(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、人手不足、衛生管理等の観点から、ホテル又はレストラン等においては、自動食器洗浄機が用いられている。従来、このような自動食器洗浄機において使用される洗浄剤では、アルカリ剤等の洗浄成分の他に、活性塩素剤が含まれている。活性塩素剤は、食器などに蓄積されて強固な汚れになる茶渋、コーヒーなどを除去する効果、また、微生物を殺すなどの殺菌効果があるとして期待されている。
【0003】
洗浄剤の製造工程では、高温及び高濃度のアルカリ剤の水溶液に活性塩素剤を配合した場合、活性塩素剤が比較的短時間のうちに分解・消失することにより、洗浄剤としての性能が低下するという問題がある。
【0004】
活性塩素剤の分解を防止するため、例えば、特許文献1では、
図2に示すように、洗浄成分21を注入した型24の中央に、活性塩素剤を含む円形プラグ22が洗浄成分21の深さにわたって延びている洗浄剤が開示されている。活性塩素剤を含むプラグ22は、洗浄成分又は活性塩素剤と反応しない天然ワックス、合成ワックス、リン酸エステル等によって被包されているため、活性塩素剤の分解を抑制することができる。
【0005】
また、特許文献2では、
図3に示すように、型34に注入した洗浄成分31に、カプセル化された活性塩素剤32が均一に分散された洗浄剤が開示されている。カプセル化された活性塩素剤32は、活性塩素剤と安定な不活性コーティング物質で活性塩素剤が被覆されているため、活性塩素剤の分解を抑制することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
自動食器洗浄機内は、菌の栄養源となる汚れが豊富に存在する上、菌の繁殖に欠かせない適度な温度、湿度が保たれている。そのため、長期にわたって自動食器洗浄機を使用する場合は、自動食器洗浄機内で繁殖した菌が食器等に付着するなど、洗浄面、衛生面において問題が生じる。そこで、食器等だけでなく、自動食器洗浄機内も洗浄、殺菌することができる洗浄剤が求められている。
【0008】
特許文献1に記載の洗浄剤では、洗浄時に洗浄成分及びプラグの露出表面に水が吹き付けられると、洗浄成分と活性塩素剤とが溶解する。また、特許文献2に記載の洗浄剤でも同様に、洗浄時に洗浄成分及びカプセル化された活性塩素剤に水が吹き付けられると、洗浄成分と活性塩素剤とが溶解する。このように、洗浄毎に活性塩素剤が溶解して自動食器洗浄機内に供給され続ける洗浄剤では、洗浄中は常に塩素臭が発生するため、人体に悪影響を与える場合があった。また、特許文献1及び2に記載の洗浄剤では、活性塩素剤を被包する必要があるため、製造工程が複雑になり製造コストが高くなるという問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、自動食器洗浄機内を充分に殺菌でき、低臭気で、かつ、製造コストを抑えた固形洗浄剤及び上記固形洗浄剤を容易に製造できる固形洗浄剤の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の固形洗浄剤は、固形状の洗浄成分と、上記洗浄成分の表面上に分散された活性塩素剤とを含む固形洗浄剤であって、上記洗浄成分は、洗浄する際に水と接触する一表面を有し、上記活性塩素剤は、上記一表面上に分散されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の固形洗浄剤では、洗浄成分が洗浄する際に水と接触する一表面を有し、活性塩素剤は、上記一表面上に分散されている。そのため、洗浄を開始した際、まずは活性塩素剤が分散された洗浄成分の表面に水が吹き付けられ、洗浄成分と活性塩素剤とを含む洗浄剤溶液が自動食器洗浄機内に流れる。その結果、自動食器洗浄機内を充分に殺菌できる。
また、活性塩素剤を含む洗浄剤溶液は、洗浄開始直後のみ自動食器洗浄機内に供給される。その結果、洗浄中に発生する塩素臭を低減することができる。
