特許第5789732号(P5789732)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5789732電極材料、レドックスフローバッテリーの電極、レドックスフローバッテリー及び電極材料の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5789732
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】電極材料、レドックスフローバッテリーの電極、レドックスフローバッテリー及び電極材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/18 20060101AFI20150917BHJP
   H01M 4/96 20060101ALI20150917BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   H01M8/18
   H01M4/96
   H01M4/88 C
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-523723(P2015-523723)
(86)(22)【出願日】2014年11月11日
(86)【国際出願番号】JP2014079842
【審査請求日】2015年5月8日
(31)【優先権主張番号】特願2013-234636(P2013-234636)
(32)【優先日】2013年11月13日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100146879
【弁理士】
【氏名又は名称】三國 修
(72)【発明者】
【氏名】塙 健三
(72)【発明者】
【氏名】門田 隆二
(72)【発明者】
【氏名】西方 丈智
【審査官】 守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−200052(JP,A)
【文献】 特開2009−224181(JP,A)
【文献】 特開2002−102694(JP,A)
【文献】 特開2006−156029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/18
H01M 4/96
H01M 4/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均径100nm以上の第1のカーボンナノチューブと平均径30nm以下の第2のカーボンナノチューブとを含み、
前記第1のカーボンナノチューブの表面に前記第2のカーボンナノチューブが付着し、前記第2のカーボンナノチューブが、複数の前記第1のカーボンナノチューブ間に跨った構造を有する電極材料。
【請求項2】
前記第2のカーボンナノチューブが、前記第1のカーボンナノチューブに絡まっている請求項1に記載の電極材料。
【請求項3】
前記第1のカーボンナノチューブの平均径が100〜1000nmである請求項1または2のいずれかに記載の電極材料。
【請求項4】
前記第2のカーボンナノチューブの平均径が1〜30nmである請求項1〜3のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項5】
前記第2のカーボンナノチューブは、100質量部の前記第1のカーボンナノチューブに対し、1〜20質量部含まれる請求項1〜4の何れか一項に記載の電極材料。
【請求項6】
さらに、水溶性導電性高分子を含む請求項1〜5の何れか一項に記載の電極材料。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の電極材料を用いたレドックスフローバッテリーの電極。
【請求項8】
請求項7に記載の電極を有するレドックスフローバッテリー。
【請求項9】
請求項1〜6に記載された電極材料の製造方法であって、
平均径100nm以上の第1のカーボンナノチューブと平均径30nm以下の第2のカーボンナノチューブとを、導電性高分子水溶液中で、湿式ジェットミルにより混合する工程を含むことを特徴とする電極材料の製造方法。
【請求項10】
