特許第5789667号(P5789667)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5789667排気ガスターボチャージャのVTGカートリッジ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5789667
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】排気ガスターボチャージャのVTGカートリッジ
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/24 20060101AFI20150917BHJP
   F02B 39/00 20060101ALI20150917BHJP
   F01D 17/16 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   F02B37/24
   F02B39/00 D
   F02B39/00 U
   F01D17/16 A
   F01D17/16 C
【請求項の数】9
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-530198(P2013-530198)
(86)(22)【出願日】2011年9月16日
(65)【公表番号】特表2013-537957(P2013-537957A)
(43)【公表日】2013年10月7日
(86)【国際出願番号】US2011051868
(87)【国際公開番号】WO2012040039
(87)【国際公開日】20120329
【審査請求日】2014年4月3日
(31)【優先権主張番号】102010046332.9
(32)【優先日】2010年9月23日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500124378
【氏名又は名称】ボーグワーナー インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100093861
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 眞司
(74)【代理人】
【識別番号】100129218
【弁理士】
【氏名又は名称】百本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ラム
(72)【発明者】
【氏名】ディートマー・メッツ
【審査官】 川口 真一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−205311(JP,A)
【文献】 特開2007−205310(JP,A)
【文献】 特表2008−544134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/24
F01D 17/16
F02B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスターボチャージャ(2)のVTGカートリッジ(1、2)であって、
ブレード軸受リング(3)を備え、
前記ブレード軸受リング(3)から離間しかつ前記ブレード軸受リングと共に高温ガス通路(5)を境界付けるディスク(4)を備え、
前記ディスク(4)が、前記ディスク(4)の組立状態で互いに緩く当接する少なくとも2つの層(6、7、6’、7’)から構成さ
前記個々の層が遊びをもって接続されて、相対運動を可能にする束を形成する
VTGカートリッジ(1、2)。
【請求項2】
前記ブレード軸受リング(3)が、前記ブレード軸受リング(3)の組立状態で互いに緩く当接する少なくとも2つの層(8、9)から構成される、請求項1に記載のVTGカートリッジ。
【請求項3】
前記層(6、7、6’、7’;8、9)が同一の材料から製造される、請求項1又は2に記載のVTGカートリッジ。
【請求項4】
排気ガスターボチャージャ(2)のVTGカートリッジ(1)のディスク(4)であって、組立状態で互いに緩く当接する少なくとも2つの層(6、7、6’、7’)から構成さ
前記個々の層が遊びをもって接続されて、相対運動を可能にする束を形成するディスク(4)。
【請求項5】
排気ガスターボチャージャ(2)のVTGカートリッジ(1)のブレード軸受リング(3)であって、前記ブレード軸受リング(3)が、組立状態で互いに緩く当接する少なくとも2つの層(8、9)から構成され、
前記個々の層が遊びをもって接続されて、相対運動を可能にする束を形成するブレード軸受リング(3)。
【請求項6】
前記層(6、7、6’、7’)が同一の材料から製造される、請求項4に記載のディスク。
【請求項7】
前記層(8、9)が同一の材料から製造される、請求項5に記載のブレード軸受リング(3)。
【請求項8】
前記個々の層が、組立状態で一時的に接着によって一緒に保持される、請求項4又は6記載のディスク(4)。
【請求項9】
前記個々の層が、組立状態で一時的に接着によって一緒に保持される、請求項5又は7記載のブレード軸受リング(3)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載の排気ガスターボチャージャのVTGカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
「VTGカートリッジ」という用語は、ブレード軸受リングと、ブレード軸受リングからある距離にタービンハウジングに配置されたディスクとを備える構成ユニットを意味すると理解され、ブレード軸受リング及びディスクは、エンジン排気ガスを案内するための高温ガス通路を共に境界付ける。ブレード軸受リングに取り付けられかつ調整リングによって操作されることができる複数の案内ブレードは、この高温ガス通路に配置される。この関連で「VTG」という用語は、「可変タービン形状」という用語に関する当該技術分野で共通の略語である。
【0003】
公知の構造において、ディスク及びブレード軸受リングは、均質な材料から製造される単一部分の通常CNC回転のディスクである。
【0004】
