(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5789886
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】ガスコンロ
(51)【国際特許分類】
F23N 5/24 20060101AFI20150917BHJP
F23K 5/00 20060101ALI20150917BHJP
F23N 1/00 20060101ALI20150917BHJP
F23N 5/26 20060101ALI20150917BHJP
F24C 3/00 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
F23N5/24 101A
F23K5/00 301D
F23K5/00 304
F23N1/00 102D
F23N1/00 102B
F23N5/26 101B
F24C3/00 K
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-140998(P2013-140998)
(22)【出願日】2013年7月4日
(65)【公開番号】特開2015-14415(P2015-14415A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2014年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106105
【弁理士】
【氏名又は名称】打揚 洋次
(72)【発明者】
【氏名】稲山 浩哉
(72)【発明者】
【氏名】林 雄一
【審査官】
鈴木 貴雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−106338(JP,A)
【文献】
特開2010−014336(JP,A)
【文献】
特開2009−139009(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0238030(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23N 5/24
F23K 5/00
F23N 1/00
F23N 5/26
F24C 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスの供給管に1個の元弁を設け、この元弁の下流を複数のガスバーナの各々にガスを供給する並列な分岐管に分岐させると共に、各分岐管に電磁安全弁を設けて、各ガスバーナを個別に消火する際には電磁安全弁を閉弁するが、単独で燃焼中のガスバーナを消火する際には、電磁安全弁は開弁したままで上記元弁に閉弁指令を発し、この閉弁指令によってガスバーナを消火できない場合には電磁安全弁を閉弁させると共に以後の点火を禁止するガスコンロにおいて、上記元弁を、モータによって進退する可動電磁石と、この可動電磁石に吸着された状態で開弁保持される弁体と、可動電磁石による吸着力が消滅すると弁体を閉弁方向に駆動するバネとを備えたモータ安全弁で構成し、単独で燃焼中のガスバーナを消火する際には可動電磁石の吸着力を消滅させバネによって弁体を閉弁方向に駆動すると共に、バネによる駆動ではガスバーナが消火しない場合であって、モータによって可動電磁石を弁体側に移動させ可動電磁石で弁体を閉弁方向に押すことによってガスバーナが消火した場合には、以後の点火を禁止せず継続して使用を許可することを特徴とするガスコンロ。
【請求項2】
上記バネによる弁体の駆動ではガスバーナが消火しない場合にはエラー報知を行うと共に、以後の使用が許可され、次回の消火操作時にバネによる駆動でガスバーナが消火した場合には、エラー報知を解除することを特徴とする請求項1に記載のガスコンロ。
【請求項3】
バネによる弁体の駆動でガスバーナが消火しない状態が継続して所定回数生じた場合には、以後の点火を禁止することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガスコンロ。
【請求項4】
上記バネによる弁体の駆動でガスバーナが消火しなかった履歴をメモリに記録することを特徴とする上記請求項1から請求項3のいずれかに記載のガスコンロ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個のガスバーナを備えたガスコンロに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のガスコンロは、複数個のガスバーナの各々にガスを供給する分岐管が並列に設けられており、この分岐管は1本の元管から分岐されている。元管には元弁が設けられている。また、各分岐管には流量を増減して火力調節するための火力調節部の他に分岐管を閉鎖して対応するガスバーナへのガスの供給を遮断する電磁安全弁が設けられている。
