特許第5789995号(P5789995)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5789995
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】抄紙用原綿を梱包したベール梱包体
(51)【国際特許分類】
   D01F 6/62 20060101AFI20150917BHJP
   D21H 13/24 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   D01F6/62 302A
   D21H13/24
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-13602(P2011-13602)
(22)【出願日】2011年1月26日
(65)【公開番号】特開2012-153998(P2012-153998A)
(43)【公開日】2012年8月16日
【審査請求日】2014年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川端 隼仁
(72)【発明者】
【氏名】笠原 輝彦
【審査官】 久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−082939(JP,A)
【文献】 特開2009−062666(JP,A)
【文献】 特開2005−193929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 1/00−9/04
D02G 1/00−3/48
D02J 1/00−13/00
D21B 1/00−1/38
D21C 1/00−11/14
D21D 1/00−99/00
D21F 1/00−13/12
D21G 1/00−9/00
D21H 11/00−27/42
D21J 1/00−7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低度の捲縮が付与された短繊維からなる抄紙用原綿を梱包したベール梱包体であって、下記(1)〜(5)の特性を同時に満足し、充填された原綿の密度が180〜280kg/mであることを特徴とする抄紙用原綿を梱包したベール梱包体
(1)捲縮数1.0〜6.0山/25mm
(2)捲縮度1.0〜6.0%
(3)乾燥時の繊維間摩擦係数0.25〜0.50
(4)湿潤時の繊維間摩擦係数0.25以下
(5)繊維長5〜15mm
【請求項2】
短繊維の単糸繊度が0.1〜4.0dtexであることを特徴とする請求項1記載の抄紙用原綿を梱包したベール梱包体
【請求項3】
抄紙用原綿がポリエステル原綿であることを特徴とする請求項1又は2に記載の抄紙用原綿を梱包したベール梱包体
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抄紙用として優れた水中分散性とベール梱包性を併せ持ち、更にベール梱包状態にて長期に保管した後でも優れた水中分散性を保持することができる抄紙用原綿を梱包したベール梱包体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、抄紙用原料としては、天然セルロース、レーヨンなどが主に使用されてきたが、要求の高度化ならび用途の拡大に伴い、抄紙用原料の一部は、機械的特性、電気的特性、耐熱性ならび寸法安定性に優れたポリエステルやポリアミドに代表される合成繊維に置き換えられてきている。今後、産業構造の高度化に伴い、この傾向は急速に進むと考えられる。
【0003】
しかしながら、合成繊維の多くは元来疎水性であることから、抄紙時の水中分散性を良くする条件を探ることが必要である。抄紙時の水中分散性を良くするためには、水中への投入時に単糸同士が絡まらずにばらばらとなることが必要である。そこで、抄紙用原綿は原綿段階において単糸同士が絡まらないようにするため、捲縮のないストレート繊維であって、繊維長を5〜6mm程度のように短くする条件が採用されてきた。
【0004】
