(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】実施例2(IE2)と比較例2(CE2)の誘電分析(DEA)の結果を示すグラフである。
【
図2】実施例2(IE2)と比較例2(CE2)の誘電分析(DEA)の結果を示すグラフである。
【0034】
上述の実施形態について、以下に合わせて説明する。
まず、キャパシタフィルムの製造のために使用されるポリプロピレン(PP)及びキャパシタフィルムについて、より詳細に説明する。続いて、ポリプロピレン及びキャパシタフィルムそれぞれの製造のために適用する方法について、詳細に説明する。
【0035】
ポリプロピレン(PP)
本発明の本質的な側面は、特定のポリプロピレン(PP)をキャパシタフィルムの製造に使用することである。
【0036】
そのポリプロピレン(PP)は、コモノマー含有量が低めであることを特徴とする。従って上記キャパシタフィルム及び/又はポリプロピレン(PP)は、コモノマー含有量が2.0重量%以下であることが好ましく、より好ましくは1.5重量%以下、さらに好ましくは1.0重量%以下、最も好ましくは0.5重量%未満である。
【0037】
よって、上記ポリプロピレン(PP)は、好ましくはランダムプロピレンコポリマー(R−PP)又はプロピレンホモポリマー(H−PP)であり、後者が特に好ましい。
【0038】
ポリプロピレンがランダムプロピレンコポリマー(R−PP)である場合、このポリプロピレンは、プロピレンと共重合できるモノマー、例えばエチレン及び/又はC
4〜C
20α−オレフィン、特にエチレン及び/又はC
4〜C
10α−オレフィン、例えば1−ブテン及び/又は1−ヘキセン等のコモノマーを含む。ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)は、エチレン、1−ブテン及び1−ヘキセンからなる群から選択されるプロピレンと共重合できるモノマーを含むことが好ましく、特にこのモノマーからなることが好ましい。より具体的には、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)は、プロピレンとは別に、エチレン及び/又は1−ブテンに由来するユニットを含む。好ましい実施形態では、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)は、エチレン及びプロピレンのみに由来するユニットを含む。ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)内におけるコモノマー含有量は、好ましくは0.5より多く2.0重量%までの範囲、より好ましくは0.5より多く1.0重量%までの範囲、さらに好ましくは0.5より多く0.8重量%までの範囲である。
【0039】
本発明で使用されているホモポリマーという表現は、実質的にプロピレンユニットからなる、すなわち99.5重量%以上のプロピレンユニット、より好ましくは99.8重量%以上のプロピレンユニットからなるポリプロピレン(PP)に関する。好ましい実施形態では、プロピレンホモポリマー(H−PP)において、プロピレンユニットのみが検出可能である。
【0040】
ポリプロピレン(PP)は、アイソタクチックであることが好ましい。従ってポリプロピレン(PP)は、高めの、すなわち90%より高く、より好ましくは92%より高く、さらに好ましくは93%より高く、95%よりも高く、例えば少なくとも97%のペンタッド分率(mmmm%)を有する。
【0041】
上記のキャパシタフィルム及び/又はポリプロピレン(PP)のさらなる特徴は、ポリマー鎖内へのプロピレンの誤挿入量が少ないことである。これは、以下に定義する触媒の存在下で、つまりチーグラー・ナッタ触媒の存在下でポリプロピレン(PP)が生成される、ということを示す。従って上記のキャパシタフィルム及び/又はポリプロピレン(PP)は、
13C−NMR分光法によって決定される<2,1>部位欠陥の量が少ないこと、すなわち0.4モル%以下、より好ましくは0.2モル%以下、例えば0.1モル%以下であることを特徴とする。特に好ましい実施形態では、<2,1>部位欠陥が検出されず、つまり<2,1>部位欠陥の量が0.0モル%である。
【0042】
上記のキャパシタフィルム及び/又はポリプロピレンは、広範囲の、例えば6.0重量%までの冷キシレン可溶部(XCS)を有する。従って、上記のキャパシタフィルム及び/又はポリプロピレン(PP)は、0.3〜6.0重量%、より好ましくは0.5〜5.5重量%、さらに好ましくは1.0〜4.0重量%の冷キシレン可溶部(XCS)を有してよい。
【0043】
冷キシレン可溶部(XCS)の量は、キャパシタフィルム及び/又はポリプロピレン(PP)が、好ましくはエチレンプロピレンゴム等のいかなる弾性ポリマー成分を有さないことをさらに示す。言い換えると、キャパシタフィルム及び/又はポリプロピレン(PP)は、ヘテロ相ポリプロピレン、すなわちエラストマ相が分散したポリプロピレンマトリクスからなる系ではないものとする。このような系は、冷キシレン可溶部の含有量が高めであることを特徴とする。
【0044】
本発明のさらなる側面は、キャパシタフィルム及び/又はポリプロピレン(PP)が高めの融点を有することである。従って本発明に係るキャパシタフィルム及び/又はポリプロピレン(PP)は、示差走査熱量測定法(DSC)によって決定される少なくとも155℃、より好ましくは少なくとも158℃、さらに好ましくは少なくとも160℃の溶融温度(T
m)を有することが好ましい。従って、示差走査熱量測定法(DSC)によって決定されるキャパシタフィルム及び/又はポリプロピレンの溶融温度(T
m)は、155〜168℃の範囲、より好ましくは155〜165℃の範囲、さらに好ましくは157〜163℃の範囲、例えば159〜163℃の範囲であることが特に好ましい。
【0045】
さらに、上記のキャパシタフィルム及び/又はポリプロピレン(PP)は、高めの結晶化温度(T
c)を有することが好ましい。従って、上記のキャパシタフィルム及び/又はポリプロピレン(PP)は、好ましくは、示差走査熱量測定法(DSC)によって決定される少なくとも110℃、より好ましくは111℃の結晶化温度(T
c)を有する。従って、上記のキャパシタフィルム及び/又はポリプロピレン(PP)は、好ましくは、示差走査熱量測定法(DSC)によって決定される110〜120℃の範囲、より好ましくは110〜180℃の範囲の結晶化温度(T
c)を有する。
【0046】
さらに上記ポリプロピレン(PP)は、200000〜600000g/mol、より好ましくは200000〜450000g/molの重量平均分子量(M
w)を有することが好ましい。
【0047】
広範囲の分子量分布(MWD)により、ポリプロピレンの加工性が改善される。従って、上記のキャパシタフィルム及び/又はポリプロピレン(PP)の分子量分布(MWD)は、少なくとも2.8、より好ましくは少なくとも3.0、例えば少なくとも3.3であることが好ましい。好ましい実施形態では、上記分子量分布(MWD)は、好ましくは3.0〜10.0の範囲、より好ましくは3.5〜8.0の範囲である。
【0048】
さらに、上記キャパシタフィルム及び/又はポリプロピレン(PP)は、好ましくは0.5g/10minより大きく、より好ましくは1.0g/10minより大きいメルトフローレートMFR
2(230℃)を有する。従ってメルトフローレートMFR
2(230℃)は、好ましくは0.5〜8.0g/10minの範囲であり、より好ましくは1.0〜6.0g/10minの範囲、さらに好ましくは1.5〜4.0g/10minの範囲である。
【0049】
さらに、上記のポリプロピレン(PP)は線形構造を有し、従って分岐を呈さない(又はほとんど呈さない)ことが好ましい。従って上記キャパシタフィルム及び/又はポリプロピレン(PP)は0.9以上の分岐指数g’を有することが好ましく、より好ましくは0.9より大きく、例えば少なくとも0.95の分岐指数g’を有する。つまり、上記キャパシタフィルム及び/又はポリプロピレン(PP)が何らかの種の分岐を有する場合、分岐指数は中程度であるものとする。従って、上記キャパシタフィルム及び/又はポリプロピレン(PP)の分岐指数g’は、0.9〜1.0の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.9より大きく1.0までの範囲内、例えば0.96〜1.0の範囲内である。特に好ましい実施形態では、キャパシタフィルム及び/又はポリプロピレン(PP)は分岐を有さず、すなわちキャパシタフィルム及び/又はポリプロピレンの分岐指数g’は1.0である。
【0050】
本発明のポリプロピレン(PP)は、好ましくは、特徴的な触媒残留物の存在を特徴とする。より正確に述べると、上記ポリプロピレン(PP)は、好ましくは、ナノサイズ範囲の触媒断片(F)を特徴とする。これらの断片(F)は、好ましくは、ポリプロピレン(PP)の製造に使用した固体触媒系(SCS)を含む触媒に由来する。固体触媒系(SCS)を含む特別な触媒を含んだポリプロピレン(PP)の製造に使用する方法については、以下でさらに詳細に規定する。
【0051】
本発明における「ナノサイズ」という用語は、触媒断片(F)の平均粒径d50が1μm未満、より好ましくは800nm未満、さらに好ましくは20〜600nm、なお好ましくは30〜500nm、例えば30〜300nmであることを示す。
【0052】
ポリプロピレン(PP)中におけるナノサイズ触媒断片(F)の「均一分散」という表現(又は「均一に分散されている」というような同様の表現)は、断片(F)がポリプロピレン(PP)の特定領域に局在化せず、ポリプロピレン(PP)の全体に存在することを示す。この表現は特に、断片(F)が固体触媒系(SCS)を含む触媒に由来することを示し、その固体触媒系(SCS)は、ポリプロピレン(PP)重合の極めて早い段階で非常に小さなナノサイズ粒子に分解され、成長過程のポリプロピレン(PP)中に均一に分散する。このような均一分散は、ポリプロピレン(PP)重合を行った後に別途ナノサイズ粒子を添加する場合には達成できない。つまり、ポリプロピレン(PP)中へのナノサイズ(触媒)断片(F)の均一分散は、ポリプロピレン(PP)重合プロセスの極めて早い段階で分解される本明細書で開示する固体触媒系(SCS)を含む触媒を使用しなければ達成できない。
【0053】
驚くべきことに、固体触媒系(SCS)を含む触媒に由来するナノサイズ触媒断片(F)を含むポリプロピレン(PP)が興味深い電気的特性、すなわち低導電性を有することが見いだされた。つまり、本明細書に記載するナノサイズ触媒断片(F)は、ポリプロピレン(PP)の電気的特性を劣化させることがなく、従って断片の量は重要な問題とならない。反対に、特定のナノサイズ触媒断片(F)は、従来の触媒残留物と比較して、導電性を低下させるにあたって有用であるようである。この結果、コスト及び手間がかかる精製工程を省略できる。
【0054】
キャパシタフィルム及び/又はポリプロピレン(PP)における残留物、つまり触媒断片(F)の量の指標は、灰分含有量である。キャパシタ分野におけるポリプロピレンの灰分含有量は通常、電気的特性の悪化を回避するために低めでなければならない。従って典型的には、キャパシタフィルムに使用されるポリマーの灰分含有量は30ppm未満、好ましくは20ppm未満である(ISO3451−1)。しかしながら上述のように、本発明で使用されるポリプロピレン(PP)における灰分量は、制限的な特徴ではない。つまり、灰分含有量が通常許容可能な量より高い場合でさえ、その電気的特性が悪化しないということが見いだされた。これは、残留物のサイズや種類が、所望の特性を害するようなものではなく、非常に小さなサイズ(ナノサイズ)であり、ポリマー中に均一に分散されるものであることを示している。従って驚くべきことに、ポリプロピレン(PP)が高い灰分含有量を有するにもかかわらず、良好な電気的特性が達成される。従って本発明のキャパシタフィルム及び/又はポリプロピレン(PP)は、例えば30ppm未満といった非常に低い値から数百ppmまで、例えば最大500ppmまでの灰分含有量を有することができる。言い換えると、キャパシタフィルム及び/又はポリプロピレン(PP)は、5〜500ppm、好ましくは10〜400ppmの灰分含有量を有してよい。別の実施形態では、灰分含有量は30ppmより大きく500ppmまで、より好ましくは40〜400ppmの範囲、例えば50〜300ppmの範囲である。
【0055】
