(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
吸着剤が充填された二つの吸着塔のうち一方へ圧縮気体を導いて該圧縮気体の気体成分の一部が吸着除去された気体を吐出させる吸着工程と、該吸着工程によって気体成分が調整された圧縮気体の一部を、前工程で前記気体成分の一部を吸着した他方の吸着塔へ導いて、吸着能力が低下した吸着剤から吸着された前記気体成分を脱着させると共に排気させて該吸着剤を再生させるようにパージをするパージ工程とを並行して行い、これらの吸着工程とパージ工程とを二つの吸着塔の間で実質的に交互に行うことで気体成分が調整された製品気体を連続的に吐出させるように設けられ、パージ量を二段階に調整できるように、前記二つの吸着塔を連通するように設けられた二つの吸着塔間接続路と、該二つの吸着塔間接続路の少なくとも一方を開閉する開閉弁とを具備する気体吸着装置において、
前記二つの吸着塔間接続路のうち一方の吸着塔間接続路が、オリフィスによって通気量が設定されて常に連通している通路であって、
前記二つの吸着塔間接続路のうち他方の吸着塔間接続路が、該他方の吸着塔間接続路の通路途中に配されて同一通気量に開口が設定された一対の同等のオリフィスと、該一対の同等のオリフィスの間に配された前記開閉弁とで構成されている開閉可能な通路であり、前記一対の同等のオリフィスのそれぞれにはパージ用の気体をバイパスして通過させるバイパス通路が設けられ、該バイパス通路のそれぞれには、パージ用の気体を前記開閉弁から前記一対の同等のオリフィスの一つを通過させて前記吸着塔の一つへ流すように、前記開閉弁から前記吸着塔へのパージ気体の流れを止めて前記吸着塔から前記開閉弁へのパージ気体の流れを流通させる逆止弁が設けられていることを特徴とする気体吸着装置。
【背景技術】
【0002】
従来、気体吸着装置としては、吸着剤が充填された二つの吸着塔10、20のうち一方へ圧縮気体を導いて乾燥気体を吐出させる乾燥工程と、その乾燥工程によって乾燥された圧縮気体の一部を前工程で圧縮気体の湿分を吸着除湿した他方の吸着塔へ導いて吸着能力が低下した吸着剤から湿分を脱着させると共に排気させてその吸着剤を再生させる再生工程とを並行して行い、これらの乾燥工程と再生工程とを二つの吸着塔10、20の間で実質的に交互に行うことで乾燥気体を連続的に吐出させ、その乾燥気体の一部を排気することで、乾燥工程で湿分以外の気体が吸着剤に吸着されることによって変化される乾燥気体の成分濃度を調整するもの(特許文献1参照)が本出願人によって提案されている。
【0003】
これら従来の気体吸着装置では、二つの吸着塔を連通してパージができるように一つの吸着塔間接続路が設けられている。この一つの吸着塔間接続路は、その流路の途中にオリフィスを備えており、一定の通気量(パージ量)になるように設定されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
気体吸着装置及びそのパージ方法に関して解決しようとする問題点は、従来はパージ量の割合(パージ率)が高い値で一定に維持されているため、過剰品質の製品気体を供給する割合が高く、エネルギーを浪費する結果となっていたことにある。
そこで本発明の目的は、吸着剤を再生するためのパージ率を適切に低減できることで、省エネ運転が可能な気体吸着装置及びそのパージ方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。
【0009】
また、本発明に係る気体吸着装置の一形態によれば、吸着剤が充填された二つの吸着塔のうち一方へ圧縮気体を導いて該圧縮気体の気体成分の一部が吸着除去された気体を吐出させる吸着工程と、該吸着工程によって気体成分が調整された圧縮気体の一部を、前工程で前記気体成分の一部を吸着した他方の吸着塔へ導いて、吸着能力が低下した吸着剤から吸着された前記気体成分を脱着させると共に排気させて該吸着剤を再生させるようにパージをするパージ工程とを並行して行い、これらの吸着工程とパージ工程とを二つの吸着塔の間で実質的に交互に行うことで気体成分が調整された製品気体を連続的に吐出させる
