【実施例1】
【0028】
従来装置と同一部位には同一符号を付し、異なる構造を説明する。
本発明の一実施例であるコインホッパ100は、所定金種のコインを一つずつ払い出す機能を有する。
コインホッパ100は、ベース14の傾斜の上端部には回転ディスク16によって連れ回りされたコインCが図示しない弾出装置によってベース14に沿って弾き出される払出口102が形成される。したがって、コインCは斜め上向きに弾き出されて払い出される。
払出口102の直近下流のコイン通路に相対してコインセンサ104が配置され、払出口102から払い出されたコインCを検知する。コインセンサ104は、光電式センサ、磁気センサ、機械的センサ等が使用条件等に応じて選択され、当該コインセンサ104からの検知信号は、払い出したコインCのカウントに用いられる。
【0029】
コインホッパ100は、標準ホッパーヘッド18の上方に角筒型の補助ホッパーヘッド48の下端部を密に挿入し、標準ホッパーヘッド18の四側面から補助ホッパーヘッド48の下端部の補助左側壁58、補助右側壁62及び補助前側壁56、補助後側壁54へ平ビス等を用いて固定してある。しかし、補助ホッパーヘッド48を標準ホッパーヘッド18に対し、容易に着脱できるように構成することができる。
例えば、俗称パチン錠を用いることにより容易に着脱可能に構成できる。
また、標準ホッパーヘッド18と補助ホッパーヘッド48とを一体に構成することができる。しかし、万が一コインジャムが発生した場合に備え、補助ホッパーヘッド48を標準ホッパーヘッド18に容易に着脱できるように構成することが好ましい。
【0030】
まず、補助ホッパーヘッド48を詳細に説明する。
補助ホッパーヘッド48は、本実施例1においてはステンレス製平板を折り曲げて水平断面が矩形に形成され、所定の長さ(高さ)を有する角筒型である。
補助ホッパーヘッド48の補助左側壁58と補助右側壁62との第1距離L1は、コインCの直径に対し、2.5倍以上3.0倍以下に形成されている。
なお、補助ホッパーヘッド48は原則として全ての金種に同一のものを使用するので、小径コインの場合は上記条件を満たすことはないが、所定直径以上の大径コインが使用された場合、希に上記条件に当てはまることになる。
【0031】
次に傾斜板64を説明する。
傾斜板64は、回転ディスク16に加わるコインCの荷重を低減する機能を有する。換言すれば、傾斜板64上に載ったコインCの荷重を傾斜板64によって支えることにより、回転ディスク16には、傾斜板64よりも下方のコインCの荷重のみを受けるようする機能を有する。
傾斜板64は、回転ディスク16
の上方の異なる距離に複数配置することができ、この場合、互い違いに配置される。
可及的にコインCの荷重を回転ディスク16に付加しないためである。
本実施例1においては、下側傾斜板106及び上側傾斜板108が配置されている。
しかし、下側傾斜板106又は上側傾斜板108の何れか一つを配置し、樋形にすることができる。また、上側傾斜板108の上方にさらに樋形の傾斜板を一つ以上、互い違いに配置することができる。
【0032】
まず下側傾斜板106を説明する。
図3に示すように、下側傾斜板106は、従来と同様に金属製平板状の傾斜板であって、約30度の角度で前下がり傾斜している。換言すれば、補助前側壁56から補助後側壁54側へ向かって約30度の角度で前下がりに傾斜している。
下側傾斜板106の先端106Tと補助後側壁54との間に形成される下側落下口118の水平方向の最短の第2距離L2は、コインCの直径の二倍以上になるように設定してある。
下側傾斜板106は、その左右端部を下方へ直角に折り曲げて左耳片112及び右耳片114が形成され、それら左耳片112、右耳片114は補助左側壁58及び補助右側壁62との間に密に挿入され、それら左耳片112、右耳片114に補助左側壁58及び補助右側壁62を貫通してねじ込まれるスクリュウ116によって固定される。
【0033】
このように構成することにより、回転ディスク16の回転によって、標準ホッパーヘッド18の標準保留部20にバラ積み状態
で保留されたコインCが通孔26に立った状態で落ち込むことにより生じる
図3における上下方向の動きがバラ積み状態で積み上がっているコインCに順次伝播し、下側傾斜板106の先端106Tと
補助後側壁54との間に形成された下側落下口118に位置するコインCも上下方向に動かされる。これにより、下側落下口118の第2距離L2がコインCの直径の二倍程度であっても、コインCがブリッジ状になって滞留するコインジャムを生じさせない利点がある。
