(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5789852
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】ねじ部材締付け装置および管継手用締付け装置
(51)【国際特許分類】
B25B 23/15 20060101AFI20150917BHJP
【FI】
B25B23/15
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-206751(P2011-206751)
(22)【出願日】2011年9月22日
(65)【公開番号】特開2013-66967(P2013-66967A)
(43)【公開日】2013年4月18日
【審査請求日】2014年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100083149
【弁理士】
【氏名又は名称】日比 紀彦
(72)【発明者】
【氏名】岡部 庸之
(72)【発明者】
【氏名】守谷 修司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健一
(72)【発明者】
【氏名】中田 知宏
(72)【発明者】
【氏名】篠原 努
(72)【発明者】
【氏名】山路 道雄
【審査官】
亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−071677(JP,A)
【文献】
特開平08−028763(JP,A)
【文献】
実開平04−060670(JP,U)
【文献】
特開昭48−035498(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3147978(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 23/15
B25H 7/04
F16L 15/00
F16L 19/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
おねじ部材とめねじ部材とを相対回転させることで締付けを行うねじ部材締付け装置であって、
いずれか一方のねじ部材の軸方向に直交するように嵌められて該ねじ部材を回転しないように保持する第1治具と、他方のねじ部材の軸方向に直交するように嵌められて該ねじ部材を回転させる第2治具と、他方のねじ部材に接するように第1治具に設けられたマーキング部材とを備えており、他方のねじ部材が回転させられた際に、マーキング部材によって他方のねじ部材にマークが施されるようになされていることを特徴とするねじ部材締付け装置。
【請求項2】
互いに連通する流体通路を有している第1および第2の管状継手部材と、両継手部材を結合するためのおねじ部材およびめねじ部材とを備えている管継手を締め付ける装置であって、
おねじ部材の軸方向に直交するように嵌められておねじ部材を回転しないように保持する第1治具と、めねじ部材の軸方向に直交するように嵌められてめねじ部材を回転させる第2治具と、めねじ部材に接するように第1治具に設けられたマーキング部材とを備えており、めねじ部材が回転させられた際に、マーキング部材によってめねじ部材にマークが施されるようになされていることを特徴とする管継手用締付け装置。
【請求項3】
めねじ部材の外周面は、第2治具が嵌め合わされる多角形面と、マーキング部材が当接させられる円筒面とを有していることを特徴とする請求項2の管継手用締付け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、おねじ部材とめねじ部材との締付けを行うねじ部材締付け装置およびおねじ部材とめねじ部材とが締め付けられることで結合される管継手用締付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに連通する流体通路を有している第1および第2の管状継手部材を備えており、おねじ部材とめねじ部材とのねじ合わせによって結合される管継手は、よく知られている(特許文献1)。
【0003】
このような管継手の締付けを行う場合、シール機能を確保するには、適正な締付けが必要であり、締め忘れを防止することが重要である。締め忘れを防止してねじ部材を締め付ける装置として、マーカ付締付工具が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−96329号公報
【特許文献2】特開第4585932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の管継手を配管途中において締め付ける場合、締付けのための治具をねじ部材の軸方向に直交するように嵌める必要があり、上記特許文献2のマーカ付締付工具では、このような管継手を締め付けることは不可能であり、締め忘れ防止機能付きの管継手用締付け装置が求められている。
