(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ガス化炉に前記脱水汚泥と前記脱水汚泥以外の廃棄物とを投入しながら流動層の温度を計測し、この計測結果に基づいて流動層の温度が目標値に近づくように、前記脱水汚泥の投入量を調整することを含む、請求項1に記載の廃棄物処理方法。
【発明の概要】
【0010】
しかしながら一般に脱水汚泥の含水率は約80%前後と高く、その水分の蒸発潜熱が大きい上に、脱水汚泥中の固形分の粒径は破砕ごみに比べて小さいため、流動層でガス化、発熱する前に飛散してしまう比率が高い。そのため、廃棄物中の汚泥の割合が多くなると流動層の温度が低下してしまい、熱分解反応を維持できなくなるおそれがある。
【0011】
よって、既存のごみ焼却炉でごみと混焼する汚泥の割合は通常5%前後であり、最大でも10%程度までしか処理できないのが実情である。なお、前記特許文献3のように木屑を助燃料として用いることは有効であるが、木屑のような高カロリの廃棄物が常時、汚泥の処理量に見合う分量だけ確保できるとは限らないので、実用性に乏しいと言わざるを得ない。例えば、生活廃棄物(0.8kg/人・日)と生活下水(300l/人・日)の脱水汚泥とを同時処理する場合、30万人都市では240t/日の廃棄物と60t/日の脱水汚泥とを同時に処理、即ち20%の汚泥を同時処理する必要がある。
【0012】
かかる点に鑑みて本発明の目的は、含水率の高い脱水汚泥を従来よりも多く含む廃棄物を処理しても、ガス化炉の流動層温度を好適な範囲に維持できる廃棄物処理設備を提供することにある。
【0013】
上述したように本願の発明者らは、既存のセメント製造設備と隣設した廃棄物処理設備との間で互恵的な関係が成立するシステムを開発しており、このシステムのさらなる改善のために鋭意、研究を続ける中で、ガス化炉の流動層の温度を維持するための熱源としてセメント製造設備の廃熱を利用することに着想し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、請求項1の発明は、セメント製造設備に隣設される廃棄物処理設備を対象として、
脱水汚泥と脱水汚泥以外の廃棄物とを含む廃棄物をガス化して熱分解ガスを発生させる流動床式のガス化炉と、このガス化炉において発生した熱分解ガスを、チャー及び灰分を含んだまま前記セメント製造設備におけるセメントの予熱器ないし仮焼炉に搬送するガス搬送路と、前記ガス化炉へ供給する流動化空気を前記セメント製造設備の廃熱を利用して昇温させる昇温装置
、前記流動化空気の温度を調整する手段、及び、前記流動化空気の流量を調整する手段を有し、前記ガス化炉へ流動化空気を供給する空気供給路と、を備えている。
【0015】
かかる構成により、廃棄物を処理するための流動床式ガス化炉へ昇温された流動化空気が供給されるため、廃棄物中に比較的多くの脱水汚泥が含まれていてもガス化炉の流動層の温度を適切な範囲に維持することが可能になる。流動化空気の昇温にはセメント製造設備の廃熱を利用するため、助燃料を消費しないか、或いはその消費量を大幅に削減でき、環境適合性も高い。
【0016】
そして、ガス化炉において発生した熱分解ガスは、チャー及び灰分を含んだままガス搬送路によってセメントの予熱器や仮焼炉に搬送され、その燃焼熱がセメント原料の予熱や仮焼に利用される。この熱分解ガスと共に脱水汚泥から発生する水蒸気も搬送され、これらと共に、前記のように流動化空気の昇温に使われた熱もセメントの予熱器や仮焼炉に搬送される。
【0017】
つまり、セメント製造設備の廃熱が、ガス化炉の流動層の温度維持に利用された後に、そこで発生する熱分解ガス等と共に再びセメント製造設備に戻ってくることになる。換言すれば、廃棄物処理設備とセメント製造設備とを組み合わせることによって、セメント製造設備において発生する熱を可及的に有効利用して、ガス化炉の流動層温度を維持することができ、その結果、従来よりも多くの汚泥をごみ等と同時に処理できるものである。
【0018】
前記の廃棄物処理設備においてガス化炉には、脱水汚泥とそれ以外の廃棄物とを別々に投入可能な投入装置を備えることが好ましい。こうすれば、脱水汚泥を含めた廃棄物全体の投入量を調整するだけでなく、互いに発熱量の異なる脱水汚泥とそれ以外の廃棄物とのいずれかの投入量を調整して、両者の投入量の比率を変更することによっても、流動層の温度を調整できる。特に含水率の高い脱水汚泥の投入量を調整することが有効である。
【0019】
なお、ここで「投入量」とは時間あたりの投入量のことであり、それを「調整する」とは、例えば流動層の温度に応じて投入量を変化させるフィードバック制御を行うことの他に、予め脱水汚泥やそれ以外の廃棄物の発熱量を調べておいて、流動層温度を所定範囲に維持できるように脱水汚泥やそれ以外の廃棄物の投入量、ないしその比率といった運転条件を設定することも含む意味である。
【0020】
一例として、脱水汚泥を含めた廃棄物全体の低位発熱量が所定値(例えば800〜1200kcal/kgくらい)以上になるように、脱水汚泥とそれ以外の廃棄物との投入量の比率を調整すれば、それらの自燃による熱分解のための熱量を確保することができ、助燃料の供給が不要になり得る。
【0021】
そのためには例えば、ガス化炉に投入する前に予め脱水汚泥の成分分析等を行って、その低位発熱量を求めて記憶しておく。その上で、まずはガス化炉に脱水汚泥以外の廃棄物を投入して流動層の温度を計測し、この計測結果に基づいて脱水汚泥以外の廃棄物の低位発熱量を推定する。そして、その推定値と前記記憶している脱水汚泥の低位発熱量とに基づいて、廃棄物全体の低位発熱量が前記所定値以上になるように脱水汚泥とそれ以外の廃棄物との投入量の比率を調整すればよい。
【0022】
そのように投入量の比率を調整した上で、脱水汚泥とそれ以外の廃棄物とをガス化炉に投入しながら流動層の温度を計測し、この計測結果に基づいて脱水汚泥の投入量を変更することにより、流動層の温度を目標値に近づけるようにしてもよい。含水率の高い脱水汚泥の投入量を変更することによって、流動層の温度を速やかに調整できる。
【0023】
