(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記拡散防止膜は厚さが100〜500nmであり、前記金属拡散防止膜が二つ以上の金属層からなる場合に各金属層の厚さが10nm以上である、請求項1に記載の太陽電池基板。
前記下部基板はガラス、ステンレス鋼、アルミニウムホイル、Fe‐Ni系金属、Fe‐Cu系金属、およびポリイミドからなる群から選択される一種からなる、請求項1に記載の太陽電池基板。
下部基板と、前記下部基板の上部に形成される下部電極と、前記下部基板と下部電極との間に一つ又は二つ以上の金属層からなる金属拡散防止膜とを含み、前記金属拡散防止膜が二つ以上の金属層からなる場合に、相互に接する金属層は異種の金属からなり、前記二つ以上の金属層の間に酸化物層を含む太陽電池基板と、
前記太陽電池基板上に形成されたp型光吸収層と、
前記光吸収層上に形成されたn型バッファ層と、
前記バッファ層上に形成された透明窓と、
前記透明窓上に形成された上部電極
とを含む、太陽電池。
前記電気メッキは、メッキされる金属の金属塩を金属イオン濃度が1〜100g/lとなるように溶解させ、Na含有金属粒子が分散されたメッキ浴を50〜60℃に加熱し、電流密度0.1〜100A/dm2の電流をメッキ浴に印加して行われる、請求項14に記載の太陽電池基板の製造方法。
【背景技術】
【0002】
地球の温暖化、燃料資源の枯渇、環境汚染等の影響で、化石燃料を用いてエネルギーを採取する伝統的なエネルギー採取方法は次第に限界に達してきている。特に、石油燃料の場合、予想される石油の埋蔵量は専門家によって異なるが、近いうちに枯渇することが見込まれている。
【0003】
また、京都議定書に代表されるエネルギー気候協約では、化石燃料の燃焼により生成される二酸化炭素の排出を減少させることが強制的に求められている。したがって、その効力が現在の締約国のみならず後々には世界各国にまで及んで化石燃料の年間使用量に制約をかけることは明白である。
【0004】
化石燃料の代替として用いられる最も代表的なエネルギー源としては、原子力発電が挙げられる。原子力発電は、原料となるウランやプルトニウムから採取可能な単位重量当たりのエネルギー量が大きく、二酸化炭素等の温室ガスが発生しないため、上記石油等の化石燃料の代替となる有力な無限の代替エネルギー源として脚光を浴びてきている。
【0005】
しかしながら、旧ソ連のチェルノブイリ原子力発電所や東日本大震災による日本の福島原子力発電所等の爆発事故をきっかけに、無限の清浄エネルギー源と認識されていた原子力への安全性が再検討されており、その結果、原子力ではなく他の代替エネルギーを導入することがかつてないほどに必要とされている。
【0006】
その他の代替エネルギーとして多く用いられているエネルギー源としては水力発電が挙げられるが、上記水力発電は、地形的な因子と気候的な因子によって多くの影響を受けるため、その使用が制限され得る。また、その他の代替エネルギー源も、発電量が少ないか又は使用地域が大きく制限される等の理由で、化石燃料の代替手段として用いられるのが困難である。
【0007】
これに対し、太陽電池は、適当な日射量が保障されるだけでどこでも用いることができる上、発電容量と設備規模がほぼ直線的に比例するため、家庭用のような小容量需要に用いられる場合は、建物の屋上等に小面積で電池板を設置することにより発電が可能となるという長所を有する。よって、世界中でその使用が増加しており、これに関連した研究も増加している。
【0008】
太陽電池は、半導体の原理を用いたものであり、p‐n接合された半導体に一定水準以上のエネルギーを備えた光を照射する場合、上記半導体の価電子が自由に移動することができる価電子として励起されて電子と正孔の対(EHP:electron hole pair)が生成される。生成された電子と正孔は、互いに反対側に位置する電極に移動して起電力を発生させる。
【0009】
