(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態に係る表示装置を説明する。
図1は、実施形態の表示装置の正面図である。
図1に示す表示装置10は、表示領域100が設定されている。表示領域100は、画像が表示される領域である。また、実施形態の表示装置10は、部分3次元表示が可能な表示装置であって、
図1に示すように表示領域100に、2次元/3次元切替可能表示領域(以下、選択表示領域という)101と、2次元/3次元切替不能表示領域(以下、固定表示領域という)102と、がそれぞれ設定されている。
【0010】
選択表示領域101は、表示領域100の外周部よりも内部側の中間位置に設定される領域であって、2次元表示と3次元表示とが切り替え可能な領域である。本実施形態においては、選択表示領域101を、表示領域100の端部から離して設定することが可能である。勿論、選択表示領域101が表示領域100の端部に接していても良い。また、
図1では、選択表示領域101が表示領域100内に1つ設定されているが、2つ以上設定されても良い。さらに、1つの選択表示領域101が複数の領域に分割されていても良い。
【0011】
固定表示領域102は、表示領域100の選択表示領域101を囲むように設定される領域であって、2次元表示と3次元表示とが切り替え不能な領域である。
図1では、固定表示領域102を、2次元表示が可能な領域としている。固定表示領域102を、3次元表示が可能な領域としても良い。
【0012】
図2は、
図1の1−1線に沿った選択表示領域
101の構成を示す断面図であって、実施形態の表示装置10の概略の構成を示す断面図である。ここで、
図2(a)は、液晶レンズユニット300中の液晶層303に電圧が印加されていない状態を示し、
図2(b)は、液晶レンズユニット300中の液晶層303に電圧が印加された状態を示している。
【0013】
図2(a)及び
図2(b)に示すように、表示装置10は、表示パネル200と、液晶レンズユニット300と、を有している。表示パネル200と液晶レンズユニット300とは、スペーサ210を介して所定の間隔を有するように貼り合わせされている。表示パネル200と液晶レンズユニット300との間は、例えば空気層である。
【0014】
ただし、この
図2では、説明を分かり易くするために、選択表示領域101のみが恰も独立した表示パネル200と液晶レンズユニット300から構成されているように示しているが、実際には、表示パネル200と液晶レンズユニット300は、固定表示領域102を含む全表示領域100に跨って形成されているものであって、その一部を例示的に示しているに過ぎず、また、以下の説明も同様である。
【0015】
表示パネル200は、画像を表示する。
図2(a)及び
図2(b)は、表示パネル200を液晶表示パネルとした例を示している。しかしながら、表示パネル200は、必ずしも液晶表示パネルとする必要はなく、有機EL表示パネルやプラズマ表示パネルとしても良い。
【0016】
表示パネル200は、アレイ基板201と対向基板202との間に液晶層203が介在されて構成されている。アレイ基板201と対向基板202とは、周囲を封止材204によって封止され、球状や柱状のスペーサ(図示せず)を介して所定の間隔を有するように貼り合わされている。また、アレイ基板201の裏面にはバックライト205が配置されている。
【0017】
アレイ基板201は、画素を構成する画素電極がマトリクス状に形成されている。各画素電極には、薄膜トランジスタ(TFT)が接続されており、対応するTFTがオン状態となったときに画素電極を介して液晶層203に電圧を印加するように構成されている。また、アレイ基板201の光入射側には、偏光板206が設けられている。
【0018】
対向基板202は、各画素電極と対応するように、例えば赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーフィルタ207が設けられ、カラーフィルタ207上に対向電極が形成されて構成されている。また、対向基板202の光出射側には、偏光板208が設けられている。カラーフィルタ207は、アレイ基板201側に形成することも可能である。
【0019】
このような液晶表示パネル200は、画素電極に印加する電圧の大きさを制御することにより、画素電極と対向電極との間に介在する液晶層203に発生する電界を制御して表示を行う表示パネル200である。液晶は、電界を与えることによって内部の液晶分子の配向が変化する特性を有しており、液晶分子の配向によって液晶を通過する光の透過率が変化する。この光の透過を画素単位(画素電極単位)で制御することにより、画素単位での表示を行う。