請求項1の前文に対応するVTGカートリッジが、独国特許出願公開第102009005938A1号明細書から公知である。この文献は、ディスク、適切ならば、ブレード軸受リングも、高温ガスの流れに直接的又は間接的に露出されるかに応じて、異なる熱膨張係数を有する少なくとも2つの異なる材料から構成されると述べている。しかし、この構造では、ディスクを形成可能なこれらの2つの材料は、結果として接続されて単一部分の構成要素を形成し、この理由により、ディスクを例えば互いに鋳造することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ブレード軸受リング及びディスクの歪みは、この場合、異なる熱膨張係数によって回避されるべきである。
【0006】
しかし、この構造の不都合は、異なる材料に関する比較的高い経費、及び異なる材料を接続して、ディスク又はブレード軸受リングのそれぞれの構成要素を形成することである。
【0007】
上記のことを鑑み、本発明の目的は、簡単な構造を有し、かつ軸方向の歪みがほとんど完全に排除される請求項1の前文に示したタイプのVTGカートリッジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1の特徴によって達成される。
【0009】
このことは、ディスク、適切ならばブレード軸受リングの層又は個々のディスクが、包括的な従来技術と対照的に、互いに永続的に接続されないので、ディスク、適切ならばブレード軸受リングの層又は個々のディスクの内部温度に応じて、ディスク、適切ならばブレード軸受リングの層又は個々のディスクが自由に半径方向に膨張できるという効果を有する。次に、このことは、ディスク、適切ならばブレード軸受リングの層又は個々のディスクの内部温度から生じる軸方向の熱応力又は変形を少なくとも著しく低減できるという効果を有する。
【0010】
従属請求項は、本発明の有利な発展形態を含む。
【0011】
上に既述したように、少なくとも2つの層からディスクのみならず、ブレード軸受リングも構成することが可能であり、ディスク及びブレード軸受リングは組立状態で互いに緩く当接する。当然、この場合、ディスク及びブレード軸受リングの両方を2つよりも多くの層から構成することが可能である。この関連で、組立を容易にするために個々の層が互いに結合されて束を形成する場合、有利であることを証明することができ、この場合、個々の層の移動機能はなお保証される。層は、例えば、遊びのあるリベット結合又は熱負荷の下で接着作用を失う一時的な粘着力によって共に結合することができる。
【0012】
この場合、層が互いに独立して半径方向に膨張でき、異なる熱膨張係数がそれぞれの層に必要でないので、個々の層の材料が異なる必要がないことが特に有利である。
【0013】
本発明のさらなる詳細、利点及び特徴は、図面に基づき例示的な実施形態の次の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明によるターボチャージャの大きく単純化した基本概略図である。
図2】本発明によるVTGカートリッジが配置された本発明による排気ガスターボチャージャのタービンハウジングの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図2に基づき本発明によるカートリッジ1について説明する前に、カートリッジ1を組み込むことができる本発明による排気ガスターボチャージャ2の本質的な構成要素について、図1を参照して以下に説明する。
【0016】
排気ガスターボチャージャ2はコンプレッサ10を有し、そのコンプレッサホイールはシャフト14を介してタービン11のタービンホイールに接続される。タービン11には、図1の案内ブレード13によって概略的にのみ示されている可変タービン形状VTGが設けられる。
【0017】
本発明によるターボチャージャ2は、他のすべての通常の構成要素を有するが、本発明の説明のために説明する必要はない。図2は、本発明による可変タービン形状VTGのVTGカートリッジ1を示している。カートリッジ1は、案内ブレード13が取り付けられるブレード軸受リング3を有する。ディスク4も、案内ブレード13の幅に従ってブレード軸受リング3から離間したタービン11のタービンハウジング12に配置される。したがって、ディスク4及びブレード軸受リング3は高温ガス通路5を境界付け、この通路を通してエンジン排気ガスが流れて、タービンホイール15を駆動する。排気ガスのこの流れは、案内ブレード13を調整することによる可変タービン形状VTGによってその流量に関して影響を及ぼされ得る。
【0018】
図2に示されているように、例示的な例では、ブレード軸受リング3は、図2に示した組立状態で互いに緩く当接する2つの層8、9から構成される。
【0019】
例示的な例では、ディスク4は、同様にそれぞれ互いに緩く当接する合計4つの層6、7、6’と7’から構成され、この場合、冒頭部で述べたように、ディスク4も、2つ又は3つのこのような層からのみ構成することができる。
【0020】
ブレード軸受リング3及びディスク4の両方は、図示した特に好ましい例示的な実施形態では、複数の層から構成されるが、同様に本発明によれば、これらの2つの構成要素の1つのみを複数の層から構成することが可能である。
【0021】
ディスク4及び/又はブレード軸受リング3は、複数の層の層化から緩く構成されるので、ブレード軸受リング3のこれらの層8と9、及びディスク4の6、7、6’、7’それぞれは、膨張を補償する摺動運動がそれぞれの層の間で可能であるように、タービンハウジング12に共に構成することができる。したがって、ブレード軸受リング3及びディスク4の両方は、熱負荷に従ってそれらの層の異なる半径方向の膨張の結果として膨張することが可能であり、したがって、ブレード軸受リング3及び/又はディスク4の軸方向の歪みを少なくとも著しく低減することができる。
【0022】
さらに、この緩い層化により、従来技術のように、関連の熱膨張係数を有する異なる材料がそれぞれの層8、9及び6、7、6’、7’に必要とされない利点を達成することが可能である。
【0023】
本発明の上述の開示に加えて、この場合、図1及び図2の本発明の概略図が明示的に参照される。
【符号の説明】
【0024】
1 VTGカートリッジ
2 排気ガスターボチャージャ
3 ブレード軸受リング
4 ディスク
5 高温ガス通路
6、7、6’、7’ ディスク4の層
8、9 ブレード軸受リング3の層
10 コンプレッサ
11 タービン
12 タービンハウジング
13 VTGの案内ブレード
14 シャフト
15 タービンホイール
図1
図2