【0003】
この電磁安全弁は内部に電磁石と、閉弁方向にバネで付勢された弁体とを備えている。開弁する際は外部からの力で弁体を電磁石側に移動させ、電磁石で弁体を吸着保持する。閉弁する際には電磁石への通電を停止させ吸着力を消滅させることにより、バネの付勢力で弁体を駆動して閉弁させる。
【0004】
複数のガスバーナが燃焼状態の場合に、個別にガスバーナを消火する際には、消火したいガスバーナにガスを供給している分岐管の電磁安全弁を閉弁させる。ただし、元弁に開弁故障、すなわち元弁に閉弁指令を発しても完全に閉弁しない故障が生じているかをチェックするため、いずれかのガスバーナが単独で燃焼している状態で、そのガスバーナを消火する際には、対応する電磁安全弁を閉弁させるのではなく元弁に閉弁指令を発し、その閉弁指令によってガスバーナが消火すれば、元弁に開弁故障が生じていないと判断するものが知られいている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このものでは、仮に元弁に開弁故障が生じていると判断した場合、すなわち、単独で燃焼しているガスバーナを消火する際に元弁に閉弁指令を発してもガスバーナが消火しない場合には、そのガスバーナに対応する電磁安全弁を閉弁させた後、以後の点火操作を一切禁止してガスコンロが使用できないように制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−14336号公報(段落[0020])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来のガスコンロでは、元弁に開弁故障が生じた場合にはそれ以降の点火を禁止するので安全上は問題ないが、それ以降ガスコンロを全く使用できないので、例えば調理中であったり調理前に点火禁止状態になると、点検修理を行って開弁故障が解消されるまで湯沸かしすらできないという不具合が生じる。
【0008】
ただし、元弁に開弁故障が生じた後も点火を許可し続ければ、ガスバーナへのガスの供給を遮断する手段が電磁安全弁だけになるため、直ちに危険ではないものの使用の継続を許容することはできない。
【0009】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、元弁に開弁故障が生じても安全性を確保しつつ使用を継続することのできるガスコンロを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明によるガスコンロは、ガスの供給管に1個の元弁を設け、この元弁の下流を複数のガスバーナの各々にガスを供給する並列な分岐管に分岐させると共に、各分岐管に電磁安全弁を設けて、各ガスバーナを個別に消火する際には電磁安全弁を閉弁するが、単独で燃焼中のガスバーナを消火する際には、電磁安全弁は開弁したままで上記元弁に閉弁指令を発し、この閉弁指令によってガスバーナを消火できない場合には電磁安全弁を閉弁させると共に以後の点火を禁止するガスコンロにおいて、上記元弁を、モータによって進退する可動電磁石と、この可動電磁石に吸着された状態で開弁保持される弁体と、可動電磁石による吸着力が消滅すると弁体を閉弁方向に駆動するバネとを備えたモータ安全弁で構成し、単独で燃焼中のガスバーナを消火する際には可動電磁石の吸着力を消滅させバネによって弁体を閉弁方向に駆動すると共に、バネによる駆動ではガスバーナが消火しない場合であって、モータによって可動電磁石を弁体側に移動させ可動電磁石で弁体を閉弁方向に押すことによってガスバーナが消火した場合には、以後の点火を禁止せず継続して使用を許可することを特徴とする。
【0011】
元弁に開弁故障が生じる場合とは、弁体と弁座との間にゴミなどが噛み込み、弁座に弁体が密着せず隙間が生じる場合や、弁体を吸着保持している電磁石への通電を停止して吸着力を消滅させても弁体が電磁石から離れない場合が考えられる。このような場合に可動電磁石を移動させて弁体を弁座に押し付ければガスを遮断できる場合がある。また、ゴミの噛み込みや弁体が電磁石から離れないという不具合がこのとき解消することも考えられる。そこで、可動電磁石で弁体を押すことによってガスを遮断できれば、開弁故障の原因が解消されなかったとしても再び可動電磁石で弁体を押すことによってガスを遮断できるので、それ以降の点火を禁止することなく、使用し続けるようにした。なお、開弁故障の原因が解消されればそれ以降は正常に使用し続けることができる。
【0012】
