【実施例】
【0051】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0052】
本発明の樹脂組成物からなる実施例中の成形品について、
図1を用いて以下説明する。
【0053】
実施例および比較例における評価、すなわち、室温で固体状の粒子(A)の粒度分布、酸素透過度、透明性、レトルト後の透明性、カーボン異物点数、押出機洗浄間隔、ダイ分掃間隔は、以下の方法によって求めて評価した。
【0054】
(1)室温で固体状の粒子(A)の粒度分布の評価
塩化ビニリデン系樹脂組成物を厚み15μmフィルムに溶融成形した後、透過型光学顕微鏡(OLYMPUS BX51)(200倍)で0.4cm
2を観察し、投影面積が10μm
2以上3000μm
2以下の室温で固体状の粒子(A)の投影面積を測定した。観察された室温で固体状の粒子(A)を、小粒径(投影面積が10μm
2以上100μm
2未満)、中粒径(投影面積が100μm
2以上、1000μm
2未満)、大粒径(投影面積が1000μm
2以上3000μm
2以下)の3種類に分類し、それぞれの投影面積の積算を行った。そして、投影面積が10μm
2以上3000μm
2以下の室温で固体状の粒子(A)の総投影面積を積算し、この総投影面積に対する小粒径の投影面積の積算値が占める割合(%)と、この総投影面積に対する大粒径の積算値が占める割合(%)と、を求めた。同様の操作を50回繰り返し、その平均値を求めた。
(1)−1 大粒径(投影面積1000μm
2以上3000μm
2以下)
算出方法;(占有率)=(1000μm
2以上3000μm
2以下の室温で固体状の粒子(A)の投影面積の積算値)/(10μm
2以上3000μm
2以下の室温で固体状の粒子(A)の投影面積の積算値(総投影面積))
(1)−2 小粒径(投影面積10μm
2以上100μm
2未満)
算出方法;(占有率)=(10μm
2以上100μm
2未満の室温で固体状の粒子(A)の投影面積の積算値)/(10μm
2以上3000μm
2以下の室温で固体状の粒子(A)の投影面積の積算値(総投影面積))
【0055】
(2)酸素透過度の評価
室温で液体状の可塑剤(B)の添加による酸素透過度(O
2TR)の悪化の度合いを評価する。それぞれの評価に用いられた塩化ビニリデン系共重合体に室温で固体状の粒子(A)および室温で液体状の可塑剤(B)を添加せずに押出製膜したフィルムの酸素透過度を標準値(標準O
2TR)とし、これに対する評価フィルムの酸素透過度の悪化の度合い(悪化率)を下記の算出方法で算出し、評価した(なお、悪化率は100%を超えると商品価値が著しく損なわれるため、好ましくない)。
酸素透過度の測定はMocon OX−TRAN 2/20を使用して23℃、65%RHの条件の下、厚み15μmのフィルムで実施した。
算出方法;[酸素透過度悪化率(%)]=([評価フィルムO
2TR]−[標準O
2TR])/[標準O
2TR]×100
【0056】
(3)透明性の評価
ASTM D−1003に準拠して、厚み15μmのフィルムの透明性を濁度計(日本電色工業社製NDH 5000)にて23℃、50%RHの条件で測定した。
【0057】
(4)レトルト処理後の透明性の評価
測定前に下記の条件で加熱処理した厚み15μmのフィルムの透明性をASTM D−1003に準拠して、濁度計(日本電色工業社製NDH 5000)にて23℃、50%RHの条件で測定した。
レトルト条件:フィルムを金属枠に固定し、熱収縮しない状態で120℃の加圧熱水中に20分浸漬した後、室温にて2日間乾燥する。
なお、厚み15μm換算のHAZA値は、下記式を用いて算出する。
HAZE(厚み15μm換算値)=HAZE実測値×15/厚み(μm)
【0058】
(5)押出機洗浄間隔の評価
押出機内のバレルやスクリュー部での樹脂の滞留に対する樹脂の熱安定性を評価するものである。多量に異物が流出すると、製膜を一旦中断し、樹脂をポリエチレン等に置換して押出機内の熱劣化物を掻き出す必要がある為、生産効率の低下につながる。ここでは、細かな熱劣化異物や変色物が成形品中に連続的且つ多量に流出するまでの連続押出の時間の長さを、以下の基準に基づいて評価した。