【0020】
液晶レンズユニット300は、アレイ基板301と対向基板302との間に液晶層303が介在されて構成されている。アレイ基板301と対向基板302とは、周囲を封止材304にて封止されるとともに、球状もしくは柱状のスペーサ(図示せず)を介して所定の間隔を有するように貼り合わされている。本実施形態の場合には、作業性を考慮してビーズ状のスペーサを散布することで対応している。
【0021】
以下、
図2と
図3を参照して液晶レンズユニット300について説明する。
図3は、液晶レンズユニット300のアレイ基板301と対向基板302の電極配置を示す図である。
図3(a)は、アレイ基板301の正面図、
図3(b)は、
図3(a)の対向基板302を含む31−31線断面図、
図3(c)は、
図3(a)の対向基板302を含む32−32線断面図である。
【0022】
アレイ基板301は、その表面には配向膜(図示せず)が形成されている。ここで、配向膜のラビング処理の方向は、
図3(a)に示すように、配向制御電極402と直交する方向である。
【0023】
アレイ基板301を構成するガラス基板401には、第1の電極としての配向制御電極402が形成されている。配向制御電極402は、ITO(インジウム錫酸化物)等の透明電極であり、図示しない液晶レンズユニット300の駆動電源に接続されている。1つの選択表示領域101には少なくとも一対(2つ)の配向制御電極402が形成されている。ここで、
図3(a)に示す液晶レンズユニット300は、1つの選択表示領域101が、図示一点鎖線Aを挟んで図中上側に、固定表示領域102が図中下側に配置された2つの領域に分割されている境界部分の夫々の配向制御電極402´、402´´の形成例を示している。2つの各表示領域101,102を夫々独立して駆動するためには、配向制御電極402は、夫々少なくとも2対(4つ)必要である。
【0024】
対向基板302は、ガラス基板403上に第2の電極としての対向電極404が形成されている。対向電極404は、ITO(インジウム錫酸化物)等の透明電極であり、図示しない液晶レンズユニット300の駆動電源に接続されている。ここで、
図3に示す液晶レンズユニット300は、分割された選択表示領域101と、固定表示領域102の夫々につき、1つの対向電極404´、404´´を形成した例を示している。また、対向基板302は、各対向電極404´、404´´の表面上に配向膜(図示せず)が形成されている。ここで、配向膜のラビング処理の方向は、アレイ基板301側のラビング方向と逆方向である。
【0025】
このような液晶レンズユニット300は、選択表示領域101と固定表示領域102との配向制御電極402と対向電極404とが、各領域101,102毎に独立して形成されているために、夫々の領域101,102を別個に駆動することが可能となる。従って、選択表示領域101の配向制御電極402´及び対向電極404´に印加する駆動電圧の大きさとタイミングを表示パネル200に供給される画像信号と同期をとって制御することにより、2次元表示と3次元表示とを切り替え表示することができる。
【0026】
例えば、配向制御電極402´と対向電極404´とを等電位とするように駆動電圧を印加した状態では、液晶層303には電界が発生しない。したがって、液晶層303中の液晶分子は、
図2(a)に示すように、選択表示領域101中においては、ラビング方向に規制されるように配向する。この場合、液晶層303の屈折率は均一となり、表示パネル200からの画像光は液晶層303中を直進する。この場合には、2次元表示が行われる。この結果、固定表示領域102に2次元表示を行っている場合には、通常の表示装置の2次元表示と同様に、表示領域100全面に亘って2次元の画像表示が行われる。
【0027】
一方、選択表示領域101の配向制御電極402´と対向電極404´との間にのみ電位差を与えるように駆動電圧を印加すると、配向制御電極402´と対向電極404´との間に電界が発生する。例えば、配向制御電極402´の電位を対向電極404´よりも高電位とすると、配向制御電極402´と対向電極404´との間に発生する電界によって、
図2(b)に示すように、選択表示領域101中においては、液晶層303の液晶分子が配向し、配向制御電極402´と対向電極404´との液晶層303の屈折率が小さくなる。このため、配向制御電極402´の間の液晶層303の屈折率分布が変化して液晶層303がレンズとして機能する。従って、視差を有する画像を表示パネル200の選択表示領域101に対応する領域に表示させ、視差を有する画像のそれぞれを、液晶レンズユニット300を通して観察者の異なる目に入射させることにより、選択表示領域101に部分3次元表示が行われる。その際、固定表示領域102にも3次元表示を行わせるように構成すれば、全面3次元表示とさせることもでき、また、この場合に、選択表示領域101に2次元表示を行わせるようにすれば、部分2次元表示とさせることも可能である。