上記太陽電池の最初の形態のシリコン系太陽電池は、シリコン基板に不純物(B)をドープしてp型半導体を形成させた後、その上に他の不純物(P)をドープして層の一部をn型半導体化することによりp‐n接合がなされるようにしたものであり、通常、第1世代太陽電池と呼ばれる。
【0010】
上記シリコン系太陽電池は、比較的高いエネルギー変換効率とセル変換効率(実験室における最高のエネルギー変換効率に対する量産時の変換効率の比)を有するため、商用化の可能性が最も高い。しかしながら、上記シリコン系太陽電池モジュールを製造するためには、まず、素材からインゴットを製造し、上記インゴットをウエハ化した後にセルを製造してモジュール化するといった多少複雑な工程段階を経なければならず、バルク材質の材料を用いることから材料消費が増加して製造費用が高くなるという問題がある。
【0011】
このようなシリコン系太陽電池の短所を解決するために、第2世代太陽電池と呼ばれる、いわゆる、薄膜型太陽電池が提案されている。薄膜型太陽電池は、上述した過程で製造されるのではなく、基板上に必要な薄膜層を順次積層する形で製造されるため、その過程が単純で厚さが薄くて材料費が低いという長所を有する。
【0012】
しかしながら、上記シリコン系太陽電池と比べてエネルギー変換効率が高くないため、商用化には未だ多くの困難があった。しかしながら、高エネルギー変換効率を有する薄膜型太陽電池が一部開発されて商用化が推進されている。
【0013】
その中の一つとして、CI(G)S系太陽電池が挙げられる。上記太陽電池は、銅(Cu)、インジウム(In)、ゲルマニウム(Ge)(ゲルマニウムが含まれない場合はCISと称する)、セレニウム(Se)を含むCI(G)S化合物半導体を基本とするものである。
【0014】
上記半導体は、3つ又は4つの元素を含んでいるため、元素の含量を調節することによりバンドギャップの幅を制御してエネルギー変換効率を上昇させることができるという長所を有する。なお、セレニウム(Se)を硫黄(S)に替えたりセレニウム(Se)を硫黄(S)と共に用いたりする場合もある。本発明では、上記の場合をすべてCI(G)S太陽電池とみなす。
【0015】
CIGS(ゲルマニウムが含まれた場合)太陽電池は、最下層に下部基板があり、上記下部基板上に電極として用いられる下部電極が形成される。通常、上記下部基板と下部電極を含んで太陽電池基板と称する。上記下部電極上には、p型半導体としての光吸収層(CIGS)、n型半導体としてのバッファ層(例えば、CdS)、透明窓、上部電極が順次形成される。
【0016】
一方、上記下部基板には、通常、ガラスが用いられてきた。上記ガラス内にはNaが含まれており、上記NaはCIGS層に拡散されて太陽電池の開放電圧と忠実度を高める役割をするものと知られている。しかしながら、上記適量のNaは、太陽電池の効率を向上させることはできるが、過度に拡散される場合には却って太陽電池の効率を低下させるという問題を有する。
【0017】
最近、高価で大量生産され、定型化された形態でのみ用いることができるガラス基板の代わりに、柔軟性基板を用いようとする試みが多数あった。柔軟性基板は、ガラス基板と比べ、低価であり、ロールツーロール(Roll to Roll)方式による太陽電池の製造を可能にし、多様な形で加工されることができるため、建物一体型モジュール(BIPV)、航空宇宙用等の多様な用途に用いられることができる。上記柔軟性基板としては、ステンレス鋼、アルミニウムホイル、ポリイミドフィルム等の金属板やプラスチック系の基板が多く用いられる。しかしながら、上記柔軟性基板の場合、Feをはじめとした多数の不純物が含まれており、この不純物が下部電極やCIGS層に拡散されて太陽電池の効率を低下させる問題をもたらす。
【0018】
従来は、ガラス基板を用いる場合にはNaの過度な拡散を抑制し、柔軟性基板における不純物の拡散を抑制するために、単一層の拡散防止膜を形成する技術が適用されていた。
【0019】
しかしながら、太陽電池の薄膜化、軽量化等が求められるにつれ、上記拡散防止膜の厚さが非常に薄くなるため、上記単一層の拡散防止膜を用いる場合は効果的な拡散防止効果が確保できないという問題が新たに生じた。