前記湿式ジェットミルによる混合が、圧力150MPa以上で行われる請求項9に記載の電極材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極材料、レドックスフローバッテリーの電極、レドックスフローバッテリー及び電極材料の製造方法に関する。本願は、2013年11月13日に、日本に出願された特願2013−234636に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2006−156029号公報)には、レドックスフロー電池の電極材料に気相法炭素繊維を使用することが開示されている。気相法炭素繊維の表面を硝酸により親水化処理したことも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−156029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、起電力が高く充電容量の大きいレドックスフローバッテリー、レドックスフローバッテリーの得られる電極及び電極の得られる電極材料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は以下の発明を含む。
【0006】
(1) 平均径100nm以上の第1のカーボンナノチューブと平均径30nm以下の第2のカーボンナノチューブとを含み、前記第1のカーボンナノチューブの表面に前記第2のカーボンナノチューブが付着し、前記第2のカーボンナノチューブが複数の前記第1のカーボンナノチューブ間に跨った構造を有する電極材料。
(2)前記第2のカーボンナノチューブが、前記第1のカーボンナノチューブに絡まっている前項(1)に記載の電極材料。
(3) 前記第1のカーボンナノチューブの平均径が100〜1000nmである前項(1)又は(2)のいずれかに記載の電極材料。
(4) 前記第2のカーボンナノチューブの平均径が1〜30nmである前項(1)〜(3)いずれか一つに記載の電極材料。
(5) 前記第2のカーボンナノチューブは、100質量部の前記第1のカーボンナノチューブに対し、1〜20質量部含まれる前項(1)〜(4)の何れか一つに記載の電極材料。
(6) さらに、水溶性導電性高分子を含む前項(1)〜(5)の何れか一つに記載の電極材料。
(7) 前項(1)〜(6)の何れか一つに記載の電極材料を用いたレドックスフローバッテリーの電極。
(8) 前項(7)に記載の電極を有するレドックスフローバッテリー。
(9) 前項(1)〜(6)の何れか一つに記載の電極材料を製造する方法であって、平均径100nm以上の前記第1のカーボンナノチューブと平均径30nm以下の前記第2のカーボンナノチューブとを、導電性高分子水溶液中で、湿式ジェットミルにより混合する工程を含む電極材料の製造方法。
(10) 前記湿式ジェットミルによる混合が、圧力150MPa以上で行われる前項(9)に記載の電極材料の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電極材料、および電極材料を用いた電極を使用することにより、起電力が高く充電容量の大きいレドックスフローバッテリーを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態にかかる電極材料の透過電子顕微鏡写真である。
図2】本発明の一実施形態にかかるレドックスフローバッテリーの電極の斜視模式図である。
図3】本発明の一実施形態にかかるレドックスフローバッテリー用バッテリーの一例を説明するための断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用した電極材料、レドックスフローバッテリーの電極およびレドックスフローバッテリーについて、図を適宜参照しながら詳細に説明する。
以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0010】
図1に本発明の一実施形態に係る電極材料の透過電子顕微鏡写真を示す。本発明の電極材料は、平均径100nm以上の第1のカーボンナノチューブ1と平均径30nm以下の第2のカーボンナノチューブ2とを含み、第1のカーボンナノチューブ1の表面に第2のカーボンナノチューブ2が付着することで、第2のカーボンナノチューブ2が複数の第1のカーボンナノチューブ1間に跨った構造を有する。さらに第2のカーボンナノチューブ2が第1のカーボンナノチューブ1に絡まった構造が好ましい。第2のカーボンナノチューブ2が複数の第1のカーボンナノチューブ1間に跨った構造により、電極材料がその成形過程でバラバラになることなく形を維持することができる。また第2のカーボンナノチューブ2が、第1のカーボンナノチューブ1に跨っていることで、導電性の主となる第1のカーボンナノチューブ1間の空隙を、第2のカーボンナノチューブ2が埋めることができ、より電極材料の導電性を高めることができる。電極材料の導電性を高めることは、レドックスフローバッテリーの充放電性能を高めることを意味する。また第1のカーボンナノチューブ1に第2のカーボンナノチューブ2が絡まることにより、電極材料は電極材料としての形を維持しやすくなるとともに、電極材料の導電性が更に向上する。
