特許第5789547号(P5789547)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5789547
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20150917BHJP
【FI】
   G03G15/16 103
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-57818(P2012-57818)
(22)【出願日】2012年3月14日
(65)【公開番号】特開2012-208491(P2012-208491A)
(43)【公開日】2012年10月25日
【審査請求日】2014年2月19日
(31)【優先権主張番号】特願2011-55220(P2011-55220)
(32)【優先日】2011年3月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】山根 信司
(72)【発明者】
【氏名】林 延幸
(72)【発明者】
【氏名】宇野 浩二
【審査官】 國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−134061(JP,A)
【文献】 特開2009−139404(JP,A)
【文献】 特開2004−037950(JP,A)
【文献】 特開2003−215939(JP,A)
【文献】 特開2009−294529(JP,A)
【文献】 特開2004−004573(JP,A)
【文献】 特開2009−063901(JP,A)
【文献】 特開2009−009103(JP,A)
【文献】 特開2009−058764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の線速度で巡回駆動される中間転写ベルトに弾性積層ベルトを用いると共に、前記中間転写ベルトの外側に位置する二次転写ローラーを、前記中間転写ベルトの内側に位置し、かつ、前記二次転写ローラーとともに転写ニップを形成する対向ローラーよりも上流側にオフセットした電子写真方式の画像形成装置であって、
前記転写ニップにおける前記中間転写ベルトの表面速度と前記二次転写ローラーの表面速度の差が小さくなるように前記二次転写ローラーを前記中間転写ベルトの線速よりも小さい速度で回転駆動する駆動制御部を備え
前記駆動制御部は、前記転写ニップにおける前記中間転写ベルトの収縮に基づく当該中間転写ベルトの表面速度と前記転写ニップにおける記録紙の搬送速度とが等しくなるように前記二次転写ローラーの表面速度を設定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
周囲環境の状態を計測する環境計測手段をさらに備え、
前記駆動制御部は、該環境計測手段の計測結果に応じて前記二次転写ローラーの表面速度を調整することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記中間転写ベルトの速度を検知する速度検知手段を更に備え、
前記駆動制御部は、前記速度検知手段による検知結果に基づき前記対向ローラーの回転駆動を制御するとともに、前記二次転写ローラーの温度変化を予測して回転駆動を制御することを特徴とする請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記二次転写ローラーを回転可能に保持して前記中間転写ベルトに沿う方向に移動可能に支持される転写ユニットを更に備え、前記転写ユニットを移動させることによりオフセット量の変更が可能であることを特徴とする請求項1ないし3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記二次転写ローラーは駆動回転と従動回転の切換えが可能であることを特徴とする請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記中間転写ベルトは、樹脂基材層の表面に弾性層を設け、当該弾性層の表面に離型層を設けた三層構造を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記二次転写ローラーは、イオン導電系弾性体から形成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、上記画像形成装置には、感光ドラム状に形成されたトナー像を一定方向に巡回する中間転写ベルト(無端ベルト)に一次転写し、当該中間転写ベルト上のトナー像を記録紙上に二次転写する方式のものがある。このような画像形成装置では、一定方向に移動(巡回)する中間転写ベルト及び記録紙を二次転写用ローラー及び対向ローラーで挟み込むと共に二次転写用ローラーと対向ローラーとの間に転写バイアス(高電圧)を印加することにより、中間転写ベルト上のトナー像を記録紙上に二次転写する。
【0003】
