特許第5789715号(P5789715)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クラリアント・プロドゥクテ・(ドイチュラント)・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

特許5789715有機汚染物質の酸化のための疎水性を顕著に示す低温酸化触媒
<>
  • 特許5789715-有機汚染物質の酸化のための疎水性を顕著に示す低温酸化触媒 図000010
  • 特許5789715-有機汚染物質の酸化のための疎水性を顕著に示す低温酸化触媒 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5789715
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】有機汚染物質の酸化のための疎水性を顕著に示す低温酸化触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/74 20060101AFI20150917BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20150917BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20150917BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20150917BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   B01J29/74 AZAB
   B01D53/86 100
   B01J37/02 101C
   B01J37/08
   B01J37/02 301A
   F01N3/10 A
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-510819(P2014-510819)
(86)(22)【出願日】2012年5月18日
(65)【公表番号】特表2014-519970(P2014-519970A)
(43)【公表日】2014年8月21日
(86)【国際出願番号】EP2012059243
(87)【国際公開番号】WO2012156503
(87)【国際公開日】20121122
【審査請求日】2014年1月20日
(31)【優先権主張番号】102011101877.1
(32)【優先日】2011年5月18日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597109656
【氏名又は名称】クラリアント・プロドゥクテ・(ドイチュラント)・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】ティースラー,アルノ
(72)【発明者】
【氏名】クローゼ,フランク
(72)【発明者】
【氏名】アルトホフ,ローデリック
(72)【発明者】
【氏名】エンドラー,ミカ
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】レズニコフ,グリゴリー
(72)【発明者】
【氏名】シュシュケ,マルギット
【審査官】 岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第00/047309(WO,A1)
【文献】 特表2007−530677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
B01D 53/86、53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貴金属を含有するミクロ多孔質ゼオライト材料と、多孔質SiO2を含有するバインダーとを含む、有機汚染物質の酸化のための触媒であって、
前記触媒の有する直径1ナノメートル未満のミクロ細孔の割合が、細孔体積全体に対して70%を超えることを特徴とする触媒。
【請求項2】
前記ゼオライト材料の有するアルミニウムの割合が2モル%未満であることを特徴とする、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記ゼオライト材料が、0.5〜6.0重量%の貴金属を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の触媒。
【請求項4】
前記ゼオライト材料とバインダーとの重量比が80:20〜60:40であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項5】
前記ゼオライト材料が、AFI、AEL、BEA、CHA、EUO、FAU、FER、KFI、LTL、MAZ、MOR、MEL、MTW、OFF、TON及びMFIからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項6】