通常、このような高い灰分含有量を有する場合、ポリプロピレンの電気的特性は満足できるものではなくなるが、本発明のキャパシタフィルム及び/又はポリプロピレン(PP)の場合にはそうならない。
【0056】
従って上記ポリプロピレン(PP)は、
(a)100℃における絶縁破壊電圧が350AC/μm以上、より好ましくは380AC/μm以上であること;及び/又は
(b)機械方向と横断方向の延伸比を4.5×9.5として上記ポリプロピレン(PP)から作製した、厚さ6.5〜7μmの二軸配向ポリプロピレン(BOPP)フィルムにおいて測定した場合の絶縁破壊電圧における電界強度が少なくとも550VDC/μmであること、
を特徴とすることが好ましい。
【0057】
誘電率及び誘電正接は温度に依存することが知られており、温度が高くなると目立った影響が観察される。ポリプロピレンに関しては、75℃を超えると、特に100℃を超えると目立った影響が観察できる。
【0058】
しかしながら、従来技術によるポリプロピレンとは異なり、本発明によるポリプロピレンでは、温度が高くなったときの誘電率及び誘電正接に対する影響があまり見られない。従って本発明のポリプロピレン(PP)は、その誘電率及び/又は誘電正接(tan delta)を特徴とする。従って本発明のポリプロピレン(PP)は、
(a1)好ましくは下記の式
【数9】
より好ましくは下記の式
【数10】
さらに好ましくは下記の式
【数11】
さらになお好ましくは下記の式
【数12】
(式中、P75は50Hz及び75℃で測定した誘電率、P110は50Hz及び110℃で測定した誘電率である。)、及び/又は
(a2)好ましくは下記の式
【数13】
より好ましくは下記の式
【数14】
さらに好ましくは下記の式
【数15】
さらになお好ましくは下記の式
【数16】
(式中、P75は50Hz及び75℃で測定した誘電率、P120は50Hz及び120℃で測定した誘電率である。)を満たし、及び/又は
(b1)好ましくは下記の式
【数17】
より好ましくは下記の式
【数18】
さらに好ましくは下記の式
【数19】
さらになお好ましくは下記の式
【数20】
(式中、D75は50Hz及び75℃で測定した損失(tan delta)、D110は50Hz及び110℃で測定した損失(tan delta)である。)、及び/又は
(b2)好ましくは下記の式
【数21】
より好ましくは下記の式
【数22】
さらに好ましくは下記の式
【数23】
さらになお好ましくは下記の式
【数24】
(式中、D75は50Hz及び75℃で測定した損失(tan delta)、D120は50Hz及び120℃で測定した損失(tan delta)である。)を満たすことが好ましい。
【0059】
ポリプロピレン(PP)を含むキャパシタフィルムに対しては、同じ電気的性能が要求される。従って、ポリプロピレン(PP)を含む本発明のキャパシタフィルムは、
(a)100℃における絶縁破壊電圧が350AC/μm以上、より好ましくは380AC/μm以上であること;及び/又は
(b)機械方向と横断方向の延伸比を4.5×9.5として上記ポリプロピレン(PP)から作製した、厚さ6.5〜7μmの二軸配向ポリプロピレン(BOPP)フィルムにおいて測定した場合の絶縁破壊電圧における電界強度が少なくとも550VDC/μmであること、
を特徴とする。
【0060】
前段落に加えて又はこれに替えて、ポリプロピレン(PP)を含む本発明のキャパシタフィルムは、
(a1)好ましくは下記の式
【数25】
より好ましくは下記の式
【数26】
さらに好ましくは下記の式
【数27】
さらになお好ましくは下記の式
【数28】
(式中、P75は50Hz及び75℃で測定した誘電率、P110は50Hz及び110℃で測定した誘電率である。)、及び/又は
(a2)好ましくは下記の式
【数29】
より好ましくは下記の式
【数30】
さらに好ましくは下記の式
【数31】
さらになお好ましくは下記の式
【数32】
(式中、P75は50Hz及び75℃で測定した誘電率、P120は50Hz及び120℃で測定した誘電率である。)、及び/又は
(b1)好ましくは下記の式
【数33】
より好ましくは下記の式
【数34】
さらに好ましくは下記の式
【数35】
さらになお好ましくは下記の式
【数36】
(式中、D75は50Hz及び75℃で測定した損失(tan delta)、D110は50Hz及び110℃で測定した損失(tan delta)である。)、及び/又は
(b2)好ましくは下記の式
【数37】
より好ましくは下記の式
【数38】
さらに好ましくは下記の式
【数39】
さらになお好ましくは下記の式
【数40】
(式中、D75は50Hz及び75℃で測定した損失(tan delta)、D120は50Hz及び120℃で測定した損失(tan delta)である。)を満たす。
【0061】
好ましい実施形態において、本発明は、上記ポリプロピレン(PP)が上記キャパシタフィルムの唯一のポリマー成分である、前記部分で定義したキャパシタフィルムを対象とする。
【0062】
さらに、上記キャパシタフィルム及び/又はポリプロピレン(PP)は、「実施例の部」に記載したDC導電率測定法ASTM D257に従って測定される、70fS/m以下、より好ましくは<0.01(DC導電率測定によって検出できない小さな値)〜60fS/m、より好ましくは<0.01〜40fS/m、より好ましくは<0.01〜30fS/m、さらに好ましくは<0.01〜20fS/m、さらになお好ましくは<0.01〜10fS/mの導電率を特徴とする。
【0063】
上記の内容を考慮すると、本発明は特にプロピレンホモポリマー(H−PP)であるポリプロピレン(PP)を対象とし、上記プロピレンホモポリマー(H−PP)は、
13C−NMR分光法によって決定される<2,1>部位欠陥の量が0.4モル%以下、好ましくは0.2モル%以下、より好ましくは0.1モル%以下、さらに好ましくは検出不可能であり、上記プロピレンホモポリマー(H−PP)はさらに、下記の式
【数41】
好ましくは下記の式
【数42】
より好ましくは下記の式
【数43】
さらに好ましくは下記の式
【数44】
(式中、P75は50Hz及び75℃で測定した誘電率、P110は50Hz及び110℃で測定した誘電率である。)を満たす。
【0064】
さらに、前段落のプロピレンホモポリマー(H−PP)は、
(a)好ましくは下記の式
【数45】
より好ましくは下記の式
【数46】
さらに好ましくは下記の式
【数47】
さらになお好ましくは下記の式
【数48】
(式中、P75は50Hz及び75℃で測定した誘電率、P120は50Hz及び120℃で測定した誘電率である。)を満たし、及び/又は
(b1)好ましくは下記の式
【数49】
より好ましくは下記の式
【数50】
さらに好ましくは下記の式
【数51】
さらになお好ましくは下記の式
【数52】
(式中、D75は50Hz及び75℃で測定した損失(tan delta)、D110は50Hz及び110℃で測定した損失(tan delta)である。)、及び/又は
(b2)好ましくは下記の式
【数53】
より好ましくは下記の式
【数54】
さらに好ましくは下記の式
【数55】
さらになお好ましくは下記の式
【数56】
(式中、D75は50Hz及び75℃で測定した損失(tan delta)、D120は50Hz及び120℃で測定した損失(tan delta)である。)を満たすことが好ましい。
【0065】
加えて、前記2段落で定義したプロピレンホモポリマー(H−PP)は、好ましくは、
(a)5ppm未満から500ppmまで、より好ましくは10〜400ppm、さらに好ましくは30〜500ppm、さらになお好ましくは40〜400ppm、例えば50〜300ppmの灰分含有量を有し;
(b)平均粒径d50が1μm未満、より好ましくは800nm未満、さらに好ましくは20〜600nm、さらになお好ましくは30〜500nm、例えば30〜300nmであるナノサイズ触媒断片(F)を含み;
(c)少なくとも155℃、より好ましくは少なくとも158℃、さらに好ましくは少なくとも160℃、さらになお好ましくは155〜168℃の範囲、さらにいっそう好ましくは155〜165℃の範囲、例えば157〜163℃の範囲又は159〜163℃の範囲の溶融温度(T
m)を有し;及び/又は
(d)少なくとも110℃、より好ましくは少なくとも111℃、さらに好ましくは110〜120℃の範囲、さらになお好ましくは110〜118℃の範囲の結晶化温度(T
c)を有する。
【0066】
最後に、プロピレンホモポリマー(H−PP)は、
(a)100℃における絶縁破壊電圧が350AC/μm以上、より好ましくは380AC/μm以上であること;及び/又は
(b)機械方向と横断方向の延伸比を4.5×9.5として上記ポリプロピレン(PP)から作製した、厚さ6.5〜7μmの二軸配向ポリプロピレン(BOPP)フィルムにおいて測定した場合の絶縁破壊電圧における電界強度が少なくとも550VDC/μmであること、
をさらなる特徴としてもよい。
【0067】
キャパシタフィルム
前記部分で定義したポリプロピレン(PP)をフィルム形成プロセスに供し、キャパシタフィルムを得る。上記ポリプロピレン(PP)が、キャパシタフィルム内の唯一のポリマーであることが好ましい。従って、キャパシタフィルムは添加物を含み得るが、他のポリマーを含まないことが好ましい。従って、100.0重量%までの残りの部分は、抗酸化剤等の当該技術分野で公知の添加物からなり得る。しかしながらこの残りの部分は、そのキャパシタフィルム中において、5.0重量%以下、好ましくは2.0重量%以下、例えば1.0重量%以下であるべきである。従って、上記キャパシタフィルムは、好ましくは95重量%より多くの、より好ましくは98重量%より多くの、例えば99重量%より多くの、本明細書で定義したポリプロピレン(PP)を含む。
【0068】
上記キャパシタフィルムの厚さは、20.0μmまで、好ましくは15.0μmまでであり得るが、典型的には、キャパシタフィルムの厚さは、12.0μm以下、好ましくは10.0μm以下、より好ましくは8.0μm以下、さらに好ましくは2.0〜10μmの範囲、さらになお好ましくは2.5〜10.0μmの範囲、例えば3.0〜8.0μmの範囲である。
【0069】
さらに、上記キャパシタフィルムは二軸配向フィルムであり、すなわち、前記部分で定義したポリプロピレン(PP)又はこのポリプロピレン(PP)を含む混合物(配合物)を延伸プロセスに供し、二軸配向ポリマーを得る。上述のように、上記キャパシタフィルムは、上記ポリプロピレン(PP)を唯一のポリマーとして含むことが好ましく、従って、上記ポリプロピレン(PP)から作製された二軸配向ポリプロピレン(BOPP)であることが好ましい。
【0070】
上記キャパシタフィルム、すなわち上記二軸配向ポリプロピレン(BOPP)は、機械方向の延伸比が少なくとも3.0であり、横断方向の延伸比が少なくとも3.0であることが好ましい。市販の二軸配向ポリプロピレンは少なくとも上で定義した程度まで破損することなく引き伸ばすことができなければならないため、上記の比は市販の二軸配向ポリプロピレンとして好ましい。試料の長さは、長手方向に引き伸ばすと増大し、長手方向の延伸比は、元の試料の長さに対する現在の長さの比率から計算される。次に、試料を横断方向に引き伸ばすと、試料の幅が増大する。従って、延伸比は、試料の元の幅に対する試料の現在の幅から計算される。上記キャパシタフィルム、すなわち上記二軸配向ポリプロピレン(BOPP)の機械方向の延伸比は、3.5〜8.0の範囲、より好ましくは4.5〜6.5の範囲である。上記キャパシタフィルム、すなわち上記二軸配向ポリプロピレン(BOPP)の横断方向の延伸比は、好ましくは4.0〜15.0の範囲、例えば5.0〜10.0の範囲であり、より好ましくは6.0〜10.0の範囲である。引き伸ばす際の温度範囲は、一般的に100℃〜180℃である。
【0071】
上記キャパシタフィルム、すなわち上記二軸配向ポリプロピレン(BOPP)は、前記部分で定義したポリプロピレン(PP)から製造されることが好ましく、ポリプロピレン(PP)に与えられる特性は、特に断らない限り、上記キャパシタフィルムに対する特性と同様である。
【0072】
本発明は、キャパシタフィルムの製造方法のみならず、ポリプロピレン(PP)を含むキャパシタフィルムをも対象とする。従ってポリプロピレン(PP)及びキャパシタフィルムに関する部で示した全ての情報は、製品に関連する特徴とみなされる。従って、本発明は、特許請求の範囲で定義するキャパシタフィルムを特に対象とする。
【0073】
言い換えると、本発明は、ポリプロピレン(PP)を含むキャパシタフィルム、特にプロピレンホモポリマー(H−PP)を含むキャパシタフィルムをも対象とし、上記キャパシタフィルム及び/又はプロピレン(PP)、特に上記キャパシタフィルム及び/又はプロピレンホモポリマー(H−PP)は、さらに、