【0020】
また、太陽電池の性能を改善する役割をするNaの添加を必要とすることがあるが、上記拡散防止膜を用いる場合はNaの拡散が抑制されるため、これを補完できる技術が求められている。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下では、本発明について詳細に説明する。
【0030】
本発明の太陽電池基板は、下部基板と、上記下部基板の上部に形成される下部電極と、一つ又は二つ以上の金属層からなる金属拡散防止膜とを含み、上記金属拡散防止膜が二つ以上の金属層からなる場合に、相互に接する金属層は異種の金属からなることができる。本発明において、上記太陽電池基板は、下部基板と区別されるものであり、下部基板のみならず拡散防止膜と下部電極も含むことができる。
【0031】
上記拡散防止膜は、太陽電池の下部基板と下部電極との間に形成され、二つ以上の金属層からなることが好ましく、三つの金属層からなることがより好ましい。
【0032】
本発明の太陽電池基板において、拡散防止膜を二つ以上の金属層で形成する理由は、Na、Fe等の不純物が拡散されることを防止し、特に、上記二つ以上の金属層の界面によって上記不純物の拡散抑制効果を極大化するためである。
【0033】
即ち、上記のように二つ以上の金属層からなる多層金属拡散防止膜は、異種物質の間に形成される界面がNa、Fe等の不純物の拡散を抑制する障壁として作用する。即ち、同じ金属層内で拡散する上記不純物は、別の金属層に触れると、既存の金属層との拡散挙動の差によって拡散が抑制される。このような界面効果又は障壁効果によって、多層構造の拡散防止膜は、不純物の拡散を抑制する効果を極大化することができる。
【0034】
また、上記金属層の界面による拡散防止効果により、単一層と同じ厚さに拡散防止膜を形成しても、単一層と比べて格段に優れた拡散防止効果を確保することができる。例えば、150nmの単一層の拡散防止膜と、50nmずつ三つの層からなる多層の拡散防止膜とを比較すると、多層の拡散防止膜は、単一層の拡散防止膜よりも二つ以上の界面をさらに有するため、同じ厚さでもより優れた拡散防止効果をもたらす。
【0035】
上記二つ以上の金属層は、相互に接する金属層が相違する物質からなることが好ましく、相違する金属材料からなることがより好ましい。上記金属層には、Cr、Ni、Ti、Mo等の金属を適用することができる。
【0036】
上記拡散防止膜は、全厚さが100〜500nmであることが好ましい。拡散防止膜としての役割を確保するためには、厚さが100nm以上であることが好ましい。厚さが500nmを超える場合は厚さと比べて拡散防止効果が高くないため、500nmを超えないことが好ましい。
【0037】
一方、上記多層金属拡散防止膜をなす各金属層の厚さは、特に限定されないが、異種金属を用いて拡散を防止する上記界面効果を確保するためには、最小10nmであることが好ましい。
【0038】
上記拡散防止膜をなす金属層を形成する方法としては、特に限定されず、スパッタリング法、蒸着法、金属電気メッキ法等の多様な方法を用いることができる。
【0039】
以下では、
図1及び2を参照して本発明の一実施形態による太陽電池基板について詳細に説明する。
図1及び2は本発明の一例を示すものにすぎず、本発明はこれに必ずしも限定されるものではない。
【0040】
図1は、下部基板10と下部電極30との間に計三つの金属層21、22、23で形成された多層金属拡散防止膜20が含まれた太陽電池基板の断面図である。
図1には、拡散防止膜を形成する各金属層21、22、23が相違する物質で形成されていることが示されている。例えば、第1の金属層21がCrで形成されれば、第2の金属層22はNi、第3の金属層23はTiで形成される等、多層金属拡散防止膜が相違する金属材料から形成されることが示されている。
【0041】
図2は、