【0006】
この発明の目的は、管継手のような締付けを行う場所の制約がある対象であっても、従来と同じ作業を行うだけで、締め忘れ防止機能が付加された締付けを行うことが可能なねじ部材締付け装置およびこのねじ部材締付け装置を管継手に適用した管継手用締付け装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明によるねじ部材締付け装置は、おねじ部材とめねじ部材とを相対回転させることで締付けを行う締付け装置であって、いずれか一方のねじ部材の軸方向に直交するように嵌められて該ねじ部材を回転しないように保持する第1治具と、他方のねじ部材の軸方向に直交するように嵌められて該ねじ部材を回転させる第2治具と、他方のねじ部材に接するように第1治具に設けられたマーキング部材とを備えており、他方のねじ部材が回転させられた際に、マーキング部材によって
他方のねじ部材にマークが施されるようになされていることを特徴とするものである。
【0008】
第1治具および第2治具は、例えば、二股部を有するスパナとされる。マーキング部材としては、マーカー、マジックインキ、フェルトペン、サインペン等の筆記用具に類似の形状とされたものが使用でき、具体的には、筒状のインク溜まり部およびその一端部に設けられたペン先部を有しているものとされる。これ以外でも、対象物に当接することでマークを施すものであれば、種々のものがマーキング部材として使用できる。
【0009】
この発明のねじ部材締付け装置によると、第1治具および第2治具がいずれもねじ部材の軸方向に直交するように嵌められるものであるので、例えば、配管途中に設置されている管継手のように、管継手の両側に配管が延びていても、この配管と干渉することなく、治具をねじ部材に嵌め合わせることができる。この嵌め合わせを行うことにより、回転させられる方のねじ部材にマーキング部材が当接させられ、この後、第2治具を回転させて締付けを行うことで、回転させられたねじ部材にマークが施される。こうして、締付けのための作業としては、従来と同じ作業を行うだけで、ねじ部材にマークが施され、このマークの有無によって、適正に締め付けられたかどうかの判定が可能となる。
【0010】
この発明による管継手用締付け装置は、互いに連通する流体通路を有している第1および第2の管状継手部材と、両継手部材を結合するためのおねじ部材およびめねじ部材とを備えている管継手を締め付ける装置であって、おねじ部材の軸方向に直交するように嵌められておねじ部材を回転しないように保持する第1治具と、めねじ部材の軸方向に直交するように嵌められてめねじ部材を回転させる第2治具と、めねじ部材に接するように第1治具に設けられたマーキング部材とを備えており、めねじ部材が回転させられた際に、マーキング部材によってめねじ部材にマークが施されるようになされていることを特徴とするものである。
【0011】
すなわち、上記のねじ部材締付け装置を管継手に適用することにより、管継手の締付けを行うに際し、従来と同じ作業を行うだけで、締め忘れ防止機能が付加された締付けを行うことができる。
【0012】
管継手の継手部材同士は、適宜なねじ手段で締め付けられ、このねじ手段としては、例えば、第1および第2の継手部材のいずれか一方におねじ部(おねじ部材)が形成され、継手部材のおねじ部にねじ合わされた袋ナット(めねじ部材)によって、両継手部材が結合されてもよく、第1および第2の継手部材がいずれもおねじ部が形成されていないスリーブとされ、別体とされたおねじ部材と袋ナット(めねじ部材)とによって、両継手部材が結合されてもよい。
【発明の効果】
【0013】
この発明のねじ部材締付け装置によると、いずれか一方のねじ部材の軸方向に直交するように嵌められて該ねじ部材を回転しないように保持する第1治具と、他方のねじ部材の軸方向に直交するように嵌められて該ねじ部材を回転させる第2治具と、他方のねじ部材に接するように第1治具に設けられたマーキング部材とを備えており、他方のねじ部材が回転させられた際に、マーキング部材によって一方のねじ部材にマークが施されるようになされているので、締付けを行う場所の制約がある対象であっても、従来と同じ作業を行うだけで、締め忘れ防止機能が付加された締付けを行うことができる。
【0014】
この発明の管継手用締付け装置によると、おねじ部材の軸方向に直交するように嵌められておねじ部材を回転しないように保持する第1治具と、めねじ部材の軸方向に直交するように嵌められてめねじ部材を回転させる第2治具と、めねじ部材に接するように第1治具に設けられたマーキング部材とを備えており、めねじ部材が回転させられた際に、マーキング部材によってめねじ部材にマークが施されるようになされているので、管継手の締付けを行うに際し、従来と同じ作業を行うだけで、締め忘れ防止機能が付加された締付けを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、この発明による締付け装置の1実施形態を示す縦断面図である。