下記の式
【数57】
好ましくは下記の式
【数58】
より好ましくは下記の式
【数59】
さらに好ましくは下記の式
【数60】
(式中、P75は50Hz及び75℃で測定した誘電率、P110は50Hz及び110℃で測定した誘電率である。)を満たす。
【0074】
好ましい実施形態では、本発明は、上記ポリプロピレンホモポリマー(HPP)が上記キャパシタフィルムの唯一のポリマー成分である、前記部分で定義したキャパシタフィルムを対象とする。
【0075】
上記キャパシタフィルムの好ましい構造上の特性に関しては、前述の情報が参照される。
【0076】
さらに、前2段落のキャパシタフィルム及び/又はプロピレンホモポリマー(H−PP)は、さらに、
(a)好ましくは下記の式
【数61】
より好ましくは下記の式
【数62】
さらに好ましくは下記の式
【数63】
さらになお好ましくは下記の式
【数64】
(式中、P75は50Hz及び75℃で測定した誘電率、P120は50Hz及び120℃で測定した誘電率である。)、及び/又は
(b1)好ましくは下記の式
【数65】
より好ましくは下記の式
【数66】
さらに好ましくは下記の式
【数67】
さらになお好ましくは下記の式
【数68】
(式中、D75は50Hz及び75℃で測定した損失(tan delta)、D110は50Hz及び110℃で測定した損失(tan delta)である。)、及び/若しくは
(b2)好ましくは下記の式
【数69】
より好ましくは下記の式
【数70】
さらに好ましくは下記の式
【数71】
さらになお好ましくは下記の式
【数72】
(式中、D75は50Hz及び75℃で測定した損失(tan delta)、D120は50Hz及び120℃で測定した損失(tan delta)である。)を満たす。
【0077】
さらに、前3段落で定義したキャパシタフィルム及び/又はポリプロピレンホモポリマー(H−PP)は、好ましくは、
(a)
13C−NMR分光法によって決定される<2,1>部位欠陥の量が0.4モル%以下、好ましくは0.2モル%以下、より好ましくは0.1モル%以下、さらに好ましくは検出不可能であり;
(b)5ppm未満〜500ppmまで、好ましくは10〜400ppm、より好ましくは30〜500ppm、さらに好ましくは40〜400ppm、例えば50〜300ppmの灰分含有量を有し;
(c)平均粒径d50が1μm未満、好ましくは800nm未満、より好ましくは20〜600nm、さらに好ましくは30〜500nm、例えば30〜300nmであるナノサイズ触媒断片(F)を含み;
(d)少なくとも155℃、好ましくは少なくとも158℃、より好ましくは少なくとも160℃、さらに好ましくは155〜168℃の範囲、さらになお好ましくは155〜165℃の範囲、例えば157〜163℃の範囲又は159〜163℃の範囲の溶融温度(T
m)を有し;及び/又は
(e)少なくとも110℃、好ましくは111℃、より好ましくは110〜120℃の範囲、さらに好ましくは110〜118℃の結晶化温度(T
c)を有する。
【0078】
最後に、上記キャパシタフィルム及び/又はプロピレンホモポリマー(H−PP)は、さらに、
(a)100℃における絶縁破壊電圧が350AC/μm以上、より好ましくは380AC/μm以上であること;及び/又は
(b)機械方向と横断方向の延伸比を4.5×9.5として上記ポリプロピレン(PP)から作製した、厚さ6.5〜7μmの二軸配向ポリプロピレン(BOPP)フィルムにおいて測定した場合の絶縁破壊電圧における電界強度が少なくとも550VDC/μmであること、
を特徴とする。
【0079】
固体触媒系(SCS)を含む触媒
前記部分で指摘したように、キャパシタフィルムの製造に使用する、前記部分で定義した特別なポリプロピレン(PP)は、特定の固体触媒系(SCS)を含む触媒を使用することによって得ることができ、またこのようにして得ることが好ましい。従って以下では、固体触媒系(SCS)を含む触媒、その製造、及び本発明のポリプロピレン(PP)の重合方法を詳細に説明する。
【0080】
本発明の触媒は、
(a)固体触媒系(SCS)
(b)任意に、アルミニウム化合物等の共触媒、及び
(c)任意に、ヒドロカルビルオキシシラン化合物等の外部供与体
を含む。
【0081】
使用する固体触媒系(SCS)は、
(a)遷移金属の化合物であって、上記金属が、好ましくは周期表(IUPAC)の第4〜6族のうちの1つから、特に第4族から選択され、例えばTiである、遷移金属の化合物;
(b)周期表(IUPAC)の第1〜3族のうちの1つから選択される選択される金属の化合物、及び
(c)(内部)電子供与体(E)
を含むことが好ましい。
【0082】
上記固体触媒系(SCS)は、好ましくは、
(a)ASTM4641に従って測定した1.40ml/g未満の細孔容積を有し、及び/又は
(b)ASTM D3663に従って測定した30m
2/g未満の表面積を有し、及び/又は
(c)20〜200μmの範囲の平均粒径d50を有する。
【0083】
使用する触媒系(SCS)の顕著な特徴は、固体形状であることである。言い換えると、ポリプロピレン(PP)の重合には不均一系触媒作用が適用される、つまり触媒系(SCS)の凝集状態(固体状態)が、反応物質、すなわちプロピレン及び任意に使用する他α−オレフィンの凝集状態とは異なる、ということである。公知の固体触媒系と異なり、本発明で使用する固体触媒系(SCS)は、いわゆる自立型触媒系であり、言い換えると、使用する固体触媒系(SCS)は外部担持物質を含まない。そのような「外部担持物質」の目的は、活性触媒種が、それぞれ固体担持物質上及びその固体担持物質の任意の孔内に配置されるようにすることである。外部担持物質としての典型例は、シリカ、MgCl
2又は多孔性高分子材料等の有機又は無機担持物質である。これらの不活性な外部担持物質は、一般的に、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%の量で使用される。
【0084】
本発明で使用する触媒は、上述の外部担持物質を含まない。しかしながら本発明によると、固体触媒系(SCS)は、固体触媒系(SCS)の40重量%未満の量の触媒的に不活性な固体物質を含んでよい。この物質は担持物質としては作用せず、すなわち固体触媒系を獲得するために使用されるものではない。この触媒的に不活性な固体物質は、固定触媒系(SCS)の製造中に存在し、従って、従来の担持型触媒系の場合のように外部から(触媒製造の後に)添加されるものではない。得られる固定触媒系(SCS)内の、このような触媒的に不活性な固体物質の量は、固体触媒系(SCS)の好ましくは30.0重量%未満、より好ましくは20.0重量%未満、又は好ましくは10重量%未満である。以下でより詳細に開示するように、この触媒的に不活性な固体物質はナノサイズである。
【0085】
固定触媒系(SCS)は、分析の吸着物としてN
2ガスを用いて公知のBET法により測定した場合に(ASTM D3663)、30m
2/g未満、例えば20m
2/g未満の表面積を有する。ある実施形態では、表面積は好ましくは15m
2/g未満、さらに好ましくは10m
2/g未満である。いくつかの実施形態では、固体触媒系(SCS)は5m
2/g以下の表面積を有し、この値は本発明で使用する方法での検出限界最低値となる。
【0086】
固体触媒系(SCS)は、ASTM4641に従って測定された細孔容積によってさらに定義され得る。従って、いくつかの実施形態ではより大きな細孔容積とすることも可能ではあるが、固体触媒系(SCS)は1.0ml/g未満の細孔容積を有することが好ましい。いくつかの実施形態では、細孔容積は好ましくは0.5ml/g未満、より好ましくは0.3ml/g未満であり、0.2ml/g未満でさえある。別の好ましい実施形態では、ASTM4641に従って測定した場合、細孔容積は検出できない。
【0087】
さらに、上記固体触媒系(SCS)は、典型的には、500μm以下、すなわち、好ましくは2〜500μmの範囲、より好ましくは5〜200μmの範囲の平均粒径(d50)を有する。平均粒径(d50)は、特に好ましくは、100μm未満、さらに好ましくは80μm未満である。平均粒径(d50)の好ましい範囲は5〜80μmであり、いくつかの実施形態では10〜60μmである。
【0088】
以下で詳細に定義するように、固体触媒系(SCS)の製造方法に応じて、粒径分布の広さを示すSPAN値が大きく変化し得る。例えば、エマルジョン固化方法によって製造された固体触媒系(SCS)は、2.0未満、すなわち0.5〜2.0未満の範囲、例えば0.7〜1.5の範囲のSPAN値を有し、一方でより伝統的な沈殿法で得た固体触媒系(SCS)のSPAN値は少なくとも2.0、より好ましくは少なくとも3.0、さらに好ましくは少なくとも4.0、例えば4.0〜7.0の範囲である。固定触媒系(SCS)は、2.0未満、すなわち0.5〜2.0未満、例えば0.7〜1.5のSPAN値を有することが特に好ましい。
【0089】
さらに固体触媒系(SCS)は、包摂物を含んでもよい。本発明に基づく包摂物は、触媒的な活性部位を含まず、中空の孔(voids)の形態、液体で充填された中空の孔の形態、液体で部分的に充填された中空の孔の形態、固体物質の形態、又は固体物質で部分的に充填された中空の孔の形態で存在し得る。特に包摂物は固体物質、すなわち触媒的に不活性な固体物質である。
【0090】
従って、上記固体触媒系(SCS)は、好ましくは固体物質を含み、上記物質は触媒的に活性な部位を有さず、任意に500m
2/g未満の比表面積及び/又は200nm未満の平均粒径(d50)を有する。
【0091】
「触媒的に活性な部位を有さない」又は「触媒的に不活性」という表現は特に、上記固体物質が、重合プロセスにおいて触媒的活性を有する、周期表(IUPAC)の第3〜10族の遷移金属化合物のような成分及び化合物を含まないか又はこれらから構成されないことを示す。従って、好ましい実施形態では、上記固体物質は、重合プロセスにおいて、特にポリプロピレン又はポリエチレン等のポリオレフィンを製造するための重合プロセスにおいて触媒的に不活性である。
【0092】
「不活性」という用語は、IUPAC(IUPAC化学用語の概要第2版(1997))によって定義されているように理解される。従って、不活性とは、特定の条件下で非反応性であることを表す。本願における「特定の条件」とは、触媒を調製する際の条件、及び前記部分で定義したモノマーの重合を実施する条件である。従って、上記固体物質は、好ましくは−50〜200℃の温度、より好ましくは−20〜150℃の温度で、また、1〜100バール、より好ましくは10〜100バール、なおより好ましくは15〜90バール、さらに好ましくは20〜70バールの圧力下で不活性である。
【0093】
このような触媒的に不活性な固体物質は、固体触媒系(SCS)内に分散している。従って、固体触媒系(SCS)は、触媒的に不活性な固体物質が内部で分散しているマトリクス、すなわち触媒的に不活性な固体物質が固体触媒系(SCS)のマトリクス相の内部に分散相を形成しているマトリクスと見ることもできる。そして、このマトリクスは、本明細書で定義した触媒的に活性な化合物によって構成されており、特に周期表(IUPAC)の第3〜10族の遷移金属化合物及び任意に周期表(IUPAC)の第1〜3族の金属化合物によって構成されている。当然のことながら、本明細書で定義した他のすべての触媒化合物も、固体触媒系(SCS)のマトリクスを構成でき、その内部に触媒的に不活性な固体物質が分散することになる。
【0094】
上述のように、触媒的に不活性な固体物質は通常、固体触媒系(SCS)の全質量のうちの若干を構成するに過ぎない。従って固体触媒系(SCS)は、40重量%未満、好ましくは30重量%未満、さらに好ましくは20重量%未満の触媒的に不活性な固体物質を含む。固体触媒系(SCS)は、触媒的に不活性な固体物質が固体触媒系(SCS)内に存在するならば、1〜30重量%の範囲、よち好ましくは1〜20重量%の範囲、さらに好ましくは1〜10重量%の範囲で含むことが特に好ましい。
【0095】
触媒的に不活性な固体物質は、細長形状並びに不規則形状及び球形状を含む所望の形状としてよい。本発明による触媒的に不活性な固体物質は、板様形状を有してもよく、又は例えば繊維形状のように細長いものであってもよい。
【0096】
