特許第5789637号(P5789637)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5789637
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】液晶組成物及びその応用
(51)【国際特許分類】
   C09K 19/42 20060101AFI20150917BHJP
   C09K 19/38 20060101ALI20150917BHJP
   C09K 19/30 20060101ALI20150917BHJP
   C09K 19/34 20060101ALI20150917BHJP
   C09K 19/12 20060101ALI20150917BHJP
   C09K 19/18 20060101ALI20150917BHJP
   C09K 19/20 20060101ALI20150917BHJP
   C09K 19/14 20060101ALI20150917BHJP
   C09K 19/54 20060101ALI20150917BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   C09K19/42
   C09K19/38
   C09K19/30
   C09K19/34
   C09K19/12
   C09K19/18
   C09K19/20
   C09K19/14
   C09K19/54 B
   G02F1/13 500
【請求項の数】20
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2013-103425(P2013-103425)
(22)【出願日】2013年5月15日
(65)【公開番号】特開2013-237842(P2013-237842A)
(43)【公開日】2013年11月28日
【審査請求日】2013年5月15日
(31)【優先権主張番号】201210151896.4
(32)【優先日】2012年5月16日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】511243750
【氏名又は名称】深▲セン▼超多▲維▼光▲電▼子有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ウ クン
(72)【発明者】
【氏名】リ ジュアン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】グエ ヂャン
(72)【発明者】
【氏名】ソン レイ
(72)【発明者】
【氏名】リウ ニン
【審査官】 古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第102433133(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第102352260(CN,A)
【文献】 国際公開第2012/053421(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 19/42
C09K 19/12
C09K 19/14
C09K 19/18
C09K 19/20
C09K 19/30
C09K 19/34
C09K 19/38
C09K 19/54
G02F 1/13
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物の総質量の100%に対して、
式I4−5、式I4−6、式I6−2、式I6−3、式I6−4、式I5−2、式I5−3、式I5−4、式I5−8、式I5−9で表される化合物から選ばれる三種以上の化合物であるネマチック液晶化合物20−44%と、
式IIで表されるネマチック液晶化合物23−40%と、
式IIIで表されるネマチック液晶化合物19−39%と、
式IVで表されるネマチック液晶化合物0−5%と、
式Vで表されるネマチック液晶化合物0−10%と、を含むことを特徴とする液晶組成物。


式中、R3及びR4は、互いに独立して、C1-10のアルキル、C1-10のアルコキシ、−NCS、−CN又は−Fであり、K3、K4は互いに独立して、水素又はフッ素であり、Zは−COO−、−C≡C−又は−CH2CH2−であり、
式中、R5及びR6は、互いに独立して、C1-10のアルキル、C1-10のアルコキシ、−NCS、−CN又は−Fであり、K5、K6、K7、K8、K9及びK10は互いに独立して、水素又はフッ素であり、
式中、R7及びR8は、互いに独立して、C1-10のアルキル、C1-10のアルコキシ、−NCS、−CN又は−Fであり、K11、K12、K13、K14、K15及びK16は互いに独立して、水素又はフッ素であり、
Xは、炭素−炭素単結合を表し、Yは、−C≡C−を表し、
式中、R9及びR10は、互いに独立して、C1-10のアルキル、C1-10のアルコキシ、−C=CH2、C1-10置換アルコキシ、−NCS、−CN又は−Fであり、K17及びK18は互いに独立して、水素又はフッ素であり、
【請求項2】
前記式IIで表される化合物中のR3はC1-10のアルキルであり、R4は−NCS、−CN又は−Fであることを特徴とする請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項3】
前記式IIで表される化合物中のR3はC1-10のアルキルであり、R4は−NCSであり、K3、K4はフッ素であり、Zは−C≡C−であることを特徴とする請求項2に記載の液晶組成物。
【請求項4】
前記式IIで表される化合物は、下記の群から選択される、1種または2種以上の化合物であることを特徴とする請求項2に記載の液晶組成物。


