(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
相対スライドする内針(21)と外針(61)で構成される生検針を保持し、内針と外針をそれぞれ「チャージ位置」にロックするとともに、当該ロックを解除することで「突出位置」へと発射させる生検装置(10)であって、当該生検装置は、
ケーシング(11)と、
内針(21)を保持するとともに、ケーシング内で「チャージ位置」と「突出位置」との間でスライド可能であり、内針用スプリング(22)によって「突出位置」へ向かって付勢されている、内針用スライダ(20)と、
内針用スライダ(20)を、内針用スプリング(22)の付勢力に抗して「チャージ位置」までスライドさせる内針チャージ操作部(30)と、
外針(61)を保持するとともに、ケーシング内で「チャージ位置」と「突出位置」との間でスライド可能であり、外針用スプリング(62)によって「突出位置」へ向かって付勢されている、外針用スライダ(60)と、
外針用スライダ(60)を、外針用スプリング(62)の付勢力に抗して「チャージ位置」までスライドさせる外針チャージ操作部(70)と、を備えており、
下記(A)および(B)のいずれか一方、または両方の構成を備えた、生検装置。
(A)
内針チャージ操作部(30)には、そのスライド方向に延在するスライド歯車ラック(301)が設けられる一方、ケーシング(11)にも同スライド方向に延在する固定歯車ラック(303)が設けられており、
内針用スライダ(20)は、スライド歯車ラック(301)および固定歯車ラック(303)の両方に係合するピニオン歯車(302)を回転可能に保持しており、その結果、内針チャージ操作部(30)をスライドさせると、ピニオン歯車(302)が回転しながら同方向にスライドし、したがって内針用スライダ(20)も同方向にスライドする。
(B)
外針チャージ操作部(70)には、そのスライド方向に延在するスライド歯車ラック(701)が設けられる一方、ケーシング(11)にも同スライド方向に延在する固定歯車ラック(703)が設けられており、
外針用スライダ(60)は、スライド歯車ラック(701)および固定歯車ラック(703)の両方に係合するピニオン歯車(702)を回転可能に保持しており、その結果、外針チャージ操作部(70)をスライドさせると、ピニオン歯車(702)が回転しながら同方向にスライドし、したがって外針用スライダ(60)も同方向にスライドする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来技術の現状に鑑みて創案されたものであって、その目的は、リンク機構を利用しない比較的簡単な構成であって、かつ非力な者であっても簡単にチャージ操作が可能である生検装置を提供することである。
【0007】
本発明の生検装置は、相対スライドする内針と外針で構成される生検針を保持し、内針と外針をそれぞれ「チャージ位置」にロックするとともに、当該ロックを解除することで「突出位置」へと発射させる生検装置である。そして、当該生検装置は、
ケーシングと、
内針を保持するとともに、ケーシング内で「チャージ位置」と「突出位置」との間でスライド可能であり、内針用スプリングによって「突出位置」へ向かって付勢されている、内針用スライダと、
内針用スライダを、内針用スプリングの付勢力に抗して「チャージ位置」までスライドさせる内針チャージ操作部と、
外針を保持するとともに、ケーシング内で「チャージ位置」と「突出位置」との間でスライド可能であり、外針用スプリングによって「突出位置」へ向かって付勢されている、外針用スライダと、
外針用スライダを、外針用スプリングの付勢力に抗して「チャージ位置」までスライドさせる外針チャージ操作部と、を備えている。
さらに、当該生検装置は、下記(A)および(B)のいずれか一方、または両方の構成を備える。
【0008】
(A)
内針チャージ操作部には、そのスライド方向に延在するスライド歯車ラックが設けられる一方、ケーシングにも同スライド方向に延在する固定歯車ラックが設けられており、
内針用スライダは、スライド歯車ラックおよび固定歯車ラックの両方に係合するピニオン歯車を回転可能に保持しており、その結果、内針チャージ操作部をスライドさせると、ピニオン歯車が回転しながら同方向にスライドし、したがって内針用スライダも同方向にスライドする。