図1と同様に、下部基板10と下部電極30との間に計三つの金属層で形成された多層金属拡散防止膜20が含まれた太陽電池基板の断面図である。但し、第1の金属層21と第2の金属層22は相違する物質からなるが、第1の金属層21と第3の金属層21’は同じ物質からなる点が
図1と異なる。例えば、第1の金属層21がNi、第2の金属層22がTiで形成されれば、第3の金属層21’は第1の金属層の物質と同じNiで形成される、サンドイッチ型の多層金属拡散防止膜が形成されている太陽電池基板が示されている。
【0042】
また、上記拡散防止膜が二つ以上の金属層からなる場合、上記拡散防止膜は、一つ以上の酸化物層をさらに含むことができる。即ち、上記多層拡散防止膜は、金属層と非晶質の酸化物層とが共に形成されている構造を有することが好ましい。上記拡散防止膜は、上記金属層と酸化物層とが混合されて積層されることにより、下部基板のNa、Fe等の不純物が拡散されることを抑制する。したがって、層間に形成された界面によって拡散が抑制される界面効果のみならず、金属ではなく非晶質の酸化物層が含まれることによりNa、Fe等の金属の拡散がさらに抑制される効果もある。
【0043】
即ち、本発明の太陽電池基板に含まれた多層拡散防止膜は、金属層と酸化物層とが共に形成されることにより、異種物質の間に形成された界面がNa、Fe等の不純物の拡散を抑制する障壁としての役割をし、界面による拡散防止効果をもたらす。また、結晶性の金属の微細組織と非晶質の酸化物の微細組織との差異によって、上記不純物が金属から非晶質の酸化物へ移動することが困難になるため、拡散防止効果をより高くすることができる。
【0044】
このような金属層と酸化物層が含まれた拡散防止膜は、単一層と同じ厚さに形成されても、単一層と比べて格段に優れた拡散防止効果を奏することができる。例えば、50nmずつの金属層/酸化物層/金属層からなる拡散防止膜は、150nmの単一層の拡散防止膜と比べて二つ以上の界面をさらに有する上に非晶質の酸化物層を含むため、同じ厚さでもより優れた拡散防止効果を奏することができる。
【0045】
上記多層拡散防止膜は、二つ以上の金属層と一つ以上の酸化物層とが交互に積層されることが好ましい。例えば、二つの金属層と一つの酸化物層からなる場合、金属層/金属層/酸化物層の順で積層されるよりも金属層/酸化物層/金属層の順で積層される方が拡散防止効果をより極大化することができる。
【0046】
これは、金属と金属はすべて結晶性で連続性があるが、金属と酸化物はそれぞれ結晶性と非晶質であり、連続性がないためである。
【0047】
上記金属層には、Cr、Ni、Ti、Mo等の金属を用いることができ、上記酸化物としては、シリコン酸化物(SiO
X)、シリコン窒化物(SiN
X)、アルミナ(Al
2O
3)等を用いることができる。
【0048】
一方、上記各金属層と酸化物層の厚さは、特に限定されないが、拡散防止効果を確保するために少なくとも10nmであることが好ましい。
【0049】
上記拡散防止膜をなす金属層を形成する方法としては、特に限定されず、スパッタリング法、蒸着法、金属電気メッキ法等の多様な方法を用いることができる。また、酸化物層を形成する方法としては、特に限定されず、ゾル‐ゲル法、テープキャスティング法等の多様な方法を用いることができる。
【0050】
以下では、
図3及び4を参照して本発明の一実施形態による太陽電池基板について詳細に説明する。
図3及び4は本発明の一例を示すものにすぎず、本発明はこれに必ずしも限定されるものではない。
【0051】
図3は、下部基板10と下部電極30との間に形成され、計三つの金属層21、22、23と二つの酸化物層40からなる拡散防止膜20を含む太陽電池基板の断面図である。
図3には、各拡散防止金属層21、22、23が相違する物質で形成されており、上記三つの金属層と二つの酸化物層とが交互に積層されている形態が示されている。例えば、第1の金属層21がCrで形成されれば、第2の金属層22はNi、第3の金属層23はTiで形成され、上記第1の金属層21と第2の金属層22との間及び第2の金属層22と第3の金属層23との間にSiO