【0011】
ここで、「跨った構造」とは、例えば、透過電子顕微鏡で電極材料を観察した際に、第1のカーボンナノチューブに跨った第2のカーボンナノチューブが確認できればよい。例えば任意の100本の第2のカーボンナノチューブを観察したとき、好ましくは10本以上、より好ましくはその50本以上の第2のカーボンナノチューブが複数の第1のカーボンナノチューブ間を跨った構造の確認ができればよい。複数カ所を観察して、第2のカーボンナノチューブを100本観察するのでも構わない。例えば、10カ所について各々10本の第2のカーボンナノチューブを観察して、合計100本の第2のカーボンナノチューブを観察することにしてもよい。
【0012】
第1のカーボンナノチューブ1は、その平均径が100nm以上であり、好ましくは100〜1000nmであり、より好ましくは100〜300nmである。第2のカーボンナノチューブ2は、その平均径が30nm以下であり、好ましくは1〜30nmであり、より好ましくは5〜20nmである。第1のカーボンナノチューブ1及び第2のカーボンナノチューブ2の繊維長は、いずれも1〜100μmであることが好ましい。
【0013】
第1のカーボンナノチューブ1および第2のカーボンナノチューブ2の大きさが上述の範囲であると、電極材料が高い強度および高い導電性を維持できる構造となる。これは、第1のカーボンナノチューブ1が幹となり、第2のカーボンナノチューブ2が、複数の第1のカーボンナノチューブ1間に枝状に懸架されるためである。例えば、第1のカーボンナノチューブ1の平均径が100nm以下であると、幹が不安定となり電極材料の構造に割れが生じる等の問題が生じ、十分な強度を保つことが難しくなる。一方で、第2のカーボンナノチューブ2の平均径が30nm以上であると、枝が剛直になりすぎ撓みにくくなるため、第2のカーボンナノチューブ2が十分に第1のカーボンナノチューブ1に絡まることができず、導電性が悪くなる。すなわち、この電極材料を用いたレドックスフローバッテリーの充放電性能を十分高くすることが難しくなる。
【0014】
第1のカーボンナノチューブ1および第2のカーボンナノチューブ2の平均径は、電子顕微鏡にて100本以上の第1のカーボンナノチューブ1および第2のカーボンナノチューブ2の繊維の直径をそれぞれ測定し、その算術平均値としてそれぞれ求めることができる。
【0015】
第2のカーボンナノチューブ2は、100質量部の第1のカーボンナノチューブ1に対し、好ましくは1〜20質量部、より好ましくは4〜17質量部、さらに好ましくは8〜14質量部含まれる。第2のカーボンナノチューブ2がこの範囲で含まれれば、この電極材料で構成される電極の導電性が向上する。これは、第2のカーボンナノチューブ2がこの範囲で含まれていることで、第1のカーボンナノチューブ1が導電の主として機能し、さらに第2のカーボンナノチューブ2が、それぞれの第1のカーボンナノチューブ1間を電気的に繋ぎ、導電を効率的にサポートするためと考えられる。
【0016】
本発明の電極材料は、水溶性導電性高分子を含むことが好ましい。水溶性高分子は、カーボンナノチューブ(第1のカーボンナノチューブ1及び第2のカーボンナノチューブ2)の表面に吸着し、元来撥水性のカーボンナノチューブの表面を親水化する。一般に、カーボン材料の表面にOH基、COOH基等を導入しても親水化することができるが、導電性高分子を含ませるようにした方が得られる電極の電気抵抗が低くなり好ましい。親水性が高くなると電極の電気抵抗が低下するのは、レドックスフローバッテリーの電解質が水溶液であり、この電解質がこれらのカーボンナノチューブで形成される電極の隙間にまで浸透し、効率よく電極反応を起こすことができるためである。
【0017】
水溶性導電性高分子としては、スルホ基を有する導電性高分子が好ましく、ポリイソチアナフテンスルホン酸がより好ましい。水溶性導電性高分子がスルホ基を有すると、自己ドープ型導電性高分子となり安定した導電性を発現することが可能である。またスルホ基は親水性基でもあるため、電解質との親和性が高いという利点を有する。中でもイソチアナフテン骨格はベンゼン環を有するためπ電子を持ち、電極を構成するカーボンナノチューブの骨格のπ電子との親和性が高いため、ポリイソチアナフテンスルホン酸がより好ましい。
