特許第5789583号(P5789583)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5789583
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】自走式防除機
(51)【国際特許分類】
   B60P 3/30 20060101AFI20150917BHJP
   A01M 7/00 20060101ALI20150917BHJP
   B62D 33/06 20060101ALI20150917BHJP
   B62D 25/08 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   B60P3/30
   A01M7/00 D
   B62D33/06 A
   B62D25/08 A
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-226976(P2012-226976)
(22)【出願日】2012年10月12日
(65)【公開番号】特開2014-76789(P2014-76789A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2014年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141174
【氏名又は名称】株式会社丸山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】松嵜 一公
【審査官】 林 政道
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−297546(JP,A)
【文献】 特開平10−297281(JP,A)
【文献】 特開2002−283837(JP,A)
【文献】 特開平11−140814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 3/30
A01M 7/00
B62D 25/08
B62D 33/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体(1)を構成し、前後方向に延びる機体フレーム(4)と、
前記機体フレーム(4)上に設けられ、前方及び上方へ開放された形状の凹部が薬剤タンク側凹部(8b)として形成された薬剤タンク(8)と、
前記薬剤タンク側凹部(8b)に配置される座席(31)と、
前記機体フレーム(4)上及び前記薬剤タンク(8)の前側の部分に隣接して設けられ、前記座席(31)を収容するキャビン(7)と、を備える自走式防除機(10)であって、
前記キャビン(7)は、前記薬剤タンク(8)に対向する部分を塞ぐ仕切り壁(29)を備え、
前記仕切り壁(29)は、前記薬剤タンク側凹部(8b)に収容されると共に前記座席(31)を収容するように凹む凹部を仕切り壁側凹部(29a)として有する、自走式防除機(10)。
【請求項2】
前記仕切り壁(29)は、前記薬剤タンク(8)又は前記機体フレーム(4)に連通する開口部(29c)を有し、
前記座席(31)は、前記開口部(29c)を介して前記薬剤タンク(8)又は前記機体フレーム(4)に固定され、
前記座席(31)と前記仕切り壁(29)との間には、前記キャビン(7)内を気密に保つための封止部材(33)が、前記開口部(29c)を囲繞して設けられている、請求項1記載の自走式防除機(10)。
【請求項3】
前記開口部(29c)は、前記仕切り壁側凹部(29a)の平面部(29b)に設けられている、請求項2記載の自走式防除機(10)。
【請求項4】
前記仕切り壁(29)は、前記座席(31)を収容する前記仕切り壁側凹部(29a)のその平面部を構成する底壁(29b)に、前記薬剤タンク側凹部(8b)に連通する前記開口部(29c)を有し、
前記開口部(29c)には、座席固定具(32)が配置され、
前記座席固定具(32)は、前記開口部(29c)を前記キャビン(7)側である上側から塞ぐ閉塞部(32a)と、前記開口部(29c)に進入して前記薬剤タンク側凹部(8b)に当接する部分(32b)とを有し、
