-68 (1994))は、変異マウスを異なる分散訓練プロトコルに供した場合に正常に形成され得る(Kogan, J. H. et al., Curr. Biol, 7(1): 1-11 (1997))。
【0059】
CREBは、脊椎動物の脳における種々の形態の発生可塑性および細胞可塑性にも関与していると考えられる。例えば、ニューロン活性により、皮質のCREB活性が増加する(Moore, A. N. et al., J. Biol. Chem., 271(24): 14214- 14220 (1996))。CREBはまた、海馬(Murphy, D. D. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94(4): 1482-1487 (1997))、体性感覚皮質(Glazewski, S. et al., Cereb. Cortex, 9(3):249-256 (1999))、線条(Liu, F. C. et al., Neuron, 17(6): 1133-1144 (1996))、および視覚皮質(Pham, T. A. et al., Neuron, 22(1):63-72 (1999))における発生可塑性を仲介する。
【0060】
CREBは、ヒトの神経変性疾患および脳の損傷において影響されていると考えられている。例えば、CREB活性化および/または発現はアルツハイマー病で阻害されている(Ikezu, T. et al., EMBO J., 15(10):2468-2475 (1996);Sato, N. et al., Biochem. Biophys. Res. Commun, 232(3):637-642 (1997);およびYamamoto-Sasaki, M. et al., Brain. Res., 824(2):300-303 (1999)。CREB活性化および/または発現はまた、発作または虚血後に上昇する(Blendy, J. A. et al, Brain Res., 681(l-2):8-14 (1995);およびTanaka, K. et al, Neuroreport, 10(11):2245-2250 (1999))。「環境濃縮」は、CREBを介して作用する神経保護的、予防的細胞死である(Young, D. et al., Nat. Med., 5(4):448-453 (1999))。
【0061】
CREBは薬物過敏および投薬中止の際に機能する。例えば、CREBはエタノール(Pandey, S. C. et al., Alcohol Clin. Exp. Res., 23(9):1425-1434 (1999);Constantinescu, A. et al., J. Biol. Chem., 274(38):26985-26991 (1999);Yang, X. et al., Alcohol Clin. Exp. Res., 22(2):382-390 (1998);Yang, X. et al., J. Neurochem., 70(l):224-232 (1998);およびMoore, M. S. et al., Cell, 93(6):997-1007 (1998))、コカイン(Carlezon, W. A., Jr. et al., Science, 282(5397):2272-2275 (1998))、モルヒネ(Widnell, K. L. et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 276(l):306-315 (1996))、メタンフェタミン(Muratake, T. et al., Ann N.Y. Acad. ScL, 844:21-26 (1998))およびカンナビノイド(Calandra, B. et al., Eur. J. Pharmacol., 374(3):445-455 (1999);およびHerring, A. C. et al., Biochem. Pharmacol., 55(7):1013-1023 (1998))により影響を受ていける。
【0062】
CREB/CRE転写経路を刺激し得るシグナル伝達経路はcAMP制御系である。この事と一致して、アデニル酸シクラーゼ1(AC1)およびAC8酵素の両方を欠くマウスは、学習に不首尾を生じる(Wong S. T. et al., Neuron, 23(4):787-798 (1999))。これらのマウスでは、海馬のCA1にフォルコリンを投与することで、海馬依存的課題の学習および記憶が修復される。さらに、cAMPレベルを上昇させる薬物(例えばロリプラムおよびD1レセプターアゴニスト)による老齢ラットの治療により、加齢による海馬依存的記憶および際長期能力が改善される(Barad, M. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95(25): 15020-15025 (1998))。これらの後者のデータは、学習障害加齢ラットにおいてcAMPシグナル伝達が欠損していることを示唆する(Bach, M. E. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96(9):5280-5285 (1999))。
【0063】
一連の証拠の増加により、ニューロンは成体の脳において増殖し続けていること(Arsenijevic, Y. et al., Exp. Neurol., 170: 48-62 (2001);Vescovi, A. L. et al., Biomed. Pharmacother., 55:201-205 (2001);Cameron, H. A. and McKay, R. D., J. Comp. Neurol., 435:406-417 (2001);およびGeuna, S. et al., Anat. Rec., 265:132-141 (2001))ならびにかかる増殖は種々の実験に応じるものであること(Nilsson, M. et al., J. Neurobiol., 39:569-578 (1999);Gould, E. et al., Trends Cogn. Sci., 3:186-192 (1999);Fuchs, E. and Gould, E., Eur. J. Neurosci., 12: 2211-2214 (2000);Gould, E. et al., Biol. Psychiatry, 48:715-720 (2000);およびGould, E. et al., Nat. Neurosci., 2:260-265 (1999))が示唆されている。現在の実験の戦略は、成体の脳に種々の治療的指標についてニューロン幹細胞を移植することにある(Kurimoto, Y. et al., Neurosci. Lett., 306:57-60 (2001);Singh, G., Neuropathology, 21 :110-114 (2001);およびCameron, H. A. and McKay, R. D., Nat. Neurosci., 2:894-897 (1999))。発生の胚性段階における神経発生についてはすでに多くのことが公知となっている(Saitoe, M. and Tully, T., 「Making connections between synaptic and behavioral plasticity in Drosophila」, In Toward a Theory of Neuroplasticity, J. McEachern and C. Shaw編、(New York: Psychology Press.), pp. 193-220 (2000))。ニューロン分化、神経突起伸長および最初のシナプス標的認識は全て、活性依存的様式で生じると考えられている。しかしながら、その後のシナプス形成およびシナプス成長は、機能的に関連のある様式で微調整シナプス結合に対するニューロン活性を必要とする。これらの所見により、移植されたニューロン幹細胞の機能的(最終的)統合は、ニューロン活性を必要とすることが示唆される。従って、ACTを使用して、ニューロンに分化する新規に獲得された移植幹細胞の微調整シナプス結合に対する適切なニューロン回路を働かせることができる。「適切なニューロン回路(1つまたは複数)を働かせる」は、特定の認知訓練プロトコルにより生じたものに対応するニューロン活性のパターンの適切なニューロン回路(1つまたは複数)の誘導を意味する。認知訓練プロトコルを使用して、かかるニューロン活性を誘導することができる。代替的に、ニューロン活性は、ニューロン回路の直接電気刺激によっても誘導することができる。「ニューロン活性」および「神経活性」は本明細書において互換的に使用される。
【0064】
記憶剤、例えばCREB経路増強薬は、新しく獲得した情報をLTMに固定するために必要なCREB経路機能を増強し得る。「CREB経路機能増強」は、CREB依存的遺伝子発現を増強または向上する能力を意味する。CREB依存的遺伝子発現は、内在性CREB産生を増加させること、例えば直接もしくは間接的に内在性遺伝子を刺激して、CREBの量の増大をもたらすこと、または機能的(生物学的に活性な)CREBを増大させることにより増強または向上できる。例えば、その全体において参照により本明細書に援用される、米国特許第5,929,223号;米国特許第6,051,559号および国際公開公報WO9611270(1996年4月18日公開)参照。記憶剤の投与により、訓練のみで生じる能力に対して能力の向上を生じるのに必要な訓練が減少し得る。「能力の向上」は記憶能力の局面における向上を意味する。
【0065】
本発明により、動物(特にヒトまたは他の哺乳動物もしくは脊椎動物)(いくつかの態様において記憶の特定の局面の増強を必要とする)における記憶の特定の局面の増強を評価、試験および/または同定するための方法が提供され、該増強は、(a) 動物に記憶剤、例えばCREB経路機能を増強するものを投与すること;および(b) 動物による特定の記憶課題の能力の向上をもたらすのに充分な条件下で該動物を訓練することによるものであり得る。
【0066】
訓練は、1つまたは複数の訓練期間を含み得、目的の記憶課題の能力の向上をもたらすのに適した訓練である。例えば、言語獲得の向上が望まれる場合、訓練は言語獲得に焦点が当てられる。楽器の演奏を学習する能力の向上が望まれる場合、訓練は楽器の演奏の学習に焦点が当てられる。特定の運動技能の向上が望まれる場合、訓練は特定の運動技能の獲得に焦点が当てられる。目的の特定の記憶課題は適切な訓練に一致する。
【0067】
また、本発明により、(a)動物にCREB経路機能を増強する記憶剤を投与すること;および(b) 該動物を、動物のニューロン活性またはニューロン活性のパターンを刺激または誘導するのに充分な条件下で訓練することを含む、例えば動物における特定のニューロン回路(1つまたは複数)に存在するようなニューロン活性またはニューロン活性のパターンの反復刺激により生じる動物の記憶能力の増強を評価、試験および/または同定する方法も提供される。この場合、訓練は、動物におけるニューロン活性またはニューロン活性のパターンを刺激または誘導するのに適した訓練のことをいう。
【0068】
「複数の訓練期間」は、2回以上の訓練期間を意味する。記憶剤は、1つ以上の訓練期間の前、該期間中または該期間後に投与され得る。特定の態様において、記憶剤は、それぞれの訓練期間の前および間に投与される。
【0069】
本発明により評価され得る特定の訓練プロトコルは、当該技術分野で公知であり容易に利用可能である。例えば、Karni, A. and Sagi, D., 「Where practice makes perfect in text discrimination: evidence for primary visual cortex plasticity」、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:4966-4970 (1991);Karni, A. and Sagi, D., 「The time course of learning a visual skill」、Nature, 365:250-252 (1993);Kramer, A. F. et al., 「Task coordination and aging: explorations of executive control processes in the task switching paradigm」、Acta Psychol. (Amst.), 101 :339-378 (1999);Kramer, A. F. et al, 「Training for executive control: Task coordination strategies and aging」、In Aging and Skilled Performance: Advances In Theory and Applications, W. Rogers et al.編、(Hillsdale, N.J.: Erlbaum) (1999);Rider, R. A. and Abdulahad, D. T.,「Effects of massed versus distributed practice on gross and fine motor proficiency of educable mentally handicapped adolescents」、Percept. Mot. Skills, 73:219-224 (1991);Willis, S. L. and Schaie, K. W.,「Training the elderly on the ability factors of spatial orientation and inductive reasoning」、Psychol. Aging, 1 :239-247 (1986);Willis, S. L. and Nesselroade, C. S.,「Long-term effects of fluid ability training in old-old age」、Develop. Psychol., 26:905-910 (1990);Wek, S. R. and Husak, W. S.,「Distributed and massed practice effects on motor performance and learning of autistic children」、Percept. Mot. Skills, 68:107-113 (1989);Verhaehen, P. et al.,「Improving memory performance in the aged through mnemonic training: a meta-analytic study」、Psychol. Aging, 7:242-251 (1992);Verhaeghen, P. and Salthouse, T. A.,「Meta-analyses of age-cognition relations in adulthood: estimates of linear and nonlinear age effects and structural models」、Psychol. Bull., 122:231-249 (1997);Dean, C. M. et al.,「Task-related circuit training improves performance of locomotor tasks in chronic stroke: a randomized, controlled pilot trial」、Arch. Phys. Med. Rehabil., 81:409-417 (2000);Greener, J. et al.,「Speech and language therapy for aphasia following stroke」、Cochrane Database Syst. Rev., CD000425 (2000);Hummelsheim, H. and Eickhof, C.,「Repetitive sensorimotor training for arm and hand in a patient with locked-in syndrome」、Scand. J. Rehabil. Med., 31:250-256 (1999);Johansson, B. B.,「Brain plasticity and stroke rehabilitation. The Willis lecture」、Stroke, 31:223-230 (2000);Ko Ko, C.,「Effectiveness of rehabilitation for multiple sclerosis」、Clin. Rehabil., 13 (Suppl. 