このような中間転写ベルトを用いた画像形成装置について、例えば下記特許文献1、2には、中間転写ベルトの外側に位置する二次転写ローラーを内側に位置する対向ローラーよりも上流側へシフトさせることにより、記録紙が二次転写用ローラーと対向ローラーとによって形成される転写ニップに進入する領域において中間転写ベルトの裏面と対向ローラーとの間に空隙が形成され、この結果として二次転写前での異常放電を防止することが記載されている。また、下記特許文献1には、樹脂基材の上に弾性層及び離型層を積層した弾性積層ベルトを中間転写ベルトとして採用することにより転写性を改善することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−14550号公報
【特許文献2】特開平9−90780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、中間転写ベルトの外側に位置する二次転写ローラーを上流側にオフセットする場合において、上記弾性積層ベルトを中間転写ベルトとして用いると、プレ転写現象や中抜け現象などの転写不良は抑制でき、高画質が実現されるが、記録紙と中間転写ベルトの速度差が大きい場合に画像のDot(ドット)が乱れるという問題が発生する。特に、弾性効果を高める為に、弾性層を厚くしたり、オフセット量を大きく設定した場合は、この傾向が顕著である。
【0006】
すなわち、記録紙が転写ニップにおいて中間転写ベルトと二次転写ローラーに挟まれた際に、記録紙の両面で摩擦力が発生する。二次転写ローラーをオフセットすると、転写ニップにおいて記録紙が二次転写ローラーに巻付くことにより、記録紙と二次転写ローラーの摩擦力が大きくなる。また、中間転写ベルトが樹脂単層ベルトであれば転写ニップ内でのベルト表面の伸縮は殆ど無視できるが、弾性層を中間層として有する積層型弾性ベルトの場合には、伸縮の中立面が樹脂層内にあるため湾曲部において積層型弾性ベルトの表面での伸縮が±数%程度発生してしまう。一方、記録紙は弾性層のようには伸縮しないため、記録紙と中間転写ベルトとの間で発生するずれ応力により積層型弾性ベルトの記録紙に対する吸着力が低下する。本来、中間転写ベルト支配で搬送速度を決めていた場合に比べて二次転写ローラーの搬送力の影響が無視できなくなる。この結果として、二次転写ローラーの外径によって記録紙の搬送速度が変動するため、条件によっては中間転写ベルトと記録紙の速度差が増大してDot再現性が低下する。また、画像の倍率変動が大きくなってしまう。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みたものであり、中間転写ベルトとして弾性積層ベルトを用いると共に中間転写ベルトの外側に位置する二次転写ローラーを内側に位置する対向ローラよりも上流側にオフセットした場合に発生する中間転写ベルトと記録紙の速度差に起因するDot再現性の低下及び倍率変動を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、第1の解決手段として、一定の線速度で巡回駆動される中間転写ベルトに弾性積層ベルトを用いると共に、中間転写ベルトの外側に位置する二次転写ローラーを、中間転写ベルトの内側に位置し、かつ、二次転写ローラーとともに転写ニップを形成する対向ローラーよりも上流側にオフセットした電子写真方式の画像形成装置であって、転写ニップにおける中間転写ベルトの表面速度と二次転写ローラーの表面速度の差が小さくなるように二次転写ローラーを中間転写ベルトの線速よりも小さい速度で回転駆動する駆動制御部を備える、という手段を採用する。
【0009】
また、第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、駆動制御部は、転写ニップにおける中間転写ベルトの収縮に基づく当該中間転写ベルトの表面速度と転写ニップにおける記録紙の搬送速度とが等しくなるように二次転写ローラーの表面速度を設定する、という手段を採用する。
【0010】
第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、周囲環境の状態を計測する環境計測手段をさらに備え、駆動制御部は、該環境計測手段の計測結果に応じて二次転写ローラーの表面速度を調整する、という手段を採用する。
【0011】
第4の解決手段として、上記第1または第3の解決手段において、前記中間転写ベルトの速度を検知する速度検知手段を更に備え、前記駆動制御部は、前記速度検知手段よる検知結果に基づき前記対向ローラーの回転駆動を制御するとともに、前記二次転写ローラーの温度変化を予測して回転駆動を制御する、という手段を採用する。
【0012】
第5の解決手段として、上記第1または第4の解決手段において、前記二次転写ローラーを回転可能に保持して前記中間転写ベルトに沿う方向に移動可能に支持される転写ユニットを更に備え、前記転写ユニットを移動させることによりオフセット量の変更が可能である、という手段を採用する。
【0013】
第6の解決手段として、上記第5の解決手段において、前記二次転写ローラーは駆動回転と従動回転の切換えが可能である、という手段を採用する。
【0014】