【請求項5】
前記式IIで表される化合物は、II2−2、II2−3及びII2−4で表される化合物から選択される2種以上であることを特徴とする請求項4に記載の液晶組成物。
【請求項6】
前記式IIIで表される化合物中のR5はC1-10のアルキルであり、R6はC1-10のアルキル、−NCS、−CN又は−Fであることを特徴とする請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項7】
前記式IIIで表される化合物中のR5はC1-10のアルキルであり、R6は−NCSであり、K5、K6、K7及びK8は水素であり、K9及びK10はフッ素であり、
【請求項8】
前記式IIIで表される化合物は、下記の群から選択される、1種または2種以上の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の液晶組成物。


【請求項9】
前記式IIIで表される化合物は、式III1−2、式III1−3、式III2−1、式III2−2及び式III2−3で表される化合物から選択される、四種以上のものであることを特徴とする請求項8に記載の液晶組成物。
【請求項10】
前記式IVで表される化合物中のR7はC1-10のアルキルであり、R8はC1-10のアルキル、C1-10のアルコキシ、−NCS、−CN又は−Fであり、Xは炭素−炭素単結合、−C≡C−又は−CH2CH2−であり、Yは炭素−炭素単結合又は−C≡C−であることを特徴とする請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項11】
前記式IVで表される化合物中のR7はC1-10のアルキルであり、R8は−NCSであり、K11及びK12はフッ素であり、K13、K14、K15及びK16は水素であり、
ことを特徴とする請求項10に記載の液晶組成物。
【請求項12】
前記式IVで表される化合物は、下記の群から選択される、1種または2種以上の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の液晶組成物。





【請求項13】
前記式IVで表される化合物はIV2−2であることを特徴とする請求項12に記載の液晶組成物。
【請求項14】
前記式Vで表される化合物中のR9はC1-10のアルキル、C1-10のアルコキシ又は−C=CH2であり、R10はC1-10のアルキル、C1-10のフッ素置換アルコキシ又は−Fであり、

ことを特徴とする請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項15】
前記式Vで表される化合物中のR9はC1-10のアルキル又は−C=CH2であり、R10はフッ素、K17はフッ素、K18は水素であり、
ことを特徴とする請求項14に記載の液晶組成物。
【請求項16】
前記式Vで表される化合物は、下記の群から選択される、1種または2種以上の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の液晶組成物。