BET表面積が10〜800m2/gであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項7】
前記触媒の細孔体積の合計が100mm3/gを超えることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項8】
前記貴金属が、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、オスミウム、金及び銀からなる群より選択されるもの、または前述の貴金属の組み合わせからなることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項9】
前記貴金属の微粒子が、前記ゼオライトの細孔システム内部に位置することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の触媒の製造方法であって、以下の工程を含む方法。
a)貴金属前駆体化合物を、ミクロ多孔質ゼオライト材料に導入し、
b)前記貴金属前駆体化合物をロードした前記ゼオライト材料を焼成し、
c)前記焼成により生じた貴金属化合物をロードした前記ゼオライト材料を、多孔質SiO2含有バインダー及び溶媒と混合し、
d)前記貴金属化合物をロードした前記ゼオライト材料及び前記バインダーを含む前記混合物を、乾燥及び焼成する。
【請求項11】
工程c)により得られる前記混合物を支持体に塗布することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の触媒または請求項10もしくは11に記載の方法により製造された触媒の、有機汚染物質の酸化のための酸化触媒としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貴金属を含有するミクロ多孔質ゼオライト材料と、多孔質SiO2を含有するバインダーとを含み、細孔体積全体に対して70%を超えるミクロ細孔部分を有する触媒に関する。本発明は、さらに前記触媒の製造方法及び前記触媒の酸化触媒としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、触媒を用いた排ガスの浄化が知られている。例えば、燃焼エンジンからの排ガスは、いわゆる三方触媒(TWC)を用いて浄化される。これにより、炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)の低減とともに、窒素酸化物が低減される。
【0003】
同様に、ディーゼルエンジンからの排ガスも触媒を用いて前処理される。これにより、例えば一酸化炭素、未燃焼炭化水素、窒素酸化物及び煤粒子などが排ガスから除去される。触媒により処理される未燃焼炭化水素には、パラフィン、オレフィン、アルデヒド及び芳香族などが含まれる。
【0004】
同様に、発電所からの排ガスや、工業生産プロセスにおいて形成される排ガスも、触媒を用いて浄化される。
【0005】
有機汚染物質を含有する排ガスの浄化に用いられる触媒は、一般的に水蒸気の影響を受けやすい。水蒸気は触媒表面の活性中心をブロックし、その結果触媒活性が低下する。このことは、より高レベルの貴金属ドープにより補填されるが、一方で触媒のコストが上昇し、他方で技術水準における既知のシステムの場合には焼結傾向が高まる。
【0006】
そのうえ、低温の排ガスにおける水蒸気の分圧が高いと、毛細管凝縮によって触媒の細孔内に水の膜が形成されることがあり、同様に触媒活性が低下するが、逆もまた然りである。多くの場合、毛細管凝縮を避けるために排ガスの温度を上げることは、経済的な理由により実用的ではない。
【0007】
多くの実施態様において、導入ガスを加熱するために使用可能なエネルギーの量を制限する熱回収システムが組み込まれている。
【0008】
このように、有機汚染物質、特に溶媒タイプの汚染物質の酸化において、既に高い活性を有し、低い温度、例えば300℃未満において、高い水蒸気濃度下であっても、熱焼結傾向の低下をも示し、さらに貴金属ドープのレベルをより顕著に低くし得る触媒が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、低い温度において有機汚染物質の酸化に高い活性を有し、熱焼結の低い傾向を示し、低い貴金属割合を必要とする触媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、貴金属を含有するミクロ多孔質ゼオライト材料と、多孔質SiO2を含有するバインダーとを含み、細孔体積全体に対して70%を超えるミクロ細孔部分とを有する触媒により達成される。
【0011】
驚くべきことに、貴金属を含有するミクロ多孔質ゼオライト材料と、メソ及びマクロ細孔を少量しか有しない純粋なSiO2バインダーとを含む触媒は、特に溶媒タイプの空気汚染物質の酸化において、顕著に高い活性を有することが発見された。
