特許第5789870号(P5789870)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5789870防浸構造を備えた研磨パッド用補助板および研磨装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5789870
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】防浸構造を備えた研磨パッド用補助板および研磨装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/11 20120101AFI20150917BHJP
   B24B 37/22 20120101ALI20150917BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   B24B37/00 C
   B24B37/00 W
   H01L21/304 622F
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2011-200593(P2011-200593)
(22)【出願日】2011年9月14日
(65)【公開番号】特開2013-59830(P2013-59830A)
(43)【公開日】2013年4月4日
【審査請求日】2014年6月25日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度経済産業省「戦略的基盤技術高度化支援事業」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】599096053
【氏名又は名称】東邦エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 辰俊
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英資
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−118231(JP,A)
【文献】 特表2001−501874(JP,A)
【文献】 特開平09−097772(JP,A)
【文献】 特開2011−161522(JP,A)
【文献】 特開2006−255809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/11
B24B 37/22
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッド支持面を有しており回転定盤に対して着脱可能とされた補助板本体に対して、研磨層の裏側にクッション層が設けられた研磨パッドが該パッド支持面に重ね合わされて固着されるようになっていると共に、該クッション層の外周面を覆って該クッション層へのスラリー等の含浸を防止する外周防浸手段が該補助板本体を用いて形成されており、
前記研磨層が前記クッション層に対して剥離可能とされた積層構造の前記研磨パッドを含んで構成されていると共に、
前記補助板本体の前記パッド支持面に対して前記研磨パッドの裏面を固着する第一の固着手段と、該研磨パッドにおいて前記クッション層に対して前記研磨層を固着する第二の固着手段とが、設けられており、該第一の固着手段による該補助板本体と該研磨パッドとの固着力が、該第二の固着手段による該クッション層と該研磨層との固着力に比して大きくされていること
を特徴とする研磨パッド用補助板。
【請求項2】
前記研磨パッドにおける前記クッション層の外周面を覆う防浸材が、前記補助板本体における前記パッド支持面の外周側部分によって支持されて設けられることにより、前記外周防浸手段が構成されている請求項1に記載の研磨パッド用補助板。
【請求項3】
前記補助板本体の上面中央部分には、前記研磨パッドの厚さ寸法よりも小さな深さ寸法でパッド装着凹所が形成されており、該パッド装着凹所の底面が前記パッド支持面とされている請求項1又は2に記載の研磨パッド用補助板。
【請求項4】
前記補助板本体の前記パッド装着凹所の周壁内面と前記研磨パッドの前記クッション層の外周面との径方向対向面間の隙間の上方への開口部分を封止する封止材が設けられている請求項に記載の研磨パッド用補助板。
【請求項5】
前記補助板本体の前記パッド装着凹所の深さ寸法が、前記研磨パッドの前記クッション層の厚さ寸法以上とされている請求項又はに記載の研磨パッド用補助板。
【請求項6】
前記補助板本体の前記パッド装着凹所の周壁内面が前記研磨パッドの前記クッション層の外周面に対して全体に亘って重ね合わされている請求項に記載の研磨パッド用補助板。
【請求項7】
請求項1〜の何れか1項に記載の研磨パッド用補助板が、回転定盤の上面に重ね合わされて着脱可能に取り付けられていることを特徴とする研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウエハや半導体基板、ガラス基板等のような高い平坦加工精度が要求される被加工物である基板を対象とする研磨に関連する技術に係り、特に、かかる基板の表面を研磨する際に用いられる研磨パッドを支持するための研磨パッド用補助板と該補助板を用いた研磨装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
良く知られているように、半導体の製造に際しては、構成材となるシリコンウエハや半導体基板、ガラス基板等の基板の表面を平坦化する研磨処理が行われている。かかる研磨処理は、一般に、樹脂材等からなる円板形状の研磨パッドを研磨装置の回転定盤の上に両面テープで固定し、砥粒を含んだ研磨液(スラリー)を供給しつつ、研磨パッドと基板を相対的に回転運動させて研磨を行うことによって実施されている。また、パッド表面をドレッサーで目立てし、洗浄するために、純水等も供給されている。
【0003】
ところで、このような研磨処理を実施するための研磨パッドとしては、特表平5−505769号公報(特許文献1)や特開2009−66728号公報(特許文献2)などに記載されているように、研磨面を与える研磨層の裏側にクッション層が設けられた積層構造の研磨パッドが、好適に用いられている。
【0004】
ところが、従来構造の多くの研磨パッドでは、研磨処理に際して研磨面に供給されるスラリー等がクッション層の内部に含浸することを避け難かった。そして、クッション層へのスラリー等の含浸に起因して、クッション層の物性が損なわれて研磨性能が低下するおそれがあり、研磨精度の安定性に悪影響があったのである。更には、クッション層への含浸により、研磨パッドが剥がれてしまう危険性もあった。
【0005】