好ましい触媒的に不活性な固体物質は無機物質及び有機物質、特に有機ポリマー物質であり、適切な例としては、シリカ、モンモリロナイト、カーボンブラック、グラファイト、ゼオライト、アルミナ等のナノ物質、並びにガラス製ナノビーズを含む他の無機粒子又はこれらの組み合わせが挙げられる。好適な有機粒子、特にポリマー性有機粒子は、ポリスチレン又は他のポリマー性物質等のポリマーから作製されたナノビーズである。いずれの場合でも、固体触媒系(SCS)で使用する触媒的に不活性な固体物質は、固体触媒系(SCS)の調製中だけでなく、後続の重合反応での使用中も、触媒的に活性な部位に対して不活性でなければならない。このことは、活性中心の形成において、触媒的に不活性な固体物質が干渉を受けないことを意味している。
【0097】
従って、触媒的に不活性な固体物質は、SiO
2、ポリマー性物質及び/又はAl
2O
3からなるナノスケールの球状粒子から選択されることが好ましい。
【0098】
固体触媒系(SCS)の触媒的に不活性な固体物質に関する議論における「ナノスケール」は、触媒的に不活性な固体物質が200nm以下、好ましくは150nm以下、より好ましくは100nm未満の平均粒径(d50)を有することを意味する。従って、触媒的に不活性な固体物質は、10〜200nm、好ましくは10〜100nm、より好ましくは10〜90nm、さらに好ましくは10〜80nmの平均粒径(d50)を有する。
【0099】
上記固体触媒系(SCS)は、
(a)周期表(IUPAC)の第1〜3族のうちの1つから選択される金属及び電子供与体(E)の錯体(C)の溶液であって、上記錯体(C)が、上記金属の化合物(CM)を上記電子供与体(E)又はその前駆体(EP)と反応させることによって得られる、錯体(C)の溶液を、
(b)液体遷移金属化合物(CT)又は遷移金属化合物(CT)の溶液
と接触させる工程、
を含む方法によって得ることができ、またこのようにして得ることが好ましい。
【0100】
従って、上記固体触媒系(SCS)の製造における重要な側面は、担持型触媒系の場合と異なり、触媒系(SCS)の製造中に、錯体(C)及び遷移金属化合物(CT)のいずれもが固体の状態で存在しない、ということである。
【0101】
触媒的に不活性な固体物質が存在する場合、(a)又は(b)のどちらか一方の調製中に、接触前又は接触後(ただし液体触媒を固体形状に変換する前)に、触媒的に不活性な固体物質をその系に添加できる。
【0102】
周期表(IUPAC)の第1〜3族のうちの1つから選択される金属及び電子供与体(E)の錯体(C)の溶液は、上記金属の化合物(CM)を上記電子供与体(E)又はその前駆体と有機溶媒中で反応させることによって得られる。
【0103】
錯体(C)の調製に使用する金属化合物(CM)は、周期表(IUPAC)の第1〜3族のうちの1つから選択されるいかなる金属化合物(CM)であってよい。しかしながら、錯体(C)は好ましくは第2族の金属の錯体であり、より好ましくはマグネシウム錯体である。従って、上記錯体(C)の調製に使用する金属化合物(CM)は、マグネシウム化合物等の第2族の金属の化合物であることが好ましい。
【0104】
従ってまず、周期表(IUPAC)の第1〜3族のうちの1つ、好ましくはマグネシウム化合物等の第2族の金属の化合物から選択される金属の化合物(CM)であって、好ましくはアルコキシ部分を含む金属化合物(CM)が製造される。より好ましくは、製造される金属化合物(CM)は、マグネシウムジアルコキシド等の第2族金属ジアルコキシド、マグネシウムジハライド等の第2族金属ジハライドとアルコールを含む錯体、及びマグネシウムジハライド等の第2族金属ジハライドとマグネシウムジアルコキシド等の第2族金属ジアルコキシドを含む錯体からなる群から選択される。
【0105】
従って、周期表(IUPAC)の第1〜3族のうちの1つ、好ましくはマグネシウム化合物等の第2族の金属の化合物から選択される金属化合物(CM)は、通常はチタニウムを含まない。
【0106】
最も好ましくは、マグネシウム化合物は、アルキルマグネシウム化合物をアルコールと反応させることにより得られる。これによって、ジアルキルマグネシウムR
2Mg及び各Rが同一又は異なるC
1〜C
20アルキルであるアルキルマグネシウムアルコキシドRMgORからなる群から選択される少なくとも1種のマグネシウム化合物前駆体が、R’がC
1〜C
20ヒドロカルビル基であり、mが2、3、4、5及び6から選択される整数である1価アルコールR’OH及び多価アルコールR’(OH)
mからなる群から選択される少なくとも1種のアルコールと反応し、これによって上記マグネシウム化合物(CM)が得られる。R’OH及びR’(OH)
mの化学式中では、R’は同一であるか又は異なる。実施形態の1つにおいて、アルコールは、例えばエーテル基等のヒドロキシ基ではない部分を有するさらなる酸素含有基を含むことができる。ジアルキルマグネシウムのRは、同一であるか又は異なるC
4〜C
12アルキルであることが好ましい。典型的なアルキルマグネシウムは、エチルブチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジプロピルマグネシウム、プロピルブチルマグネシウム、ジペンチルマグネシウム、ブチルペンチルマグネシウム、ブチルオクチルマグネシウム及びジオクチルマグネシウムである。典型的なアルキル−アルコキシマグネシウム化合物は、エチルマグネシウムブトキシド、マグネシウムジブトキシド、ブチルマグネシウムペントキシド、マグネシウムジペントキシド、オクチルマグネシウムブトキシド及びオクチルマグネシウムオクトキシドである。R
2Mgは、一方のRがブチル基であって、他方のRがオクチル基であることが最も好ましく、すなわちジアルキルマグネシウム化合物がブチルオクチルマグネシウムであることが最も好ましい。
【0107】
前段落で述べたマグネシウム化合物前駆体との反応に使用するアルコールは、1価のアルコール、典型的にはC
1〜C
201価アルコール、(2価又はそれ以上のアルコールを含むという定義による)多価アルコール、又は少なくとも1種の1価アルコールと少なくとも1種の多価アルコーとの混合物である。マグネシウムに富む錯体は、1価のアルコールの一部を多価のアルコールで置換することによって得られる。実施形態の1つにおいては、1種の1価アルコールのみを使用することが好ましい。
【0108】
好ましい1価のアルコールは化学式R’OHで表され、ここでR’はC
2〜C
16アルキル基であり、最も好ましくはC
4〜C
12アルキル基であり、例えば2−エチル−1−ヘキサノールである。
【0109】
典型的な多価アルコールは、エチレングリコール、プロペングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンヂオール、1,8−オクタンジオール、ピナコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールである。多価アルコールは、エチレングリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール及びグリセロールからなる群から選択されることが最も好ましい。
【0110】
周期表(IUPAC)の第1〜3族のうちの1つから選択される金属の化合物(CM)、好ましくは第2族の金属の化合物(CM)、より好ましくはマグネシウム化合物を得るために使用する反応条件は、使用する反応物質及び試薬に応じて様々である。しかしながら、本発明の一実施形態によると、上記マグネシウム化合物前駆体を、少なくとも上記少なくとも1種のアルコールと、30〜80℃の温度で10〜90分間、好ましくは約30分間反応させる。
【0111】
周期表(IUPAC)の第1〜3族のうちの1つから選択される金属の化合物(CM)、好ましくは第2族の金属の化合物、さらに好ましくはマグネシウム化合物が得られた後、この化合物(CM)を、当該技術分野で公知の電子供与体(E)又は電子供与体の前駆体(EP)と反応させる。電子供与体(E)は、好ましくは、カルボン酸又は2価酸又はエーテル化合物のモノエステル又はジエステルである。上記カルボン酸エステル又はジエステル、例えば、芳香族若しくは脂肪族の飽和若しくは不飽和カルボン酸若しくは2価酸のモノエステル又はジエステルは、カルボン酸ハライド又は2価酸のハライド、すなわち好ましい電子供与体の前駆体(EP)を、ヒドロキシ基とは異なる、例えばエーテル基等のさらなる酸素含有基を任意に含むC
2〜C
16アルカノール及び/又はジオールと反応させることによりin situで形成される。上記金属化合物(CM)を、好ましくは、電子供与体の前駆体(EP)、すなわち好ましくは式(I)のジカルボン酸ジハライドと反応させて、錯体(C)を得る。
【化1】
(式中、各R’’は同一又は異なるC
1〜C
20ヒドロカルビル基であるか又は両R’’は、式(I)に示す2つの不飽和炭素と共に、C
5〜C
20の飽和又は不飽和の脂肪族環又は芳香族環を形成し、X’はハロゲンである。)
【0112】
非芳香族ジカルボン酸ジハライドのうち、マレイン酸ジハイライド、フマル酸ジハイライド、及び、それぞれシトラコン酸ジハライドやメサコン酸ジハライド等のそれらのR’’置換誘導体からなる群が最も重要である。
【0113】
環状、脂肪族、又は芳香族ジカルボン酸ジハライドのうち、フタル酸ジハライド(1,2−ベンゼンジカルボン酸ジハライド)、それに水素が添加された1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジハライド、及びそれらの誘導体からなる群が最も重要である。通常使用されるジカルボン酸ジハライドは、フタロイルジクロライドである。
【0114】
好ましくは、マグネシウム化合物を、ジカルボン酸ハライドと、Mg
全付加/ジカルボン酸ハライドのモル比が1:1及び1:0.1、好ましくは1:0.6〜1:0.25となるように反応させる。
【0115】
周期表(IUPAC)の第1〜3族のうちの1つから選択される金属の化合物(CM)、好ましくは第2族の金属の化合物、さらに好ましくはマグネシウム化合物を、電子供与体(E)又は電子供与体の前駆体(EP)、すなわちジカルボン酸ジハライドと、以下に示す条件の少なくとも1つの下で反応させることが好ましい:
− 室温で上記ジカルボン酸ジハライドを添加する;
− 得られた反応混合物を20〜80℃に、好ましくは50〜70℃に加熱する;
− その温度を10〜90分、好ましくは25〜35分間維持する。
【0116】
錯体(C)の調製に使用する有機溶媒は、その錯体(C)が周囲温度、つまり80℃まで(20〜80℃)で溶解する限り、いかなる有機溶媒であってもよい。従って、有機溶媒は、C
5〜C
10炭化水素、好ましくはトルエン等のC
6〜C
10芳香族炭化水素を含み、好ましくはこのような炭化水素からなることが好ましい。
【0117】
適切な遷移金属化合物(CT)は、特に周期表(IUPAC)の第4〜6族、とりわけ第4又は5族の遷移金属の遷移金属化合物(CT)である。適切な例はTi及びVを含み、特にTiCl
4のようなTiの化合物が好ましい。
【0118】
上述の化合物に加え、触媒成分は、例えば第13族の化合物、好ましくはアルキル基及び/又はアルコキシル残基並びに任意にハロゲン残基を含むAl−化合物のような還元剤を含むことができる。これらの化合物は、最終的な回収前のいずれかの工程において、触媒調製物に添加できる。
【0119】
本発明で使用するオレフィン重合触媒は、その触媒成分(固体触媒系)に加えて従来の共触媒を含んでもよく、これには例えば、周期表(IUPAC)の第13族の化合物に基づくもの、例えばアルキルアルミニウムやアルミニウムハライド又はアルキルアルミニウムハライド化合物(例えばトリメチルアルミニウム)といったアルミニウム化合物等の有機アルミニウムが挙げられる。
【0120】
さらに、典型的には例えばシラン類や当該技術分野で公知のその他の外部供与体から選択してよい、1又は2種以上の外部供与体を使用できる。外部供与体は当該技術分野で公知であり、プロピレンの重合において立体制御剤として使用される。外部供与体は、好ましくは、ヒドロカルビルオキシシラン化合物及びヒドロカルビルオキシアルカン化合物から選択される。
【0121】
ヒドロカルビルオキシシラン化合物は、典型的には式(II)を有する。
R’
0Si(OR’’)
4−0(II)
(式中、R’は、a−又はb−分岐のC
3〜C
12−ヒドロカルビルであり、
R’’は、C
1〜C
12−ヒドロカルビルであり、
0は、1〜3の整数である。
【0122】