なお、上記バネによる弁体の駆動ではガスバーナが消火しない場合にはエラー報知を行うと共に、以後の使用が許可され、次回の消火操作時にバネによる駆動でガスバーナが消火した場合には、エラー報知を解除すれば、正常な状態に戻った状態でエラー報知がされ続けるという状態を解消することができる。
【0013】
ただし、可動電磁石を弁体に押し付けてガスの遮断ができたとしても開弁故障が依然として解消されない状態で使用し続けることは望ましくない。そこで、バネによる弁体の駆動でガスバーナが消火しない状態が継続して所定回数生じた場合には、以後の点火を禁止することが望ましい。
【0014】
なお、開弁故障が解消された状態で点検修理する際に、履歴が分かることが望ましい。そこで、上記バネによる弁体の駆動でガスバーナが消火しなかった履歴をメモリに記録することが望まれる。
【発明の効果】
【0015】
以上の説明から明らかなように、本発明は、元弁に開弁故障が生じても一律にそれ以降の点火を禁止せず、使用し続けることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1を参照して、1は本発明によるガスコンロであり、上面である天板には3個のガスバーナ、すなわち、大バーナ11、中バーナ12、小バーナ13が設けられている。そして、前面には中央のグリル庫を挟んで左右に点消火ボタン2が設けられている。この点消火ボタン2は、ガスバーナが消火状態ではガスコンロ1の前面に埋没しており、点火する際に少し押し込むと、ロックが解除されて前方に突出する。その突出によって図示しない点火スイッチがONになり、ガスバーナに点火される。点消火ボタン2を左右に回動すると火力が増減し、消火する際には点消火ボタン2をガスコンロ1の前面に押し込む。なお、10は電源スイッチである。
【0018】
図2を参照して、14はグリル部内に設けられているグリルバーナである。これら各バーナ11、12、13、14に各々ガスを供給する分岐管11a、12a、13a、14aが並列に設けられており、これら4本の分岐管11a、12a、13a、14aは全てモータ安全弁(元弁)4に連結されている。また、大バーナ11へガスを供給する分岐管11aを例に説明すると、この分岐管5には火力調節装置5が介設されている。この火力調節装置5内には上記点消火ボタン2の回動に連動して、分岐管11aを通って大バーナ11に供給されるガス量を増減する火力調節部51と、電磁安全弁52とが設けられている。
【0019】
この電磁安全弁52には電磁石と、この電磁石に吸着保持される弁体と、弁体を閉弁方向に付勢するバネとが設けられている。上記点消火ボタン2を埋没状態から一旦押し込んで点火操作を行うと、図示しないロッドがモータによって駆動され、そのロッドが弁体をバネの付勢力に抗して電磁石側に押し、弁体を電磁石に押し付ける。その状態で点火プラグ11bが発する火花によって大バーナ11が点火し、コントローラ3がその点火を熱電対31からの熱起電力により検知すると、電磁安全弁52の電磁石にコントローラ3から通電して弁体を吸着保持する。
【0020】
上記点消火ボタン2を押し込んで消火操作を行うと、コントローラ3は電磁安全弁52の電磁石への通電を停止する。すると電磁石の吸着力が消滅するので、弁体はバネの付勢力によって閉弁方向に駆動され、大バーナ11へのガスの供給を遮断する。なお、ガスの供給が遮断されると大バーナ11は消火し、コントローラ3は大バーナ11が消火したことを熱電対31の熱起電力の低下から検知する。
【0021】
図3を参照して、上記モータ安全弁4は上部に駆動コイル41とロータ42とからなるステッピングモータ部を備えている。駆動コイル41に駆動パルスを供給するとロータ42は正逆方向にパルス数に応じた角度回転する。ロータ42の中心にはロータ42に螺合するネジ棒43があり、ネジ棒43は回り止めされているので、ロータ42が回転することによりネジ棒43が上下に移動する。
【0022】
ネジ棒43の下端には可動電磁石44が取り付けられている。また、可動電磁石44の下方には弁体45が設けられており、弁体45と可動電磁石44との間には弁体45を弁口45aに向かって付勢するバネ46が設けられている。図示の状態では弁体45によって弁口45aが閉塞されているので、モータ安全弁4は閉弁状態にある。45bは弁体45に連結された可動鉄片である。
【0023】
その状態からロータ42を回転させて可動電磁石44を図において下方に移動させると、可動電磁石44は可動鉄片45bに当接し、さらに可動電磁石44を下げると弁体45は弁口45bに密着すると共に、可動電磁石44は可動鉄片45bに密着する。その状態で可動電磁石44に通電して励磁すると、可動鉄片45bは可動電磁石44に吸着される。そして可動電磁石44に通電したままロータ42を逆転させ可動電磁石44を引き上げると、可動鉄片45bが可動電磁石44に吸着保持されているので弁体45も一体となって引き上げられて弁口45aが開口する。すなわち、モータ安全弁4は開弁状態になる。そしてその開弁状態で可動電磁石44への通電を停止すると、バネ46の付勢力により弁体45は弁口45aに向かって駆動され、