評価尺度 評価記号 備考
48時間以上 ◎ 非常に安定な連続生産が可能
24時間以上48時間未満 ○ 安定な連続生産が可能
6時間以上24時間未満 △ 生産性は悪いが連続生産可能
6時間未満 × 連続生産は不可能
【0059】
(6)ダイ分掃間隔の評価
ダイ内での樹脂の滞留に対する樹脂の熱安定性を評価するものである。ダイ内部の壁面と溶融樹脂の滑り性が悪いと、滞留した樹脂が熱劣化してダイ内部に付着する。程度がひどくなると成形品の厚みムラやすじなどが発生する為、押出機を停止させ、ダイを分解して掃除(分掃)が必要となる為、生産効率が著しく低下する。ここでは、ダイの分掃が必要となるまでの連続押出時間の長さを、以下の基準に基づいて評価する。
評価尺度 評価記号 備考
3000時間以上 ◎ 非常に安定な連続生産が可能
1000時間以上3000時間未満 ○ 安定な連続生産が可能
100時間以上1000時間未満 △ 生産性は悪いが連続生産可能
100時間未満 × 連続生産は不可能
【0060】
(7)カーボン異物点数の評価
押出機内で樹脂が滞留して発生した熱劣化物(炭化物)が突発的に剥離して流出するとカーボン異物となる。成形品中に大きなカーボン異物(黒色)が流出すると製品の品質問題上、一旦成形品を切って異物発生部を取り除き、成形品をスプライスする必要があり、問題となる。ここでは、成形品に混入する熱劣化物をイメージセンサー方式の異物検査機を用いて検出し、15μm厚のフィルム2000m
2において2mm角以上のカーボン異物の点数をカウントして、以下の基準に基づいて評価した。
評価尺度 評価記号 備考
0点 ◎ 非常に安定な連続生産が可能
1点以上5点未満 ○ 安定な連続生産が可能
5点以上10点未満 △ 生産性は悪いが連続生産可能
10点以上 × 連続生産は不可能
【0061】
(8)総合評価
上記(1)〜(7)の評価項目に基づいて、以下の基準で総合評価を行った。
評価尺度 評価記号 備考
上記7項目の全てを満たす ○ 商品価値として優れている
項目(1)は満たすが、他の項目を満たさない △ 分散は優れているが商品価値は無い
評価項目(1)を満たさない × 商品価値が無い
【0062】
[実施例1]
内面がグラスライニングされた撹拌機付き反応機にヒドロキシプロピルメチルセルロースが0.20部溶解した脱イオン水120部を投入する。撹拌開始後、系内を30℃にて窒素置換して塩化ビニリデン単量体(VDC)95部、アクリル酸メチル単量体(MA)5部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート1.0部の混合物を投入し、反応機を80℃に昇温して重合を開始する。8時間後に降温したスラリーを取り出す。得られたスラリーを遠心式の脱水機にて水を分離し、ついで80℃の熱風乾燥機にて24時間乾燥して粉末状の塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体を得た。この共重合体の収率は99%で重量平均分子量は8.0万、最終共重合体組成はVDC/MA=95.3/4.7重量%であった。
次に、酸化マグネシウム(MgO)50重量%とエポキシ化大豆油(ESO)50重量%を混合し、ペースト状添加剤を得た。このペースト状添加剤0.10重量%に加えてエポキシ化大豆油0.15重量%を先述の塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体に添加・混合し、最終的に酸化マグネシウム0.05重量%、エポキシ化大豆油0.20重量%を含む塩化ビニリデン系樹脂組成物となるように配合した。この塩化ビニリデン系樹脂組成物を
図1に示すインフレーション法により押出製膜し、厚み15μmのフィルム(塩化ビニリデン系樹脂成形品)を得た。
【0063】
[実施例2]