【0012】
上記触媒の有するミクロ細孔部分は、細孔体積全体に対して70%を超えることが好ましく、80%を超えるとより好ましく、90%を超えると最も好ましい。
【0013】
本発明の触媒のさらなる態様では、触媒の有するミクロ細孔部分は、細孔体積全体に対して72%を超えており、76%を超えると好ましい。
【0014】
立体的な理由により、毛細管凝縮はミクロ細孔では起こりえない。それとは別に、輸送細孔(transport pores)は十分に大きいため、毛細管凝縮は通常は起こらない。全体として、本触媒はミクロ細孔の割合が70%を超えると同時にメソ及びマクロ細孔の割合が20〜30%の間であることを特徴とする。細孔の割合は100%未満が好ましく、95%未満がより好ましい。
【0015】
したがって、本発明の触媒は、多モードの細孔の分布を有する触媒である。すなわち、本触媒はミクロ細孔、メソ細孔及びマクロ細孔をも含む。本発明の記載において、ミクロ細孔、メソ細孔及びマクロ細孔の用語は、直径1ナノメートル未満の細孔(ミクロ細孔)、直径1〜50ナノメートルの細孔(メソ細孔)または直径50ナノメートルを超える細孔(マクロ細孔)を意味する。ミクロ細孔の割合及びメソ/マクロ細孔の割合は、ASTM D−4365−85に従いtプロット法と呼ばれる方法により決定する。
【0016】
本触媒の細孔体積の合計は、100mm3/gを超えることが好ましく、180mm3/gを超えるとより好ましい。細孔体積の合計は、窒素ポロシメトリーによりDIN ISO 9277に従い決定するか、代わりに貴ガスポロシメトリーにより決定することが好ましい。
【0017】
本触媒のある態様では、ゼオライト材料が有するアルミニウムの割合は、ゼオライト材料に対しては2モル%未満が好ましく、1モル%未満がより好ましい。
【0018】
さらに、バインダー成分もまた有意量のアルミニウムを含んでないことが好ましい。バインダーが含むアルミニウムは、バインダーの量に対して0.04重量%未満が好ましく、0.02重量%未満がより好ましい。好適なバインダーとしては、例えば、Ludox AS 40またはAl23の割合が0.04重量%未満のテトラエトキシシランが挙げられる。
【0019】
本発明のある態様では、ゼオライト材料が含む貴金属は、ゼオライト材料の量に対して0.5〜6.0重量%が好ましく、0.6〜5.0重量%がより好ましく、0.7〜4.0重量%がさらに好ましく、0.5〜<3.0重量%が特に好ましい。
【0020】
さらに、ウォッシュコートに関しては、ウォッシュコートが含む貴金属ロードは、ウォッシュコートの体積に対して0.1〜2.0g/lが好ましく、0.4〜1.5g/lがより好ましく、0.45〜1.0g/lがさらに好ましく、0.45〜0.55重量%が最も好ましい。
【0021】
上記貴金属は、好ましくは、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、オスミウム、金及び銀からなる群より選択されるもの、またはこれらの貴金属の組み合わせもしくはこれらの貴金属の合金が好ましい。
【0022】
上記貴金属は、貴金属粒子の形態で存在していてもよく、貴金属酸化物の形態で存在していてもよい。以下、主に貴金属粒子について記述するが、特に他の特記事項のない限り、貴金属粒子は貴金属酸化物粒子を含む。
【0023】
貴金属粒子の粒子サイズは、平均直径0.5〜5ナノメートルが好ましく、平均直径0.5〜3ナノメートルがより好ましく、平均直径0.5〜2ナノメートルが特に好ましい。粒子サイズは、例えば、TEMを用いて決定することができる。
【0024】
原則として、ゼオライト材料にロードされる貴金属粒子が可能な限り小さければ、粒子の分散度が非常に高くなるため有利となる。分散度とは、金属粒子における金属原子の総数に対し、金属粒子の表面を形成する金属原子の数の割合を意味する。しかし、好ましい平均粒子径は用いられる触媒の実施形態と同様に、貴金属粒子の貴金属の性質、細孔の種類や、特にゼオライト材料の細孔の比率及びチャネルの比率にも依存する。
【0025】
貴金属粒子は、ゼオライトの細孔システム内部に位置することが好ましい。本発明では、これはゼオライトのミクロ、メソ及びマクロ細孔を意味する。貴金属は、(大部分は)ゼオライトのミクロ細孔に位置することが好ましい。
【0026】
本発明の触媒を含むゼオライト材料は、ゼオライトであってもよく、ゼオライト類似物質であってもよい。好ましいゼオライト材料の例としては、ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、ガロケイ酸塩、ゲルマノケイ酸塩、アルミノリン酸塩、シリコアルミノリン酸塩、金属アルミノリン酸塩、金属アルミノホスホケイ酸塩、チタノケイ酸塩またはチタノアルミノケイ酸塩が挙げられる。どのゼオライト材料が用いられるかは、一方ではゼオライト材料の表面または内部に使用される貴金属の性質に依存し、他方では触媒が用いられる用途に依存する。