なお、下側傾斜板106も上側傾斜板108と同様に樋状に形成することができるが、回転ディスク16の回転によって上方に動かされるコインCが補助左側壁58又は補助右側壁62と下側傾斜板106とにより構成される三角形状の凹部空間に挟まれないような形状及び取付構造にする必要がある。
【0034】
次に上側傾斜板108が主に
図4を参照して説明される。
上側傾斜板108は、下側落下口118の上方に配置され、その上に載っているコインCの荷重を支えて、回転ディスク16に加わるコインCの荷重を低減する機能を有する。
上側傾斜板108は、概略的に説明すれば、本実施例1では補助後側壁54側から補助前側壁56側へ向けて前下がりに傾斜して配置され、その傾斜方向線SDLに対し、直交する平面Pにおける断面が樋122状に形成されている。詳細には、樋122は下向きに凸形状の樋状に形成されている。
【0035】
詳細には、中央部に下向き凸形状の樋122、その両側に狭幅の左平坦部124並びに右平坦部126が形成され、それら左平坦部124並びに右平坦部126の外端部を下向きに直角に折り曲げて左取付耳部128並びに右取付耳部132が形成してあり、左取付耳部128並びに右取付耳部132の外面間距離は補助ホッパーヘッド48の補助左側壁58、補助右側壁62の内法間距離である第1
距離L1よりも、僅かに小さく
あるいは同一に形成される。左取付耳部128並びに右取付耳部132には、それぞれ二個の取付用の貫通孔134が形成されている。
【0036】
換言すれば、上側傾斜板108は、補助左側壁58と補助右側壁62の間に挿入され、下側傾斜板106に対し所定距離上方において、下側傾斜板106の傾斜方向に対し逆向きの傾斜状態において、補助左側壁58、補助右側壁62に形成された貫通孔を介して左取付耳部128並びに右取付耳部132の貫通孔134に挿通させたボルトの先端にナット(図示せず)を螺込むことにより固定される。
【0037】
左取付耳部128並びに右取付耳部132は、ネジ孔に構成し、ボルトを直接にねじ込むことが出来る。この場合、ボルトの先端に回り止めのための接着剤等を付着させた後、ねじ込むことができる。また、左取付耳部128並びに右取付耳部132を補助左側壁58と補助右側壁62にそれぞれ溶接等によって固定することにより、貫通孔134を設けなくともよい。
即ち、左平坦部124並びに右平坦部126を設けず、左取付耳部128並びに右取付耳部132の間を断面が凹状の凹状板136により接続してもよい。
上側傾斜板108は、平面視した場合、
図2に示すように回転ディスク16の補助後側壁54側の周縁と大凡一致するようその長さが設定されるのが好ましい。
【0038】
また、下側傾斜板106の先端106Tと上側傾斜板108の先端108Tとは、平面視で第3距離L3の隙間を設けることが好ましい。
換言すれば、下側傾斜板106の先端106T及び上側傾斜板108の先端108Tどうしは平面視した場合、重ならないよう設定するのが好ましい。
更に換言すれば、
図2に示すように平面視した場合、回転ディスク16の下端部がうかがい見ることができるように構成することが好ましい。
回転ディスク16の回転によるコインCの上下動を下側傾斜板106の先端106Tよりも上方の保留部に波及させることにより、更にコインジャムを可及的に防止するためである。
【0039】
次に凹状板136の形状について説明する。
凹状板136は、傾斜方向線SDLに沿って凹状であれば良い。換言すれば、平面Pにおける断面が、
図5に示すように下向きに弧状である弧状樋136Aに形成することができる。
【0040】
本実施例1において樋122の溝の深さは、コインCの直径が約28ミリの場合、10〜15ミリに設定されることが好ましい。
図5を参照して説明すれば、樋122(凹状
板136)の溝の深さD2は、弧状樋136Aの左右端を結んだ第4
距離L4と最深部の
深さD2をいう。
深さD2が小さい場合、換言すれば樋122の深さD2が浅い場合、隣接するコインCに対する重力による押力が小さく、コインジャムの解消力が不十分になり、深すぎると樋ではなく溝状になってしまい、その溝部においてコインジャムが発生しやすくなるからである。
【0041】
次に本発明に係る上側傾斜板108上においてコインジャムが発生しないメカニズムが
図5を参照して説明される。