別の例として、まず、ガス化炉に脱水汚泥以外の廃棄物を投入しながら流動層の温度を計測し、この計測結果に基づいて流動層の温度が目標値よりも高くなるように前記廃棄物(脱水汚泥を含めない)の投入量を調整する。その後、ガス化炉に脱水汚泥も投入しながら流動層の温度を計測し、この計測結果に基づいて流動層温度が前記目標値になるように脱水汚泥の投入量を調整してもよい。
【0024】
その際、脱水汚泥以外の廃棄物の投入量は一定に維持してもよいし、その投入量も変化させるようにしてもよい。また、脱水汚泥の投入量の調整に代えて、それ以外の廃棄物の投入量を調整するようにしてもよい。一般的にガス化炉は空気比が1よりも小さな無酸素状態で運転するので、廃棄物の投入量を増やせばその熱容量に応じて層温度は低下する。一方、流動化空気の供給量を増やせば燃焼が盛んになり、層温度は上昇する。
【0025】
また、前記のように本発明では、セメント製造設備の廃熱を利用してガス化炉への流動化空気を昇温させているので、この昇温の度合い、即ち流動化空気に与える熱量を調整することによっても流動層の温度を調整することができる。つまり、脱水汚泥を含めた廃棄物の投入量の他に、流動化空気の供給量ないしその温度等の調整によっても流動層の温度を制御できるので、制御性が向上するとともにその自由度が高くなる。例えば、ガス化炉内を負圧に維持するとか、流動媒体の流動化状態を好適に維持する等、種々の条件を満たしつつ流動層を適温に維持することが可能になる。
【0026】
ところで、前記のようにガス化炉の流動層に脱水汚泥を投入する場合、それが一箇所に大量に投入されると、その付近で局所的に大幅な温度の低下が生じ、熱分解反応が進まなくなるおそれがある。そこで、脱水汚泥の投入割合を増やす場合は、ガス化炉の流動層にその上方の複数箇所から分散させて投入するのが好ましい。こうすれば、流動層の温度の制御性が向上し、その温度を所定範囲に維持する上で有利になる。
【0027】
さらに、前記のように流動化空気を昇温させても、それだけでは層温度を維持できない場合に備えて、流動層へ助燃料を供給する燃料供給装置を備えてもよい。こうすれば、より多くの脱水汚泥を処理することができるとともに、脱水汚泥以外の廃棄物の発熱量が想定よりも低い、いわゆる低品位な廃棄物であっても、助燃料の燃焼によって層温度を維持することが可能になる。
【0028】
そのような助燃料として具体的には、微粉炭のような固形の助燃料を用いることができ、これを流動層の上方の空塔部に投入するようにしてもよい。この場合には微粉炭の粒が細か過ぎると熱分解ガスの流れに乗ってガス化炉から排出されてしまう一方、粒が大き過ぎれば流動層内ですぐに沈下してしまい、十分に燃焼に寄与しないおそれがある。よって、微粉炭の平均粒径は0.1〜3mmくらいにするのが好ましい。
【0029】
なお、助燃料は微粉炭に限定されず、それ以外にも例えば廃タイヤ、プラスチック、木片、炭、汚泥炭化物等、流動層内で燃焼するものであれば、その種類は問わない。
【0030】
前記の廃棄物処理設備には、脱水汚泥をガス化炉へ供給する前にセメント製造設備の廃熱を利用して乾燥させる乾燥装置を備えてもよい。こうすれば、脱水汚泥を含めた廃棄物の発熱量を高めることができ、流動層の温度維持に有利になる。脱水汚泥の含水率が低くなるので、これが投入されたときの流動層の局所的な温度低下も抑制される。
【0031】
以上、述べたように本発明に係る廃棄物処理設備によると、ガス化炉において処理する廃棄物に含水率の高い脱水汚泥を多く含む場合でも、セメント製造設備の廃熱によって流動化空気を昇温させることにより、流動層の温度を所定範囲に維持することが可能になる。つまり、セメント製造設備において発生する熱を可及的に有効利用して、廃棄物処理設備において従来よりも多くの脱水汚泥をごみ等と同時に処理することができる。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、第1の実施形態に係る廃棄物処理設備100と、これが隣設されるセメント製造設備200との全体的な系統図である。
図1の左側に示す廃棄物処理設備100は、廃棄物をガス化炉1において熱分解し、発生したガス(熱分解ガス)をセメントの焼成工程において混焼させる。この熱分解ガスの量は一例として2〜3万Nm
3/hくらいであり、図示のセメント製造設備200の排出ガス量(一例として30万Nm
3/h)に比べて格段に少ないので、廃棄物処理設備100は、既設のセメントプラントに殆ど改修を加えることなく、その隣に建設することができる。
【0061】
廃棄物処理設備100には、例えば家庭から廃棄されるごみや廃プラスチック等、可燃物を含んだ廃棄物(以下、特に脱水汚泥と区別する場合に「ごみ等」又は「ごみ等の廃棄物」と呼ぶ)が集積される。これらの廃棄物は陸送等によって運搬されてきてピット2内のバンカー2aに投入され、図示しない破砕機によって破砕される。破砕されたごみ等の廃棄物はクレーン3によって運搬され、ホッパやコンベア等からなるごみ投入装置4に投入され、このごみ投入装置4の動作によってガス化炉1へ投入される。
【0062】
また、本実施形態では、前記ごみ等とは別に脱水汚泥をガス化炉1へ供給して処理するための汚泥供給系8も設けられている。脱水汚泥は、図外の下水処理場にて下水汚泥から分離された固形分であり、陸送等によって運搬されてきて汚泥槽80に貯留される。図示はしないが、脱水汚泥を運搬してきた車両は、これと入れ替えにピット2から汚水を積み込んで折り返し下水処理場に運搬する。ピット2からの汚水は従来、蒸発処理していたが、前記のように下水処理場へ搬出するようにすれば、それを蒸発させるための熱を別の用途に利用することができる。
【0063】
一方、汚泥槽80に貯留されている脱水汚泥は、コンベア等を備えた汚泥投入装置81(
図2を参照)の動作によって前記ごみ等の廃棄物と同様にガス化炉1へ投入される。この汚泥投入装置81や前記のごみ投入装置4は、一例としてスクリューコンベアを備えており、その動作速度を変更することで、ごみ等や脱水汚泥の時間当たりの投入量を調整できる。こうして脱水汚泥を含めた廃棄物の投入量を調整し、以下に述べる流動化空気の温度及び流量の調整と併せて、ガス化炉1の流動層1aの温度を制御することができる。
【0064】
すなわち、ガス化炉1は流動床式のものであり、