1):33-41 (1999);Lange, G. et al.,「Organizational strategy influence on visual memory performance after stroke: cortical/subcortical and left/right hemisphere contrasts」、Arch. Phys. Med. Rehabil., 81:89-94 (2000);Liepert, J. et al.,「Treatment-induced cortical reorganization after stroke in humans」、Stroke, 31:1210-1216 (2000);Lotery, A. J. et al.,「Correctable visual impairment in stroke rehabilitation patients」、Age Ageing, 29:221-222 (2000);Majid, M. J. et al.,「Cognitive rehabilitation for memory deficits following stroke」(Cochrane review), Cochrane Database Syst. Rev., CD002293 (2000);Merzenich, M. et al.,「Cortical plasticity underlying perceptual, motor, and cognitive skill development: implications for neurorehabilitation」、Cold Spring Harb. Symp. Quant. Biol., 61:1-8 (1996);Merzenich, M. M. et al.,「Temporal processing deficits of language-learning impaired children ameliorated by training」、Science, 271:77-81 (1996);Murphy, E.,「Stroke rehabilitation」、J. R. Coll. Physicians Lond., 33:466-468 (1999);Nagarajan, S. S. et al.,「Speech modifications algorithms used for training language learning-impaired children」、IEEE Trans. Rehabil. Eng., 6:257-268. (1998);Oddone, E. et al.,「Quality Enhancement Research Initiative in stroke: prevention, treatment, and rehabilitation」、Med. Care 38:192-1104 (2000);Rice-Oxley, M. and Turner-Stokes, L.,「Effectiveness of brain injury rehabilitation」、Clin. Rehabil., 13(Suppl 1):7-24 (1999); Tallal, P. et al.,「Language learning impairments: integrating basic science, technology, and remediation」、Exp. Brain Res., 123:210-219 (1998);Tallal, P. et al.,「Language comprehension in language-learning impaired children improved with acoustically modified speech」、Science, 271:81-84 (1996)を参照、これらの参考文献はその全体において参照により本明細書に援用される。
【0070】
従って、本発明はまた、(a)記憶剤の有効性を評定、評価および/または試験する、記憶剤を薬物化合物として選択する、もしくは記憶剤を長期記憶増強因子として試験する方法で同定、試験または評価された記憶剤を動物に投与すること;ならびに(b) 該動物を、動物の長期記憶を増強するのに充分な条件下で訓練することを含む、長期記憶の増強を必要とする動物(特にヒトまたは他の哺乳動物もしくは脊椎動物)における、長期記憶を増強する方法にも関する。
【0071】
一態様において、本発明はまた、(a) 記憶剤の有効性を評定、評価および/または試験する、記憶剤を薬物化合物として選択する、もしくは記憶剤を長期記憶増強因子として試験する方法により同定、試験または評価された記憶剤を動物に投与すること;ならびに(b) 該動物を、動物の長期記憶を増強するのに十分な条件下で訓練することを含む、加齢関連記憶障害の治療を必要とする動物における、加齢関連記憶障害の治療方法にも関する。
【0072】
別の態様において、本発明は、(a) 記憶剤の有効性を評定、評価および/または試験する、記憶剤を薬物化合物として選択する、もしくは記憶剤を長期記憶増強因子として試験する方法により同定、試験または評価された記憶剤を動物に投与すること;ならびに(b) 該動物を、動物の長期記憶を増強するのに十分な条件下で訓練することを含む、神経変性疾患に伴う記憶の欠損の治療を必要とする動物における、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、他の老人性痴呆)に伴う記憶の欠損の治療方法に関する。
【0073】
別の態様において、本発明は、(a) 記憶剤の有効性を評定、評価および/または試験する、記憶剤を薬物化合物として選択する、もしくは記憶剤を長期記憶増強因子として試験する方法により同定、試験または評価された記憶剤を動物に投与すること;ならびに(b) 該動物を、動物の長期記憶を増強するのに十分な条件下で訓練することを含む、精神医学的疾患に伴う記憶の欠損の治療を必要とする動物における、精神医学的疾患(例えば、欝、統合失調症、自閉症、注意欠陥障害)に伴う記憶の欠損を治療する方法に関する。
【0074】
別の態様において、本発明は、(a) 記憶剤の有効性を評定、評価および/または試験する、記憶剤を薬物化合物として選択する、もしくは記憶剤を長期記憶増強因子として試験する方法により同定、試験または評価された記憶剤を動物に投与すること;ならびに(b) 該動物を、動物の長期記憶を増強するのに十分な条件下で訓練することを含む、外傷依存的記憶機能の消失に伴う記憶の欠損の治療を必要とする動物における、外傷依存的記憶機能の消失(例えば、脳血管疾患(例えば、脳卒中、虚血)、脳腫瘍、頭部または脳傷害)に伴う記憶の欠損を治療する方法に関する。
【0075】
別の態様において、本発明は、(a) 記憶剤の有効性を評定、評価および/または試験する、記憶剤を薬物化合物として選択する、もしくは記憶剤を長期記憶増強因子として試験する方法により同定、試験または評価された記憶剤を動物に投与すること;ならびに(b) 該動物を、動物の長期記憶を増強するのに十分な条件下で訓練することを含む、遺伝的欠損に伴う記憶の欠損の治療を必要とする動物における、遺伝的欠損(例えば、ルービンスタイン-テービ症候群、ダウン症)に伴う記憶の欠損を治療する方法に関する。
【0076】
本発明はまた、(a) 記憶剤の有効性を評定、評価および/または試験する、記憶剤を薬物化合物として選択する、もしくは記憶剤を長期記憶増強因子として試験する方法により同定、試験または評価された記憶剤を動物に投与すること;ならびに(b) 該動物を、動物の長期記憶を増強するのに十分な条件下で訓練することを含む、ニューロン幹細胞の操作を行っている動物におけるCNS障害または状態に伴う記憶の欠損の治療方法に関する。「ニューロン幹細胞操作」は、(1) 外来性のニューロン幹細胞を動物の脳もしくは脊髄に移植すること、または(2) 動物内で増殖するように内在性のニューロン幹細胞を刺激または誘導することを意味する。ニューロン幹細胞の動物の脳または脊髄への移植方法は、当該技術分野において公知であり容易に利用可能である(例えば、Cameron, H. A. and McKay, R. D., Nat. Neurosci., 2:894-897 (1999);Kurimoto, Y. et al., Neurosci. Lett., 306:57-60 (2001);およびSingh, G., Neuropathology, 21 :110-114 (2001)を参照)。動物における内在性ニューロン幹細胞の増殖の刺激または誘導方法は、当該技術分野で公知であり容易に利用可能である(例えば、Gould, E. et al., Trends Cogn. Sci,, 3:186-192 (1999);Gould, E. et al., Biol. Psychiatry, 48:715-20 (2000);Nilsson, M. et al, J. Neurobiol., 39:569-578 (1999);Fuchs, E. and Gould, E., Eur. J. Neurosci., 12:2211-2214 (2000);およびGould, E. et al., Nat. Neurosci., 2:260-265 (1999)参照)。動物の脳または脊髄へのニューロン幹細胞の特定の移植方法、および動物における内在性ニューロン幹細胞の増殖のための特定の刺激または誘導方法は、本発明の実施の決定的要因ではない。
【0077】
本発明はさらに、(a) 記憶剤の有効性を評定、評価および/または試験する、記憶剤を薬物化合物として選択する、もしくは記憶剤を長期記憶増強因子として試験する方法により同定、試験または評価された記憶剤を動物に投与すること;ならびに(b) 該動物を、動物の長期記憶を増強するのに十分な条件下で訓練することを含む、学習、言語もしくは読解の障害、または前述のいずれかの組合せを有する動物における記憶および/または能力を向上または増強する方法に関する。
【0078】
記憶剤
本明細書で使用する場合、記憶剤は、記憶障害および/または記憶機能不全に対して薬学的活性を有する化合物であり、薬物、化合物、イオン化合物、有機化合物、補因子などの有機リガンド、糖類、組換えおよび合成ペプチド、タンパク質、ペプトイド、遺伝子などの核酸配列、核酸産物および他の分子ならびに組成物を含む。例えば、記憶剤は短期または長期記憶を増強または障害し得る。例えば、記憶剤は、発明の名称「Therapeutic Piperazones」で2007年2月27日に出願された米国特許出願第11/679,782号;発明の名称「Indolone Compounds Useful To Treat Cognitive Impairment」で2006年12月8日に出願された米国特許出願第11/608,746号;および発明の名称「Therapeutic Compounds」で2006年2月27日に出願された米国特許出願第11/679,775号、発明の名称「Therapeutic Pyrazoloquinoline Urea Derivatives」で2007年6月8日に出願された米国仮特許出願第60/942,992号(上記特許出願の各々は、その全体において参照により本明細書中に明確に援用される)に記載された化合物のいずれかであってもよい。
【0079】
本明細書で使用する場合、記憶障害剤は、残留記憶(例えば、心的外傷後ストレス障害)に関連する薬学的活性を有する化合物であり、薬物、化合物、イオン化合物、有機化合物、補因子などの有機リガンド、糖類、組換えおよび合成ペプチド、タンパク質、ペプトイド、遺伝子などの核酸配列、核酸産物、および他の分子、ならびに組成物を含む。本発明の記憶障害剤および記憶増強因子は、本発明の方法およびシステムのいずれかと併用できる。
【0080】
例えば、記憶剤は、細胞透過型cAMPアナログ(例えば、8-ブロモcAMP);アデニル酸シクラーゼ1(AC1)のアクチベーター(例えば、フォルスコリン);Gタンパク質結合レセプター、例えば限定されないがアドレナリン作動性レセプターおよびオピオイドレセプターおよびそれらのリガンドに作用する薬剤(例えば、フェネチルアミン);細胞内カルシウム濃度の調節因子(例えば、タプシガルジン、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)レセプターアゴニスト);cAMP分解に応答性のホスホジエステラーゼのインヒビター(例えば、ロリプラム(ホスホジエステラーゼ4を阻害する)、イソ-ブト-メト-キサンチン(IBMX)(ホスホジエステラーゼ1および2を阻害する));CREBタンパク質活性化およびCREB依存的遺伝子発現を媒介するプロテインキナーゼおよび/またはタンパク質リン酸化酵素の調節因子であり得る。記憶剤はまた、外来性CREB、CREBアナログ、CREB様分子、生物学的活性CREB断片、CREB融合タンパク質、および/または外来性CREB、CREBアナログ、CREB様分子、生物活性CREB断片および/またはCREB融合タンパク質をコードする核酸配列でもあり得る。
【0081】
記憶剤は、CREB機能調節因子、および/またはCREB機能調節因子をコードする核酸配列でもあり得る。本明細書で使用する場合、CREB機能調節因子はCREB経路機能を調節する能力を有する。「調節」は、CREB経路機能を変化(増加もしくは減少)または改変させる能力を意味する。
【0082】
記憶剤は、CNSにおけるCREB機能を増強し得る化合物であり得る。かかる化合物としては、限定されないが、膜の安定性および流動性ならびに特定の免疫刺激に作用する化合物が挙げられる。特定の態様において、記憶剤は、CNSにおいてCREB経路機能を一過的に増強し得る。
【0083】
CREBアナログまたは誘導体は、内在性CREBに類似したアミノ酸配列を有するタンパク質として本明細書に規定される。類似したアミノ酸配列は、内在性CREBのアミノ酸配列の充分な同一性を有して内在性CREBの生物活性を有するが、該アミノ酸配列中に1つ以上の「サイレント」変化を有するアミノ酸配列を意味するように本明細書中に規定される。CREBアナログとしては、哺乳動物CREM、哺乳動物ATF-1および他のCREB/CREM/ATF-1サブファミリーメンバーが挙げられる。
【0084】
CREB様分子は、本明細書で使用される場合、機能的にCREBに似た(模倣する)タンパク質のことをいう。CREB様分子は、内在性CREBに類似したアミノ酸配列を有することを必要としない。
【0085】
記憶剤の例としては、