ように設けられ、パージ量を二段階に調整できるように、前記二つの吸着塔を連通するように設けられた二つの吸着塔間接続路と、該二つの吸着塔間接続路の少なくとも一方を開閉する開閉弁とを具備する
気体吸着装置において、 前記二つの吸着塔間接続路のうち一方の吸着塔間接続路が、オリフィスによって通気量が設定されて常に連通している通路で
あって、前記二つの吸着塔間接続路のうち他方の吸着塔間接続路が、該他方の吸着塔間接続路の通路途中に配されて同一通気量に開口が設定された一対の
同等のオリフィスと、該一対の
同等のオリフィスの間に配された前記開閉弁とで構成されている開閉可能な通路であ
り、前記一対の同等のオリフィスのそれぞれにはパージ用の気体をバイパスして通過させるバイパス通路が設けられ、該バイパス通路のそれぞれには、パージ用の気体を前記開閉弁から前記一対の同等のオリフィスの一つを通過させて前記吸着塔の一つへ流すように、前記開閉弁から前記吸着塔へのパージ気体の流れを止めて前記吸着塔から前記開閉弁へのパージ気体の流れを流通させる逆止弁が設けられている。
【0010】
また、本発明に係る気体吸着装置の一形態によれば、前記他方の吸着塔間接続路の方が、前記一方の吸着塔間接続路よりも通気量が小さくなるように設定されていることを特徴とすることができる。
また、本発明に係る気体吸着装置の一形態によれば、前記開閉弁が電磁開閉弁であり、該電磁開閉弁の開閉を制御する制御装置を備えることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る気体吸着装置及びそのパージ方法によれば、吸着剤を再生するためのパージ率を適切に低減できることで、省エネルギー運転が可能になるという特別有利な効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る気体吸着装置及びそのパージ方法の形態例を添付図面(
図1〜3)に基づいて詳細に説明する。
先ず、吸着剤が充填された二つの吸着塔10、20に、圧縮気体を交互に供給して吸着剤の吸着効果を利用すると共に交互にパージを行って吸着剤の再生を行い、気体成分が調整された製品気体を連続的に得るように構成された気体吸着装置の基本形態について、
図1に基づいて説明する。
【0014】
10は第1吸着塔であり、20は第2吸着塔である。以下、記載を簡略化するため、第1吸着塔10を「A塔」と、第2吸着塔20を「B塔」と記載することがある。これらの第1吸着塔10(A塔)及び第2吸着塔20(B塔)には、導入された圧縮気体の気体成分の一部を吸着して気体成分の濃度を調整する吸着剤が充填されている。
この各吸着塔10、20へは、圧縮気体導入路40から切換バルブ50を介して圧縮空気が導入される。
【0015】
11は第1吸入通路であり、A塔に圧縮気体を導く通路となっている。また、21は第2吸入通路であり、B塔に圧縮気体を導く通路となっている。
12は第1排出通路であり、A塔から製品気体を吐出させる通路となっている。また、22は第2排出通路であり、B塔から製品気体を吐出させる通路となっている。
【0016】
30は一方の吸着塔間接続路であり、A塔とB塔を連通する通路となっている。この吸着塔間接続路30は、各吸着塔10、20の排出通路12、22が連通されている側に接続されている。これは、吸着塔10、20に導入されたばかりの気体成分の濃度が調整されていない圧縮気体でなく、その濃度が調整された圧縮気体を一方の吸着塔から他方の吸着塔へ導くためである。
また、この一方の吸着塔間接続路30には、気体流量を調整する手段としてパージ用オリフィス31が設けられている。これにより、一定流量の圧縮気体が通過するようになっている。
【0017】
13は第1パージ用排気通路であり、B塔で調整された一部が吸着塔間接続路30を介してA塔に導かれ吸着剤から吸着された気体成分を脱着してその吸着剤を再生させたパージ気体を排気させる通路となっている。23は第2パージ用排気通路であり、A塔で調整された一部が吸着塔間接続路30を介してB塔に導かれ吸着剤から吸着された気体成分を脱着してその吸着剤を再生させたパージ気体を排気させる通路となっている。
【0018】