本発明の外部電子供与体として使用するヒドロカルビルオキシシラン化合物のより具体的な例は、ジフェニルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジエトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシランである。式(II)のアルコキシルシラン化合物としては、ジシクロペンチルジメトキシシラン又はシクロヘキシルメチルジメトキシシランが最も好ましい。
【0123】
錯体(C)の溶液を、遷移金属化合物(CT)の液体又は遷移金属化合物(CT)の溶液と接触させた後、固体触媒系(SCS)が自然に沈殿するか又はエマルジョンが形成される。後者がより好ましい。エマルジョンが得られるか沈殿が速やかに生じるかは、選択される具体的な条件に依存する。特に国際特許出願WO03/000754、WO03/000757及びWO2007/077027並びに欧州特許出願EP2251361が参照される。以下に、沈殿法とエマルジョン法とをより詳細に記述する。
【0124】
エマルジョン法:
エマルジョン法による固体触媒系(SCS)は、以下により得られる:
(a)周期表(IUPAC)の第1〜3族のうちの1つから選択される金属及び電子供与体(E)の錯体(C)の溶液であって、上記錯体(C)が、上記金属の化合物(CM)を上記電子供与体(E)又はその前駆体(EP)と有機溶媒中で反応させることによって得られる、錯体(C)の溶液を調製し;
(b)上記錯体(C)の溶液を液体遷移金属化合物(CT)と混合し;
(c)連続相及び分散相のエマルジョンであって、上記分散相が液滴状でありかつ錯体(C)と遷移金属化合物(CT)とを含む、エマルジョンを得て;
(d)分散相の液滴を固化することによって固体触媒系(SCS)を得る。
【0125】
エマルジョン方法によると、好ましくは、錯体(C)をトルエンのようなC
6〜C
10芳香族炭化水素に溶解させ、液体遷移金属化合物(CT)、好ましくは周期表(IUPAC)の第4〜6族の、特にTiのような周期表(IUPAC)の第4族の遷移金属の液体遷移金属化合物(CT)(例えばTiCl
4)に接触させる。錯体(C)の溶液が液体遷移金属化合物(CT)と接触することにより、エマルジョンが形成される。二相、つまりエマルジョンの生成は、接触を低温、具体的には10℃より高く60℃より低い、好ましくは20℃より高く50℃より低い温度で実施することによって促進される。エマルジョンは、連続相及び液滴状の分散相を含んでいる。分散相には、遷移金属化合物(CT)及び錯体(C)が存在する。
【0126】
アルキルアルミニウム、アルキルアルミニウムハライド、アルコキシアルミニウム、アルコキシルアルキルアルミニウム等のアルミニウム化合物若しくはハライド又は還元剤として作用する他の化合物といった追加の触媒成分を、最終的な固体触媒系(SCS)の回収前のいずれかの工程において、反応混合物に添加できる。さらに、調製中、エマルジョンの形成を促進する試薬を添加することもできる。例として、乳化剤やエマルジョン安定剤、例えば、アクリル又はメタクリル性ポリマー溶液のような界面活性剤、極性基のないα−オレフィンポリマーや6〜20個の炭素原子を有するα−オレフィンのポリマーのような不安定性抑制剤(turbulence minimizing agents)が挙げられる。
【0127】
得られたエマルジョンを混合するための適切な方法には、当業者に公知の機械的方法及び超音波を使用して混合する方法が含まれる。例えば混合時間や混合強度、混ぜ方、例えば混合速度や使用する超音波の波長といった混合に使用する力の強度、溶媒相の粘度、界面活性剤等の使用する添加物といったプロセスのパラメータを用いて、固体触媒系粒子(SCS)のサイズを調整する。
【0128】
このようにして上記固体触媒系粒子(SCS)を形成し、(例えば70〜150℃、より好ましくは90〜110℃で)加熱して触媒粒子を固化し、(触媒粒子を回収するために)分離するという通常の方法で回収してもよい。この事項に関して、適当な反応条件を開示するWO03/000754、WO03/000757、WO2007/077027、WO2004/029112及びWO2007/077027が参照される。これらの開示は引用により本明細書に組み込まれる。得られた触媒粒子は、重合プロセスにおける最終的な使用に先立って、例えば洗浄や安定化、予備重合等の後処理の工程に供してもよい。触媒的に不活性な固体物質のような包摂物を固体触媒系(SCS)が含んでいる場合については、WO2007/077027及びEP2065405が参照される。
【0129】
沈澱方法:
沈殿法による固体触媒系(SCS)は、以下により得られる:
(a)周期表(IUPAC)の第1〜3族のうちの1つから選択される金属及び電子供与体(E)の錯体(C)の溶液であって、上記錯体(C)が、上記金属の化合物(CM)を上記電子供与体(E)又はその前駆体(EP)と有機溶媒中で反応させることによって得られる、錯体(C)の溶液を調製し;
(b)上記錯体(C)の溶液を液体遷移金属化合物(CT)又は遷移金属化合物(CT)の溶液と合わせ、上記触媒系(SCS)の沈殿を固体粒子の形状で生じさせる。
【0130】
エマルジョン法とは異なり、固体触媒系(SCS)を調製している間にエマルジョンが形成されることはない。
【0131】
この沈殿法では、トルエンのようなC
6〜C
10芳香族炭化水素に錯体(C)を溶解させ、液体遷移金属化合物(CT)、つまり固体ではない遷移金属化合物(CT)に接触させる。従って、そのような遷移金属化合物(CT)はそれ自体が液体であるか、又は、周囲温度、つまり80℃までの(20〜80℃)の温度で溶媒に溶解される。遷移金属化合物(CT)に対して溶媒が使用される場合、溶媒はいずれの有機溶媒であってよく、錯体(C)に対して使用した有機溶媒と同じであっても又は異なっていてもよいが、後者が好ましい。好ましくは、遷移金属化合物(CT)に対する有機溶媒は、C
5〜C
10炭化水素であり、より好ましくはヘプタン、オクタン又はノナンのようなC
6〜C
10アルカン又はこれらの混合物である。遷移金属化合物(CT)は、好ましくは、周期表(IUPAC)の第4〜6族、特に第4族の遷移金属の遷移金属化合物(CT)であり、例えばTi(例えばTiCl
4)である。錯体(C)の溶液が液体遷移金属化合物(CT)又は遷移金属化合物(CT)の溶液に接触することにより、沈殿物が生じ、固体触媒系(SCS)が形成される。
【0132】
本発明による「沈殿」という用語は、触媒の調製中に溶液中で化学反応が起こり、その溶液に対して不溶な所望の触媒系(SCS)が生成することを言う。このように沈殿した固体触媒系(SCS)は、上述のエマルジョン法によって得られた固体触媒系(SCS)とは形態及び形状が異なる。
【0133】
錯体(C)の溶液と液体遷移金属化合物(CT)又は遷移金属化合物(CT)の溶液との混合は、少なくとも50℃、好ましくは50〜110℃の温度範囲、例えば70〜100℃の温度範囲、最も好ましくは85〜95℃の範囲で行われる。錯体(C)と遷移金属化合物(CT)とを混合した後は、反応混合物全体を少なくとも50℃、より好ましくは50〜110℃の温度範囲、例えば70〜100℃、最も好ましくは85〜95℃の温度範囲に維持して、触媒を固体粒子形状で完全に沈殿させることが特に好ましい。
【0134】
さらに、必須ではないが、沈殿剤を錯体(C)の溶液又は遷移金属化合物(CT)の溶液に添加することもできる。そのような沈殿剤は、沈殿工程の間に形成される粒子の形態に影響し得る。ある特定の方法においては、沈殿剤は使用されない。本発明による沈殿剤は、触媒系(SCS)の固体粒子形状での沈殿を促進する試薬である。例えば、遷移金属化合物(CT)に対して使用される有機溶媒は、沈殿を促進でき、従って沈殿剤として作用し、使用することができる。しかしながら、最終的な触媒はこのような媒質を含まない。さらに、シリカ又はMgCl
2粒子のようないわゆるシードマテリアルを分離沈殿剤として使用できる。しかしながら、シードマテリアルの粒径は、大きいと好ましくなく、電機特性に悪影響を与えかねない。従って本出願で使用される触媒系(SCS)には、沈殿剤の残留物が存在しないことが好ましい。本発明全体の文脈における「存在しない」とは、固体触媒系(SCS)内に存在する沈殿剤が1.0重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.05重量%以下、さらに好ましくは0.005重量%、なお好ましくは検出不可能であることを意味する。
【0135】
上述のように、共触媒及び/又は外部供与体のような追加の触媒成分は、通常、オレフィン重合触媒として使用可能である
【0136】
錯体(C)の溶液を液体遷移金属化合物(CT)又は遷移金属化合物(CT)の溶液に添加する場合、混ぜ合わせることが好ましい。適切な混合技術には、当業者に公知の機械的方法及び超音波を使用して混合する方法が含まれる。
【0137】
さらに、錯体(C)のための一方の溶媒及び遷移金属化合物(CT)のための他方の溶媒の選択は、固体触媒系(SCS)のすみやかな沈殿が起こるように行うことが好ましい。上述のように、錯体(C)の溶媒は、C
5〜C
10炭化水素、好ましくはトルエンのようなC
6〜C
10芳香族炭化水素を含み、好ましくはこのような炭化水素から構成される。TiCl
4のような遷移金属化合物(CT)が溶解され得る溶媒は、錯体(C)の溶媒と同一であっても又は異なっていてもよく、後者がより好ましい。遷移金属化合物(CT)の溶媒は、C
5〜C
10炭化水素であることが好ましく、ヘプタン、オクタン若しくはノナン等のC
6〜C
10アルカン又はこれらの混合物であることがより好ましい。錯体(C)の溶媒はトルエン等のC
6〜C
10芳香族炭化水素であり、遷移金属化合物(CT)の溶媒はヘプタン等のC
6〜C
10アルカンであることが特に好ましい。
【0138】
沈殿の後、固体触媒粒子を公知の方法により洗浄する。従って、固体の触媒粒子を、トルエンで、好ましくは高温(例えば90℃)のトルエンで洗浄し、その後にヘプタンで、より好ましくは高温(例えば90℃)のヘプタンで洗浄することが好ましい。例えば、冷ヘプタン又はペンタンを用いたさらなる洗浄も可能である。沈殿法、特に、固体触媒系(SCS)が触媒的に不活性な固体物質を含む状況での沈殿法に関するさらなる情報については、EP2251361が参照される。
【0139】
重合方法:
本発明で定義したポリプロピレンを製造するための重合方法は、公知のいずれの方法であってもよいが、本明細書に規定した触媒系(SCS)を含む触媒を使用される。
【0140】
従って、プロピレン並びに任意にエチレン及び/又は少なくとも1種のC
4〜C
10α−オレフィンを、固体触媒系(SCS)を含む触媒の存在下で重合させ、本発明で定義したポリプロピレン(PP)を得る。より正確には、本発明のポリプロピレン(PP)の製造方法は、液相、スラリー相又は気相反応器を用いた単一段階プロセスであってよい。しかしながら、ポリプロピレン(PP)を、少なくとも1つのスラリー(バルク)相反応並びに本発明の固体触媒系(SCS)を有する触媒を使用する少なくとも1つのさらなるスラリー及び/又は気相反応器を含む、多段階プロセスで製造することが好ましい。
【0141】
好ましい多段階プロセスは、例えばBorealisにより開発された、Borstar(登録商標)技術として知られるスラリー−気相プロセスである。この点に関して、EP0887379A1、WO92/12182、WO2004/000899、WO2004/111095、WO99/24478、WO99/24479及びWO00/68315が参照される。これらは引用により本明細書に組み込まれる。
【0142】
さらに適切なスラリー−気相プロセスは、BasellのSpheripol(登録商標)法である。
【0143】
ポリプロピレン(PP)は、Spheripol(登録商標)又はBorstar(登録商標)−PP法で製造することが好ましい。
【0144】
従って第1工程において、キャパシタフィルムの製造に使用されるポリプロピレン(PP)を製造するが、スラリー反応器、例えばループ反応器中で、プロピレンを、任意に少なくとも他のC
2〜C