第7の解決手段として、上記第1〜第6のいずれかの解決手段において、中間転写ベルトは、樹脂基材層の表面に弾性層を設け、当該弾性層の表面に離型層を設けた三層構造を有する、という手段を採用する。
【0015】
第8の解決手段として、上記第1〜第7のいずれかの解決手段において、二次転写ローラーは、イオン導電系弾性体から形成される、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、転写ニップにおける中間転写ベルトと二次転写ローラーの速度差が小さくなるように二次転写ローラーを回転駆動するので、中間転写ベルトとして弾性積層ベルトを用いると共に中間転写ベルトの外側に位置する二次転写ローラーを内側に位置する対向ローラよりも上流側にオフセットした場合に発生するDot再現性の低下を抑制することが可能である。また、画像の倍率変動の増加を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係わるカラー印刷機の全体構成を示す模式図である。
図2】本発明の第1実施形態に係わるカラー印刷機の要部構成の拡大図である。
図3】本発明の第1実施形態における転写ニップを示す模式図である。
図4】本発明の第1実施形態において、転写ニップにおける中間転写ベルト1の伸縮の状態を示す模式図(a)、伸縮率分布を示す特性図(b)である。
図5】本発明の第1実施形態において、二次転写ローラー5の表面速度を可変した場合のDot(ドット)再現性の状態を確認した実験結果である。
図6】本発明の第1実施形態において、二次転写ローラー5の温度上昇を予測して速度を補正する説明図である。
図7】本発明の第2実施形態における二次転写ユニット30の基本構成を示す説明図である。
図8】中間転写ベルト1と二次転写ローラー5の転写ニップにおける押圧分布とオフセット量の関係をシュミレーションして示した図である。
図9】転写ニップのオフセット量と二次転写ローラー5の外径公差が画像の倍率変動に及ぼす影響度の関係として示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
第1実施形態に係るカラー印刷機は、図1に示すように、中間転写ベルト1、4つのベルトローラー2A〜2D、4つの画像形成ユニット3Y,3M,3C,3K、4つの一次転写ローラー4Y,4M,4C,4K、二次転写ローラー5、一対の定着ローラー6A,6B、環境センサー7、駆動制御部8及び操作表示部9から構成されたタンデム型の画像形成装置である。なお、駆動制御部8及び操作表示部9を除く各構成要素は、機構部Mを構成している。このようなカラー印刷機は、各構成要素が協働することによりカラー印刷機能を実現する。
【0019】
中間転写ベルト1は、図示するように、互いに離間して配置された4つのベルトローラー2A〜2Dに架け廻される無端ベルトである。また、この中間転写ベルト1は、樹脂基材層、弾性層及び離型層からなる三層構造、つまり樹脂基材層の表面に弾性層が設けられ、当該弾性層の表面に離型層(表面層)が設けられた弾性積層ベルトである。樹脂基材層の厚さは例えば100μm、弾性層の厚さは例えば300μm、離型層の厚さは例えば3μmである。
【0020】
また、樹脂基材層は、ポリイミド樹脂やフッ素樹脂等の樹脂材料からなるものであり、弾性層は、クロロプレンゴム、EPDMゴム、プリウレタンゴム等のエラストマーが用いられる。また、離型層(表面層)は、フッ素樹脂、シリコン樹脂、アクリル樹脂あるいはウレタン樹脂系等のコート剤、より具体的にはPTFE樹脂分散コート剤からなるものである。
【0021】
4つのベルトローラー2A〜2Dは、このような中間転写ベルト1に一定の張力を付与しつつ、矢印で示す一定方向に中間転写ベルト1を巡回させるローラーである。これら4つのベルトローラー2A〜2Dのうち、ベルトローラー2Aは、駆動制御部8によって制御されるベルト駆動源10(図6参照)から駆動力が伝達されて回転駆動され、中間転写ベルト1を矢印方向に巡回走行させる駆動ローラーである。ベルトローラー2Bは、回転軸芯に並行な方向に移動自在に設けられており、所定のテンション調節機構(図示略)によって回転軸芯の位置が調節されることにより中間転写ベルト1に一定の張力を付与するテンションローラーである。また、ベルトローラー2C及びベルトローラー2Dは、中間転写ベルト1を所定方向に案内する従動ローラーである。ベルトローラー2Cには回転軸の回転速度を検知するためのエンコーダ11(速度検知手段)が設けられている(図6参照)。つまり、このエンコーダ11は、ベルトローラー2Cの回転によって回走する中間転写ベルト1の回走速度を検知できる。
【0022】
4つの画像形成ユニット3Y,3M,3C,3Kは、上記ベルトローラー2Cとベルトローラー2Dとの間に一直線状に延在する中間転写ベルト1に沿って、かつ一定間隔を空けて配置されている。これら画像形成ユニット3Y,3M,3C,3Kは、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)からなる各基準色のトナー画像を形成するものであり、感光体ドラムY1,M1,C1,K1、帯電部Y2,M2,C2,K2、レーザスキャニングユニットY3,M3,C3,K3、現像ユニットY4,M4,C4,K4及びクリーナーY5,M5,C5,K5等からそれぞれ構成されている。