32は排気バルブであり、第1パージ用排気通路13及び第2パージ用排気通路23に接続され、パージ用の排気を管理するように開閉制御手段(図示せず)によって制御されて作動する電磁弁である。
34はパージ排気用集合路であり、第1パージ用排気通路13と第2パージ用排気通路23を集合させた通路である。すなわち、このパージ排気用集合路34は、第1パージ用排気通路13及び第2パージ用排気通路23のそれぞれの一部を構成している。
33はパージ用サイレンサであり、排気バルブ32の排気側に接続されている。パージの際の排気音を消音するために設けられている。
【0019】
40は圧縮気体導入路であり、圧縮気体の発生源側に接続されて圧縮気体を導く気体通路である。この圧縮気体導入路40は、分岐されて第1吸入通路11、第2吸入通路21が構成されている。
17、27は逆止弁であり、第1排出通路12及び第2排出通路22のそれぞれの中途部に設けられている。この逆止弁17、27は、製品気体が好適に排出されるように逆流することを防止するチェックバルブである。
42は製品気体吐出用集合路であり、第1排出通路12と第2排出通路22を集合させた通路である。この製品気体吐出用集合路42を通って所定の供給先に製品気体が供給される。
【0020】
次に、本発明の係る気体吸着装置の特徴となる構成について説明する。
本発明に係る気体吸着装置は、パージ量を二段階に調整できるように、二つの吸着塔10、20を連通するように設けられた二つの吸着塔間接続路30、35(一方の吸着塔間接続路30、他方の吸着塔間接続路35)と、その二つの吸着塔間接続路30、35の少なくとも一方を開閉する開閉弁39とを具備する。他方の吸着塔間接続路35も、一方の吸着塔間接続路30と同様に、各吸着塔10、20の排出通路12、22が連通されている側に接続されている。なお、
図1では、二つの吸着塔間接続路30、35が二つの吸着塔10、20それぞれに接続された配管から分岐して並列に設けてある形態例を示してある。また、
図2では、二つの吸着塔間接続路30、35が全く別々の系統の配管になっている形態例を示してあると共に、他方の吸着塔間接続路35の具体的構成を示してある。
【0021】
これによれば、例えば、装置の起動時の高いパージ率を必要とする際には、開閉弁39を開いて二つの吸着塔間接続路30、35によって二つの吸着塔10、20を連通することで、パージ量を大きくすることができる。
図2に示す形態例では、他方の吸着塔間接続路35の開閉弁39が閉じた状態(
図2に示した状態)から、PとAを連通させて開いた状態に、その開閉弁39を制御装置(図示せず)によって作動させることでパージ量を大きくすることができる。
そして、例えば起動後に所定の時間が経過することで運転が安定して高いパージ率の必要がなくなった時点の定常運転中において、開閉弁39を閉じることで、パージ量を小さくして省エネモードにすることができる。そのようなパージ率の変更は、タイマーやセンサーのデータによって制御されるように、制御装置(図示せず)によって開閉弁39の開閉を行うことで自動的に行ってもよい。なお、パージ率の変更は、開閉弁39の開閉を手動で行うことで実行されるようにしてもよい。
【0022】
開閉弁39を自動的に開閉するように制御するには、
図2に示すように、開閉弁39を電磁開閉弁(オリフィス電磁弁(
図3参照))とし、そのオリフィス電磁弁39の開閉を制御する制御装置を備えるようにすればよい。これによれば、
図3の吸着サイクルのタイムチャートのように、パージ量を適切に管理でき、省エネを適切に実現できる。つまり、過剰な品質の製品気体を吐出することなく、エネルギーの消費を削減でき、ランニングコストを低減して高い経済性を実現できる。
【0023】
また、本形態例では、二つの吸着塔間接続路30、35のうち一方の吸着塔間接続路30が、オリフィス31によって通気量が設定されて常に連通している通路になっている。
また、二つの吸着塔間接続路30、35のうち他方の吸着塔間接続路35が、その他方の吸着塔間接続路35の通路途中に配されて同一通気量に開口が設定された一対のオリフィス36a、36bと、その一対のオリフィス36a、36bの間に配された開閉弁39とで構成されている開閉可能な通路になっている。