酸化マグネシウム(MgO)50重量%とエポキシ化大豆油(ESO)50重量%を予め混合し、得られたペースト状添加剤0.20重量%に加えてエポキシ化大豆油0.10重量%を実施例1に記載の塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体に添加・混合し、最終的に酸化マグネシウムの総量を0.10重量%、エポキシ化大豆油の総量を0.20重量%とすること以外は、実施例1と同様に処理して、実施例2の塩化ビニリデン系樹脂組成物および厚み15μmのフィルム(塩化ビニリデン系樹脂成形品)を得た。
【0064】
[実施例3]
酸化マグネシウム(MgO)30重量%とエポキシ化大豆油(ESO)70重量%を予め混合し、得られたペースト状添加剤0.33重量%に加えてエポキシ化大豆油0.77重量%を実施例1に記載の塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体に添加・混合し、最終的に酸化マグネシウムの総量を0.10重量%、エポキシ化大豆油の総量を1.00重量%とすること以外は、実施例1と同様に処理して、実施例3の塩化ビニリデン系樹脂組成物および厚み15μmのフィルム(塩化ビニリデン系樹脂成形品)を得た。
【0065】
[実施例4]
酸化マグネシウム(MgO)60重量%とエポキシ化大豆油(ESO)40重量%を混合し、得られたペースト状添加剤0.33重量%に加えてエポキシ化大豆油0.07重量%を実施例1に記載の塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体に添加・混合し、最終的に酸化マグネシウム0.20重量%、エポキシ化大豆油0.20重量%とすること以外は実施例1と同様に処理して、実施例4の塩化ビニリデン系樹脂組成物および厚み15μmのフィルム(塩化ビニリデン系樹脂成形品)を得た。
【0066】
[実施例5]
酸化マグネシウム(MgO)50重量%とエポキシ化大豆油(ESO)50重量%を予め混合し、得られたペースト状添加剤1.20重量%を実施例1に記載の塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体に添加・混合し、最終的に酸化マグネシウムの総量を0.60重量%、エポキシ化大豆油の総量を0.60重量%とすること以外は、実施例1と同様に処理して、実施例5の塩化ビニリデン系樹脂組成物および厚み15μmのフィルム(塩化ビニリデン系樹脂成形品)を得た。
【0067】
[実施例6]
酸化マグネシウム(MgO)30重量%とエポキシ化大豆油(ESO)70重量%を予め混合したペースト状添加剤2.83重量%に加えてエポキシ化大豆油0.02重量%を実施例1に記載の塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体に添加・混合し、最終的に酸化マグネシウムの総量を0.85重量%、エポキシ化大豆油の総量を2.00重量%とすること以外は、実施例1と同様に処理して、実施例6の塩化ビニリデン系樹脂組成物および厚み15μmのフィルム(塩化ビニリデン系樹脂成形品)を得た。
【0068】
[実施例7]
酸化マグネシウム(MgO)30重量%とエポキシ化亜麻仁油(ELO)70重量%を予め混合し、ペースト状添加剤とし、このペースト状添加剤2.83重量%を実施例1に記載の塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体に添加・混合し、最終的に酸化マグネシウムの総量を0.85重量%、エポキシ化亜麻仁油の総量を2.00重量%とすること以外は、実施例1と同様に処理して、実施例7の塩化ビニリデン系樹脂組成物および厚み15μmのフィルム(塩化ビニリデン系樹脂成形品)を得た。
【0069】
[実施例8]
酸化マグネシウム(MgO)50重量%とエポキシ化大豆油(ESO)50重量%を予め混合したペースト状添加剤2.00重量%に加えてエポキシ化大豆油1.00重量%を実施例1に記載の塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体に添加・混合し、最終的に酸化マグネシウムの総量を1.0重量%、エポキシ化大豆油の総量を2.00重量%とすること以外は、実施例1と同様に処理して、実施例8の塩化ビニリデン系樹脂組成物および厚み15μmのフィルム(塩化ビニリデン系樹脂成形品)を得た。
【0070】