前記座席(31)は、前記座席固定具(32)上に載置され、前記座席固定具(32)を貫通する締結手段(34)により前記薬剤タンク側凹部(8b)に取り付けられており、
前記座席固定具(32)の前記閉塞部(32a)と前記底壁(29b)との間には、前記キャビン(7)内を気密に保つための封止部材(33)が、前記開口部(29c)を囲繞して設けられている、請求項2又は3記載の自走式防除機(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走式防除機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作物に対して農薬等の薬剤を散布するための自走式防除機が知られている(例えば、特許文献1参照)。自走式防除機は、車体の前部に座席を収容するキャビンを有し、その後方に薬剤タンクを有しているのが通常である。自走式防除機は、狭い場所における旋回性を確保するために車体の前後方向の全長を小さくすることが望ましく、特許文献1に記載された自走式防除機にあっては、薬剤タンクの下部を、薬剤タンクを搭載する機体フレームに沿って車体の前方へ張り出した形状とし、この薬剤タンクの張出し部分に座席を設置する凹部を設け、キャビン内に進入させることにより、車体の前後方向の全長を小さくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−283837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような自走式防除機では、キャビンの薬剤タンクに当接する部分を、特許文献1のように薬剤タンクの上面に固定させる。しかしながら、この場合、キャビンと薬剤タンクとの間に隙間が生じるため、その結果、キャビンの密封性が低下する。
【0005】
そこで本発明は、薬剤タンクに凹部を設け、この凹部に座席を配置した場合に、キャビン内の空間の有効利用を図りつつ、キャビンの密封性を確保できる自走式防除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の自走式防除機(10)は、車体(1)を構成し、前後方向に延びる機体フレーム(4)と、機体フレーム(4)上に設けられ、前方及び上方へ開放された形状の凹部が薬剤タンク側凹部(8b)として形成された薬剤タンク(8)と、薬剤タンク側凹部(8b)に配置される座席(31)と、機体フレーム(4)上及び薬剤タンク(8)の前側の部分に隣接して設けられ、座席(31)を収容するキャビン(7)と、を備える自走式防除機(10)であって、キャビン(7)は、薬剤タンク(8)に対向する部分を塞ぐ仕切り壁(29)を備え、仕切り壁(29)は、薬剤タンク側凹部(8b)に収容されると共に座席(31)を収容するように凹む凹部を仕切り壁側凹部(29a)として有する。
【0007】
この自走式防除機(10)によれば、キャビン(7)のうち、薬剤タンク側凹部(8b)に対向する部分が仕切り壁(29)により塞がれているため、キャビン(7)の密封性が確保される。また、仕切り壁(29)に設けられた仕切り壁側凹部(29a)が、薬剤タンク側凹部(8b)に収容されると共に座席(31)を収容するように凹んでいるため、仕切り壁側凹部(29a)に座席(31)を設けることで、キャビン(7)内の空間を有効利用することができる。
【0008】
ここで、仕切り壁(29)は、薬剤タンク(8)又は機体フレーム(4)に連通する開口部(29c)を有し、座席(31)は、開口部(29c)を介して薬剤タンク(8)又は機体フレーム(4)に固定され、座席(31)と仕切り壁(29)との間には、キャビン(7)内を気密に保つための封止部材(33)が、開口部(29c)を囲繞して設けられていることが好ましい。これによれば、座席(31)を固定するための部材をキャビン(7)内に配置する必要がなく、キャビン(7)内の空間を一層有効利用することができる。また、座席(31)と仕切り壁(29)との間には、キャビン(7)内を気密に保つための封止部材(33)が開口部(29c)を囲繞して設けられているため、キャビン(7)の密封性を確保できる。
【0009】