10α−オレフィン(コモノマー)と、固体触媒系(SCS)を含む触媒の存在下で重合させることによって製造し、ポリプロピレン(PP)の一部を製造することが好ましい。上記部分はその後に次の気相反応器へ移され、そこでは、気相反応器内で、プロピレンを、任意に前記部分で定義したコモノマーと共に反応させ、第1工程の反応生産物の存在下でさらなる部分を製造する。この反応シークエンスにより、ポリプロピレン(PP)を構成する部分(i)(画分(A))及び(ii)(画分(B))の反応器配合物が得られる。当然のことながら、本発明において、第1の反応を気相反応器内で行い、第2の重合反応をスラリー反応器、例えばループ反応器内で行うこともできる。最初に部分(i)を製造し、次いで部分(ii)を製造する順番について上述したが、部分(i)及び(ii)の製造順を入れ替えることもさらに可能である。上述した反応器に加え、さらに重合反応器と予備重合反応器とを使用することも可能である。少なくとも2つの重合工程を含む上記の方法は、所望の反応器配合物の製造を可能にする容易に制御可能な反応工程を提供するという利点がある。得られる重合物の特性を適切に調整するために、例えばモノマーの供給、コモノマーの供給、水素の供給、温度及び圧力を適宜選択することによって、重合工程を調節してもよい。
【0145】
上述した好ましいスラリー−気相プロセスに関し、プロセス条件についての一般的な情報を以下に述べる。
【0146】
温度は40〜110℃、好ましくは60と100℃の間、特に70と90℃の間であり、圧力は20〜80バールの範囲、好ましくは30〜60バールである。任意に、分子量を制御するために水素を添加する。好ましくはループ反応器内で行われるスラリー重合の反応物は、その後に次の気相反応器に移される。気相反応器内の温度は、50〜130℃の範囲内であることが好ましく、70〜100℃がより好ましく、圧力は5〜50バールの範囲であり、15〜35バールが好ましく、また任意に、分子量を制御するために水素を添加する。
【0147】
滞留時間は、上記部分で特定した反応器の領域により様々である。スラリー反応中、例えばループ反応器を用いたある実施形態での滞留時間は、0.5〜5時間の範囲であり、例えば0.5〜2時間であり、気相反応器での滞留時間は通常1〜8時間である。
【0148】
上記の方法により製造したポリプロピレン(PP)の特性は、当業者に知られているプロセス条件を用いて調整及び制御してもよい。例えば、下記のプロセスパラメータの1又は2以上を用いて調整及び制御され得る:温度、水素の供給、コモノマーの供給、プロピレンの供給、触媒のタイプ、外部供与体の量、マルチモーダルポリマーを構成する2以上の成分への分割。
【0149】
上述した方法は、反応器製造ポリプロピレン(PP)を得るための非常に有効な手段となる。
【0150】
フィルム形成プロセス
ポリプロピレン(PP)を製造した後、ポリプロピレン(PP)をフィルム形成プロセスに供する。キャパシタフィルムの製造に適したいずれのフィルム形成プロセスであっても使用可能である。
【0151】
好ましい実施形態においては、ポリプロピレン(PP)を、フィルム形成プロセスの前に洗浄工程に供することはない。
【0152】
キャパシタフィルム、つまり二軸配向ポリプロピレン(BOPP)は、従来公知の延伸加工により製造することができる。したがって、本発明のキャパシタフィルム、すなわち二軸配向ポリプロピレン(BOPP)の製造工程には、本願で定めるポリプロピレン(PP)を使用することと、当該ポリプロピレンを好ましくは公知のテンター法によりフィルムに形成することとが含まれる。
【0153】
テンター法とは、具体的には、本願に定めるポリプロピレン(PP)をTダイなどのスリットダイから溶融押出し、冷却ドラムで冷却して未延伸のシートを得る方法である。当該シートを、例えば加熱した金属ロールで予備加熱し、次いで周速が異なるように設定された複数のロール間で縦方向に延伸し、次いで両端をグリッパーで挟み、テンターによってオーブン中でシートを横方向に延伸して、二軸延伸フィルムを得る。長手方向に延伸する際の当該延伸シートの温度は、本願に定めるポリプロピレンの融点の温度範囲内(機械方向:−20〜―5℃;横断方向;−10〜+15℃)となるように調節されることが好ましい。横方向の延伸におけるフィルム厚の均一性は、縦方向の延伸後にフィルム上の固定部分をマスクし、横方向に延伸した後に当該マスクの間隔を測定して実際の延伸係数を測定する方法により評価することができる。
【0154】
続けて、金属化に供するキャパシタフィルム、つまり二軸配向フィルム(BOPP)の表面を、空気、窒素、二酸化炭素ガスまたはこれらの混合物中でコロナ放電により処理することで、蒸着される金属に対する接着力を高めることができる。そして巻取り機で巻き取る。
【0155】
さらに本発明は、キャパシタ中の誘電体(dielectricum)としてのポリプロピレン(PP)の使用を対象とし、前記ポリプロピレン(PP)は、
(a1)好ましくは下記の式
【数73】
より好ましくは下記の式
【数74】
さらに好ましくは下記の式
【数75】
さらになお好ましくは下記の式
【数76】
(式中、P75は50Hz及び75℃で測定した誘電率、P110は50Hz及び110℃で測定した誘電率である。)を満たし、及び/又は
(a2)好ましくは下記の式
【数77】
より好ましくは下記の式
【数78】
さらに好ましくは下記の式
【数79】
さらになお好ましくは下記の式
【数80】
(式中、P75は50Hz及び75℃で測定した誘電率、P120は50Hz及び120℃で測定した誘電率である。)を満たし、及び/又は
(b1)好ましくは下記の式
【数81】
より好ましくは下記の式
【数82】
さらに好ましくは下記の式
【数83】
さらになお好ましくは下記の式
【数84】
(式中、D75は50Hz及び75℃で測定した損失(tan delta)、D110は50Hz及び110℃で測定した損失(tan delta)である。)を満たし、及び/又は
(b2)好ましくは下記の式
【数85】
より好ましくは下記の式
【数86】
さらに好ましくは下記の式
【数87】
さらになお好ましくは下記の式
【数88】
(式中、D75は50Hz及び75℃で測定した損失(tan delta)、D120は50Hz及び120℃で測定した損失(tan delta)である。)を満たし、及び/又は
(c1)機械方向と横断方向の延伸比を4.5×9.5として上記ポリプロピレン(PP)から作製した、厚さ6.5〜7μmの二軸配向ポリプロピレン(BOPP)フィルムにおいて測定した場合の100℃における絶縁破壊電圧が350AC/μm以上、より好ましくは380AC/μm以上であり、
及び/又は
(c2)機械方向と横断方向の延伸比を4.5×9.5として上記ポリプロピレン(PP)から作製した、厚さ6.5〜7μmの二軸配向ポリプロピレン(BOPP)フィルムにおいて測定した場合における絶縁破壊電圧における電界強度が少なくとも550VDC/μmである。
【0156】
好ましい実施形態において、本発明は、上述したように、キャパシタ中の誘電体としてのポリプロピレン(PP)の使用を対象とし、上記ポリプロピレン(PP)は、
(a)
13C−NMR分光法によって決定される<2,1>部位欠陥の量が0.4モル%以下、好ましくは0.2モル%以下、より好ましくは0.1モル%、さらに好ましくは検出不可能であり;
(b)5ppm未満〜500ppm、好ましくは10〜400ppm、より好ましくは30〜500ppm、さらに好ましくは40〜400ppm、例えば50〜300ppmの灰分含有量を有し;
(c)平均粒径d50が1μm未満、好ましくは800nm未満、より好ましくは20〜600nm、さらに好ましくは30〜500nm、例えば30〜300nmであるナノサイズ触媒断片(F)を含み;
(d)少なくとも155℃、好ましくは少なくとも158℃、より好ましくは少なくとも160℃、さらに好ましくは155〜168℃の範囲、さらになお好ましくは155〜165℃の範囲、例えば157〜163℃の範囲又は159〜163℃の範囲の溶融温度(T
m)を有し;及び/又は
(e)少なくとも110℃、好ましくは少なくとも111℃、より好ましくは110〜120℃の範囲、さらに好ましくは110〜118℃の範囲の結晶化温度(T
c)を有する。
【0157】
本発明の好ましい実施形態において、キャパシタ中の誘電体として使用されるポリプロピレン(PP)は、上述したように、プロピレンホモポリマー(H−PP)である。
【0158】
任意に、上記ポリプロピレン(PP)又はプロピレンホモポリマー(H−PP)は、上述のキャパシタフィルム中の誘電体として使用される唯一のポリマー成分である。
【0159】
上記ポリプロピレン(PP)は、好ましくは、上記部分で示したようにさらに定義される。特に、上記ポリプロピレン(PP)は二軸配向しており、好ましくは上述した比率で2軸に延伸されたものである。
【0160】
さらに本発明は、本明細書で規定したキャパシタフィルムのキャパシタ中における使用を対象とする。
【0161】
さらに本発明は、本明細書で規定したキャパシタフィルムを含む少なくとも1つの層を有するキャパシタを対象とする。さらに、そのキャパシタは、金属層、特に上述した方法によって得られる金属層を有することが好ましい。
【0162】
実施例によって本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0163】
A.測定方法
以下に示す用語の定義及び決定方法は、別段の規定が無いかぎり、上述の本発明に関する一般的な記載と下記の実施例に適用される。
【0164】
NMR分光法による微細構造の定量化
ポリマー中の立体規則性、レジオ規則性及びコモノマー含量を定量化するために、定量的核磁気共鳴(NMR)分光法を使用した。
【0165】
定量的
13C{
1H}NMRスペクトルは、
1H及び
13Cについてそれぞれ400.15及び100.62MHzで動作するBruker Advance III 400 NMR分光計を使用して、溶液状態で記録した。全てのスペクトルは、全気体に窒素ガスを使用して、125℃で、
13Cに最適化した10mmの拡張温度プローブヘッドを使用して記録した。
【0166】
ポリプロピレンホモポリマーについては、約200mgの物質を1,2−テトラクロロエタン−d
2(TCE−d
2)に溶解した。溶液の均一性を確保するために、ヒートブロック内で最初の試料を調製した後、NMRチューブを回転オーブン内で少なくとも1時間さらに加熱した。マグネット内に挿入してすぐ、チューブを10Hzで回転させた。この設定は、主として立体規則性分布定量化に必要な高解像度を得るために選択された(Busico,V.,Cipullo,R.,Prog.Polym.Sci.26(2001)443;Busico,V.;Cipullo,R.,Monaco,G.,Vacatello,M.,Segre,A.L.,Macromoleucles 30(1997)6251)。NOEとバイレベルWALTZ16デカップリングスキーム(bi−level WALTZ 16 decoupling scheme)を用いて、標準的な単一パルス励起を使用した(Zhou,Z.,Kuemmerle,R.,Qiu,X.,Redwine,D.,Cong,R.,Taha,A.,Baugh,D.Winniford,B.,J.Mag.Reson.187(2007)225;Busico,V.,Carbonniere,P.,Cipullo,R.,Pellecchia,R.,Severn,J.,Talarico,G.,Macromol.Rapid Commun.2007,28,11289)。スペクトルあたり合計で8192(8k)のtransientが得られた。
【0167】
エチレン−プロピレンコポリマーについては、約200mgの物質を3mlの1,2−テトラクロロエタン−d
2(TCE−d
2)に、クロム(III)−アセチルアセトネート(Cr(acac)
3)と共に溶解し、溶媒中の緩和剤の65mM溶液を得た(Singh,G.,Kothari,A.,Gupta,V.,Polymer Testing 285(2009),475)。溶液の均一性を確保するために、ヒートブロック内で最初の試料を調製した後、回転オーブン内でNMRチューブをさらに少なくとも1時間加熱した。マグネット内に挿入してすぐ、チューブを10Hzで回転させた。この設定は、主として高解像度のため選択されたが、正確にエチレン含量を定量化するために必要であった。標準シングル−パルス励起は、NOEを用いず、最適チップ角度、1秒のリサイクル遅延(recycle delay)、及びバイレベルWALTZ16デカップリングスキームを使用して行った(Zhou,Z.,Kuemmerle,R.,Qiu,X.,Redwine,D.,Cong,R.,Taha,A.,Baugh,D.Winniford,B.,J.Mag.Reson.187(2007)225;Busico,V.,Carbonniere,P.,Cipullo,R.,Pellecchia,R.,Severn,J.,Talarico,G.,Macromol.Rapid Commun.2007,28,11289)。スペクトルあたり合計で6144(6k)のtransientが得られた。
【0168】
定量的
