特許第5789731号(P5789731)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5789731
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】トリチウム水を含む原料水の処理方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/06 20060101AFI20150917BHJP
   B01D 59/40 20060101ALI20150917BHJP
   B01D 59/04 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   G21F9/06 591
   B01D59/40
   G21F9/06 561
   B01D59/04
【請求項の数】11
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2015-515319(P2015-515319)
(86)(22)【出願日】2015年1月28日
(86)【国際出願番号】JP2015052345
【審査請求日】2015年3月20日
(31)【優先権主張番号】特願2014-166113(P2014-166113)
(32)【優先日】2014年8月18日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390014579
【氏名又は名称】ペルメレック電極株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100079614
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 明義
(72)【発明者】
【氏名】大原 正浩
(72)【発明者】
【氏名】錦 善則
(72)【発明者】
【氏名】國松 陽
【審査官】 村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 ペルメレック電極(株) 他1名,提案書No.252「アルカリ水電解方式による汚染水処理(トリチウム処理)」,[online]資源エネルギー庁 電力・ガス事業部 原子力発電所事故収束対応室,2013年11月 8日,[検索日:平成27年5月1日],インターネット<http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/20131108_01.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/00 − 9/36
B01D 59/00 − 59/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)トリチウム水を含む原料水の一部とアルカリ水とを循環タンクに供給し、
(2)該循環タンク内において、原料水とアルカリ水とを混合してアルカリ濃度を15質量%以上に調整した電解液を、アルカリ水電解装置に供給して電解処理するとともに、
(3)該電解処理によって消失する原料水に相当する量の原料水を前記循環タンクに連続的に供給して前記アルカリ濃度を調整した初期濃度に維持し、前記電解液を循環させながら電解を継続し、連続してアルカリ水電解処理を行い、
(4)前記原料水をトリチウム含有水素ガスと酸素ガスに転換してガス化することで、前記原料水中のトリチウム濃度に対してトリチウムの濃度を1,244分の1に希釈し、かつ、
(5)前記原料水を減容化する、
工程よりなる第1のアルカリ水電解工程により、トリチウム水を含む原料水を処理することを特徴とするトリチウム水を含む原料水の処理方法。
【請求項2】
前記第1のアルカリ水電解工程により生じた前記トリチウム含有水素ガスを大気中に取出す請求項1に記載のトリチウム水を含む原料水の処理方法。
【請求項3】
(1)トリチウム水を含む原料水の一部とアルカリ水とを循環タンクに供給し、
(2)該循環タンク内において、原料水とアルカリ水とを混合して所望のアルカリ濃度に調整した電解液を、アルカリ水電解装置に供給して電解処理するとともに、
(3)該電解処理によって消失する原料水に相当する量の原料水を前記循環タンクに連続的に供給して前記アルカリ濃度を調整した初期濃度に維持し、前記電解液を循環させながら電解を継続し、連続してアルカリ水電解処理を行い、
(4)前記原料水をトリチウム含有水素ガスと酸素ガスに転換してガス化することで、前記原料水中のトリチウム濃度に対してトリチウムの濃度を1,244分の1に希釈し、かつ、
(5)前記原料水を減容化する、
工程よりなる第1のアルカリ水電解工程により、トリチウム水を含む原料水を処理した後、該第1のアルカリ水電解工程により生じた前記トリチウム含有水素ガスを触媒塔に送り、該触媒塔において、前記トリチウム含有水素ガスを該触媒塔内に充填した触媒上で水蒸気と反応させ、トリチウムを濃縮したトリチウム水含有水として回収することを特徴とするトリチウム水を含む原料水の処理方法。
【請求項4】
(1)トリチウム水を含む原料水の一部とアルカリ水とを循環タンクに供給し、
(2)該循環タンク内において、原料水とアルカリ水とを混合して所望のアルカリ濃度に調整した電解液を、アルカリ水電解装置に供給して電解処理するとともに、
(3)該電解処理によって消失する原料水に相当する量の原料水を前記循環タンクに連続的に供給して前記アルカリ濃度を調整した初期濃度に維持し、前記電解液を循環させながら電解を継続し、連続してアルカリ水電解処理を行い、
(4)前記原料水をトリチウム含有水素ガスと酸素ガスに転換してガス化することで、前記原料水中のトリチウム濃度に対してトリチウムの濃度を1,244分の1に希釈し、かつ、
(5)前記原料水を減容化する、
工程よりなる第1のアルカリ水電解工程と、
該第1のアルカリ水電解工程の終了後、該第1のアルカリ水電解工程内に残存した前記電解液の全量を蒸発器に供給し、該電解液中の前記アルカリ成分をアルカリ塩スラリーとして回収するとともに、該蒸発器より蒸留したトリチウム水含有水を取り出す第2の蒸留工程と、
該第2の蒸留工程により取り出したトリチウム水含有水と新たなアルカリ水とを循環タンクに供給し、該タンクにおいて、前記トリチウム水含有水と前記新たなアルカリ水とを混合して所望のアルカリ濃度に調整した電解液を、該電解液の処理量に見合った容量にアルカリ水電解装置の電解容量を調整して、アルカリ水電解処理を行ってバッチ処理して、前記トリチウム水含有水をガス化し、トリチウム含有水素ガスと酸素ガスに転換することで、前記トリチウム水含有水中のトリチウム濃度に対してトリチウムの濃度を1,244分の1に希釈し、かつ、前記原料水を減容化する第2のアルカリ水電解工程を有し、
更に、前記バッチ処理が終了するまで必要に応じて、前記第2の蒸留工程と前記第2のアルカリ水電解工程とを複数回繰り返す工程を設け、かつ、複数回繰り返す際に、前記第2のアルカリ水電解工程で使用する前記アルカリ水電解装置の容量を順次、小さくしながら処理を繰り返すことを特徴とするトリチウム水を含む原料水の処理方法。
【請求項5】
前記トリチウム水を含む原料水として、多量の塩化物イオンを含む不純物を含有する原料水を使用する場合に、
(1)トリチウム水を含む原料水の一部とアルカリ水とを循環タンクに供給し、
(2)該循環タンク内において、原料水とアルカリ水とを混合して所望のアルカリ濃度に調整した電解液を、アルカリ水電解装置に供給して電解処理するとともに、
(3)該電解処理によって消失する原料水に相当する量の原料水を前記循環タンクに連続的に供給して前記アルカリ濃度を調整した初期濃度に維持し、前記電解液を循環させながら電解を継続し、連続してアルカリ水電解処理を行い、
(4)前記原料水をトリチウム含有水素ガスと酸素ガスに転換してガス化することで、前記原料水中のトリチウム濃度に対してトリチウムの濃度を1,244分の1に希釈し、かつ、
(5)前記原料水を減容化する、
工程よりなる第1のアルカリ水電解工程の前工程として、更に、前記不純物を除去するための第1の蒸留工程を設け、該第1の蒸留工程で、蒸発器に前記塩化物イオンを含む不純物を含有する原料水を供給し、前記不純物を塩スラリーとして除去するとともに、前記不純物を除去した後のトリチウム水を含む原料水を取出し、これを連続供給することを特徴とするトリチウム水を含む原料水の処理方法。
【請求項6】
前記トリチウム水を含む原料水として、多量の塩化物イオンを含む不純物を含有する原料水を使用する場合に、前記第1のアルカリ水電解工程の前工程として、前記不純物を除去するための第1の蒸留工程を設け、該第1の蒸留工程で、蒸発器に、前記塩化物イオンを含む不純物を含有する原料水を供給し、前記不純物を塩スラリーとして除去するとともに、前記不純物を除去した後のトリチウム水を含む原料水を取出し、これを連続供給して前記第1のアルカリ水電解工程により処理する請求項4に記載のトリチウム水を含む原料水の処理方法。
【請求項7】
前記第1の蒸留工程において、前記塩スラリーを濃縮し、固形物として分離回収する請求項5又は6に記載のトリチウム水を含む原料水の処理方法。
【請求項8】
前記第2の蒸留工程において、前記アルカリ塩スラリーを濃縮し、固形物として分離回収する請求項4に記載のトリチウム水を含む原料水の処理方法。
【請求項9】
前記第1のアルカリ水電解工程において、前記アルカリ水として比較的高濃度のアルカリ水を使用し、電解処理を比較的高電流密度で行い、前記第2のアルカリ水電解工程において、前記アルカリ水として比較的低濃度のアルカリ水を使用し、電解処理を比較的低電流密度で行う請求項4に記載のトリチウム水を含む原料水の処理方法。
【請求項10】
前記第1のアルカリ水電解工程において、電解処理を15A/dm2以上の電流密度で行う請求項1に記載のトリチウム水を含む原料水の処理方法。
【請求項11】
前記第2のアルカリ水電解工程において、前記アルカリ水として2〜10質量%のアルカリ水を使用し、電解処理を5〜20A/dm2の電流密度で行う請求項4に記載のトリチウム水を含む原料水の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ水電解によりトリチウム水を含む原料水をガス化することで、原料水中におけるトリチウム濃度に対して、トリチウムの濃度を1,244分の1に希釈するとともに、トリチウム水を含む原料水を減容化する、トリチウム水を含む原料水の処理方法に関するものである。
更に、本発明は、トリチウムとしての排出基準の20分の1として大気中に取出し、生命体と隔絶する上空へ導く方法に関するものである。
更に、本発明は、トリチウム含有水素ガスを水蒸気と反応させ、トリチウムを濃縮したトリチウム水含有水として回収する方法に関するものである。
更に、本発明は、前記トリチウム水を含む原料水として、塩化物イオン等の不純物を殆ど含有しない原料水を用い、これを連続電解してガス化することで、トリチウム濃度を希釈されたものにするとともに、トリチウム水を含む原料水を減容化するトリチウム水を含む原料水の処理方法、及び該連続電解を行った後に、電解に用いたアルカリ成分を回収しながら、分離したトリチウム水含有水について更にアルカリ水電解を行う、トリチウム水を含む原料水の処理方法に関するものである。