2で形成された酸化物層40が形成されている太陽電池基板が示されている。
【0052】
図4は、
図3と同様の形態を有するが、第1の金属層21と第3の金属層21’が同じ物質からなる点が異なる。
【0053】
また、上記太陽電池基板の二つ以上の金属層のうち一つ以上の金属層はNaを含むことが好ましい。また、一つの金属層からなる拡散防止膜の場合は、Naを含むことがより好ましい。上記Naを含む金属層は、下部電極に隣接する金属層であることが好ましい。
【0054】
上記金属層に含まれたNaは、下部電極及び太陽電池半導体に拡散されて太陽電池の開放電圧と忠実度を高めることにより太陽電池の性能を改善する役割を行う。
【0055】
上記Naは、金属層にCu‐スパッタリング法によりドープされるか、又はNaを含む金属を用いてNaの含まれた金属層を形成する方法により形成されることができるが、これに限定されるものではない。
【0056】
Naをドープさせる好ましい例としては、ソーダ石灰ガラスをターゲットにスパッタリングする方法によりドープするか又はNaF前駆体を蒸発させて蒸着させる方法がある。
【0057】
上記いずれか一つの金属層に含まれるNaの含量は0.0005〜0.1重量%であることが好ましい。上記Naの含量が5ppm未満の場合は、その含量が少なすぎてNaの拡散によるCIGS太陽電池への影響がほぼないため、Na添加による太陽電池の開放電圧向上効果を期待するのが困難であり、0.1重量%を超える場合は、Na添加による太陽電池の性能向上効果を期待するのが困難である。したがって、経済性を考慮すると、Naの含量は0.1重量%未満であることが好ましい。
【0058】
以下では、
図5及び6を参照して本発明の一実施形態による太陽電池基板について詳細に説明する。
図5及び6は本発明の一例を示すものにすぎず、本発明はこれに必ずしも限定されるものではない。
【0059】
図5は、下部基板10と下部電極30との間に計三つの金属層21、22、23で形成された多層金属拡散防止膜20が含まれた太陽電池基板の断面図であり、上記金属層のうち下部電極30に接する金属層23にNa(A)が含まれている。
図5には、各拡散防止金属層21、22、23が相違する物質で形成されていることが示されている。例えば、第1の金属層21がCrで形成されれば、第2の金属層22はNi、第3の金属層23はTiで形成される等、多層金属拡散防止膜が相違する金属材料からなることが示されている。
【0060】
図6は、
図5と同様に、下部基板10と下部電極30との間に計三つの金属層で形成された多層金属拡散防止膜20が含まれた太陽電池基板の断面図である。但し、第1の金属層21と第2の金属層22は相違する物質からなるが、第1の金属層21と第3の金属層21’は同じ物質からなり、第3の金属層21’にはナトリウム(A)が含まれている点が
図5と異なる。例えば、第1の金属層21がNi、第2の金属層22がTiで形成されれば、第3の金属層21’は第1の金属層の物質と同じNiで形成される、サンドイッチ型の多層金属拡散防止膜が形成されている太陽電池基板が示されている。
【0061】
上記下部基板は、その材質がガラスでも良く、柔軟性基板でも良い。上記柔軟性基板の例には、金属材料(ステンレス鋼、アルミニウムホイル、Fe‐Ni系金属板、Fe‐Cu系金属板等)やポリイミドのようなプラスチック系材料等が含まれ得る。
【0062】
以下では、本発明の他の実施形態による太陽電池について詳細に説明する。
【0063】
本発明の太陽電池は、上記金属拡散防止膜を含む太陽電池基板を含む。即ち、本発明は、下部基板と、上記下部基板の上部に形成される下部電極と、上記下部基板と下部電極との間に一つ又は二つ以上の金属層からなる金属拡散防止膜とを含み、上記金属拡散防止膜が二つ以上の金属層からなる場合に、相互に接する金属層は異種の金属からなる太陽電池基板と;上記太陽電池基板上に形成されたp型光吸収層と;上記光吸収層上に形成されたn型バッファ層と;上記バッファ層上に形成された透明窓と;上記透明窓上に形成された上部電極とを含む。
【0064】