【0023】
なお、これら感光体ドラムY1,M1,C1,K1、帯電部Y2,M2,C2,K2、レーザスキャニングユニットY3,M3,C3,K3、現像ユニットY4,M4,C4,K4及びクリーナーY5,M5,C5,K5については、電子写真方式の画像形成装置の画像形成ユニットとして周知のものなので、詳細な説明を省略する。
【0024】
4つの一次転写ローラー4Y,4M,4C,4Kは、4つの画像形成ユニット3Y,3M,3C,3Kに対応して設けられたローラーであり、中間転写ベルト1に沿って、かつ一定間隔を空けて配置されている。この一次転写ローラー4Y,4M,4C,4Kは、各画像形成ユニット3Y,3M,3C,3Kの感光体ドラムY1,M1,C1,K1との間に上記中間転写ベルト1を挟み込むように設けられており、駆動制御部8によって所定の転写バイアス(一次転写バイアス)が印加されることにより各感光体ドラムY1,M1,C1,K1の表面(周面)に形成された各基準色のトナー画像を中間転写ベルト1の表面に転写させる。
【0025】
二次転写ローラー5は、上述したベルトローラー2Aとの間で中間転写ベルト1及び給紙トレイから供給された記録紙Yを挟み込むように、中間転写ベルト1の外側に設けられた駆動ローラーであり、本カラー印刷機の最も特徴的な構成要素である。この二次転写ローラー5は、駆動制御部8によって制御されるローラー駆動源12(図6参照)から駆動力が伝達されて回転駆動されながら、所定の転写バイアス(二次転写バイアス)が印加されることにより、中間転写ベルト1上のトナー像を記録紙Yの表面に転写させる。なお、ベルトローラー2Aは、中間転写ベルト1を挟んで二次転写ローラー5と対向するものなので、以下では対向ローラー2Aという。
【0026】
図2に示すように、二次転写ローラー5の回転軸O1は、ベルトローラー2Dから進入する中間転写ベルト1の進入方向において、対向ローラー2Aの回転軸O2よりも距離Roff(オフセット量)だけ上流側にオフセットしている。すなわち、中間転写ベルト1の転写ニップへの進入方向を示す直線Lと二次転写ローラー5の回転軸O1から上記直線Lに垂下した直線との交点P1は、上記直線Lと対向ローラー2Aの回転軸O2から上記直線Lに垂下した直線との交点P2との間には距離Roffが存在する。
【0027】
このような、二次転写ローラー5と対向ローラー2Aとの位置関係の結果として、二次転写ローラー5と中間転写ベルト1とが接触して形成される転写ニップ(二次転写ニップ)は、図3に示すように、対向ローラー2Aの回転軸O2に対応する交点P2を境界点とし、当該交点P2よりも上流側に位置する領域A(上流側領域)と当該交点P2よりも下流側に位置する領域B(下流側領域)とからなる。また、このような領域A(上流側領域)及び領域B(下流側領域)からなる転写ニップは、二次転写ローラー5と対向ローラー2Aとが距離Roffだけオフセットしていることに起因して、図示するようにS字形状となる。
【0028】
一対の定着ローラー6A,6Bは、二次転写ローラー5から供給された記録紙Yを挟み込むことで当該記録紙Y上のトナー画像を定着させるローラーである。このような定着ローラー6A,6Bは、一方あるいは両方の内部にヒータが内蔵されており、トナー画像を加熱しつつ圧接してトナー画像を記録紙Y上に定着させる。上述した中間転写ベルト1、4つのベルトローラー2A〜2D、4つの画像形成ユニット3Y,3M,3C,3K、4つの一次転写ローラー4Y,4M,4C,4K、二次転写ローラー5及び一対の定着ローラー6A,6B及び環境センサー7は、全て機械的な構成要素であり、機構部Mを構成している。
【0029】
環境センサー7は、上記二次転写ローラー5の近傍に設けられており、当該二次転写ローラー5の近傍の環境量、例えば温度及び湿度等を検出する環境計測手段である。この環境センサー7は、自らが検出した環境量を制御情報として駆動制御部8に出力する。
【0030】
駆動制御部8は、このような機構部Mを駆動制御する構成要素であり、機構部Mの各構成要素を駆動するモータ等の各種アクチュエーター(駆動装置)及び当該各種アクチュエーターを制御する制御装置から構成されている。例えば、駆動制御部8は、上記転写ニップの領域A(上流側領域)における中間転写ベルト1の収縮による速度変動との差が小さくなるように二次転写ローラー5を回転駆動する。また、駆動制御部8は、このような二次転写ローラー5の回転駆動において、環境センサー7の計測結果に応じて二次転写ローラー5の表面速度(周面の線速度)を微調整する。
【0031】
なお、上記制御装置は、所定の制御プログラム及び操作表示部9から入力される操作者の指示(指示信号)に基づいて各種アクチュエーターを制御することにより、通信を介して外部から入力された画像に対応した画像形成を機構部Mに行わせるものであり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等からなる記憶装置、LAN(Local Area Network)やインターネット等に準拠した通信装置、上記各種アクチュエーターや操作表示部9との間で各種信号の授受を行う各種インターフェース回路等から構成されている。機構部Mは、このような駆動制御部8によって駆動制御されることによって記録紙Y上への画像形成処理を行う。