[実施例9]
水酸化マグネシウム(Mg(OH)
2)30重量%とエポキシ化大豆油(ESO)70重量%を予め混合したペースト状添加剤2.83重量%を実施例1に記載の塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体に添加・混合し、最終的に水酸化マグネシウムの総量を0.85重量%、エポキシ化大豆油の総量を2.00重量%とすること以外は、実施例1と同様に処理して、実施例9の塩化ビニリデン系樹脂組成物および厚み15μmのフィルム(塩化ビニリデン系樹脂成形品)を得た。
【0071】
[実施例10]
酸化カルシウム(CaO)30重量%とエポキシ化大豆油(ESO)70重量%を予め混合したペースト状添加剤2.83重量%を実施例1に記載の塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体に添加・混合し、最終的に酸化カルシウムの総量を0.85重量%、エポキシ化大豆油の総量を2.00重量%とすること以外は、実施例1と同様に処理して、実施例10の塩化ビニリデン系樹脂組成物および厚み15μmのフィルム(塩化ビニリデン系樹脂成形品)を得た。
【0072】
[実施例11]
水酸化カルシウム(Ca(OH)
2)30重量%とエポキシ化大豆油(ESO)70重量%を予め混合したペースト状添加剤2.83重量%を実施例1に記載の塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体に添加・混合し、最終的に水酸化カルシウムの総量を0.85重量%、エポキシ化大豆油の総量を2.00重量%とすること以外は、実施例1と同様に処理して、実施例11の塩化ビニリデン系樹脂組成物および厚み15μmのフィルム(塩化ビニリデン系樹脂成形品)を得た。
【0073】
[実施例12]
酸化アルミニウム(Al
2O
3)30重量%とエポキシ化大豆油(ESO)70重量%を予め混合したペースト状添加剤2.83重量%を実施例1に記載の塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体に添加・混合し、最終的に酸化アルミニウムの総量を0.85重量%、エポキシ化大豆油の総量を2.00重量%とすること以外は、実施例1と同様に処理して、実施例12の塩化ビニリデン系樹脂組成物および厚み15μmのフィルム(塩化ビニリデン系樹脂成形品)を得た。
【0074】
[実施例13]
水酸化アルミニウム(Al(OH)
3)30重量%とエポキシ化大豆油(ESO)70重量%を予め混合したペースト状添加剤2.83重量%を実施例1に記載の塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体に添加・混合し、最終的に水酸化アルミニウムの総量を0.85重量%、エポキシ化大豆油の総量を2.00重量%とすること以外は、実施例1と同様に処理して、実施例13の塩化ビニリデン系樹脂組成物および厚み15μmのフィルム(塩化ビニリデン系樹脂成形品)を得た。
【0075】
[実施例14]
ハイドロタルサイト(Mg
6Al
2(OH)
16CO
3・4H
2O)30重量%とエポキシ化大豆油(ESO)70重量%を予め混合したペースト状添加剤2.83重量%を実施例1に記載の塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体に添加・混合し、最終的にハイドロタルサイトの総量を0.85重量%、エポキシ化大豆油の総量を2.00重量%とすること以外は、実施例1と同様に処理して、実施例14の塩化ビニリデン系樹脂組成物および厚み15μmのフィルム(塩化ビニリデン系樹脂成形品)を得た。
【0076】
[実施例15]