(B)
外針チャージ操作部には、そのスライド方向に延在するスライド歯車ラックが設けられる一方、ケーシングにも同スライド方向に延在する固定歯車ラックが設けられており、
外針用スライダは、スライド歯車ラックおよび固定歯車ラックの両方に係合するピニオン歯車を回転可能に保持しており、その結果、外針チャージ操作部をスライドさせると、ピニオン歯車が回転しながら同方向にスライドし、したがって外針用スライダも同方向にスライドする。
上記において、「スライド歯車ラック」とは、それ自身がスライド移動する歯車ラックという意味である。また、「固定歯車ラック」とは、それ自身は移動せず固定されている歯車ラックという意味である。
【0009】
すなわち、本発明の生検装置においては、内針チャージ操作部および外針チャージ操作部のいずれか一方、または両方に関して、「スライド歯車ラック」、「固定歯車ラック」、および両歯車ラックに係合する「ピニオン歯車」を介して力を伝達することにより、内針用スライダ(あるいは外針用スライダ)を引くのに要する力を「1/2」に低減することができる。これは、「動滑車を用いて物体を持ち上げる場合に、物体の質量の1/2の力で足りること」と同じ原理である(ただし、操作部を引く距離は、実際の針の移動量の2倍必要となる)。
【0010】
したがって、非力な者であっても、または片手操作であっても、比較的容易にチャージ操作を行うことが可能となる。しかも、リンク機構を使用していない分だけ、装置構成を比較的簡単なものとすることができ、部品点数の削減およびコストダウンという点においても有利である。
【0011】
本発明の生検装置においては、内針チャージ操作部をスプリングによって「突出位置」へ向かう方向(すなわち、内針チャージ操作部の初期位置に戻る方向)に付勢するとともに、内針用スライダを「内針を保持するスライダ本体」と「当該スライダ本体に対して相対スライドが可能なスライド部材」とで構成し、当該「スライド部材」がピニオン歯車を回転可能に保持する構成を採用してもよい。スライダ本体には、スライド部材と当接して上記相対スライドを止めるストッパが設けられる。
このような構成を採用すると、内針チャージ操作部を操作して、内針用スライダを「チャージ位置」にまで移動させてロックした後に、内針チャージ操作部を解放すると(操作する指を離すと)、スライダ本体が(すなわち、内針が)「チャージ位置」にロックされた状態で留まる一方、スライド部材は、内針チャージ操作部と共に上記スプリングによって引き戻される。すなわち、内針チャージ操作部が元の位置(初期位置)に復帰することができる。
【0012】
このような構成を採用した場合には、チャージ操作後に、ロックを解除して内針を発射させるとき、内針チャージ操作部は既に初期位置に復帰している。すなわち、内針が発射される時、装置外部に露出する内針チャージ操作部は移動しない。これにより、生検装置の操作性を向上させることができる(仮に、装置外部に露出する内針チャージ操作部が移動すると、当該操作部が装置を持つ手に当たる等して、内針の発射が妨げられてしまうことがある)。
外針用スライダについても、同様の構成を採用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を、添付の図面を参照して以下に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る生検装置10を示す斜視図であり、装置本体の反対面を併せて示している。生検装置10は、生検針を発射可能に保持している。生検針は、
図2を参照して後述するように、相対スライドする内針21と外針61で構成される。
生検針の外径(外針61の外径)は1.5mm程度であって、生検装置10は片手で持つことができる程度の大きさである。詳しくは後述するが、まず生検装置10の概要を説明する。
【0015】
《生検装置10の概要》
ケーシング11内には、内針21を保持する内針用スライダ20と、外針61を保持する外針用スライダ60とがスライド可能に保持されている。内針用スライダ20および外針用スライダ60は、それぞれ、ケーシング11内で「チャージ位置」と「突出位置」との間でスライド可能である。
内針用スライダ20は、ピニオン歯車302を回転可能に保持しており、このピニオン歯車302は装置外側に露出している。内針用スライダ20は、内針用スプリング22によって「突出位置」へ向かって付勢されているが、