【請求項17】
前記式Vで表される化合物は、V3−1、V5−1で表される化合物の一種類であることを特徴とする請求項16に記載の液晶組成物。
【請求項18】
更にキラルドーパント化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれかに記載の液晶組成物の、可変焦点液晶レンズの製造における応用。
【請求項20】
請求項1〜18のいずれかに記載の液晶組成物を含むことを特徴とする、液晶ディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶組成物、特にネマチック液晶組成物に関する。本発明の液晶組成物は、可変焦点液晶レンズ(Liquid Crystal lens)などの領域に応用することができる。
【背景技術】
【0002】
1888年、F.Reinitzerは、有機化合物の融点を測定した際、ある化合物は、溶解後、不透明な混濁状態を経たことを発見し、このような混濁の液体中間相には、晶体と類似な現象を有するため、液晶と名づけられた。20世紀70年代には、大規模な集成回路及び液晶材料の発展に伴って、液晶は、表示方面への応用において、突破的な進展を有し、ねじれネマチック液晶の光電効果を利用して、更に集成回路と連結し、表示機器を製造した。そのため、液晶材料の産業化を実現させ、この種類の液晶材料は、ねじれネマチック液晶ディスプレイ(TN-LCD)材料と呼ばれ、その製品は、主に電子時計及び電卓機に応用される。80年体中期において、超ねじれネマチック液晶ディスプレイ(STN-LCD)材料の開発を成功させ、その製品は、主に、BP機械、携帯電話及びノードパソコンに応用される。1993年に、日本では、薄膜トランジスタ液晶ディスブレイTFT-LCDの生産技術を把握した後、液晶ディスプレイは、飛躍的な進展を始めた。現在、液晶ディスプレイは、表示技術の主流となり、液晶ディスプレイは、多種類の形態で人々の前に表示され、その沢山の製品は、優れる特性を有するので、流行の追及、及びデパートでの注目商品となりつつある。
【0003】
カメラ、携帯電話のカメラ、3D立体映像ディスプレイや位相変調器などの装置は、ズームレンズにより映像を拡大したり、縮小したりして、画像を形成する。伝統的な可変焦点レンズは、複数のレンズグループ(lens group)が設けられ、レンズグループ同士を光軸の方向に沿って移動させることにより、お互いの間隔を変更させるよう、全体のズームを変更させるが、画像形成の距離に影響を与えない。しかし、この種類のレンズは、比較的に遠いレンズグループの移動距離が必要されるため、このような焦点調節の機械装置は、体積が大きく、調節が遅く、焦点調節の範囲が限られ、しかも、コストが高く、装置の駆動消耗エネルギーが高く且つ損失しやすい等の欠点を有する。
【0004】
機械的な焦点調節の方法を代えて、且つ広い範囲でズームを変更させるよう、先行技術では、電界を利用してズームを制御する可変焦点液晶レンズ(Liquid Crystal lens)を開示しており、円孔付きの電極に電圧をかけて特殊の電界を形成することにより、電界での液晶分子を偏向させ、そのため、光に分散又は集合の役割を果たす。実際、一種類の模擬光学素子であり、電極の間に異なる電圧をかけることにより、我々が必要とされる特定の光学レンズ特性を便利に実現させることができる。
【0005】
また、先行技術では、電界を利用してレンズを形成した柱状の液晶レンズラスターは公開され、3D立体ディスプレイを実現させる。透明なガラス基板において、細い条の透明なITO電極がエッチングされ、そして該電極に異なる電圧をかけて電界を形成し、電界で液晶分子を偏向させることにより、入射光の方向を変更させると同時に、電圧の変化及び電極数の変わりにより、柱状の液晶レンズラスターのズーム及び格子の距離等を変更する。
【0006】
柱状の液晶レンズラスターが伝統的な円柱状物理のラスターより優越性を実現させるよう、柱状の液晶レンズラスターは、60Hz、120Hz又はより高い周波数において、自由に切り替えることができるため、高速度の応答性能を有する液晶組成物が必要される。
【0007】
柱状の液晶レンズラスターの応答性能と関連する、液晶組成物の各変数の間には、次の関連式を有する。