なお、かかる問題に対して、特開2002−36097号公報(特許文献3)には、クッション層の全体を覆う袋状の防水構造を採用した研磨パッドも提案されている。しかし、研磨パッド自体が非常に薄肉で大径の円形平板形状とされていることに加えて、特にクッション層は軟質で変形し易い傾向にあることから、クッション層の全体を覆う袋状の防水構造の形成が極めて難しい。また、たとえ袋状の防水構造、或いは周側面の防水層を形成し得たとしても、回転定盤への研磨パッドの脱着時に及ぼされる外力や研磨処理に際して及ぼされる圧力などによって研磨パッド特にクッション層が変形し易いのであって、このクッション層の大きな変形によりクッション層を覆う防水構造が損傷を受け易く、スラリー等の含浸防止を安定して維持することが難しいことから、実用化には至っていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表平5−505769号公報
【特許文献2】特開2009−66728号公報
【特許文献3】特開2002−36097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、研磨パッドのクッション層へのスラリー等の含浸を、高度な耐久性と信頼性をもって防止することが出来る新規な防浸構造を実現し得る研磨パッド用補助板を提供することにある。
【0008】
また、本発明は、研磨パッドのクッション層へのスラリー等の含浸を、高度な耐久性と信頼性をもって防止することが出来る新規な防浸構造を備えた研磨装置を提供することも、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するために、研磨パッド用補助板に関する本発明の第一の態様は、パッド支持面を有しており回転定盤に対して着脱可能とされた補助板本体に対して、研磨層の裏側にクッション層が設けられた研磨パッドが該パッド支持面に重ね合わされて固着されるようになっていると共に、該クッション層の外周面を覆って該クッション層へのスラリー等の含浸を防止する外周防浸手段が該補助板本体を用いて形成されており、前記研磨層が前記クッション層に対して剥離可能とされた積層構造の前記研磨パッドを含んで構成されていると共に、前記補助板本体の前記パッド支持面に対して前記研磨パッドの裏面を固着する第一の固着手段と、該研磨パッドにおいて前記クッション層に対して前記研磨層を固着する第二の固着手段とが、設けられており、該第一の固着手段による該補助板本体と該研磨パッドとの固着力が、該第二の固着手段による該クッション層と該研磨層との固着力に比して大きくされている研磨パッド用補助板を、特徴とする。
【0010】
本発明に従う構造とされた研磨パッド用補助板においては、外周防浸手段を採用したことにより、研磨処理に際してのスラリー等のクッション層への含浸が防止され得て、クッション層の性能劣化とそれに伴う研磨性能の低下が効果的に防止され得る。
【0011】
ここにおいて、特に補助板本体を利用して外周防浸手段が形成されていることにより、クッション層や外周防浸手段における変形や応力が補助板本体の補強作用で抑えられて、変形し易いクッション層であっても外周防浸手段が容易に実現可能とされると共に、外周防浸手段の機能が長期間に亘って安定して発揮され得る。また、研磨パッドを補助板本体に固着させたままで取り扱うことが出来るから、例えば研磨装置の回転定盤から補助板本体ごと研磨パッドを取り外したり再び装着したり等するに際しても、外周防浸手段を備えたクッション層全体の変形量や応力が補助板本体の補強作用で効果的に抑えられることとなり、スラリー等の含浸防止機能も安定して維持され得るのである。
【0012】
また、補助板本体を利用することにより、外周防浸手段の構造の簡略化を図ることも可能となり、特に補助板本体は、研磨層の裏側に設けられたクッション層に近接して配される点に着目して利用することにより、クッション層の外周防浸手段を補助板本体によって簡単な構造で効率的に実現することができるのである。特に、クッション層の裏面の全体を補助板本体で覆うことも可能であり、それによってクッション層裏面の防浸手段を、補助板本体で実現することもできる。
【0013】
研磨パッド用補助板に関する本発明の上記の態様において、前記研磨層が前記クッション層に対して剥離可能とされた積層構造の前記研磨パッドを含んで構成されている態様が採用されている
【0014】
このような第一の態様の研磨パッド用補助板においては、クッション層を補助板本体に対して固着して補強支持せしめたままの状態で、研磨パッドにおける研磨層だけをクッション層から分離して取り外すことができ、その後、研磨層を再生加工した後にクッション層に再固着したり、別途に新たな研磨層をクッション層に固着することで、クッション層をそのまま利用して研磨層のみを更新した研磨パッドを得ることが可能となる。
【0015】
ここにおいて、クッション層は、外周防浸手段によりスラリー等含浸も防止されて良好なクッション性能ひいては研磨性能がその後も安定して発揮され得る。しかも、研磨層の剥離と固着の際にもクッション層は補助板本体に固着されたままで保持されていることから、クッション層へのスラリー等含浸を防止する外周防浸手段の機能も安定して保持されると共に、クッション層自体も補助板本体で補強されて保持されることから損傷等が防止されて容易に取り扱うことも可能とされる。
【0016】
研磨パッド用補助板に関する本発明の上記の態様において、前記補助板本体の前記パッド支持面に対して前記研磨パッドの裏面を固着する第一の固着手段と、該研磨パッドにおいて前記クッション層に対して前記研磨層を固着する第二の固着手段とが、設けられており、該第一の固着手段による該補助板本体と該研磨パッドとの固着力が、該第二の固着手段による該クッション層と該研磨層との固着力に比して大きくされている態様が採用されている
【0017】
このような第一の態様の研磨パッド用補助板においては、補助板本体に固着されたままのクッション層から、研磨層を取り外す作業を一層容易に行うことが可能となる。例えば、クッション層を補助板本体への固着状態に保持するための特別な操作等を必要とすることなく、補助板本体への固着状態に残したままのクッション層から研磨層を容易に取り外すことも可能となる。
【0018】
研磨パッド用補助板に関する本発明の第の態様は、前記第一の態様に係る研磨パッド用補助板において、前記研磨パッドにおける前記クッション層の外周面を覆う防浸材が、前記補助板本体における前記パッド支持面の外周側部分によって支持されて設けられることにより、前記外周防浸手段が構成されているものである。
【0019】
本態様の研磨パッド用補助板においては、クッション層の外周面を覆う防浸材を採用することで、クッション層の外周面へのスラリー等の接触を回避させてスラリー等の含浸を効果的に防止することができる。ここにおいて、本態様では、かかる防浸材をクッション層自体のみに支持させるのではなく、補助板本体に支持機能をもたせたことにより、防浸材の設計自由度が大きく確保されると共に、防浸材の損傷を防止して良好な防浸性能を安定して長期間に亘って得ることも可能となるのである。