【0027】
現在の技術水準では、想定される用途に対応するよう、例えば、構造タイプ、細孔径、チャネル径、化学構造、イオン交換能、活性化特性など、ゼオライト材料の特性を調整する数多くの方法が知られている。しかし、本発明において、ゼオライト材料は、一般的に以下の構造型のいずれかに相当するものが好ましい:AFI、AEL、BEA、CHA、EUO、FAU、FER、KFI、LTL、MAZ、MOR、MEL、MTW、OFF、TON及びMFI。前述のゼオライト材料は、ナトリウム型やアンモニウム型であってもよく、H型であってもよい。両親媒性化合物を用いて製造されたゼオライト材料もまた本発明において好ましい。このような材料の好ましい例はUS5,250,282に挙げられており、引用により本発明に組み込まれるものとする。
【0028】
本発明の触媒のさらなる態様では、触媒は完全触媒(Vollkatalysator)またはコーティング触媒の粉末として存在することが好ましい。完全触媒は、例えば押出成形体、例えばモノリスでもよい。さらに好ましい成形体としては、例えば球、リング、円筒、穿孔円筒、三葉または円錐が挙げられ、モノリスが特に好ましく、例えばモノリス状ハニカム体が挙げられる。
【0029】
さらに好ましくは、本発明における触媒は、支持体に塗布されている、すなわちコーティング触媒であってもよい。支持体は、例えば、開孔発泡体構造、例えば、発泡金属、発泡合金、炭化ケイ素発泡体、Al23発泡体、ムライト発泡体、Al−チタン発泡体であってもよく、モノリス状支持体構造であってもよい。モノリス状支持体構造は、例えば、互いに平行に位置するチャネルを有しており、これらチャネルはコンジットにより互いに接続していてもよく、旋回ガスのための特定の内部構造を含んでいてもよい。
【0030】
同様に好ましい支持体は、例えば、金属箔、焼結金属箔または金属メッシュ状の金属または合金からなるシートより形成され、例えば押出、巻線及び積層により製造される。同様の方法で、セラミック材料より作られる支持体を用いてもよい。セラミック材料は、多くの場合、コージライト、ムライト、α−酸化アルミニウム、炭化ケイ素及びチタン酸アルミニウムなど小さな表面積をもつ不活性材料である。しかし、γ−酸化アルミニウムやTiO2のような大きな表面積をもつ材料からなる支持体を用いてもよい。
【0031】
本発明の触媒のある態様では、ゼオライト材料/バインダーの重量比は80/20〜60/40であり、より好ましくは75/25〜65/35であり、最も好ましくはおよそ70/30である。
【0032】
本発明の触媒のBET表面積は、好ましくは10〜600m2/gの範囲であり、より好ましくは50〜500m2/gの範囲であり、最も好ましくは100〜450m2/gの範囲である。BET表面積は、DIN66132に従い窒素吸着により決定する。
【0033】
本発明のさらなる目的は、本触媒の製造方法であって、該製造方法は以下の工程を含む。
a)貴金属前駆体化合物を、ミクロ多孔質ゼオライト材料に導入し、
b)前記貴金属前駆体化合物をロードした前記ゼオライト材料を焼成し、
c)前記貴金属化合物をロードした前記ゼオライト材料を、多孔質SiO2含有バインダー及び溶媒と混合し、
d)前記貴金属化合物をロードした前記ゼオライト材料及び前記バインダーを含む前記混合物を、乾燥及び焼成する。
【0034】
工程c)により得られる混合物は、乾燥及び焼成する前に支持体に塗布し、コーティング触媒を形成してもよい。
【0035】
想定される用途、すなわち触媒反応によって、ゼオライト材料の貴金属は、金属形態の貴金属または貴金属酸化物のいずれかとして存在する。
【0036】
金属形態の貴金属が必要な場合、ゼオライト材料にロードされた貴金属化合物の金属は、後の工程により金属形態に変換される。貴金属化合物は、通常は熱分解または水素、一酸化炭素もしくは湿式化学還元剤による還元により対応する貴金属へと変換される。上記還元は、触媒反応の開始時に反応器内の系中にて行うこともできる。
【0037】
本発明の方法におけるある態様では、ゼオライト材料に貴金属前駆体化合物溶液を含浸させることにより貴金属化合物を導入する。例えば、ゼオライト触媒上に溶液をスプレーすることによる。それによって、ゼオライト材料の表面が広く均一に貴金属前駆体化合物により被覆されることが保証される。貴金属前駆体化合物がゼオライト材料を実質的に均一に被覆することにより、後の貴金属前駆体化合物の分解が起こる焼成工程または金属化合物の対応する金属への変換において、ゼオライト材料に貴金属粒子を広く均一にロードするための基礎が形成される。ゼオライト材料は、当業者に既知の初期湿潤法により含浸されることが好ましい。貴金属前駆体化合物としては、例えば、対応する貴金属の硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩、ギ酸塩、アミン、スルフィド、炭酸塩、水酸化物またはハロゲン化物を用いることができる。
【0038】