図1中裏面側に設けた内針チャージ操作部30を図中右側に引いてピニオン歯車302を駆動することで、内針用スライダ20を「チャージ位置」までスライドさせることができる。内針用スライダ20は、ロック機構によって「チャージ位置」にロックされる。
同様に、外針用スライダ60は、ピニオン歯車702を回転可能に保持しており、このピニオン歯車702は装置外側に露出している。外針用スライダ60は、外針用スプリング62によって「突出位置」へ向かって付勢されているが、外針チャージ操作部70を図中右側に引いてピニオン歯車702を駆動することで、外針用スライダ60を「チャージ位置」までスライドさせることができる。外針用スライダ60は、ロック機構によって「チャージ位置」にロックされる。
チャージ後、操作部材1を後方側へ(
図1中、矢印A)スライド操作することで、ロック機構が解除され、生検針が「チャージ位置」から「突出位置」へ発射される(厳密には、内針20が最初に発射され、遅れて外針61が発射される)。
【0016】
《生検針の構成》
次に、
図2を参照して、生検針の原理を簡単に説明する(この原理自体は、一般的に知られている)。生検針は、互いに相対スライドする内針21と外針61で構成される。外針61は、筒状であってその先端(および後端)が開口している。内針21は、先端が尖っており、先端よりやや後方位置に凹所21aが設けられている。
内針21および外針61が「チャージ位置」にロックされている状態から、生検装置100の操作部材1を後方へ向かってスライド操作すると(
図1中、矢印A)、生検針が発射される(
図2中、矢印B)。具体的には、最初に内針21が発射されて臓器に突き刺さる。このとき、臓器の一部が凹所21a上に載る。その後、少し(ほんの一瞬)遅れて外針61が発射されて凹所21aを覆う。外針61の先端にはカッティングエッジ61aが形成されていて、凹所21aに載った組織を臓器から切り取ることができ、その後、組織は生検針とともに体外に取り出される。
【0017】
《生検装置10の内部構造》
次に、生検装置10の内部構造を詳細に説明する。
図3は、生検装置10の分解図である。ケーシング11は、上下の2ピース、すなわち、ケーシング上片11aとケーシング下片11bで構成されていて、これらの間に、内針用スライダ20および外針用スライダ60が挟み込むように保持される。
図3では、ケーシング上片11aは外面側を示しており、ケーシング下片11bは内面側を示している。
【0018】
図3(b)に矢印Cで示したように、内針21を筒状の外針61内に挿入し、両スライダ20、60を組み合わせた状態で、これらを上下のケーシング片11a、11bの間に組み込む。
【0019】
《内針用スライダ20がスライドする仕組み》
図4は、ケーシング下片11b上に、内針用スライダ20のみを載せた状態を示している。
図4を参照して、ケーシング11内で内針用スライダ20がスライドする機構を説明する。
【0020】
内針用スライダ20はシャフト31上にスライド可能に外挿されていて、シャフト31には、内針用スプリング22が外挿されている。
【0021】
内針用スライダ20は、内針固定部25に内針21を保持していて、内針21と一体的にスライドする。内針用スライダ20が
図4(a)の位置にあるとき、内針21は最も飛び出した状態にあり、したがって本明細書では、内針21および内針用スライダ20に関して、この位置を「突出位置」と呼ぶ。内針用スプリング22によって、内針用スライダ20は「突出位置」へ向かって付勢されているが、内針チャージ操作部30を引いてピニオン歯車302を駆動することで、スプリング22の付勢力に抗して、内針用スライダ20を
図4(c)の位置にまでスライドさせることができる。本明細書において、この位置を「チャージ位置」と呼ぶ。
図4(b)は、中間の位置を示している。
【0022】
図4(c)の「チャージ位置」においては、内針21は最も退避した状態にあり、スプリング22はチャージされた状態となる。また、内針固定部25の後方側に形成された弾性係合部26が、ケーシング後端に設けた係止孔18に係合して、内針用スライダ20を「チャージ位置」にロックしている。
【0023】