【0020】
なお、本態様において、好適には、補助板本体の上面の外径寸法が、研磨パッドにおけるクッション層の外径寸法よりも大きくされる。これにより、クッション層の外周面を覆う防浸材の補助板本体による支持機能が一層容易に且つ効果的に実現可能となる。
【0021】
研磨パッド用補助板に関する本発明の第の態様は、前記第一又は第二の態様に係る研磨パッド用補助板において、前記補助板本体の上面中央部分には、前記研磨パッドの厚さ寸法よりも小さな深さ寸法でパッド装着凹所が形成されており、該パッド装着凹所の底面が前記パッド支持面とされているものである。
【0022】
本態様の研磨パッド用補助板にあっては、研磨パッドにおいてクッション層が設けられた裏面側部分がパッド装着凹所に収容された状態で、研磨パッドが補助板本体に対して取り付けられることとなる。一方、研磨パッドの研磨層の表面はパッド装着凹所から突出位置されていることにより、目的とする研磨性能が発揮され得る。そして、構造的な強度が小さいクッション層の周囲を、補助板本体におけるパッド装着凹所の周壁部分によって保護することも可能となる。
【0023】
また、本態様に従う構造とされた研磨パッド用補助板では、補助板本体のパッド装着凹所の周壁内面が、研磨パッドのクッション層の外周面に対して径方向で対向位置せしめられることとなる。それ故、例えば後述するように、パッド装着凹所の周壁内面を研磨パッドのクッション層の外周面に対して直接に重ね合わせたり、或いはパッド装着凹所の周壁内面と研磨パッドのクッション層の外周面との径方向対向面間にシール材を充填等して配設したり、又はパッド装着凹所の周壁内面と研磨パッドのクッション層の外周面との径方向対向面間の隙間の上方への開口部を封止する封止材を設けたり等することによって、かかるパッド装着凹所の周壁内面を利用して防浸手段を一層簡単な構造と良好な防浸性能をもって実現することも可能となる。
【0024】
研磨パッド用補助板に関する本発明の第の態様は、前記第の態様に係る研磨パッド用補助板において、前記補助板本体の前記パッド装着凹所の周壁内面と前記研磨パッドの前記クッション層の外周面との径方向対向面間の隙間の上方への開口部分を封止する封止材が設けられているものである。
【0025】
本態様の研磨パッド用補助板にあっては、研磨パッドのクッション層の外周面へのスラリー等の回り込みを防止することが可能となり、小さな封止材によってクッション層の外周面への防浸効果を有利に得ることが可能となる。
【0026】
研磨パッド用補助板に関する本発明の第の態様は、前記第又はの態様に係る研磨パッド用補助板において、前記補助板本体の前記パッド装着凹所の深さ寸法が、前記研磨パッドの前記クッション層の厚さ寸法以上とされているものである。
【0027】
本態様の研磨パッド用補助板にあっては、研磨パッドのクッション層の外周面の全体に対して、研磨パッド用補助板におけるパッド装着凹所の周壁内面を直接的に対向させることが出来て、パッド装着凹所の周壁内面をクッション層の外周面への防浸のために一層効果的に利用することが可能となる。
【0028】
研磨パッド用補助板に関する本発明の第の態様は、前記第の態様に係る研磨パッド用補助板において、前記補助板本体の前記パッド装着凹所の周壁内面が前記研磨パッドの前記クッション層の外周面に対して全体に亘って重ね合わされているものである。
【0029】
本態様の研磨パッド用補助板にあっては、研磨パッドのクッション層の外周面のをパッド装着凹所の周壁で直接に覆うことで、パッド装着凹所の周壁により防浸手段を直接的に且つ一層効果的に実現することが可能となる。なお、本態様では、研磨パッドのクッション層の外周面とパッド装着凹所の周壁内面との重ね合わせ面間や、かかる重ね合わせ面間の上方への開口部に対して、適当なシール材や接着材等を併せて採用することも可能である。
【0030】
また、本発明は、前述の如き研磨パッド用補助板に関する本発明の第一〜の何れかの態様に係る研磨パッド用補助板が、回転定盤の上面に重ね合わされて着脱可能に取り付けられている研磨装置も、特徴とする。
【0031】
本発明に従う構造とされた研磨装置においては、本発明に従う構造とされた研磨パッド用補助板を採用したことにより、研磨パッドのクッション層へのスラリー等含浸を防止しつつ研磨処理を行うことが可能となり、研磨精度を高度に維持しつつ、例えば研磨層だけをクッション層から分離させて交換等してクッション層の再使用すること等も実現可能となる。
【発明の効果】
【0032】
本発明に従う構造とされた研磨パッド用補助板を採用し、または本発明に従う構造とされた研磨装置を用いることによって、研磨パッド用補助板による研磨パッド特にクッション層への補強効果を活用してクッション層への防浸手段が充分な耐久性をもって容易に実現可能となる。その結果、クッション層へのスラリー等の含浸を防止して、優れた研磨精度を確保しつつ研磨処理を安定して行うことが可能となるのである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の第一の実施形態としての研磨パッド用補助板を装着した研磨装置の要部を示す縦断面説明図。
図2図1に示された研磨パッド用補助板において研磨パッドを取り外した状態を示す縦断面説明図。
図3図1に示された研磨装置において研磨パッド用補助板を取り外した状態を示す縦断面説明図。
図4】本発明の第二の実施形態としての研磨パッド用補助板を装着した研磨装置の要部を示す縦断面説明図。
図5】本発明の第三の実施形態としての研磨パッド用補助板を装着した研磨装置の要部を示す縦断面説明図。
図6】本発明の第四の実施形態としての研磨パッド用補助板を装着した研磨装置の要部を示す縦断面説明図。
図7】本発明の第五の実施形態としての研磨パッド用補助板を装着した研磨装置の要部を示す縦断面説明図。
図8】本発明の第六の実施形態としての研磨パッド用補助板を装着した研磨装置の要部を示す縦断面説明図。
図9】本発明の第七の実施形態としての研磨パッド用補助板を装着した研磨装置の要部を示す縦断面説明図。
図10】本発明の第八の実施形態としての研磨パッド用補助板を装着した研磨装置の要部を示す縦断面説明図。
図11】本発明の第九の実施形態としての研磨パッド用補助板を装着した研磨装置の要部を示す縦断面説明図。
図12図11に示された本発明の第九の実施形態としての研磨パッド用補助板のシール板固定板付近の拡大図。