更に、本発明は、前記トリチウム水を含む原料水として、塩化物イオン等の不純物を多量に含有する原料水を用い、該不純物を除去した後連続電解を行い、トリチウム濃度を希釈されたものにするとともに、トリチウム水を含む原料水を減容化するトリチウム水含有水の処理方法、及び該連続電解した後に、電解に用いたアルカリ成分を回収しながら更に電解を行い、トリチウム水含有水を更に減容化するトリチウム水を含む原料水の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地上に存在するトリチウムのほとんどは、酸化物である三重水素水、トリチウム水として存在する。大気循環しているトリチウム水濃度はおおまかに古今東西で動植物も含め一定値と考えられており、水中濃度の低下量から大気循環からはずれた期間を検知でき、地下水の年代測定が可能である。土木、農業方面での地下水流動の実証的な調査に役立てられている。トリチウムは酸素と結びついたトリチウム水として水に混在しており、水圏中に気相、液相、固相で、蒸気・降水・地下水・河川水・湖沼水・海水・飲料水・生物中に広く拡散分布している。
【0003】
天然のトリチウムは宇宙線と大気との反応により生成されるが、生成確率が低いためにその量はごくわずかしかない。一方で、1950年代の核実験や原子炉及び核燃料再処理により発生したトリチウムが環境中に大量に放出されて存在している(フォールアウトトリチウム)。また、原子炉関連施設内では、炉の運転・整備、核燃料再処理時に発生して外界に比べると高いレベルのトリチウムが蓄積されて局在するが、化学的な性質が水素とほぼ変わらないことを理由に、大気圏や海洋へ計画放出されている。
【0004】
日本国内で測定された最高値は、原発事故を起こした福島第一原発敷地内の専用港にて2013年6月21日に検出された1,100Bq/Lである。トリチウムは、水素との化学的な分離が困難なため、物理的に分離する方法が試みられているものの、いまだ実験レベルであり実用化されるには至っていない。このため原発事故等で環境中に放出されたトリチウムによる放射能は、現在の技術では除染できない。福島第一原発において発生しているトリチウムを含む汚染水は、今後80万m3規模に至るといわれており、その有効な処理方法の早期確立が期待されている。
【0005】
しかるに、トリチウム濃度は極低レベルであるため、その濃度を測定する場合には、測定精度の向上のため電解濃縮することが一般的である。ここで、従来から重水の電解濃縮は、電解質を溶解させた試料溶液を作製し、板状の平板を向かい合わせて電解する方法が知られている。電解液中に含まれる水には、H2Oの他にHDOHTOがあり、これらは通常の水電解に従って水素と酸素に分解されるが、同位体効果によりH2Oの分解がHDOやHTOの分解に対して優先し、電解液中のデューテリウムやトリチウムの濃度が上昇し、濃縮が行われる。この電解濃縮に使用する陽極としてはニッケルが、また、陰極としては、鋼、鉄及びニッケル等が使用されている。そして、これらの電極を洗浄し、希薄苛性ソーダを支持塩として重水を含む水の溶液に添加して調製した試料水をガラス容器に入れ、通電して電解を行う。その際、電流密度を1〜10A/dm2程度とし、発熱による水の蒸発を防止するために液温を5℃以下に維持しながら、通常、液量が10分の1以下になるまで電解を継続して重水素の濃縮を行っている。
【0006】
即ち、トリチウムの電解濃縮は、上記重水素の場合と同様、トリチウム水の方が軽水素水より電解されにくい性質を利用したものである。アルカリ水溶液に金属電極を挿入して電解する方法については、すでに多くの研究が行われ、標準的な手法として公にマニュアル化されている。この方法ではトリチウム濃度を1段で濃縮している。しかし、実際面となると、従来の電解濃縮法にはいくつかの間題がある。それらは、実験操作が煩雑であること、トリチウム濃縮倍率が電解質濃度の上限に制限されること、水素と酸素の混合ガスが発生し爆発の危険性があること、電解に時間がかかること、大容量の処理に適していないことである。
【0007】
以上の問題は、1段で稀薄含有物の分離捕獲という観点で技術を考えるため、アルカリ水電解質水溶液を扱うための厄介さ、両極で発生するガスを分離しにくいこと、金属表面で気泡が生成し電解電流を大きくしにくいことなど、主に従来のアルカリ水溶液電解法を利用していることに起因している。
【0008】
これに対して、近年、注目されている水の電解法としては、固体高分子型電解質、Solid Polymer Electrolyte(以下「SPE」という。)を利用した水電解方法(以下「SPE水電解」という。)がある。このSPE水電解は、米国General Electric社が1970年代初期に燃料電池の技術を適用したのが最初であり、電解部の構造はSPE膜の両面を多孔質の金属電極で挟んだもので、これを純水に浸して電流を流すだけで電解が行われ、分解ガスが多孔質電極から出てくる。SPEは、陽イオン交換樹脂の一種で、高分子鎖にイオン伝導を担うためのスルホン酸基などを化学結合させた構造を有するものである。両極間に電流を流すと、水が分解され、陽極では、酸素ガスが発生し、水素イオンが生成する。この水素イオンは、SPE中のスルホン酸基間を移動して陰極に到達し、電子を受け取って水素ガスとなる。みかけ上、SPE自体は変化することなく固体状に保たれる。
【0009】
このSPEをトリチウムの電解濃縮に利用した場合、従来法と比較して、次のような利点が期待できると考えられる。
1)蒸留水を直接分解できる。つまり、アルカリ水溶液電解法では欠かすことのできない電解質の溶解、中和及び電解質の除去が不要で、試料水の滅容率は原理的に無制限である。
2)気泡によって電極表面がおおわれることがないので大電流で電解でき、電解時間を短縮できる。
3)水素ガスと酸素ガスがSPE膜の両側に分離されて発生するので、ガスの処理が容易である。これは爆発性混合気体を扱っていた従来法よりはるかに安全である。
また、SPE水電解による重水の電解濃縮方法に関しては、本出願人により提案された特許文献1及び2並びに非特許文献1がある。
【0010】
しかし、これら特許文献1及び2並びに非特許文献1を用いた場合、分析機器や小規模濃縮処理には適用できても、下記の理由から大規模処理には適していない。利用される電解液が純水であるため、電解液に電流が流れないため構成要素の固体高分子膜を20−30Kg/cm2相当の面圧で陽極、陰極で強くかしめる必要がある。従って、電解槽の各部材が高強度であることが求められ、1m2以上の大型反応面積を確保することは経済性や操作性を考慮すると現実的ではなく、大容量の重水を含む原料水の電解濃縮や分画には、設備費も嵩み、適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平8−26703号公報(特許第3406390号公報)
【特許文献2】特開平8−323154号公報(特許第3977446号公報)
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】固体高分子電解質を用いたトリチウム電解濃縮(RADIOISOTOPES,Vol.45,No.5 May 1996(社団法人 日本アイソトープ協会発行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、これらの従来技術の問題点を解決し、電解法を利用した、大規模処理に適したトリチウム水を含む原料水の処理方法を提供することにある。より具体的には、本発明の目的は、トリチウム水を含む原料水を連続供給しながら連続してアルカリ水電解することでガス化し、トリチウム含有水素ガスと酸素ガスとに転換し、トリチウムの生命体への影響度を格段に小さくし、トリチウムの濃度を1,244分の1に希釈した状態にする方法、トリチウムとしての排出基準の20分の1以下として大気中に取出し、生命体と隔絶する上空へ導く方法、ガス化した前記トリチウム含有水素ガスを水蒸気と反応させ、トリチウムを濃縮したトリチウム水含有水として回収する方法を提供することにある。また、前記トリチウム水を含む原料水として、塩化物イオン等の不純物をほとんど含まない原料水を用いた場合に、連続電解を可能とし、トリチウム濃度の希釈と、トリチウム水を含む原料水を減容化する方法、トリチウム水を含む原料水を連続電解した後、電解に用いたアルカリ成分を回収しながら更にバッチ供給によるアルカリ水電解を行い、トリチウム濃度の希釈と、トリチウム水含有水を更に減容化するトリチウム水を含む原料水の処理方法を提供することにある。また、前記トリチウム水を含む原料水として、多量の塩化物イオンを含む不純物を含有する原料水を用いた場合に、該不純物を前工程で除去した後、上記した連続電解を行い、トリチウム濃度の希釈と、トリチウム水を含む原料水を減容化する方法、更に、これらの方法において、トリチウム水を含む原料水を連続電解した後、電解に用いたアルカリ成分を回収しながら更にバッチ供給によるアルカリ水電解を行い、トリチウム濃度の希釈と、トリチウム水含有水を更に減容化するトリチウム水を含む原料水の処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明における第1の解決手段は、上記の目的を達成するため、
(1)トリチウム水を含む原料水の一部とアルカリ水とを循環タンクに供給し、
(2)該循環タンク内において、原料水とアルカリ水とを混合して所望のアルカリ濃度に調整した電解液を、アルカリ水電解装置に供給して電解処理するとともに、
(3)該電解処理によって消失する原料水に相当する量の原料水を前記循環タンクに連続的に供給して前記アルカリ濃度を調整した初期濃度に維持し、前記電解液を循環させながら電解を継続し、連続してアルカリ水電解処理を行い、
(4)前記原料水をトリチウム含有水素ガスと酸素ガスに転換してガス化することで、前記原料水中のトリチウム濃度に対してトリチウムの濃度を1,244分の1に希釈し、かつ、
(5)前記原料水を減容化する、
工程よりなる第1のアルカリ水電解工程により、トリチウム水を含む原料水を処理することを特徴とするトリチウム水を含む原料水の処理方法を提供する。
【0015】
本発明における第2の解決手段は、上記の目的を達成するため、前記第1のアルカリ水電解工程により生じた前記トリチウム含有水素ガスを大気中に取出すことを特徴とするトリチウム水を含む原料水の処理方法を提供する。
【0016】
本発明における第3の解決手段は、上記の目的を達成するため、前記第1のアルカリ水電解工程により生じた前記トリチウム含有水素ガスを触媒塔に送り、該触媒塔において、前記トリチウム含有水素ガスを該触媒塔内に充填した触媒上で水蒸気と反応させ、トリチウムを濃縮したトリチウム水含有水として回収することを特徴とするトリチウム水を含む原料水の処理方法を提供する。
【0017】
本発明における第4の解決手段は、上記の目的を達成するため、
原料水を連続供給しながらアルカリ水電解処理を行う、前記第1のアルカリ水電解工程と、
該第1のアルカリ水電解工程の終了後、該第1のアルカリ水電解工程内に残存した前記電解液の全量を蒸発器に供給し、該電解液中の前記アルカリ成分をアルカリ塩スラリーとして回収するとともに、該蒸発器より蒸留したトリチウム水含有水を取り出す第2の蒸留工程と、