が挙げられ得る。
【0086】
記憶剤の例としてはまた、

(式中、「Me」はメチルを意味し、「cPent」は「シクロペンチル」を意味する)が挙げられ得る。前述の式は、両エナンチオマーおよびそれらの混合物包含する。特定の態様において、(HT-0712)、上記の式の第3炭素および第5炭素は、S配置にある。
【0087】
また、例としては、構造:

(式中、Y1、Y2、Y3およびY4のそれぞれは独立して、-H;直鎖もしくは分岐鎖C1〜C7アルキル、モノフルオロアルキルもしくはポリフルオロアルキル;直鎖もしくは分岐鎖C2〜C7アルケニルもしくはアルキニル;C3〜C7シクロアルキルもしくはC5〜C7シクロアルケニル;-F、-Cl、-Brもしくは-I;-NO2;-N3;-CN;-OR4、-OCOR4、-COR4、-NCOR4、-N(R4)2、-CON(R4)2もしくは-COOR4;アリールもしくはヘテロアリールであるか、または隣接する炭素原子上に存在するY1、Y2、Y3およびY4の任意の2つはメチレンジオキシ基を構成し得る;ここで、各R4は独立して-H;直鎖もしくは分岐鎖C1〜C7アルキル、モノフルオロアルキルもしくはポリフルオロアルキル;直鎖もしくは分岐鎖C2〜C7アルケニルもしくはアルキニル;C3〜C7シクロアルキル、C5〜C7シクロアルケニル、アリールまたはアリール(C1〜C6)アルキルである;AはA'、直鎖もしくは分岐鎖C1〜C7アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール(C1〜C6)アルキルまたはヘテロアリール(C1〜C6)アルキルである;ここで、A'は

(式中、R1およびR2はそれぞれ独立して、H、直鎖もしくは分岐鎖C1〜C7アルキル、-F、-Cl、-Br、-I、-NO2、または-CNである;R3は、H、直鎖もしくは分岐鎖C1〜C7アルキル、-F、-Cl、-Br、-I、-NO2、-CN、-OR6、アリールまたはヘテロアリールである;R5は、直鎖もしくは分岐鎖C1〜C7アルキル、-N(R4)2、-OR4またはアリールである;R6は、直鎖もしくは分岐鎖C1〜C7アルキルまたはアリールである;nは1以上4以下の整数である)である;Bは、C3〜C7シクロアルキル、C5〜C7シクロアルケニル、アダマンチル、アリール、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、インドリジニル、インドール-4-イル、インドール-5-イル、インドール-6-イル、インドール-7-イル、イソインドリル、ベンゾ[b]フラン-4-イル、ベンゾ[b]フラン-5-イル、ベンゾ[b]フラン-6-イル、ベンゾ[b]フラン-7-イル、ベンゾ[b]チオフェン-4-イル、ベンゾ[b]チオフェン-5-イル、ベンゾ[b]チオフェン-6-イル、ベンゾ[b]チオフェン-7-イル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾ[b]チアゾリル、プリニル、イミダゾ(2,1-b)チアゾリル、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、2,1,3-ベンゾチアゾリル、フラニル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、シンノリニル、キノキサリニル、1,8-ナフチリジニル、プテリジニル、またはフタルイミジルである;ただし、Bがアリール、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、インドリジニル、インドール-4-イル、インドール-5-イル、インドール-6-イル、インドール-7-イル、イソインドリル、ベンゾ[b]フラン-4-イル、ベンゾ[b]フラン-5-イル、ベンゾ[b]フラン-6-イル、ベンゾ[b]フラン-7-イル、ベンゾ[b]チオフェン-4-イル、ベンゾ[b]チオフェン-5-イル、ベンゾ[b]チオフェン-6-イル、ベンゾ[b]チオフェン-7-イル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾ[b]チアゾリル、プリニル、イミダゾ[2,1-b]チアゾリル、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、2,1,3-ベンゾチアゾリル、フラニル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、シンノリニル、キノキサリニル、1,8-ナフチリジニル、プテリジニル、またはフタルイミジルである イミン結合の窒素原子に対してオルトである1つまたは複数の炭素原子は、1つ以上の以下の、-F、-Cl、-Br、-I、-CN、メチル、エチルまたはメトキシでのみ置換され得る;アリールは、フェニルまたはナフチル、例えば以下:-F、-Cl、-Br、-I、-NO2、-CN、直鎖もしくは分岐鎖C1〜C7アルキル、直鎖もしくは分岐鎖C1〜C7モノフルオロアルキル、直鎖もしくは分岐鎖C1〜C7ポリフルオロアルキル、直鎖もしくは分岐鎖C2〜C7アルケニル、直鎖もしくは分岐鎖C2〜C7アルケニル、C3C7シクロアルキル、C3〜C7モノフルオロシクロアルキル、C3〜C7ポリフルオロシクロアルキル、C5〜C7シクロアルケニル、-OR4、SR4、-OCOR4、-COR4、-NCOR4、-CO2R4、-CON(R4)2または(CH2)n-O-(CH2)m.-CH3の1つ以上で置換されたフェニルおよびナフチルである)
を有する化合物が挙げられ得る。
【0088】
いくつかの態様において、Aは、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロアリール(C1〜C6)アルキルであり;アリールは、-F、-Cl、-Br、-I、-NO2、-CN、直鎖もしくは分岐鎖C1〜C7アルキル、直鎖もしくは分岐鎖C1〜C7モノフルオロアルキル、直鎖もしくは分岐鎖C1〜C7ポリフルオロアルキル、直鎖もしくは分岐鎖C2〜C7アルケニル、直鎖もしくは分岐鎖C2〜C7アルキニル、C3〜C7シクロアルキル、C3〜C7モノフルオロシクロアルキル、C3〜C7ポリフルオロシクロアルキル、C5〜C7シクロアルケニル、-N(R4)2、-OR4、-SR4、-OCOR4、-COR4、-NCOR4、-CO2R4、-CON(R4)2または-(CH2)nO(CH2)mCH3で置換される。Aは、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜C6)アルキルまたは-(CH2)n-CC-R4であってもよく;アリールは、-OHで置換される。他の態様において、AはA'であり、A'は

である。
【0089】
他の態様において、Y1、Y2、Y3およびY4のそれぞれは、独立して、-H;直鎖もしくは分岐鎖C1〜C7アルキル、-CF3、-F、-Cl、-Br、-I、-OR4、-N(R4)2、または-CON(R4)2であり;各R4は独立して、-H;直鎖もしくは分岐鎖C1〜C7アルキル、-CF3、またはフェニルであり;AはA'、直鎖もしくは分岐鎖C1〜C7アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール(C1〜C6)アルキルまたはヘテロアリール(C1〜C6)アルキルであり;A'は

である。
【0090】
特定の態様において、Bは、C3〜C7シクロアルキルまたはアダマンチルである。他の態様において、Bは、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、インドリジニル、インドール-4-イル、インドール-5-イル、インドール-6-イル、インドール-7-イル、イソインドリル、ベンゾ[b]フラン-4-イル、ベンゾ[b]フラン-5-イル、ベンゾ[b]フラン-6-イル、ベンゾ[b]フラン-7-イル、ベンゾ[b]チオフェン-4-イル、ベンゾ[b]チオフェン-5-イル、ベンゾ[b]チオフェン-6-イル、ベンゾ[b]チオフェン-7-イル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾ[b]チアゾリル、プリニル、イミダゾ[2,1-b]チアゾリル、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、2,1,3-ベンゾチアゾリル、フラニル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、シンノリニル、キノキサリニル、1,8-ナフチリジニル、プテリジニルまたはフタルイミジルである。他の態様において、Bは、アリールであるかまたはフェニルであり、フェニルは、以下:-F、-Cl、-Br、-CF3、直鎖もしくは分岐鎖C1〜C7アルキル、-OR4、-COR4、-NCOR4、-CO2R4または-CON(R4)2の1つ以上で任意に置換される。
【0091】
さらなる例としては、以下の構造:



を有する化合物が挙げられる。
【0092】
さらなる例としては、構造:

(式中、Y1、Y2、Y3およびY4の各々は独立して、-H;直鎖もしくは分岐鎖C1〜C7アルキル、モノフルオロアルキルまたはポリフルオロアルキル;直鎖もしくは分岐鎖C2〜C7アルケニルまたはアルキニル;C3〜C7シクロアルキルまたはC5〜C7シクロアルケニル;-F、-Cl、-Brまたは-I;-NO2;-N3;-CN;-OR4、-SR4、-OCOR4、-COR4、-NCOR4、-N(R4)2、-CON(R4)2または-COOR4;アリールまたはヘテロアリールであるか、あるいは隣接する炭素原子上に存在するY1、Y2、Y3およびY4の任意の2つは、メチレンジオキシ基を構成し得る;ここで、各R4は独立して、-H;直鎖もしくは分岐鎖C1〜C7アルキル、モノフルオロアルキルまたはポリフルオロアルキル;直鎖もしくは分岐鎖C2〜C7アルケニルまたはアルキニル;C3〜C7シクロアルキル、C5〜C7シクロアルケニル、アリールまたはアリール(C1〜C6)アルキルである;AはA'、直鎖もしくは分岐鎖C1〜C7アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール(C1〜C6)アルキルまたはヘテロアリール(C1〜C6)アルキルである;A'は、