【0028】
図3(a)で示す液晶レンズユニット300は、一点鎖線Aを挟んで配向制御電極402と対向電極404とが形成され、このような構成により、一点鎖線Aよりも上側の領域と一点鎖線Aよりも下側の領域とで独立して2次元表示/3次元表示の切り替えが可能である。
【0029】
ここで、一点鎖線Aよりも上側の領域で2次元表示を行い、一点鎖線Aよりも下側の領域で3次元表示を行う場合等、各領域の駆動の仕方によっては、選択表示領域101と固定表示領域102間の境界部分に形成された配向制御電極402間や対向電極404間にも不要な電位差が生じる場合がある。この各表示領域101,102間で不要な電位差が発生すると考えられるケースは、選択表示領域101と固定表示領域101に夫々異なる表示形態の2次元及び3次元表示を行う場合に不要な電位差が発生する。表示領域100の全面に同一表示形態の画像表示を行う場合には、特に考慮する必要はない。例えば、一点鎖線Aよりも上側の領域に形成された対向電極404´と一点鎖線Aよりも下側の領域に形成された対向電極404´´との間に電位差が生じると、対向電極404´、404´´間にも電界(横電界)が発生する。このような横電界が発生すると、
図4に示すようなレンズ状の液晶分子の配向が生じ、この配向によって液晶層303の屈折率分布に変化を与えてしまう。この結果、表示領域101と102との境界部分においてレンズ効果により、配向制御電極402´、402´´間の隙間を通して液晶レンズユニット300の下側に配置されている表示パネル200に表示されている画像の一部が拡大表示されてしまい、表示品位の低下をきたす虞がある。
【0030】
ところで、一般に、電界は、電極間の電位差に比例し、電極間の距離に反比例することが知られている。したがって、
図4に示すような横電界を抑えるためには、配向制御電極402´、402´´間の距離及び対向電極404´、404´´間の距離を長くするか、配向制御電極402´、402´´間の電位差及び対向電極404´、404´´間の電位差を小さくすれば良い。
【0031】
しかしながら、2次元表示と3次元表示とを混在させて表示する場合には、境界部分における2次元表示と3次元表示との間の電位差が大きくなり過ぎて、単純に電位差だけを小さくすることはできない。また、境界部分間の距離(間隔)を単に大きくした場合には、境界部分に占める非表示領域(空間部分)の面積が大きくなり、表示領域100の全面に同一表示形態の画像を表示した場合に、この非表示領域が枠状に視認されてしまうために、表示品位を低下させてしまうことになる。
【0032】
出願人は、屈折率変化の影響を許容できるような配向制御電極402´、402´´間の距離及び対向電極404´、404´´間の距離と配向制御電極402´、402´´間の電位差及び対向電極404´、404´´間の電位差との条件の検討を行った。
【0033】
図5は、屈折率変化の影響を許容できるような配向制御電極402´、402´´間の距離及び対向電極404´、404´´間の距離と配向制御電極402´、402´´間の電位差及び対向電極404´、404´´間の電位差との条件の検討のためのシミュレーションに使用したモデルを示す図である。
図5に示すモデルにおいては、特にレンズ状の液晶分子の配向を抑制するために、対向電極404´、404´´間の距離及び電位差の条件を変化させている。この場合、配向制御電極402´、402´´間の電位差は一定と考える。配向制御電極402´、402´´間の距離及び電位差の条件を変化させた場合も、以下の結果と同様の結果が得られると予想される。
【0034】
図6は、表示領域101,102との境界部分において互いに隣接する対向電極404´、404´´の間の距離(間隔)pを変化させた場合の対向電極404´、404´´間の屈折率変化値の分布を示す図である。ここで、
図6は、対向電極404´、404´´間の距離pの2等分位置を基準位置0とし、この基準位置0に対して図示y方向の±0.2mmの範囲の屈折率変化値の分布を示している。即ち、
図6の横軸yは、基準位置0からの位置変化量を示し、
図6の縦軸は、屈折率変化値を示している。ここで、本シミュレーションにおける屈折率変化値とは、屈折率変化が最大となるy=−0.2mm(又はy=+0.2mm)における屈折率との差である。また、隣接する対向電極404´、404´´の間の電位差ΔVは3Vで一定としている。さらに、対向電極404´、404´´の間の距離pは、20μm、100μm、200μmに設定してシミュレーションを行った。