図2にも示すようにガス化炉1の炉内下部には流動砂(流動媒体)が充填されて流動層1aを形成している。ここでは供給される流動化空気によって流動砂が浮遊され、それらの隙間を空気が上方に流れていく。脱水汚泥を含めた廃棄物が流動層1aに投入されると、これらは流動砂によって分散されながら熱分解されて、ガス化される。この際、廃棄物の一部が燃焼することによって流動層の温度を維持し熱分解反応を促進する。
【0065】
流動層1aに供給される流動化空気は、本実施形態では電動の送風機5によって廃棄物のピット2から吸い出され、このことでピット2内が負圧に保たれて、外部に異臭が漏れ難くなる。また、送風機5からの空気は、後述するようにセメント製造設備200の廃熱を利用して昇温された後に、ガス化炉1へと供給される。このように流動化空気を媒介として熱を供給することで、脱水汚泥を多量に混焼しても流動層1aの温度を維持することが可能になる。
【0066】
詳しくは、一般的にごみ等の廃棄物の低位発熱量は1000〜3000kcal/kg程度なので、その一部が燃焼することによって熱分解のための反応熱を確保し、流動層1aの温度を適温に維持することができる。一方、脱水汚泥には下水中の有機物質が含まれているため潜在的な発熱量は高いものの、含水率が80%くらいとかなり高いことから、低位発熱量は低くなり、これをごみ等の廃棄物と混焼すると層温度の維持が難しくなる。
【0067】
そこで、本実施形態では、ごみや脱水汚泥の投入量を調整するだけでなく、流動化空気の温度及び流量を適切に設定し、ガス化炉1において脱水汚泥を比較的多く混焼しても流動層温度を500〜600℃くらいの適切な範囲に維持するようにしている。すなわち、
図2に模式的に示すように流動層1aには温度センサ91を配設し、ここからの信号を受けるコントローラ90によってごみ投入装置4や汚泥投入装置81の動作を制御する。
【0068】
また、送風機5からの空気を昇温させるガスエアヒータ41(GAH:昇温装置)には、これをバイパスする空気の流量を調整するためのバイパスバルブ42が設けられており、その開度がコントローラ90によって制御されることで、流動化空気の温度が調整される。さらに、送風機5からガスエアヒータ41を経てガス化炉1に至る空気供給路5aの途中には、開度の調整が可能なダンパ55(
図2にのみ示す)が介設されており、このダンパ55の開度と送風機5の回転数とがコントローラ90により制御されることで、流動化空気の流量も調整される。
【0069】
そのようにして流動化空気を例えば150〜200℃くらいまで昇温させれば、かなりの熱量を流動層1aに供給できるので、層温度を低下させることなく、多くの脱水汚泥を含む廃棄物を処理することができる。しかし、ごみ等の種類によっては、その発熱量が想定外に低くなることもあり(例えば1000kcal/kg未満のいわゆる低品位な廃棄物)、この場合には前記のように流動化空気を昇温させていても、流動層1aの温度を維持できない可能性がある。
【0070】
この点につき本実施形態では廃棄物の投入口からガス化炉1内の空塔部に助燃料として例えば微粉炭を投入するように、微粉炭の供給装置7が設けられている。また、供給装置7によって流動層1aに上方から投入される微粉炭の平均粒径は0.1〜3mmくらいである。微粉炭の粒径が0.1mmであると計算上、その終末速度が約0.9m/sになり、ガス化炉1内を上昇する熱分解ガスや空気の流速(ガス基準の空塔流速)を少し下回ることから、その多くが飛散してしまい流動層1aでの燃焼に寄与しないからである。
【0071】
一方、微粉炭の粒径が大き過ぎると、すぐに流動層1a内を沈下して抜け落ちてしまい、あまり燃焼に寄与しないおそれがある。粒径が3.0mmの微粉炭が500℃程度の流動層1a内で燃焼するのに必要な時間は、粒径0.1mmの粒子の数十倍程度であり、層内の燃焼に寄与させるためには、粒子の層内滞留時間を確保する必要がある。ここで、粒径が3.0mmの微粉炭の最小流動化速度は計算上、約1.8m/sであり、流動層1aにおけるガス基準の空塔流速と同等であるため、平均粒径を3mm以下とすれば、問題はない。
【0072】
よって、必要に応じて微粉炭を供給することにより、脱水汚泥の多く含まれている廃棄物を投入しても流動層1aの温度を適切な範囲に維持することができ、廃棄物は効果的に熱分解されてガス化される。この熱分解ガスはガス化炉1の上部から排出され、ガス搬送ライン6(ガス搬送路)によってセメント製造設備200に搬送される。熱分解ガス中には未燃分であるチャーや灰分が小さな粒子として浮遊しており、熱分解ガスと一緒に搬送される。
【0073】
本実施形態においてガス化炉1からの熱分解ガスは、後述するセメントの仮焼炉20の負圧を利用して搬送されるものであり、このことでガス化炉1内も負圧に保たれ、外部に熱分解ガスが漏れることはない。また、熱分解ガスは仮焼炉20の負圧によって搬送できるから、ガス搬送ライン6には送風機は設けられていない。よって、送風機のインペラ等に熱分解ガス中のチャーや灰分が付着、堆積することによる故障の心配はない。
【0074】
但しガス搬送ライン6のダクトの内壁面には、時間の経過に伴いチャーや灰分が付着し堆積することがあり、これにより圧力損失が増えるので、本実施形態ではガス搬送ライン6の途中に所定以上の間隔をあけて複数のエゼクタ装置6aを配設している。この各エゼクタ装置6aにより、図示しないコンプレッサから供給される圧縮空気を間欠的に吹き込んで、堆積したチャーや灰分を吹き飛ばすことができる。なお、図示は省略するが、ガス搬送ライン6には開閉式のダンパも介設されており、廃棄物処理設備100の運転を休止するときには閉止することができる。
【0075】
そのようにして廃棄物の熱分解ガスがガス化炉1の上部からガス搬送ライン6へと排出されるのに対して、ガス化炉1における熱分解後の残渣である金属片を含んだ不燃物は、流動砂の中を沈んでその砂と共にガス化炉1の下端から落下する。つまり、廃棄物の残渣は流動層1aによっていわゆる比重分離される。そうしてガス化炉1から排出された砂と不燃物は、図示しないコンベア等により搬送され、図外の分級装置によって分離された砂がガス化炉1に戻される。一方、不燃物からは選別装置によって金属分が選別され、残りの不燃物はセメント原料として利用される。
【0077】
セメント製造設備200は、