【0032】
操作表示部9は、本カラー印刷機を操作する操作者に操作に必要な情報を表示したり、また操作者の指示を受け付けるマン・マシン・インターフェースとして機能する構成要素であり、液晶表示パネル及び各種の操作ボタンからなる。より具体的には、操作表示部9は、各種操作ボタンを画面上に表示すると共に当該操作ボタンの操作(押圧)を検知するタッチパネルとハードウエアとして設けられた操作ボタンである。
【0033】
次に、このように構成された本カラー印刷機の動作について、図4及び図5をも参照して詳しく説明する。
最初に画像形成に関する全体動作を説明するが、本カラー印刷機のようなタンデム方式の画像形成装置における画像形成プロセスは一般に知られているので、以下では概要を説明する。上記駆動制御部8は、外部からビットマップ等のカラー画像を受信すると、当該カラー画像に信号処理を施すことにより印刷形式の画像、つまり基準色であるイエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)に対応する画像を生成する。
【0034】
そして、駆動制御部8は、画像形成ユニット3Yにはイエロー(Y)に対応する印刷形式の画像に基づいてイエロー(Y)のトナー画像を感光体ドラムY1上に形成させ、画像形成ユニット3Mにはマゼンダ(M)に対応する印刷形式の画像に基づいてマゼンダ(M)のトナー画像を感光体ドラムM1上に形成させ、画像形成ユニット3Cにはシアン(C)に対応する印刷形式の画像に基づいてシアン(C)のトナー画像を感光体ドラムC1上に形成させ、また画像形成ユニット3Kにはブラック(K)に対応する印刷形式の画像に基づいてブラック(K)のトナー画像を感光体ドラムK1上に形成させる。
【0035】
そして、駆動制御部8は、ベルトローラー2Aを駆動することにより中間転写ベルト1を一定の線速度で巡回させた状態で一次転写ローラー4Y,4M,4C,4Kに一次転写バイアスを所定のタイミングで印加することにより、各感光体ドラムY1,M1,C1,K1上の各色(Y,M,C,K)のトナー像を中間転写ベルト1上に積層状態に転写(一次転写)させる。すなわち、中間転写ベルト1上には、各色(Y,M,C,K)のトナー像が重なり合うことにより単一のトナー画像(一次転写トナー像)が形成される。
【0036】
そして、このような一次転写トナー像は、中間転写ベルト1が巡回することによってベルトローラー2Dを経由して二次転写ローラー5と対向ローラー2Aとによって形成される転写ニップに進入し、当該転写ニップに同時に進入してきた記録紙Y上に転写される。すなわち、駆動制御部8は、二次転写ローラー5の回転を調節しつつ二次転写ローラー5に二次転写バイアスを印加することにより、中間転写ベルト1上のトナー像を記録紙Yに転写(二次転写)させる。
【0037】
ここで、駆動制御部8は、上記転写ニップの上流側領域における中間転写ベルト1と二次転写ローラー5の速度差が小さくなるように二次転写ローラー5を回転駆動する。すなわち、転写ニップにおける中間転写ベルト1の表面は、当該中間転写ベルト1が弾性積層ベルトであり、かつ、二次転写ローラー5が対向ローラー2Aよりも上流側にオフセットしているために、図4(a)、(b)に示すように領域A(上流側領域)の一部において収縮し、また領域B(下流側領域)の全域において専ら伸長する。
【0038】
一般的にベルトの線速V1は、ベルトの中立面、つまり、伸びや縮みの生じない箇所における速度であり、ベルトの厚さの半分の位置が該当する。しかし、中間転写ベルト1のニップP1付近では、弾性層1bは縮むのに対して樹脂層1aは殆ど縮まないため、その中立面は樹脂層14rの厚さの半分の位置になる。
【0039】
具体的には、図4(a)に示すように、中間転写ベルト1は樹脂層1aと弾性層1bが積層しており、弾性層1bの表面には薄層のコート層(図示せず)が形成されている。ここで、二次転写ローラー5の半径r、樹脂層1aの厚さtr、及び弾性層1bの厚さteとすれば、二次転写ローラー5の中心と中間転写ベルト1の中立面との距離はr+te+0.5trで表されるのに対し、二次転写ローラー5の中心とニップ面との距離はrのままである。したがって、中間転写ベルト1の表面速度は、二次転写ローラー5の中心と中立面との距離(r+te+0.5tr)と二次転写ローラー5の中心と交点P1との距離(r)との比に等しくなる。つまり、中間転写ベルト1の交点P1付近の表面速度は、v={r/(r+te+0.5tr)}×V1になる。
【0040】