【0035】
図6に示すように、対向電極404´、404´´の間の距離pが20μm、100μm、200μmの何れの場合においても、基準位置0における屈折率変化値が最大となる。さらに、距離pが長くなるほど、屈折率変化値が小さくなり、距離pが200μmの場合には、屈折率変化値がほぼゼロとなる。この
図6を考察すると、対向電極404´、404´´間の距離pを大きくすれば、それだけ屈折率変化を少なくすることができるので、液晶分布の不要な配向を制御し得ることが分かる。
【0036】
また、
図7は、対向電極404´、404´´の間の電位差ΔVを変化させた場合の対向電極404´、404´´間の屈折率変化値の分布を示す図である。
図7も
図6と同様、対向電極404´、404´´間の距離pの2等分位置を基準位置0とし、この基準位置0に対して±0.2mm上下方向(実際にはマイナス方向)の範囲の屈折率変化値の分布を示している。また、対向電極404´、404´´の間の距離pは20μmで一定としている。さらに、対向電極404´、404´´の間の電位差ΔVは、1V、2V、3V、4Vとしてシミュレーションを行った。
【0037】
図7に示すように、対向電極404´、404´´の間の電位差ΔVが1V、2V、3V、4Vの何れの場合においても、基準位置0における屈折率変化値が最大となる。さらに、電位差ΔVが大きくなるほど、屈折率変化値が大きくなり、電位差ΔVが1Vの場合に屈折率変化値がほぼゼロとなる。この
図7を考察すると、対向電極404´、404´´間の電位差ΔVを小さくすれば、それだけ屈折率変化を少なくすることができるので、液晶分布の不要な配向を抑制し得ることが分かる。
【0038】
そこで、さらに詳細に検討するために、対向電極404´、404´´間の距離p及び電位差ΔVの範囲を拡大して測定した結果を表1に示す。
【表1】
【0039】
図8は、この表1の結果を最大屈折率変化値としてグラフにまとめたものである。ここで、最大屈折率変化値とは、y=0における屈折率変化値を示している。
図8においても示すように、距離pが大きくなるか、又は電位差ΔVを小さくすることにより、最大屈折率変化値が小さくなる。屈折率変化値を許容できると判断するための閾値である最大許容屈折率変化値を、例えば、目視によって表示品位の低下をきたさないと判断された−0.01とした場合、屈折率変化値を−0.01よりも大きくするように距離p及び電位差ΔVを設定すれば、対向電極404´、404´´間の屈折率変化が選択表示領域101に固定表示領域102とは異なる画像形態の表示を行っても、当該表示領域101,102間の境界部分における不要な画像の発生などの表示品位に影響を与えることが殆ど無いことが判明した。
【0040】
表1及び
図8のグラフの結果から、最大許容屈折率変化値を−0.01とした場合、以下の式1の関係をほぼ満足するように、対向電極404´、404´´間の距離pと電位差ΔVとの関係を設定することにより、対向電極404´、404´´間の屈折率変化が選択表示領域101に固定表示領域102とは異なる表示形態の画像を表示させる場合においても表示品位に悪影響を与えることが殆ど無いことが導き出された。
ΔV≦0.0125×p+1.25+n
(式1)
なお、式1中のΔVは許容される電位差、pは対向電極間の距離(μm)、0.0125と1.25は表1の測定結果に基づいて導き出された係数、nは仕様変更等に対応させるための補正値(0を含む)を表わす。
【0041】
(式1)は、最大許容屈折率変化値を目視評価で合格とされる−0.01とした場合の例である。この場合の補正値nは0に設定されている。最大許容屈折率変化値を−0.01と異ならせた場合においても、ΔVとpとの関係は式1で近似される。
【0042】
以上説明したように、本実施形態によれば、選択表示領域101と固定表示領域102との境界部分に位置する各配向制御電極402及び各対向電極404が隣接して複数形成される液晶レンズユニット300において、各配向制御電極402の間の距離及び電位差と各対向電極404の間の距離及び電位差を適切な値に設定することにより、境界部分を挟んで隣接する各配向制御電極402の間や、同じく隣接する各対向電極404の間の電界の発生を抑制して選択表示領域101と固定表示領域102との境界部分における不要な屈折率変化を抑えることが可能である。これにより、良好な特性の液晶レンズを形成することが可能である。
【0043】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。