図1の例では一般的なNSPキルンを備えたものである。セメント原料は、予熱器であるサスペンションプレヒータ10において予熱された後に、仮焼炉20にて900℃くらいまで加熱され(仮焼)、焼成炉であるロータリキルン30において1500℃くらいの高温で焼成される。ロータリキルン30を通過した焼成物はエアクエンチングクーラ40(AQC)において急冷されて、粒状のセメントクリンカとなり、図外の仕上げ工程に送られる。
【0078】
前記サスペンションプレヒータ10は、上下方向に並んで設けられた複数段のサイクロン11を備えている。サイクロン11は、それぞれがセメント原料を旋回流により搬送しながら、下段から吹き込まれる高温の排気と熱交換させる。この排気の流れは、後述するようにロータリキルン30からの高温の排気(以下、キルン排気という)が仮焼炉20内を吹き上がって、最下段のサイクロン11に供給されるものである。キルン排気は、図に破線で示すようにサイクロン11を一段ずつ上昇して最上段のサイクロン11に至り、そこから排気ライン50に流出する。
【0079】
図示の如く排気ライン50には、キルン排気を誘引して煙突51に送り出すための大容量の誘引通風機52が設けられ、この誘引通風機52の手前、即ち排気流の上流側にはガスクーラ53(一例としてボイラ)及び集塵機54が介設されている。誘引通風機52は、サスペンションプレヒータ10及び仮焼炉20を介してロータリキルン30から多量の排気を誘引するとともに、さらに、仮焼炉20内に負圧を形成して、これによりガス化炉1から熱分解ガスを誘引するという機能も有している。
【0080】
一方、サスペンションプレヒータ10の各サイクロン11においては、前記のようにセメント原料が高温のキルン排気と熱交換した後に、図に実線で示すように下方に落下して、一つ下の段のサイクロン11へと移動する。こうして最上段のサイクロン11から一段ずつ順に複数のサイクロン11を通過する間にセメント原料は十分に予熱されて、最下段の一つ上のサイクロン11から仮焼炉20へと供給される。
【0081】
仮焼炉20は、ロータリキルン30の窯尻に上下方向に延びるように設けられており、その下端にはロータリキルン30との間を繋ぐ下部ダクト21が接続される一方、仮焼炉20の上端には、サスペンションプレヒータ10の最下段のサイクロン11との間を繋ぐ上部ダクト22が接続されている。前記のように誘引通風機52によって誘引されるキルン排気は、下部ダクト21から仮焼炉20の下端に流入し、噴流となって上方へと吹き上がっている。
【0082】
また、図示は省略するが、仮焼炉20の下部には、助燃料である微粉炭の供給口、上述したガス化炉1からの熱分解ガスのガス導入口、及び、これらの燃焼用の空気の導入口がそれぞれ設けられている。燃焼用空気としてはエアクエンチングクーラ40からの高温のクーラ排気が利用され、これが熱分解ガスと同じく仮焼炉20内の負圧によって吸引されている。仮焼炉20内に吸引された熱分解ガス及び燃焼用空気は、高温のキルン排気と混ざり合いながら十分な時間をかけて燃焼する。
【0083】
そして、その仮焼炉20内に投入されたセメント原料は、前記のようなキルン排気の噴流に乗って吹き上げられる間に900℃くらいまで加熱されて、石灰分の80〜90%が脱炭酸反応される。その後、仮焼炉20の最上部から上部ダクト22を介して、サスペンションプレヒータ10の最下段のサイクロン11に搬送され、ここにおいてキルン排気はセメント原料と分離されて一つ上段のサイクロン11へと向かい、一方、セメント原料はサイクロン11の下端から落下してロータリキルン30の入り口へと至る。
【0084】
ロータリキルン30は、一例として70〜100mにも及ぶ横長円筒状の回転窯を入り口から出口に向かって僅かに下向きに傾斜させて配置してなる。回転窯がその軸心の周りに緩やかに回転することによって、セメント原料が出口側に搬送される。この出口側には燃焼装置31が配設されていて、石炭、天然ガス、重油等の燃焼による高温の燃焼ガスを入り口側に向かって噴出している。燃焼ガスに包まれたセメント原料は化学反応(セメント焼成反応)を起こし、その一部が半溶融状態になるまで焼成される。
【0085】
このセメント焼成物がエアクエンチングクーラ40において冷風を受けて急冷され、粒状のセメントクリンカとなる。そして、図示及び詳しい説明は省略するが、セメントクリンカはクリンカサイロに貯蔵された後に、石膏等を加えて成分調整された上でミルにより微粉砕される(仕上げ工程)。一方、焼成物から熱を奪って800℃くらいに昇温されたクーラ排気は、前記したように燃焼用の空気として仮焼炉20に供給される。つまり、廃熱を回収して仮焼炉20での燃焼用空気を昇温させることで、熱効率の向上が図られている。
【0086】
また、そのクーラ排気の一部がガスエアヒータ41に導かれ、上述したように廃棄物処理設備100の送風機5から送られてくる流動化空気と熱交換する。高温のクーラ排気との熱交換によって流動化空気は300℃くらいまで昇温可能であり、図示しないバイパス通路を流れる空気の流量調整によって概ね100〜300℃くらいの範囲で調整される。ガスエアヒータ41をバイパスする空気の流量は、上述したようにコントローラ90によって制御されるバイパスバルブ42の開度に応じて調整される。なお、流動化空気と熱交換して温度の低下したクーラ排気は、ボイラ43及び集塵機44を流通した後に煙突へ向かう。
【0087】
以上のような構成に加えて、本実施形態のセメント製造設備200には、サスペンションプレヒータ10や仮焼炉20を循環する間にガス中の塩素分やアルカリ分が濃縮されることを防ぐためにバイパスライン60が設けられている。すなわち、本実施形態のようにセメント製造設備において廃棄物の熱分解ガスを混焼すると、元々廃棄物に含まれている塩素分やアルカリ分の影響でセメントクリンカ中の塩素分やアルカリ分濃度が高くなる傾向があり、付着トラブルが発生するおそれもあった。
【0088】
そこで、図示のセメント製造設備200においては、仮焼炉20の下部(或いは下部ダクト21)に接続したバイパスライン60によってガスの一部を抽出し、冷却器61で冷却した後にサイクロン62(分級器)に送ってダストを分級する。冷却器61にはファン63により冷風が送られていて、抽気ガスを塩素化合物等の融点以下まで急冷することにより、抽気ガス中の塩素分あるいはアルカリ分を固体(ダスト)として分離する。