該第2の蒸留工程により取り出したトリチウム水含有水と新たなアルカリ水とを循環タンクに供給し、該タンクにおいて、前記トリチウム水含有水と前記新たなアルカリ水とを混合して所望のアルカリ濃度に調整した電解液を、該電解液の処理量に見合った容量にアルカリ水電解装置の電解容量を調整して、アルカリ水電解処理を行ってバッチ処理して、前記トリチウム水含有水をガス化し、トリチウム含有水素ガスと酸素ガスに転換することで、前記トリチウム水含有水中のトリチウム濃度に対してトリチウムの濃度を1,244分の1に希釈し、かつ、前記原料水を減容化する第2のアルカリ水電解工程を有し、
更に、前記バッチ処理が終了するまで必要に応じて、前記第2の蒸留工程と前記第2のアルカリ水電解工程とを複数回繰り返す工程を設け、かつ、複数回繰り返す際に、前記第2のアルカリ水電解工程で使用する前記アルカリ水電解装置の容量を順次、小さくしながら処理を繰り返すことを特徴とするトリチウム水を含む原料水の処理方法を提供する。
【0018】
本発明における第5の解決手段は、上記の目的を達成するため、前記第1の解決手段において、前記トリチウム水を含む原料水として、多量の塩化物イオンを含む不純物を含有する原料水を使用する場合に、前記第1のアルカリ水電解工程の前工程として、更に、前記不純物を除去するための第1の蒸留工程を設け、該第1の蒸留工程で、蒸発器に前記塩化物イオンを含む不純物を含有する原料水を供給し、前記不純物を塩スラリーとして除去するとともに、前記不純物を除去した後のトリチウム水を含む原料水を取出し、これを連続供給して前記第1のアルカリ水電解工程により処理することを特徴とするトリチウム水を含む原料水の処理方法を提供する。
【0019】
本発明における第6の解決手段は、上記の目的を達成するため、前記第4の解決手段において、前記トリチウム水を含む原料水として、多量の塩化物イオンを含む不純物を含有する原料水を使用する場合に、前記第1のアルカリ水電解工程の前工程として、前記不純物を除去するための第1の蒸留工程を設け、該第1の蒸留工程で、蒸発器に、前記塩化物イオンを含む不純物を含有する原料水を供給し、前記不純物を塩スラリーとして除去するとともに、前記不純物を除去した後のトリチウム水を含む原料水を取出し、これを連続供給して前記第1のアルカリ水電解工程により処理することを特徴とするトリチウム水を含む原料水の処理方法を提供する。
【0020】
本発明における第7の解決手段は、上記の目的を達成するため、前記第5の解決手段或いは第6の解決手段において、前記第1の蒸留工程において、前記塩スラリーを濃縮し、固形物として分離回収することを特徴とするトリチウム水を含むことを特徴とする原料水の処理方法を提供する。
【0021】
本発明における第8の解決手段は、上記の目的を達成するため、前記第4の解決手段において、前記第2の蒸留工程において、前記アルカリ塩スラリーを濃縮し、固形物として分離回収することを特徴とするトリチウム水を含むことを特徴とする原料水の処理方法を提供する。
【0022】
本発明における第9の解決手段は、上記の目的を達成するため、前記第4の解決手段において、前記第1のアルカリ水電解工程において、前記アルカリ水として比較的高濃度のアルカリ水を使用し、電解処理を比較的高電流密度で行い、前記第2のアルカリ水電解工程において、前記アルカリ水として比較的低濃度のアルカリ水を使用し、電解処理を比較的低電流密度で行うことを特徴とするトリチウム水を含むことを特徴とする原料水の処理方法を提供する。
【0023】
本発明における第10の解決手段は、上記の目的を達成するため、前記第1の解決手段において、前記第1のアルカリ水電解工程において、前記アルカリ水として15質量%以上のアルカリ水を使用し、電解処理を15A/dm2以上の電流密度で行うことを特徴とするトリチウム水を含むことを特徴とする原料水の処理方法を提供する。
【0024】
本発明における第11の解決手段は、上記の目的を達成するため、前記第4の解決手段において、前記第2のアルカリ水電解工程において、前記アルカリ水として2〜10質量%のアルカリ水を使用し、電解処理を5〜20A/dm2電流密度で行うことを特徴とするトリチウム水を含むことを特徴とする原料水の処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0025】
(1)本発明によれば、トリチウム水を含む原料水をガス化し、トリチウム含有水素ガスと酸素ガスとに転換することで、トリチウムの濃度を1,244分の1に希釈でき、トリチウムの生命体への影響度を格段に小さくすることができる。
尚、トリチウム水を含む原料水は、その全量をアルカリ水電解により、処理することが好ましいが、その量が多量にある場合、或いは、経済的若しくはその他の事情がある場合、複数回に分けてアルカリ水電解を行ってもよい。
(2)本発明によれば、トリチウム水を含む原料水をガス化することで、トリチウムの濃度を1,244分の1に希釈した状態にできるので、トリチウムとしての排出基準の20分の1以下として大気中に取出し、生命体と隔絶する上空へ導くことができる。
(3)本発明によれば、トリチウム水を含む原料水を第1のアルカリ水電解工程により連続してアルカリ水電解処理する方法において、ガス化されたトリチウムガス含有水素ガスを水蒸気と反応させることで、処理物を、濃縮したトリチウム水含有水として回収することができる。
(4)本発明によれば、多量の塩化物イオン等の不純物を含有するトリチウム水を含む原料水についても、前工程として、蒸留器に連続的に供給する第1の蒸留工程を設けることで、前記不純物を塩スラリーとして除去することで、前記に挙げた効果が得られる処理が可能になる。以下、第1のアルカリ水電解工程による処理又は前工程としての第1の蒸留工程と第1のアルカリ水電解工程よりなる処理を、「アルカリ水電解システム(I)」と呼ぶ。
(5)本発明の第4の解決手段によれば、前記アルカリ水電解システム(I)における第1のアルカリ水電解工程での連続電解終了後に、第1のアルカリ水電解工程内に残存した電解液(アルカリ水)を、第2の蒸留工程と、第2の蒸留工程の終了後に設けた第2のアルカリ水電解工程よりなるバッチ方式で処理することで、第2の蒸留工程で、アルカリ成分をアルカリ塩スラリーとして回収できるとともに、蒸留したトリチウム水含有水を取り出すことができる。
(6)本発明の第4の解決手段によれば、前記アルカリ水電解システム(I)における第1のアルカリ水電解工程での連続電解終了後に、第1のアルカリ水電解工程内に残存した電解液(アルカリ水)を第2の蒸留工程終了後に取り出したトリチウム水含有水を電解液とし、バッチ方式の第2のアルカリ水電解工程で、電解液の処理量に見合った容量にアルカリ水電解装置の電解容量を調整しながら、該アルカリ水電解装置に電解液を供給して電解処理することで、前記アルカリ水電解システム(I)の処理で残存していたトリチウム水含有水をトリチウムの排出基準値以下に希釈して除去するとともに、トリチウム水を含む原料水を更に減容化することができる。
(7)本発明の第4の解決手段によれば、バッチ処理を十分に行うために、更に、前記第2の蒸留工程と前記第2のアルカリ水電解工程とを第3、第4・・と繰り返す工程を設けることで、前記アルカリ水電解装置の容量を順次小さくしながら(設備を小さくしながら)、トリチウム水含有水をほぼゼロになるまで減容化をすることが可能となる。以下、第2の蒸留工程(第3の蒸留工程及びそれ以降の蒸留工程にも使用)と第2のアルカリ水電解工程(第3のアルカリ水電解工程及びそれ以降のアルカリ水電解工程にも使用)とよりなる処理を、「アルカリ水電解システム(II)」と呼ぶ。
(8)本発明の第5又は第6の解決手段によれば、トリチウム水を含む原料水として、多量の塩化物イオンを含む不純物を含有する原料水を使用する場合に、アルカリ水電解システム(I)を実施するための第1のアルカリ水電解工程の前工程として第1の蒸留工程を設けることで、前記不純物が塩スラリーとして除去されるので、前記第1のアルカリ水電解工程により、電解液中に不純物が蓄積することがなく、連続したアルカリ水電解を長期間、安定した状態でスムーズに行うことができる。
(9)本発明によれば、アルカリ水電解システム(I)を実施するための第1のアルカリ水電解工程終了後の残存した電解液を、アルカリ水電解システム(II)で処理する場合に、第2のアルカリ水電解工程及び必要に応じてそれ以降にアルカリ水電解工程を複数回繰り返す場合、残存するアルカリは、その都度、第2の蒸留工程と同様に、第3、第4・・・の蒸留工程で、アルカリ塩として回収する必要があるが、第2の蒸留工程及び第3以下の蒸留工程の設備は、トリチウム水を含む原料水中の多量の塩化物イオン等の不純物を除去するための前工程における第1の蒸留工程の設備をそのまま併用することができるので、設備を大幅に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】トリチウム水を含む原料水の処理において、塩化物イオン等の不純物が少量しか含まれていない原料水を処理する場合に行う、電解液のアルカリ濃度を一定に保持して循環させながら連続的にアルカリ水電解する第1のアルカリ水電解工程に使用する、本発明によるアルカリ水電解システム(I)の第1の実施態様(前記第1の解決手段に該当)を示すフロー図。
図2】第1のアルカリ水電解工程内に残存した電解液のアルカリ成分を取り出して回収してバッチ方式で処理するための、第2の蒸留工程と、第1のアルカリ水電解工程内に残存した電解液の処理量に見合った容量にアルカリ水電解装置の電解容量を調整しながら電解処理する第2のアルカリ水電解工程とからなるアルカリ水電解システム(II)に使用する、本発明によるアルカリ水電解システムの第4の実施態様(前記第4の解決手段に使用)を示すフロー図。
図3図2に示したアルカリ水電解システム(II)を用い、トリチウム水を含む原料水を処理する処理方法において、アルカリ水電解システム(I)の第1のアルカリ水電解工程内に残存した電解液を処理する際に行う、残存した電解液を更に第2の蒸留工程で処理し、蒸留器でアルカリ成分をアルカリ塩スラリーとして回収する一方で、蒸留して得たトリチウム水含有水を循環タンクに供給して第2のアルカリ水電解工程で処理し、その後に、バッチ処理が十分に行われるまで上記回収と電解とを繰り返す構成の第4の実施態様を示す工程図。
図4】トリチウム水を含む原料水として、塩化物イオン等の不純物が多量に含まれている原料水を用いて処理する場合に行う、該不純物を塩スラリーとして除去するための前工程の第1の蒸留工程と、アルカリ水電解システム(I)における電解液のアルカリ濃度を一定に保持して循環させながら連続的にアルカリ水電解する第1のアルカリ水電解工程と、該第1のアルカリ水電解工程内に残存した電解液のアルカリ成分をアルカリ塩スラリーとして回収する第2の蒸留工程と、第1のアルカリ水電解工程内に残存した電解液の処理量に見合った容量にアルカリ水電解装置の電解容量を調整しながら電解処理する第2のアルカリ水電解工程よりなるアルカリ水電解システム(II)を有する、本発明によるアルカリ水電解システムの第6の実施態様(前記第5、第6の解決手段に使用)を示すフロー図。
図5図4に示したアルカリ水電解システムを用い、トリチウム水を含む原料水として塩化物イオン等の不純物を多量に含有する原料水を処理する際における処理方法の第6の実施態様を示す工程図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