関連式一:
Ton=(γ1d2/k11π2)/[(V/Vth)2-1]
関連式二:
Toff1d2/k11π2
式中、γ1は回転粘度、 dは液晶層の厚さ、K11はスプレイ弾性定数、Vは駆動電圧、Vthは閾値電圧である。
【0008】
前記の関係式から分かるように、液晶組成物の回転粘度を下げたり、スプレイ弾性定数を向上したり、液晶層の厚さを低下させたり、することにより、応答時間を縮小することができる。しかし、回転粘度を低下させることにより応答時間を改善させる場合、液晶の弾性定数及び相転移温度のいずれも低下することになり、また、弾性定数を向上すると、閾値電圧及び回転粘度をも増加する傾向がある。同時に、液晶層の厚さを下げると、液晶組成物の複屈折率を増加させ、同様に回転粘度を増加させることになる。よって、応答時間を改善させるよう、三つの影響要素の間のバランス関係を最小限に下げなければならない。
【0009】
例えば、3D立体ディスプレイ用柱状液晶レンズは、レンズ用計算式f=r2/(2Δnd)に準じて、具体的に計算して得られる複屈折率(Δn)は、0.25以上でならければならず、同時に、比較的に小さい粘弾性係数率、広い相転移温度範囲が必要される。式中、rは該レンズの1/2格子距離、Δnは液晶の複屈折率、dは液晶セルのセル厚さを指す。
【0010】
複屈折率(Δn)は、液晶化合物の重要な物理特性の一つである。複屈折率は、大いに液晶分子中のベンゼン構造及びπ結合の末端基に支配される。よって、実際、この性質と分子の誘電異方性とは、関連があり、大きい誘電異方性を有する分子も通常、大きいΔnを有する。しかし、例外の場合も存在する。同系列の化合物からなる組成物において、通常、Δnと組成の濃度との関係を直線性的に示す。従って、イソチオシアナト基、シアノ基、エステル基、アルコキシ基やベンゼンまたはアセチレン結合を含有する液晶は、比較的に大きい光学異方性を有する。普通のTN、STNディスプレイ用混合液晶材料のΔnは、一般的に、0.12〜0.20の間にあり、TFTディスプレイ用液晶材料のΔnは、一般的に、0.065〜0.135の間にあり、PDLC及び多安定ディスプレイ用液晶材料のΔnは、一般的に0.20より大きいことが必要され、一方、3D立体ディスプレイ用液晶レンズ(Liquid Crystal lens)の液晶材料のΔnは、一般的に、0.25より大きいことが必要される。
【0011】
混合液晶材料の各成分の物理性能が異なるため、理想的なパラメータの組み合わせを実現させにくく、よって、液晶単体選択及び成分の配合の面から、更に最適化する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、比較的に大きい複屈折率を有する液晶組成物及びその応用を提供することにある。
本発明によれば、提供した比較的に大きい複屈折率を有する液晶組成物は、同時に、高いネマチック相の上限温度、低いネマチック相の下限温度、低い回転粘度、高応答速度などの特性を有する。
該液晶組成物は、TNディスプレイ、STNディスプレイ、PDLCディスプレイ、多安定ディスプレイ、相変調器及びカメラ、携帯電話のカメラ、液晶シャッター3Dメガネ、3D立体表示液晶回折素子や3D立体映像表示用可変焦点液晶レンズ(Liquid Crystal lens)などの領域に応用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を実現させるため、本発明に用いられる技術案は、次の通りである。
組成物の総質量の100%に対して、
式Iで表されるネマチック液晶化合物0-70%と、
式IIで表されるネマチック液晶化合物0-50%と、
式IIIで表されるネマチック液晶化合物0-50%と、
式IVで表されるネマチック液晶化合物0-30%と、
式Vで表されるネマチック液晶化合物0-30%と、を含むことを特徴とする液晶組成物。
【0014】
該液晶組成物において、式Iで表されるネマチック液晶化合物は、下記である。
式中、R1およびR2は、互いに独立して、C1~10のアルキル、C1~10のアルコキシ、-C=CH2、-NCS、-CN又は-Fであり、K1、K2は互いに独立して、水素又はフッ素であり、