13C{
1H}NMRスペクトルを処理、積分して、専用のコンピュータプログラムを使用して、関連する定量的性質を積分値から決定した。
【0169】
エチレンプロピレンコポリマーについては、すべての化学シフトを、溶媒の化学シフトを用いて30.00ppmのエチレンブロック(EEE)の中心メチレン基に対して間接的に対応させた。このようなアプローチによって、この構造体が存在しなくても比較参照が可能になった。
【0170】
ポリプロピレンホモポリマーについては、全ての化学シフトは、21.85ppmのメチルアイソタクチックペンタッド(mmmm)を内部参照とした。
【0171】
部位欠陥(Resconi,L.、Cavallo,L.、Fait,A.、Piemontesi,F.、Chem.Rev.2000、100、1253;Wang,W−J.,Zhu,S.,Macromolecules 33(2000),1157;Cheng,H.N.,Macromolecules 17(1984),1950)及びコモノマーに対応する特徴的なシグナルが観察された。
【0172】
立体規則性分布は、23.6−19.7ppmのメチル領域の積分によって定量し、目的の立体配列に関連しない部分について補正した(Busico,V.,Cipullo,R.,Prog.Polym.Sci.26(2001)443;Busico,V.,Cipullo,R.,Monaco,G.,Vacatello,M.,Segre,A.L.,Macromoleucles 30(1997)6251)。
【0173】
特に、立体規則性分布の定量化に対する部位欠陥及びコモノマーの影響は、立体配列の特定積分領域から代表的な部位欠陥及びコモノマーの積分値を減算することによって補正した。
【0174】
立体規則性を、ペンタッドレベルで決定し、全ペンタッド配列に対するペンタッド立体規則性(mmmm)配列の百分率としてレポートした:
[mmmm]%=100*(mmmm/全ペンタッドの合計)
【0175】
2,1エリトロ部位欠陥の存在は、17.7及び17.2ppmの2つのメチル部位の存在によって示され、他の特徴的な部位によって確認された。
【0176】
他の型の部位欠陥に対応する特徴的なシグナルは観察されなかった(Resconi,L.,Cavallo,L.,Fait,A.,Piemontesi,F.,Chem.Rev.2000,100,1253)。
【0177】
2,1エリトロ部位欠陥の量を、17.7及び17.2ppmの2つの特徴的なメチル部位の平均積分を用いて定量化した:
P
21e=(I
e6+I
e8)/2
【0178】
1,2一次挿入プロペンの量をメチル領域に基づいて定量化し、一次挿入と関連しない領域に含まれる部位とこの領域から除外される一次挿入部位とに対して補正した:
P
12=I
CH3+P
12e
【0179】
プロペンの全量を、一次挿入プロペンと存在する他の部位欠陥全部の合計として定量化した:
P
total=P
12+P
21e
【0180】
2,1エリトロ部位欠陥のモル百分率を、全プロペンについて定量化した:
[21e]モル%=100*(P
21e/P
total)
【0181】
コポリマーについては、エチレンの取り込みに対応する特徴的なシグナルが観察された(Cheng,H.N.,Macromolecules 17(1984),1950)。
【0182】
同様に観察された部位欠陥を用いて(Resconi,L.,Cavallo,L.,Fait,A.,Piemontesi,F.,Chem.Rev.2000,100,1253;Wang,W−J.,Zhu,S.,Macromolecules 33(2000),1157;Cheng,H.N.,Macromolecules 17(1984),1950)、コモノマー含量に対するそのような欠陥の影響について補正が必要であった。
【0183】
ポリマー中のエチレンのモル分率を、Wangら(Wang,W−J.,Zhu,S.,Macromolecules 33(2000),1157)の方法を用い、規定した条件を用いて得られた
13C{
1H}スペクトルの全スペクトル領域にわたる多数のシグナルの積分値を介して定量化した。この方法は、その正確性、信頼性、及び必要に応じて部位欠陥の存在を示すことができるために採用された。積分領域は、広範囲のコモノマー含量に対する適用できるように、わずかな調整を加えた。
【0184】
ポリマー中のコモノマー取り込み量のモル百分率を、下式に基づいてモル分率から計算した:
E[mol%]=100*fE
【0185】
ポリマー中のコモノマー取り込み量の重量%を、下式に基づいてモル分率から計算した:
E[重量%]=100*(fE*28.05)/((fE*28.05)+((1−fE)*42.08))
【0186】
トライアドレベルでのコモノマー配列分布を、Kakugoら(Kakugo,M.,Naito,Y.,Mizunuma,K.,Miyatake,T.Macromolecules 15(1982)1150)の方法を使用し、規定した条件に基づいて得られた
13C{
1H}スペクトルの全スペクトル領域にわたる多数のシグナルの積分値を介して決定した。この方法は、その信頼性に基づいて採用された。積分領域は、広範囲のコモノマー含量に対する適用できるように、わずかな調整を加えた。
【0187】
ポリマー中の所定のコモノマートライアド配列のモル百分率を、Kakugoらの方法(Kakugo,M.,Naito,Y.,Mizunuma,K.,Miyatake,T.Macromolecules 15(1982)1150)によって決定されたモル分率から、下式に従って計算した:
XXX[mol%]=100*fXXX
【0188】
トライアドレベルでのコモノマー配列分布から決定される、ポリマー中のコモノマー取り込みのモル分率を、既知の必須関係式を用いてトライアド分布から計算した(Randall,J.Macromol.Sci.,Rev.Macromol.Chem.Phys.1989,C29,201):
fXEX=fEEE+fPEE+fPEP
fXPX=fPPP+fEPP+fEPE
(式中、PEE及びEPPはそれぞれ、可逆配列PEE/EEP及びEPP/PPEの合計を示す)
【0189】
コモノマー分布のランダム性を、取り込まれた全エチレンに対する孤立エチレン配列の相対量として定量化した。ランダム性は、下記の関係式を用い、トライアド配列分布から計算した:
R(E)[%]=100*(fPEP/fXEX)
【0190】
SEC/VISC−LSにより決定した平均分子量、分子量分布、分岐指数(Mn、Mw、MWD、g’)
平均分子量(Mw、Mn)、分子量分布(MWD)、及び多分散指数PDI=Mw/Mn(式中、Mwは数平均分子量であり、Mwは重量平均分子量である。)によって記述されるその範囲を、ISO16014−4 2003に基づいてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定した。屈折率計(RI)、4本キャピラリーブリッジ式のオンライン粘度計(PL−BV 400−HT)、並びに角度15°及び90°のデュアル式光散乱検出器(PL−LS15/90光散乱検出器)を備えたA PL220(Polymer Laboratories))GPCを用いた。Polymer LaboratoriesのOlexisカラム3本及びOlexis Guardカラム1本を固定相として、1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB、250mg/Lの2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチル−フェノールで安定化)を160℃かつ1mL/分の一定流量での移動相として使用した。1回の分析あたり200μLの試料溶液を注入した。対応する検出器定数及び検出器間遅延容量を、分子量132900g/mol及び粘度0.4789dl/gのナローPSスタンダード(Narrow PS standard)(MWD=1.01)を用いて決定した。使用したPSスタンダードのTCB中の対応するdn/dcは、0.053cm
3/gである。
【0191】
各溶出スライスのモル質量を、2つの角度15°及び90°の組み合わせを使用し、光散乱によって決定した。すべてのデータ処理及び計算は、Cirrus Multi−Offline SEC−Software Version 3.2(Polymer Laboratories、Varian inc.company製)を使用して行った。分子量は、Cirrus software内のフィールド「sample calculation options subfield slice MW data from」にある「use combination of LS angles」というオプションを使用して計算した。
【0192】
データ処理についての詳細は、G.Saunders,P.A.G:Cormack,S.Graham;D.C.Sherrington,Macromolecules,2005,38,6418−6422に記載されている。この文献において、各々のスライスでのMw
iが以下の等式により角度90°で算出される:
【数89】
【0193】
角度90°におけるレイリー比R(θ)
90°はLS検出器によって測定され、RはRI−検出器の応答を示す。粒子散乱関数P(θ)を、C.Jackson及びH.G.Barthによって記載されているように、(Handbook of Size Exclusion Chromatography and related techniques,C.−S.Wu,2
nded.,Marcel Dekker,New York,2004,p.103中のC.Jackson and H.G.Barth,「Molecular Weight Sensitive Detectors」)両角度(15°及び90°)を用いて決定する。LS検出器又はRI検出器のシグナルが少ないそれぞれ低分子領域及び高分子領域については、線形近似を用いて溶出容積を対応分子量に相関させた。
【0194】
等式で使用したdn/dcは、RI検出器の検出器定数、試料の濃度c及び分析した試料の検出応答面積から計算される。
【0195】
分岐の相対量は、分岐ポリマー試料のg’指数を用いて決定される。長鎖分岐(LCB)指数は、g’=[η]
br/[η]
linとして定義される。g’値が増大すると分岐定数が減少することはよく知られている。[η]は、ある分子量のポリマー試料のトリクロロベンゼン中における160℃での固有粘度であり、オンライン粘度濃度検出器によって測定される。固有粘度は、Solomon−Gatesman等式を用いて、Cirrus Multi−Offline SEC−Software Version 3.2のハンドブックの記載の通りに測定した。
【0196】
各溶出スライスに必要な濃度は、RI検出器によって決定される。
【0197】
[η]
linは直鎖上試料の固有粘度であり、[η]
brは同一分子量及び同一化学組成を有する分岐試料の粘度である。g’
nの数平均及び重量平均g’
wは、以下のように定義される:
【数90】
【数91】
式中、a
iは画分iのdW/dlogMであり、A
iは画分iまでのポリマーの累積dW/dlogMである。分子量に対する基準直線(線形アイソタクチックPP)の[η]
linを、オンライン粘度検出器を用いて測定した。下記のK及びαの値を、分子量範囲がlogM=4.5〜6.1の基準直線から取得した(K=30.68*10
−3及びα=0.681)。g’の計算のためのスライス分子量当たりの[η]
linを、次の関係式によって算出した。[η]
lin,i=K*M
iα。[η]
br,iを、オンライン粘度濃度検出器によって、それぞれの試料毎に測定した。
【0198】
MFR
2(230℃)は、ISO1133(230℃,2.16kg荷重)に従って測定される。
【0199】
冷キシレン可溶画分(XCS重量%)
冷キシレン可溶部(XCS)量は、ISO16152;初版;2005−07−01に従って25℃で決定される。
【0200】
溶融温度(T
m)、融解熱(H
f)、結晶化温度(T
c)及び結晶化熱(H
c):は、5〜10mgの試料について、Mettler TA820示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される。DSCは、加熱/冷却/熱のサイクルで、スキャン速度10℃/分、温度範囲+23〜+210℃の範囲で、ISO3146/part 3/method C2に従って走査する。結晶化温度及び結晶化熱(H
c)は、冷却工程から決定される。一方、溶融温度及び融解熱(H