さらに、活性塩素剤は上記一表面上に分散されているため、洗浄を開始するまで活性塩素剤がほとんど分解しない。そのため、活性塩素剤を被包する必要がなく、製造コストを抑えることができる。
【0012】
本発明の固形洗浄剤では、上記活性塩素剤の含有量は、0.1〜5.0重量%であることが望ましい。
上記活性塩素剤の含有量が0.1〜5.0重量%であると、効率的な活性塩素剤の量で、自動食器洗浄機内を充分に殺菌できる。
上記活性塩素剤の含有量が0.1重量%未満であると、活性塩素剤の量が少なすぎて、自動食器洗浄機内を充分に殺菌できない場合がある。
上記活性塩素剤の含有量が5.0重量%を超えると、活性塩素剤の量が多すぎて、コストが高くなる場合がある。
【0013】
本発明の固形洗浄剤では、上記洗浄成分は、アルカリ金属水酸化物、炭酸塩、ケイ酸塩及びキレート剤からなる群から選択された少なくとも一種であることが望ましい。
上記洗浄成分がアルカリ金属水酸化物、炭酸塩、ケイ酸塩及びキレート剤からなる群から選択された少なくとも一種であると、充分な洗浄力が得られる。
【0014】
本発明の固形洗浄剤では、上記アルカリ金属水酸化物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムからなる群から選択された少なくとも一種であることが望ましい。
本発明の固形洗浄剤では、上記炭酸塩は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムからなる群から選択された少なくとも一種であることが望ましい。
本発明の固形洗浄剤では、上記ケイ酸塩は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウムからなる群から選択された少なくとも一種であることが望ましい。
洗浄成分が上記物質からなると、より充分な洗浄力が得られる。
【0015】
本発明の固形洗浄剤では、上記活性塩素剤は、塩素化シアヌール酸ソーダ、次亜塩素酸塩からなる群から選択された少なくとも一種であることが望ましい。
上記活性塩素剤により、自動食器洗浄機内をより充分に殺菌できる。
【0016】
本発明の固形洗浄剤では、上記活性塩素剤は、上記一表面上に固定されていることが望ましい。
一般に、自動食器洗浄機の洗浄剤としては、使いやすさの観点からカートリッジ型の洗浄剤が用いられている。これらのカートリッジ型の洗浄剤は、容器の開口部が下になるように自動食器洗浄機にセットし、上記開口部から水を吹き付けて、洗浄剤を逐次的に溶解させるというものである。
上記活性塩素剤が上記一表面上に固定されていると、カートリッジ型の洗浄剤として使用する際に、上記洗浄成分の上記活性塩素剤が分散している表面を下に向けて自動食器洗浄機にセットしたとしても、上記活性塩素剤が取れ落ちることがない。その結果、高濃度の活性塩素剤が自動食器洗浄機内に流れ、自動食器洗浄機内を充分に殺菌できる。
【0017】
本発明の固形洗浄剤の製造方法では、水及び洗浄成分を含む水溶液を調製する調製工程と、上記水溶液を型に充填する充填工程と、上記型と接触していない上記水溶液の一表面上に、活性塩素剤を分散させる分散工程と、上記活性塩素剤が分散した上記水溶液を固化させて固形洗浄剤を作製する固化工程とを含むことを特徴とする。
【0018】
本発明の固形洗浄剤の製造方法では、上記型と接触していない上記水溶液の一表面上に、活性塩素剤を分散させる分散工程を含む。活性塩素剤を上記水溶液の一表面上に分散させると、活性塩素剤がほとんど分解しない。そのため、活性塩素剤を被包する必要がなく、固形洗浄剤を容易に製造することができる。
また、上記分散工程を含むことにより、活性塩素剤が洗浄成分の一表面上に分散された固形洗浄剤が得られる。このような固形洗浄剤において、活性塩素剤が分散された上記一表面に水を吹き付けると、洗浄成分と活性塩素剤とが溶解して自動食器洗浄機内に流れ、自動食器洗浄機内を充分に殺菌できる。さらに、このような固形洗浄剤では、活性塩素剤を含む洗浄剤溶液は洗浄開始直後のみ自動食器洗浄機内に供給されるので、洗浄中に発生する塩素臭を低減することができる。