それでも不十分な水中分散性を向上させるために、各種処理剤を付着させることにより、繊維表面における水との親和性を向上させる改善方法が提案されている。例えば、特許文献1には特定のポリエステルポリエーテルブロック共重合体を表面に付着させることで水中分散性を改善させたポリエステル原綿について提案されている。また、特許文献2、特許文献3にはそれぞれ、ポリオキシプロピレン炭化水素と非イオン界面活性剤からなる処理剤、ポリエステルと高吸水性樹脂からなる処理剤が提案されており、これら処理剤を付着したポリエステル原綿は非常に優れた水中分散性を有している。
【0005】
しかしながら、これら従来のポリエステル原綿は繊維表面における平滑性が高いため、原綿の梱包手段として一般的に適用されている圧縮しシートで梱包する手段(以下、ベール梱包という)でもって梱包を行うことができない。即ち、ベール梱包では、圧縮ボックス内に原綿を充填・圧縮し、次いで該圧縮ボックスの扉を開放し、圧縮成型された原綿をシートで覆って梱包するが、前述したように抄紙用ポリエステル原綿は平滑性が高いため、圧縮ボックスの扉を開放した時に繊維が滑ってしまい、圧縮形態を保持することができず、梱包が不可能となる。このため、これら原綿はベール梱包ではなく、袋に詰めて出荷されている。このように袋詰めする場合、通常の原綿製造ラインと異なる設備が必要となるというデメリットだけでなく、袋詰めでは梱包できる原綿量がベール梱包体と比べて非常に少量であるので、梱包数が多くなり、作業面での負荷が大きいというデメリットもある。更に出荷に際してもベール梱包体のように積み重ねることが不可能なため、一度に大量の原綿を運搬できないことなど、工業生産上におけるデメリットが多い。
【0006】
以上のような状況から、ベール梱包可能な抄紙用ポリエステル原綿の開発が望まれていた。そこで、例えば特許文献4にはスルホン酸金属塩を有する化合物が共重合されたポリエステルポリエーテルブロック共重合体を表面に付着せしめたポリエステル原綿が提案され、特許文献5にはポリエステルポリエーテルブロック共重合体とポリペプチドとを含有する処理剤を表面に付着せしめたポリエステル原綿が提案されている。
【0007】
これら提案は共に、原綿の平滑性を緩和させることによってベール梱包を可能にしようとするものであるが、その他用途に用いられる原綿をベール梱包した梱包体と比べ梱包形状がいびつであり、運搬時に形状変化が起きやすく、荷崩れや横倒れなどのトラブルの原因となる。また、平滑性を緩和させるために水中分散性を犠牲にしているので、原綿の水中分散性が著しく悪化し、パルプやレーヨンなどの他繊維との混合抄紙や高い分散性を必要しない限定された用途にしか展開できない問題がある。
【0008】
更にベールでの梱包では、原綿が絶えず一定の圧がかかった状態となるため、ベール梱包した状態で長期保管すると原綿が押し締まりの状態となり、分散性が著しく悪化する。このため、他用途に用いられる梱包体と比べ、使用可能期間が極端に短いといった問題がある。これら問題のために、未だ、抄紙用原綿のベール梱包体は一部の特種な用途以外では実用化されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭58−208500号公報
【特許文献2】特開平03−193997号公報
【特許文献3】特開平07−189132号公報
【特許文献4】特開昭60−224899号公報
【特許文献5】特開平06−093567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記した従来技術における問題点を克服し、抄紙用に最適な水中分散性を保持しながらもベール梱包が可能であり、さらにベール梱包状態で長期保管しても良好な水中分散性を保持することができる抄紙用原綿を梱包したベール梱包体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、従来技術とは全く異なる着眼点によるアプローチによって上記目的を達成するものである。即ち、本発明の抄紙用原綿を梱包したベール梱包体は、低度の捲縮が付与された短繊維からなる抄紙用原綿を梱包したベール梱包体であって、かつ、下記(1)〜(5)の特性を同時に満たし、充填された原綿の密度が180〜280kg/mであることを特徴とするものである。
【0012】
(1)捲縮数1.0〜6.0山/25mm
(2)捲縮度1.0〜6.0%
(3)乾燥時の繊維間摩擦係数0.25〜0.50
(4)湿潤時の繊維間摩擦係数0.25以下
(5)繊維長5〜15m