福島第一原発において発生しているトリチウムを含む汚染水は多量であり、その貯蔵量は、今後80万m3規模に至るといわれている。本発明は、この貯蔵されているトリチウム汚染水、80万m3規模の汚染水を、処理能力400m3/日でトリチウム分離処置し、トリチウム汚染水を1m3以下、最終的には零になるまで減容化するとともに、そのプラント敷地面積、建設コスト、ランニングコストも含め具現化するために、その技術を検証することを目的としてなされたものである。その1の実施態様は、トリチウム含有水中のトリチウム水を連続電解法によりトリチウムガスに転換し、無害化して大気中に取出し、生命体と隔絶する上空へ導くことにある。
【0028】
本発明は、以下に記載の通り、トリチウム水(HTO)をガス化し、トリチウムガス(HT)に転換し、排出規制基準値の20分の1以下の低濃度で、かつ、年間1mSv規定値以下を確保し、分離係数は、以下の計算式より、1,244を達成するものである。
電解反応は、以下のとおりである。
2O(L)→H2(g)+1/2O2(g)
HTO(L)→HT(g)+1/2O2(g)
即ち、1モルの分子ガス体積は、標準状態で22.4Lとなることから、1L(約1,000g)の原水を電気分解で分解ガス化すると、原水1L中のトリチウム含有量は、ガス化後、(1000/18)×22.4=1,244倍に希釈されることになる。
この分離係数値は、トリチウム水形態での範疇に立つ数値である。表1にトリチウムの化学形別及び年齢別の線量係数を示す。表1より、人体、環境への影響を直接的に見る実効線量係数では、トリチウムガス(HT)は、トリチウム水(HTO)である場合に比べて、その影響度は10,000分の1となることがわかる。
【0029】
【0030】
従って、トリチウムガスに転換することで、生命体へのトリチウムの影響度は、更に、10,000分の1になる。即ち、実効線量係数を考慮した分離係数=12,440,000となると考えることができる。
【0031】
本発明によるトリチウム水を含む原料水の処理方法としては、複数の実施態様が含まれるが、その一つの実施態様として、処理水に含まれる塩、Ca、Mgなど不純物を分離除去する蒸留工程と、トリチウム水からトリチウムガスとして排出基準値の20分の1以下、並びに世界に蓄積されているトリチウム量の0.047%以下/年で大気中に取り出し、生命体と隔絶する上空へ導くアルカリ水電解工程と循環工程とアルカリ水電解工程を繰返し、最終段階で貯蔵「処理水」をゼロとする態様が含まれ、先ず、この実施態様について説明する。
【0032】
福島第一原発において発生しているトリチウムを含む汚染水は、塩化物イオン等の不純物を多量に含んでいる。アルカリ水電解により、ガス化し、希釈化する場合に、このような原料水をそのままアルカリ水電解すると、不純物中の塩化物イオンが蓄積され、更に、塩化物イオンが苛性アルカリ中において溶解度以上になると、塩化物として析出し、電解が継続できなくなる恐れがある。そこで、本発明では、上記汚染水を処理する場合は、アルカリ水電解前に、前工程としての蒸留工程で、前記不純物を塩スラリーとして除去し、除去後の原料水を連続してアルカリ水電解することとしている。
しかし、処理するトリチウム水を含む原料水が塩化物イオン等の不純物を少量しか含まない場合は、塩化物イオン等の不純物は、アルカリ水電解を連続的に行っても、アルカリ金属として析出するまで濃縮されないので、これをアルカリ水電解前に除去するための前記蒸留工程は不要である。したがって、この場合は、トリチウム水を含む原料水を直接、アルカリ水電解装置に原料水を供給するための循環タンクに導入するように、設計すればよい。
本発明において、「トリチウム水を含む原料水として、塩化物イオン等の不純物が少量しか含まれていない場合」とは、トリチウム水を含む原料水中に、塩化物イオン等の不純物が殆ど含まれていない場合、及びアルカリ水電解を連続的に行っても、不純物中の塩化物イオンが電解を継続することができなくなる程、塩化物として析出しない量しか含まれていない場合をいう。尚、塩化物イオン等の不純物が塩化物として析出した場合、アルカリ水電解の途中において、循環パイプより一部抜出して除去してもよい。
【0033】
本発明では、アルカリ水電解システム(I)の第1のアルカリ水電解工程で、トリチウム水を含む原料水として、塩化物イオン等の不純物が少量しか含まれていない原料水、又は、多量に含まれていた不純物を第1の蒸留工程により除去した後の原料水を用い、アルカリ水電解処理によって消失する原料水に相当する量の原料水を、貯蔵タンク内より、第1のアルカリ水電解工程内に設けた循環タンクに連続的に供給して処理を行う。具体的には、循環タンク内で、アルカリ濃度を所望の初期濃度に調整して電解液とし、アルカリ濃度を維持させながら、この電解液を循環しながら電解を継続して行う。このようにして、前記貯蔵タンクに貯蔵された原料水の全量を電解処理することで、前記原料水中のトリチウム水を含む原料水はガス化され、トリチウム含有水素ガスと酸素ガスに転換される。この結果、ガス化する前のトリチウム水であった場合に比べて、トリチウムの濃度は1,244分の1に希釈された状態になる。更に、上記した処理後、第1のアルカリ水電解工程内に残存する電解液は、取り出して、バッチ処理して、アルカリをスラリーとして回収し、更に、残存する電解液の処理量に見合った容量にアルカリ水電解装置の電解容量を調整しながら電解処理する、第2のアルカリ水電解工程よりなるアルカリ水電解システム(II)を行うことも有効であるが、この態様については後述する。
【0034】
上記した第1のアルカリ水電解工程での処理後に得られる、トリチウム水を含む原料水をガス化したトリチウムガス含有水素ガスは、そのまま大気中に放出してもよいし、もしくは、トリチウムガス含有水素ガスを触媒塔に送り、該触媒等内に充填した触媒上で水蒸気と反応させて、濃縮したトリチウム水(HTO)含有水として回収してもよい。その際の反応式は、次式の通りである。
触媒層 H2O(g)+HT(g)→HTO(g)+H2(g)
吸収層 H2O(L)+HTO(g)→HTO(L)+H2O(g)
【0035】
以下、本発明の実施の態様を、図面を参照しながら説明する。
(1)第1の実施態様
図1は、塩化物イオン等の不純物が含まれていないか、含まれていても電解システムの運転に支障の無いトリチウム水を含む原料水に適用できる、本発明の第1の実施態様のアルカリ水電解システム(I)の処理フロー図である。この場合は、不純物を除去する前工程を設けることなく、トリチウム水を含む原料水を、アルカリ濃度を一定に保持して連続的にアルカリ水電解する第1のアルカリ水電解工程で処理を行う。以下、図1のフロー図を参照しながら、本発明の第1の実施態様について説明する。
【0036】
図1に示すアルカリ水電解システムは、第1のアルカリ水電解工程を使用するアルカリ水電解システム(I)であり、原料水貯蔵タンク1、原料水処理槽2、ポンプ7、アルカリ水電解槽8、循環タンク9、電解液循環パイプ10、11、供給ポンプ12、13、冷却器14、15により構成されており、アルカリ水電解槽8は、陽極を収容する陽極室16と、陰極を収容する陰極室17と、前記陽極室16と前記陰極室17とを区画する隔膜18により構成されている。
【0037】
第1の実施態様では、トリチウム水を含む原料水として、原料水中に含まれる塩化物イオン等の不純物を除去するための後述する蒸留工程は不要であり、トリチウム水を含む原料水を直接、アルカリ水電解装置の循環タンク9に供給すればよい。この際、図1に示したように、例えば、保存用の原料水貯蔵タンク1から、その一部を処理対象として移した原料水処理槽2を経て循環タンク9に供給するように構成してもよい。
塩化物イオン等の不純物が含まれていないトリチウム水を含む原料水は、図1に示す、アルカリ水電解システム(I)における、連続して処理を行う第1のアルカリ水電解工程により処理できる。
尚、塩化物イオン等の不純物が含まれているトリチウム水を含む原料水を用いた場合においても、処理量、処理時間が短い場合、不純物の量が少ない場合、或いは、連続電解の途中で不純物を除去する構成とした場合は、本第1の実施態様により、トリチウム水を含む原料水を処理することができる。
【0038】
以下、トリチウム水を含む原料水として、80万m3の、塩化物イオン等の不純物が少量しか含まれていない原料水をアルカリ水電解システム(I)で処理する場合について、図1を参照して説明する。
【0039】
(a)本実施態様においては、第1のアルカリ水電解工程での処理対象を、原料水貯蔵タンク1内に貯蔵されている、トリチウム水を含む原料水80万m3がとする。この原料水の一部として、400m3/日の原料水を、原料水貯蔵タンク1より原料水処理槽2を経てポンプ7により、第1のアルカリ水電解工程内の循環タンク9に供給する。これとともに、循環タンク9にアルカリ水を供給する(不図示)。
尚、原料水貯蔵タンク1内の原料水は、その全量を、原料水処理槽2を経て循環タンク9に送り、電解処理することが好ましいが、原料水貯蔵タンク1内の原料水が多量の場合は、これを複数回に分けて、原料水処理槽2に送って、原料水処理槽2内の原料水を連続処理するように構成することが好ましい。これは、以下の実施態様及び実施例においても同様である。
【0040】
(b)次いで、循環タンク9内において、循環タンク9内の原料水とアルカリ水を混合して所望のアルカリ濃度に調整した電解液を、アルカリ水電解槽8に供給し、電解処理する。
【0041】
(c)電解液のアルカリ水の濃度は、高濃度であることが好ましく、15質量%、更に20質量%以上とすることが好ましい。尚、使用するアルカリとしては、KOH又はNaOHが好ましい。
アルカリ水電解槽8内の電解液は、400m3であり、循環タンク9及びパイプ等内の電解液量は、400m3であり、全電解プロセス容量は、800m3となる。
【0042】
(d)循環タンク9内で混合され、所望のアルカリ濃度になるように制御された電解液は、供給ポンプ12、冷却器14を介して循環パイプ10によりアルカリ水電解槽8の陽極室16に供給されるとともに、供給ポンプ13、冷却器15を介して循環パイプ11によりアルカリ水電解槽8の陰極室17に供給され、電解される。電解液は、隔膜18を介して電気分解される。電解の結果、陽極室16においては、酸素ガスが生成され、生成した酸素ガスと電解液とに気液分離され、分離された電解液は、電解液循環パイプ10により、循環タンク9に循環される。
同時に、陰極室17内においては、水素ガスが生成され、生成した水素ガスと電解液とに気液分離され、分離された電解液は、電解液循環パイプ11により、循環タンク9に循環される。このときの電流密度は、高電流密度にすることにより、電解処理に要する時間を短縮することができる。運転電密の範囲としては、電解槽の性能、特にその主要因子の陽極、陰極、隔膜、電解槽の構造などに影響を受けるが、電流密度としては、15A/dm2以上、80A/dm2以下とすることが好ましい。20A/dm2以上、60A/dm2以下することが更に好ましい。特に、水の電気分解でガス化する量を小さく定めれば、当然プロセス量は少なくなるし、大容量の分解を期すればプロセス量も一般に増加する。
【0043】
本発明者らの検討によれば、アルカリ水電解としては、32質量%のアルカリ濃度の電解液でも電解が可能であるが、それ以上の高濃度にすることは、電解液の粘稠性も高くなり、発生ガスの系外への離脱も速やかでなくなり、セル電圧が高電圧となり、エネルギー消費が嵩むため、得策ではない。
上記した方法で電解処理量を400m3/日とした場合、80万m3のトリチウム水を含む原料水の全量は、5.5年(800,000m3÷400m3/日÷365日=5.5年)で処理されることになる。