【0089】
そして、サイクロン62において抽気ガス中のダストが粗粉と微粉とに分級され、塩素分やアルカリ分が殆ど含まれていない粗粉は、サイクロン62の下端から落下し、一部を省略して示す戻しライン60aによって仮焼炉20へと戻される。一方、塩素分やアルカリ分の濃度が高い微粉は、サイクロン62から吸い出される抽気ガスに乗ってバイパスライン60の下流側ライン60bに排出され、集塵機54に捕集される。
【0090】
なお、
図1においてはバイパスライン60の下流側ライン60bを排気ライン50の途中に接続して、キルン排気を煙突51に送り出すための誘引通風機52、ガスクーラ53及び集塵機54を共用するように示しているが、実際の設備ではバイパスライン60にも専用の誘引通風機、ガスクーラ及び集塵機が設けられている。
【0092】
上述したように、本実施形態の廃棄物処理設備100では、ごみ等に比べて含水率の高い脱水汚泥をガス化炉1に投入することから、その投入位置の付近で局所的に流動層温度が低下することがある。そして、一箇所に多くの脱水汚泥が集中すると、熱分解反応を維持するために必要な下限値(例えば450℃)を下回るおそれがある。この局所的な温度の低下は、一箇所に投入する脱水汚泥の流量と、それが流動層1aにおいて拡散する速度との影響を強く受ける。
【0093】
そこで、仮に廃棄物中の脱水汚泥の割合を25%とし、拡散速度については複数通りの値を設定して、流動層温度の変化を調べるシミュレーションを行った。拡散速度は一般に流動層1aの流動砂の大きさや性状、流動化の状態、並びに脱水汚泥の粒子の大きさや含水率、粘性等によって変化するので、これらの要因を包括する拡散係数を定義し、その値を実験等により設定して用いた。
【0094】
図3A,Bにそれぞれ拡散係数の最も大きな場合と最も小さな場合とについてのシミュレーションの結果を示す。なお、流動層1aの上下方向については便宜上、脱水汚泥の拡散速度を無限大とみなし、水平方向の拡散速度の違いによる影響と脱水汚泥中の水分の蒸発速度の影響とを考慮している。
図Aと
図Bとを比較すると、拡散係数が小さいほど温度の低下する範囲(汚泥拡散範囲)が狭くなるとともに、その範囲における温度の低下が顕著になることが分かる。特に拡散係数の小さな
図Bでは局所的に層温度が450℃を下回っていて、熱分解反応の継続が困難になる。
【0095】
このように脱水汚泥の投入にあたってはその拡散係数を大きくすることが望ましく、その方法として、脱水汚泥を細かくして投入するために、その投入口の先端を絞ってノズルにすることも考えられる。しかしながら、そうすると高粘度の脱水汚泥がノズルの先端で詰まってしまうおそれがあり、投入口の先端をむやみに絞ることはできない。このように脱水汚泥の投入にあたって、その拡散係数を随意に変化させることは現実的には困難である。
【0096】
そこで、実際にガス化炉に一箇所から脱水汚泥を投入し、流動層の温度を複数箇所で計測して、それら計測結果の標準偏差から脱水汚泥の投入の影響が及ぶ範囲を確認した。
図4は、流動層温度の平均値が一定という条件の下で炉床面積と流動層温度の標準偏差との関係を示すグラフ図である。
図4より、流動層温度の平均値が同じであっても炉床面積が増大するに連れて、流動層温度の標準偏差が大きくなることが分かる。すなわち、一箇所から投入した脱水汚泥が流動層温度に影響する範囲が分かる。この結果から、脱水汚泥を一箇所に投入する場合、炉床面積は5m
2以下でなくてはならず、3m
2以下が好ましいといえる。
【0097】
言い換えると、炉床面積が3〜5m
2を超えるガス化炉においては、少なくとも5m
2あたりに一箇所となるように分散して脱水汚泥を投入する必要があり、3m
2あたりに一箇所とするのがよいことが分かった。そこで、本実施形態では
図2に模式的に示すように、ガス化炉1の上部に複数の投入口82を例えば環状若しくは格子状に並べて設け、汚泥投入装置81から送り出される脱水汚泥を、流動層1aの上面において3〜5m
2あたりに一箇所となるように分散させて投入する。
【0099】
次に、ガス化炉1において流動層1aの温度を適切な範囲に維持する運転方法について説明する。上述したように流動層1aの温度を制御するためのパラメータは、基本的には脱水汚泥を含む廃棄物の投入量と、流動化空気の温度及び流量とであるが、本実施形態では、1日あたりのごみ等の処理量を確保すべく流動化空気の温度及び流量を設定し、運転中は流動層温度に応じて脱水汚泥の供給量を調整する。脱水汚泥を含めた廃棄物の低位発熱量が低すぎるときには、必要に応じて微粉炭を供給する。
【0100】
そのようなガス化炉1の運転は、オペレータの操作に応じてコントローラ90により行われる。
図2を参照して上述したようにコントローラ90は、流動層1aの温度を計測する温度センサ91からの信号と、オペレータの操作盤92からの信号とを少なくとも入力し、これに応じてごみ投入装置4、汚泥投入装置81の動作を制御して、脱水汚泥を含めた廃棄物の投入量を調節する。また、コントローラ90は、ガスエアヒータ41のバイパスバルブ42の開度を制御して流動化空気の温度を調整し、送風機5の回転数及び空気供給路5aのダンパ55の開度を制御して流動化空気の流量を調整する。
【0101】
以下に
図5、6を参照してガス化炉1の運転について詳細に説明する。
図5Aは、オペレータによる操作も含めたガス化炉1の運転方法を示し、
図5Bは、助燃料を使用しない通常運転の際の脱水汚泥の投入量を調整する制御の手順を示す。また、
図6は、通常運転の際のごみ等や脱水汚泥の投入量の変化と、これによる流動層温度の変化との関係を概念的に示すタイムチャート図である。
【0102】
一例として、本実施形態の廃棄物処理設備100では毎朝所定時間、ごみ等の廃棄物の低位発熱量を調べる。上述したようにごみ等は、破砕されてピット2内のバンカー2aに貯留されているので、ごみの種類による発熱量のバラツキは軽減されているものの、それでも脱水汚泥に比べるとバラツキが大きい。そのため、含水率の高い脱水汚泥を多量に混焼して流動層1aの温度が低くなると、熱分解反応に必要な下限値(例えば450℃)を下回るおそれがあるからである。
【0103】