すなわち、中間転写ベルト1の表面は、領域A(上流側領域)において、徐々に収縮して収縮がピークになった後に徐々に伸張する。それに合わせて表面速度も同様に変化する。駆動制御部8は、このような領域A(上流側領域)における中間転写ベルト1の表面の収縮により生じる二次転写ローラー5との速度差が小さくなるように、つまり図4における収縮ピークにおける速度差を小さくするように、二次転写ローラー5の表面速度を中間転写ベルト1の線速よりも若干遅くする。例えば、図4(b)では収縮ピークが−2%近くになっているが、この収縮ピークにおける中間転写ベルト1の表面速度との速度差が−1%程度になるように二次転写ローラー5の表面速度を中間転写ベルト1の線速よりも遅くする。
【0041】
また、より好ましくは、駆動制御部8は、転写ニップにおける中間転写ベルト1の収縮のピークにおける当該中間転写ベルト1の表面速度と転写ニップにおける記録紙Yの搬送速度とが等しくなるように、二次転写ローラー5の表面速度を中間転写ベルト1の線速よりも若干遅くする。
【0042】
図5は、二次転写ローラー5の表面速度を可変した場合のDot(ドット)再現性の状態を確認した実験結果である。なお、この確認実験では、二次転写ローラー5及び対向ローラー2Aの直径を24mm、二次転写ローラー5と対向ローラー2Aとのオフセット量Loffを2mm、中間転写ベルト1における樹脂基材層の厚さを100μm、弾性層の厚さを300μm、離型層の厚さを3μm、転写ニップの幅(中間転写ベルト1の巡回方向における転写ニップの長さ)を4mmとした。
【0043】
すなわち、この図5が示すように、二次転写ローラー5を従動ローラーとした場合(駆動なし)に対して、二次転写ローラー5の表面速度が中間転写ベルト1の表面速度よりも若干速い場合(+1%)は、Dot(ドット)再現性が悪化し、この逆に二次転写ローラー5の表面速度が中間転写ベルト1の表面速度よりも若干遅い場合(−1%)には、Dot(ドット)再現性が改善され、さらに遅い場合(−2%)にはDot(ドット)再現性がさらに改善される。
【0044】
なお、中間転写ベルト1及び二次転写ローラー5の体積抵抗率は周囲温度や周囲湿度等の周囲環境による影響を受けるので、中間転写ベルト1の表面におけるトナー像内における転写電界形成速度が周囲環境に応じて異なるものとなる。そして、Dot(ドット)再現性は、この転写電界形成速度の変動の影響を受けるので、二次転写ローラー5の表面速度を周囲環境に応じて微調整する必要がある。
【0045】
このような事情から、駆動制御部8は、環境センサー7の計測結果(環境量)に応じて二次転写ローラー5の表面速度を微調整する。すなわち、駆動制御部8は、例えば環境量と二次転写ローラー5の回転速度との対応関係を示す制御テーブルを予め記憶しており、環境センサー7から特定の環境量が入力されると、当該特定の環境量に対応する二次転写ローラー5の回転速度を制御テーブルから読み出し、当該回転速度となるように二次転写ローラー5を駆動する。
【0046】
つまり、このような駆動制御部8による二次転写ローラー5の表面速度の微調整によって、周囲温度や周囲湿度が比較的低い場合は中間転写ベルト1及び二次転写ローラー5の体積抵抗率が高くなるので、二次転写ローラー5の表面速度が比較的遅く設定され、この逆に周囲温度や周囲湿度が比較的高い場合は中間転写ベルト1及び二次転写ローラー5の体積抵抗率が低くなるので、二次転写ローラー5の表面速度が比較的早く設定される。この結果、周囲環境が変動してもDot(ドット)再現性が所望の状態に維持される。
【0047】
また、中間転写ベルト1の駆動ローラーであるベルトローラー2Aおよび二次転写ローラー5はヒータが設けられた定着ローラー6A,6Bの近くに対向して配置されている。したがって、ベルトローラー2Aおよび二次転写ローラー5は、ヒータによる熱の影響を受けて温度が上昇し、この温度上昇及び装置の使用状況などにより変化する。ベルトローラー2Aおよび二次転写ローラー5の温度が上昇するとローラー部材の熱膨張によってローラー径が変化するため、中間転写ベルト1の速度と二次転写ローラー5の速度が変化してDot再現性が所望の状態に維持できなくなる可能性がある。それを防ぐには、ベルトローラー2Aおよび二次転写ローラー5の温度上昇を予測して、その予測に応じて駆動制御部8によりベルトローラー2Aおよび二次転写ローラー5の速度を補正する必要がある。
【0048】
図6はベルトローラー2Aおよび二次転写ローラー5の温度上昇を予測して速度を補正する説明図である。駆動制御部8はベルトローラー2Cに設けられたエンコーダ11の出力を常にモニターしている。そして、エンコーダ11の出力から中間転写ベルト1の速度を判断して、環境条件などに応じた適切な速度になるように、ベルトローラー2Aに駆動力を伝達するベルト駆動源10のモーター10aの回転数を制御する。
【0049】
ベルトローラー2Aと二次転写ローラー5は対向するように位置して回転しているため、定着ローラー6A,6Bの影響による温度上昇においてある程度相関がある。実際の装置を用いていくつかの使用状態において、ベルトローラー2Aと二次転写ローラー5の温度を測定して、両者の温度の相関関係の調べてそのデータ表22を駆動制御部8に記憶させておく。また、駆動制御部8には、ベルト駆動源10のモーター10aの回転数とベルトローラー2Aの温度上昇の関係をあらかじめ実験により確認したデータ表21を記憶させておく。さらに、二次転写ローラ5の温度と熱膨張の関係をあらかじめ実験により確認したデータ表23も駆動制御部8に記憶させておく。