この時の電解液の循環液量は、800m3であるので、80万m3のトリチウム水含有水は、5.5年で800m3に減量化されることになる。
【0044】
(e)上記長期間の処理では、電解処理によって消失する原料水に相当する量の原料水を前記貯蔵タンク1内より前記循環タンク9に連続的に供給し、電解液のアルカリ濃度を初期濃度に維持し、この電解液を循環しながら電解を継続し、前記貯蔵タンク1に貯蔵された大量の原料水の全量を電解処理する。
【0045】
(f)上記したアルカリ水電解システム(I)での処理の結果、トリチウム水(HTO)を含む原料水はガス化し、トリチウムガス(HT)含有水素ガスと酸素ガスに転換され、トリチウムガス(HT)含有水素ガスのトリチウムの濃度は、トリチウム水である場合に比べて1,244分の1に希釈され、かつ、80万m3あった前記原料水は、800m3に減容化される。
【0046】
上記した連続電解方式では、電気分解で分解消失した水に相当するトリチウム水をプロセスへ連続的に供給し、常にプロセス内の電解槽内液量や循環ポンプの吐出量など物理的運転環境を同一に維持して運転する。この時、プロセスに供給されるトリチウム水は原料水の濃度に相当する。
連続的に水を供給する場合は、プロセスのトリチウム濃度を原料水の濃度に維持するような運転となり、電解槽内のトリチウムが濃くならない。この連続運転条件では、電気分解で発生するガスは軽水とトリチウム水との濃度比に相当する比率で転換するものとする。
【0047】
以下、原料水中のトリチウムの初期濃度が、6.3×106〜4.2×106Bq/Lであり、処理後に、この濃度が、4.2×106Bq/Lになる場合の処理について説明する。
即ち、軽水、トリチウム水の電解の反応選択性を無視すれば、軽水とトリチウムのガス発生状況は、それぞれの濃度比でガスが発生する。「処理水」1Lには、凡そ55.6モルの水分子H2Oが存在し、最高4.2×106Bq/Lのトリチウム水(HTO)が含まれる。この比率で水素ガスが転換される。
求められる分離係数は、以下の通りである。
運転開始後、5.5年間を過ぎ、原料水が循環液量(800m3)のみになる時点までは、次の通りである。
分離係数=処理前の原料水中に含まれるトリチウム濃度/処理後の原料水をガス化した中に含まれるトリチウム濃度=(4.2×106Bq/L)/(4.2×106/1,244Bq/L)=1,244
但し、生命体に影響するその(HT)トリチウムの影響度としての実効線量係数を考慮した分離係数=12,440,000である。
【0048】
従って、上記した循環電解によって、大容量のトリチウム水を含む原料水中のトリチウム水(HTO)はトリチウムガス(HT)に転換され、トリチウムの生命体への影響度を大幅に低減できる。即ち、トリチウムの濃度は、処理前の原料水中におけるトリチウム濃度に対して1,244分の1に希釈される。この濃度は、トリチウムガスとしての排出基準の20分の1であるので、大気中に取出され、生命体と隔絶する上空へ導かれる。
【0049】
尚、トリチウムガスへの転換率が、40%と仮定する場合、水素ガスに含まれるトリチウムガス発生量は、下がることから、求められる分離係数は、更に大きくなる。
この場合の分離係数は、次の通りである。
分離係数=処理前の原料水中に含まれるトリチウム濃度/処理後の原料流体中に含まれるトリチウム濃度=4.2×106Bq/L/4.2×106×0.4/1,244Bq/L=3,110
この時の実効線量係数を考慮した分離係数は、31,100,000である。
トリチウムガスへの転換率が40%の場合は、電解プロセスにトリチウムの残存率(1−転換率)に則したトリチウム濃縮が起こるが、電解プロセス内のトリチウム濃度は無限級数(Σan=A{1/(1−r)})で計算され、残存率r=0.6より「処理水」中のトリチウム濃度の2.5倍濃度となるに過ぎない。
このことは、電解プロセスのメンテナンスなどプロセス周辺で作業を実施するにおいても、トリチウムによる被ばくを小さなものにしている。当該特徴は、現場作業を容易にするとともに電解プラントとして優れた点と考える。
【0050】
前述した通り、1モルの分子ガス体積は標準状態で22.4Lとなることから、1L(約1,000g)の原料水を電解で分解ガス化すると、原料水1L中のトリチウム含有量は、ガス化後1Lガス体積当り相対的に概略1/22.4に希薄化される。1L液体体積→約最高濃度を想定しても、0.4×4.2×106Bq/L/(1,000/18×22.4L)=1.350×103Bq/Lであり、これは、排気1,000/18×22.4Lガス体積となり、放出ガス中のトリチウム分子の濃度は、1Lガス体積当り中又は空気中濃度限度7×104Bq/Lを下回る。
【0051】
上記で説明したアルカリ水電解システム(I)の第1のアルカリ水電解工程(連続アルカリ水電解)における主要な仕様と性能の1例を示すと、次の通りである。
[仕様]
1)トリチウム汚染水よりなる原料水:80万m3
2)電解処理容量:400m3/日の処理量
3)アルカリ:苛性ソーダ、アルカリ濃度:20質量%
4)排出トリチウム濃度:1.350×103Bq/L
5)アルカリ水電解槽:48槽(1槽が75エレメント)
6)電流密度40A/dm2
7)電解プロセス:循環式電解プロセス+電解プロセスへの原水の連続供給
[性能]
原水中のトリチウムの転換率は、トリチウムの濃度に一般に主に依存するが、1.0〜0.6である(常時トリチウム分子ガスとして分画した場合。)。
原料水中に含まれるトリチウム濃度が4.2×106Bq/Lとした場合、上記電解システムで処理後の原料流体中に含まれるトリチウム濃度は、下記の通りとなる。
4.2×106×0.4/1,244Bq/L=1.350×103Bq/L
ここで、排気中又は空気中濃度限度:7×104Bq/L以下であり、トリチウム水排水基準:6×104Bq/L以下である。
【0052】
(2)第2の実施態様
本発明の第2の実施態様としては、陽極室16において生成し、電解液と気液分離され、分離された酸素ガスは、大気中に放出される。同時に、陰極室17内において生成し、電解液と気液分離されたトリチウムガス(HT)含有水素ガスは、トリチウムガス(HT)型に転換することで、生命体へのトリチウムの影響度は、更に、10,000分の1になる。即ち、実効線量係数を考慮した分離係数=12,440,000となると考えることができ、トリチウム水からトリチウムガスとして、排出基準値の20分の1以下、並びに世界に蓄積されているトリチウム量の0.047%以下/年で大気中に取り出し、生命体と隔絶する上空へ導くものである。
【0053】
(3)第3の実施態様
本発明の第3の実施態様としては、ガス化した前記トリチウムガス含有水素ガスは、大気中に放出する代わりに、水蒸気と反応させ、濃縮されたトリチウム水(HTO)含有水として回収することができる。反応式は、次式の通りである。
触媒層 H2O(g)+HT(g)→HTO(g)+H2(g)
吸収層 H2O(L)+HTO(g)→HTO(L)+H2O(g)
【0054】
(4)第4の実施態様
図2は、第4の実施態様を示したものである。第4の実施態様は、第1の実施態様で説明したアルカリ水電解システム(I)で連続アルカリ水電解をした後、この第1のアルカリ水電解工程内に残存する電解液をバッチ処理するためのアルカリ水電解システム(II)である。具体的には、アルカリ水電解システム(II)では、第1のアルカリ水電解工程内に残存する電解液中のアルカリ成分をアルカリ塩スラリーとして回収するするとともに、該蒸発器より蒸留したトリチウム水を含む原料水を取り出す第2の蒸留工程と、取り出した原料水の処理量に見合った容量にアルカリ水電解装置の電解容量を調整しながら電解処理する第2のアルカリ水電解工程を行う。更に、必要に応じて、バッチ処理が終了するまで、このアルカリ水電解システム(II)を構成する、前記第2の蒸留工程と前記第2のアルカリ水電解工程とを複数回繰り返す工程を行う。
図2は、図1に示したアルカリ水電解システム(I)の第1のアルカリ水電解工程内に残存する電解液のアルカリ成分を回収するための第2の蒸留工程と、第1のアルカリ水電解工程内に残存する電解液の処理量に見合った容量にアルカリ水電解装置の電解容量を調整しながら電解処理する第2のアルカリ水電解工程を使用した、アルカリ水電解システム(II)よりなる本発明によるアルカリ水電解システムの第4の実施態様を示すフロー図である。
【0055】
図2において、第2の蒸留工程は、前記したようにバッチ処理が終了するまで処理を繰り返す場合には、第3の蒸留工程及びそれ以降の第4・・・の蒸留工程に使用するための蒸留システムとなる。第2の蒸留工程の蒸留システムは、第1のアルカリ水電解工程内に残存する電解液を貯蔵するための貯蔵タンク19、処理槽20、蒸発器3、スラリー受槽4、小型蒸発器5、凝縮器6、ポンプ7よりなる。
また、アルカリ水電解システム(II)の第2のアルカリ水電解工程は、前記したようにバッチ処理が終了するまで処理を繰り返す場合には、第3のアルカリ水電解工程及びそれ以降の第4・・・のアルカリ水電解工程に使用するアルカリ水電解システムとなる。第2のアルカリ水電解工程のアルカリ水電解システムは、アルカリ水電解槽8、循環タンク9、電解液循環パイプ10、11、供給ポンプ12、13、冷却器14、15により構成され、アルカリ水電解槽8は、陽極を収容する陽極室16と、陰極を収容する陰極室17と、前記陽極室16と前記陰極室17とを区画する隔膜18により構成されている。
【0056】
図3は、トリチウム水を含む原料水として、塩化物イオン等の不純物が少量しか含まれていない原料水を、図1に示したアルカリ水電解システム(I)における連続電解する第1のアルカリ水電解工程によって処理した後に行う実施態様である、アルカリ水電解システム(II)の工程図である。アルカリ水電解システム(II)は、第1のアルカリ水電解工程内に残存した電解液を処理するためのものであって、図2に示した第2の蒸留工程と、第2のアルカリ水電解工程とを行い、さらに、これらの処理工程を繰り返し行って、第1のアルカリ水電解工程内に残存した電解液をバッチ処理するためのものである。
【0057】
本実施態様によるトリチウム水を含む原料水の処理方法は、図3に示すように、
(i)原料水に対するアルカリ水電解システム(I)における第1のアルカリ水電解工程(アルカリ水の連続電解)後に、第1のアルカリ水電解工程内に残存した電解液に対して処理を行うものであって、下記の各工程からなるアルカリ水電解システム(II)で処理を行う。
(ii)第1のアルカリ水電解工程で残存した電解液の第2の蒸留工程(第1のアルカリ塩スラリー分離回収)と、
(iii)第2の蒸留工程で得たトリチウム水含有水の第2のアルカリ水電解工程と、
(iv)第2のアルカリ水電解工程で残存した電解液の第3の蒸留工程(第2のアルカリ塩スラリー分離回収)と、
(v)第3の蒸留工程で得たトリチウム水含有水の第3のアルカリ水電解工程と、
(vi)第3のアルカリ水電解工程で残存した電解液の第4の蒸留工程(第3のアルカリ塩スラリー分離回収)と、
(vii)第4の蒸留工程で得た第4のアルカリ水電解工程と、
(viii)第3のアルカリ水電解工程で残存した電解液の第5の蒸留工程(第4のアルカリ塩スラリー分離回収)とよりなる。
上記した各蒸留工程には、図2に示す第2の蒸留工程からなる蒸留システムを使用し、また、上記した各アルカリ水電解工程には、電解容量が順次小さくなるものの、図2に示す第2のアルカリ水電解工程からなるアルカリ水電解システムを使用した。