具現しようとする太陽電池の種類によって、上記光吸収層、バッファ層等の材質が変わっても良い。一例として、CIGS太陽電池の場合、光吸収層はCIGS、n型半導体としてのバッファ層はCdS、透明窓はZnOからなる。
【0065】
一方、上記下部基板は、材質がガラスでも良く、柔軟性基板でも良い。上記柔軟性基板の例には、金属材料(ステンレス鋼、アルミニウムホイル、Fe‐Ni系金属板、Fe‐Cu系金属板等)やポリイミド等のプラスチック系材料等が含まれ得る。
【0066】
上記多層金属拡散防止膜をなす金属層の材質としては、Cr、Ni、Ti等を用いることができる。
【0067】
図7には、本発明の一具現例による太陽電池の一例の一部が示されている。
図7は本発明の一例を示すものにすぎず、本発明はこれに必ずしも限定されるものではない。
図7には、下部基板10上に多層金属拡散防止膜20が形成され、上記多層金属拡散防止膜20上に下部電極30が形成され、上記下部電極30上に光吸収層50が形成されている太陽電池の一部が示されている。
【0068】
上記拡散防止膜は、酸化物層をさらに含むことができ、最も好ましくは二つ以上の金属層と酸化物層とが交互に積層された形態を有する。この際、上記酸化物層は、SiO
X、SiN
X及びAl
2O
3のいずれか一つからなることが好ましい。上記酸化物層に関する内容は、上述した太陽電池基板に関する内容と同一である。
【0069】
図8には、本発明の太陽電池の一例の一部が示されている。
図8は本発明の一例を示すものにすぎず、本発明はこれに必ずしも限定されるものではない。
図8には、下部基板10上に酸化物層40を有する多層構造の拡散防止膜20が形成され、上記拡散防止膜20上に下部電極30と光吸収層50が形成されている太陽電池の一例が示されている。
【0070】
上記拡散防止膜は、上述したように、一つ又は二つ以上の金属層にNaを含むことが好ましい。上記各金属層に関する内容は、上述した太陽電池基板に関する内容と同一である。
【0071】
図9には、本発明の太陽電池の一例の一部が示されている。
図9は本発明の一例を示すものにすぎず、本発明はこれに必ずしも限定されるものではない。
図9には、下部基板10上にNa(A)を含む金属拡散防止膜20が形成され、上記拡散防止膜20上に下部電極30が形成され、上記下部電極30上に光吸収層50が形成されている太陽電池の一部が示されている。
【0072】
以下では、本発明のさらに他の実施形態による太陽電池基板の製造方法について説明する。後述する太陽電池基板の製造方法は、太陽電池の下部基板と下部電極との間に拡散防止膜を形成すると共にNaのドープを行う方法に関するものである。なお、これは、一具現例にすぎず、上述した太陽電池基板の製造方法を限定するものではない。
【0073】
本発明では、太陽電池の下部基板に金属を電気メッキして拡散防止膜を製造する方法を用いる。
【0074】
上記電気メッキのための電解液にNa含有金属粒子を分散させ、上記Na含有金属粒子が分散された電解液を用いて上記下部基板に電気メッキを行ってNaが含まれた金属層である拡散防止膜を製造する。
【0075】
本発明は、太陽電池の下部基板に電気メッキを行って金属層を形成して拡散防止膜を製造する方法において、上記電気メッキのための電解液にNa含有金属粒子を分散させる。上記Na含有金属粒子が分散された電解液を用いて電気メッキを行う場合、電解液に分散されたNaが上記下部基板に上記金属層を形成する金属と共に付着されてメッキされるため、一回のメッキ工程で簡単にNaが含まれた拡散防止膜を製造することができるという長所がある。
【0076】
上記分散させたNa含有金属粒子は、その種類に特別な制限はなく、Naが上記電気メッキ浴に不溶性の粒子状に分散されることができればいずれのものでも良い。好ましい例としては、酸化ナトリウム(NaO
2)ナノ粒子がある。上記Na含有金属粒子の形状は円形であれば良く、サイズは粒径が10〜100nmであれば良く、10〜50nmであることが好ましい。
【0077】