該類の化合物は、極めて低い粘度を有するため、液晶混合物配合の全体の粘度を有効的に下げ、応答速度を向上させることができる。
【0015】
式IIで表されるネマチック液晶化合物は、
であり、
式中、R3、R4は、互いに独立して、C1~10のアルキル、C1~10のアルコキシ、-NCS、-CN又は-Fであり、K3、K4は互いに独立して、水素又はフッ素であり、Zは-COO-、
又は-CH2CH2-である。
示されるネマチック液晶化合物は、適切な複屈折率(0.2-0.35)、相対的に低い回転粘度(100-200mPa.S)及び相対的に低い相転移温度(50-100度)を有する共に、一定のΔε値(3-15)を有するため、動作電圧を下げることができる。
【0016】
式IIIで表されるネマチック液晶化合物は、
であり、
式中、R5、R6は、互いに独立して、C1~10のアルキル、C1~10のアルコキシ、-NCS、-CN又は-Fであり、K5、K6、K7、K8、K9、K10は互いに独立して、水素又はフッ素であり、

III類の化合物は、ジビフェニリルアセチレン類化合物と比べて、高い透明点を有すると共に、大きい複屈折率Δnを有するため、液晶混合組成物のΔnを有効的に改善でき、液晶セルのセル厚さを下げ、応答速度を向上させることができる。
【0017】
式IVで表されるネマチック液晶化合物は、
であり、
式中、R7、R8は、互いに独立して、C1~10のアルキル、C1~10のアルコキシ、-NCS、-CN又は-Fであり、K11、K12、K13、K14、K15及びK16は互いに独立して、水素又はフッ素であり、

X、Yは、互いに独立して、炭素−炭素単結合、-COO-、
又は-CH2CH2-である。
この類の化合物は、適切な複屈折率、適切な透明点、適切な動作電圧を有し、特に、重要なのは、相対的に高い弾性定数K11を有するため、液晶組成物の粘弾性係数を有効的に下げ、応答時間を縮小することができる。
【0018】
式Vで表されるネマチック液晶化合物は、
であり、
式中、R9、R10は、互いに独立して、C1~10のアルキル、C1~10のアルコキシ、-C=CH2、C1-10のフッ素置換アルコキシ、-NCS、-CN又は-Fであり、K17、K18は互いに独立して、水素又はフッ素であり、

この類の化合物は、極めて低い回転粘度を有し、且つ複屈折率がそんなに低くないため、液晶混合システムに添加すると、システムの粘弾性係数率を大幅に下げ、応答時間を向上することができる。
【0019】
本発明の1つの具体的な実施方式において、前記式Iで表される化合物中のR1はC1~10のアルキルであり、R2はC1~10のアルコキシ、-C=CH2、-NCS又は-CNである。
本発明の1つのより具体的な実施方式において、前記式Iで表される化合物中のR1はC1~10のアルキルであり、R2は-C=CH2、-NCS又は-CNであり、K1及びK2は水素又はフッ素であり、
【0020】
具体的に、前記式Iで表される化合物は、下記の群から選択される、1種または2種以上の化合物である。


【0021】
より詳しくは、前記式Iで表される化合物は、式 I4-5、式 I4-6、式 I6-2、式 I6-3、式 I6-4、式 I5-2、式 I5-3、式 I5-4、式 I5-8、式 I5-9で表される化合物から選ばれる三種以上の化合物である。
前記液晶組成物の総質量に対して、前記 Iで表される化合物は20-44%を占める。
【0022】
本発明の一つの具体的な実施方式において、前記式IIで表される化合物中のR3はC1~10のアルキルであり、R4は-NCS、-CN又は-Fである。
本発明の一つのより具体的な実施方式において、前記式IIで表される化合物中のR3はC1~10のアルキルであり、R4は-NCSであり、K3、K4はフッ素であり、Zは
である。
【0023】
具体的に、前記式IIで表される化合物は、下記の群から選択される1種または2種以上の化合物である。



【0024】
より具体的に、前記式IIで表される化合物は、II2-2、II2-3及びII2-4で表される化合物から選択される2種以上のものである。
その中、前記液晶組成物の総質量に対して、前記式IIで表される化合物が23−40%を占める。
【0025】
本発明の一つの具体的な実施方式において、前記式IIIで表される化合物中のR5はC1~10のアルキルであり、R6はC1~10のアルキル、-NCS、-CN又は-Fである。
本発明の一つのより具体的な実施方式において、前記式IIIで表される化合物中のR5はC1~10のアルキルであり、R6は-NCSであり、K5、K6、K7及びK8は水素であり、K9及びK10はフッ素であり、