【0018】
本発明の電極材料の製造方法は、平均径100nm以上の第1のカーボンナノチューブと平均径30nm以下の第2のカーボンナノチューブとを、導電性高分子水溶液中で、湿式ジェットミルにより混合する工程を含む。湿式ジェットミルを用いることにより、特に第1のカーボンナノチューブの損傷を抑えつつ、第2のカーボンナノチューブを分散させることができる。混合時の圧力は、好ましくは100MPa以上、より好ましくは150〜250MPaである。当該範囲であれば、より顕著に第1のカーボンナノチューブの損傷を抑えつつ、第2のカーボンナノチューブを分散させることができる。
【0019】
導電性高分子水溶液を用いることによりカーボンナノチューブが湿式ジェットミルによる混合で分散しやすくなる。詳細は不明であるが、得られた電極材料表面に当該導電性高分子が残留するためか、本発明の材料で構成される電極はその表面が親水性になりやすい。
【0020】
導電性高分子水溶液の濃度は、残留する量に対し過剰量を供給できればよい。
これは予備実験により確認でき、例えば、導電性高分子水溶液中にカーボンナノチューブを投入しても、導電性高分子の濃度が大幅に低下しなければ過剰量と判断できる。
【0021】
導電性高分子水溶液中の導電性高分子としては、スルホ基を有する導電性高分子が好ましく、更に繰り返し単位にイソチアナフテンスルホン酸を含む導電性高分子がより好ましく、ポリイソチアナフテンスルホン酸がより好ましい。
【0022】
図2は、本発明の一実施形態にかかるレドックスフローバッテリーの電極の斜視模式図である。図2に示すようにレドックスフローバッテリーの電極10は、上記の電極材料を含む。すなわち、レドックスフローバッテリーの電極10は、第1のカーボンナノチューブ1と第2のカーボンナノチューブ2を含む。レドックスフローバッテリーの電極の形状は特に限定されないが、シート状(フェルトシート状)が一般的である。電極材料をシート状に成形する方法は特に限定されず、例えば、フィルムプレス成形、適当な分散媒に分散後、キャスティングする抄紙法等が挙げられる。
【0023】
電極材料の成形に際して、成形しやすくするために適当な構造体を用いてもよい。
例えば、本発明の電極材料を、好ましくは導電性の繊維、より好ましくは炭素繊維と共に成形するとよい。その他、電極材料と共に、適宜、触媒金属、バインダー等の添加物を用いて成形してもよい。
【0024】
図3は、本発明の一実施形態にかかるレドックスフローバッテリーの一例を説明するための断面模式図である。上記の手順で製造された電極は、常法により図3で示すレドックスフロー電池に組み込むことができる。電池の運転方法は、一般的なレドックスフロー電池の運転方法に従えばよい。
【0025】
図3に示すレドックスフローバッテリー20は、集電板28、28間に複数のセル20aを備えたものである。各セル20aは、隔膜24の両側に電極23と双極板27とがそれぞれ配置されたものである。双極板27は、隣接して配置された2つのセル20aにおいて共有されている。
【0026】
各セル20aには、電極23として正極23aと負極23bとが備えられている。各セル20aの正極23aは、隔膜24を介して隣接するセル20aの負極23bと対向して配置されている。上述のレドックスフローバッテリーの電極は、この正極23aまたは負極23bとして用いることができる。正極23a内には、正極用配管25を介して正極電解液が供給され、負極23b内には、負極用配管26を介して負極電解液が供給されている。
【実施例】
【0027】
以下に本発明の実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、これらは説明のための単なる例示であって、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。
【0028】
実施例1:
第1のカーボンナノチューブとしてVGCF(登録商標)−H(平均直径150nm、平均繊維長10μm)900gを用い、第2のカーボンナノチューブとしてVGCF(登録商標)−X(平均直径15nm、平均繊維長3μm)100gを用いた。この両者を純水50リットルにポリイソチアナフテンスルホン酸0.5gを溶解した溶液に入れて、ミキサー(IKA社製 ULTRA−TURRAX UTC 80)を用いて予備的に混合した。
【0029】
得られた混合物を湿式ジェットミル(スギノマシン社製StarBurst HJP−25005)を用いて圧力200MPaで処理した。得られたスラリーに構造体としてカーボン短繊維(ドナカーボ・チョップS−232、大阪ガス社製)を100g添加して、再び湿式ジェットミル(ULTRA−TURRAX UTC 80)を用いて混合した。
