(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジンとモータジェネレータとの間に電磁クラッチを配設しアイドリングストップ中にモータジェネレータを駆動できるクラッチすべり抑制制御装置であって、該電磁クラッチの磁路内に永久磁石を持ち、その磁束により結合力を発生させ、電磁クラッチソレノイドにはその磁束を打ち消すように電流を印加して消滅させることで電磁クラッチを解放動作させ、
さらに、
Hブリッジ型の電気回路により電磁クラッチに対して結合及び解放のいずれの方向にも電流を印加可能な電流印加手段と、
前記エンジンとエアコンプレッサとのトルク差から前記電磁クラッチの滑りを予測する予測手段と、
前記エンジンと前記エアコンプレッサとの回転数差から必要な前記電磁クラッチの結合力を推定する結合力推定手段と、
該結合力推定手段により推定された結合力から前記電磁クラッチの結合に最適な電流値を算出する電流値算出手段と、
該電流値算出手段で算出された最適な電流値でデューティ比を変化させる変化手段とを有し、
前記予測手段が電磁クラッチの滑りを予測した場合に、前記変化手段はデューティ比を前記エンジンとモータジェネレータとの間の結合力を強めるように変更する、ことを特徴とするクラッチすべり抑制制御装置。
エンジンとモータジェネレータとの間に電磁クラッチを配設し、該電磁クラッチが解放されるとエンジンの駆動と分離してモータジェネレータ単独で車両を駆動させることが可能なハイブリッド車におけるクラッチすべり抑制制御装置であって、該電磁クラッチの磁路内に永久磁石を持ち、その磁束により結合力を発生させ、電磁クラッチソレノイドにはその磁束を打ち消すように電流を印加して消滅させることで電磁クラッチを解放動作させ、
さらに、
Hブリッジ型の電気回路により電磁クラッチに対して結合及び解放のいずれの方向にも電流を印加可能な電流印加手段と、
前記エンジンと前記モータジェネレータとのトルク差から前記電磁クラッチの滑りを予測する予測手段と、
前記エンジンと前記モータジェネレータとの回転数差から必要な前記電磁クラッチの結合力を推定する結合力推定手段と、
該結合力推定手段により推定された結合力から前記電磁クラッチの結合に最適な電流値を算出する電流値算出手段と、
該電流値算出手段で算出された最適な電流値でデューティ比を変化させる変化手段とを有し、
前記予測手段が電磁クラッチの滑りを予測した場合に、前記変化手段はデューティ比を前記エンジンとモータジェネレータとの間の結合力を強めるように変更する、ことを特徴とするクラッチすべり抑制制御装置。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される空調設備のコンプレッサは、エンジンに連結されて得られる駆動力と、モータによる駆動力とを利用するものが存在する(例えば、実開平6−87678号公報(特許文献1))。例えば、アイドルストップ車等に搭載される空調装置のコンプレッサ等である。
【0003】
このようなコンプレッサでは、エンジンと連結されて駆動力を得る場合と、バッテリによって駆動されるモータによって駆動力を得る場合とがあり、これらの両駆動源を選択的に使用する。具体的には、エンジンとモータジェネレータ(モータとその発電機及びスタータとしての機能を有する)との間に電磁クラッチを設け、エンジンとモータとの両駆動源を選択的に連結することでコンプレッサを駆動する。具体的には、エンジンが駆動している場合には電磁クラッチの摩擦プレートを結合させることで回転軸とエンジンとを連結して駆動力を得、一方、エンジンが停止している場合には電磁クラッチの摩擦プレートを解放することでモータの回転による駆動力を得るようになっている。
【0004】
また、ハイブリッド車では車両の動力源としてエンジンとモータとを併有し、いずれか一方または双方の駆動力により走行するようにしたハイブリッド自動車が知られている(例えば、特開平11−285107号公報参照(特許文献2))。このハイブリッド車でも、エンジンとモータジェネレータとの間に電磁クラッチを設け、エンジンとモータとの両駆動源を選択的に連結することで車両を走行させている。
【0005】