具体的には毎朝、所定時刻にオペレータの操作に応じて、コントローラ90からの指令により汚泥投入装置81の動作が停止され、それから所定時間が経過するまで脱水汚泥の投入が停止する。この間もごみ投入装置4の動作は継続するので、ガス化炉1へはごみ等の廃棄物だけが投入される(SA1:ごみ単独運転)。
図6の時刻t0〜t1に示すようにごみ単独運転の間、流動層1aの温度は通常の目標値(例えば530℃)よりも高くなり、これを計測する温度センサ91からの信号を受けてコントローラ90がごみ等の低位発熱量を推定する(SA2)。
【0104】
その発熱量の推定演算には、流動層温度の他にごみ等の投入量や流動化空気の温度及び流量等が用いられる。また、コントローラ90は、推定したごみ等の発熱量から、これと同時に投入可能な脱水汚泥の最大量を演算する(SA3:汚泥の投入可能量を計算)。すなわち、脱水汚泥はごみ等に比べて組成、性状が揃っているので、その低位発熱量は予め燃焼試験等により求めてコントローラ90のメモリに記憶しておく。そして、その脱水汚泥の低位発熱量と前記ごみ等の低位発熱量の推定値とから、両者を合わせた廃棄物全体の低位発熱量が所定値(例えば1000kcal/kg)以上になるように、ごみ等の投入量に対する脱水汚泥の投入量の比率を計算する。
【0105】
つまり、発熱量のバラツキが比較的大きなごみ等の低位発熱量を毎朝、調べた上で、これに脱水汚泥を加えた廃棄物全体として十分な低位発熱量になり、助燃料を投入しなくてもガス化炉1の運転を継続できる脱水汚泥の時間あたりの投入可能量を求めるのである。
【0106】
そうして求めた脱水汚泥の投入可能量を、予定されている脱水汚泥の時間あたりの処理量と比較して、予定量の脱水汚泥の処理が可能か否かの判定がなされ(SA4)、この判定結果がオペレータの操作盤のディスプレーに表示される。これを見たオペレータは、予定量の処理が可能であれば(SA4でYES)助燃料を使用しない通常運転を行う(SA5)一方、予定量の処理ができなければ(SA4でNO)、助燃料を使用する助燃運転を行う(SA6)。
【0107】
通常運転の場合について説明すると、
図5Bのサブルーチンに示すようにコントローラ90は、ごみ投入装置4の動作を継続しながら汚泥投入装置81を動作させて、脱水汚泥の投入を開始する(SB1)。そして、
図6の時刻t1〜t2に示すように投入量が増大し、予定されている時間あたりの処理量に見合う分量になると(時刻t2)、少し遅れて流動層1aの温度が安定する(時刻t3)。コントローラ90は、ここまでに要する所定時間の経過を判定して(SB2)、層温度の計測値(例えば移動平均を用いる)を予め設定してある目標値と比較する(SB3)。
【0108】
流動層1aの温度の適切な範囲は一例として500〜600℃くらいであり、450℃を下回らなければ熱分解反応を維持することができるが、上述したように脱水汚泥の投下位置ではそれ以外の部分よりも温度が低下することを考慮して、層温度の制御目標値は例えば530℃くらいにしている。そして、層温度が目標値よりも高ければ(SB3でYES)その温度偏差に応じて脱水汚泥の投入量を増加させる(SB4)。一方、層温度が目標値よりも低ければ(SB3でNO)脱水汚泥の投入量を減少させる(SB5)。なお、層温度が目標値を含む所定範囲にあるときには脱水汚泥の投入量を維持する。
【0109】
脱水汚泥は含水率が高いので、前記のように投入量を増減させることによって層温度も速やかに変化し、概ね目標値の近傍に維持されるようになる(
図6の時刻t3以降)。勿論、脱水汚泥の投入量だけを調整するのではなく、これに加えて若しくはこれに代えて、ごみ等の廃棄物の投入量を調整するようにしてもよい。ガス化炉1は通常、空気比が1よりも小さな状態で運転するので、ごみ等の投入量を増やせばその熱容量に応じて流動層温度は低下する。但し、前記のように脱水汚泥の投入量の変化による温度調整の効果が高いので、ごみ等の投入量は一定として、1日分の予定処理量を確実に処理することが好ましい。
【0110】
なお、オペレータが助燃運転を選択した場合(
図5AのフローのSA6)コントローラ90は、廃棄物全体に微粉炭を合わせたものの低位発熱量が所定値(例えば1000kcal/kg)以上になるように、微粉炭の時間あたりの供給量を計算し、これに基づいて供給装置7を動作させる。それから、前記の通常運転と同様に流動層1aの温度の計測値に応じて脱水汚泥の投入量を増減させる。この脱水汚泥の投入量を一定とし、層温度に応じて微粉炭の供給量を増減させることも可能である。
【0111】
そして、所定期間運転し、ごみ等の廃棄物を概ね予定されている分、処理した後にコントローラ90は、脱水汚泥の処理量が予定量に達しているかどうか判定する(
図5AのSA7)。脱水汚泥の処理量は、汚泥投入装置81の動作に基づく時間あたりの処理量を積算して求められる。そして、実際の処理量が予定量よりも多ければ、その量の偏差に応じて流動化空気の温度の低下量を演算し、バイパスバルブ42を開いてガスエアヒータ41をバイパスする流動化空気の流量を増やす。即ち、流動化空気の温度が低下するようにガス化炉1の運転条件を変更して(SA8)、リターンする。
【0112】
つまり、流動層1aにおける流動化の状態を保つために流動化空気の流量は変更せず、その温度を調整することにより、流動層温度を維持してごみ等や脱水汚泥の処理量を確保することができる。ごみ等や脱水汚泥の実際の処理量が概ね予定通りのものとなるので、発生する熱分解ガスの量が多くなり過ぎることもなく、ガス化炉1内を負圧状態に維持する上でも好ましい。
【0113】
一方、脱水汚泥の実際の処理量が予定量よりも少なければ、その量の偏差に応じて流動化空気温度の必要上昇量を演算し、バイパスバルブ42を閉じてガスエアヒータ41のバイパス空気量を減らす。また、助燃運転の後では助燃料である微粉炭の供給量からその燃焼による発熱量を計算し、これに見合うように流動化空気を昇温させるべくバイパスバルブ42を閉じる。つまり、流動化空気の温度が上昇するようにガス化炉1の運転条件を変更して(SA9)、リターンする。
【0114】