【0019】
本発明の固形洗浄剤の製造方法では、上記分散工程後に、さらに上記活性塩素剤を上記水溶液に押し付ける押付工程を含むことが望ましい。
上記分散工程後に、さらに上記活性塩素剤を上記水溶液に押し付ける押付工程を含むと、活性塩素剤が洗浄成分にしっかりと固定された固形洗浄剤が得られる。
活性塩素剤が洗浄成分にしっかりと固定された固形洗浄剤をカートリッジ型の洗浄剤として使用すると、上記洗浄成分の上記活性塩素剤が分散している表面を下に向けて自動食器洗浄機にセットしたとしても、上記活性塩素剤が取れ落ちることがない。
【発明の効果】
【0020】
本発明の固形洗浄剤では、自動食器洗浄機内を充分に殺菌でき、低臭気で、かつ、製造コストを抑えることができる。また、本発明の固形洗浄剤の製造方法では、本発明の固形洗浄剤を容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0023】
(第一実施形態)
以下、本発明の固形洗浄剤及び固形洗浄剤の製造方法の一実施形態である第一実施形態について説明する。
【0024】
まず、本発明の第一実施形態に係る固形洗浄剤について説明する。
本発明の第一実施形態に係る固形洗浄剤は、固形状の洗浄成分と、上記洗浄成分の表面上に分散された活性塩素剤とを含む固形洗浄剤であって、上記洗浄成分は、洗浄する際に水と接触する一表面を有し、上記活性塩素剤は、上記一表面上に分散されていることを特徴とする。
【0025】
図1(a)は、本発明の第一実施形態に係る固形洗浄剤の一例を模式的に示す斜視図である。
図1(b)は、
図1(a)に示す固形洗浄剤を容器に収容したカートリッジ型の固形洗浄剤の一例を模式的に示す斜視図である。
図1(a)に示したように、本実施形態に係る固形洗浄剤10は、固形状の洗浄成分11と、洗浄成分11の表面上に分散された粉末状の活性塩素剤12とから構成されている。洗浄成分11は、洗浄する際に水と接触する一表面13を有し、粉末状の活性塩素剤12は、一表面13上に分散されている。さらに、活性塩素剤12は、一表面13上に固定されていることが望ましい。
【0026】
図1(b)に示したように、本実施形態に係る固形洗浄剤10を容器14内に収容し、カートリッジ型の固形洗浄剤として用いてもよい。容器14は、開口部15を備える。固形洗浄剤10は、開口部15を備える側に、粉末状の活性塩素剤12が分散された洗浄成分11の一表面13が面するように配置されている。そして、容器14は開口部15が下になるように供給機17にセットされる。
使用時には、噴霧器16から噴霧された水が洗浄成分11の一表面13上に吹き付けられ、固形洗浄剤10を溶かす。そして、固形洗浄剤10が溶けた水が自動食器洗浄機の洗浄タンク内へ流れる。
【0027】
洗浄成分11は、アルカリ金属水酸化物、炭酸塩、ケイ酸塩及びキレート剤からなる群から選択された少なくとも一種であることが望ましい。
具体的には、アルカリ金属水酸化物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等、炭酸塩としては炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等、ケイ酸塩としてはケイ酸ナトリウム、無水メタケイ酸ソーダ、オルソケイ酸ソーダ、ケイ酸カリウム等、キレート剤としてはエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸(HEDTA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、ニトリロトリ酢酸三ナトリウム(NTA−3Na)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩等が挙げられる。その中でも特に、アルカリ金属水酸化物である水酸化ナトリウム、又は、キレート剤であるニトリロトリ酢酸三ナトリウム(NTA−3Na)であることがより望ましい。