上記2つの場合ともに電磁クラッチはしっかりと結合・解放する必要があり、結合時において結合力(結合力)が低下し、摩擦プレート間に所謂「すべり」が発生すると駆動力の伝達が不十分になり、エネルギー損失を招く。従来、この問題を解決すべく、電磁クラッチの結合時に「すべり」が発生したことを検知して、クラッチの結合力を強める方向に電流を印加する技術が開示されている(例えば、特開平1−158230号公報(特許文献3)、特開2001−349349号公報(特許文献4)、特開2002−250293号公報(特許文献5))。
【0006】
しかしながら、このような結合力を強める方法を採用すると電磁石の大型化や消費電力の増大が懸念されるという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の事情に鑑みて創作されたものであり、車両のエンジンとモータジェネレータとの間に設けられた電磁クラッチについて、小型で省消費電力でありながらその結合時のすべりを解消し、結合力を高めるクラッチすべり抑制制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明では、
エンジンとモータジェネレータとの間に電磁クラッチを配設しアイドリングストップ中にモータを駆動できるクラッチすべり抑制制御装置を提供する。このクラッチすべり抑制制御装置は、永久磁石の磁束により結合力を発生させ、その磁束を打ち消すように電磁クラッチソレノイドに電流を印加することで電磁クラッチの解放動作をする。また、本クラッチすべり抑制制御装置は、Hブリッジ型の電気回路により電磁クラッチに対して結合及び解放のいずれの方向にも電流を印加可能な電流印加手段と、前記エンジンとエアコンプレッサとのトルク差から前記電磁クラッチの滑りを予測する予測手段と、前記エンジンと前記エアコンプレッサとの回転数差から必要な前記電磁クラッチの結合力を推定する結合力推定手段と、該結合力推定手段により推定された結合力から前記電磁クラッチの結合に最適な電流値を算出する電流値算出手段と、該電流値算出手段で算出された最適な電流値でデューティ比を変化させる変化手段とを有し、前記予測手段が電磁クラッチの滑りを予測した場合に、前記変化手段はデューティ比を前記エンジンとモータジェネレータとの間の結合力を強めるように変更する。
【0010】
本発明のクラッチすべり抑制制御装置によれば、電磁クラッチの「すべり」を予測し、モータとエンジンを解放する方向と逆の方向に電磁クラッチの結合に必要な分だけ電流を印加することができる。したがって、無駄なく電磁クラッチ内の磁束密度を増加させ、クラッチの「すべり」を容易に抑制することができる。従来のように結合力を強めるために永久磁石を強力なものにすることなく印加する電流量を制御することで必要な結合力を得ることができる。また、永久磁石を強力なものにしなくても良いためにクラッチ解放動作時の電流量も増やす必要がなく消費電力の軽減が可能である。その結果、装置全体としての低コスト化も可能である。
【0011】
また、他の本発明は、エンジンとモータジェネレータとの間に電磁クラッチを配設し、該電磁クラッチが解放されるとエンジンの駆動と分離してモータ単独で車両を駆動させることが可能なハイブリッド車におけるクラッチすべり抑制制御装置を提供する。このクラッチすべり抑制制御装置は、Hブリッジ型の電気回路により電磁クラッチに対して結合及び解放のいずれの方向にも電流を印加可能な電流印加手段と、前記エンジンと前記モータとのトルク差から前記電磁クラッチの滑りを予測する予測手段と、前記エンジンと前記モータとの回転数差から必要な前記電磁クラッチの結合力を推定する結合力推定手段と、該結合力推定手段により推定された結合力から前記電磁クラッチの結合に最適な電流値を算出する電流値算出手段と、該電流値算出手段で算出された最適な電流値でデューティ比を変化させる変化手段とを有し、前記予測手段が電磁クラッチの滑りを予測した場合に、前記変化手段はデューティ比を前記エンジンとモータとの間の結合力を強めるように変更する。
【0012】
本クラッチすべり抑制制御装置も電磁クラッチの「すべり」を解消する基本制御構成としては同じであるが、上述するクラッチすべり抑制制御装置と違いハイブリッド車におけるエンジンとモータとの間の電磁クラッチの「すべり」の解消を目的としている
【発明の効果】
【0013】
本発明のクラッチすべり抑制制御装置によれば、車両のエンジンとモータジェネレータとの間に設けられた電磁クラッチについて、小型で省消費電力でありながらその結合時のすべりを解消し、結合力を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