図13図11の研磨パッド用補助板を構成するシール板の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。先ず、図1には、本発明の第一の実施形態としての研磨パッド用補助板10が示されている。この研磨パッド用補助板10は、研磨装置12の回転定盤14に装着されて用いられ、回転定盤14に対して研磨パッド16を着脱可能に取り付けるようになっている。
【0035】
研磨装置は、例えば特開2010−141155号公報等に記載されているように例えばCMP装置(化学機械研磨装置)として用いられるものであって、基本構造は周知であるが要部を説明すると、先ず基礎ベース上に固定設置された装置本体によって鉛直方向に延びる回転軸が回転可能に支持されており、この回転軸の上端部に円盤形状の回転定盤14が固設されている。かかる回転定盤14は、水平方向に広がる平坦な上面18を有しており、この上面18が研磨パッド16の間接的な支持面とされている。また、回転軸には、電気モータの回転出力軸が連結されており、電気モータの駆動力が伝達されることで回転軸ひいては回転定盤14が鉛直な中心軸回りに回転駆動されるようになっている。なお、研磨パッド16を支持する上面18の上方には、研磨用スラリー等を供給するノズルが配置されると共に、研磨対象(被研磨物)であるウェハ等を保持して回転させつつ研磨パッド16に押し付けることで研磨加工を施す研磨ヘッドが配設されている。
【0036】
このような研磨装置において、その回転定盤14に装着された研磨パッド用補助板10は、補助板本体20を含んで構成されている。この補助板本体20は、円形の平板形状とされており、平坦な表面(上面)22と裏面(下面)24を有している。この補助板本体20の表面22が研磨パッド16の直接的な支持面とされており、研磨パッド16がパッド支持面に重ね合わされて固着されるようになっている。また、補助板本体20は、装着される研磨パッド16よりも硬質材料であるものや、研磨パッド16よりも部材剛性が大きいものが望ましい。部材剛性が大きい補助板本体20であれば、研磨パッド16への補強作用等が一層効果的に発揮されるからである。
【0037】
尤も、補助板本体20は、研磨加工に際して研磨装置12の回転定盤14の上面18に重ね合わされて使用されることで、下面24を回転定盤14により支持されるものであることから、単体での強度や剛性がそれ程迄に要求されるものでなく、後述するクッション層38への物性に影響が及ぼされない程度の強度や剛性を有していればよい。それ故、ステンレス鋼等の金属の他、合成樹脂や繊維強化樹脂、セラミックス等も、補助板本体20の材質として採用され得る。特に、合成樹脂材は金属材に比して軽量で加工や取扱いが容易であり、例えばポリカーボネート等は、厚さ寸法精度の安定性や温度変化に対する低歪み特性にも優れているといった利点がある。
【0038】
また、補助板本体20の外周部分においては、円環形状の外周カラー26が一体形成されることにより、又は別体形成されて固着されることにより設けられている。この外周カラー26により、補助板本体20には、表面22側に突出する上側周壁28と、裏面24側に突出する下側周壁30とが形成されている。また、これら上側周壁28および下側周壁30が形成されることにより、補助板本体20には、上面22側の中央部分において上方に向かって開口する大径のパッド装着凹所32が形成されていると共に、下面24側の中央部分において下方に向かって開口する大径の定盤装着凹所34が形成されている。
【0039】
そして、補助板本体20は、研磨装置12の回転定盤14に対して定盤装着凹所34が外挿状態で嵌め合わされることにより、補助板本体20の下面(定盤装着凹所34の底面)24が回転定盤14の上面18に重ね合わされて装着されるようになっている。また、かかる装着時には、回転定盤14の外周面に下側周壁30が嵌め合わされることにより、回転定盤14に対する補助板本体20の軸直角方向での位置決め作用が発揮されて、回転定盤14の回転中心軸に対して補助板本体20の中心軸が略位置合わせされるようになっている。
【0040】
一方、補助板本体20のパッド装着凹所32には、研磨パッド16が嵌め入れられるようにして装着されている。
【0041】
ここにおいて、研磨パッド16は、従来から公知のものであるが、CMPに際して研磨面を提供する研磨層36に対して、該研磨層36よりも弾性が大きいクッション層38が、研磨層36の裏側に設けられた複合構造とされている。特に本実施形態では、同じ外径寸法の薄肉円板形状で別体形成された研磨層36とクッション層38とが、互いに重ね合わされて相互に固着された二層の積層構造の研磨パッド16が用いられている。なお、クッション層38は、合成樹脂やエラストマー、ゴム等の弾性材料によって形成されたものが好適であり、例えば不織布が用いられる。
【0042】
また、研磨パッド16の外径寸法は、一般に規格値とされるが、多くの場合、装着される回転定盤14の上面18の外径寸法と同じか小さく設定される。そして、補助板本体20のパッド装着凹所32の内径寸法が、かかる研磨パッド16の外径寸法と同じか僅かに大きくされている。これにより、研磨パッド16は、装着凹所32に嵌め入れられて、研磨パッド16と略同一中心軸上に配設されている。
【0043】
更にまた、補助板本体20のパッド装着凹所32の深さ寸法は、研磨パッド16の厚さ寸法よりも小さくされており、研磨面である研磨パッド16の研磨層36の表面(研磨面)42が、装着凹所32から所定高さで上方に突出して位置せしめられている。特に本実施形態では、パッド装着凹所32の深さ寸法が、研磨パッド16におけるクッション層38の厚さ寸法と略同じか僅かに大きくされており、クッション層38が略全体に亘ってパッド装着凹所32に収容されるようになっている。
【0044】
すなわち、研磨パッド16を補助板本体20に装着した状態下では、研磨パッド16のクッション層38の外周面が、上側周壁28の内周面で構成された補助板本体20の装着凹所32の周壁内面44に対して、略全面に亘って径方向で対向位置せしめられている。そして、クッション層38の外周面に対して、装着凹所32の周壁内面44が直接に又は僅かな隙間を隔てて重ね合わされていることにより、クッション層38の外周面が装着凹所32の周壁内面44で覆われている。これにより、本実施形態では、補助板本体20を用いて、その上側周壁28により、クッション層38の外周面からのスラリー等の含浸を防止する外周防浸手段が構成されている。
【0045】
なお、研磨処理に際して、研磨パッド16を補助板本体20で安定して支持させるために、研磨パッド16の裏面であるクッション層38の裏面が、パッド装着凹所32の底面(補助板本体20の上面)22に対して、第一の固着手段としての第一の接着層46で固着されている。この第一の接着層46は、研磨処理に際して研磨パッド16を補助板本体20に対して固着状態に安定して保持し得る一方、研磨パッド16の補助板本体20に対する固着後の剥離を可能にすることが望ましい。それにより、研磨パッド16を交換するに際して、補助板本体20を繰り返して使用すること等が可能になる。