【0026】
具体的に、前記式IIIで表される化合物は、下記の群から選択される1種または2種以上の化合物である。

【0027】
より具体的に、前記式IIIで表される化合物は、式III1-2、式III1-3、式III2-1、式III2-2及び式III2-3、で表される化合物から選択される、四種以上のものである。
その中、前記液晶組成物の総質量に対して、前記式IIIで表される化合物が19−39%を占める。
本発明の一つの具体的な実施方式において、前記式IVで表される化合物中のR7はC1~10のアルキルであり、R8はC1~10のアルキル、C1~10のアルコキシ、-NCS、-CN又は-Fであり、Xは炭素−炭素単結合、
又は-CH2CH2-であり、Yは炭素−炭素単結合又は
である。
本発明の一つのより具体的な実施方式において、前記式IVで表される化合物中のR7は、C1~10のアルキルであり、R8は-NCSであり、K11和K12はフッ素であり、K13、K14、K15及びK16は水素であり、
Xは炭素−炭素単結合であり、Yは
である。
【0028】
具体的に、前記式IVで表される化合物は、下記の群から選択される、1種または2種以上の化合物である。






【0029】
より具体的に、前記式IVで表される化合物は、IV2-2である。
その中、前記液晶組成物の総質量に対して、前記式IVで表される化合物が0−2%を占める。
本発明の一つの具体的な実施方式において、前記式Vで表される化合物中のR9はC1~10のアルキル、C1~10のアルコキシ又は-C=CH2であり、R10はC1~10のアルキル、C1~10のフッ素置換アルコキシ又は-Fであり、

本発明の一つのより具体的な実施方式において、前記式Vで表される化合物中のR9はC1~10のアルキル又は-C=CH2であり、R10はフッ素、K17はフッ素、K18は水素であり、
【0030】
具体的に、前記式Vで表される化合物は、下記の群から選択される1種または2種以上の化合物である。


【0031】
より具体的に、前記式Vで表される化合物は、V3-1、V5-1で表される化合物の一種類である。
その中、前記液晶組成物の総質量に対して、前記式Vで表される化合物が0−3%を占める。
【0032】
本発明の一つの具体的な実施方式において、前記液晶組成物は、
式Iで表されるネマチック液晶化合物10-45%と、
式IIで表されるネマチック液晶化合物10-45%と、
式IIIで表されるネマチック液晶化合物10-40%と、
式IVで表されるネマチック液晶化合物0-5%と、
式Vで表されるネマチック液晶化合物0-10%と、を含む。
【0033】
本発明の一つの具体的な実施方式において、前記液晶組成物は、
式Iで表されるネマチック液晶化合物20-44%と、
式IIで表されるネマチック液晶化合物23-40%と、
式IIIで表されるネマチック液晶化合物19-39%と、
式IVで表されるネマチック液晶化合物0-2%と、
式Vで表されるネマチック液晶化合物0-3%と、を含む。
【0034】
本発明の一つの具体的な実施方式において、前記液晶組成物は、更にキラルドーパント化合物を含有する。
【0035】
その中、前記ネマチック液晶組成物と前記キラルドーパント化合物の質量比は、100:0.01-100:5.0であり、好ましくは100:0.01-100:2.0である。
【0036】
前記キラルドーパント化合物は、主に以下のCB15、R/S-811、R/S-1011等を含むがそれらに限らない。
【0037】
本発明の液晶組成物は、常用の方法を用いて二種類又は多種類の液晶化合物を混合して生産することができ、例えば、高温下において、異なる化合物を混合してお互いに溶解する方法で製造する。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、下記の有益な技術効果を有する。本発明のネマチック液晶組成物は、該ネマチック液晶組成物の成分及び各成分の質量分数の変更により、比較的な大きい複屈折率及び比較的な低い回転粘度を獲得でき、素子のセル厚さを下げ、応答速度を向上することができる。
【0039】
本発明のネマチック液晶組成物は、ネマチック相の低い動作電圧、高い上限温度、低いネマチック相の下限温度、低い回転粘度、高応答速度、高光学異方性、高誘電異方性、紫外線に対する高安定性、熱に対する高安定性等の特性中の少なくとも一種類の特性を満足することができる。本発明のネマチック液晶組成物は、少なくとも二種類の特性と関連する適切なバランス性の特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
下記は、本発明の実施例である。実施例を用いて本発明の明細書を結びつけることにより、本発明をより理解することができるが、本発明の範囲は、これらの実施例に限らない。
【0041】
表現を便利させるため、以下の各実施例において、液晶化合物の化学基構造を、表1に表される符号で示す。
[表1]液晶化合物の化学基構造符号
【0042】
下記の構造式の化合物を例として挙げる。
該構造式は、表1で示した符号を表すと、nCPTWNCSである。符号中のnは、左末端のアルキル基の炭素数を示し、例えば、nが3であることは、該アルキル基は、-C3H7である。符号中のPはフェニレンを、符号中のWは3,5-ジフルオロフェニレン基を、符号中のNCSはイソチオシアナト基を示す。
【0043】
実施例において、測定とされる関連物理性能のパラメータ符号及び測定条件は、次の通りである。
Tni 透明点(ネマチック相−等方性相の相転移温度)
Tcn スメクチック相−ネマチック相の相転移温度
γ1 回転粘度(mpa.s 20℃ 20μm反平行測定キット)
Δε 誘電異方性(1KHz 20℃ 20μm反平行測定キット)
Δn 光学異方性(20℃ 8μm反平行測定キット)
K11 スプレイ弾性定数(20℃ 20μm反平行測定キット)
K33 曲げ弾性定数(20℃ 20μm反平行測定キット)
Vth 動作電圧(20℃ 液晶分子を動かせるために必要な電圧)
γ1/K11 粘弾性係数率
【0044】
実施例1:
実施例1のネマチック液晶組成物は、下記の化合物からなり、その中、パーセントは、質量分数を表す。
該実施例1のネマチック液晶組成物の性能パラメータ表