続いて、本発明の一実施形態に係るクラッチすべり抑制制御装置について、図面を参照しつつ詳細に説明する。まず、クラッチすべり抑制制御装置で「すべり」防止の対象となる電磁クラッチ及びその周辺装置についての概略を説明する。
【0016】
図1は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等の内燃機関(以下、エンジン)1と、バッテリによって駆動されるモータジェネレータ2の少なくとも2つの駆動源を有する車両におけるコンプレッサ5や空調設備3の駆動を示す概略図である。なお、モータジェネレータ2は、走行駆動源であるモータとしての機能と発電機及びスタータとしての機能とを有するように構成されるものである。
【0017】
コンプレッサ5や空調装置3を制御するためには、エンジン制御装置7(以下、「エンジンECU」と称する)が設けられる。このエンジンECU7には、エンジン1、モータジェネレータ2や空調装置3から、図示しないがマルチプレクサ(MPX)やアナログ−デジタル変換器(ADC)等を介して道路の勾配情報やアクセル情報(スロットル情報)、車速情報等の各種信号が入力される。入力された信号は、エンジンECU7内において実行されるプログラムに従って処理され、所定の制御信号として出力され、空調装置3や電磁クラッチ4等を制御する。
【0018】
空調装置3のコンプレッサ5は、いわゆるエンジン1及びモータジェネレータ2の2つの駆動源で駆動できるコンプレッサである。電磁クラッチ4は、エンジン1とモータジェネレータ2との間の連結遮断を行う。電磁クラッチ4は、対向する摩擦プレート4a、4bを有し、さらに、内蔵した永久磁石により摩擦プレート4a、4b同士が結合してエンジン1の回転を回転軸6に伝達する。回転軸6に伝達されたエンジン1の回転はプーリ12からプーリ13に伝達し、コンプレッサ5を駆動させる。なお、プーリ12とプーリ13とはベルト14で連結されている。なお、蓄電装置9は後述するように電磁クラッチ4が結合するとエンジン1の回転がモータジェネレータ2に伝達され、モータジェネレータ2が発電機として機能すると蓄電する。
【0019】
また、12V電池11は蓄電装置9の電圧を降圧コンバータ10によって電圧を下げて充電する。また、電磁クラッチ4はエンジンECU7の指令により電磁クラッチソレノイド(図示せず)を励磁すると、永久磁石の磁束を打ち消すことで結合力を消滅させ、
図1の矢印(電磁プレート4の直下参照)に示すよう方向に摩擦プレート4bが回転軸6上をスライドし摩擦プレート4a、4bを互いに解放する。電磁クラッチ4が解放されるとエンジン1の回転の伝達は電磁クラッチ4で遮断され、モータジェネレータ2のモータ駆動によりその回転がプーリ12、13、ベルト14を介してコンプレッサ5を作動させる。
【0020】
ここでエンジン1の稼働と電磁クラッチ4の作動との関係について説明する。エンジン1の始動時は、電磁クラッチをONすなわち結合させる場合には、永久磁石の磁束により摩擦プレート4a、bを結合させてモータジェネレータ2でエンジン1を始動させる。エンジン1の始動後、モータジェネレータ又はコンプレッサ作動不要時は、エンジンECU7の指令により電磁クラッチ4の摩擦プレート4a、bを解放させ、モータジェネレータ2を引きずらないようにする。また、モータジェネレータ又はコンプレッサ作動必要時は、電磁クラッチ4の摩擦プレート4a、bを結合させる。なお、アイドルストップ中にモータジェネレータ又はコンプレッサ作動必要時は、電磁クラッチ4を断切(OFF)し摩擦プレート4a、bを解放させる。
【0021】
ここで電磁クラッチ4の「すべり」、すなわち摩擦プレート4a、4bが互いにしっかりと結合せずエンジン1の回転が十分に伝達されていない状態について考える。この電磁クラッチ4の「すべり」はモータ2とエンジン1との回転数の差が大きいと発生するものである。
【0022】
この「すべり」を解決するために本実施形態では、
図2に示すように電磁クラッチ4に印加する電流回路をHブリッジ回路としている。まず、
図2(a)は従来の電流制御回路を示している。電磁クラッチソレノイド20は電流を印加すると電磁クラッチ4を解放させる機能を有する。
図2(a)の従来型の電流制御回路では、トランジスタQ0をON/OFFすることで電磁クラッチソレノイド20への電流印加をON/OFFしている。この電流制御装置Aでは矢印にも示すように電流を一方向に流すことができないため電磁クラッチ4を解放してエンジン1とモータジェネレータ2とを解放することしかできない。したがって、電磁クラッチ4の結合時にその結合力が弱い場合には「すべり」が発生する。