上記開口部(29c)は、仕切り壁側凹部(29a)の平面部(29b)に設けられていることが好ましい。これによれば、封止部材(33)によるキャビン(7)の密封性を容易に確保できる。
【0010】
また、仕切り壁(29)は、座席(31)を収容する仕切り壁側凹部(29a)のその平面部を構成する底壁(29b)に、薬剤タンク側凹部(8b)に連通する開口部(29c)を有し、開口部(29c)には、座席固定具(32)が配置され、座席固定具(32)は、開口部(29c)をキャビン(7)側である上側から塞ぐ閉塞部(32a)と、開口部(29c)に進入して薬剤タンク側凹部(8b)に当接する部分(32b)とを有し、座席(31)は、座席固定具(32)上に載置され、座席固定具(32)を貫通する締結手段(34)により薬剤タンク側凹部(8b)に取り付けられており、座席固定具(32)の閉塞部(32a)と底壁(29b)との間には、キャビン(7)内を気密に保つための封止部材(33)が、開口部(29c)を囲繞して設けられていることが好ましい。これによれば、開口部(29c)に配置された座席固定具(32)のその上に載置された座席(31)が、座席固定具(32)を貫通する締結手段(34)により薬剤タンク側凹部(8b)に取り付けられているため、座席(31)を固定するための部材をキャビン(7)内に配置する必要がなく、キャビン(7)内の空間を一層有効利用することができる。また、座席固定具(32)の閉塞部(32a)と仕切り壁側凹部(29a)の底壁(29b)との間には、キャビン(7)内を気密に保つための封止部材(33)が開口部(29c)を囲繞して設けられているため、キャビン(7)の密封性を確保できる。また、通常、仕切り壁側凹部(29a)の底壁(29b)は平面をなしているため、封止部材(33)によるキャビン(7)の密封性を容易に確保できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、薬剤タンクに凹部を設け、この凹部に座席を配置した場合に、キャビン内の空間の有効利用を図りつつ、キャビンの密封性を確保できる自走式防除機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態の自走式防除機の側面図である。
図2図1中の車体の斜視図である。
図3】薬剤タンク及び機体フレームの上方斜視図である。
図4】キャビンの分解斜視図である。
図5】キャビンフレーム、座席関連部材、仕切り壁、薬剤タンク及び機体フレームの分解斜視図である。
図6】座席固定具を備えた座席の下方斜視図である。
図7】設置した座席及びその周辺の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
図1は、本実施形態の自走式防除機10の側面図である。自走式防除機10は、車体1と車輪2と散布ブーム3とを有し、薬液散布を行う乗用型ブームスプレーヤである。車体1は、前後方向に延びる機体フレーム4を有しており、その下面の前後部分からそれぞれ左右一対の車軸5が下方に延び、各車軸5の先端に車輪2が取り付けられている。
【0015】
図2は、自走式防除機10から車輪2及び散布ブーム3を取り外した車体1の斜視図である。図1及び図2に示されるように、車体1には、各車輪2を駆動するためのエンジンを内蔵するエンジンルーム6が機体フレーム4の上面後部に配置され、座席31を収容したキャビン7が機体フレーム4の上面前部に配置されている。また、機体フレーム4の前後方向中間部には薬剤タンク8が配置されている。なお、図2では、キャビン7に収容された座席31が見えるように、キャビン7から窓及びドアを取り除いた状態としている。
【0016】
ここで、薬剤タンク8は、その下部が機体フレーム4に沿って前方へ張り出した張出し部分8aを有しており、薬剤タンク8の前側の部分に隣接しキャビン7の骨格を構成するキャビンフレーム21(図5参照)の後部且つ下部が、薬剤タンク8の張出し部分8aの形状に倣い湾曲されて凹んだ形状とされている。
【0017】