【0058】
以下、塩化物イオン等の不純物が少量しか含有されていないトリチウム水を含む大容量の原料水として、80万m3のトリチウム水を含む原料水の処理を1例として、図3に示した工程図により処理する場合の各工程について詳述する。
(i)第1のアルカリ水電解工程
本実施態様においては、第1のアルカリ水電解工程において、先ず、原料水貯蔵タンク1内に貯蔵された塩化物イオン等の不純物が少量しか含まれていないトリチウム水を含む原料水80万m3を、前記第1の実施態様に記載の方法により、図1に示すアルカリ水電解システム(I)により800m3に減量化する。
【0059】
(ii)第2の蒸留工程
次に、上記アルカリ水電解システム(I)の第1のアルカリ水電解工程終了後、図2に示すアルカリ水電解システム(II)により、該第1のアルカリ水電解工程内に残存する前記電解液の全量800m3を下記のようにして処理する。第1のアルカリ水電解工程内に残存する電解液は、処理槽20を経て、蒸留システムの蒸発器3に供給し、蒸発器3より蒸留したトリチウム水含有水を凝縮器6により凝縮して取り出し、ポンプ7により、アルカリ水電解システム(II)の循環タンク9に供給する。これとともに、第1のアルカリ水電解工程内に残存する電解液中のアルカリ水をスラリー受槽4より、アルカリ塩スラリーとして取り出す。取り出したスラリーは、小型蒸発器5に送り、蒸発・晶析乾固などを行い、固形分として分離回収する。このようにして、塩スラリーを更に蒸発・晶析乾固することは、下記に述べるように、減容化のための作業であり、かつ、廃棄物が固化することで廃棄物保管容器の腐食損傷の発生確率が、液体の場合と比べて格段に低減される。斯かる目的で固化をすることは、放射性物質の廃棄物保管に極めて意義がある。
上記した通り、アルカリ水電解システム(I)における第1のアルカリ水電解工程終了後の電解液の残存液量は、800m3であるが、そのアルカリ濃度は、20質量%であるので、アルカリ水電解システム(II)で回収されるアルカリ塩スラリーは160m3(約160トン)となる。回収された塩スラリーは、小型蒸発器5に送り、蒸発・晶析乾固などを行い、濃縮し、固形物として分離回収する。
【0060】
(iii)第2のアルカリ水電解工程
上記第2の蒸留工程により取り出され、第2のアルカリ水電解工程で処理するために循環タンク9に連続的に供給される電解液は、アルカリ塩スラリーとして160m3が回収除去されており、トリチウム水含有水のみになっており、その量は、640m3である。第2のアルカリ水電解工程では、循環タンク9に新たにアルカリ水を供給し、循環タンク9において、前記トリチウム水含有水と、新たに添加したアルカリ水とを混合して電解液、約800m3を調整し、アルカリ水電解装置8に供給する。
第2のアルカリ水電解工程で電解に使用するアルカリ水電解装置8は、当初の処理では、第1のアルカリ水電解工程で使用した槽数、例えば、上記の例においては、48槽(1槽が75エレメント)をそのまま使用して、電解処理を行う。アルカリ水としては、先ず、5質量%程度のアルカリ水電解液として建浴する。電流密度としては、20A/dm2とした。以下の第3、第4のアルカリ水電解工程においても同様とした。
【0061】
アルカリ水電解システム(II)における第2のアルカリ水電解工程においては、第1のアルカリ水電解工程の場合と異なり、原料水の追加供給はなく、トリチウム水含有水が分解除去されていくので、電解液の量が減少するとともに、アルカリ水は濃縮される。このため、プロセスバルブの操作で、電解槽の稼働ラインを少なくして運転し、電解液が6倍に濃縮された時点で、アルカリ濃度は、5質量%から30質量%になるので、電解槽を8槽(1槽が75エレメント)の稼働となるよう調整する。
即ち、第2のアルカリ水電解工程においては、約電解液800m3が6倍程度に濃縮され、アルカリ濃度が30質量%となり、電解槽を8槽(1槽が75エレメント)の稼働となるまで電解を行う。この処理の結果、電解液としては、800m3の電解液が133m3に減容化される。尚、第2のアルカリ水電解工程の操作は、前記した第1のアルカリ水電解工程と同様にして行う。
【0062】
[繰り返し工程]
繰り返し工程においては、アルカリ水電解システム(II)を構成する前記第2の蒸留工程と前記第2のアルカリ水電解工程とからなる繰り返し工程において、前記アルカリ水電解装置の容量を順次、小さくしながら、更に処理を繰り返し、前記トリチウム水含有水水中のトリチウム水(HTO)をガス化し、トリチウムガス(HT)に転換し、かつ、トリチウム水含有水を更に減容化する。以下に具体的に説明する。
【0063】
(iv)第3の蒸留工程(第2のアルカリスラリー分離回収)
前記第2のアルカリ水電解工程の後、第3の蒸留工程により、アルカリ塩スラリー(133m3×30質量%=40m3)を回収、分離する。アルカリ塩スラリーは、更に減容化の目的で小型蒸発器5に送り、蒸発・晶析乾固などを行い、再使用することができる。
【0064】
(v)第3のアルカリ水電解工程
第3の蒸留工程で得たトリチウム水含有水を、アルカリ水電解装置の容量を小さくする以外は、第2のアルカリ水電解工程と同様にして電解処理する。即ち、第3のアルカリ水電解工程により、アルカリ水電解槽8を、8槽から電解を開始し、電解液が4倍になるまで、プロセスバルブの操作で、電解槽の稼働ラインを少なくして運転し、電解液が4倍に濃縮された時点で、アルカリ濃度は、5質量%から20質量%になるので、電解槽を2槽の稼働となるよう調整する。この処理の結果、電解液としては、133m3の電解液が22.17m3に減容化された。
【0065】
(vi)第4の蒸留工程と、(vii)第4のアルカリ水電解工程
続いて第3の場合と同様にして、まず、第4の蒸留工程により、アルカリ塩(22.17m3×20質量%=4.4m3)を分離回収した。第4の蒸留工程で得たトリチウム水含有水を、アルカリ水電解装置の容量を小さくする以外は、第2のアルカリ水電解工程と同様にして電解処理する。即ち、アルカリ水電解装置8を1槽、75エレメントから1槽、8エレメントに変更して稼働し、第4のアルカリ水電解工程を行い、5質量%の苛性アルカリを加え、電解液を23m3に調整した。この処理の結果、電解液を(23÷1.2=19.17)19.17倍濃縮し、23m3から1.2m3まで減容化した。
【0066】
(viii)第5の蒸留工程
最後に、得られる凡そ1.2m3のアルカリ水電解液を第5の蒸留工程において、蒸発器3で苛性を分離除去する。この結果、約1m3のトリチウムを含む蒸留水が得られる。第2のアルカリ水電解工程以下の操作は、充分な作業間隔を考慮しても、1か月程度の作業で完了することができる。
そして、最終的に得られる1m3のトリチウム水は、より小型の電解装置で同様の処理を繰り返せば、略完全に電解でトリチウムガスに転換可能である。即ち、トリチウム水の廃液量は、略ゼロとすることが可能である。
【0067】
繰返し工程における繰り返し運転では、32質量%を実機プラント運転の上限としたが、40〜50質量%まで運転が可能である。例えば、同時に発生する軽水素とトリチウムガスを特段の分別操作をすることなく発生後、水封システムを介しプロセス外へ出すことにより、トリチウムガスの転換比率は、その電解液の減少とアルカリ濃度の増加の関わりで微妙に変化するが、10倍濃度の変動に対して初期の転換率を基準に経時的な転換率及び最終濃度での変換率を確認することで、各状態におけるトリチウムガスの転換率が求められる。その一例を下記に示す。
【0068】
例えば、処理水1L(水55.6モル)をバッチ式で10倍にアルカリが濃縮されるまで電解したとき(1L→0.1L)、陰極側で製造される水素ガスは、標準状態で1,120倍(55.6×0.9×22.4L)に体積は増大する。これは、陰極発生ガスで、トリチウムを希釈させることが行われることを意味する。従って、当該希釈率であれば、原料水に含まれるトリチウム4.2×106Bq/Lとしても、3.37×103Bq/L(=4.2×106Bq/L×0.9/1,120)のトリチウム濃度となる。これは、トリチウムガス排出基準の20分の1以下の濃度である。
分離係数=処理前の「処理水」中に含まれるトリチウム濃度/処理後の「処理ガス」中に含まれるトリチウム濃度=4.2×106Bq/L/4.2×106/1,120Bq/L=1,120
但し、トリチウム水(HTO)の形態からトリチウムガス(HT)の形態に転換し、その生命体に影響する放射性の指標である線量係数は、10,000分の1となり、実効線量係数を考慮した分離係数=11,200,000である。
減容化の期間短縮では、より高電流密度を設定すれば比例的に期間短縮が可能である。但し、プロセスの電力消費量、安定・安全運転を考慮すると、おのずとその高電密化には限界がある。アルカリ水電解では、60A/dm2前後が現時点では上限領域である。
【0069】
(5)第5の実施態様及び第6の実施態様
第5の実施態様によるトリチウム水含有水は、塩化物イオン等の不純物を多量に含有するトリチウム水を含む大容量の原料水の処理方法を示したものであり、図4に示したように、前記したアルカリ水電解システム(I)の第1のアルカリ水電解工程(アルカリ連続電解)に先だち前工程として、第1の蒸留工程(塩スラリー除去)を行うものである。図4において、上段の左側は、第1の蒸留工程に使用する蒸留システムであり、上段の右側は、第1のアルカリ水電解工程を行うアルカリ水電解システム(I)を示したものである。図4に示したように、第5の実施態様は、第1のアルカリ水電解工程の前工程として、原料水から多量の不純物を除去するための前工程として第1の蒸留工程を設けた以外、先に説明した第1の実施態様と同様である。第1の蒸留工程の詳細については、第6の実施態様の場合と同様であるので、後述する。
【0070】
第6の実施態様は、第5の実施態様と同様に、前記したアルカリ水電解システム(I)の第1のアルカリ水電解工程(アルカリ水の連続電解)に先だち前工程として、第1の蒸留工程(塩スラリー除去)を行い、前工程(I)である第1のアルカリ水電解工程後に、第4の実施態様で説明した、図2に示したアルカリ水電解システム(II)を構成する第2の蒸留工程と第2のアルカリ水電解工程を繰り返し行って、上記第1のアルカリ水電解工程内に残存した電解液をバッチ処理するものである。具体的には、図5に示したように、下記の各工程よりなる。
(0)前工程としての第1の蒸留工程(塩スラリー除去)と、
(i)不純物を除去した原料水に対する(I)第1のアルカリ水電解工程(アルカリ水の連続電解)と、
(ii)アルカリ水電解システム(I)としての第1のアルカリ水電解工程で残存した電解液の第2の蒸留工程(第1のアルカリ塩スラリー分離回収)と、
(iii)第2の蒸留工程で得たトリチウム水含有水の第2のアルカリ水電解工程と
(iv)アルカリ水電解システム(II)として、第2のアルカリ水電解工程で残存した電解液の第3の蒸留工程(第2のアルカリ塩スラリー分離回収)と、
(v)第3の蒸留工程で得たトリチウム水含有水の第3のアルカリ水電解工程と
(vi)第3のアルカリ水電解工程で残存した電解液の第4の蒸留工程(第3のアルカリ塩スラリー分離回収)と、
(vii)第4の蒸留工程で得た第4のアルカリ水電解工程と、
(viii)第3のアルカリ水電解工程で残存した電解液の第5の蒸留工程(第4のアルカリ塩スラリー分離回収)とよりなる。
【0071】