内針用スライダ20は、ピニオン歯車302を回転可能に保持している。上述したように、このピニオン歯車302が装置組立状態において外部に露出し、内針チャージ操作部30で駆動されることで、内針用スライダ20が「チャージ位置」へと運ばれる。
【0024】
《外針用スライダ60がスライドする仕組み》
図5は、ケーシング下片11b上に、外針用スライダ60のみを載せた状態を示している。
図5を参照して、ケーシング11内で外針用スライダ60がスライドする機構を説明する。
【0025】
外針用スライダ60はシャフト71上にスライド可能に外挿されていて、シャフト71には、外針用スプリング62が外挿されている。
【0026】
外針用スライダ60は、外針固定部65に外針61を保持していて、外針61と一体的にスライドする。外針用スライダ60が
図5(a)の位置にあるとき、外針61は最も飛び出した状態にあり、したがって本明細書では、外針61および外針用スライダ60に関して、この位置を「突出位置」と呼ぶ。外針用スプリング62によって、外針用スライダ60は「突出位置」へ向かって付勢されているが、外針チャージ操作部70を引いてピニオン歯車702を駆動することで、スプリング62の付勢力に抗して、外針用スライダ60を
図5(c)の位置にまでスライドさせることができる。本明細書において、この位置を「チャージ位置」と呼ぶ。
図5(b)は、中間の位置を示している。
【0027】
図5(c)の「チャージ位置」においては、外針61は最も退避した状態にあり、スプリング62はチャージされた状態となる。また、外針固定部65の後方側に形成された弾性係合部66が、ケーシング内面に設けた係止孔19に係合して、外針用スライダ60を「チャージ位置」にロックしている。
【0028】
外針用スライダ60は、ピニオン歯車702を回転可能に保持している。上述したように、このピニオン歯車702が装置組立状態において外部に露出し、外針チャージ操作部70で駆動されることで、外針用スライダ60が「チャージ位置」へと運ばれる。
【0029】
《チャージ操作部30、70を引くのに要する力を小さくするための工夫》
本発明では、チャージの際に内針チャージ操作部30(あるいは、外針チャージ操作部70)を引くのに要する力を小さくするために、特別の工夫を凝らしている。以下に、この工夫を内針チャージ操作部30に関連して説明するが、外針チャージ操作部70についても同じである。
【0030】
図3(a)に示したように、まず、内針チャージ操作部30には、そのスライド方向に延在するスライド歯車ラック301が一体的に形成されている。「スライド歯車ラック」とは、それ自身がスライド移動する歯車ラックという意味である。
一方、ケーシング11(詳しくは、ケーシング上片11a)にも同スライド方向に延在する固定歯車ラック303が一体的に形成されている。「固定歯車ラック」とは、それ自身は移動せず固定されている歯車ラックという意味である。
【0031】
そして、内針用スライダ20は、これら歯車ラック301、303の両方に係合するピニオン歯車302を回転可能に保持している。具体的な保持態様は、一般的に知られたものを適宜採用すればよい。重要な点は、ピニオン歯車302と内針用スライダ20は一体であり、ピニオン歯車302がスライド移動すれば、内針用スライダ20も(内針21も)一緒に移動するという点である。
つまり、内針チャージ操作部30をスライドさせると、ピニオン歯車302が回転しながら同方向にスライドし、したがって内針用スライダ20も同方向にスライドし、内針21が「チャージ位置」へと引き込まれる。
【0032】
このような構成の結果、内針用スプリング22の付勢力に抗して内針用スライダ20をスライドさせるのに要する力を小さくすることができる。すなわち、仮に上述のような歯車ラックおよびピニオン歯車を介することなく、内針チャージ操作部30をダイレクトに内針用スライダ20に連結してスライドさせる場合に要する力を“M”とすると、歯車ラックおよびピニオン歯車を介在させることで、必要な力を半分(M/2)にすることができる。
ただし、内針チャージ操作部30を引く距離は、内針用スライダ20の実際の移動量(すなわち、内針21の移動量)の2倍必要となるが、それは許容範囲内である。例えば、実際に内針21をスライドさせる距離は、例えば11mm、16mm、22mmであるが、それぞれの場合に、内針チャージ操作部30を引く距離は22mm、32mm、44mmとなる。