内面がグラスライニングされた撹拌機付き反応機にヒドロキシプロピルメチルセルロースが0.20部溶解した脱イオン水120部を投入する。撹拌開始後、系内を30℃にて窒素置換して塩化ビニリデン単量体(VDC)82部、塩化ビニル単量体(VC)18部、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート0.1部の混合物を投入し、反応機を45℃に昇温して重合を開始する。60時間後に降温したスラリーを取り出す。得られたスラリーを遠心式の脱水機にて水を分離し、ついで80℃の熱風乾燥機にて24時間乾燥して粉末状の塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体を得た。この共重合体の収率は90%で重量平均分子量は12万、最終共重合体組成はVDC/VC=91/9重量%であった。
次に酸化マグネシウム(MgO)30重量%とエポキシ化大豆油(ESO)70重量%を予め混合したペースト状添加剤とし、このペースト状添加剤2.83重量%を先述の塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体に添加・混合した。そして、最終的に酸化マグネシウムの総量を0.85重量%、エポキシ化大豆油の総量を2.00重量%とすること以外は、実施例1と同様に処理して、実施例15の塩化ビニリデン系樹脂組成物および厚み15μmのフィルム(塩化ビニリデン系樹脂成形品)を得た。
【0077】
[比較例1]
酸化マグネシウム(MgO)20重量%とエポキシ化大豆油(ESO)80重量%を予め混合したペースト状添加剤4.25重量%を実施例1に記載の塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体に添加・混合し、最終的に酸化マグネシウムの総量を0.85重量%、エポキシ化大豆油の総量を3.40重量%とすること以外は、実施例1と同様に処理して、比較例1の塩化ビニリデン系樹脂組成物および厚み15μmのフィルム(塩化ビニリデン系樹脂成形品)を得た。
【0078】
[比較例2]
酸化マグネシウム(MgO)70重量%とエポキシ化大豆油(ESO)30重量%を予め混合したペースト状添加剤1.21重量%に加えてエポキシ化大豆油1.64重量%を実施例1に記載の塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体に添加・混合し、最終的に酸化マグネシウムの総量を0.85重量%、エポキシ化大豆油の総量を2.00重量%とすること以外は、実施例1と同様に処理して、比較例2の塩化ビニリデン系樹脂組成物および厚み15μmのフィルム(塩化ビニリデン系樹脂成形品)を得た。
【0079】
[比較例3]
酸化マグネシウム(MgO)60重量%とアセチルクエン酸トリブチル(ATBC)40重量%を予め混合したペースト状添加剤とし、このペースト状添加剤0.33重量%をに加えてアセチルクエン酸トリブチル0.07重量%を実施例1に記載の塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体に添加・混合し、最終的に酸化マグネシウムの総量を0.20重量%、アセチルクエン酸トリブチルの総量を0.20重量%とすること以外は、実施例1と同様に処理して、比較例3の塩化ビニリデン系樹脂組成物および厚み15μmのフィルム(塩化ビニリデン系樹脂成形品)を得た。
【0080】
[比較例4]
実施例1に記載の塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体に予めエポキシ化大豆油(ESO)2.00重量%を添加・混合した後に、実施例1に記載の酸化マグネシウム(MgO)0.85重量%を粉末状態で添加したこと以外は、実施例1と同様に処理して、比較例4の塩化ビニリデン系樹脂組成物および厚み15μmのフィルム(塩化ビニリデン系樹脂成形品)を得た。
【0081】
[比較例5]
実施例1に記載の塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体に予めエポキシ化大豆油(ESO)2.00重量%を添加・混合した後に、実施例9に記載の水酸化マグネシウム(Mg(OH)
2)0.85重量%を粉末状態で添加したこと以外は、実施例1と同様に処理して、比較例5の塩化ビニリデン系樹脂組成物および厚み15μmのフィルム(塩化ビニリデン系樹脂成形品)を得た。
【0082】
[比較例6]