該液晶組成物を用いる液晶レンズラスターは、その応答時間がT=540msであり、対応の液晶レンズのズームがf=1.02mmである。一方、従来、市販では既に存在する液晶材料E7は、その応答時間がT=1210msであり、対応の液晶レンズのズームがf=1.85mmである。従って、使用の本発明液晶材料は、応答時間が55%を向上し、ズームが45%を減少した。
【0045】
実施例2:
実施例2のネマチック液晶組成物は、下記の化合物からなり、その中、パーセントは、質量分数を表す。

該実施例2のネマチック液晶組成物の性能パラメータ表
該液晶組成物を用いる液晶レンズラスターは、その応答時間がT=500msであり、対応の液晶レンズのズームがf=1.08mmである。一方、従来、市販では既に存在する液晶材料E7は、その応答時間がT=1210msであり、対応の液晶レンズのズームがf=1.85mmである。従って、使用の本発明液晶材料は、応答時間が59%を向上し、ズームが42%を減少した。
【0046】
実施例3:
実施例3のネマチック液晶組成物は、下記の化合物からなり、その中、パーセントは、質量分数を表す。
該実施例3のネマチック液晶組成物の性能パラメータ表
該液晶組成物を用いる液晶レンズラスターは、その応答時間がT=605msであり、対応の液晶レンズのズームがf=1.10mmである。一方、従来、市販では既に存在する液晶材料E7は、その応答時間がT=1210msであり、対応の液晶レンズのズームがf=1.85mmである。従って、使用の本発明液晶材料は、応答時間が50%を向上し、ズームが41%を減少した。
【0047】
実施例4:
実施例4のネマチック液晶組成物は、下記の化合物からなり、その中、パーセントは、質量分数を表す。

該実施例4のネマチック液晶組成物の性能パラメータ表
該液晶組成物を用いる液晶レンズラスターは、その応答時間がT=598msであり、対応の液晶レンズのズームがf=1.01mmである。一方、従来、市販では既に存在する液晶材料E7は、その応答時間がT=1210msであり、対応の液晶レンズのズームがf=1.85mmである。従って、使用の本発明液晶材料は、応答時間が51%を向上し、ズームが45%を減少した。
【0048】
実施例5:
実施例5のネマチック液晶組成物は、下記の化合物からなり、その中、パーセントは、質量分数を表す。