機体フレーム4の前端部には、車体1の前後方向に対して垂直且つ水平な方向に横架されたセンターブーム9を介して、散布ブーム3が取り付けられている。散布ブーム3は、薬剤としての薬液を散布するためのものであり、薬液散布を行わないときには折り畳まれ、図1に示されるように車体1に対して側方位置に斜め後ろ上がりの状態で格納されている。薬液散布を行うときには、散布ブーム3をセンターブーム9に対して一直線状となるように広げる。
【0018】
車体1は、乗降性を向上させるためのサイドフロア11を備えている。サイドフロア11は、機体フレーム4の左右両側縁部から側方に張り出した部分であり、格子状に構成され、キャビン7の出入り口から機体フレーム4の後端まで延びている。また、サイドフロア11の後部には、作業者がサイドフロア11に乗降するための乗降用ステップ12が設けられている。
【0019】
また、車体1には、車体1両側のサイドフロア11の後部からそれぞれ立ち上がってエンジンルーム6の高さ程度に延びて前方に折れ曲がり、薬剤タンク8の頂部に前部が固定された一対の手すり13,13がそれぞれ設けられている。
【0020】
図3は、薬剤タンク8及び機体フレーム4の上方斜視図、図4は、キャビン7の分解斜視図である。図3に示されるように、薬剤タンク8は、前述のとおりその下部が機体フレーム4に沿って前方へ張り出した張出し部分8aを有しており、この張出し部分8aに、前方及び上方へ開放され座席31に対応する形状の凹部が薬剤タンク側凹部8bとして形成されている。薬剤タンク側凹部8bを構成する底壁8cには、座席31を取り付けるための薬剤タンク側めねじ部8dが複数設けられている。
【0021】
また、機体フレーム4は、左右両側で前後方向に延びる一対の骨格部材4a,4aのうち、薬剤タンク8が配置された位置よりも前方に延びる部分には、キャビン7を固定するためのボルト用穴4bが設けられており、更に、一対の骨格部材4a,4aの前部に架け渡されるように設けられた骨格部材4cには、キャビン7を固定するための機体フレーム側ブラケット4dが両側に複数立設されている。
【0022】
また、前述した薬剤タンク8の頂部に固定された一対の手すり13,13には、その先端部に、キャビンを固定するためのめねじ部13a,13aがそれぞれ設けられている。
【0023】
図4に示されるように、キャビン7は、キャビン7の骨格を形成するキャビンフレーム21に対し、ルーフ22、前面ガラス23、フロントパネル24、ドア25、側面ガラス26、後面ガラス27、床板28、仕切り壁29が取り付けられた構成とされている。
【0024】
キャビンフレーム21は、ルーフ22を設置する平面視矩形の枠体21aと、枠体21aの前後方向における前部、中間部、後部からそれぞれ下方へ向けて延びる左右一対の前部骨格部材21b,21b、左右一対の中間部骨格部材21c,21c、及び左右一対の後部骨格部材21d,21dとを有している(図5も参照)。
【0025】
後部骨格部材21dは、枠体21aの後部から下方に延びた後、薬剤タンク8の張出し部分8aの形状に倣うように湾曲されて前方且つ下方へ延びて中間部骨格部材21cに連結され、更に、床板28が設置される底部連結骨格部材21eまで延びて前部骨格部材21bに連結される形状とされている。後部骨格部材21dの湾曲が始まる位置には、左右一対の後部骨格部材21d,21d間に架け渡される後部連結骨格部材21fが設けられている。また、前部骨格部材21bは枠体21aから下方へ向けて延びた後、湾曲されて後方且つ下方へ延び、前述の底部連結骨格部材21eまで延びて後部骨格部材21dと連結される。また、前部骨格部材21bの湾曲が始まる直前部分には、左右一対の前部骨格部材21b,21b間に架け渡される前部連結骨格部材21gが設けられている。
【0026】
そして、枠体21aの上部にはルーフ22が設置され、枠体21aの前部、左右一対の前部骨格部材21b,21b及び前部連結骨格部材21gで囲まれる領域には、前面ガラス23が取り付けられ、前部連結骨格部材21g、左右一対の前部骨格部材21b,21b及び底部連結骨格部材21eで囲まれる領域には、フロントパネル24が取り付けられている。
【0027】
また、枠体21aの側部、前部骨格部材21b、中間部骨格部材21c、及び後部骨格部材21dで囲まれる領域には、ドア25が取り付けられ、枠体21aの側部、中間部骨格部材21c及び後部骨格部材21dで囲まれる領域には、側面ガラス26が取り付けられ、枠体21aの後部、左右一対の後部骨格部材21d,21d及び後部連結骨格部材21fで囲まれる領域には、後面ガラス27が取り付けられている。