実施例1に記載の塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体に予めエポキシ化大豆油(ESO)2.00重量%を添加・混合した後に、実施例10に記載の酸化カルシウム(CaO)0.85重量%を粉末状態で添加したこと以外は、実施例1と同様に処理して、比較例6の塩化ビニリデン系樹脂組成物および厚み15μmのフィルム(塩化ビニリデン系樹脂成形品)を得た。
【0083】
[比較例7]
実施例1に記載の塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体に予めエポキシ化大豆油(ESO)2.00重量%を添加・混合した後に、実施例11に記載の水酸化カルシウム(Ca(OH)
2)0.85重量%を粉末状態で添加したこと以外は、実施例1と同様に処理して、比較例7の塩化ビニリデン系樹脂組成物および厚み15μmのフィルム(塩化ビニリデン系樹脂成形品)を得た。
【0084】
[比較例8]
実施例1に記載の塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体に予めエポキシ化大豆油(ESO)2.00重量%を添加・混合した後に、実施例12に記載の酸化アルミニウム(Al
2O
3)0.85重量%を粉末状態で添加したこと以外は、実施例1と同様に処理して、比較例8の塩化ビニリデン系樹脂組成物および厚み15μmのフィルム(塩化ビニリデン系樹脂成形品)を得た。
【0085】
[比較例9]
実施例1に記載の塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体に予めエポキシ化大豆油(ESO)2.00重量%を添加・混合した後に、実施例13に記載の水酸化アルミニウム(Al(OH)
3)0.85重量%を粉末状態で添加したこと以外は、実施例1と同様に処理して、比較例9の塩化ビニリデン系樹脂組成物および厚み15μmのフィルム(塩化ビニリデン系樹脂成形品)を得た。
【0086】
[比較例10]
実施例1に記載の塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体に予めエポキシ化大豆油(ESO)2.00重量%を添加・混合した後に、実施例14に記載のハイドロタルサイト(Mg
6Al
2(OH)
16CO
3・4H
2O)0.85重量%を粉末状態で添加したこと以外は、実施例1と同様に処理して、比較例10の塩化ビニリデン系樹脂組成物および厚み15μmのフィルム(塩化ビニリデン系樹脂成形品)を得た。
【0087】
[比較例11]
実施例15に記載の塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体に予めエポキシ化大豆油(ESO)2.00重量%を添加・混合した後に、酸化マグネシウム(MgO)0.85重量%を粉末状態で添加したこと以外は、実施例1と同様に処理して、比較例11の塩化ビニリデン系樹脂組成物および厚み15μmのフィルム(塩化ビニリデン系樹脂成形品)を得た。
【0088】
表1に、実施例1〜15および比較例1〜11の塩化ビニリデン系樹脂組成物ならびに塩化ビニリデン系樹脂成形品の物性および性能評価を示す。
【0089】
【表1】
【0090】
実施例1〜6及び8のように、予め酸化マグネシウム30〜60重量%をエポキシ化大豆油40〜70重量%の存在下で調製したペースト状添加剤を塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体に添加し、最終的に酸化マグネシウム0.05〜1.00重量%およびエポキシ化大豆油0.05〜2.00重量%とすることにより、酸化マグネシウムの凝集および分散不良、偏析が解消され、目的とする押出製膜時の熱安定性を保ち、且つ、成形品のバリア性および透明性、特にレトルト後の透明性が良い、商品価値を有する塩化ビニリデン系樹脂組成物および塩化ビニリデン系樹脂成形品を実現できることが明らかとなった。とりわけ、実施例2〜6のように、最終的に酸化マグネシウム0.10〜0.85重量%およびエポキシ化大豆油0.10〜2.00重量%とすることにより、高性能化が図れることが明らかになった。