以上、説明したように本実施形態の廃棄物処理設備100によると、既存のセメント製造設備200に隣接させて流動床式のガス化炉1を設け、脱水汚泥を含む廃棄物の熱分解ガスをチャー及び灰分と共にセメントの仮焼炉20に供給する一方、エアクエンチングクーラ40からの廃熱を利用してガス化炉1の流動化空気を昇温させるようにしたので、含水率の高い脱水汚泥を多量に混焼する場合でも、ガス化炉1の流動層1aの温度を好適な範囲に維持することができる。
【0115】
しかも、そのように流動化空気を昇温させて、ガス化炉1の流動層1aの温度維持に利用された熱は、当該ガス化炉1にて発生する熱分解ガスや水蒸気と共にガス搬送路6を搬送されて、再びセメント製造設備200に戻ってくることになり、非常に効率がよい。言い換えると、セメント製造設備200において発生する熱を可及的に有効利用して、ガス化炉1の流動層1aの温度を維持することにより、従来よりも多くの脱水汚泥をごみ等と同時に処理することができる。
【0116】
図7のグラフは、本実施形態のように流動化空気を昇温させることによって、ガス化炉1に投入する脱水汚泥をどの程度、増やせるか示している。一例として助燃料を使用しない場合、流動化空気の温度が40℃くらいであれば、脱水汚泥はごみ等の15%強くらい投入可能である。この脱水汚泥のごみ等に対する投入量比を基準(1)として、図示のように流動化空気の温度が高いほど投入可能な脱水汚泥が増えてゆき、例えば180℃であれば1.6倍を超えるため、ごみ等の約25%の脱水汚泥を処理できることが分かる。
【0117】
また、本実施形態では必要に応じて微粉炭等の助燃料を供給するようにしており、非常に低位発熱量の低いごみ等が集積されているときでも、これを脱水汚泥と同時に処理することができ、ガス化炉1の運転に支障をきたすことがない。しかも、投入するごみ等の発熱量を毎日、調べて、これと同時に処理できる脱水汚泥の量を計算し、必要がなければ助燃料は使用しないので、その消費量は必要最小限に抑えることができる。
【0118】
さらに、ガス化炉1の運転中には流動層1aの温度を維持するために、その温度の計測値に基づいて脱水汚泥の投入量を調整し、このことに起因する脱水汚泥の処理量の変化は所定期間の運転終了後に確認し、それ以降は予定量の処理が行えるように流動化空気の温度を調整している。つまり、基本的にガス化炉1への流動化空気の供給量は変更せず、流動層1aの状態を適切なものとしながら、脱水汚泥を含めた廃棄物の所定期間の処理量を大きく変えることなく、所要のごみ処理量、脱水汚泥処理量を実現できる。
【0119】
なお、必ずしも流動化空気の流量を一定にする必要はなく、その温度とともに流量もある程度は変更するようにしてもよい。この場合は例えば流動化空気の流量が増えると燃焼が盛んになるので、流動層1aの温度は上昇する傾向がある。このようにガス化炉1の運転状態を制御するパラメータとして、脱水汚泥を含めた廃棄物の投入量の他に流動化空気の温度及び流量、さらには助燃料の供給量もあり、制御の自由度が高いことから、ガス化炉1の状態をより好ましいものとすることが可能になる。
【0121】
次に、本発明の第2の実施形態に係る廃棄物処理設備及びセメント製造設備について
図8を参照して説明する。同図は上述した第1の実施形態の
図1に相当する。なお、本実施形態では、セメント製造設備200のサスペンションプレヒータ10及び仮焼炉20の構成が第1の実施形態と異なっているが、仮焼炉20については空気導入口がないことを除いて第1実施形態のものと同じなので、同じ符号20を付する。それ以外の同じ構成の部材にも同一符号を付してその説明は省略する。
【0122】
また、同図においてはガス搬送ライン6の一部がサスペンションプレヒータ10の陰に隠れているため、エゼクタ装置6aの図示を省略しており、同様に便宜上、バイパスライン60の図示も省略しているが、第1の実施形態と同じくガス搬送ライン6には複数のエゼクタ装置6aが配設されており、また、バイパスライン60、冷却器61、サイクロン62等も備えている。
【0123】
そして、この第2の実施形態のセメント製造設備200では、サスペンションプレヒータ10が2系統に分かれていて、各系統毎に一例として5段のサイクロン11を備えている。図の左側の系統には下段からキルン排気が吹き込まれるようになっており、仮焼炉20が設けられていないことを除けば、第1実施形態のものと同じである。一方、図の右側の系統には仮焼炉20が設けられているが、ここにはキルン排気ではなく、エアクエンチングクーラ40からの高温のクーラ排気が流入している。
【0124】
クーラ排気は、第1の実施形態におけるキルン排気と同様に仮焼炉20の下端に流入し、噴流となって上方へと吹き上がっている(図には一点鎖線で示す)。このクーラ排気は仮焼炉20内に導入される熱分解ガスと混ざり合い、これを燃焼させながらセメント原料を吹き上げて、上部ダクト22から最下段のサイクロン11に至る。そして、一段ずつサイクロン11を上昇して最上段のサイクロン11から排気ライン50に流出する。
【0125】
仮焼炉20の下部には、詳細の図示は省略するが、第1の実施形態と同じくサイクロン11からセメント原料が供給されるようになっており、また、ガス化炉1からの熱分解ガスを導入するガス導入口が設けられているが、これを燃焼させるための空気の導入口は設けられていない。前記のように仮焼炉20内を吹き上がるクーラ排気は、キルン排気とは異なり酸素を多量に含んでいるからである。
【0126】
その点を除いて仮焼炉20の構造は第1の実施形態と同じであり、仮焼炉20内に導入された熱分解ガスは、吹き上がるクーラ排気と混ざり合って十分に燃焼される。この燃焼によってクーラ排気の温度が900℃以上まで上昇し、これにより吹き上げられるセメント原料の仮焼(脱炭酸反応)が促進される。
【0127】
そして、この第2の実施形態においても廃棄物処理設備100のガス化炉1に供給する流動化空気を、エアクエンチングクーラ40からの排熱を利用して昇温させているので、ごみ等の廃棄物に比較的多くの脱水汚泥を混焼しても、流動層1aの温度を適切な範囲に維持することができる。つまり、この第2の実施形態のように仮焼炉20にクーラ排気を流入させるようにしたセメント製造設備200に廃棄物処理設備100を隣設する場合でも、前記第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0129】
図9及び
図10には、それぞれ、セメント製造設備200の仮焼炉の構成が異なる第1実施形態の変形例を示す。また、