【0028】
そして、後部連結骨格部材21f、左右一対の後部骨格部材21d,21d及び底部連結骨格部材21eで囲まれる領域には、仕切り壁29が取り付けられている。この仕切り壁29は、座席31を収容する形状とされており、薬剤タンク側凹部8bに収容されるように凹む凹部を仕切り壁側凹部29aとして有している。そして、仕切り壁29は、キャビン7の後部且つ下部(キャビン7のうち、薬剤タンク側凹部8bに対向する部分)を塞いでいる。
【0029】
キャビンフレーム21は、左右一対の後部骨格部材21d,21dの湾曲が始まる位置に、キャビン7と手すり13の先端部とを連結するための第1のキャビン側ブラケット7a,7aがそれぞれ設けられている。また、左右一対の後部骨格部材21d,21dのうち、底部連結骨格部材21eまで延びた部分の下部には、キャビン7を機体フレーム4に固定するための第2のキャビン側ブラケット7b,7bがそれぞれ設けられている。更に、左右一対の前部骨格部材21b,21bのうち、湾曲されて後方且つ下方へ延びている部分には、キャビン7を機体フレーム4に固定するための第3のキャビン側ブラケット7c,7cがそれぞれ設けられている。そして、第1のキャビン側ブラケット7aがめねじ部13aにねじ止めされ、第2のキャビン側ブラケット7bが骨格部材4aに対してボルト用穴4bを用いてねじ止めされ、第3のキャビン側ブラケット7cが機体フレーム側ブラケット4d,4dに対してねじ止めされることにより、キャビン7が機体フレーム4に固定されると共に、手すり13の先端部と連結される。
【0030】
図5は、キャビンフレーム21、座席関連部材(座席31、座席固定具32、封止部材33、締結手段34)、仕切り壁29、薬剤タンク8及び機体フレーム4の分解斜視図である。仕切り壁29は、その仕切り壁側凹部29aの内側に座席31を収容し、仕切り壁側凹部29aのうち、平面をなしている底壁29bには、薬剤タンク側凹部8bに連通する開口部29cが設けられている。座席31は、この開口部29cに進入する座席固定具32を介して薬剤タンク側凹部8bに取り付けられている。
【0031】
図6は、座席固定具32を備えた座席31の下方斜視図、図7は、設置した座席31及びその周辺の断面図である。図6に示されるように、座席31の下部側には座席取付け部材31aが配置されており、座席31は、この座席取付け部材31aにより、軸31bを介して回動を許容されるように前側下部を支持されている。座席取付け部材31aの下方には、座席固定具32が配置されている。
【0032】
座席固定具32は、キャビン7側である上部から開口部29cを塞ぐ平板上の天板(閉塞部)32aと、天板32aの座席31とは反対側となる面(以下、裏面と称する)に、矩形環状をなし、且つ開口部29cに進入して薬剤タンク側凹部8bの底壁8cに当接するように設けられた突出部(薬剤タンク側凹部に当接する部分)32bと、を一体に形成したものである。この座席固定具32には、座席31の締結手段である座席固定ボルト34が通されるボルト用穴32cが、薬剤タンク側めねじ部8dに対応する位置に設けられている。また、座席取付け部材31aにも同様に、薬剤タンク側めねじ部8dに対応する位置にボルト用穴が設けられている。底壁8cにおける薬剤タンク側めねじ部8dを形成する部分8pは、上下方向に厚肉とされ、この厚肉部8pにナットをインサートすることにより薬剤タンク側めねじ部8dが形成されている。
【0033】
天板32aのうち座席31と同じ側の面の後部側には、座席31の後部を受け止めて支持する左右一対のクッションゴム32d,32dが天板32aの裏面からボルト締めで取り付けられている。クッションゴム32dは、その頂部が座席の座面裏側後部に当接され、運転者の体重を支える。
【0034】
そして、座席31は、図7に示されるように、座席固定ボルト34が座席取付け部材31aのボルト用穴、座席固定具32のボルト用穴32cに通され、薬剤タンク側めねじ部8dに螺合することで、座席取付け部材31a及び座席固定具32が共締めされて薬剤タンク側凹部8bの底壁8cに取り付けられている。