f)は、第2加熱工程から決定される。
【0201】
機械方向の引張弾性率を、ISO527−3に従って、二軸配向フィルムに対し23℃で決定した。上記試験はクロスヘッド速度1mm/分で行われた。
【0202】
絶縁破壊強度(Electric breakdown strength)(EB63%):絶縁破壊強度は、IEC60243−2(1998)に従って測定した。取得した生データを、IEC60727、part 1&2に従って評価した。
【0203】
上記方法(IEC60243−2)は、圧縮成形プラーク上で絶縁材料に対する絶縁破壊強度を測定する方法を記述する。絶縁破壊強度は、IEC60243−2に記載してあるように、金属棒を電極として用い、高電圧キャビネット内で決定される。電圧は、絶縁破壊が発生するまで、フィルム/プラークに対し2kV/sで増加される。
定義:
Eb:E
b=U
b/D
【0204】
絶縁破壊が発生する試料中の電界強度(U
b、[kV])。均一なプラーク及びフィルム内における電気的な絶縁破壊強度(E
b、[kV/mm])は、U
bをプラーク/フィルムの厚さ(d、[mm])で除算することにより計算できる。E
bの単位はkV/mmである。各BOPPフィルムに対し、10回の独立した絶縁破壊の測定を行う。絶縁破壊強度により材料を特徴付けるために、10回の独立に取得した試験結果から、平均絶縁破壊強度を示すパラメータを導き出す必要がある。このパラメータはしばしば、Eb63%パラメータと呼ばれる。このパラメータを取得するために、IEC60727、part 1&2に記載される統計的評価を行った。その概要を以下に簡単に記述する:BOPPフィルム当たり10回の独立した絶縁破壊試験結果(E
b、kV/mm)を、ワイブルプロットを用いて評価する。つまり、63パーセンタイル(ワイブル分布の尺度パラメータ)を、材料の絶縁破壊強度(Eb63%)を特徴付けるために使用する。β−パラメータは、これら10個の点を通った線形回帰曲線の傾きである。β−パラメータは、ワイブル分布の形状パラメータである。
【0205】
導電率は、ASTM D257に従って決定される電気抵抗の逆数として算出した。
【0206】
空隙率:N
2ガス、ASTM4641、Micromeritics Tristar3000装置を用いたBET;
試料調製:温度50℃、真空中で6時間。
【0207】
表面積:N
2ガス、ASTM D 3663、Micromeritics Tristar3000装置を用いたBET;
試料調製:温度50℃、真空中で6時間。
【0208】
灰分含有量:灰分含有量はISO3451−1(1997)に従って測定される。
【0209】
平均粒径(d50)はnmで示され、室温で、媒体としてn−ヘプタンを用いて、Coulter Counter LS200で測定され、100nm未満の粒子径については、透過型電子顕微鏡法により測定される。
【0210】
粒径(d10)は、nmで示され、室温で、媒体としてn−ヘプタンを用いて、Coulter Counter LS200で測定される。
【0211】
粒径(d90)は、nmで示され、室温で、媒体としてn−ヘプタンを用いて、Coulter Counter LS200で測定される。
【0212】
SPANは、下記のように定義される:
【数92】
【0213】
ICP法
触媒の元素分析を、質量Mの固体試料をドライアイス上で冷却して行った。試料を、既知の量Vとなるまで、硝酸(HNO
3、65%、Vの5%)及び新たに脱イオン化した水(Vの5%)に溶解して希釈した。溶液をさらに、最終容量VになるまでDI水で希釈し、安定化のために2時間放置した。
【0214】
分析は、室温で、Thermo Elemental iCAP6300 Inductively Coupled Plasma−Optical Emmision Spectrometer(ICP−OES)を使用して行った。この装置を、ブランク(5%HNO
3の溶液)及び5%HNO
3溶液中0.5ppm、1ppm、10ppm、50ppm、100ppm及び300ppmのAl、Mg及びTiを標準試料として用いて較正した。
【0215】
分析の直前に、ブランク及び100ppm標準試料を用いて較正を「リスロープ(resloped)」し、品質コントロール試料(5%HNO
3の溶液中20ppmのAl、Mg及びTi、DI水中の3%HF)でリスロープを確認する。QC試料はまた5試料毎及び計画した分析セットの終了後に流す。
【0216】
Mg含量は285.213nmラインを用いて、Ti含量は336.121nmラインを用いてモニターした。アルミニウム含量は、ICP試料中のAl濃度が0−10ppm(100ppmにのみ較正。)の場合は、167.079nmラインを介して、Al濃度が10ppmを超える場合には、396.152nmラインを介してモニターした。
【0217】
レポート値は、同じ試料から連続して3回採取したアリコートの平均であり、試料の原質量と希釈容量とをソフトウェアに入力することによって、元の触媒に関連づけられる。
【0218】
誘電分析(DEA)は、金コーティングスパッタを用い、DEA2070のTA装置で測定される。測定は、50Hzで100Nの一定のばね力(F)を用いて、3℃/分の上げ幅で130℃まで行った。
【0219】
誘電分析は、2つの基本的な物質の電気的特性、つまり静電容量とコンダクタンスとを、時間、温度及び周波数の関数として測定する。物質の静電容量とは、電荷を溜める能力であり、物質のコンダクタンスとは、電荷を伝える能力である。静電容量とコンダクタンスは重要な特性である。損失は、フィルムの厚みに依存せず、配向度にも依存しない。
【0220】
誘電分析によって決定される特性は以下のようなものである:
e’=誘電率
e’’=損失率
tanδ=誘電正接(e’’/e’)
σ=イオン導電性[1/Ωcm]
【0221】
コンダクタンスは誘電率に比例し、イオン導電性は損失率に由来する。誘電率及び損失率は共に、分子の動きについて有用な情報を提供する。誘電率は双極子の配列を決定し、損失率は、双極子を配列させ、イオンを移動させるのに必要なエネルギーに対応する。ポリマーの誘電率は低温では低い。これは、双極子が移動して、電場に沿って自身を配置できないからである。ポリマーが流動性を帯びるまで、つまり、ガラス転移温度(T
g)及び溶融温度(T
m)を超えるまで、イオン導電性は重要でない。
【0222】
ガラス転移温度を超えると、下記の等式を用いてバルクイオン導電性を計算するために損失率が用いられる:
σ=e’’ωe
0
σ=イオン導電性
ω=角振動数(2πf)
f=周波数(Hz)
e
0=真空(free space)の絶対誘電率(8.85x10−12F/m)
【0223】
B.実施例
触媒の調製−IE1
本発明に使用される固体触媒系は、トリエチルアルミニウムの代わりにジエチルアルミニウムクロライドをアルミニウム化合物として使用したことを除き、WO2004/029112の実施例8に従って調製した。触媒は、3.4重量%のTi、12.8重量%のMg、及び53重量%のClを含んでいた。
【0224】
重合−IE1
ポリマーを、表1の処理パラメータを用い、50m
3の予備重合反応器、150m
3のスラリーループ反応器1基及び気相反応器1基内で生成した。固体触媒系は、触媒の調製−IE1に記載した通りであった。共触媒としてトリエチルアルミニウム(TEA)を使用し、外部供与体として、ジシクロペンチルジメトキシシランを使用した。重合データを表1に記載する。
【0225】
【表1】
【0226】
比較例−CE1
CE1は、Borealis AG製の誘電用プロピレンホモポリマーグレードである、市販の非常に高純度の「Borclean HB311BF」であり、2.2g/10minのMFR
2(230℃)、161〜165℃のT
m(DSC、ISO3146)、10〜20ppmの非常に低い灰分含有量(ISO3451−1に従って測定)を有し、TiCl
3ベースのチーグラー・ナッタ触媒によって製造された。触媒残留物を減らすために、市販の製品を重合後にさらに精製した。
【0227】
(ポリマーIE1及びCE1を用いた)フィルムの製造
215〜240℃の温度及び40バールの圧力で押し出し成形を行い、7.0μmのフィルムを製造した。冷却後、140℃の温度にて、機械方向の配向処理を行い、その後に160℃の温度にて横断方向の配向処理を行った。4.5x9.5の配向比を選択した。
【0228】
IE1及びCE1のポリマー特性を表2に記載し、フィルム特性の測定値を表3に記載する。
【0229】
【表2】
【0230】
【表3】
【0231】
100℃での絶縁破壊電界強度、抵抗、80℃におけるTan δ及び抵抗並びに導電率は、キャパシタフィルム中のポリプロピレンについて一般に許容される値を有する。
【0232】
触媒の調製−IE2
触媒の調製−IE1に記載した固体触媒系を使用する。
【0233】
重合−IE2
表4で概要を示した処理パラメータを用いた2工程処理で、5リットル反応器内で、ベンチスケールでポリマーを製造した。
(a)バルク重合
触媒を、TEAL及び外部供与体(Do)(ジシクロペンチルジメトキシシラン)の半量と混合した。TEAL及び供与体の残りの半量は反応器に添加した。触媒、TEAL及び供与体の接触から10分後に、混合物を反応器に注入した。水素、次いで1.4kgのプロピレンを添加し、18分間で温度を80℃に上げた。30分後、未反応のプロピレンを取り除き、ポリマーを回収し、MFRを分析した。
(b)バルク+気相重合
この試験のバルク工程をa)に記載した通りに行った。バルク工程の後に未反応のプロピレンを取り除いた後、6molの水素と必要量のプロピレンを圧力が20バールに達するまで供給することにより、気相で反応を継続した。消費量に応じてプロピレンを供給する事によって、圧力を20バールに維持した。プロピレンの消費により目的のスプリットに達したことが示されたとき、未反応のプロピレンを取り除く事により、反応を停止した。ポリマーを回収し、分析及び試験を行った。重合データを表4に記載する。
【0234】
【表4】
【0235】
比較例−CE2
CE2は、Borealis AG製の誘電用プロピレンホモポリマーグレードである、市販の非常に高純度の「Borclean HB318BF」であり、3.2g/10minのMFR
2(230℃)、161℃のT
m(DSC、ISO3146)、20ppm未満の灰分含有量(ISO3451−1に従って測定)を有し、TiCl
3ベースのチーグラー・ナッタ触媒によって製造された。触媒残留物を減らすために、市販の製品を重合後にさらに精製した。
【0236】
IE2及びCE2のポリマー特性を表5に記載する。
【0237】
【表5】
【0238】
IE2及びCE2のポリマーを用いたフィルムの製造
230〜235℃の温度及び400バールの圧力で押し出し成形(Brabender Extrusiograph、スクリュー4:1、ミキサー、トルク、55Nm及び60rpm)を行い、24〜29μmのフィルムを製造した。
【0239】
冷却し、顆粒を乾燥(70℃で2時間)した後、Brueckner Karo IV伸張機を用いて配向を行った。160℃の温度にて、機械方向に配向させた後に横断方向の配向を行い、配向比は5x5とした。
【0240】
上記のように製造したフィルムを用いてDEA(誘電率e’、損失率e’’及びtan delta)を測定した。
【0241】
表6に、50Hz並びに約75、110℃及び120℃の温度における誘電率e’(P)、損失率e’’(L)及びtan delta(D)の値(それぞれP75、P110、P120、L75、L110、L120、D75、D110及びD120)を記載する。
【0242】
結果に基づく曲線を
図1及び2に記載する。
比I〜IVを測定結果に基づいて算出する:
【数93】
(式中、P75は50Hz及び75℃で測定された誘電率、P110は50Hz及び110℃で測定された誘電率である。);
【数94】
(式中、P75は50Hz及び75℃で測定された誘電率、P120は50Hz及び120℃で測定された誘電率である。);
【数95】
(式中、D75は50Hz及び75℃で測定された損失(tan delta)、D110は50Hz及び110℃で測定された損失(tan delta)である。);
【数96】
(式中、D75は50Hz及び75℃で測定された損失(tan delta)、D120は50Hz及び120℃で測定された損失(tan delta)である。)
【0243】
【表6】
【0244】
表6の測定結果並びに
図1及び
図2から理解されるように、本発明の実施例の誘電率及び損失は、比較例のものよりも温度により影響されにくい。