【0028】
活性塩素剤12は、塩素化シアヌール酸ソーダ、次亜塩素酸塩からなる群から選択された少なくとも一種であることが望ましく、塩素化シアヌール酸ソーダであることがより望ましい。
【0029】
上記活性塩素剤の含有量は、0.1〜5.0重量%であることが望ましく、0.1〜1.0重量%であることがより望ましい。
【0030】
本実施形態に係る固形洗浄剤10は、上記成分のほか、固形洗浄剤の殺菌力、安定性に支障のない範囲で他の任意成分を配合することができる。任意成分としては、例えば、無機塩類、界面活性剤等が挙げられる。
【0031】
無機塩類としては、例えば、硫酸ナトリウム、芒硝(硫酸ナトリウム・10水和物)、硫酸カリウム等が挙げられる。界面活性剤としては特に限定されないが、低発泡性の非イオン系界面活性剤が望ましい。非イオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体、エチレンジアミンのポリオキシエチレンポリオキシプロピレン付加体等が挙げられる。
【0032】
次に、本発明の第一実施形態に係る固形洗浄剤の製造方法について説明する。
本発明の第一実施形態に係る固形洗浄剤の製造方法は、水及び洗浄成分を含む水溶液を調製する調製工程と、上記水溶液を型に充填する充填工程と、上記型と接触していない上記水溶液の一表面上に、活性塩素剤を分散させる分散工程と、上記活性塩素剤が分散した上記水溶液を固化させて固形洗浄剤を作製する固化工程とを含むことを特徴とする。
【0033】
まず、水に洗浄成分及び任意成分を加えた後、30〜90℃に維持し、攪拌することにより、水及び洗浄成分を含む水溶液を調製する。
洗浄成分の投入量は、上記水溶液の全量に対して50〜95重量%が望ましい。これにより、洗浄力が充分に高い固形洗浄剤が得られる。
洗浄成分の投入量が50重量%未満であると、洗浄成分の投入量が少なすぎて、得られた固形洗浄剤の洗浄力が充分でない場合がある。
洗浄成分の投入量が95重量%を超えると、洗浄成分の投入量が多すぎて、水と充分に混ざらない場合がある。
【0034】
次に、上記水溶液を型に充填する。
型は、開口部を有する小分け包装容器であることが望ましい。型が開口部を有する小分け包装容器であると、得られた固形洗浄剤を詰め替えることなく、そのままカートリッジ型の固形洗浄剤として使用することができる。
【0035】
続いて、上記型と接触していない上記水溶液の一表面上に、活性塩素剤を分散させる。
上記型と接触していない上記水溶液の一表面上とは、例えば、
図1(b)に示すカートリッジ型の固形洗浄剤の場合、容器14の開口部15側に配置された一表面13上のことをいう。
【0036】
上記分散工程は、上記充填工程において型に充填した上記水溶液の一表面の硬度が、直径8cmの円柱管を10mm/minの速さで上記水溶液の表面から30mmの深さに達するまで押し込んだ際の最大荷重が3〜350Nになった際に行うことが望ましい。
上記分散工程を、最大荷重が3〜350Nになった際に行うと、活性塩素剤がほとんど分解することなく、上記水溶液の一表面上に分散することができる。
最大荷重が3N未満であると、活性塩素剤が分解される場合がある。
最大荷重が350Nを超えると、上記水溶液が固化し、活性塩素剤が上記水溶液の一表面上に固定されにくくなる場合がある。
【0037】
上記分散工程の後、さらに上記活性塩素剤を上記水溶液に押し付ける押付工程を含むことが望ましい。
上記押付工程の方法は特に限定されないが、円柱管の底面等を用いて、0.07〜7.5N/cm
2の力で押し付けることが望ましい。
【0038】
最後に、上記活性塩素剤が分散した上記水溶液を常温で1〜24時間放置して固化させ、固形洗浄剤を製造する。