(式中、R1およびR2はそれぞれ独立して、H、直鎖もしくは分岐鎖C1〜C7アルキル、-F、-Cl、-Br、-I、-NO2、または-CNである;R3は、H、直鎖もしくは分岐鎖C1〜C7アルキル、-F、-Cl、-Br、-I、-NO2、-CN、-OR6、アリールまたはヘテロアリールである;R5は、直鎖もしくは分岐鎖C1〜C7アルキル、-N(R4)2、-OR4またはアリールである;R6は、直鎖もしくは分岐鎖C1〜C7アルキルまたはアリールである;nは、1以上4以下の整数である)である;Bは、アリール、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、インドリジニル、インドール-4-イル、インドール-5-イル、インドール-6-イル、インドール-7-イル、イソインドリル、ベンゾ[b]フラン-4-イル、ベンゾ[b]フラン-5-イル、ベンゾ[b]フラン-6-イル、ベンゾ[b]フラン-7-イル、ベンゾ[b]チオフェン-4-イル、ベンゾ[b]チオフェン-5-イル、ベンゾ[b]チオフェン-6-イル、ベンゾ[b]チオフェン-7-イル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾ[b]チアゾリル、プリニル、イミダゾ[2,1-b]チアゾリル、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、2,1,3-ベンゾチアゾリル、フラニル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、シンノリニル、キノキサリニル、1,8-ナフチリジニル、プテリジニルまたはフタルイミジルである;しかしながら、イミン結合の窒素原子に対してオルトである1つまたは複数の炭素原子は、以下、-F、-Cl、-Br、-I、-CN、メチル、エチルまたはメトキシの1つ以上のみで置換され得るものとする;アリールは、フェニルまたはナフチル、例えば、以下:-F、-Cl、-Br、-I、-NO2、-CN、直鎖もしくは分岐鎖C1〜C7アルキル、直鎖もしくは分岐鎖C1〜C7モノフルオロアルキル、直鎖もしくは分岐鎖C1〜C7ポリフルオロアルキル、直鎖もしくは分岐鎖C2〜C7アルケニル、直鎖もしくは分岐鎖C2〜C7アルキニル、C3〜C7シクロアルキル、C1〜C7モノフルオロシクロアルキル、C3〜C7ポリフルオロシクロアルキル、C5〜C7シクロアルケニル、-OR4、SR4、-OCOR4、-COR4、-NCOR4、-CO2R4、-CON(R4)2または(CH2)n-O-(CH2)m-CH3の1つ以上で置換されたフェニルおよびナフチルである)
を有する化合物または薬学的に許容され得るその塩が挙げられる。いくつかの態様において、Y1、Y2、Y3およびY4の各々は、独立して-H;直鎖もしくは分岐鎖C1〜C7アルキル、-CF3、-F、-Cl、-Br、-I、-OR4、-N(R4)2、または-CON(R4)2である。
【0093】
いくつかの態様において、Aは、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜C6)アルキルまたは-(CH2)n-CC-R4であり;アリールは-OHで置換される。他の態様において、Aはアリール、ヘテロアリールまたはヘテロアリール(C1〜C6)アルキルであり;アリールは、-F、-Cl、-Br、-I、-NO2、-CN、直鎖もしくは分岐鎖C1〜C7アルキル、直鎖もしくは分岐鎖C1〜C7モノフルオロアルキル、直鎖もしくは分岐鎖C1〜C7ポリフルオロアルキル、直鎖もしくは分岐鎖C2〜C7アルケニル、直鎖もしくは分岐鎖C2〜C7アルキニル、C3〜C7シクロアルキル、C3〜C7モノフルオロシクロアルキル、C3〜C7ポリフルオロシクロアルキル、C5〜C7シクロアルケニル、-N(R4)2、-OR4、-SR4、-OCOR4、-COR4、-CO2R4、-CON(R4)2または-(CH2)nO(CH2)mCH3で置換される。Aは、アリールまたはアリール(C1〜C6)アルキルであってもよい。他の態様において、Aは、A'、直鎖もしくは分岐鎖C1〜C7アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール(C1〜C6)アルキルまたはヘテロアリール(C1〜C6)アルキルであり;A'は

である。
【0094】
本明細書に記載される化合物は、エナンチオマー的におよび/またはジアステレオ異性体的に純粋である。これらは、純粋なZイミン異性体もしくは純粋なZアルケン異性体であるか、または純粋なEイミン異性体もしくは純粋なEアルケン異性体であり得る。
【0095】
さらなる例としては:


が挙げられる。
【0096】
さらなる例としては、以下の式:

(式中、
R1、R2、R3、およびR4はそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシ、ハロ、シアノ、-CONRaRb、-NRaRb、ヒドロキシ(C1〜C6)アルキル、アリール、ヘテロアリール、複素環、アミノ(C1〜C6)アルキル、5個までのフッ素で任意に置換された(C1〜C6)アルキルおよび5個までのフッ素で任意に置換された(C1〜C6)アルコキシからなる群より選択される;
各RaおよびRbは独立して、水素、(C1〜C6)アルキル、アリール、(C1〜C6)アルキルOC(O)-もしくはアリールOC(O)-であるか、またはRaおよびRbは、それらが結合する窒素と共に、1つ以上のRdで任意に置換された複素環を形成する;ここで、複素環基は、任意にO(酸素)、S(O)2およびNRcから選択される1つ以上の基を含む;
各zは、0、1および2から選択される整数である;
各Rcは独立して、水素、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、-C(O)O(C1〜C6)アルキル、-C(O)Oアリール、(C1〜C6)アルコキシ(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルキルO(CH2)m、ヒドロキシ(C1〜C6)アルキル、アリール、ヘテロアリール、複素環、アリールO(C1〜C6)アルキル、-C(O)NRg(C1〜C6)アルキル、-C(O)NRgアリール、-S(O)、(C1〜C6)アルキル、-S(O)、アリール、-C(O)(C1〜C6)アルキル、アリールC(O)-、5個までのフッ素で任意に置換された(C1〜C6)アルキルまたは5個までのフッ素で任意に置換された(C1〜C6)アルコキシである;
各mは、2、3、4、5および6から選択される整数である;
各Rdは独立して、水素、ハロ、オキソ、ヒドロキシ、-C(O)NRaRb、-NRaRb、ヒドロキシ(C1〜C6)アルキル、アリール、アリール(C1〜C6)アルキル、5個までのフッ素で任意に置換された(C1〜C6)アルキルおよび5個までのフッ素で任意に置換された(C1〜C6)アルコキシからなる群より選択される;
RcおよびRrはそれぞれ独立して、水素、(C1〜C6)アルキル、アリール、-S(O)、(C1〜C6)アルキル、-S(O)、アリール、-CONRg(C1〜C6アルキル)、(C1〜C6)アルキルC(O)-、アリールC(O)-、(C1〜C6)アルキルOC(O)-、およびアリールOC(O)-からなる群より選択される;
Rgは、水素または(C1〜C6)アルキルである;
R5およびR6はそれぞれ独立して、水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニルおよびアリールからなる群より選択されるか、またはR5およびR6は、それらが結合する窒素と共に、1つ以上のRdで任意に置換された複素環基を形成する;ここで複素環基は、O(酸素)、S(O)z、およびNRCから選択される1つ以上の基を任意に含み得る;
R7は、水素、ヒドロキシ、ハロ、ヒドロキシ(C1〜C6)アルキル、5個までのフッ素で任意に置換された(C1〜C6)アルキルおよび5個までのフッ素で任意に置換された(C1〜C6)アルコキシからなる群より選択される;
Arは、それぞれ1つ以上のR8で任意に置換されたアリールまたはヘテロアリールである;ならびに
各R8は独立して、水素、ハロ、CF3、CF2H、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、(C1〜C6)アルキル、ヒドロキシ(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、-NRaRb、アリール、ヘテロアリールまたは複素環である)
の化合物またはその薬学的に許容され得る塩が挙げられ得る。
【0097】
他の例としては、以下の式:

の化合物およびその薬学的に許容され得る塩が挙げられる。
【0098】
R5およびR6は、例えば、上記式の化合物中で、それらが結合する窒素と共に、ピペリジニル、ピロリジニル、モルホリニルまたはチオモルホリニルの環を形成し得る。
【0099】
さらなる例としては、以下の式:

(式中:XはN(RC)、O(酸素)、C(Rd)2またはS(O)zである;zは0、1および2から選択される整数である;各Rdは独立して、水素、ハロ、オキソ、ヒドロキシ、-C(O)NRaRb, -NRaRb、ヒドロキシ(C1〜C6)アルキル、アリール、アリール(C1〜C6)アルキル、5個までのフッ素で任意に置換された(C1〜C6)アルキルおよび5個までのフッ素で任意に置換された(C1〜C6)アルコキシからなる群より選択される;ならびにnは、0、1および2から選択される整数である;ただし、n=0である場合、XはC(Rd)2であるものとする)
の化合物およびその薬学的に許容され得る塩が挙げられる。
【0100】
他の例としては、以下の式:

の化合物およびその薬学的に許容され得る塩が挙げられる。
【0101】
他の例としては、以下の式:

(式中、nは0、1または2である)
の化合物およびその薬学的に許容され得る塩が挙げられる。
【0102】
いくつかの態様において、R2はメチル、フルオロ(fluro)またはOMeである。いくつかの態様において、R3はメチル、フルオロまたはOMeである。いくつかの態様において、R2およびR3はフルオロである。別の態様において、R2およびR3はメチルである。
【0103】
他の例としては、以下の式:

の化合物およびその薬学的に許容され得る塩が挙げられる。
【0104】
他の例としては、以下の式:

の化合物およびその薬学的に許容され得る塩が挙げられ、式中、各Yは独立して、NまたはC(R8)である。いくつかの態様において、R5およびR6は、それらが結合する窒素と共に、それぞれ1つ以上のRdで任意に置換されたピペリジニル、ピロリジニル、モルホリニル、またはチオモルホリニルの環を形成する。
【0105】
さらなる例としては、以下の式:

の化合物およびその薬学的に許容され得る塩が挙げられる。
【0106】
いくつかの態様において、nは0、1または2であり得る。いくつかの態様において、R2は、メチル、フルオロまたはOMeであり得る。いくつかの態様において、R3は、メチル、フルオロまたはOMeであり得る。いくつかの態様において、R2およびR3はフルオロであり得る。別の態様において、R2およびR3はメチルであり得る。
【0107】
さらなる例としては、式:


の化合物およびその薬学的に許容され得る塩が挙げられる。
【0108】
また、例としては、以下の式:

(式中:R1は、H、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、(C1〜C6)アルカノイル、(C1〜C6)アルコキシカルボニル、(C1〜C6)アルカノイルオキシ、(C3〜C8)シクロアルキル、(C3〜C8)シクロアルキル((C1〜C6)アルキル、ハロ(C1〜C6)アルキル、アリール、アリール(C1〜C6)アルキル、アリール(C1〜C6)アルコキシ、アリール(C1〜C6)アルカノイル、het、het(C1〜C6)アルキル、het(C1〜C6)アルコキシまたはhet(C1〜C6)アルカノイルである;
nは1または2である;
mは1または2である;
Wは、O、Sまたは2つの水素である;
Xは、OまたはN-Y-R4である;
Yは、直接結合、-CH2-、-C(=O)-、-C(=S)-、-O-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-C(=O)NRa-、-S-、-S(=O)-、-S(=O)2-、または-S(=O)2NRa-である;
R4は、H、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、(C1〜C6)アルカノイル、ヒドロキシ、(C3〜C8)シクロアルキル、(C3〜C8)シクロアルキル(C1〜C6)アルキル、ハロ(C1〜C6)アルキル、ヒドロキシ(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシカルボニル、カルボキシ、アリール、アリール(C1〜C6)アルキル、het、NRdRe、-C(=O)NRdRe、NRdRe(C1〜C6)アルキルまたはhet(C1〜C6)アルキルである;
Raは、H、(C1〜C6)アルキル、(C3〜C8)シクロアルキル、(C1〜C6)アルコキシ(C2〜C6)アルキル、または(C3〜C8)シクロアルキル(C1〜C6)アルキルである;
Zは、(C1〜C6)アルキル、ハロ(C1〜C6)アルキル、(C3〜C8)シクロアルキル、(C3〜C8)シクロアルキル(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、ハロ(C1〜C6)アルコキシ、(C3〜C8)シクロアルコキシ、および(C3〜C8)シクロアルキル(C1〜C6)アルコキシから独立して選択される1つ以上の置換基で置換されたフェニル環であるか;またはZは、飽和、部分不飽和、もしくは芳香族、単環もしくは二環式の炭素、酸素およびNRbから選択される約3〜約8個の原子を含む環系に縮合したフェニル環である、ここでZの単環または二環式の系は、1つ以上のRdで任意に置換され、該単環または二環式の環系に縮合したフェニル環は、(C1〜C6)アルキル、ハロ(C1〜C6)アルキル、(C3〜C8)シクロアルキル、(C3〜C8)シクロアルキル(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、ハロ(C2〜C6)アルコキシ、(C3〜C8)シクロアルキルオキシ、および(C3〜C8)シクロアルキル(C1〜C6)アルコキシから独立して選択される1つ以上の置換基で任意に置換される;
Rbは、非存在、H、(C1〜C6)アルキル、(C3〜C8)シクロアルキル、(C1〜C6)アルコキシ(C2〜C6)アルキル、または(C3〜C8)シクロアルキル(C1〜C6)アルキルである;
Rcは、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、(C1〜C6)アルカノイル、(C1〜C6)アルコキシカルボニル、(C1〜C6)アルカノイルオキシ、(C3〜C8)シクロアルキル、(C3〜C8)シクロアルキル(C1〜C6)アルキル、ハロ(C1〜C6)アルキル、アリール、アリール(C1〜C6)アルキル、アリール(C1〜C6)アルコキシ、アリール(C1〜C6)アルカノイル、het、het(C1〜C6)アルキル、het(C1〜C6)アルコキシ、またはhet(C1〜C6)アルカノイルである;
各RdおよびReは独立して、H、ヒドロキシ、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C1〜C6)アルコキシ、(C2〜C6)アルケニルオキシ、(C2〜C6)アルキニルオキシ、(C1〜C6)アルカノイル、(C1〜C6)アルコキシカルボニル、(C3〜C8)シクロアルキル、(C3〜C8)シクロアルキル(C1〜C6)アルキル、アリール、アリール(C1〜C6)アルキル、NRfRgまたはアリール(C1〜C6)アルコキシである;ならびに
各RfおよびRgは独立して、H、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、(C1〜C6)アルカノイル、(C1〜C6)アルコキシカルボニル、(C3〜C8)シクロアルキル、(C3〜C8)シクロアルキル(C1〜C6)アルキル、アリール、アリール(C1〜C6)アルキルもしくはアリール(C1〜C6)アルコキシであるか;またはRfおよびRgは、それらが結合する窒素と共に、ピロリジノ、ピペリジノ、ピペラジノ、モルホリノもしくはチオモルホリノの環を形成する;
R1およびR4の任意のアリールまたはhetは、(C1〜C6)アルキル、フェニル、(C1〜C6)アルコキシ、(C1〜C6)アルカノイル、(C1〜C6)アルコキシカルボニル、(C1〜C6)アルカノイルオキシ、(C3〜C8)シクロアルキル、(C3〜C8)シクロアルキル(C1〜C6)アルキル、ハロ(C1〜C6)アルキル、(C3〜C8)シクロアルキルオキシ、(C3〜C8)シクロアルキル(C1〜C6)アルコキシ、ハロ(C2〜C6)アルコキシ、シアン、窒素、ハロ、カルボキシまたはNRdReから独立して選択される1つ以上の置換基で任意に置換される;ならびに
Xを含む環は、炭素がハロ、(C1〜C6)アルキルまたは(C1〜C6)アルコキシの1つ以上で任意に置換される)
の化合物が挙げられる。
【0109】
その薬学的に許容され得る任意の塩が含まれる。
【0110】
他の例としては、以下の式

(式中:R1は、非置換または1つ以上のReで置換された(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)ハロアルキルまたはアリールである;
R2およびR3の一方は非存在であり、他方は、水素、非置換もしくはアルキル、ハロ、ハロアルキルもしくはニトロ、Het、(C3〜C8)シクロアルキル(C1〜C6)アルキル、アリール(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)またはHet(C1〜C6)アルキルから選択される1つ以上の基で置換された(C1〜C6)アルキル、ハロ(C1〜C6)アルキル、ヒドロキシ(C1〜C6)アルキル、(C3〜C8)シクロアルキル、アミノ(C2〜C6)アルキルもしくはアリールである;
Bは、アリール、チオフェン、ヘテロアリール、フランまたはピロールである;
Xは、-C(=O)、-C(-S)、-C(R4)2、-C(OH)-、または-S(O)zである;
各zは、独立して0、1または2である;
Yは、R4、-N(R4)2、-OR4、-SR4または-C(R4)3である;
各R4は独立して、水素、非置換もしくは1つ以上で置換される(C1C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C1〜C6)アルコキシ、(C1〜C6)アルカノイル、(C1〜C6)アルコキシカルボニル、(C3〜C8)シクロアルキル、(C3〜C8)シクロアルキル(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ(C2〜C6)アルキル、ヒドロキシ(C2〜C6)アルキル、シアノ(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルキチオ(C2〜C6)アルキル、アリール、アリール(C1〜C6)アルキル、アリールオキシ(C2〜C6)アルキル、ハロ(C2〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシカルボニル(C1〜C6)アルキル、NRaRb、HetまたはHet(C1〜C6)アルキルからなる群より選択されるか、または2つのR4基は、それらが結合する原子と共に、アリール、Het、または炭素原子および任意にO、S(O)zおよびNR0から選択される1つ以上のさらなるヘテロ原子を含む、飽和もしくは不飽和の3〜8員単環もしくは8〜12員二環式の環系を形成する、ここでそれぞれの環系は、1つ以上のRdで任意に置換される;
各RaおよびRbは独立して、水素または(C1〜C6)アルキルである;
各Rcは独立して、水素、非置換または1つ以上の置換基Reで置換されたアリール、S(O)2、(C1〜C6)アルカノイル、ヒドロキシ(C1〜C6)アルキル、アルコキシ(C1〜C6)アルキル、Het、(C1〜C6)アルコキシカルボニル(cabonyl)もしくは(C1〜C6)アルキルである;
各Rdは独立して、非置換または1つ以上の置換基Reで置換されたハロ、ヒドロキシ、シアノ、窒素、アジド、アミノ、(C1〜C6)アルキルアミノ、アミノ(C1〜C6)アルキル、アミド、(C1〜C6)アルキルアミド、アリールアミド、カルボン酸、(C1〜C6)アルキル、ヒドロキシ(C1〜C6)アルキル、ハロ(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、ハロ(C1〜C6)アルコキシ、(C1〜C6)アルカノイル、(C1〜C6)アルコキシカルボニル、カルボキシ、(C1〜C6)アルカノイルオキシ、Het、アリール、Het(C1〜C6)アルキルまたはアリール(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルキルアリール、スルホニル、スルホンアミド、尿素、カルバメートであるか、または2つのRdは、それらが結合する原子と共に、ケトンもしくはスピロ環式炭素環もしくは複素環を形成するか、または2つのRdは、それらが結合する原子と共に、二環式炭素環もしくは複素環を形成し、ここで各スピロ環もしくは二環は、非置換または1つ以上のハロ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アジド、(C1〜C6)アルキル、ヒドロキシ(C1〜C6)アルキル、ハロ(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、ハロ(C1〜C6)アルコキシ、(C1〜C6)アルカノイル、(C1〜C6)アルコキシカルボニル、カルボキシ、(C1〜C6)アルカノイルオキシ、NRfRg、RfRgNC(=O)-、フェニル、またはフェニル(C1〜C6)アルキル、スルホニル、スルホンアミド、尿素、カルバメートで置換され、ここでRfおよびRgは、それらが結合する窒素と共に、非置換または1つ以上の置換基Reで置換されたピペリジノ、ピロリジノ、モルホリノまたはチオモルホリノの環を形成する;
各Reは独立して、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アジド、(C1〜C6)アルキル、Het、アリール、(C1〜C6)アルキルHet、(C1〜C6)アルキルアリール、(C1〜C6)アルキルHet(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルキルアリール(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)ハロアルキル、(C1〜C6)アルコキシ、(C1〜C6)ハロアルコキシ、(C1〜C6)アルカノイル、(C1〜C6)アルコキシカルボニル、カルボキシおよび(C1〜C6)アルカノイルオキシから選択される;
R5は、H、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルケニル、(C1〜C6)アルキニル、アリール(C1〜C6)アルキルである;ならびに
各R6は、H、(C1〜C6)アルキル、アミノ、アミド、ケトまたはアリール(C1〜C6)アルキルである、
ただしBがチオフェンである場合、R1はトリフルオロメチルであり、R2はメチルであり、R3およびR6は非存在であり、R5はHであり、XはC(=0)であり、YはN(R4)2であり、R4は両方ともメチルでない)
の化合物が挙げられる。
【0111】
さらなる例としては、以下の式:

(式中、R1は、非置換または1つ以上のReで置換された(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)ハロアルキルまたはアリールである;
R2およびR3の一方は非存在であり、他方は、水素であるか、それぞれ非置換またはアルキル、ハロ、ハロアルキルまたはニトロ、Het、(C3〜C8)シクロアルキル(C1〜C6)アルキル、アリール(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)またはHet(C1〜C6)アルキルから選択される1つ以上の基で置換された(C1〜C6)アルキル、ハロ(C1〜C6)アルキル、ヒドロキシ(C1〜C6)アルキル、(C3〜C8)シクロアルキル、アミノ(C2〜C6)アルキルまたはアリールである;
Z1、Z2およびZ3のそれぞれは独立して、C(R6)P、N(R6)q、OまたはSであり、ここでZ1がN(R6)q、OまたはSである場合、Z1またはZ2の少なくとも一つはN(R6)q、OまたはSでなければならない;
各pは、独立して0、1または2である;
各qは、独立して0または1である;
Xは、-C(=O)、-C(=S)、-C(R4)2または-S(O)Lである;
各zは、独立して0、1または2である;
Yは、R4、-N(R4)z、-OR4、-SR4または-C(R4)3である;
各R4は、独立して、水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C1〜C6)アルコキシ、(C1〜C6)アルカノイル、(C1〜C6)アルコキシカルボニル、(C3〜C8)シクロアルキル、(C3〜C8)シクロアルキル(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ(C2〜C6)アルキル、ヒドロキシ(C2〜C6)アルキル、シアノ(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルキチオ(C2〜C6)アルキル、アリール、アリール(C1〜C6)アルキル、アリールオキシ(C2〜C6)アルキル、ハロ(C2〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシカルボニル(C1〜C6)アルキル、NRaRb、HetまたはHet(C1〜C6)アルキルからなる群より選択され、ここでアルキル、アリールまたはHetの各々は、非置換または1つ以上のRdで置換される、または2つのR4基は、それらが結合する原子と共に、アリール、Het、または炭素原子を含み、O、S(O)zおよびNRcから選択される1つ以上のさらなるヘテロ原子を任意に含む、飽和もしくは不飽和の3〜8員単環または8〜12員二環系を形成し、ここで各環系は、1つ以上のRdで任意に置換される;
RaおよびRbのそれぞれは、独立して水素または(C1〜C6)アルキルである;
各Rcは、独立して、水素、非置換または1つ以上の置換基Reで置換されたアリール、S(O)2、(C1〜C6)アルカノイル、ヒドロキシ(C1〜C6)アルキル、アルコキシ(C1〜C6)アルキル、Het、(C1〜C6)アルコキシカルボニルまたは(C1〜C6)アルキルである;
各Rdは、独立して、非置換または1つ以上の置換基Reで置換されたハロ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アジド、アミノ、(C1〜C6)アルキルアミノ、アミノ(C1〜C6)アルキル、アミド、(C1〜C6)アルキルアミド、アリールアミド、カルボン酸、(C1〜C6)アルキル、ヒドロキシ(C1〜C6)アルキル、ハロ(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、ハロ(C1〜C6)アルコキシ、(C1〜C6)アルカノイル、(C1〜C6)アルコキシカルボニル、カルボキシ、(C1〜C6)アルカノイルオキシ、Het、アリール、Het(C1〜C6)アルキルまたはアリール(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルキルアリール、スルホニル、スルホンアミド、尿素、カルバメートであるか、あるいは2つのRdは、それらが結合する原子と共に、ケトンまたはスピロ環式炭素環もしくは複素環を形成するか、あるいは2つのRdは、それらが結合する原子と共に、二環式の炭素環または複素環を形成し、ここで各スピロ環または二環は、非置換または1つ以上のハロ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アジド、(C1〜C6)アルキル、ヒドロキシ(C1〜C6)アルキル、ハロ(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、ハロ(C1〜C6)アルコキシ、(C1〜C6)アルカノイル、(C1〜C6)アルコキシカルボニル、カルボキシ、(C1〜C6)アルカノイルオキシ、NRfRg、RfRgNC(=O)-、フェニルまたはフェニル(C1〜C6)アルキル、スルホニル、スルホンアミド、尿素、カルバメートで置換され、RfおよびRgは、それらが結合する窒素と共に、非置換または1つ以上の置換基Reで置換されたピペリジノ、ピロリジノ、モルホリノまたはチオモルホリノの環を形成する;
各Reは、独立して、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アジド、(C1〜C6)アルキル、Het、アリール、(C1〜C6)アルキルHet、(C1〜C6)アルキルアリール、(C1〜C6)アルキルHet(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルキルアリール(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)ハロアルキル、(C1〜C6)アルコキシ、(C1〜C6)ハロアルコキシ、(C1〜C6)アルカノイル、(C1〜C6)アルコキシカルボニル、カルボキシおよび(C1〜C6)アルカノイルオキシから選択される;
R5は、H、(C1〜C6)アルキル、アリール(C1〜C6)アルキルである;ならびに
各R6は、H、(C1〜C6)アルキル、アミノ、アミド、ケトまたはアリール(C1〜C6)アルキルである;ただし、Xが-C(=O)である場合、YはN(R4)zであり、Z1はOであり、Z2はNであり、Z3はCHであり、YのR4は両方ともHでないものとする)
の化合物が挙げられる。
【0112】
CREBの生物学的に活性なポリペプチド断片は、依然として生物活性を有するCREBの全長アミノ酸配列のわずか一部を含み得る。かかる断片は、カルボキシル末端またはアミノ末端の欠失ならびに内部欠失により作製され得る。
【0113】
本明細書に記載される融合タンパク質は、CREBタンパク質中には存在しない第二部分に結合する第一部分と称されるCREBタンパク質を含む。第二部分は、単一のアミノ酸、ペプチドもしくはポリペプチドまたは限定されないが、炭水化物、脂質などの有機部分、または無機分子であり得る。
【0114】
本明細書において、核酸分子は核酸分子のヘテロポリマーと定義する。核酸分子は二本鎖または一本鎖であり得、cDNAもしくはゲノムDNAなどのデオキシリボヌクレオチド(DNA)分子またはリボヌクレオチド(RNA)分子であり得る。このように、核酸分子は、例えば、適宜イントロンを有するかまたは有さない1つ以上のエクソン、ならびに1つ以上の適切な制御配列を含み得る。一例において、核酸分子は、所望の核酸産物をコードする1つのオープンリーディングフレームを含む。核酸配列は、適切なプロモーターに作動可能に連結され得る。
【0115】
所望のCREBタンパク質、CREBアナログ(CREM、ATF-1など)、CREB様分子、生物学的に活性なCREB断片、CREB融合タンパク質またはCREB機能調節因子をコードする核酸配列は、例えば、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York (1998);およびSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor UniversityPress, New York. (1989)に記載されるように、天然物から単離することができるか、天然配列から改変することができるかまたは新たに合成することができる。核酸は、当該技術分野に公知の方法、例えば適合性のクローニング部位または制限部位を利用および作製することにより、単離および融合を一緒に行うことができる。
【0116】
典型的に、該核酸配列は、所望のCREBタンパク質、CREBアナログ、CREB様分子、CREB融合タンパク質またはCREB機能調節因子をコードする遺伝子である。典型的に、かかる遺伝子は、好ましくはCNSにおいてCREBタンパク質またはCREB機能調節因子の発現に作用し得る適切な制御配列に作動可能に連結される。本明細書で使用する場合、用語「作動可能に連結される」は、遺伝子(または核酸配列)が、該遺伝子(または核酸配列)の発現を可能にするように制御配列に連結されることを意味するように規定される。常にではないが、一般的に、作動可能に連結されるとは、隣接していることを意味する。
【0117】
制御配列としては、転写プロモーター、転写を制御する選択的オペレーター配列、適切なメッセンジャーRNA(mRNA)リボソーム結合部位をコードする配列、および転写および翻訳の終結を制御する配列が挙げられる。特定の態様において、CREBタンパク質、CREBアナログ、CREB様分子、生物学的に活性なCREB断片、CREB融合タンパク質またはCREB機能調節因子をコードする組換え遺伝子(または核酸配列)を、誘導または抑制が可能なプロモーターの規則的制御下に配置して、それにより生成物のレベルに関して大きな制御をもたらすことができる。
【0118】
本明細書で使用する場合、用語「プロモーター」は、通常、構造遺伝子のコーディング領域の上流(5')にあり、RNAポリメラーゼおよび転写の開始に必要とされ得る他の因子の認識および結合部位を提供することによりコーディング領域の発現を制御するDNAの配列のことをいう。適切なプロモーターは、当該技術分野に周知である。例示的なプロモーターとしては、SV40およびヒト伸長因子(EF1)が挙げられる。当該技術分野において他の適切なプロモーターは容易に利用可能である(例えば、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc., New York (1998);Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor University Press, New York (1989);および米国特許第5,681,735号参照)。
【0119】
記憶剤は、様々な機構によりCREB経路機能を増強し得る。例えば、記憶剤は、CREB依存的遺伝子発現の誘導をもたらすシグナル伝達経路に作用し得る。CREB依存的遺伝子発現の誘導は、例えばCREB機能の正のエフェクターの上方調節および/またはCREB機能の負のエフェクターの下方調節により達成され得る。CREB機能の正のエフェクターとしては、アデニル酸シクラーゼおよびCREBアクチベーターが挙げられる。CREB機能の負のエフェクターとしては、cAMPホスホジエステラーゼ(cAMP PDE)およびCREBリプレッサーが挙げられる。
【0120】
記憶剤は、CREBタンパク質および/またはCREBタンパク質含有転写複合体のアクチベーターもしくはリプレッサー形態の生物学的に上流に作用するかまたは該アクチベーターもしくはリプレッサー形態に直接作用することにより、CREB経路機能を増強し得る。例えば、CREBタンパク質レベルを転写的に、後転写的に、または転写的および後転写的の両方で増加することにより;転写複合体の他の必要成分、例えばCREB結合タンパク質(CBPタンパク質)へのCREBタンパク質の親和性を変化させることにより;プロモーター領域におけるDNA CREB応答エレメントへのCREBタンパク質含有転写複合体の親和性を変化させることにより;またはCREBタンパク質アイソフォームに対する受動免疫もしくは能動免疫のいずれかを誘導することにより、CREB経路機能に作用し得る。記憶剤がCREB経路機能を増強する特定の機構は、本発明の実施に重要ではない。
【0121】
記憶剤は、種々の方法で動物に直接投与することができる。特定の態様において、記憶剤は全身投与される。当該技術分野において他の投与経路が一般的に知られており、該経路としては、注入および/またはボーラス注射などの静脈、脳室内、鞘内、非経口、粘膜、埋没、腹腔内、経口、皮内、経皮(例えば、低速放出ポリマー中で)、筋内、皮下、局所、硬膜外などの経路が挙げられる。他の適切な投与経路を使用して、例えば上皮または粘膜内層(lining)を介した吸収を達成することもできる。特定の記憶剤はまた、遺伝子治療によっても投与することができ、その場合には特定の治療タンパク質またはペプチドをコードするDNA分子は、例えば特定のタンパク質またはペプチドを発現させ、インビボで治療レベルで分泌させるベクターを介して動物に投与する。
【0122】