【0050】
実際の装置の使用時において、駆動制御部8はエンコーダ11の出力が所定の値になるようにベルト駆動源10に設けられたモーターの回転数を制御し、記憶しているデータ表21を参照してベルトローラー2Aの温度を予測する。次に、その予測にもとづいてデータ表22を参照して二次転写ローラー5の温度を予測する。次に、二次転写ローラー5の温度の予測にもとづき、データ表23を参照して二次転写ローラー5の速度の補正量を判断する。そして、その補正量に基づいてローラー駆動源12のモーター12aを適切な回転数に制御する。これにより、装置の使用状態などでベルトローラー2Aおよび二次転写ローラー5の温度が様々なに変動しても、中間転写ベルト1と二次転写ローラー5の速度は適切な関係に維持することが可能である。また、この構成では、ベルトローラー2Cに設けた既存のエンコーダ11を使用し、新たにローラーの温度を検知するセンサーなどが不要であるため安価に実現できる。
【0051】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図7は、第2実施形態の二次転写ユニット30の基本構成を示す説明図である。二次転写ユニット30の以外の構成は、図1に示すカラー印刷機と同じである。なお、図7は説明を分かりやすくするために、二次転写ユニット30が水平状態になるように回転させている。実際のカラー印刷機においては、右側が斜め上に傾斜する状態で配置される。
【0052】
二次転写ユニット30は、樹脂で成形されたユニット本体31を有し、ユニット本体31は二次転写ローラー5を、図7における左右方向への移動を規制した状態で中間転写ベルト1に向けて付勢して回転可能に支持している。ユニット本体31の長手方向(図7の奥行き方向)の両側面には2対の円柱形状のガイドピン32が外側に突出して設けられている。ガイドピン32はカラー印刷機本体に形成されたガイド溝33に摺動可能に嵌挿されている。ガイド溝33は中間転写ベルト1に沿う方向に延びる水平ガイド部33aと、水平ガイド部33aの右端から中間転写ベルト1から離れる方向に傾斜して延びる退避ガイド部33bを有している。ユニット本体31の左側面における長手方向の両端付近には偏心カム34が当接するように設けられている。偏心カム34は、ユニット本体31の長手方向に渡って延びてカラー印刷機本体に両端部が回転可能に支持された支軸35の両端付近に、同位相で一体に回転するように取付けられている。支軸35は図示しない駆動手段により回転駆動される。また、右側のガイドピン32にはコイルバネ36の一端が引っ掛けられており、コイルバネ36の他端はカラー印刷機本体に引っ掛けられている。
【0053】
支軸35の駆動手段は回転角度の検知手段を有しており、駆動制御部8の制御により所定の角度に回転させることが可能である。支軸35が回転すると偏心カム34も回転するため、ユニット本体31が中間転写ベルト1に沿う方向(図7における左右方向)に移動する。したがって、第2実施形態においては画像形成時における二次転写ローラー5のオフセット量を調整することが可能である。適切なオフセット量は、記録紙の種類、形成する画像の種類、環境条件などの組み合わせにより変化する場合があるが、この構成によれば、様々な条件における最適なオフセット量を実験によりあらかじめ求めておき、駆動制御部8にデータ表として記憶しておけば、ユーザーの設定や環境計測手段の計測結果に応じてオフセット量を適切な値に設定することが可能である。
【0054】
また、コイルバネ36が引っ掛けられた右側のガイドピン32が水平ガイド部33aより右側に移動して退避ガイド部33bに入ると、ユニット本体31の右側が中間転写ベルト1から離れる方向に移動するため、二次転写ローラー5が中間転写ベルト1から離間した状態になる。この構成により、非画像形成時に二次転写ローラー5を中間転写ベルト1から離間させておくことが可能になり、長時間使用しない場合にも、二次転写ローラー5が変形することが防止できる。
【0055】
次に、適切なオフセット量について行った実験の一例を説明する。図8は、中間転写ベルト1と二次転写ローラー5の転写ニップにおける押圧分布とオフセット量の関係をシュミレーションして示した図である。中間転写ベルト1および二次転写ローラー5の仕様は上記第1実施形態に記載した内容と同じである。
【0056】
実施例1では二次転写ローラー5と中間転写ベルト1のニップ幅を4mmとし、転写ニップの中心を上流側に1mmオフセットした。したがって、転写ニップの上流端〜1mmはベルトが二次転写ローラー5に押し込まれて表面が収縮し、1mm〜下流端は中間転写ベルト1が対向ローラー2Aに押されて表面が伸びている。
実施例2では、ニップ幅の中心がA領域とB領域の境界上になるように二次転写ローラー5をオフセットさせた。
また、比較例は、ニップ幅全体がA領域に入る位置まで二次転写ローラー5を上流側にオフセットさせた。
【0057】