【実施例】
【0039】
以下、本発明をより具体的に説明する実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
水に、洗浄成分として無水メタケイ酸ソーダ40重量%と、ポリアクリル酸ソーダ5重量%と、任意成分としてNTA−3Na35重量%と、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル3重量%と、芒硝を混合した後、80℃に加熱して維持し、攪拌することにより、水と洗浄成分を含む水溶液を調製した。水及び芒硝の配合量は特に限定されない。
【0041】
次に、上記工程で調整した水溶液を型に充填し、上記水溶液の温度が30℃に下がるまで常温で放置した。上記型としては、開口部を有する小分け包装容器を用いた。
【0042】
次に、上記水溶液の一表面上に、活性塩素剤として粉末状の塩素化シアヌール酸ソーダ0.1重量%を分散させた。さらに、円柱管の底面を用いて、上記活性塩素剤を上から7.5N/cm
2の力で押し付けた。その後、常温で20時間放置させることにより、固形洗浄剤を製造した。
製造した固形洗浄剤では、活性塩素剤が洗浄成分の一表面上に分散している。
製造した固形洗浄剤に含まれる洗浄成分及び活性塩素剤等の重量(重量%)、並びに、活性塩素剤が分散された場所を表1に示す。
【0043】
(実施例2〜4)
洗浄成分及び活性塩素剤等の重量(重量%)を表1に記載したように変更した以外は、実施例1と同様にして固形洗浄剤を製造した。
【0044】
(比較例1及び2)
80℃に加熱した水、洗浄成分及び任意成分を含む水溶液を型に充填後、すぐに粉末状の活性塩素剤を添加し、よく攪拌した。その他の工程は、実施例1と同様にして固形洗浄剤を製造した。製造した固形洗浄剤では、活性塩素剤が洗浄成分の内部に分散されている。
洗浄成分及び活性塩素剤の重量(重量%)、並びに、活性塩素剤が分散された場所を表1に示す。
【0045】
(比較例3及び4)
粉末状の活性塩素剤を型の底部に分散させた後、80℃に加熱した水、洗浄成分及び任意成分を含む水溶液を上記型に充填した。その他の工程は、実施例1と同様にして固形洗浄剤を製造した。製造した固形洗浄剤では、活性塩素剤が洗浄成分の底部に分散されている。
洗浄成分及び活性塩素剤の重量(重量%)、並びに、活性塩素剤が分散された場所を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
(自動洗浄工程)
各実施例及び各比較例で製造した固形洗浄剤を自動食器洗浄機にセットし、洗浄を行った。
自動食器洗浄機としては、三洋電機社製DW−DR62型の自動食器洗浄機を用いて、洗浄時間を後記するように標準に設定して行った。
自動洗浄工程は、具体的に次のようにして行った。
【0048】
まず、60±3℃の洗浄用水を、実施例、比較例等で製造した一の固形洗浄剤に吹き付けて溶かし、自動食器洗浄機内の水量に対して、洗浄剤の濃度が0.15重量%の洗浄剤溶液とした。
【0049】
次に、洗浄剤溶液の散布による洗浄処理を40秒間行い、続いて、80±4℃のすすぎ湯水を散布することによるすすぎ洗いを5秒間行い、さらにその後20秒間放置した。これらの工程を1回の洗浄工程とした。
【0050】
(有効塩素濃度の測定)
各実施例及び各比較例で製造した固形洗浄剤を用いて、固形洗浄剤の有効塩素濃度を以下の方法により測定した。
【0051】
(1)まず、各実施例及び各比較例で製造した固形洗浄剤を用いて、上記自動洗浄工程に従って運転を開始した。そして、上記洗浄工程をN回(各実施例の場合はN=1,6,11,17,35、各比較例の場合はN=6,35)行った後、自動食器洗浄機内の洗浄剤溶液をそれぞれ採取した。
【0052】