以上は、「動滑車を用いて物体を持ち上げる場合に、物体の質量の1/2の力で足りること」と同じ原理である。
図9を参照して、この原理を模式的に説明する。
【0033】
内針チャージ操作部30をスライド操作して、ピニオン歯車302と一体に移動する内針21を「突出位置:
図9a」から「チャージ位置:
図9c」まで移動させる場合を考える。ここで注意すべきは、「内針21が実際に移動する距離は、ピニオン歯車302が移動する距離に等しい」ということであり、当該距離を“L”とする。すなわち、内針21が移動すべき距離は“L”である。
内針チャージ操作部30を
図9(b)の中間位置にまで引いたとき、内針チャージ操作部30は既に距離“L”だけ移動しているが、ピニオン歯車302(すなわち、内針21)は、“L/2”しか移動していないことが分かる。
内針チャージ操作部30をさらに引くことで、ピニオン歯車302(すなわち、内針21)を
図9(c)の「チャージ位置」にまで引くことができるが、このとき、内針チャージ操作部30の移動量は“2L”となっている。
このように、内針チャージ操作部30を引く距離は実際の内針21の移動量の2倍となるが、必要な力を半分にすることができる。
【0034】
以上に内針チャージ操作部30を引く力が小さくなる原理を説明したが、同様にして、外針用スプリング62の付勢力に抗して外針用スライダ60を引くのに要する力も半分にすることができる。
図示した例では(特に、
図3a参照)、内針チャージ操作部30と外針チャージ操作部70の両方にこのような機構を適用している。すなわち、外針チャージ操作部70に対してスライド歯車701を一体的に形成し、ケーシング11に固定歯車ラック703を一体的に形成している。そして、外針用スライダ60は、これら歯車ラック701、703の両方に係合するピニオン歯車702を回転可能に保持している。
図示はしていないが、このような機構を、内針チャージ操作部30と外針チャージ操作部70のいずれか一方にのみ採用することも可能である。
【0035】
《スライダ20、60を、相対スライド可能な2部材で構成する変形例》
図1〜
図5を参照して以上に説明した実施形態では、内針用スライダ20がピニオン歯車302を保持していて、両者が一体的にスライド移動するものであった。
これに対する変形例を
図6に示した。この変形例では、内針用スライダ20は、「スライダ本体20a」と「当該スライダ本体に対して相対スライドが可能なスライド部材20b」とで構成されている。
【0036】
図6に示したように、スライダ本体20aには、長手方向に延在するリブが形成されていて、この上をスライド部材20bがスライドする。
図6では図示を省略しているが、スライダ本体20aは、内針21を保持している(
図4参照)。一方、スライド部材20bは、ピニオン歯車302を回転可能に保持している。
スライド部材20bは、スライダ本体20aに対して相対スライドが可能であるが、ストッパ24に当接した時点で当該相対スライドは禁止される。
【0037】
このような構成による効果を、
図7を参照して説明する。
図7(a)、(b)、(c)は、
図4(a)、(b)、(c)の位置関係に対応している。
図7中の矢印はすべて、内針チャージ操作部30からピニオン歯車302に作用する力の方向を示している。
内針チャージ操作部30を
図1中右方向へスライドさせたとき、これによりピニオン歯車302(およびスライド部材20b)が
図7(a)中右側にスライドする。このとき、スライド部材20bは、ストッパ24と当接しているが故に、スライダ本体20aを駆動して(押し動かして)「チャージ位置」まで移動させる。上述した通り、スライダ本体20aはこの「チャージ位置」でロックされる(
図7c)。
このロックはスライド部材20bには及ばないので、内針チャージ操作部30を不図示のスプリングで左側へと付勢しておくと(
図8の例参照)、内針チャージ操作部30を解放したとき(操作する指を離したとき)、内針チャージ操作部30と共にピニオン歯車302およびスライド部材20bがスプリング72によって引き戻される。一方、スライダ本体20aは、「チャージ位置」にロックされた状態で留まる(
図7c)。
【0038】
このような構成によれば、チャージ操作後直ちに、内針チャージ操作部30が「初期位置(