【0046】
また、本実施形態では、研磨パッド16自体も、研磨層36とクッション層38とが、剥離と再固着が可能な復元性のある第二の固着手段としての第二の接着層48によって相互に固着されていることが望ましい。このような第二の接着層48を挟んで、研磨層36とクッション層38が固着されていることにより、研磨処理に際しては固着状態が保持されて一体的な複合構造の研磨パッド16とされる一方、研磨後には、図2に示すように、必要に応じて研磨層36をクッション層38から取り外すことができるようになっている。
【0047】
なお、上述の第一及び第二の接着層46,48としては、例えば基材シートの両面に接着剤が塗布された両面テープなどが採用可能である。特に、第一及び第二の接着層46,48は、研磨パッド16と補助板本体20との重ね合わせ面または研磨層36とクッション層38との重ね合わせ面の略全体に亘って広がって形成されるのが好適である。これにより、充分な固着力を容易に得ることが出来ると共に、研磨面となる研磨層36の表面の全体に亘って物性が安定して発揮されて、研磨面の研磨精度が全体に亘って均一に維持され得る。
【0048】
そして、このように補助板本体20の上面22に研磨パッド16が載置されて第一の接着層46で固着されることにより一体的な補助板付研磨パッドとされており、かかる補助板付研磨パッドが、図1に示されているように、第三の固着手段としての第三の接着層50により、研磨装置12の回転定盤14の上面18に対して固定的に装着されている。なお、この第三の接着層50も、第一及び第二の接着層46,48と同様、両面テープ等で構成されて固着と剥離、再固着が可能とされていることが望ましい。それによって、例えば図3に示されているように、研磨パッド16が装着されたままの補助板本体20を、研磨装置12から取り外し、例えば研磨パッド16の研磨層36の表面にドレッシング等の再生処理を施した後に、研磨パッド16が装着された補助板本体20を研磨装置12の回転定盤14に装着することも容易となる。
【0049】
また、上述の第一の接着層46,第二の接着層48,第三の接着層50は、互いに同じものを採用することも可能であるが、それら第一〜三の接着層46,48,50による固着力を相互に異ならせることも可能である。例えば、第一の接着層46による補助板本体20と研磨パッド16(クッション層38)との固着力を、第二の接着層48によるクッション層38と研磨層36との固着力に比して大きくすることにより、図2に示されているように、補助板本体20に固着されたクッション層38を残したまま研磨層36をクッション層38から取り外す作業を容易に行うことが可能とされる。これにより、例えばクッション層38を再利用しつつ磨耗した研磨層36だけを交換する等の作業を容易に行うことも可能になる。更に、図2に示されているように、第二の接着層48のクッション層38への固着力を、第二の接着層48の研磨層36への固着力よりも大きく設定することにより、研磨層36の脱着に際して第二の接着層48をクッション層38側に残して再利用することも可能である。
【0050】
なお、第一の接着層46,第二の接着層48,第三の接着層50の各被着面への固着力は、接着剤の材質や量、被着面の材質、被着面の面粗さの調節やプラズマ処理などによる面性状の設定などによって適宜に且つ相対的に調節することが可能である。また、第一の接着層46,第二の接着層48,第三の接着層50の各接着面を剥離後に再利用するに際しては、必要に応じて、クリーニングや接着剤の追加などが行われ得る。更にまた、本発明では、第一の固着手段,第二の固着手段,第三の固着手段として、例示の如き接着層の他、粘着剤を用いた粘着層を採用することも可能であり、更に、負圧エア等を利用した負圧吸引や、永久磁石又は電磁石を利用した磁力吸引なども採用可能である。例えば負圧吸引や電磁石では、固着力をON/OFFしたり変更調節することが容易である。
【0051】
上述の如き構造とされた研磨装置12は、特定構造の研磨パッド用補助板10を備えていることにより、以下の如き特別な技術的効果を発揮し得る。
【0052】
先ず、図1に示されている如き研磨パッド16の装着状態下で、研磨パッド16の上方からスラリー等を供給しつつ回転定盤14を回転駆動させてウェハ等の研磨対象に押し付けることでCMPを実施する際、研磨パッド16のクッション層38へのスラリー等の含浸が効果的に防止され得る。即ち、クッション層38の裏面は、全面に亘ってパッド装着凹所32の底面(補助板本体20の上面)22により直接に又は第一の接着層46を介して覆われていると共に、クッション層38の外周面は、全面に亘って補助板本体20の装着凹所32の周壁内面44に対して重ね合わされて覆われている。それ故、研磨処理に際して、クッション層38の表面へのスラリー等の接触が可及的に防止されて、クッション層38へのスラリー等の含浸が抑えられる。
【0053】
なお、クッション層38の外周面に対して補助板本体20の装着凹所32の周壁内面44が当接状態で密着されている場合だけでなく、僅かな隙間を隔てて重ね合わされている場合でも、スラリー等の表面張力や隙間に残存する空気などにより、かかる隙間へのスラリー等の侵入が防止されて、クッション層38へのスラリー等の含浸抑制効果が発揮され得る。かかる隙間の大きさは、スラリー等の組成や温度などにもよるが、例えば1mm以下が望ましく、好適には0.8mm以下、更に好適には0.5mm以下とされる。また、スラリー等が水性の場合には、クッション層38や補助板本体20の少なくとも表面を疎水性とすること等により、隙間へのスラリー等の侵入を一層効果的に防止することが可能になる。
【0054】
特に、本実施形態では、補助板本体20の上側周壁28により、クッション層38へのスラリー等含浸を防止する外周防浸手段が直接に構成されていることから、特別な防浸部材を別途に設ける必要がなく、構造の簡略化と部品点数の減少が達成され得る。
【0055】
そして、このようにクッション層38へのスラリー等含浸が抑えられることにより、研磨処理に際してのクッション層38の性状ひいては研磨パッド16の研磨性能の安定化が図られ、目的とするCMP処理を一層安定した精度で行うことが可能となるのである。また、CMP処理を間欠的に行ったり、研磨層36の再生処理を行ったりすることで、同じ研磨パッド16を再使用してCMP処理を行う際にも、クッション層38へのスラリー等含浸が抑えられることにより、所期の性能が安定して維持され得ることとなる。
【0056】