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、水中分散性とベール梱包性とが共に良好であって実用化可能な抄紙用原綿及びそのベール梱包体を製造することができ、これにより通常の原綿製造・梱包ラインでもって抄紙用原綿のベール梱包体の生産が可能となる。更に、他用途の場合と同等の長期保管が可能となることから、展開可能な分野を飛躍的に広げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明の原綿を構成する繊維は、溶融紡糸して得られる合成繊維であり、即ちポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド等の繊維であるが、その中でもポリエステル繊維の適用が好ましい。
【0016】
ポリエステル繊維を構成するポリエステルとしては、テレフタル酸を主たる酸成分とし、エチレングリコールを主なるグリコール成分として得られるポリエチレンテレフタレート、1,3−プロパンジオールを主たるグリコール成分として得られるポリトリメチレンテレフタレート、1,4−ブタンジオールを主たるグリコール成分として得られるポリブチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステル、ならびに乳酸を繰り返し単位とするポリ乳酸などの脂肪族ポリエステルなどが例示される。
【0017】
また、他のポリエステル結合を形成可能な共重合成分を含むポリエステルであってもよい。共重合可能な化合物としては、例えばイソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ダイマ酸、セバシン酸などのジカルボン酸類、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコールなどのグリコール類などを挙げることができる。
【0018】
また必要に応じて、艶消し剤となる二酸化チタン、滑剤としてのシリカやアルミナの微粒子、抗酸化剤としてのヒンダードフェノール誘導体、着色顔料、安定剤、蛍光剤、抗菌剤、消臭剤、強化剤、難燃剤などを添加してもよい。
【0019】
本発明で用いられる抄紙用原綿は、従来技術では不可能な優れた水中分散性とベール梱包性を両立させるために、特定範囲内の低度の捲縮が付与された短繊維で構成することが必要である。即ち、本発明の抄紙用原綿を構成する短繊維は、捲縮数が1.0〜6.0山/25mmであり、好ましくは2.0〜4.0山/25mmである。捲縮度は1.0〜6.0%であり、好ましくは1.0〜4.0%である。また、繊維長は5〜15mmであり、好ましくは5〜10mmである。
【0020】
本発明における短繊維の捲縮数や捲縮度は、後述するように、JIS L−1015の方法により測定される値であって、短繊維の有する捲縮数や捲縮度の平均値として示される値である。
【0021】
本発明で用いられる原綿は、通常の捲縮付与された原綿に比べ低度の捲縮を持つものであり、この捲縮の程度は、前述した範囲内の捲縮数や捲縮度でもって特定される。
【0022】
また、抄紙用途では、繊維長が長いと原綿同士が絡まり易くなるため短繊維長のもの(例えば5〜6mm程度の繊維長の原綿)が好んで用いられ、繊維長は、長くても15mm程度である。このように短繊維長の抄紙用原綿において低度の捲縮が付与されている場合、原綿を構成する単糸に着目すると捲縮のある単糸と捲縮のない単糸が混在して原綿を構成することとなる。原綿中における単糸同士の絡まりを高めてベール梱包を可能とするためには捲縮数や捲縮度は大きい方が好ましい。しかし、水中での分散性を良好に保持するためには、捲縮数や捲縮度は小さい方が好ましい。そこで、本発明においては、水中での分散性を良好に保持しつつベール梱包性を高めるために、前述した特定水準の捲縮数及び捲縮度を有することが必要である。
【0023】
これに対し、その捲縮数が1.0山/25mm未満であると捲縮を有さない単糸の割合が多くなり過ぎるため原綿中における単糸同士の絡まりが不十分となり、ベール梱包時の圧縮ボックス解放時に圧縮形状の保持ができない。一方、捲縮数が6.0山/25mmを超える場合は、ほぼすべての単糸に捲縮が付与されているため、ベール梱包性は問題ないが、原綿の絡まりが強固となり過ぎて、水中分散性が悪化する。
