【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、貴金属を含有するミクロ多孔質ゼオライト材料と、多孔質SiO
2を含有するバインダーとを含み、細孔体積全体に対して70%を超えるミクロ細孔部分とを有する触媒により達成される。
【0011】
驚くべきことに、貴金属を含有するミクロ多孔質ゼオライト材料と、メソ及びマクロ細孔を少量しか有しない純粋なSiO
2バインダーとを含む触媒は、特に溶媒タイプの空気汚染物質の酸化において、顕著に高い活性を有することが発見された。
【0012】
上記触媒の有するミクロ細孔部分は、細孔体積全体に対して70%を超えることが好ましく、80%を超えるとより好ましく、90%を超えると最も好ましい。
【0013】
本発明の触媒のさらなる態様では、触媒の有するミクロ細孔部分は、細孔体積全体に対して72%を超えており、76%を超えると好ましい。
【0014】
立体的な理由により、毛細管凝縮はミクロ細孔では起こりえない。それとは別に、輸送細孔(transport pores)は十分に大きいため、毛細管凝縮は通常は起こらない。全体として、本触媒はミクロ細孔の割合が70%を超えると同時にメソ及びマクロ細孔の割合が20〜30%の間であることを特徴とする。細孔の割合は100%未満が好ましく、95%未満がより好ましい。
【0015】
したがって、本発明の触媒は、多モードの細孔の分布を有する触媒である。すなわち、本触媒はミクロ細孔、メソ細孔及びマクロ細孔をも含む。本発明の記載において、ミクロ細孔、メソ細孔及びマクロ細孔の用語は、直径1ナノメートル未満の細孔(ミクロ細孔)、直径1〜50ナノメートルの細孔(メソ細孔)または直径50ナノメートルを超える細孔(マクロ細孔)を意味する。ミクロ細孔の割合及びメソ/マクロ細孔の割合は、ASTM D−4365−85に従いtプロット法と呼ばれる方法により決定する。
【0016】
本触媒の細孔体積の合計は、100mm
3/gを超えることが好ましく、180mm
3/gを超えるとより好ましい。細孔体積の合計は、窒素ポロシメトリーによりDIN ISO 9277に従い決定するか、代わりに貴ガスポロシメトリーにより決定することが好ましい。
【0017】
本触媒のある態様では、ゼオライト材料が有するアルミニウムの割合は、ゼオライト材料に対しては2モル%未満が好ましく、1モル%未満がより好ましい。
【0018】
さらに、バインダー成分もまた有意量のアルミニウムを含んでないことが好ましい。バインダーが含むアルミニウムは、バインダーの量に対して0.04重量%未満が好ましく、0.02重量%未満がより好ましい。好適なバインダーとしては、例えば、Ludox AS 40またはAl
2O
3の割合が0.04重量%未満のテトラエトキシシランが挙げられる。
【0019】
本発明のある態様では、ゼオライト材料が含む貴金属は、ゼオライト材料の量に対して0.5〜6.0重量%が好ましく、0.6〜5.0重量%がより好ましく、0.7〜4.0重量%がさらに好ましく、0.5〜<3.0重量%が特に好ましい。
【0020】
さらに、ウォッシュコートに関しては、ウォッシュコートが含む貴金属ロードは、ウォッシュコートの体積に対して0.1〜2.0g/lが好ましく、0.4〜1.5g/lがより好ましく、0.45〜1.0g/lがさらに好ましく、0.45〜0.55重量%が最も好ましい。
【0021】
上記貴金属は、好ましくは、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、オスミウム、金及び銀からなる群より選択されるもの、またはこれらの貴金属の組み合わせもしくはこれらの貴金属の合金が好ましい。
【0022】
上記貴金属は、貴金属粒子の形態で存在していてもよく、貴金属酸化物の形態で存在していてもよい。以下、主に貴金属粒子について記述するが、特に他の特記事項のない限り、貴金属粒子は貴金属酸化物粒子を含む。
【0023】
貴金属粒子の粒子サイズは、平均直径0.5〜5ナノメートルが好ましく、平均直径0.5〜3ナノメートルがより好ましく、平均直径0.5〜2ナノメートルが特に好ましい。粒子サイズは、例えば、TEMを用いて決定することができる。
【0024】
原則として、ゼオライト材料にロードされる貴金属粒子が可能な限り小さければ、粒子の分散度が非常に高くなるため有利となる。分散度とは、金属粒子における金属原子の総数に対し、金属粒子の表面を形成する金属原子の数の割合を意味する。しかし、好ましい平均粒子径は用いられる触媒の実施形態と同様に、貴金属粒子の貴金属の性質、細孔の種類や、特にゼオライト材料の細孔の比率及びチャネルの比率にも依存する。
【0025】
貴金属粒子は、ゼオライトの細孔システム内部に位置することが好ましい。本発明では、これはゼオライトのミクロ、メソ及びマクロ細孔を意味する。貴金属は、(大部分は)ゼオライトのミクロ細孔に位置することが好ましい。
【0026】
本発明の触媒を含むゼオライト材料は、ゼオライトであってもよく、ゼオライト類似物質であってもよい。好ましいゼオライト材料の例としては、ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、ガロケイ酸塩、ゲルマノケイ酸塩、アルミノリン酸塩、シリコアルミノリン酸塩、金属アルミノリン酸塩、金属アルミノホスホケイ酸塩、チタノケイ酸塩またはチタノアルミノケイ酸塩が挙げられる。どのゼオライト材料が用いられるかは、一方ではゼオライト材料の表面または内部に使用される貴金属の性質に依存し、他方では触媒が用いられる用途に依存する。
【0027】