以下、塩化物イオン等の不純物を多量に含有するトリチウム水を含む大容量の原料水として、80万m3のトリチウム水を含む原料水の処理を1例として、実施態様6について説明する。図4は、トリチウム水を含む原料水として、塩化物イオン等の不純物が多量に含まれている原料水を用いる場合、電解の前工程として不純物を除去するために行う第1の蒸留工程と、アルカリ濃度を一定に保持したまま連続的に電解する、アルカリ水電解システム(I)としての第1のアルカリ水電解工程と、アルカリ水電解システム(II)として、第1のアルカリ水電解工程内に残存する電解液のアルカリ成分を回収する第2の蒸留工程と、第1のアルカリ水電解工程内に残存する電解液の処理量に見合った容量にアルカリ水電解装置の電解容量を調整しながら電解処理する第2のアルカリ水電解工程に使用する、本発明によるアルカリ水電解システムの第6の実施態様を示すフロー図である。また、図5は、上記した、トリチウム水を含む原料水として塩化物イオン等の不純物を多量に含有する原料水を処理する場合の処理方法である、第6の実施態様を示す工程図である。
【0072】
(0)前工程としての第1の蒸留工程
塩化物イオン等の不純物を多量に含有する原料水を処理する場合、トリチウム水を含む汚染水よりなる多量の原料水は、図4に示すように、原料水貯蔵タンク1より、原料水処理槽2を介して第1の蒸留工程に供給される。原料水処理槽2に供給された原料水は、蒸発器3に送られ、原料水中の不純物である、塩、カルシウム、マグネシウム、その他の放射性核種等の不純物を纏めて塩スラリーとして、スラリー受槽4に貯蔵される。この塩スラリーは、Ti製タンクに長期保管することができる。但し、Ti材は高価であるため、より安価なステンレス基材にゴムライニングを施した材料で保管することもできる。
【0073】
この塩スラリーは、小型蒸発器5に送り、更に減容化の目的で、蒸発・晶析乾固などを行い、スラリーの濃縮・半乾固を行うことが好ましい。また、この際に小型蒸発器5より蒸発したトリチウム水含有水は、上記塩スラリーを得る際に使用した蒸発器3より蒸発したトリチウム水含有水とともに、凝縮器6において凝縮され、ポンプ7より循環タンク9に供給されるように構成する。一方、放射性物質含有スラリーについては、放射性物質含有固形塩の取り出しと、該固形塩の保管、濃縮機器・装置のメンテなどにおいて、可能な限り無人操作を考慮する必要がある。例えば、放射性物質を含む固形塩は、長期腐食耐性にも支障のないゴムライニングステンレス容器にて保管する。下記に述べるように、塩を半乾固することで、その腐食性は格段に低下し、かつ、多大の減容化が達成される効果は大きい。
【0074】
例えば、原料水として、80万m3のトリチウム水を含む汚染水を処理して不純物を除去する際に、原料水処理槽2として、400m3/日の処理能力を有する処理槽が用いられた場合、前工程である第1の蒸留工程で処理して得られる塩スラリーは40m3の体積となるので、塩スラリーとしたことで10倍に蓄積された状態になる。
第1の蒸留工程で、400m3/日からの不純物としての廃棄物は、凡そ8m3/日の固形塩として廃棄物とすることが可能となる。従って、トリチウム水を含む汚染水80万m3に対して、不純物としての廃棄物は、1.6万m3の固形塩廃棄物に減量化(50分の1)されたことになる。このことは、この固形塩廃棄物には、トリチウムは存在しないが、もし微量のCoなどの放射性物質が存在すれば、これらの放射性物質も元の濃度の50倍に濃縮されることを意味する。
【0075】
(i)アルカリ水電解システム(I)としての第1のアルカリ水電解工程(アルカリ連続電解)
上記の通り、第6の実施態様(第5の実施態様でも同様)では、400m3/日で処理された原料水から除去される塩スラリーは、40m3/日であり、この塩スラリーとして除去された不純物等を除くトリチウム水を含む原料水は、凝縮器5により凝縮され、360m3/日で、ポンプ7により、次の工程である、第1のアルカリ水電解工程に使用するアルカリ水電解システムの循環タンク9に供給される。先に述べたように、小型蒸発器5により塩スラリーを蒸留・晶析し、塩スラリーから蒸留水とトリチウム水が回収される場合は、凝縮器6を介して凝縮されるトリチウム水含有水は、392m3/日となる。
【0076】
第6の実施態様(第5の実施態様でも同様)では、第1のアルカリ水電解工程の循環タンク9には、トリチウム水含有水、360m3/日〜392m3/日がポンプ7より供給されるとともに、アルカリ水が供給され、混合され、400m3/日の電解液がアルカリ濃度20質量%に調整される。アルカリ水電解槽8内の電解液は、400m3、循環タンク9及びパイプ等内の電解液量は、400m3であり、全電解プロセス容量は、800m3となる。
【0077】
循環タンク9内で混合され、アルカリ濃度20質量%に制御された電解液は、供給ポンプ13、冷却器14を介して循環パイプ10によりアルカリ水電解槽8の陽極室16に供給されるとともに、供給ポンプ13、冷却器15を介して循環パイプ11によりアルカリ水電解槽8の陰極室17に供給される。
【0078】
所望の濃度のアルカリ水に調整された電解液は、400m3/日でアルカリ水電解槽7内に供給され、電解される。電解液は、隔膜を介して電気分解される。陽極室16においては、酸素ガスが生成され、生成した酸素ガスと電解液とに気液分離され、分離された電解液は、電解液循環パイプ10により、循環タンク9に循環される。
【0079】
同時に、陰極室17内においては、水素ガスが生成され、生成した水素ガスと電解液とに気液分離され、分離された電解液は、電解液循環パイプ11により、循環タンク9に循環される。このときの電流密度は、高電流密度にすることにより、電解処理に要する時間を短縮することができる。電流密度としては、20A/dm3以上、60A/dm3以下とすることが好ましい。電解液の循環液量としては、今回は電解プロセス全体で800m3となる。当該量は単にプロセス設計によるものであり、本発明はこれに限定されるものではない。特に、水の電気分解でガス化する量を小さく定めれば、当然プロセス量は少なくなるし、大容量の分解を期すればプロセス量も一般に増加する。アルカリ水電解としては、32質量%濃度でも電解が可能であるが、それ以上の高濃度にすることは、電解液の粘稠性も高くなり、発生ガスの系外への離脱も速やかでなくなり、セル電圧が高電圧となり、エネルギー消費が嵩むため得策ではない。従って、この時点で連続電解を一旦終了し、電解液のアルカリと水の分離のために、アルカリ水電解システム(I)としての第1のアルカリ水電解工程内に残存した電解液を、先に第4の実施態様で述べたように、アルカリ水電解システム(II)として、次の第2の蒸留工程、第2のアルカリ水電解工程、最終減容化工程へ移送する。
電解処理量を400m3/日とした場合、80万m3のトリチウム水を含む汚染水よりなる原料水の全量は、5.5年(800,000m3÷400m3/日÷365日=5.5年)で処理されることになる。また、この時の電解液循環液量は、800m3であり、80万m3のトリチウム水含有水は、5.5年で800m3に減量化されることになる。
【0080】
第5、第6の実施態様においては、図4に示す方法で、塩化物イオン等の不純物を含有するトリチウム水を含む大容量の原料水中の不純物を塩スラリーとして除去した後、第1のアルカリ水電解工程で電気分解し、原水を酸素と水素に分解し、原水中の水分子として存在するトリチウムをトリチウム分子とし、原水から分画するものである。
【0081】
第6の実施態様では、図4図5に示したように、上記第1のアルカリ水電解工程終了後、該第1のアルカリ水電解工程内に残存する電解液の全量を、先述した第4の実施態様と同様に蒸留システムの蒸発器3に供給し、下記の工程を経て同様に処理する。
(ii)アルカリ水電解システム(II)として、第1のアルカリ水電解工程で残存した電解液の第2の蒸留工程(第1のアルカリ塩スラリー分離回収)と、
(iii)第2の蒸留工程で得たトリチウム水含有水の第2のアルカリ水電解工程と
(iv)第2のアルカリ水電解工程で残存した電解液の第3の蒸留工程(第2のアルカリ塩スラリー分離回収)と、
(v)第3の蒸留工程で得たトリチウム水含有水の第3のアルカリ水電解工程と
(vi)第3のアルカリ水電解工程で残存した電解液の第4の蒸留工程(第3のアルカリ塩スラリー分離回収)と、
(vii)第4の蒸留工程で得た第4のアルカリ水電解工程と、
(viii)第3のアルカリ水電解工程で残存した電解液の第5の蒸留工程(第4のアルカリ塩スラリー分離回収)とで処理した。
【0082】
第4のアルカリ水電解工程後に残存する電解液は、1.2m3まで減容化される。最後に得られる凡そ1.2m3のアルカリ水電解液は、第5の蒸留工程において、蒸発器3でアルカリ塩スラリーとして分離除去して回収されるとともに、約1m3のトリチウムを含む蒸留水が得られる。
第2のアルカリ水電解工程以下の操作は、充分な作業間隔を考慮しても、1か月程度の作業で完了することができる。この1m3のトリチウム水は、小型の電解装置で処理を同様に繰り返せば、略完全に電解でトリチウムガスに転換可能である。即ち、トリチウム水の廃液量は、略ゼロとすることが可能である。
尚、上記した第6の実施態様においては、前記第2の蒸留工程及び第3以下の蒸留工程に使用する設備は、全て、トリチウム水含有水中の多量の塩化物イオン等の不純物を除去するための前工程を行う第1の蒸留工程に使用した設備をそのまま併用することができ、設備を大幅に軽減することができる。
【実施例】
【0083】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0084】
<実施例1>(第1の実施態様の実施例)
不純物を含有しないトリチウム水を含む原料水の模擬液(以下、模擬液と呼ぶ)として、以下の成分の模擬液を使用した。
模擬液:180L
模擬液中のトリチウムの初期濃度:4.2×106Bq/L
図1に示すように、上記した模擬液、180Lを入れた原料水貯蔵タンク1を用意した。本試験では、原料水貯蔵タンク1から処理槽2を介して循環タンク9に供給した。具体的には、原料水貯蔵タンク1より、模擬液9.67L/日を、処理槽2を介してポンプ7により循環タンク9に供給した。本試験では、第1のアルカリ水電解工程において、模擬液からなる電解液を連続的に供給し、電解液を循環しながら連続電解を行った。
【0085】
具体的には、循環タンク9には、模擬液9.60L/日がポンプ7より供給されるとともに、アルカリ水が供給され、混合されて、アルカリ濃度20質量%に調整された9.67L/日の電解液とされ、該電解液を循環しながら連続電解が行われる。
アルカリ水電解槽8内の電解液は、30L(15dm2セル(15L)を2セル)、循環タンク9及びパイプ等内の電解液量は、12Lであり、全電解プロセス容量は、42Lとなる。循環タンク9内でアルカリを混合して得た、アルカリ濃度20質量%に制御した電解液を、供給ポンプ13、冷却器14を介して循環パイプ10によりアルカリ水電解槽8の陽極室16に供給するとともに、供給ポンプ13、冷却器15を介して循環パイプ11によりアルカリ水電解槽8の陰極室17に供給した。濃度20質量%のアルカリ水に調整された電解液は、電解され、電解液は、隔膜を介して電気分解された。陽極室16においては、酸素ガスが生成され、生成した酸素ガスと電解液とに気液分離され、分離された電解液は、電解液循環パイプ10により、循環タンク9に循環した。同時に、陰極室17内においては、水素ガスが生成し、生成した水素ガスと電解液とに気液分離され、分離された電解液は、電解液循環パイプ11により、循環タンク9に循環した。