【0024】
また、捲縮度が1.0%未満であるときは、捲縮が弱すぎるため、圧縮ボックス解放時に圧縮形状を維持するだけの絡まりを形成することができない。一方、6.0%を超える場合は原綿の絡まりが強固となり過ぎ、水中での分散性が悪化する。
【0025】
上記した特定水準の捲縮を付与する方法は特に限定されるものではないが、スタッファーボックスによる機械捲縮付与の場合、捲縮の程度を抑制する因子としてはスタッファーボックスに供給されるトウの温度、結晶性、配向性ならび押し込み圧力、延伸速度などが挙げられるが、本発明のように低捲縮繊維を安定して生産するためには、トウの結晶性や温度を制御する方法が好ましい。トウの結晶性は、延伸後の緊張熱処理の有無、その熱処理温度、延伸時の倍率や温度、紡糸時の引取り速度等を調整することにより制御でき、緊張熱処理をすることにより結晶性は高くなり、熱処理温度が高いほど結晶性は高くなる傾向にある。そして、結晶性が高いほど捲縮がかかり難くなるので、付与される捲縮数や捲縮度は小さくなる。また、トウの温度が高いほど捲縮がかかり易くなるので、延伸糸に通常の捲縮水準の捲縮を付与する場合にはトウ温度を70〜90℃程度の高温にすることが行われている。これに対し本発明で特定した低度の捲縮とするためには、延伸糸の場合、トウ温度を20〜50℃程度とすることが好ましく、未延伸糸の場合、20〜30℃程度とすることが好ましい。
【0026】
本発明における原綿の単糸繊度は0.1〜4.0dtexが好ましく、1.0〜3.5dtexがより好ましい。繊度0.1dtex未満である場合は、本発明で特定した範囲内の捲縮を付与させることは通常の技術では困難であり、4.0dtexを超える場合は、原綿の構成本数が少なく、ベール梱包性が悪化しやすい。
【0027】
また、原綿を構成する短繊維の繊維長は、5〜15mmが好ましく、5〜10mmがより好ましい。5mm未満であるときは捲縮を付与しても、十分な絡まりが得られないため、ベール梱包を行うことができない。一方、15mmを超える場合は、捲縮のないストレート原綿であっても、水中分散性が悪化する。
【0028】
本発明で用いられる抄紙用原綿は、水中分散性を向上させるために処理剤が原綿表面に付与されていることが好ましい。用いられる処理剤としては、具体的には、特開平3−193997号公報に記載されているポリオキシプロピレン炭化エーテルと非イオン界面活性剤からなる処理剤や、特開平7−189132号公報に記載されている低分子量ポリエステルとアクリル系高吸水樹脂からなる処理剤などが挙げられる。
【0029】
また、上記処理剤は抄紙工程以前であれば、どの工程で付与しても良いが、繊維を延伸した後に処理剤を付与し、その後に切断して原綿を製造する方法が効果的である。処理剤に原綿に対する付着量や処理剤の種類は、原綿の乾燥時の摩擦係数および湿潤状態での摩擦係数が所定範囲内となるように設定することが重要である。即ち、原綿の乾燥時の摩擦係数が0.25〜0.50、より好ましくは0.30〜0.40の範囲内となるように、かつ、湿潤状態での摩擦係数が0.25以下、より好ましくは0.15以下となるように付着させる。乾燥時の摩擦係数が0.25未満の場合、原綿が滑ってしまい、圧縮ボックス解放時に圧縮形状を維持することができない。一方、乾燥時の摩擦係数が0.50より大きいと、原綿同士の摩擦が大き過ぎて、圧縮ボックスに原綿を均一に封入することができない。このため、得られたベール中にて密度ムラが発生し、密度の大きい部分では強固な絡まりや押し締まりが発生し、分散不可能となる。湿潤状態での摩擦係数が0.25より大きいと水中での分散時に絡まりを十分に解舒することができない。
【0030】
更に、本発明で用いられる原綿をベール梱包してベール梱包体とする際は、梱包密度を180〜280kg/mとする事が重要であり梱包密度は好ましくは200〜250kg/mである。梱包密度が180kg/m未満であると圧縮ボックス解放時に圧縮形状を維持することができない。一方、梱包密度が280kg/mより大きいと圧縮時に過剰な圧力がかかるため、原綿同士が押し締まってしまい、水中にて分散できなくなる。本発明で採用する梱包密度は、従来の一般的な梱包密度よりも小さいものである。従来、梱包密度は運搬効率から可能な限り大きく設定されており、繊度や捲縮特性によっても異なるが、350kg/m以上であることが一般的である。