本明細書において使用される場合、ベクターは、核酸ベクター、例えばDNAプラスミド、ウイルスまたは他の適切なレプリコン(例えば、ウイルスベクター)のことをいう。ウイルスベクターとしては、レトロウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス(例えば、アデノ随伴ウイルス)、コロナウイルス、オルトミクソウイルスなどのマイナス鎖RNAウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(例えば、狂犬病および水疱性口炎ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば、麻疹およびセンダイ)、ピコルナウイルス(picomavirus)およびアルファウイルスなどのプラス鎖RNAウイルス、ならびにアデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス1型および2型、エプスタイン-バールウイルス、サイトメガロウイルス)、およびポックスウイルス(例えば、ワクシニア、鶏痘およびカナリア痘)などの二本鎖DNAウイルスが挙げられる。例えば、他のウイルスとしては、ノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポバウイルス、ヘパドナウイルスおよび肝炎ウイルスが挙げられる。レトロウイルスの例としては、トリ白血肉腫症、哺乳動物C型、B型ウイルス、D型ウイルス、HTLV-BLV群、レンチウイルス、スプマウイルスが挙げられる(Coffin, J. M., Retroviridae: The viruses and their replication, In Fundamental Virology, 第3版、B. N. Fields, et al.編, Lippincott-Raven Publishers, Philadelphia, 1996)。他の例としては、マウス白血病ウイルス、マウス肉腫ウイルス、マウス乳癌ウイルス、ウシ白血病ウイルス、ネコ白血病ウイルス、ネコ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、ヒヒ内在性ウイルス、テナガザル白血病ウイルス、マソン-ファイザーサルウイルス、サル免疫不全ウイルス、サル肉腫ウイルス、ラウス肉腫ウイルスおよびレンチウイルスが挙げられる。例えば、その教示が参照により本明細書に援用されるMcVeyら、米国特許第5,801,030号に、ベクターの他の例が記載される。
【0123】
タンパク質またはペプチド(例えば、CREBタンパク質、CREBアナログ(CREM、ATF-1など)、CREB様分子、生物学的に活性なCREB断片、CREB融合タンパク質、CREB機能調節因子)をコードする核酸配列は、当該技術分野に公知の方法に従って核酸ベクターに挿入することができる(例えば、Ausubel et al.編, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc., New York (1998);Sambrook et al.編, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor University Press, New York (1989)参照)。
【0124】
好ましくは、投与様式は標的細胞の部位にある。特定の態様において、投与形態はニューロンに対する。
【0125】
記憶剤は、薬学的に許容され得る界面活性剤または担体(例えば、グリセリド)、賦形剤(例えば、ラクトース)、安定化剤、保存剤、湿潤剤、皮膚軟化薬、抗酸化剤、担体、希釈剤およびビヒクルなどの生物学的に不活性な薬剤の他の成分と共に投与することができる。所望の場合、特定の甘味剤、香味料および/または着色剤も添加し得る。種々の不活性成分と合わせた場合、記憶剤を医薬組成物ということもある。
【0126】
記憶剤は、薬学的に許容され得る非経口ビヒクルと共に、溶液、懸濁液、乳状液または凍結乾燥粉末として調製され得る。かかるビヒクルの例は、水、食塩水、リンガー溶液、等張塩化ナトリウム溶液、デキストロース溶液、および5%ヒト血清アルブミンである。リポソームや固定油などの非水性ビヒクルを使用することもできる。ビヒクルまたは凍結乾燥粉末は、等張性(例えば、塩化ナトリウム、マンニトール)、および化学的安定性(例えば、バッファおよび保存剤)を維持する添加剤を含み得る。製剤は、一般的に使用される技術により滅菌することができる。Remington's Pharmaceutical Sciencesに適切な医薬担体が記載される。
【0127】
動物に投与される記憶剤の投薬量は、特に神経におけるCREB依存的遺伝子発現の変化に作用するのに必要とされる量である。投与の頻度などの動物への投与量は、特定の記憶剤の薬理動態的特性、投与の形態および経路;受容者の大きさ、年齢、性別、健康状態、体重および食事;治療される症状の性質および程度または増強もしくは調節される記憶の性質および程度、同時に行われる治療の種類、治療の頻度、ならびに望まれる効果などの種々の因子に応じて変化する。
【0128】
記憶剤は、単回投与もしくは分割投与(例えば、数日、数週間または数ヶ月の間隔で分割される一連の投与)で、または徐放形態で、症状の性質および程度、同時に行われる治療の種類ならびに望まれる効果などの因子に応じて投与され得る。他の治療プロトコルまたは薬剤を、本発明と組み合わせて使用することもできる。
【0129】
本明細書で参照される全ての論文、特許および特許出願全教示は、その全体において参照により援用される。
【実施例】
【0130】
実施例1
記憶剤(HT-0712)の効果を調べるための試験を行なった。
【0131】
試験は、特定の記憶タスクを行なうように事前に訓練した6匹の高齢の雄のマカクザル(試験開始時、ほぼ22歳、これは人間のほぼ66歳に相当する)を用いて行なった。記憶能力の評定には、CANTABシステム(Cambridge Neuropsychological Test Automated Battery)および新規なタスクを使用した。
【0132】
弁別学習-長期想起タスク(DL LTR)の一般説明
このタスクでは、動物に2つの刺激ペア(例えば、1ペアの形、および1ペアの線)を、毎日の試験期間中に提示する。各刺激ペアについて、一方の刺激を自由裁量で正の刺激と指定する(すなわち、その刺激に触れると報酬が得られる)。各刺激ペアを、28回の試行からなる毎日の期間中に14回提示する。刺激ペア(形または線)は、各期間中、擬似ランダム化様式で提示する。動物は、快い音を伴う固形砂糖の報酬を得るためには、「正」の形または線に触れなければならない。別の形または線に触れると負の音が鳴り、固形砂糖はなく、時間切れとなる。動物は、毎日の期間85%の正解応答の能力基準に達するまで毎日試験する。この基準に達したら、動物には次の7日間、さらなる試験を行なわない。基準に達した後、第8日目、学習した弁別の長期想起を評定するため、先で学習が見られた同じ刺激ペアを用いて動物を再度試験する。
【0133】
薬物投与
すべての薬物はマシュマロ中にて経口投与するとともに、動物は特別に設計された試験用ケージ内に入れた。ビヒクルはマシュマロ単独とした。
【0134】
治療スケジュールを表1に示す。治療剤は、治療1から始めて連続的に投与した。各治療剤(HT-0712またはビヒクルの投与)は、行動訓練を始める前に1日1回4日間投与し、次いで、1日1回の治療(HT-0712またはビヒクルの投与)で継続し、訓練期間の期間中は試験4時間前に送達した。個々の各動物が毎日の期間中少なくとも85%の正解応答の能力基準に達したら、訓練および投与を7日間中止した。次いで、基準に達した後の第8日目、動物を、DL LTR タスクで再度試験した(保持試験)。
【0135】
100mg/kg投薬試験を終了した最初の3匹の動物を使用し、薬物試適用(trial)終了時に第2のビヒクル試験を行なった。
【0136】
【0137】
行動データの解析
毎日の試行の全回数に対する正解応答の割合を、基準 (1回の試験期間での少なくとも85%の正解応答)に達するのに要した日数とともに記録した。保持試行(retention trial)に対する正解応答の割合は、全保持試行期間について記録し、試行1〜14と試行15〜28での能力の差についてサブ解析(sub-analyze)した。
【0138】
一元ANOVAを用いてビヒクル試適用のデータを薬物試適用のデータと比較した。ボンフェローニのt-検定を用いてポストホック比較を行なった。
【0139】
結果
HT-0712の投与後、試験中に与えたいずれの用量においても、顕著な行動的または身体的副作用はなかった。使用した6匹の動物のうち5匹は、基準に達するのに要する日数の減少によって示されるように、記憶能力の改善を示した。1匹の動物(old-9)は、投与したHT-0712のいずれの用量でもタスク能力の改善を示さなかった。この非応答動物のデータは統計学的解析から除外した。
【0140】
ビヒクル処理
第1のビヒクル試験中、すべての動物は26.3±4.6日の期間で基準に達した。達した平均基準値は89.3±1.8%の正解応答であった。保持試行時の平均能力は、79.7±5.9%の正解応答であった。保持試行時能力を試行1〜14と試行15〜28に分けた場合、動物の能力は、それぞれ、77.5±5.1%の正解応答および82.3±7.5%の正解応答であった。
【0141】
第2の(薬物試適用後)ビヒクル試験を、薬物試適用を終了した最初の3匹の動物を用いて行なった。この第2のビヒクル試験中、動物は、20.0±4.5日の期間で基準に達した。その平均基準値は86.3±1.3%の正解応答であった。保持試行での能力は、平均64.0±4.0%の正解応答であった。保持試行時能力を試行1〜14と試行15〜28に分けた場合、動物の能力は、それぞれ、59.3±8.4%の正解応答および69.0±10.4%の正解応答であった。
【0142】
試験前と試験後のビヒクル試適用の結果に統計学的有意差はみられなかった(t=1.168、(P=0.363))。
【0143】
記憶剤治療
この試験で使用したHT-0712の最低用量(1mg/kg)では、動物は、91.4±1.8%の正解応答の能力レベルで12.0±3.6日間の期間で基準に達した。保持試行での動物の平均能力は85.8±4.6%の正解応答であった。保持試行時能力を試行1〜14と試行15〜28に分けると、動物の能力は、それぞれ、80.2±6.2%の正解応答および91.6±3.4%の正解応答のレベルであった。
【0144】
試験で使用したHT-0712の中用量(10mg/kg)では、動物は、11.8±2.3日間の期間で基準(90.0±2.6%の正解応答)に達した。保持試験でのこれらの動物の平均能力は79.2±3.5%の正解応答であった。保持試験能力を試行1〜14と試行15〜28に分けた場合、動物の能力は、それぞれ、71.4±3.4%正解および87.2±4.8%の正解レベルであった。
【0145】
使用したHT-0712の最高用量(100mg/kg)では、動物は、9.0±2.8日の期間で基準(86.4±0.7%の正解応答)に達した。保持試験でのこれらの動物の平均能力は65.0±3.5%の正解応答であった。保持試験能力を試行1〜14と試行15〜28に分けた場合、動物の能力は、それぞれ、58.4±4.1%正解および71.4±6.1%の正解レベルであった。
【0146】
基準までの日数に対する治療の効果は有意であった(反復測定ANOVA、F(4,3)=6.327、p=0.008)。ボンフェローニt-検定を用いたポストホック比較により、ビヒクルとHT-0712の各用量間に有意差が示された(各比較でp<0.050)。
【0147】
基準に達した日に得られた能力レベルに対して有意な治療効果はなかった(F(4,3)=1.408、p=0.289)。
【0148】
保持試験で得られた能力レベルに対して有意な治療効果はなかった(F(4,3)=3.199、p=0.062)。試行1〜14および試行15〜28での保持試行時能力に対する治療効果の解析でも、統計学的有意性に達しなかった(それぞれ、p=0.058およびp=0.167)。
【0149】
この試験は、高齢の非ヒト霊長類の学習および保持に対する実験用記憶剤の効果を評定するために設計された新規なタスク、弁別学習-長期想起タスク(DL LTR)を用いて行なった。
【0150】
ビヒクル対照試験の結果は、正常な高齢動物は、この試験で85%正解応答基準に達するのに長期間(例えば、>20日間)必要であることを示す。さらに、薬物後のビヒクル試験の結果は、HT-0712で見られた能力の増大は、第2のビヒクル対照試験の結果は、第1のビヒクル試験の結果と有意に異ならなかったため、試験での動物の熟達または練習効果の増大のためではなかったことを示す。
【0151】
試験した6匹の動物のうち5匹は、HT-0712の投与後、能力の改善を示した。改善は、基準に達するまでの日数の有意な減少で示され、HT-0712で治療すると学習能力の改善が示された。
【0152】
動物の応答は、概ね2つの群に分けることができた。第1の群 (old-5とold-8の動物)では、能力の改善に最良の用量は1mg/kg用量のHT-0712であった。これらの動物は、投与用量を1から10、100mg/kgへと増大させると能力の減少を示した。すなわち、HT-0712の用量の増大とともに、動物が基準に達するのに長くかかった(すなわち、1、10または100mg/kgの投与後、それぞれ、基準まで4、5および10日 (old-5)および基準まで3、12および18日(old-8))。第2の群の動物(old-1、old-2およびold-7)は、用量の増大とともに能力が改善されるという、より典型的な用量応答効果を示した(1、10および100mg/kgの用量で、old-1、old-2およびold-7で、それぞれ、基準まで21、15および3日;基準まで17、18および11日、ならびに基準まで15、9および3日)。
【0153】
本発明での動物は、認知欠陥について、試料への適合遅延(DMTS)およびペア連合学習 (PAL)タスクの両方を用いて事前に試験し、評価した。これらの動物を、これらのタスクに対する能力レベルに従ってランク付けした(すなわち、動物をタスク毎に1〜6でランク付けし、1が最良行動動物であり、6を最低とした(表10参照)。このランク付けは、HT-0712に応答しなかった動物は、PALの能力に関して1およびDMTSの能力に関して2にランク付けされたことを示す。また、この同じ動物は、本プロジェクトで実施した第1のビヒクル試験において最良の能力を有した。
【0154】
まとめると、この試験の結果は、本発明の特定のシステムおよび方法を使用し、HT-0712が、正常な高齢の非ヒト霊長類の学習能力および長期記憶を有意に改善することを示す。
【0155】