貴金属前駆体をゼオライト材料に含浸させた後、好ましくは200〜800℃の温度、より好ましくは300〜700℃の温度、最も好ましくは500〜600℃の温度において焼成を行う。本発明では、焼成は保護気体の下で行うのが好ましい。保護気体としては、例えば窒素またはアルゴンが挙げられ、好ましくはアルゴンである。
【0039】
その他の点では、上述の触媒に適用されるものと同様の選択が、当該方法にも適用される。
【0040】
本発明のさらなる目的は、酸化触媒として、特に有機汚染物質、及び特に溶媒タイプの有機汚染物質の酸化のための触媒としての本発明の触媒の使用である。
【0041】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されない。以下は追加の図面に関する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1は、従来の標準材料と比較した40000h-1GHSV空気中における180ppmvの酢酸エチルの酸化による本発明の触媒の性能を示す。
図2図2は、貴金属ドープ量に対してプロットした温度225℃における転化率の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
実施例1:
H−BEA−150ゼオライトを、後の吸水において有意な結果を得るために、120℃で約16時間かけて一晩乾燥させた。次に、ゼオライトの吸水量を初期湿潤法により決定した。ここでは、含浸させるゼオライト約50gを袋に入れ、水を含めた容器の重量を測定して、ゼオライトがほぼ完全に吸水した状態(吸水量:38.68g=77.36%)となるまで水を加えて混練した。
【0044】
酸性のPt(NO32溶液(15.14重量%)を、Pt含浸に用いた。この場合、Ptロードはハニカム中への固体のロードにより決まるため、ドープされるPt量と共に標準ロードを逆算する必要がある。
【0045】
ハニカムへの目的とするロードは30g/lである。ハニカムあたり3.375lにおいて、これは貴金属ロード0.5g/l[標準m(3.375lのとき)=1.68g]を含むウォッシュコート101.25gの標準ロードに相当する。ゼオライトとBindzilとの比率は70/30であった。固体成分(Bindzil、SiO2=34重量%);m(Bindzilを除く標準ロード)=90.92g Pt−BEA−150
【0046】
従って、Pt成分1.68gにおいて、BEA−150には1.85%のPtが含浸される。Pt−BEA−150 1500gのとき、これはPtロード27gすなわちPt(NO32溶液(Pt=15.14重量%)183.88gの量に相当する。吸水量77.36%において、Pt(NO32溶液を水1008.65gによりもう一度希釈する必要がある。
【0047】
含浸は、バタフライ攪拌器を有するNetzsch社製ミキサーにより行った。ここでは、あらかじめゼオライトの量を容器(缶)中において秤量しておいた(1缶=102.77g、15缶で1500gに相当)。溶液の総量は、缶の数より推定した(ゼオライト102.77g→Pt(NO32溶液79.50g、Pt(NO3212.26g及び脱塩水67.24gからなる)。混合は250rpmから開始し、溶液をゆっくりと加えた。溶液を加えている間、回転速度を上げていった。溶液を加え終えた後、回転速度を500rpmに上げ、約0.5分攪拌した。次に、粉末をセラミックボウルに移し、120℃で約6時間乾燥させた。続いて、Ptゼオライトをアルゴン下(貫流50l/時間)において550℃(加熱速度60℃/時間)で5時間焼成した。この間、貴金属は専ら触媒のミクロ細孔中に残るため、高濃度の水蒸気の下での非常に高い酸化活性と安定性が得られる。
【0048】
セラミックハニカムコーティング:
ウォッシュコートタイプ:Pt−BEA−150
標準ロード[g/l] :30.00
標準ロード[g] :101.25
支持材量 :セラミック基質、100cpsi
サイズ
長さ:[dm] :1.500
幅 :[dm] :1.500
高さ:[dm] :1.500
体積:[l] :3.3750
【0049】
ウォッシュコートの製造:
使用量:
脱塩水 2052.0g 電気伝導率:1.0μS
Pt−BEA−150 1359.30g LOI[%]1.50 1380.0g
Bindzil 2034 DI 377.40g FS[%]34.00 691.90g
【0050】
調製の前に、ゼオライト粉末の粒子サイズ分布を物理解析により測定した。
【0051】
結果:D10=3.977μm;D50=10.401μm;D90=24.449μm
【0052】
試験は標準方法により行った。調整容器は5lビーカーであった。ゼオライト粉末を脱塩水に懸濁させ、pHを測定した(pH:2.62)。懸濁液にBindzilを加え、pHを測定した(pH:2.41)。懸濁液をUltra Turraxにより約10分間分散させた。サンプルを懸濁液から取り出し、粒子分布を決定した。
【0053】