【実施例】
【0031】
以下に実施例により本発明をより具体的に説明する。本実施例で用いた特性の測定方法は以下の通りである。
【0032】
[繊度、繊維長、強度、伸度、捲縮数、捲縮度]
JIS L−1015(1999年改正)に示される方法により、繊度(dtex)、繊維長(mm)、強度(cN/dtex)、伸度(%)、捲縮数(山/25mm)、捲縮度(%)を測定する。
【0033】
[繊維間摩擦係数]
JIS L−1015(1999年改正)に示される方法により繊維間摩擦係数を測定する。なお、乾燥時の摩擦係数は100℃×30分乾燥させた原綿にて測定し、湿潤時の摩擦係数は、乾燥させた原綿の重量に対し10重量%の水を油剤が脱離しないように付与させて測定した。
【0034】
[水中分散性の評価]
300mlビーカーに150mlの水を入れ、0.05gの原綿を投入し、その後回転速度1000rpmにて1分間撹拌した後、吸引濾過を行い、濾紙上の原綿の分散状態を目視にて観察して評価する。評価基準は、分散性良好(○)、分散性不良(×)である。
【0035】
(実施例1)
固有粘度(IV)が0.65、融点260℃であるポリエチレンテレフタレートを160℃に設定した熱風乾燥機にて8.0時間乾燥した。乾燥したチップをプレッシャーメルター型紡糸機にて、紡糸温度300℃にて溶融紡糸し、この紡糸糸条を冷却、集束し、単糸繊度12dtexの未延伸糸条を製造した。得られた未延伸糸条を複数集合させて約80ktexのトウとし、90℃の温水浴中で3.8倍に延伸し、更にホットドラムにより200℃にて緊張熱処理を行った後、分散性処理剤(ポリエーテル・ポリエステル共重合ノニオン系界面活性剤)を原綿重量に対して0.25%となるようにローラータッチ方式にて付与させ、温度40℃に調整したトウをスタッファーボックス(押し込み圧1.0kg/cm)で機械捲縮を付与させた後、繊維長10mmに切断しポリエステル原綿を製造した。得られた原綿の物性は表1に示すとおりであり、水中分散性に優れたものであった。
【0036】
得られた原綿130kgを圧縮ボックス(長さ85cm×幅85cm)内に充填し、高さ85cmになるまで圧縮した。その後、圧縮ボックスの扉を開放し、約2分間その状態を保持し、形状変化を観察し、ベール梱包性を評価した(梱包性良好(○)、梱包性不良(×))ところ、梱包性良好であった。
【0037】
その後、ベール形状に梱包し、6ヶ月間保管した後に梱包を解き、原綿の水中分散性の評価を行ったところ、水中分散性に優れたものであった。
【0038】
(実施例2)
実施例1と同様に、同設備を用い、単糸繊度2.4dtexの未延伸糸を製造し、得られた未延伸糸条を複数集合させて約80ktexのトウとし、90℃の温水浴中で3.0倍に延伸し、更にホットドラムにより200℃にて緊張熱処理を行った後、分散性処理剤(ポリエーテル・ポリエステル共重合ノニオン系界面活性剤)を原綿重量に対して0.30%となるようにローラータッチ方式にて付与させ、温度を40℃に調整したトウをスタッファーボックスで機械捲縮を付与させた後、繊維長6mmに切断しポリエステル原綿を得た。得られた原綿の物性は表1に示すとおりであり、水中分散性に優れたものであった。
【0039】
得られた原綿130kgを圧縮ボックス(長さ85cm×幅85cm)内に充填し、高さ85cmになるまで圧縮した。その後、圧縮ボックスの扉を開放し、約2分間その状態を保持し、実施例1の場合と同様にベール梱包性を評価したところ、梱包性良好であった。
【0040】
その後、ベール形状に梱包し、6ヶ月間保管した後に梱包を解き、原綿の水中分散性(長期保管後の水中分散性)の評価を行ったところ、水中分散性に優れたものであった。
【0041】
(実施例3)
実施例1と同様に、同設備を用い、単糸繊度2.0dtexの未延伸糸条を製造し、得られた未延伸糸条に複数集合させて約80ktexのトウとし、分散性処理剤(ポリエーテル・ポリエステル共重合ノニオン系界面活性剤)を原綿重量に対して0.30%となるようにローラータッチ方式にて付与させ、常温のトウをスタッファーボックスで機械捲縮を付与させた。その後、繊維長5mmに切断しポリエステル原綿を製造した。得られた原綿の物性は表1に示すとおりであり、水中分散性に優れたものであった。
【0042】