符号の説明:C:基準;RT:保持試験、RT 1-14 保持試験の試行1〜14;RT 15-28:保持試験の試行15〜28
【0156】


符号の説明:C:基準;RT:保持試験、RT 1-14 保持試験の試行1〜14;RT 15-28:保持試験の試行15〜28
【0157】
治療ごとの生データ
【0158】
【0159】

【0160】
【0161】
【0162】

符号の説明:C:基準;RT:保持試験、RT 1-14 保持試験の試行1〜14;RT 15-28:保持試験の試行15〜28
【0163】
【0164】
【0165】
ランク付けは、PALおよびDMTSタスクについて以下のように計算した:
1. PAL:最も困難なレベルのタスクを終了するのに必要であった試行の平均回数(3回刺激/3ヶ所)。
2. DMTS:より長く遅延したときの平均正解応答回数
【0166】
動物をタスク毎に1〜6でランク付けし、1が最良行動動物であり、6を最低とした。
【0167】
実施例2:健常高齢ヒト被検体における一重盲検
試験の設計
実施例1に示した一般プロトコルおよび薬物投与を用いた試験は、ヒトを用いて行われ得る。後述するように、長期想起タスクには、顔-名前および/または職業ペアリングの形態の刺激が使用され得る。ヒト被検体には、顔の写真とともに名前および/または人の職業が示され得る。職業は、各名前-顔のペアに対して列挙され得る。記銘(encoding)中、ヒト被検体には、名前と職業が適合しているかどうかの判断が求められる。試験中、ヒト被検体には、新たな顔-名前のそのままのペア、入れ替えたペア、および新しいペア(職業なしで提示)が示され、顔と名前のペアリングがそのままか、入れ替えたものか、新しいものかの判断が求められる。この試験を使用し、次いで、ヒト被検体は実施例1に示した様式で評価され得る。
【0168】
一態様において、以下の3つの投与計画:(1)HT-0712 45mg経口を7日間;(2)HT-0712 45mg po+ワルファリン2.5mg経口を7日間;および(3)ワルファリン2.5mg経口を7日間で試験する単一施設二重盲検3方向クロスオーバー試験を行なった。各投与期間の間に7日間の洗い流し期間を設けた。7日間の洗い流し日数のうち3日間(72時間)は、試験関連手順のため被検体を施設内に留めた。7日間の洗い流しのうち4日間は、被検体がクリニックから出ることを許可した。被検体の選択基準に関して、対連合試験に対する包含および/または除外基準は、なしとした。
【0169】
試験計画
第I群の被検体には、45mg用量のHT-0712を1、2、3、4、5、6および7日目に;45mg用量のHT-0712+2.5mg用量のワルファリンを第15、16、17、18、19、20および21日目に;ならびに2.5mg用量のワルファリンを第29、30、31、32、33、34および35日目に与えた。第II群の被検体には、45mg用量のHT-0712+2.5mg用量のワルファリンを第1、2、3、4、5、6および7日目に;2.5mg用量のワルファリンを15、16、17、18、19、20および21日目に;ならびに45mg用量のHT-0712を29、30、31、32、33、34および35日目に与えた。第III群の被検体には、2.5mg用量のワルファリンを第1、2、3、4、5、6および7日目に;45mg用量のHT-0712を15、16、17、18、19、20および21日目に;ならびに45mg用量のHT-0712+2.5mg用量のワルファリンを第29、30、31、32、33、34および35日目に与えた。
【0170】
【0171】
対連合試験
材料:材料は、21機のLenovoノートブックコンピュータからなるものとした。各ノートブックは、すべてのオートコンフィギュレーションソフトウェアが排除され、内部クロック設定およびE-Runソフトウェアを妨害し得る設定が低減されるように構成した。すべてのノートブックコンピュータにE-Run (vl .2.1.68)をインストールして対連合試験を実施した。120のグレースケールの顔(男性および女性)を、「消防士(fire fighter)」などの二語の職業名とペアリングさせた。グレースケールの顔の画像は、Lund University Cognitive Science Labの顔データベースから得た。二語だけ、または複合語の職業名を使用した。120の顔-名前のペアを、40の3つの群に分けた。各回では、通して同じ40の顔-名前のペアを使用した。
【0172】
手順-投与のタイミング:記憶試験は薬物投与のほぼ6時間後に開始した。記憶試験はすべて毎日血液試料を採取する前に終了した。表12に示したような14日間からなる回(または部)の訓練を3度行なった。試験は42日間にわたって行なった。所与の回の第1日目、被検体にコンピュータを習熟させ、試験ソフトウェアの使用の仕方を訓練した。第2日、被検体に記銘期間と想起期間を与えた。第3〜7日目、被検体を想起について毎日試験した。第10日目、被検体を半分の顔-名前のペアで試験し、第14日目、被検体を残りの半分の顔-名前のペアで試験した後、その回で使用する全部の顔-名前のペアの試験を終了した。
【0173】
【0174】
試験手順の習熟:第1日目、被検体にコンピュータを習熟させ、9つの顔-名前のペアからなる模擬(mock)記銘期間および想起期間を与えることにより、試験ソフトウェアの使用の仕方を訓練した。これらのペアは、2度と再び観察しなかった。
【0175】
記銘および想起:第2日目、各参加者に、1回の記銘期間および想起期間を与えた。
【0176】
記銘:記銘期間中、参加者に、40の顔と職業名のペアをコンピュータスクリーン上で1つずつ見せる。例えば、参加者に、顔およびその右側に職業名「アイススケート選手(ice skater)」を見せる。各顔-職業名ペアのタスクは、写真に写った人物が右側に示された職業を実施している鮮明な心像を形成することである。したがって、顔とアイススケート選手をペアリングするには、参加者には、その人物が困難なジャンプと転倒していることが想像され得るか、または金メダルを取得したため、非常に満足していることが想像され得る。顔と職業名のペアを見せてから5秒後、参加者にどれだけ容易に心像を形成できたかについて:容易だった場合は1、困難だった場合は2、心像を形成することができなかった場合は3の1〜3で即座に評価させさせた。2秒後、次の顔と職業名のペアを表示した。
【0177】
想起:実験のこの部では、参加者に、記銘中に見せた40の顔-職業名ペアの手掛かり(cued)想起試験を実施した。想起中、試験被検体に、連合職業名なしで顔を提示した。顔の横には、記銘中にその顔とのペアであった職業名を参加者がタイプするためのボックスを設けた。参加者が応答をタイプしたら、タイプした職業名が正解か不正解かに関するフィードバックを受けた。応答が正解であった場合、スクリーン上に適切な顔と職業名のペアリングとともに「正解!」が表示された後、次の刺激ペアが表示された。不正解であった場合、正しい顔と職業名のペアリングがフィードバックとしてスクリーン上に3秒提示された後、次の刺激ペアが提示された。40の顔-職業名ペアすべてが提示されたら、期間をいったん終了した。この想起期間は、試験の3〜7日目の各々に1回提示した。
【0178】
長期記憶の評定:各最終薬物用量の3日後、退院(discharge)前(第10、24および38日目)に、参加者に、20の顔-職業名ペアからなる手掛かり想起試験を行ない、顔-職業名の記憶の長期安定性を調べた。各薬物治療(第14および28および42日目)の7日後、参加者に、先で試験しなかった残りの20の顔-職業名ペアを見せた。第14および28および42日目、1分の休息期間の後、20の顔-職業名ペアを提示した。この1分間の休息後、参加者に、全部の組の40の顔-職業名ペアを見せた。
【0179】
結果:参加者の想起を反映するデータを収集し、図5に示すようにグラフにした。これらのデータは、毎日の訓練を充分に繰り返すと対連合タスクの長期持続性の記憶が確立され得ることを示す。
【0180】
盲検手順:試験は二重盲検プラセボ対照比較治験であった。薬剤師は、被検体の治療コードの管理に対して責任を有した。
【0181】
このように、種々の方法が適用されることがわかる。当業者には、本発明が、本説明に例示の目的で示し、限定の目的でない種々の態様および好ましい態様以外によっても実施され得、本発明は、以下の特許請求の範囲のみに限定されないことが認識されよう。本説明に記載した具体的な態様に対する均等物によっても、本発明が同様に実施され得ることに注意されたい。
【0182】
本発明の種々の態様を上記に記載したが、これらは単なる一例として示し、限定を意図しないことを理解されたい。同様に、種々の図面は、本発明の一例の構成を示すものであり得、本発明に包含され得る特徴および機能の理解の補助のために示す。本発明は、図示した一例の構成に限定されず、所望の特徴が種々の代替的な構成を用いて実施され得る。実際に、当業者には、本発明の所望の特徴を実施するためにどのようにして代替的な機能的、論理的または物理的構成が行なわれ得るかが自明であろう。さらに、方法の請求項に関して、本明細書に示した工程の順序は、本文中にそうでないことが指示されていない限り、記載された機能を発揮するために、種々の態様が同じ順序で実施されることを指定するものではない。
【0183】
本発明を、種々の例示的な態様および実施に関して上記に説明したが、1つ以上の個々の態様に記載した種々の特徴、局面および機能は、それらが記載された特定の態様に対する適用可能性に限定されるのではなく、単独または種々の組合せで、本発明の1つ以上のその他の態様に対し、かかる態様が記載されていようとそうでなかろうと、かかる特徴が、記載の態様の一部であるとして提示されていようとそうでなかろうと、適用され得ることを理解されたい。したがって、本発明の外延および範囲は、上記の任意の例示的な態様に限定されるべきでない。
【0184】
本文書における用語および語句ならびに語尾変化形は、明白な記載のない限り、限定的とは反対のオープンエンドとして解釈されたい。前述の一例として:用語「挙げられる(including)」は、「限定されないが、〜が挙げられる」などを意味すると読まれたい。用語「例」は、記載項目の例示的な場合を提供するために使用するが、その列挙は排他的でも限定的でもない。用語「a」または「an」は、「少なくとも1つ」、「1つ以上」などを意味すると読まれたく、「慣用の」、「従来の」、「通常の」、「基準の」、「公知の」などの形容詞および同様の意味の用語は、記載項目を所定の時点または所与の時点で入手可能な項目に限定すると解釈するのではなく、現時点または将来の任意の時点で利用可能または公知となり得る慣用的、従来、通常または基準の技術を包含するように読まれたい。同様に、本文書で、当業者に自明または公知であろう技術に言及している場合、かかる技術は、現在または将来の任意の時点で当業者に自明または公知のものを包含する。
【0185】
接続詞「および」で結ばれる項目の群は、明白にそうでないとの記載がない限り、項目の1つ1つが該群に存在することが必要とされると読まれるべきではなく、「および/または」と読まれたい。同様に、接続詞「または」で結ばれた項目の群は、明白にそうでないとの記載がない限り、と読まれるべきではなく、該群内で互いに排他的であることが必要とされる「および/または」と読まれたい。さらに、本発明の項目、要素または成分は、単数形で説明または特許請求の範囲に記載されていることがあり得るが、単数形に対する限定が明白に記載されていない限り、複数もその範囲内であることが想定される。
【0186】
例えば、「1つ以上の」、「少なくとも」、「限定されないが」などの拡張的な語および語句または他の同様の語句は、一部の場合において、かかる拡張的な語句が存在し得ない場合、狭い場合が意図または必要とされることを意味すると読まれるべきでない。本文書を読んだ後に当業者に自明となろうが、記載の態様およびその種々の代替例は、記載の実施例に限定されることなく実施され得る。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5