【0086】
上記したように、本実施例では、図1に示す方法で、模擬液を原水としてアルカリ水電解法で電気分解し、原水を酸素と水素に分解し、原水中の水分子として存在するトリチウムをトリチウム分子とし、原水から分画した。水は、電気分解により水素と酸素ガスにのみ分解された。従って、初期アルカリ濃度の調整以降は、電気分解で減少した水相当量の原水(模擬液)を、循環する電解液に供給しながら電解を行った。尚、アルカリ濃度を初期濃度に維持するため、必要な場合、原水に加えて蒸留水又は純水を追加供給してもよい。
【0087】
本実施例では、第1のアルカリ水電解工程におけるアルカリ連続電解を、以下の条件で行った。
電解セル:15dm2セル(15L)を2セル(30L)使用
運転電密:40A/dm2
苛性濃度:NaOH、20質量%
膜:隔膜
陽極/陰極:Ni基材+活性コーティング
循環:外部循環システム
水封:ガス圧コントロールのため水封システム
50−100mmH2O陰極加圧
電解液容量:42L(電解セル:15×2=30L、循環パイプ等:12L)
電解電流は、600A(15dm2×40A/dm2)とした。
【0088】
連続電解方式では、上記したように、電気分解で分解消失した水に相当する量の原水(模擬液)をプロセスへ連続的に供給し、常にプロセス内の電解槽内の液量や循環ポンプの吐出量など物理的運転環境が同一に維持されるようにして運転する。連続的に原水を供給する場合は、プロセス内のトリチウム濃度は、模擬液の濃度に維持する運転となり、電解槽内のトリチウムが濃くならなかった。従って、この連続運転条件では、電気分解で発生するガスは、軽水とトリチウム水との濃度比に相当する比率で転換するものとする。
この時の電解液循環液量は、42Lであり、15.2日間(365時間)で180Lのトリチウム水含有水は、42Lに減量化した。
【0089】
運転開始後、15.2日間(365時間)連続運転したときのトリチウムの除去は、次の通りである。
分離係数=処理前の原料水中に含まれるトリチウム濃度/処理後の原料ガス化中に含まれるトリチウム濃度=(4.2×106Bq/L)/(4.2×106/1,244Bq/L)=1,244
但し、生命体に影響するその(HT)トリチウムの影響度としての実効線量係数を考慮した分離係数=12,440,000である。
従って、大容量のトリチウム水含有水のトリチウム水(HTO)はトリチウムガス(HT)に転換され、トリチウムの濃度は、1,244分の1に希釈され、トリチウムの生命体への影響度を大幅に減少できる。
【0090】
<実施例2>(第2の実施態様の実施例)
希釈されたトリチウムガスは、排出基準の20分の1として大気中に取出され、生命体と隔絶する上空へ導いた。
【0091】
<実施例3>(第3の実施態様の実施例)
ガス化した前記トリチウムガス含有水素ガスを、大気中に放出する代わりに、水蒸気と反応させ、トリチウム水(HTO)含有水として回収した。反応式は、次式の通りである。
触媒層 H2O(g)+HT(g)→HTO(g)+H2(g)
吸収層 H2O(L)+HTO(g)→HTO(L)+H2O(g)
【0092】
<実施例4>(第4の実施態様の実施例)
(i)第1のアルカリ水電解工程(アルカリ連続電解)
実施例1に記載と同様の方法で連続電解して、15.2日間(365時間)で、模擬液である180Lのトリチウム水含有水を42Lに減量化した。
【0093】
(ii)第2の蒸留工程
上記第1のアルカリ水電解工程終了後、図2図3に示すように、該第1のアルカリ水電解工程内に残存する電解液の全量を蒸留システムの蒸発器3供給し、蒸発器3より蒸留したトリチウム水含有水を凝縮器6により凝縮して取り出し、ポンプ7により、アルカリ水電解システムの循環タンク9に供給した。これとともに、該第1のアルカリ水電解工程内に残存する電解液中のアルカリ水をスラリー受槽4よりアルカリ苛性塩スラリーとして回収し、更に、減容化の目的でスラリーを小型蒸発器5に送り、蒸発・晶析乾固などを行い、スラリーの濃縮・半乾固を行った。
上記した通り、電解液の液量は、42Lであり、アルカリ濃度は、20質量%であるので、第2の蒸留工程において回収されたアルカリ苛性塩スラリーは、8.4Lとなる。回収された苛性塩スラリーは、濃縮し、固形物として分離した。尚、更に減容化の目的で小型蒸発器5に送り、蒸発・晶析乾固すれば、電解前に建浴したアルカリの量に相当する10.5Kg(10.5/(42+10.5)×100=20質量%)約5L(比重2.13)の,固化したアルカリを回収することができる。
【0094】
(iii)第2のアルカリ水電解工程
上記第2の蒸留工程により取り出され、循環タンク9に供給される電解液は、アルカリ苛性塩スラリーとして8.4Lが回収除去されており、トリチウム水含有水のみになっている。このトリチウム水含有水の量は、42−8.4=33.6Lであり、これを該循環タンク9に供給するとともに、該循環タンク9に新たにアルカリ水を供給し、前記循環タンク9において、このトリチウム水含有水とアルカリ水の混合した電解液を42Lとなるように調整し、調整した電解液をアルカリ水電解装置8に供給した。
【0095】
電解に使用するアルカリ水電解装置8は、最初、第1のアルカリ水電解工程で使用した容量をそのまま使用して、電解処理を行う。アルカリ水としては、先ず、5質量%程度のアルカリ水電解液として建浴する。電流密度としては、20A/dm2とした。以下の第3、第4のアルカリ水電解工程においても同様とした。
アルカリ水電解システム(II)において、第2のアルカリ水電解工程においては、原水の追加供給はなく、原水(模擬液)中の水が分解除去されていくので、電解液の量が減少するとともに、アルカリ水は濃縮されるので、プロセスバルブの操作で、電解槽の稼働ラインを少なくして運転し、電解液が5.25倍に濃縮された時点で、アルカリ濃度は、5質量%から26.25質量%となり、電解液としては、42Lの電解液が42/5.25=8Lに減容化された。
第2のアルカリ水電解工程の操作は、第1のアルカリ水電解工程と同様にして行った。
【0096】
(iv)第3の蒸留工程、繰り返し工程
繰り返し工程においては、前記第2の蒸留工程と前記第2のアルカリ水電解工程とを、前記アルカリ水電解装置の容量を順次、小さくしながら繰り返し、前記原料水中のトリチウム水(HTO)をガス化し、トリチウムガス(HT)に転換し、かつ、前記トリチウム水含有水を更に減容化した。
前記第2のアルカリ水電解工程の後、第3の蒸留工程により、アルカリ苛性塩スラリーを回収、分離した。アルカリ苛性塩スラリーは、更に減容化の目的で小型蒸発器5に送り、蒸発・晶析乾固などを行い、固形のアルカリとして回収した。しかる後、第3のアルカリ水電解工程により、アルカリ水電解槽8中の電解液に対し、8Lから電解を開始し、電解液が4倍に濃縮されるまで、エレメントの数を減らし実験をした。アルカリ濃度は、5質量%から20質量%になるので、電解槽を2Lの稼働となるよう調整する。上記処理した結果、電解液としては、8Lの電解液が2Lに減容化された。
第2のアルカリ水電解工程以下の操作は、充分な作業間隔を考慮しても、運転電密の影響は大きいが1ヶ月程度の作業で完了することができた。
【0097】
<実施例5>(第5の実施態様の実施例)
(0)前工程としての第1の蒸留工程
不純物を多量に含む、トリチウム水を含む汚染水よりなる原料水の模擬液として、以下の成分の模擬液を使用した。
模擬液:180L
原料水中のトリチウムの初期濃度:4.2×106Bq/L
不純物成分と濃度:
食塩:10g/L
カルシウム:2ppm
マグネシウム:5ppm
【0098】
図4の上段に示すように、模擬液、180Lを原料水貯蔵タンク1より原料水処理槽20に供給した。原料水処理槽20として、9.67L/日の処理能力を有する処理槽を用いた。原料水処理槽20に供給した模擬液を、蒸発器3に送り、模擬液中の塩、カルシウム、マグネシウム等の不純物を纏めて18Lの塩スラリーとして除去した。
一方、この塩スラリー18Lは、小型蒸発器5に送り、更に減容化の目的で、蒸発・晶析乾固などを行い、スラリーの濃縮・半乾固を行い、0.9Lの固化された塩を得た。
従って、180Lの模擬液に対して、不純物としての廃棄物は、0.9Lの固形塩廃棄物に減量化されたことになる。
原料水小型蒸発器5より蒸発したトリチウム水含有水は、蒸発器3より蒸発しトリチウム水含有水とともに、凝縮器6において凝縮され、ポンプ7より循環タンク9に供給した。トリチウム水含有水は、9.60L/日であった。
【0099】
(i)アルカリ水電解システム(I)としての第1のアルカリ水電解工程
上記で処理したトリチウム水含有水、9.60L/日は、ポンプ7により次の工程である第1のアルカリ水電解工程に使用するアルカリ水電解システムの循環タンク9に供給した。この第1のアルカリ水電解工程においてトリチウム水含有水は、実施例1に記載の方法により、連続的に供給され、電解液は循環しながら電解される。
【0100】
<実施例6>(第6の実施態様の実施例)
(i)の第1のアルカリ水電解工程の終了後、図4図5に示したように、実施例4に記載の方法と同様に、(ii)第2の蒸留工程、(iii)第2のアルカリ水電解工程、更に、繰り返し工程を行った。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明によれば、トリチウム水含有水のトリチウム水(HTO)をガス化し、トリチウムガス(HT)と酸素ガスとに転換し、トリチウムの濃度を1,244分の1に希釈することで、トリチウムの生命体への影響度を格段に低下させることができるので、生命体と隔絶する上空へ導くことが可能になり、また、ガス化した前記トリチウムガス含有水素ガスを水蒸気と反応させ、トリチウム水(HTO)含有水として回収することができる。また、本発明によれば、塩化物イオン等の不純物を多量に含有するトリチウム水を含む原料水であっても、原料水中の不純物を塩スラリーとして予め除去することで、連続電解ができ、上記した効果が得られる。更に、原料水中の不純物をアルカリ塩スラリーとして回収することができるので、プラント敷地面積、建設コスト、ランニングコストも含め具現化することができ、その産業上の貢献度は、極めて高い。
【符号の説明】
【0102】
1:原料水貯蔵タンク
2:原料水処理槽
3:蒸発器
4:スラリー受槽
5:小型蒸発器
6:凝縮器
7:ポンプ
8:アルカリ水電解槽
9:循環タンク
10、11:電解液循環パイプ
12、13:供給ポンプ
14、15:冷却器
16:陽極を収容する陽極室
17:陰極を収容する陰極室
18:陽極室16と陰極室17とを区画する隔膜
19:第1のアルカリ水電解工程内に残存する電解液を貯蔵する貯蔵タンク
20:処理槽
【要約】
本発明は、貯蔵タンク内に貯蔵したトリチウム水を含む原料水の一部を循環タンクに供給し、該循環タンク内において、前記循環タンク内の原料水とアルカリ水とを混合して所望のアルカリ濃度に調整した電解液を、循環しながら電解を継続し、前記貯蔵タンクに貯蔵された原料水をアルカリ水電解処理し、前記原料水をガス化するトリチウム水を含む原料水の処理方法である。
上記本発明によれば、アルカリ水電解によりトリチウム水を含有する原料水をガス化することで、トリチウム含有水素ガスのトリチウムの濃度を1,244分の1に希釈するとともに、トリチウム水を含む原料水を減容化することができる。
図1
図2
図3
図4
図5