また、補助板本体20を採用したことにより、研磨パッド16を補助板本体20で支持させたままで、第三の接着層50を引き剥がすことにより、研磨パッド16を回転定盤14から取り外すことが出来る。そして、回転定盤14から取り外した研磨パッド16の表面(研磨面)をクリーニングや再加工等する場合でも、研磨パッド16を補助板本体20の上面22に固着させたままで行うことが出来る。これにより、回転定盤14に対する研磨パッド16の着脱の際や、研磨パッド16のクリーニングや再加工の際などは勿論、研磨パッド16の移送時や保存時等においても、補助板本体20による補強作用により研磨パッド16の曲がりや損傷を防止できて、研磨パッド16を良好な状態に保つことが可能となる。
【0057】
更にまた、研磨パッド16を支持せしめた補助板本体20を、回転定盤14に再装着する際にも、補助板本体20の定盤装着凹所34の回転定盤14への嵌合作用に基づいて、補助板本体20ひいては研磨パッド16を、回転定盤14に対して容易に且つ精度良く中心軸合わせして装着することができるのである。
【0058】
さらに、本実施形態の補助板本体20では、上側周壁28や下側周壁30が補強カラーとして機能し、外周部分ひいては補助板本体20全体の強度向上が図られている。それ故、補助板本体20の剛性や強度を確保しつつ、補助板本体20を軽量化および薄肉化することが可能であり、また補助板本体20の材料選択可能範囲も大きく確保され得る。
【0059】
また、研磨パッド16を補助板本体20に支持させたままの状態で回転定盤14に対する研磨パッド16の着脱を行うことにより、研磨パッド16の回転定盤14に対する着脱を容易に行うことができることから、特別な熟練や知識がなくとも研磨パッド16の再利用が実用レベルで実現可能となる。即ち、例えば、基板等の被研磨物の品種切り替え等に際して一旦回転定盤14から外した研磨パッド16を再利用したり、劣化対策として別の加工装置で表面溝入れ等の再加工するのに一旦回転定盤14から取り外した研磨パッド16を再加工後に再利用したりすることなども、実用化レベルで検討することが可能となるのである。
【0060】
以上、本発明の第一の実施形態について説明してきたが、本発明の具体的構造はかかる第一の実施形態によって限定的に解釈されるものでない。補助板本体20を利用して実現される別構造の防浸手段を備えた、本発明の別の実施形態の複数を以下に例示するが、これらの実施形態も本発明の構成を限定的に示すものでない。なお、以下の実施形態において、第一の実施形態と同様な構造とされた部材および部位については、それぞれ、第一の実施形態と同一の符号を各図中の対応する部位に記載することにより、それらの詳細な説明を省略する。
【0061】
図4には、本発明の第二の実施形態としての研磨パッド用補助板60を備えた研磨装置が示されている。
【0062】
この研磨パッド用補助板60においては、上側周壁28の内周面で構成された周壁内面44とクッション層38との重ね合わせ面である径方向対向面間の隙間の上方への開口部分に対して封止材62が組み付けられている。この封止材62は、周方向に連続して全周に亘って設けられており、それによって、上側周壁28とクッション層38との間の隙間の開口部が覆蓋されている。
【0063】
なお、封止材62としては、Oリング等の弾性材が好適であり、発泡性のシール材やゲル状の充填剤等であっても良い。また、かかる封止材62を安定して装着可能とすると共に、封止材62に安定した予圧縮を与えてシール性向上を図るために、図4に示されているように、研磨パッド用補助板60の上側周壁28において、内周面に開口する周溝64を形成し、この周溝64に封止材62を嵌め入れて配設することが望ましい。
【0064】
すなわち、本実施形態では、クッション層38へのスラリー等含浸を防止する防浸手段が、研磨パッド用補助板60の上側周壁28だけでなく封止材62を組み合わせて構成されている。そして、このような封止材62で上側周壁28とクッション層38との間の隙間へのスラリー等の侵入ひいてはクッション層38へのスラリー等含浸が一層効果的に防止されることとなる。
【0065】
図5には、本発明の第三の実施形態としての研磨パッド用補助板66を備えた研磨装置が示されている。
【0066】
本実施形態の研磨パッド用補助板66では、研磨パッド16においてクッション層38と研磨層36を固着させる第二の接着層48を利用して、上側周壁28とクッション層38との重ね合わせ面である径方向対向面間の隙間の上方への開口部分を覆う封止材68が構成されている。具体的には、第二の接着層48が、研磨パッド16の外径寸法よりも大きな外径寸法で形成されて、研磨パッド16の外周面上に所定幅で全周に亘って突出されることにより、円環形状の封止材68が構成されている。なお、かかる封止材68としては、スラリー等の遮断性能を得るために、遮水性に優れた基材シートの両面に接着剤や粘着剤を付着させた構造のものが好適に採用される。
【0067】
従って、本態様の研磨パッド用補助板66でも、第二の実施形態と同様に、封止材68によりクッション層38へのスラリー等含浸が一層効果的に防止され得る。特に、第二の実施形態に比して、封止材68を別部材として準備する必要がなく、部品点数の減少と構造の簡略化が図られ得る。また、第二の接着層48で構成された封止材68の下面を、研磨パッド用補助板66の上側周壁28の上端面へ固着させることにより、封止材68に予圧縮を及ぼすことなく隙間への高度なシール性を実現することが可能となる。
【0068】
図6には、本発明の第四の実施形態としての研磨パッド用補助板70を備えた研磨装置が示されている。
【0069】
本実施形態の研磨パッド用補助板70では、上側周壁が形成されておらず、平坦な表面(上面)22が、研磨パッド16の重ね合わせ面を超えて外周側に広がっている。これにより、研磨パッド16の外周側で、所定幅をもって周方向に延びる円環形状の平坦なシール支持面72が、研磨パッド用補助板70に形成されている。そして、このシール支持面72を利用して、研磨パッド16のクッション層38の外周面をシールする防浸材としてのシール材74が設けられている。
【0070】
シール材74は、例えば樹脂系の粘着剤や接着剤であって、シール支持面72とクッション層38に対して密着し得るものが好適であり、例えばゴム系やアクリル系、シリコーン系、ウレタン系などの各種粘着剤が採用可能である。なお、シール支持面72に対して、シール材74が剥離可能であることが、研磨パッド用補助板70の再利用に好適である。シール材74は、下面を研磨パッド用補助板70のシール支持面72で支持されることにより、クッション層38の外周面を被覆した状態に安定して保持されて、クッション層38へのスラリー等の防浸手段を有利に実現し得る。特にシール材74が、無定形状で流動性のある材料で形成される場合でも、シール支持面72による支持作用で、クッション層38の外周面への被着状態に保持可能となる。
【0071】
図7には、本発明の第五の実施形態としての研磨パッド用補助板76を備えた研磨装置が示されている。