まず、コインCが立った状態で整列しようとする場合、弧状樋136Aにおいては、弧面に対し側壁側の周面が1点P1〜Pnおいて、点接触状態で接触するので、立ったコインSCは自重によって弧状樋136Aの中央側に向かって倒れようとする力PRが作用し、立った状態で安定することが無く、他のコインCとのバランスが崩れた場合、寝た状態へ倒れやすくなる。
【0042】
また、寝たコインLC1は自重によって弧状樋136Aの中央に移動しようとするから、弧状樋136A上に二枚並列して隣接位置する機会は大幅に減少する。
弧状樋136A上に寝たコインLCが隣接して積み上がろうとした場合、それらコインCは弧状の弧状樋136Aに対し直角な第1垂線PL1又は第2垂線PL2に沿って積み上がろうとする。それら第1垂線PL1と第2垂線PL2とは正面視交差する関係に有る。換言すれば、上方程、干渉量が大きくなる。したがって、隣接するコインCどうしが干渉しあうので、整列した状態で積み上がることは極めて困難である。
【0043】
さらに、
図5に示すように、仮に立ったコインSCが棒状に整列して立ったコイン群SCGを構成し、
第1の寝たコインLC1が整列して積み上がって第1の寝たコイン群LC1Gを構成した場合であっても、
第2の寝たコインLC2の積み上がった
第2の寝たコイン群LC2Gを構成した場合であっても、
第2の寝たコイン群LC2Gが立ったコイン群SCGと
第1の寝たコイン群LC1Gとの間に進入しようとした場合、
第1の寝たコイン群LC1Gの積み上がり部と
第2の寝たコイン群LC2Gの積み上がり部とが干渉範囲ITにおいて干渉し、第1
の寝たコイン群LC1Gの積み上がり部又は
第2の寝たコイン群LC2Gの積み上がり部を崩しつつ進入するので
、コインCが補助左側壁58と補助右側壁62との間に詰まってジャムすることはない。
【0044】
なお、上側傾斜板108は、図3に示すように、更に上方に互い違いに第2上側傾斜板142、第3上側傾斜板144を配置することができる。
第2上側傾斜板142及び第3上側傾斜板144も前述した上側傾斜板108と同様の構成及び作用を有する。
【実施例5】
【0049】
次に、本発明の好ましい例である
図9及び
図10に示す実施例
5を説明する。
実施例5は、平板状の下側傾斜板106が、補助ホッパーヘッド48の上下方向に移動可能された例である。下側傾斜板106が上下方向に移動可能にされることで、回転ディスク16の回転によって攪拌されたコインCが下側傾斜板106を突き上げた際、下側傾斜板106は逃げ運動をすることができ、回転ディスク16に無用な負荷を与えないので、消費電力の低減、装置の耐久性向上、更には、万が一発生した下側傾斜板106上のコインジャムの解消をすることができる利点がある。
【0050】
第2下側傾斜板148は、矩形平板状であり、その一端は補助前側壁56の下端部に水平線に沿って形成したスリット152に挿入されている。スリット152は、第2下側傾斜板148の端部の上下方向及び左右方向の移動は実質的に許容しないが、第2下側傾斜板148の先端148Tは上下方向に約10ミリの移動を許容する大きさに形成されている。
第2下側傾斜板148の先端148Tの近傍の左右側端からそれぞれ左ネジ耳片(図示せず)及び右ネジ耳片156が下向きに折り曲げて形成してある。
左ネジ耳片及び右ネジ
耳片156の側方の補助左側壁58には、スリット152を中心とする弧状の左長孔(図示せず)が形成され、補助右側壁62には同様に弧状の右長孔158が形成されている。
【0051】
左長孔を貫通するストッパとしてのスクリュウ(図示せず)が左ネジ耳片にねじ込まれ、左長孔の下端部に係合することにより停止される。右長孔158を貫通するスクリュウ162を右ネジ耳片156にねじ込み、同様に右長孔158の下端部に係止させることにより、通常時における待機位置を定めている。
この構造により、常態において、第2下側傾斜板148はストッパとしてのスクリュウ162が左長孔(図示せず)及び右長孔158の下端部に係止されて静止状態に保たれ、待機位置に位置される。
回転ディスク16の回転によるコインCの攪拌によって第2下側傾斜板148が突き上げられた場合、スクリュウ162が左長孔及び右長孔158の上端に係止されるまで、回動し、第2下側傾斜板148は逃げ運動が可能である。突き上げが終了した場合、第2下側傾斜板148の自重により、又はその上に載っているコインCの荷重も加わって下方へ回動され、スクリュウ162が左長孔及び右長孔158の下端部に係止されて静止される。
これにより、回転ディスク16に対する負荷は大幅に減少する。