上記の実施例1、2および比較例において、二次転写ローラー5の外径を±0.1%変化させた場合の画像の倍率変動の程度を測定した。なお、画像形成する記録紙の給紙速度はB領域の中間転写ベルト1に合わせて設定した。また、この実験の際に二次転写ローラー5は駆動源で回転駆動させず、中間転写ベルト1や記録紙に従動回転可能な状態にしている。
【0058】
結果として、実施例1において画像の倍率変動は±0.1%以下であった。また、実施例2についても画像の倍率変動は±0.1%程度であり、大きな影響はなかった。しかし、比較例では、±0.3%程度の大きな画像の倍率変動が発生した。図9は、上記の実験結果から、転写ニップのオフセット量と二次転写ローラー5の外径公差が画像の倍率変動に及ぼす影響度の関係として示した図である。転写ニップのオフセットによりA領域に入る面積がB領域の面積よりも大きくなると、急激に影響度が大きくなることが分かる。
【0059】
これは、以下のような理由によるものと考えられる。領域Aでは中間転写ベルト1表面での伸縮が±数%程度発生してしまう。一方、記録紙は弾性層のようには伸縮しないため、記録紙とベルト間で発生するずれ応力により吸着力が低下する。二次転写ローラー5と記録紙間でも伸縮によるずれ応力は発生するが、記録紙両面での吸着力低下の結果、本来、中間転写ベルト1支配で搬送速度を決めていた場合に比べて二次転写ローラー5の外径の影響が無視できなくなる。この結果、二次転写ローラー5外径によって、副走査方向の倍率が変動する。
【0060】
したがって、転写ニップをオフセットする場合に、領域Aでの積算押圧力をFa、領域Bでの積算押圧力をFbとすると、Fa<Fbの範囲内であれば、二次転写ローラー5の速度の調整を行うことなく、従動回転させる構成でも倍率調整の問題は発生しにくい。また、中間転写ベルト表面と記録紙の摩擦係数をμbとして、記録紙と二次転写ローラー5の摩擦係数をμcとし、転写ニップにおける二次転写ローラー5の積算押圧力をFcとした場合に、領域Bにおける中間転写ベルト1と記録紙の積算ずれ応力Fb×μbよりも、二次転写ローラー5と記録紙の積算ずれ応力Fc×μcを小さくするのが、二次転写ローラー5の外径の影響を低減するのに有効であると考えられる。その場合に、積算押圧力Fcを低減するのは難しいため、摩擦係数μcを低減するのが有効である。たとえば、二次転写ローラー5の表面をPTFEチューブで覆うなどの対策が有効と考えられる。
【0061】
また、記録紙の種類、画像形成条件、環境条件によって転写ニップのオフセットが僅かで良い場合には、二次転写ローラー5を速度調整しながら回転駆動させず、従動回転させることが可能である。本発明の第2実施形態のような構成にすれば、大きくオフセットさせる必要がある場合にのみ、二次転写ローラー5を駆動させることが可能であるため、電力消費や騒音などを低減するのに有効である。
【0062】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、カラー印刷機に本発明を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明は、カラー印刷機以外の各種の画像形成装置に適用可能である。
【0063】
(2)上記実施形態では、二次転写ローラー5の表面速度を中間転写ベルト1の表面速度よりも遅くする度合いを−1%、より好ましくは−2%としたが、本発明はこれに限定されない。この度合いは、中間転写ベルト1、二次転写ローラー5及び対向ローラー2Aの材質、形状あるいは/及び位置関係によっても異なるものであり、これらに応じて適宜設定されるべきものである。
【0064】
(3)上記実施形態では、環境センサー7を設けることにより二次転写ローラー5の表面速度を周囲環境に応じて微調整したが、このような微調整機能は必要に応じて割愛してもよい。
【0065】
(4)上記実施形態では、樹脂基材層、弾性層及び離型層からなる三層構造の中間転写ベルト1を用いた場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明は、少なくとも弾性層を備える中間転写ベルトであれば適用可能であり、よって上記三層構造に限定されない。
【0066】
(5)上記実施形態では、イオン導電系弾性体からなる二次転写ローラー5を採用したが、本発明これに限定されない。
【符号の説明】
【0067】
1…中間転写ベルト、2A〜2D…ベルトローラー、3Y,3M,3C,3K…画像形成ユニット、4Y,4M,4C,4K…一次転写ローラー、5…二次転写ローラー、6A,6B…定着ローラー、7…環境センサー、8…駆動制御部、9…操作表示部、M…機構部、Y…記録紙、10…ベルト駆動源、10a…モーター、11…エンコーダ、12…ローラー駆動源、12a…モーター、21、22、23…データ表、30…二次転写ユニット、31…ユニット本体、32…ガイドピン、33…ガイド溝、33a…水平ガイド部、33b…退避ガイド部、34…偏心カム、35…支軸、36…コイルバネ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9