【0030】
カーボン短繊維を混合したこのスラリーを3リットル用いて、横210mm、縦300mmの長方形の濾過機に流し込み、吸引濾過してケーキを作製した。得られたケーキに総荷重20トンをかけて圧縮してから、重しを載せて200℃の乾燥器に入れて乾燥させた。乾燥したケーキの厚さは5mmで総重量は56gであった。乾燥したケーキを50mm ×50mmの大きさに切りだし、電極とした。図1は、得られた電極材料の透過電子顕微鏡写真である。電極材料は、第1のカーボンナノチューブ1の表面に第2のカーボンナノチューブ2が付着して絡み、第2のカーボンナノチューブ2が複数の第1のカーボンナノチューブ1間に跨った構造を有する。透過電子顕微鏡で電極材料を観察した際に、合計100本の第2のカーボンナノチューブを観察した結果、72本の第2のカーボンナノチューブ2が複数の第1のカーボンナノチューブ1間を跨った構造をしていた。
【0031】
得られた前記電極をカソード及びアノードとして1枚ずつ用いてレドックスフローバッテリーを組んで出力をテストした。アノード側に2価のバナジウムイオン(V+2)の水溶液、カソード側に5価のバナジウムイオン(V+5)の水溶液を導入し、それぞれの水溶液をチューブポンプで循環させた。なお、これらバナジウムイオンの水溶液は濃度4.5Mの硫酸を含む。両電極間の隔膜はNafion(登録商標)膜を用いた。
【0032】
前記レドックスフローバッテリーにおいて、バナジウムイオンの溶液中の濃度は1.5M、全溶液使用量は50mlであった。したがって理論容量は7200クーロンである。
【0033】
前記レドックスフローバッテリーで1Aの定電流放電を行った。カソードとアノードの電位差を起電力とし、起電力が1.0Vに達した時を終点とすると、1.7Vからスタートし平均約1.2Vで推移し、1.0Vまでに通過した電気量は7000クーロンであった。放電時間は117分であった。
【0034】
放電し終わったレドックスフローバッテリーに1Aの定電流充電を行い、カソードとアノードの電位差が1.6Vになったところで定電圧充電に切り替えた。その時の充電容量は7200クーロンであった。
【0035】
実施例2:
ポリイソチアナフテンスルホン酸15gを溶解したこと、およびカーボン短繊維を添加しなかったことを除いて、実施例1と同じ条件で50mm×50mmの大きさの電極を作製した。透過電子顕微鏡により観察したところ、得られた電極材料は、実施例1と同様に第2のカーボンナノチューブが複数の第1のカーボンナノチューブ間に跨った構造を有することが確認された。
【0036】
得られた電極を用い、実施例1と同様にレドックスフローバッテリーを組んで出力をテストした。1Aの定電流放電では、起電力が1.7Vからスタートし平均約1.2Vで推移し、電気量は7100クーロンであった。放電時間は122分であった。
【0037】
放電し終わった前記レドックスフローバッテリーの1Aの定電流充電での充電容量は7200クーロンであった。
【0038】
実施例3:
第1のカーボンナノチューブとして平均直径100nmのカーボンナノチューブ900gを用いたことを除いて、実施例1と同じ条件で50mm×50mmの大きさの電極を作製した。乾燥後の目視で、圧縮されたケーキの外周部に小さな割れが複数認められたが、外周部を避けて、割れのない電極を切り出すことができた。透過電子顕微鏡により観察したところ、得られた電極材料は、実施例1と同様に第2のカーボンナノチューブが複数の第1のカーボンナノチューブ間に跨った構造を有することが確認された。
【0039】
得られた電極を用い、実施例1と同様にレドックスフローバッテリーを組んで出力をテストした。1Aの定電流放電では、起電力が1.7Vからスタートし平均約1.1Vで推移し、電気量は6200クーロンであった。放電時間は102分であった。
【0040】
放電し終わったレドックスフローバッテリーの1Aの定電流充電での充電容量は6400クーロンであった。
【0041】
実施例4:
第2のカーボンナノチューブとして平均直径30nmのカーボンナノチューブ100gを用いたことを除いて、実施例1と同じ条件で50mm×50mmの大きさの電極を作製した。乾燥後の目視で、圧縮されたケーキの外周部に大きな割れが複数認められたが、圧縮されたケーキの中央部から、割れのない電極を切り出すことができた。透過電子顕微鏡により観察したところ、得られた電極材料は、実施例1と同様に第2のカーボンナノチューブが複数の第1のカーボンナノチューブ間に跨った構造を有することが確認された。