(2)続いて、上記洗浄剤溶液100gに、ヨウ化カリウム1g、硫酸アルミニウム13〜18水和物1gを混合した水溶液及び氷酢酸水溶液10mLを添加して充分に混合することにより混合液を作製した。次に、0.01Mのチオ硫酸ナトリウム水溶液で混合液を滴定し、褐色が消えて無色になった点を終点とした。その時のチオ硫酸ナトリウム水溶液の滴下量に基づき、次式(1)によって有効塩素濃度を算出した。算出した有効塩素濃度を表2に示す。
有効塩素濃度[%]=チオ硫酸ナトリウム水溶液の滴下量[mL]×0.3546/10/洗浄剤溶液の量[g] ・・・(1)
【0053】
【表2】
【0054】
下記の通り、殺菌力を評価した結果を表3に示す。
(殺菌力の評価)
(1)検査菌液の調製
自動食器洗浄機内からスライムを回収し、普通ブイヨン培地で35℃、24時間培養した後、菌数が108個/mLになるように調整した。
【0055】
(2)試験液の調製
まず、各実施例及び各比較例で製造した固形洗浄剤に含まれる洗浄成分と同様の成分からなる組成物をイオン交換水で希釈して、洗浄成分の濃度が0.15重量%の水溶液とした。
次に、上記水溶液10mLを60℃に維持し、各実施例及び各比較例で製造した固形洗浄剤を用いて洗浄工程を1回行った後の有効塩素濃度と同じ値になるように活性塩素剤を添加し、よく攪拌した。そして、10分間静置した後、検査菌液0.1mLを添加することにより、試験液を調製した。
【0056】
(3)試験方法
上記試験液を一白金耳とり、還元性物質であるチオ硫酸ナトリウム0.001%を添加したSCD培地に接種した。SCD培地で35℃、48時間培養した後、菌の生死を次の3段階で評価した。
◎:菌が全く検出されなかった
○:菌がほぼ検出されなかった
×:菌が検出された
【0057】
【表3】
【0058】
表2の実施例1〜4の結果からわかるように、活性塩素剤が洗浄成分の一表面上に分散された本発明の固形洗浄剤では、洗浄開始直後の有効塩素濃度が高く、さらに、洗浄工程の回数が増えるにつれて有効塩素濃度が低くなることがわかる。その結果、洗浄開始直後に発生する塩素臭を、洗浄工程の回数が増えるにつれて低減させることができる。
また、表3の実施例1〜4の結果からわかるように、有効塩素濃度が高いほど、殺菌力が高いことがわかる。つまり、活性塩素剤が洗浄成分の一表面上に分散された本発明の固形洗浄剤では、洗浄開始直後の殺菌力が高いことがわかる。
【0059】
これに対して、活性塩素剤が洗浄成分の内部に分散された比較例1及び2、並びに、活性塩素剤が洗浄成分の底部に分散された比較例3及び4の固形洗浄剤では、表2の結果からわかるように、有効塩素は検出されなかった。さらに、活性塩素剤が洗浄成分の底部に分散された比較例3及び4の固形洗浄剤では、固形洗浄剤をほぼ使い切っても有効塩素は検出されなかった。また、表3の結果からわかるように、有効塩素濃度が0ppmである場合は、殺菌力を有さないことがわかる。つまり、活性塩素剤が洗浄成分の内部に分散された固形洗浄剤、及び、活性塩素剤が洗浄成分の底部に分散された固形洗浄剤は、殺菌力を有さないことがわかる。
これは、活性塩素剤が洗浄成分の内部に分散された比較例1及び2の固形洗浄剤では、活性塩素剤が洗浄成分の内部で分解されたためだと考えられる。また、活性塩素剤が洗浄成分の底部に分散された比較例3及び4の固形洗浄剤では、活性塩素剤を型の底部に分散させた後、洗浄成分等を含む水溶液を型に投入した際、活性塩素剤が洗浄成分と混ざり合い、活性塩素剤が分解されたためだと考えられる。
【0060】
(その他の実施形態)
活性塩素剤を洗浄成分の一表面上に分散させる方法は特に限定されず、水及び洗浄成分を含む水溶液が固化して固形状の洗浄成分となった後、上記洗浄成分の一表面上にバインダーを塗り、活性塩素剤を分散させてもよい。また、上記洗浄成分の一表面上に芒硝、バインダーを交互に塗り、バインダーを塗った後に活性塩素剤を分散させてもよい。
バインダーの種類としては、アクリル酸、マレイン酸、又は、スルホン酸のモノポリマー、これらと共重合可能な単量体から得られるコポリマー、ケイ酸ソーダ溶液等が挙げられる。