得られた原綿130kgを圧縮ボックス(長さ85cm×幅85cm)内に充填し、高さ85cmになるまで圧縮した。その後、圧縮ボックスの扉を開放し、約2分間その状態を保持し、実施例1の場合と同様にベール梱包性を評価したところ、梱包性良好であった。
【0043】
その後、ベール形状に梱包し、6ヶ月間保管した後に梱包を解き、原綿の水中分散性の評価を行ったところ、水中分散性に優れたものであった。
【0044】
(実施例4)
実施例1と同様に、同設備を用い、単糸繊度2.4dtexの未延伸糸条を製造し、得られた未延伸糸条を約80ktexのトウとし、90℃の温水浴中で3.0倍に延伸し、更にホットドラムにより200℃にて緊張熱処理を行った後、分散性処理剤(ポリエーテル・ポリエステル共重合ノニオン系界面活性剤)を原綿重量に対して0.35%となるようにローラータッチ方式にて付与させ、温度を40℃に調整したトウをスタッファーボックスで機械捲縮を付与させた。その後、繊維長12mmに切断しポリエステル原綿を製造した。得られた原綿の物性は表1に示すとおりであり、水中分散性に優れたものであった。
【0045】
得られた原綿130kgを圧縮ボックス(長さ85cm×幅85cm)内に充填し、高さ85cmになるまで圧縮した。その後、圧縮ボックスの扉を開放し、約2分間その状態を保持し、実施例1の場合と同様にベール梱包性を評価したところ、梱包性良好であった。
【0046】
その後、ベール形状に梱包し、6ヶ月間保管した後に梱包を解き、原綿の水中分散性の評価を行ったところ、水中分散性に優れたものであった。
【0047】
(比較例1)
実施例1にて得られた未延伸糸を用い、スタッファーボックスに供給されるトウの温度を85℃に変更した以外は実施例1と同様の方法でポリエステル原綿を製造し、ベール梱包体を作製した。得られた原綿は水中分散性が劣っていた。
【0048】
(比較例2)
実施例1にて得られた未延伸糸を用い、スタッファーボックスでの機械捲縮付与を行わないこと以外は実施例1と同様の方法でポリエステル原綿を製造した。実施例1と同様にベール梱包しようとしたが、圧縮形態を維持できず、ベール梱包体とすることができなかった。
【0049】
(比較例3)
実施例1にて得られた未延伸糸を用い、繊維長を38mmに変更した以外は実施例1と同様の方法でポリエステル原綿を製造し、ベール梱包体を作製した。得られた原綿は水中分散性が劣っていた。
【0050】
(比較例4)
実施例1にて得られた未延伸糸を用い、分散性処理剤(ポリエーテル・ポリエステル共重合ノニオン系界面活性剤)の付着量を原綿重量に対して0.15%と変更した以外は実施例1と同様の方法でポリエステル原綿を製造し、ベール梱包体を作製した。得られた原綿は水中分散性が劣っていた。
【0051】
(比較例5)
実施例1にて得られた未延伸糸を用い、分散性処理剤(ポリエーテル・ポリエステル共重合ノニオン系界面活性剤)の付着量を原綿重量に対して0.60%と変更した以外は実施例1と同様の方法でポリエステル原綿を製造した。実施例1と同様にベール梱包しようとしたが、圧縮形態を維持できず、ベール梱包体とすることができなかった。
【0052】
(比較例6(請求項4発明の比較例))
実施例1にて得られた原綿200kgを圧縮ボックス(長さ85cm×幅85cm)内に充填し、高さ85cmになるまで圧縮した。その後、圧縮ボックスの扉を開放し、約2分間その状態を保持し、実施例1の場合と同様にベール梱包性を評価した。
【0053】
その後、ベール形状に梱包し、6ヶ月間保管した後に梱包を解き、原綿の水中分散性の評価を行ったところ、長期保管後には水中分散性が劣っていた。
【0054】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の抄紙用原綿は、従来技術によるベール梱包された抄紙用原綿とは異なり、通常の抄紙用原綿と同等の水中分散性を持つため、抄紙することにより地合に優れた湿式不織布を得ることができる。また、水中への分散性が良好であるため、単独でも抄紙可能であり、また、木材パルプ、レーヨンなどと混合抄紙することもできる。
【0056】
また、抄紙時に分散性を向上させる粘剤を添加する場合があるが、本発明の抄紙用原綿は水中分散性が非常に良好であるため、粘剤の使用なしに抄紙することができる。その結果、粘剤は濾水性の調整のみの使用となるため、工程管理上有利となる。