図3に示す閉弁状態に戻る。
【0024】
図4を参照して、本図に示すフローは電源スイッチ10がオフの状態、すなわち全てのガスバーナが消火状態でモータ安全弁4及び全ての電磁安全弁(52およびその他)が閉弁している状態で、大バーナ11に点火し、その後消火する場合を示している。
【0025】
上記電源スイッチ10がONにされると(S1)、制御プログラム中に設定されている変数であるフラグFの値をコントローラ3内のメモリから読み出してくる。このメモリとはROMではなく、後述するEEPROMで有り書き込まれているFの値は逐次書き換えられるが、工場出荷時点に書き込まれている初期値はF=0である(S2)。Fを読み出した後、点消火ボタン2が押されて点火スイッチがONになるまで待機する。点火スイッチがONになると(S3)、電磁安全弁52を開弁すると共にモータ安全弁4を開弁させる(S4)。これにより大バーナ11にはガスが供給され、上記の点火プラグ11bによって大バーナ11に点火される。
【0026】
大バーナ11による調理が終了して点消火ボタン2が押し込まれると、点火スイッチがオフになる(S5)。他のガスバーナが点火状態であれば電磁安全弁52を閉弁させて大バーナ11のみを消火させるが、大バーナ11のみが点火されている状態で消火操作がされると、電磁安全弁52は開弁状態を維持したまま、モータ安全弁4の可動電磁石44への通電を停止してモータ安全弁4を閉弁させる(S6)。
【0027】
その動作によって大バーナ11が消火すればモータ安全弁4に開弁故障が生じていないと判断して(S7)、電磁安全弁52を閉弁させる(S8)。そして、次のステップでフラグFを0にリセットする。ただし、この状態ではF=0であるからFの値は変わらずF=0のままである(S9)。
【0028】
エラー報知を解除して(S10)ステップS3に戻るが、この時点ではエラー報知はされていないので、エラー報知を解除するステップS10が実行されても何ら状態は変化しない。
【0029】
次に、ステップS7に戻って説明を継続すると、モータ安全弁4の可動電磁石44への通電を停止しても大バーナ11が消火しないと、モータ安全弁4に開弁故障が生じたことになる。従来はここで直ちに電磁安全弁52を閉弁させて以後の点火を禁止したが、本発明ではロータ42を回転させて可動電磁石44を可動鉄片45bに向かって移動させる。そして、可動電磁石44で可動鉄片45bを押して弁体45を弁口45aに密着させる(S11)。
【0030】
この操作により大バーナ11が消火すれば、さらにガスコンロ1の継続使用を許可する(S12)。そして、次の点火に備えて電磁安全弁52を閉弁させたあと(S13)、Fに1を加え(S14)エラー報知を行う(S16)。なお、F=3であればステップS15からステップS18に流れるが、現時点ではF=1であるから、エラー報知をしたままの状態でステップS3に戻る。
【0031】
再度点火操作がされ、そして消火操作がされ(S5)、大バーナ11の消火が確認されると(S7)、前回モータ安全弁4に開弁故障が生じていたとしてもその開弁故障は解消したものとしてFを0に戻し(S9)、エラー報知を解除する(S10)。なお、ステップS12で消火が確認できない場合には従来と同じく電磁安全弁52を閉弁したあと(S17)、その後の使用を禁止することとした(S18)。
【0032】
また、ステップS12で消火が確認できた場合であっても、3回連続して開弁故障が生じると、ステップ14でF=3となるので、その後の使用を禁止することとした(S18)。そして、上述の履歴は全てコントローラ3に内蔵されたEEPROMに書き込み、後の点検修理時にその履歴を呼び出して参照できるようにした。また、上記のFの値が変化すると、変化する度にEEPROM内の値を更新していくので、EEPROM内には常に最新のFの値が格納されることになる。そして、EEPROMに格納されている履歴やFの値は電源スイッチがオフになっても保持される。
【0033】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【符号の説明】
【0034】
1 ガスコンロ
10 電源スイッチ
11 大バーナ
11a 分岐管
11b 点火プラグ
12 中バーナ
13 小バーナ
2 点消火ボタン
3 コントローラ
4 モータ安全弁
44 可動電磁石
45 弁体
46 バネ
5 火力調節装置
51 火力調節部
52 電磁安全弁