Ultra Turrax後の結果:D10=2.669μm;D50=6.971μm;D90=18.575μm
【0054】
ウォッシュコートをさらにマグネチックスターラーにより攪拌し、コーティングに用いた。
【0055】
・固体成分[%] 40.10
・pH: 2.41
【0056】
コーティング:
ウォッシュコートを脱塩水で15%に希釈した。希釈後の固体成分は13.62%であった。コーティングのため、ウォッシュコートを沈殿物がなくなるまで攪拌し、ウォッシュコートを測定した。ここでは、支持体をウォッシュコート中に浸漬し、泡が形成されなくなるまで動かした(時間:約30秒)。次に、支持体を取り出し、標準ロードの約半分となるまで、両側面から均等に圧縮空気ノズルにより空気を吹き付けた。支持体を150℃で一晩乾燥させた。乾燥には循環空気乾燥炉を用いた。乾燥後、支持体を冷却し、重量を測定した。標準ロードが達成されていなかった場合には、標準値が得られるまでさらに支持体をコーティングした。続いて、循環空気炉中、標準条件下で焼成させた。
【0057】
加熱 時間[時間]4 温度[℃] 40〜550
維持 時間[時間]3 温度[℃] 550
冷却 時間[時間]4 温度[℃] 550〜80
【0058】
【表1】
【0059】
本発明の触媒のミクロ細孔及びメソ/マクロ細孔の割合を、tプロット法により調査し、その値をm2/gにより評価した。(表2)。
【0060】
【表2】
【0061】
比較例1
セラミックハニカムを、TiO280重量%及びAl2320重量%により構成される50g/lウォッシュコートによりコーティングした。ここでは、まず水性TiO2/Al23懸濁液を激しく攪拌した。次に、セラミックハニカムをウォッシュコート懸濁液に浸漬した。浸漬の後、ハニカムのチャネルに空気を吹き付けて、付着していないウォッシュコートを除去した。次に、ハニカム本体を120℃で乾燥し、550℃で3時間焼成した。ウォッシュコートでコーティングされた触媒ハニカムを硝酸Pt及び硝酸Pdの溶液に浸漬することにより、貴金属を塗布した。含浸の後、再びハニカムに空気を吹き付けて、120℃で乾燥し、550℃で3時間焼成した。
【0062】
比較例2
セラミックハニカムを、Al23により構成される100g/lウォッシュコートによりコーティングした。ここでは、まず水性Al23懸濁液を激しく攪拌した。次に、セラミックハニカムをウォッシュコート懸濁液に浸漬した。浸漬の後、ハニカムのチャネルに空気を吹き付けて、付着していないウォッシュコートを除去した。続いて、ハニカム本体を120℃で乾燥し、550℃で3時間焼成した。間に乾燥及び焼成を伴う2度の含浸工程により、貴金属を塗布した。第1の工程では、亜硫酸Ptの溶液に浸漬することにより、ウォッシュコートでコーティングされたハニカムを含浸した。含浸の後、ハニカムは茶色になった。120℃で乾燥し、550℃で3時間焼成した。第2の工程では、硝酸テトラアンミンPdに浸漬することにより、ハニカムを含浸した。含浸の後、再びハニカムに空気を吹き付けて、120℃で乾燥し、550℃で3時間焼成した。
【0063】
比較例3
乾燥H−BEA−35に、酸性Pt(NO32溶液を初期湿潤法によりロードした。ここでは、H−BEA−35 48.5gに、Pt3.2重量%を含むPt(NO32溶液47.1gを含浸させた。含浸の後、材料を120℃で乾燥し、アルゴン下において焼成した。550℃になるまで2K/分の加熱速度で加熱し、550℃で5時間焼成した。最終的なPt−BEA−35粉末は、Pt3重量%を含んでいた。
【0064】
次に、コージライトハニカム触媒を、粉末状Pt−BEA材料でコーティングした。ここでは、Pt−BEA材料33.3g、H−BEA−35 57g及びBindzil29.4g(バインダー材料、SiO234重量%を含む)を、水300gに分散し、遊星型ボールミル中350rpmにて5分間隔で30分粉砕し、ウォッシュコートとした。次に、懸濁液をその都度プラスチックボトルに移し、コージライトハニカム(200cpsi)を懸濁液でコーティングした。達成されたコーティング量は100g/l w/cであった。コーティングの後、ハニカムを550℃で5時間焼成した。
【0065】
全ての触媒ハニカムの貴金属ドープ量を以下の表3にまとめる。
【0066】
【表3】
【0067】
触媒試験
本発明の触媒の性能を、40000h-1GHSV空気中における180ppmvの酢酸エチルの酸化により決定し、従来の標準材料の性能と比較した。結果は図1に含まれる(表4〜7のデータ)。比較例3では、性能データを比較可能な活性ハニカムの表面積にスケール調整しており、90%を超える転化率の箇所は省略している。図2(表8のデータ)は、温度225℃における転化率を貴金属ドープ量に対してプロットしたものの比較を示す。これにより、本発明の触媒における性能の改善がより明らかとなる。
【0068】
【表4】
【0069】
【表5】
【0070】
【表6】
【0071】
【表7】
【0072】
【表8】
図1
図2