【0072】
本実施形態の研磨パッド用補助板76では、第四の実施形態におけるシール材74に代えて、筒状のシール部材78が用いられている。このシール部材78は、研磨パッド16におけるクッション層38の外周面に巻き付けられて密着状態で装着されている。かかるシール部材78としては、例えば粘着テープを研磨パッド16の外周面に巻き付けて形成しても良いし、或いは弾性の筒状体を研磨パッド16の外周面に密着状態で装着することなどによっても構成され得る。
【0073】
また、研磨パッド16の外周面に装着されたシール部材78は、その下端が研磨パッド用補助板70のシール支持面72に当接されて支持されることにより、クッション層38の外周面を被覆した状態へ正確に位置決めされると共に安定して保持されて、クッション層38へのスラリー等の防浸手段が効果的に実現され得る。
【0074】
図8には、本発明の第六の実施形態としての研磨パッド用補助板80を備えた研磨装置が示されている。
【0075】
本実施形態の研磨パッド用補助板80では、第五の実施形態におけるシール部材78に代えて、ゴム弾性体等の弾性材で形成された筒状のシール片82が用いられている。このシール片82は、下端の厚肉部から上方に向かって次第に薄肉とされた舌片状の断面形状で周方向の全周に亘って延びており、研磨パッド用補助板70のシール支持面72に形成された環状の支持溝84に対してシール片82の下端が嵌め込まれて固着されることにより、シール支持面72から上方に向かって突出して装着されている。また、シール支持面72の支持溝84は、研磨パッド16から外周側に僅かに離隔しており、シール片82が上方に向かって次第に内周側に傾斜せしめられて、シール片82の先端部分が研磨パッド16の外周面に対して押し付けられて密着されている。
【0076】
このように弾性材からなるシール片82を研磨パッド用補助板80で支持せしめて構成した外周防浸手段を採用することにより、例えば研磨パッド16を交換等した場合でも、研磨パッド用補助板80と共に外周防浸手段を繰り返して使用することも可能になる。また、シール片82の弾性変形により、研磨パッド16の外径寸法の僅かな相違に対しても容易に対応することが可能になる。
【0077】
図9には、本発明の第七の実施形態としての研磨パッド用補助板86を備えた研磨装置が示されている。
【0078】
本実施形態の研磨パッド用補助板86は、装着される研磨パッド16と略同じ外径寸法とされており、例えば前記第五の実施形態の研磨パッド用補助板76に比して研磨パッド16から外周側に突出する外周カラーが形成されていない。そして、第五の実施形態と同様に研磨パッド16の外周面に巻き付けられたシール部材78が研磨パッド16から下方まで延び出しており、クッション層38だけでなく研磨パッド用補助板86の外周面にまで密着状態で巻き付けられて装着されている。
【0079】
これにより、シール部材78は、変形可能なクッション層38だけでなく、硬質の研磨パッド用補助板86の外周面にも被着されることで、研磨パッド用補助板86を利用してシール部材78が安定して位置決め支持されており、クッション層38の防浸機能が安定して発揮され得る。要するに、本実施形態では、硬質の研磨パッド用補助板86におけるパッド支持面としての上面18の外周側部分であるパッド用補助板86の外周面で、シール部材78が支持されており、シール部材78とパッド用補助板86とを用いて外周防浸手段が構成されている。
【0080】
図10には、本発明の第八の実施形態としての研磨パッド用補助板90を備えた研磨装置が示されている。
【0081】
本実施形態の研磨パッド用補助板90は、第七の実施形態と同様に研磨パッド16と略同じ外径寸法とされているが、上下に分割された上側補助板92と下側補助板94とによって協働して研磨パッド用補助板90が構成されている。そして、これら上側補助板92と下側補助板94は、略全面に亘って相互に密着状態で重ね合わされており、重ね合わせ面間に配設された第四の固着手段としての第四の接着層96によって、相互に剥離可能に固着されている。なお、第四の接着層96は、前述の第一〜三の接着層46,48,50と同様に例えば両面テープ等で構成され得る。
【0082】
また、上側補助板92と下側補助板94の重ね合わせ面には、一方の側から他方の側に突出する位置決め凸部98と、かかる位置決め凸部98が嵌め込まれる位置決め凹部100が、互いに対応する位置に形成されている。そして、位置決め凸部98が位置決め凹部100に嵌め合わされることにより、上側補助板92と下側補助板94が、互いに同一中心軸上で位置合わせされるようになっている。なお、本実施形態では、位置決め凸部98および位置決め凹部100が、一定の断面形状で上下の補助板92,94の中心軸回りに延びる円環形状の突条および凹溝として形成されている。
【0083】
このような本実施形態では、例えば回転定盤14から研磨パッド16を取り外して再生加工等するに際して、かかる研磨パッド16を上側補助板92に固着されたままで、下側補助板94を回転定盤14上に残して取り外すことが出来る。これにより、研磨パッド16を回転定盤14に再装着する際に、上側補助板92と下側補助板94における位置決め凸部98と位置決め凹部100の位置合わせ作用により、回転定盤14に対して研磨パッド16を正確に且つ容易に中心軸合わせして装着することが可能となる。なお、本実施形態では上下補助板92,94において、中心軸合わせを可能とする構造を採用したが、研磨パッド16と補助板本体20、研磨層36とクッション層38等においても、中心軸合わせ可能な構造が採用可能であり、更に、中心軸合わせ可能な構造を2つ以上組み合わせる等してもよい。
【0084】
図11〜13には、本発明の第九の実施形態としての研磨パッド用補助板101を備えた研磨装置が示されている。
【0085】
本実施形態の研磨パッド用補助板101では、研磨パッド16の外周側に広がるシール支持面72上に、シール支持体102が配設されている。このシール支持体102は、研磨パッド16の外径寸法よりも大きな内径寸法と、研磨パッド16の上面の外径寸法と同じか僅かに小さい外径寸法を有する円環形状とされており、研磨パッド16のクッション層38と同じか僅かに大きな厚さ寸法とされている。そして、このシール支持体102の上面に載置されて両面テープ104等で固着されることにより、シール部材106が、シール支持体102を介して、パッド用補助板101で支持されて配設されている。
【0086】
シール部材106は、不透水性の合成樹脂等のプレートやシート材で形成されており、薄肉の円環板形状を有している。シール支持体102の上面に対して両面テープ108等で固着されることにより、シール部材106の内周部分が、周方向の全周に亘って、シール支持板102の上方で内周側に向かって庇状に突出せしめられている。この庇状に突出したシール部材106の内周縁部は、研磨パッド16の外径寸法よりも小さな内径寸法とされており、研磨パッド16の外周面に対して密接状態とされることにより、研磨パッド16の外周面とシール支持体102との間を流体密にシールするようになっている。