【0035】
また、天板32aの裏面における突出部32bの外側の部分と仕切り壁29の底壁29bとの間には、キャビン7内を気密に保つための封止部材33が環状に設けられている。この封止部材33は、ここではパッキンとされ、開口部29cを囲繞するように設けられている。
【0036】
以上のように構成された本実施形態の自走式防除機10によれば、キャビン7のうち、薬剤タンク側凹部8bに対向する部分が仕切り壁29により塞がれているため、キャビン7の密封性が確保される。これにより、散布した薬液がキャビン7と薬剤タンク8との隙間からキャビン7内に侵入することを防止でき、また、キャビン7内の空調に関し、冷暖房等の効率が向上する。また、仕切り壁29に設けられた仕切り壁側凹部29aが、薬剤タンク側凹部8bに収容されると共に座席31を収容するように凹んでいるため、仕切り壁側凹部29aに座席31を設けることができる。すなわち、薬剤タンク8に凹部を設け、この凹部に座席を配置した自走式防除機10において、キャビン7内の空間を有効利用することができる。
【0037】
また、仕切り壁29の開口部29cに配置された座席固定具32のその上に載置された座席31が、座席固定具32を貫通する座席固定ボルト34により薬剤タンク側凹部8bの底壁8cに取り付けられているため、座席を固定するための部材をキャビン7内に配置する必要がなく、キャビン7内の空間を一層有効利用することができる。これと同時に、キャビンフレーム21の構造が簡素且つ軽量となるため、コストの低減が図られ、自走式防除機10の走行性能も向上される。更に、座席固定具32と仕切り壁側凹部29aの底壁29bとの間には、キャビン7内を気密に保つための封止部材33が開口部29cを囲繞して設けられているため、キャビン7の密封性を確保できる。またこのとき、仕切り壁側凹部29aの底壁29bは平面部とされているため、封止部材33によるキャビン7の密封性を容易に確保できる。
【0038】
更に、キャビン7の設置を、車体1の左右片側あたり、機体フレーム4の二箇所、及び薬剤タンク8の頂部に固定された手すり13の先端部一箇所の計三箇所で固定することにより行っているため、キャビン7の荷重が分散され、機体フレーム4に曲げモーメントが集中することを緩和できる。これと同時に、機体フレーム4を高強度化する必要性が小さくなり、コストの低減が図られる。また、薬剤タンク8の下部を機体フレーム4に沿って車体1の前方へ張り出した形状としているため、車体1の前後方向の全長が小さくなり、狭い場所における旋回性を確保できる。
【0039】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、自走式防除機として、薬液散布を行う乗用型ブームスプレーヤの例を示したが、キャビンを密閉する必要のあるものであれば、本発明を他の自走式防除機に適用してもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、薬剤タンク側凹部8bの座席31を収容する部分が底壁8cを有する形状である例を示したが、薬剤タンク側凹部8bの座席31を収容する部分には底壁がなく(例えば薬剤タンク8が平面視コの字状となる形状とされ)座席31が機体フレーム4に固定される態様としてもよい。
【0041】
なお、上記実施形態で示した態様によれば、キャビン内の空間の有効利用を図るべく、座席を開口部を通じて薬剤タンク側凹部(上述の例であれば機体フレーム4)に固定しているが、仕切り壁に開口部を設けることなくキャビンを密封し、座席を固定するための部材をキャビン内に配置することも考えられる。
【符号の説明】
【0042】
1…車体、4…機体フレーム、7…キャビン、8…薬剤タンク、8a…張出し部分、8b…薬剤タンク側凹部、10…自走式防除機、29…仕切り壁、29a…仕切り壁側凹部、29b…底壁、29c…開口部、31…座席、32…座席固定具、32a…天板(閉塞部)、32b…突出部(薬剤タンク側凹部に当接する部分)、33…封止部材、34…座席固定ボルト(締結手段)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7