実施例5のネマチック液晶組成物の性能パラメータ表

該液晶組成物を用いる液晶レンズラスターは、その応答時間がT=540msであり、対応の液晶レンズのズームがf=1.15mmである。一方、従来、市販では既に存在する液晶材料E7は、その応答時間がT=1210msであり、対応の液晶レンズのズームがf=1.85mmである。従って、使用の本発明液晶材料は、応答時間が55%を向上し、ズームが38%を減少した。
【0049】
実施例6:
実施例6のネマチック液晶組成物は、下記の化合物からなり、その中、パーセントは、質量分数を表す。

該実施例6のネマチック液晶組成物の性能パラメータ表

該液晶組成物を用いる液晶レンズラスターは、その応答時間がT=470msであり、対応の液晶レンズのズームがf=1.02mmである。一方、従来、市販では既に存在する液晶材料E7は、その応答時間がT=1210msであり、対応の液晶レンズのズームがf=1.85mmである。従って、使用の本発明液晶材料は、応答時間が61%を向上し、ズームが45%を減少した。
【0050】
実施例7:
実施例7のネマチック液晶組成物は、下記の化合物からなり、その中、パーセントは、質量分数を表す。

該実施例7のネマチック液晶組成物の性能パラメータ表
該液晶組成物を用いる液晶レンズラスターは、その応答時間がT=485msであり、対応の液晶レンズのズームがf=0.85mmである。一方、従来、市販では既に存在する液晶材料E7は、その応答時間がT=1210msであり、対応の液晶レンズのズームがf=1.85mmである。従って、使用の本発明液晶材料は、応答時間が60%を向上し、ズームが54%を減少した。
【0051】
また、前記の七つの実施例では、実際の需要に応じて、第VI類化合物として、キラルドーパント化合物を添加してもよく、その含有量は、該ネマチック液晶組成物の質量分数の0−5%であり、好ましくは0-1%である。前記キラルドーパントは、CB15、R-811、S-811、R-1011、S-1011のようなキラル添加剤を主に含むが、それらに限らない。
【0052】
本発明の実施例1−7において、複屈折率Δnそれぞれは、0.337、0.347、0.354、0.371、0.378、0.387及び0.415であり、いずれも、比較的に大きい複屈折率に該当し、しかも、その自身は、化学安定性が高く、光安定性が高いという特徴を有する。また、前記の要求を満たす以外は、下記の有益な効果をも有する。
【0053】
1.動作電圧は、0.63Vから0.81Vの間にあり、低動作電圧を満足する。Tcnは、-20℃〜-15℃であり、Tniは、78〜112℃の間にあり、即ち、ネマチックの上限温度が高く、下限温度が低く,温度に対する依存性は比較的に低い。
2.回転粘度γ1はそれぞれ、75mpa.s、86mpa.s、93mpa.s、101mpa.s、104mpa.s、111mpa.s及び113mpa.sであり、いずれも比較的に低い回転粘度に該当する。
3.最も重要なのは、本発明の実施例1-7の液晶組成物のいずれも、低い粘弾性係数率を有し、いずれも11以下である。
本発明の実施例1-7の液晶組成物の回転粘度γ1が低く、粘弾性係数率(γ1/K11)が低いので、液晶組成物の応答時間が短い。
【0054】
本発明の液晶組成物は、該ネマチック液晶組成物の成分及び各成分質量分数を変更することにより、比較的に大きい複屈折率を獲得し、故に、ネマチック液晶デイスプレイセル厚さの値を減少し、液晶の応答速度を増加し、液晶表示製品を軽量化に転化させる。
【0055】
以上から、本発明の液晶組成物は、更に、ネマチック相の低い動作電圧、高い上限温度、低いネマチック相の下限温度、低い回転粘度、高応答速度等の特性を有する。
【0056】
以上の記載は、本発明の実施例であるに過ぎず、それは、本発明の保護範囲を制限することではない。本発明の明細書及び添付図面の内容に基づいて行った等効構造又は等効流れの変化、或いはその他の関連技術分野を直接又は間接に運用することのいずれも、本発明の保護範囲内に含まれる。