【
図2】
図2は、この発明による締付け装置の第1治具を示す平面図である。
【
図3】
図3は、この発明による締付け装置のめねじ部材を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、この発明による締付け装置により締め付けられた管継手を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明の実施の形態を、以下図面を参照して説明する。
【0017】
図1から
図4までには、この発明によるねじ部材締付け装置(1)を管継手用締付け装置に適用した実施形態を示している。
【0018】
締付け装置(1)は、おねじ部材(11)とめねじ部材(12)とを相対回転させることで管継手(2)の締付けを行う締付け装置であって、おねじ部材(11)を回転しないように保持する第1のスパナ(第1治具)(21)と、めねじ部材(12)を回転させる第2のスパナ(第2治具)(22)と、めねじ部材(12)に接するように第1のスパナ(21)に設けられたマーキング部材(23)とを備えている。そして、めねじ部材(12)が回転させられた際に、マーキング部材(23)がめねじ部材(12)に当接させられていることで、正しく締め付けられた管継手(2)では、
図4に示すように、マーク(M)が施され、締付け後の管継手(2)の締め忘れが確認可能なようになされている。
【0019】
管継手(2)は、
図1に示すように、互いに連通する流体通路(3a)(4a)を有している第1および第2の管状継手部材(3)(4)と、継手部材(3)(4)同士を結合するねじ手段(5)と、ガスケット(7)、リテーナ(8)および弾性リング(9)を有するシール手段(6)とを備えている。
【0020】
ねじ手段(5)は、第2継手部材(4)に嵌められて第2継手部材(4)のフランジ部に突き合わされたおねじ部材(11)と、第1継手部材(3)に嵌められておねじ部材(11)にねじ合わされているめねじ部材(12)とからなる。
【0021】
おねじ部材(11)には、外周面が六角形状とされたスパナを係合するための係合部(11a)が形成されており、第1のスパナ(21)には、
図2にも示すように、この係合部(11a)に係合する多角形内周面(21a)が形成されている。
【0022】
めねじ部材(12)は、袋ナットと称されているもので、通常、六角形の外周面を有しているものとされているが、
図3にも示すように、このめねじ部材(12)の外周面は、スパナを係合するための六角形面(12a)と、マーキング部材(23)が当接させられる円筒面(12b)とを有している。
【0023】
第2のスパナ(22)は、第1のスパナ(21)と同じ形状とされており、めねじ部材(12)の六角形面(12a)に係合する多角形内周面(22a)が形成されている。
【0024】
マーキング部材(23)は、筒状のインク溜まり部(23a)およびその上端部に設けられたペン先部(23b)を有しており、ペン先部(23b)がめねじ部材(12)の円筒面(12b)にめねじ部材(12)の軸方向に直交する方向(
図1の右方)から当接させられている。
【0025】
管継手(2)を締め付けるに際しては、おねじ部材(11)の軸方向に直交するように(
図1の右方から)第1のスパナ(21)をおねじ部材(11)に嵌め合わせてこれを回転しないように保持するとともに、めねじ部材(12)の軸方向に直交するように(
図1の右方から)第2のスパナ(22)をめねじ部材(12)に嵌め合わせてこれを回転させる。これにより、めねじ部材(12)に接するように第1のスパナ(21)に設けられたマーキング部材(23)によってめねじ部材(12)にマーク(M)が施される。
【0026】
こうして、管継手(2)の両側に配管が延びていても、この配管と干渉することなく、管継手(2)の締付けを行うことができる。ここで、締付けのための作業としては、従来と同じ作業を行うだけでよく、これにより、めねじ部材(12)にマーク(M)が施され、このマーク(M)の有無によって、適正に締め付けられたかどうかの判定が可能となる。
【0027】
なお、
図1に示した管継手(2)の断面形状は、一例であり、管継手は、これに限定されるものではない。例えば、
図1には、おねじ部材が別部材とされているものが示されているが、第1継手部材におねじ部を設けることで、おねじ部材を不要とすることができる。この場合のおねじ部材は、第1継手部材のおねじ部または第1継手部材自体となる。
【0028】
また、上記のねじ部材締付け装置(1)は、管継手(2)以外であっても、おねじ部材とめねじ部材との締付けに適用することができる。
【符号の説明】
【0029】
(1):締付け装置、(2):管継手、(3):第1継手部材、(4):第2継手部材、(11):おねじ部材、(12):めねじ部材、(12a):六角形面(多角形面)、(12b):円筒面、(21):第1のスパナ(第1治具)、(22):第2のスパナ(第2治具)、(23):マーキング部材