図11には仮焼炉のない場合について示す。これらのいずれの変形例も仮焼炉に関する構成以外は上述した第1の実施形態と同じなので、同一部材には同一符号を付してその説明は省略する。
【0130】
まず、
図9に示す変形例の仮焼炉70は、第1実施形態のものと同様にしてロータリキルン30の窯尻に設けられた混合室71と、その下部に連通する旋回仮焼室72とを有し、この旋回仮焼室72には燃焼装置73が配設されていて、石炭、天然ガス、重油等の燃焼による高温の燃焼ガスを噴出している。図示のように旋回仮焼室72には、エアクエンチングクーラ40からの高温のクーラ排気(空気)が旋回流として導入されるとともに、最下段の一つ上のサイクロン11からは予熱されたセメント原料が供給される。
【0131】
そのセメント原料が燃焼装置73からの燃焼ガスを受けて仮焼されながら混合室71へと移動し、ここでは下方からのキルン排気の噴流によって上方に吹き上げられる。すなわち、混合室71ではキルン排気の流れにセメント原料を含んだ燃焼ガスの流れが合流し、両者が混じり合いながら上昇するようになる。この上昇流に乗って吹き上げられる間にセメント原料は十分に仮焼され、混合室71の最上部の出口からダクトを介して最下段のサイクロン11へと搬送される。なお、ガス化炉1からの熱分解ガスは、ロータリキルン30の入り口から混合室71の出口までの間、或いは旋回仮焼室72と混合室71との間に導入すればよい。
【0132】
一方、
図10に示す変形例の仮焼炉75は、第1実施形態のものと概ね同じ構造であり、ロータリキルン30の窯尻に上下方向に延びるように設けられているが、その上下のほぼ中央部位に環状の括れ部75aが形成されていて、この括れ部75aにおいても仮焼炉75内に空気を導入するようにしたものである。
【0133】
すなわち、上述した第1実施形態のものと同じく仮焼炉75の下部には、エアクエンチングクーラ40からの高温のクーラ排気が旋回流として導入されるようになっているが、このクーラ排気の供給路から分かれた分岐路によってクーラ排気の一部が前記括れ部75aに導かれ、ここに形成されている導入口から仮焼炉75内へ導入される。こうして導入されたクーラ排気の一部は、仮焼炉75内を吹け上がるキルン排気の噴流の中に再燃焼用の空気として供給される。この変形例においてもガス化炉1からの熱分解ガスは、ロータリキルン30の入り口から仮焼炉75の出口までの間に導入すればよい。
【0134】
そして、
図11に示す変形例では仮焼炉は設けられておらず、ロータリキルン30の入り口に接続された下部ダクト21と、サスペンションプレヒータ10の最下段のサイクロン11に接続された上部ダクト22との間は、立ち上がり管29によって繋がれている。この立ち上がり管29にセメント原料とガス化炉1からの熱分解ガスとがそれぞれ供給されて、キルン排気の噴流により吹き上げられる。熱分解ガスは、キルン排気に含まれている酸素と反応して立ち上がり管29及びサスペンションプレヒータ10の中で燃焼する。
【0136】
なお、上述した第1、第2の実施形態及びその変形例の説明は例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。例えば、前記の各実施形態等では、ごみ等の発熱量を毎日、調べて、同時に処理可能な脱水汚泥の割合を特定した上で、脱水汚泥の投入を開始するようにしているが、集積されるごみ等の発熱量はそれほど急に変化するものでもないので、その発熱量は毎日、調べなくてもよい。
【0137】
例えば2〜3日に1回、或いは1週間に1回程度、ごみ等の発熱量を調べるようにしてもよいし、脱水汚泥の処理量やこれに基づいて変更される流動化空気の温度等に基づいて不定期に調べるようにしてもよい。
【0138】
また、必ずしも先にごみ等の発熱量を調べてから脱水汚泥を投入する必要もなく、例えば以下のような運転方法も可能である。すなわち、先にごみ等だけを投入しながら流動層1aの温度を計測し、この計測結果に基づいて層温度が目標値よりも高くなるように廃棄物の投入量を調整する。その後、脱水汚泥も投入しながら流動層1aの温度を計測し、この計測結果に基づいて層温度が目標値になるように脱水汚泥の投入量を調整する。
【0139】
さらに、地域によっては集積されるごみ等の発熱量が非常に高く、予定量の脱水汚泥を合わせた全体の低位発熱量が優に1000kcal/kgを超えるような状況も考えられる。このような地域であれば、各実施形態等において助燃料の供給装置7を省略してもよい。同様に、塩素分やアルカリ分の少ない廃棄物のみを処理すればよい地域であれば、各実施形態等においてバイパスライン60を省略してもよい。
【0140】
また、前記各実施形態等ではガスエアヒータ41にエアクエンチングクーラ40からの排気を導くようにしているが、これに限らず、例えば排気ライン50においてガスクーラ53の上流側に介設してもよく、セメント製造設備200の廃熱を利用できればよい。
【0141】
また、同様にセメント製造設備200の廃熱を利用して、ガス化炉1へ投入する前に脱水汚泥を乾燥させる乾燥装置を備えてもよい。脱水汚泥を乾燥させればその低位発熱量が高くなり、流動層1aの温度維持に有利になる。しかも、脱水汚泥の含水率が低くなるので、これが投入されたときの流動層1aの局所的な温度低下も抑制できる。
【0142】
但し、脱水汚泥の乾燥に利用された熱は水蒸気と共に系外に排出されてしまい、セメント製造設備200には戻ってこない。この点から乾燥装置の熱源は、流動化空気の昇温に用いられるガスエアヒータ41等よりも低温の熱源とするのが好ましく、例えばガスエアヒータ41を通過したクーラ排気が流通するボイラ43の下流側に設けてもよい。
【0143】
また、前記各実施形態等においてはセメント製造設備200側の負圧を利用してガス化炉1から熱分解ガスを搬送するようにしており、ガス搬送ライン6には送風機を設けていないが、ここには送風機を設けてもよい。また、ガス搬送ライン6のエゼクタ装置6aを省略することもできる。
【0144】
さらにまた、廃棄物処理設備100のガス化炉1やセメント製造設備200のキルン(焼成炉)等の構造についても前記の各実施形態には限定されない。例えばセメントの焼成炉はロータリキルン30に限定されず、流動層キルンであってもよい。