図1に示した位置)」に戻ることができる。つまり、後にロックを解除して内針を発射させるとき、内針チャージ操作部30は既に「初期位置」に復帰している。したがって、内針が発射される時、装置外部に露出する内針チャージ操作部30は移動しないというメリットが得られる。
仮に、内針用スライダ20がピニオン歯車302と一体にしか移動しない場合には、内針を発射する際に、装置外部に露出する内針チャージ操作部30が一緒に移動することとなる。また、内針チャージ操作部30が装置を持つ手に当たる等、何らかの障害によって停止すると、内針も発射途中で呈ししてしまう。
図6で説明した構成によれば、このような不都合はなく、生検装置の操作性を向上させることができる。
【0039】
なお、外針用スライダ60についても同様に、「スライダ本体60a」と「当該スライダ本体に対して相対スライドが可能なスライド部材60b」とで構成する変形例を採用することが可能であり、
図6、7において、参照数字をカッコ書きで併記している。
【0040】
《チャージ操作部30、70を復帰させるスプリングを1本で共用する例》
図6、
図7に示した変形例の場合、内針チャージ操作部30は、スプリングによって「初期位置」(
図1に示した操作前の位置)に向かって付勢しておくこと、すなわち、内針21(および内針用スライダ20)の「突出位置」へ向かう方向に付勢しておくことが好ましい。同様に、外針チャージ操作部70もスプリングによって「初期位置」に戻しておくことが好ましい。
その場合、内針チャージ操作部30および外針チャージ操作部70に、それぞれ個別にスプリングを設けてもよいが、
図8の変形例のように、内針チャージ操作部30に突出部材35を設けることで、1本のスプリングで共用することができる(すなわち、スプリングを1つ省略してコストダウンを図ることができる)。
【0041】
図8に示したように、内針チャージ操作部30には、外針チャージ操作部70と当接可能な突出部材35を設けている。
図8(イ)では、内針チャージ操作部30および外針チャージ操作部70がともに「初期位置」にある。
【0042】
図8(ロ)は、外針チャージ操作部70のみをスライド操作させた状態を示している(これは、
図2(a)において、外針61だけを後退させて、凹所21a上の組織を取り出すときの操作である)。このとき、外針チャージ操作部70はスプリング72(外針用スプリング62とは異なる別のスプリング)によって「初期位置」に向けて付勢されており、操作する指を離すと「初期位置」に戻る。
【0043】
図8(ハ)は、内針チャージ操作部30のみをスライド操作させた場合であるが、突出部材35が外針チャージ操作部70に当接しているので、結局、両方の操作部30、70がスライド移動している。内針チャージ操作部30のみを単独でスライドさせることはできないが、内針21をチャージするときは必ず外針61もチャージするので、使用に際して問題はない。
【0044】
内針チャージ操作部30自体には、「初期位置」に向けて付勢するためのスプリングは設けられておらず、外針チャージ操作部70に作用するスプリング72によって、「初期位置」に向かって付勢されている。すなわち、内針チャージ操作部30を解放すると(操作する指を離すと)、スライダ本体20aが「チャージ位置」に留まる一方、スライド部材20bは、内針チャージ操作部30および外針チャージ操作部70と共にスプリング72によって「初期位置」に引き戻される。
【0045】
このように、
図8の例では、内針チャージ操作部30に対して、「初期位置」に戻すためのスプリングを設ける必要がないので、コストダウンを図る上で有利である。
【解決手段】相対スライドする内針と外針で構成される生検針を保持し、内針と外針をそれぞれ「チャージ位置」にロックするとともに、当該ロックを解除することで「突出位置」へと発射させる生検装置において、内針をチャージする内針チャージ操作部30には、そのスライド方向に延在するスライド歯車ラックが設けられる一方、ケーシング11にも同スライド方向に延在する固定歯車ラックが設けられている。内針用スライダ20は、スライド歯車ラックおよび固定歯車ラックの両方に係合するピニオン歯車302を回転可能に保持しており、その結果、内針チャージ操作部30をスライドさせると、ピニオン歯車302が回転しながら同方向にスライドし、したがって内針用スライダ20も同方向にスライドする。外針チャージ操作部70に同様の機構を設けてもよい。