現在の技術水準では、想定される用途に対応するよう、例えば、構造タイプ、細孔径、チャネル径、化学構造、イオン交換能、活性化特性など、ゼオライト材料の特性を調整する数多くの方法が知られている。しかし、本発明において、ゼオライト材料は、一般的に以下の構造型のいずれかに相当するものが好ましい:AFI、AEL、BEA、CHA、EUO、FAU、FER、KFI、LTL、MAZ、MOR、MEL、MTW、OFF、TON及びMFI。前述のゼオライト材料は、ナトリウム型やアンモニウム型であってもよく、H型であってもよい。両親媒性化合物を用いて製造されたゼオライト材料もまた本発明において好ましい。このような材料の好ましい例はUS5,250,282に挙げられており、引用により本発明に組み込まれるものとする。
【0028】
本発明の触媒のさらなる態様では、触媒は完全触媒(Vollkatalysator)またはコーティング触媒の粉末として存在することが好ましい。完全触媒は、例えば押出成形体、例えばモノリスでもよい。さらに好ましい成形体としては、例えば球、リング、円筒、穿孔円筒、三葉または円錐が挙げられ、モノリスが特に好ましく、例えばモノリス状ハニカム体が挙げられる。
【0029】
さらに好ましくは、本発明における触媒は、支持体に塗布されている、すなわちコーティング触媒であってもよい。支持体は、例えば、開孔発泡体構造、例えば、発泡金属、発泡合金、炭化ケイ素発泡体、Al
2O
3発泡体、ムライト発泡体、Al−チタン発泡体であってもよく、モノリス状支持体構造であってもよい。モノリス状支持体構造は、例えば、互いに平行に位置するチャネルを有しており、これらチャネルはコンジットにより互いに接続していてもよく、旋回ガスのための特定の内部構造を含んでいてもよい。
【0030】
同様に好ましい支持体は、例えば、金属箔、焼結金属箔または金属メッシュ状の金属または合金からなるシートより形成され、例えば押出、巻線及び積層により製造される。同様の方法で、セラミック材料より作られる支持体を用いてもよい。セラミック材料は、多くの場合、コージライト、ムライト、α−酸化アルミニウム、炭化ケイ素及びチタン酸アルミニウムなど小さな表面積をもつ不活性材料である。しかし、γ−酸化アルミニウムやTiO
2のような大きな表面積をもつ材料からなる支持体を用いてもよい。
【0031】
本発明の触媒のある態様では、ゼオライト材料/バインダーの重量比は80/20〜60/40であり、より好ましくは75/25〜65/35であり、最も好ましくはおよそ70/30である。
【0032】
本発明の触媒のBET表面積は、好ましくは10〜600m
2/gの範囲であり、より好ましくは50〜500m
2/gの範囲であり、最も好ましくは100〜450m
2/gの範囲である。BET表面積は、DIN66132に従い窒素吸着により決定する。
【0033】
本発明のさらなる目的は、本触媒の製造方法であって、該製造方法は以下の工程を含む。
a)貴金属前駆体化合物を、ミクロ多孔質ゼオライト材料に導入し、
b)前記貴金属前駆体化合物をロードした前記ゼオライト材料を焼成し、
c)前記貴金属化合物をロードした前記ゼオライト材料を、多孔質SiO
2含有バインダー及び溶媒と混合し、
d)前記貴金属化合物をロードした前記ゼオライト材料及び前記バインダーを含む前記混合物を、乾燥及び焼成する。
【0034】
工程c)により得られる混合物は、乾燥及び焼成する前に支持体に塗布し、コーティング触媒を形成してもよい。
【0035】
想定される用途、すなわち触媒反応によって、ゼオライト材料の貴金属は、金属形態の貴金属または貴金属酸化物のいずれかとして存在する。
【0036】
金属形態の貴金属が必要な場合、ゼオライト材料にロードされた貴金属化合物の金属は、後の工程により金属形態に変換される。貴金属化合物は、通常は熱分解または水素、一酸化炭素もしくは湿式化学還元剤による還元により対応する貴金属へと変換される。上記還元は、触媒反応の開始時に反応器内の系中にて行うこともできる。
【0037】
本発明の方法におけるある態様では、ゼオライト材料に貴金属前駆体化合物溶液を含浸させることにより貴金属化合物を導入する。例えば、ゼオライト触媒上に溶液をスプレーすることによる。それによって、ゼオライト材料の表面が広く均一に貴金属前駆体化合物により被覆されることが保証される。貴金属前駆体化合物がゼオライト材料を実質的に均一に被覆することにより、後の貴金属前駆体化合物の分解が起こる焼成工程または金属化合物の対応する金属への変換において、ゼオライト材料に貴金属粒子を広く均一にロードするための基礎が形成される。ゼオライト材料は、当業者に既知の初期湿潤法により含浸されることが好ましい。貴金属前駆体化合物としては、例えば、対応する貴金属の硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩、ギ酸塩、アミン、スルフィド、炭酸塩、水酸化物またはハロゲン化物を用いることができる。
【0038】
貴金属前駆体をゼオライト材料に含浸させた後、好ましくは200〜800℃の温度、より好ましくは300〜700℃の温度、最も好ましくは500〜600℃の温度において焼成を行う。本発明では、焼成は保護気体の下で行うのが好ましい。保護気体としては、例えば窒素またはアルゴンが挙げられ、好ましくはアルゴンである。
【0039】
その他の点では、上述の触媒に適用されるものと同様の選択が、当該方法にも適用される。
【0040】
本発明のさらなる目的は、酸化触媒として、特に有機汚染物質、及び特に溶媒タイプの有機汚染物質の酸化のための触媒としての本発明の触媒の使用である。
【0041】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されない。以下は追加の図面に関する。