【0024】
これによれば、開閉弁39によって開閉が可能な他方の吸着塔間接続路35について、一対の同等のオリフィス36a、36bを配することで、パージのための気体の流れ方向が交互に逆向きになってもパージ量が同等となる。つまり、開閉弁39を通過する気体の方向性による影響を排除することができ、A塔とB塔からバランスよく安定的に製品空気を吐出することができる。
【0025】
さらに、37a、37bはバイパス通路であり、オリフィス36a、36bをバイパスしてパージ用の気体を通過させることができる。また、38a、38bは逆止弁である。逆止弁38aはA塔からB塔への流れをバイパスし、逆止弁38bはB塔からA塔への流れをバイパスする。これらの構成によれば、パージ用の気体がA塔からB塔に流れる際には、そのパージ量がオリフィス36bによって規制されることになる。そして、パージ用の気体が逆にB塔からA塔に流れる際には、そのパージ量がオリフィス36aによって規制されることになる。このため、一対のオリフィス36a、36bが、同等のものであれば、開閉弁39の影響と流れの方向の影響を受けることなく、パージ用の気体を流通させることができる。
【0026】
ところで、開閉弁39に替えて無段階バルブを利用することが考えられるが、複雑でコスト高になり易い。また、無段階バルブの場合、その無段階バルブの前後に本形態例のような同等のオリフィスを配する構成にはならない。このため、二つの吸着塔10、20を交互に用いてパージのための気体の流れ方向が交互に逆向きになるとき、その方向性による変化を受けてパージ量が不安定になってバランスのよい運転が難しくなる。
【0027】
また、本形態例では、他方の吸着塔間接続路35の方が、一方の吸着塔間接続路30よりも通気量が小さくなるように設定されている。例えば、一方の吸着塔間接続路30によるパージ率を1とすれば、他方の吸着塔間接続路35によって加算されるパージ率を0.5とすることができる。つまり、他方の吸着塔間接続路35の開閉弁39を開いて連通させた場合であってそのパージ量を大きくしたときは、通常のパージ率の1.5倍となる。このようにパージ量を調整するには、例えば、一方の吸着塔間接続路30のオリフィス31、他方の吸着塔間接続路35のオリフィス36a、36bの各開口のサイズを適宜に調整すればよい。
【0028】
以上に説明した本発明の気体吸着装置によれば、パージ工程において、二つの吸着塔10、20の間を連通してパージができるように設けられた二つの吸着塔間接続路30、35のどちらか一方を開閉することで、パージ量を好適に二段階に調整することができる。
例えば、気体吸着装置を起動する際及び/又は前記パージ工程においてパージによる排気を止めて二つの吸着塔10、20の昇圧をする際に、二つの吸着塔間接続路30、35の両方が二つの吸着塔10、20の間を連通するようにしてパージ率を高めることができる。つまり、オリフィスを有する二系統の通路の両方を開いた状態として、起動時や昇圧時などの必要なときに、パージ率を高める制御を行うことができる。
【0029】
図3に示すように起動をする際にパージ率を高めることで、起動時間を短縮することができる。また、
図3に示すように昇圧をする際にパージ率を高めることで、その昇圧工程を所要の時間でスムースに行うことが可能となり、パージ効率を高いレベルに維持できる。このため、吸着性能を高いレベルに維持できる。つまり、再生用気体(パージ用の気体)を流すとき吸着側は高圧で再生側は大気圧になり、昇圧が十分になされないと吸着効率が充分に安定化しなくなるという課題を適切に解消できる。
【0030】
以上に説明した本発明の気体吸着装置によれば、二酸化炭素を吸着除去してその濃度を低減する気体吸着装置、水蒸気を除去して気体(空気)を乾燥させる気体吸着装置、窒素を吸着して酸素の濃度を高める気体吸着装置などの気体成分の濃度を調整する装置として好適な構成を有するもので、それらの稼働効率を向上できるものとして有効に利用できるものになっている。
【0031】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。