【0042】
得られた電極を用い、実施例1と同様にレドックスフローバッテリーを組んで出力をテストした。1Aの定電流放電では、起電力が1.7Vからスタートし平均約1.1Vで推移し、電気量は6100クーロンであった。放電時間は95分であった。
【0043】
放電し終わった前記レドックスフローバッテリーの1Aの定電流充電での充電容量は6300クーロンであった。
【0044】
比較例1:
実施例1において、第2のカーボンナノチューブを1000g用い、第1のカーボンナノチューブを用いなかったことを除き、同様に電極材料の作製を試みた。第2のカーボンナノチューブは湿式ジェットミルを通したのち、濾過機に流し込んで、同様な方法で乾燥させた。しかし、乾燥収縮でバラバラになってしまい、50mm×50mmの試片を取れなかった。そのため、その後の工程に進むことができなかった。これは、湿式ジェットミルとともに、第1のカーボンナノチューブも第2のカーボンナノチューブの分散に寄与しているものと考えられる。
【0045】
比較例2:
実施例1において、第1のカーボンナノチューブを1000g用い、第2のカーボンナノチューブを用いなかったことを除き、同様にレドックスフローバッテリーを作製し、評価を行った。
【0046】
実施例1とおなじ濾過機にスラリーを流し込んで、同様に乾燥させて取り出したところ、数本大きな割れが発生してしまった。割れた切れ端の大きいところを選んで、50mm×50mmを切り出し、同様にレドックスフローバッテリーを組んで充放電を行った。1Aの定電流放電では、起電力1.5Vからスタートし、1.0Vまでに通過した電気量は5400クーロンであった。
【0047】
比較例3:
第1のカーボンナノチューブとして平均直径80nmのカーボンナノチューブ900gを用いたことを除いて、実施例1と同じ条件で濾過機にスラリーを流し込んで、同様に乾燥させて取り出した。圧縮されたケーキ全体に大きな割れが複数発生し、50mm×50mmの試片を取れなかったので、その後の工程に進めなかった。バラバラになった小片を透過電子顕微鏡により観察したところ、第2のカーボンナノチューブが、複数の第1のカーボンナノチューブに跨った構造は観察されなかった。
【0048】
比較例4:
第2のカーボンナノチューブとして平均直径80nmのカーボンナノチューブ100gを用いたことを除いて、実施例1と同じ条件で濾過機にスラリーを流し込んで、同様に乾燥させて取り出した。圧縮されたケーキは、乾燥収縮でバラバラになってしまい、50mm×50mmの試片を取れなかったので、その後の工程に進めなかった。
バラバラになった小片を透過電子顕微鏡により観察したところ、比較例3と同様に第2のカーボンナノチューブが、複数の第1のカーボンナノチューブに跨った構造は観察されなかった。
【0049】
比較例5:
ミキサーを用いた予備混合後の湿式ジェットミル(スギノマシン社製StarBurst HJP−25005)による処理、およびカーボン短繊維添加後の湿式ジェットミル(ULTRA−TURRAX UTC 80)による混合のいずれも行わなかったことを除いて、実施例1と同じ条件で濾過機にスラリーを流し込んで、同様に乾燥させて取り出した。圧縮されたケーキは、乾燥収縮でバラバラになってしまい、50mm× 50mmの試片を取れなかったので、その後の工程に進めなかった。
バラバラになった小片を透過電子顕微鏡により観察したところ、第2のカーボンナノチューブは凝集しており、この凝集体と第1のカーボンナノチューブが混在する構造であった。比較例3、4と同様、第2のカーボンナノチューブが、複数の第1のカーボンナノチューブに跨った構造は観察されなかった。
【符号の説明】
【0050】
1…第1のカーボンナノチューブ、2…第2のカーボンナノチューブ、10…レドックスフローバッテリーの電極、20…レドックスフローバッテリー、20a…セル、23…電極、23a…正極、23b…負極、24…隔膜、25…正極用配管、26…負極用配管、27…双極板、28…集電板
【要約】
本発明のレドックスフローバッテリーは、平均径100nm以上の第1のカーボンナノチューブと平均径30nm以下の第2のカーボンナノチューブとを含み、前記第1のカーボンナノチューブの表面に前記第2のカーボンナノチューブが付着し、前記第2のカーボンナノチューブが、複数の前記第1のカーボンナノチューブ間に跨った構造を有する。本発明のレドックスフローバッテリーは、電極材料、及び、前記電極材料を用いた電極を有するため、起電力が高く充電容量の大きい。
図2
図3
図1