【0087】
特に本実施形態では、研磨パッド16の研磨層36において、外周面に開口して周方向の全周に亘って連続して延びる外周溝110が形成されている。そして、この外周溝110に対して、シール部材106の内周縁部が嵌め入れられることにより、シール部材106の内周縁部が研磨層36の外周面に対して密着状態に保持されている。
【0088】
なお、外周溝110の溝幅寸法は、シール部材106の厚さ寸法よりも僅かに小さくされることにより、シール部材106の内周縁部の外周溝110に対する嵌合力を利用して一層安定したシール性能を得ることが可能になる。また、シール部材106の内周縁部を外周溝110に嵌め込む作業を容易とするためには、シール部材106を周方向で分割構造としたり、周上の一カ所にスリット112を入れて分断させることで、シール部材106の拡径変形を許容することが好適である。
【0089】
なお、上述の図6図13に示された各実施形態において、研磨パッド用補助板と協働して外周防浸手段を構成するシール材74、シール部材78,106、シール片82は、クッション層38の外周面を全面に亘って覆うが、研磨層36の外周面において少なくとも研磨層36の表面(研磨面)42までは至らないことが望ましい。蓋し、研磨層36の表面42の再生処理などの加工に際して、外周防浸手段の存在が悪影響を及ぼすおそれがあるからである。
【0090】
研磨精度試験として、前記第四の実施形態において用いたシール材74を施した補助板を使用した場合と、シール材74を施していない補助板を用いた場合の、それぞれについて、以下の同一の試験条件で研磨パッドを再使用してCMP処理を行い、研磨精度を測定した。
【0091】
また、研磨精度の測定には、(A)新品パッドにシール(防浸)を施してある補助板と、(B)新品パッドにシール(防浸)を施していない補助板を使用した。研磨試験は、まず、(A),(B)の両方について、研磨作業を行い、研磨レートと標準偏差を求めた(研磨試験1)。研磨終了後、かかる研磨に使用した補助板(A),(B)を取り外して3分間の純水洗浄を行ってから48時間に亘る自然乾燥で充分に乾燥させた。その後、補助板(A),(B)を装着して、同じ研磨条件下で研磨作業を行い、研磨レートと標準偏差を求めた(研磨試験2)。
【0092】
[試験条件]
研磨装置:不二越機械工業株式会社製「RDP−500」(商品型番)
研磨対象:1.5μm銅膜付きのφ200mmシリコン基板
研磨パッド:ニッタ・ハース株式会社製「IC1000」(商品型番)
クッション層「SUBA400」(商品型番)
スラリー等:(株)フジミインコーポレーテッド製「PLANERLITE−7150」(商品型番)の研磨液1に対して、純水2を混合し、更に過酸化水素水(濃度30w/v%)を3v/v%混合したものを使用。(具体的には、例えば研磨液1L+純水2L+過酸化水素水90mlの混合物を使用。)
研磨条件:研磨試験1,2共に、研磨圧力105gf/cm2 、パッドと基板(研磨対象)の回転数は何れも140rpm、スラリー等供給量100ml/minで1分間研磨。
研磨精度の測定:研磨試験1,2共に、基板の銅膜の厚みを互いに直交する2方向の径線上において等間隔に17点で、膜厚計により研磨レートを実測した。それら17点の測定結果の標準偏差を用いて、研磨精度を把握した。
膜厚計:オクスフォード・インスツルメント(OXFORD INSTRUMENT)社製「CMI760N」(商品型番)
【0093】
[試験結果]
[研磨試験1]
(A)新品パッドにシール(防浸)を施してある補助板
研磨レート:0.59μm
研磨レートの標準偏差:0.06μm
(B)新品パッドにシール(防浸)を施していない補助板
研磨レート:0.60μm
研磨レートの標準偏差:0.06μm
[研磨試験2]
(A)使用済みパッドにシール(防浸)を施してある補助板
研磨レート:0.59μm
研磨レートの標準偏差:0.06μm
(B)使用済みパッドにシール(防浸)を施していない補助板
研磨レート:0.60μm
研磨レートの標準偏差:0.12μm
【0094】
上記の研磨試験1の試験結果においては、新品の研磨パッドを用いた1分間のみのCMP処理では、シール(防浸)の有無で明確な差異がないが、研磨試験2の結果からは、充分に乾燥させた研磨パッドであっても、シール(防浸)の有無で、研磨精度に明らかな差異が認められた。即ち、本発明の防浸手段を設けない補助板(B)では、クッション層38へのスラリー等含浸及びその後の乾燥により、クッション層38内部に浸み込んだスラリーの砥粒等が結晶化して硬度にむらが生じるものと考えられ、研磨の均一性が大きく悪化してしまい、研磨パッドの再使用が困難になる。一方、本発明の防浸手段を採用した補助板(A)では、新品の研磨パッドと同レベルの研磨精度が発揮されて研磨パッドの繰り返し使用が可能になる。
【0095】
なお、上述の補助板(A),(B)のそれぞれについて、CMP処理に伴うスラリー等の含浸量を実測したところ、以下の結果を得た。かかる結果から、シール材74における防浸手段によって、24gのスラリー等の含浸が抑えられていることが認められる。
[(A)新品パッドにシール(防浸)を施してある補助板]
研磨前重量:1974g
研磨後重量:1985g
含浸スラリー等重量:10g
[(B)新品パッドにシール(防浸)を施していない補助板]
研磨前重量:1974g
研磨後重量:2008g
含浸スラリー等重量:34g
【0096】
その他、一々列挙はしないが、本発明は当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良などを加えて実施することが可能であり、例えば、本発明の研磨パッド用補助板に装着された研磨パッドとしては、クッション層と研磨層が相互に分割剥離不能に形成されているものや、比較的硬質とされた含浸性のクッション層によって研磨面が構成されているもの、クッション層が厚さ方向の中間層として形成されたもの、複数層に分割されてクッション層が形成されたものなど、各種構造の研磨パッドが採用可能である。
【符号の説明】
【0097】
10,60,70,76,80,86,90,101:研磨パッド用補助板、12:研磨装置、14:回転定盤、16:研磨パッド、18:上面(間接的なパッド支持面)、20:補助板本体、22:表面(補助板本体上面)(直接的なパッド支持面)、32:パッド装着凹所、36:研磨層、38:クッション層、44:周壁内面、62,68:封止材
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