【0023】
これに対して
図2(b)では本発明のクラッチすべり抑制制御装置における電流制御回路Bが示されている。この電流制御回路BはHブリッジ回路構成であり、トランジスタQ1及びQ4をONするときと(矢印実線)、トランジスタQ2及びQ3をONするときと(矢印点線)、で電磁クラッチソレノイド20への電流印加方向を逆転することができる。したがって、電磁クラッチ4を解放するだけでなく、永久磁石の磁束をさらに強めることによりエンジン1とモータジェネレータ2との結合力を強めることができる。
【0024】
次に具体的に本クラッチすべり抑制制御装置の制御構成の概要を説明する。本クラッチすべり抑制制御装置では、電磁クラッチ4の「すべり」を予測したうえで必要締結力を推定し、そこから最適な電流値を算出してデューティ比を変化させている(具体的な「すべり」の予測については後述する)。デューティ比は周期的なパルス波を出したときの周期とパルス幅の比をいい、印加電流の強度すなわちここでは電磁クラッチ4の結合力の強度に対応する。
【0025】
ここで本クラッチすべり抑制制御装置で制御を想定する電磁クラッチ4の「すべり」について考える。本クラッチすべり抑制制御装置では、(1)アシスト及び回生時、(2)ロックアップ時、を想定している。これらはエンジン1とモータジェネレータ2との回転数差(以下、単に「回転数差」と称するときはこの意味で使用する)が大きいときである。詳細には
(1)アシスト及び回生時とは、エンジン1に急激な負荷変動が発生したとき、すなわちアシストから回生に移ったとき又は回生からアシストに移ったときである。又、
(2)ロックアップONする直前、もしくはロックアップONした直後である。
このようなときに大きな「すべり」は発生するので、これを予測し、制御する。
【0026】
図3を参照すれば、「すべり」の予測をエンジン1とエアコンプレッサ5との回転数差から必要締結力を推定する方法がフロー図で示されている。
まず、電磁クラッチ4がON指令か否かすなわちクラッチ結合指令か否かを判断する(STEP10)。このクラッチON指令は車両の状態、例えばエンジン始動時や空調設備3の動作状況などにより決まる。クラッチON指令である場合にはエンジン1とコンプレッサ5との回転数差を判定する(STEP11)。また、STEP10でクラッチOFF指令である場合、電磁クラッチ4を解放すべく永久磁石の磁束を打ち消すために電流指令値=所定の負の値、に設定しておく(STEP14)。ここで電流指令値が正の場合は、クラッチ4の結合力を強める向きに電流を流すことに対応し、負の場合にはクラッチ4を解放する向きに電流を流すことに対応する。
【0027】
STEP11で、回転数差が大きい(回転数差>閾値)と判定された場合には、電流指令値を回転数差に応じた正の値に設定する(STEP12)。
図3におけるSTEP12に示したグラフでは回転数rに応じた電流値aが設定される。また、STEP11で回転数差が小さい(回転数差≦閾値)と判定された場合には、電流指令値=0、に設定し、電磁クラッチ4に電流の印加をせずにそのまま結合させておく(STEP13)。
STEP12〜14で電流指令値が設定されると、この電流指令値に基づいてデューティ比を算出し(STEP15)、電磁クラッチ4の結合に要する所望の印加電流に変調して出力する(STEP16)。
【0028】
図4は、
図3のフロー図に示す制御例におけるタイミングチャートを示している。まず、最初(t=t0)にクラッチはON、電流指令値=0であるが、時間t1のときに回転数差が所定の閾値を超えて電磁クラッチにかかるトルクが上昇すると、電流指令値が正の値となり電磁クラッチ4に「すべり」防止の電流が印加され、クラッチ4の「すべり」状態を解消することができる。その後、時間t2でクラッチON指令がOFFになり電磁クラッチが解放されると、電流指令値が負の値に設定されクラッチが解放方向に向かうことが理解されよう。
【0029】
図5を参照すれば、「すべり」の予測する制御構成についてのフロー図で示されている。