【0091】
また、実施例7のようにペースト状添加剤を調製するための室温で液体状の可塑剤(B)として、エポキシ化亜麻仁油を用いた場合も、エポキシ化大豆油を使用した場合と同様に、押出時の熱安定性良好であり、且つバリア性および透明性、特にレトルト後の透明性が良好な、目的とする商品価値を有する塩化ビニリデン系樹脂組成物および塩化ビニリデン系樹脂成形品を実現できる。
【0092】
実施例9〜14のようにペースト状添加剤を調製するための室温で固体状の粒子(A)として、水酸化マグネシウムおよび酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイトを用いた場合も、酸化マグネシウムを使用した場合と同様に、押出時の熱安定性が良好であり、且つバリア性および透明性、特にレトルト後の透明性が良好な、目的とする商品価値を満たす塩化ビニリデン系樹脂組成物および塩化ビニリデン系樹脂成形品が得られる。
【0093】
さらに、実施例15のように塩化ビニリデン系共重合体として塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体を用いた場合も、塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体を用いた際と同様に、押出時の熱安定性が良好であり、且つバリア性および透明性、特にレトルト後の透明性が良好な、目的とする商品価値を満たす塩化ビニリデン系樹脂組成物および塩化ビニリデン系樹脂成形品が得られる。
【0094】
一方、比較例1のようにペースト状添加剤中の酸化マグネシウム含有量を20重量%とすると、ペースト状添加剤中で酸化マグネシウムの凝集が発生し、このペースト状添加剤を塩化ビニリデン系共重合体に添加・混合した塩化ビニリデン系樹脂組成物を原料とする成形品中に、酸化マグネシウムの凝集物が多く観察され、十分な熱安定性および透明性が達成できない。さらに、酸化マグネシウム添加量が実施例6と同量の0.85重量%となるように酸化マグネシウム含有量が20重量%のペースト状添加剤を添加すると、エポキシ化大豆油の添加量が相対的に高まり、バリア性が著しく悪化するため、目的とする商品価値を満たす塩化ビニリデン系樹脂組成物および塩化ビニリデン系樹脂成形品が得られない。
【0095】
比較例2のようにペースト状添加剤中の酸化マグネシウム含有量を70重量%とすると、ペースト状添加剤中に固体成分を多く含む為、ペースト自体の流動性が乏しくなり、塩化ビニリデン系共重合体に均一に添加・混合できず、この塩化ビニリデン系樹脂組成物を原料とする成形品は、酸化マグネシウムの凝集および偏析が発生し、実施例6と同量の熱安定剤を添加したにも拘らず、目的とする熱安定性およびフィルム透明性が達成できず、目的とする商品価値を満たす塩化ビニリデン系樹脂組成物および塩化ビニリデン系樹脂成形品が得られない。
【0096】
比較例3のように低粘度の室温で液体状の可塑剤(B)であるアセチル化クエン酸トリブチル(粘度;50mPa・s)を用いてペースト状添加剤を実施例4と同条件にて調製、添加すると、ペースト状添加剤中での酸化マグネシウムの再凝集が観察され、さらには成形した塩化ビニリデン系樹脂成形品中でも酸化マグネシウムの著しい凝集および偏析が発生し、目的とする熱安定性および透明性を達成できず、目的とする商品価値を満たす塩化ビニリデン系樹脂組成物および塩化ビニリデン系樹脂成形品が得られない。
【0097】
また、比較例4〜11のようにエポキシ化大豆油と室温で固体状の粒子(A)を事前に混合粉砕せずに液状および固体状態のまま個別に塩化ビニリデン系共重合体に添加・混合すると、実施例6および実施例9〜15と同量の熱安定剤を添加したにも拘らず、室温で固体状の粒子(A)の凝集および偏析が著しく、十分な熱安定性が得られない。さらに、溶融加工後の塩化ビニリデン系樹脂成形品に存在する室温で固体状の粒子(A)の凝集物および偏析も多く観察され、透明性、特にレトルト後の透明性の悪化が著しく、目的とする商品価値を満たす塩化ビニリデン系樹脂組成物および塩化ビニリデン系樹脂成形品が得られない。