一方、酸化ナトリウムを用いる場合は、その粒子の濃度が0.1〜100g/lであっても分散メッキは可能であるが、1〜50g/lであることが好ましく、5〜50g/lであることがより好ましい。
【0078】
上記分散メッキの際には、固体粒子である酸化ナトリウムが沈降することを防止するために分散剤を用いることができる。
【0079】
上記電気メッキする金属としては、Cr、Ni、Ti等が用いられる。
【0080】
上記Na含有金属粒子の分散された電解液を用いて電気メッキ法により上記太陽電池の下部基板に金属層の拡散防止膜を形成する。この際、形成された金属層には、Naが含まれている。
【0081】
上記電気メッキ法としては、通常の電気メッキ法を用いることができるが、特に限定されるものではない。
【0082】
本発明に適用可能な電気メッキ法の具体的な例を説明すると、下記の通りである。まず、純水を50〜60℃に加熱し、ここに、上記メッキされる金属であるCr、Ni、Ti等の金属塩(主に硫酸塩)を金属イオン濃度が1〜100g/lとなるように溶解させた後、酸化ナトリウム粒子を添加する。この際、希硫酸溶液(約5%硫酸)を用いて溶液のpHを1〜6に調節してメッキ浴を用意し、陽極として不溶性陽極のチタニウム板に酸化イリジウム(IrO
2)をコーティングしたものを用いて、メッキを目的とする陰極に電流密度0.1〜100A/dm
2の電流を印加してメッキする。メッキ時間は、コーティング層の厚さによって異なる。
【0083】
なお、上述した方法は、上記太陽電池基板の一実施例を具現できる方法に該当し、具現しようとする太陽電池基板の形態によって適切に変更可能である。
【実施例】
【0084】
以下では、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。但し、下記の実施例は、本発明をより詳細に説明するための例示に過ぎず、本発明の権利範囲を限定するものではない。本発明の権利範囲は、特許請求の範囲に記載の事項、及び特許請求の範囲に記載の事項から合理的に推測される事項によって決められる。
【0085】
(実施例1)
多層金属拡散防止膜を有する太陽電池基板の拡散防止効果を確認するために、ステンレス鋼(STS 430)を下部基板として、上記ステンレス鋼下部基板上にCrを100nm蒸着して拡散防止膜を形成した(比較例1)。また、上記と同じ条件下のステンレス鋼下部基板上にMoを10nm蒸着し、その上にCrを100nm蒸着して、Mo/Crの二層金属拡散防止膜を形成した(発明例1)。
【0086】
上記蒸着は、スパッタリング法を用いて7mTorrの圧力とAr 10sccmの流量下で1200Wの電力を印加して行われた。
【0087】
上記のように製造された比較例1と発明例1を燃料電池の作動条件と類似する600℃で20分間熱処理して、上記ステンレス鋼下部基板上のFeがどれほど拡散されているかを観察し、上記比較例1と発明例1の拡散防止効果を観察し、その結果をそれぞれ
図10及び
図11に示した。
【0088】
図10は、上記比較例1の拡散防止膜の表面から深さ方向への原子の濃度を観察したグラフである。
図10からは、表面におけるFe濃度が約3×10
2cps、60nmの深さにおけるFe濃度が約1.5×10
4cpsであるのに対し、上記発明例1を観察した
図11からは、表面におけるFe濃度が約6×10
1cps、60nmの深さにおけるFe濃度が約3×10
3cpsであり、上記比較例1と比べて約50%以上の拡散防止改善効果があることが確認できた。
【0089】
以上のことから、二つ以上の金属層を形成して製造された多層金属拡散防止膜を含む本発明の太陽電池基板は、従来の単一層金属からなる拡散防止膜を含む太陽電池基板と比べ、優れた拡散防止効果を有することが確認できる。
【0090】
(実施例2)
多層構造の拡散防止効果を確認するために、ステンレス鋼(STS 430)を基板として、上記ステンレス鋼基板上にSiO
2を1000nm蒸着して拡散防止膜を形成した(比較例2)。また、上記と同じ条件下のステンレス鋼基板上にMoを60nm蒸着し、その上にSiO