まず、電磁クラッチ4がON指令か否かを判断する(STEP20)。クラッチON指令である場合には、エンジン1のトルクの変動を検知し、その検知結果から電磁クラッチ4の締結力(結合力)を強めるための電流指令値を算出する(STEP21)。次に、モータジェネレータ2のトルク変動を検知し、その検知結果から電磁クラッチ4の締結力(結合力)を強めるための電流指令値を算出する(STEP22)。さらに、ロックアップが行われる場合にはその前後の回転数差を検知し、その検知結果から電磁クラッチ4の締結力(結合力)を強めるための電流指令値を算出する(STEP23)。そして、STEP20で電磁クラッチ4がON指令であると判定された場合はSTEP21,STEP23、STEP24で算出された電流指令値を全部加算してその和を電流指令確定値として設定し(STEP25)、この電流指令値に基づいてデューティ比を算出し(STEP26)、電磁クラッチ4の結合に要する所望の印加電流に変調して出力する(STEP27)。また、STEP20で電磁クラッチ4がOFF指令であると判定された場合はこれを維持すべく電流指令値=所定の負の値、に設定しておき(STEP22)、この電流指令値に基づいてデューティ比を算出し(STEP26)、電磁クラッチ4の結合に要する所望の印加電流に変調して出力する(STEP27)。
【0030】
図6は、
図5のフロー図に示す制御例におけるタイミングチャートを示している。まず、最初(t=t0)にクラッチはON、電流指令値=0であるが、時間t3、t4、t5ときにそれぞれ、A.エンジン1のトルクの変動、B.モータジェネレータ2のトルク変動、C.ロックアップが行われる場合にはその前後の回転数差、の検知結果から算出された電流指令値が示されており、その加算合計値(STEP25参照)がD.最大電流指令値として示されている。これは時間t3、t4、t5ではA〜Cのそれぞれの電流指令値のみ現れているためD.最大電流指令値でもその大きさに変化が見られないが、t7ではA及びCの電流指令値が同時に現れているためDがその加算値として現れていることからも理解される。また、時間t7でクラッチがOFFになり電磁クラッチが解放されると、電流指令値が負の値に設定されクラッチが解放方向に向かうことも理解されよう。
【0031】
また、
図3、
図5以外にも他の「すべり」の予測する制御構成が考えられる。
例えば、A/Cコンプレッサの負荷から判断する制御構成が考えられ、
図7にフロー図が示されている。まず、
図3,
図5と同様に電磁クラッチ4がON指令か否か判断する(STEP30)。クラッチON指令である場合には、コンプレッサにかけられていると検出される圧力に応じた負荷トルクを算出し(STEP31)、算出された負荷トルクをモータジェネレータ2の回転軸へのトルクに換算する(STEP33)。具体的には、換算値(換算トルク)=負荷トルク×プーリ比、として換算する。次に、この換算値からモータ側のトルクを算出する(STEP34)。具体的には、検出されるモータトルクからSTEP33の換算トルクを減算する。
【0032】
そして、算出されたトルクの変動に対応する電流指令値が算出され、
図3、
図5と同様にこの電流指令値に基づいてデューティ比を算出し(STEP36)、電磁クラッチ4の結合に要する所望の印加電流に変調して出力する(STEP37)。また、STEP30で電磁クラッチ4がOFF指令であると判定された場合はこれを維持すべく電流指令値=所定の負の値、に設定しておき(STEP32)、この電流指令値に基づいてデューティ比を算出し(STEP36)、電磁クラッチ4の結合に要する所望の印加電流に変調して出力する(STEP37)。
【0033】
図8は、
図7のフロー図に示す制御例におけるタイミングチャートを示している。このフロー図からSTEP31の負荷トルク、STEP32のモータトルク、両者減算の合計であるSTEP34のトルク(合計トルク)、合計トルクの変動に基づいて電流指令値が現れていることが理解されよう。
【0034】
また、上記本クラッチすべり抑制制御装置の実施形態では、エンジンとコンプレッサ用モータジェネレータとの間の電磁クラッチの「すべり」防止を目的としているが、同様の制御構成でハイブリッド車におけるエンジンとモータジェネレータとの間の電磁クラッチにも適用可能である。上述の実施形態における「コンプレッサ用モータ」を「走行用モータ」に置き換えると理解できよう。
【0035】
以上、本発明のクラッチすべり抑制制御装置についての実施形態およびその概念について説明してきたが本発明はこれに限定されるものではなく特許請求の範囲および明細書等に記載の精神や教示を逸脱しない範囲で、さらなる他の変形例、改良例が得られることは当業者は理解できるであろう。