2を1000nm蒸着して、SiO
2/Moの二重層からなる拡散防止膜を形成した(発明例2)。
【0091】
上記SiO
2の蒸着は、PECVD方法を用いて800mTorrの圧力とN
2O 700sccm、SiH
4 45sccm、Ar 700sccmの流量下で200Wの電力を印加して行われ、上記Moの蒸着は、7mTorrの圧力とAr 10sccmの流量下で1200Wの電力を印加して行われた。
【0092】
上記のように製造された比較例2と発明例2を燃料電池の作動条件と類似する600℃で20分間熱処理して、上記ステンレス鋼基板上のFeがどれほど拡散されているかを観察し、上記比較例と発明例の拡散防止効果を観察し、その結果をそれぞれ
図12及び
図13に示した。
【0093】
図12は、上記比較例2の拡散防止膜の表面から深さ方向への原子の濃度を観察したグラフである。
図12からは、表面におけるFe濃度が約1×10
3cpsであるのに対し、上記発明例2を観察した
図13からは、表面におけるFe濃度が約7×10
2cpsであり、上記比較例と比べて約30%以上の拡散防止改善効果があることが確認できた。
【0094】
以上のことから、金属層と酸化物層とが共に形成された本発明の拡散防止膜は、単一の酸化物層で形成された拡散防止膜と比べ、優れた拡散防止効果を有することが確認できる。
【0095】
(実施例3)
酸化物層が含まれた多層構造の拡散防止効果を確認するために、酸化物層の形成の有無による太陽電池の光変換効率を測定した。通常のガラス(ソーダ石灰ガラス)基板を用いた(比較例3)。また、ステンレス鋼(STS 430)を基板として、上記ステンレス鋼基板上にSiO
2を1000nm蒸着して拡散防止膜を形成した(比較例4)。また、上記と同じ条件下のステンレス鋼基板上にMoを20nm蒸着し、その上にSiO
2を500nm蒸着して、SiO
2/Moの二重層からなる拡散防止膜を形成した(発明例3)。また、上記と同じ条件下のステンレス鋼基板上にMoを100nm蒸着し、その上にSiO
2を200nm蒸着した後、再度Moを100nm蒸着し、その上にSiO
2を200nm蒸着して、SiO
2/Mo/SiO
2/Moの四重層からなる拡散防止膜を形成した(発明例4)。
【0096】
上記SiO
2の蒸着は、PECVD方法を用いて800mTorrの圧力とN
2O 700sccm、SiH
4 45sccm、Ar 700sccmの流量下で200Wの電力を印加して行われ、上記Moの蒸着は、7mTorrの圧力とAr 10sccmの流量下で1200Wの電力を印加して行われた。
【0097】
上記比較例3及び4と発明例3及び4に対し、電極層、活性層、及び透明電極層等からなる太陽電池を製造するための実験を行い、CIGS太陽電池の光変換効率とa‐Si太陽電池の光変換効率を測定し、下記表1に示した。
【0098】
【表1】
【0099】
上記表1を参照すると、比較例3は、ガラス基板上に太陽電池を具現したものであり、光変換効率がCIGSの場合は15.47%、a‐Siの場合は7.22%であった。比較例4は、SiO
2を1000nm蒸着したものであり、光変換効率がCIGSの場合は12.75%、a‐Siの場合は5.8%であった。発明例5及び6は、多層構造の拡散防止膜を含むものである。通常のバッチ形態の蒸着工程の際に多層構造を適用するためには数回の蒸着を行わなければならないが、発明例5及び6の場合は、STS等の金属基板を適用したロールツーロール連続工程で連続的に蒸着が行われるため、多層構造の具現が容易である。また、通常の蒸着速度が1m/min以下とかなり遅く、所望の厚さを蒸着するためには多数の蒸着ソースが必要とされるため、一つの物質を蒸着するために多数のソースを設置するよりは、多数の物質を蒸着するために多数のソースを設置して多層構造で具現する方が、上記例からも分かるように全厚さの減少効果等の多様な長所を有する。また、その光変換効率も、CIGSの場合は13.39%及び14.25%、a‐Siの場合は6.22%及び7.04%であった。