【実施例】
【0031】
以下に実施例により本発明をより具体的に説明する。本実施例で用いた特性の測定方法は以下の通りである。
【0032】
[繊度、繊維長、強度、伸度、捲縮数、捲縮度]
JIS L−1015(1999年改正)に示される方法により、繊度(dtex)、繊維長(mm)、強度(cN/dtex)、伸度(%)、捲縮数(山/25mm)、捲縮度(%)を測定する。
【0033】
[繊維間摩擦係数]
JIS L−1015(1999年改正)に示される方法により繊維間摩擦係数を測定する。なお、乾燥時の摩擦係数は100℃×30分乾燥させた原綿にて測定し、湿潤時の摩擦係数は、乾燥させた原綿の重量に対し10重量%の水を油剤が脱離しないように付与させて測定した。
【0034】
[水中分散性の評価]
300mlビーカーに150mlの水を入れ、0.05gの原綿を投入し、その後回転速度1000rpmにて1分間撹拌した後、吸引濾過を行い、濾紙上の原綿の分散状態を目視にて観察して評価する。評価基準は、分散性良好(○)、分散性不良(×)である。
【0035】
(実施例1)
固有粘度(IV)が0.65、融点260℃であるポリエチレンテレフタレートを160℃に設定した熱風乾燥機にて8.0時間乾燥した。乾燥したチップをプレッシャーメルター型紡糸機にて、紡糸温度300℃にて溶融紡糸し、この紡糸糸条を冷却、集束し、単糸繊度12dtexの未延伸糸条を製造した。得られた未延伸糸条を複数集合させて約80ktexのトウとし、90℃の温水浴中で3.8倍に延伸し、更にホットドラムにより200℃にて緊張熱処理を行った後、分散性処理剤(ポリエーテル・ポリエステル共重合ノニオン系界面活性剤)を原綿重量に対して0.25%となるようにローラータッチ方式にて付与させ、温度40℃に調整したトウをスタッファーボックス(押し込み圧1.0kg/cm
2)で機械捲縮を付与させた後、繊維長10mmに切断しポリエステル原綿を製造した。得られた原綿の物性は表1に示すとおりであり、水中分散性に優れたものであった。
【0036】
得られた原綿130kgを圧縮ボックス(長さ85cm×幅85cm)内に充填し、高さ85cmになるまで圧縮した。その後、圧縮ボックスの扉を開放し、約2分間その状態を保持し、形状変化を観察し、ベール梱包性を評価した(梱包性良好(○)、梱包性不良(×))ところ、梱包性良好であった。
【0037】
その後、ベール形状に梱包し、6ヶ月間保管した後に梱包を解き、原綿の水中分散性の評価を行ったところ、水中分散性に優れたものであった。
【0038】
(実施例2)
実施例1と同様に、同設備を用い、単糸繊度2.4dtexの未延伸糸を製造し、得られた未延伸糸条を複数集合させて約80ktexのトウとし、90℃の温水浴中で3.0倍に延伸し、更にホットドラムにより200℃にて緊張熱処理を行った後、分散性処理剤(ポリエーテル・ポリエステル共重合ノニオン系界面活性剤)を原綿重量に対して0.30%となるようにローラータッチ方式にて付与させ、温度を40℃に調整したトウをスタッファーボックスで機械捲縮を付与させた後、繊維長6mmに切断しポリエステル原綿を得た。得られた原綿の物性は表1に示すとおりであり、水中分散性に優れたものであった。
【0039】
得られた原綿130kgを圧縮ボックス(長さ85cm×幅85cm)内に充填し、高さ85cmになるまで圧縮した。その後、圧縮ボックスの扉を開放し、約2分間その状態を保持し、実施例1の場合と同様にベール梱包性を評価したところ、梱包性良好であった。
【0040】
その後、ベール形状に梱包し、6ヶ月間保管した後に梱包を解き、原綿の水中分散性(長期保管後の水中分散性)の評価を行ったところ、水中分散性に優れたものであった。
【0041】
(実施例3)
実施例1と同様に、同設備を用い、単糸繊度2.0dtexの未延伸糸条を製造し、得られた未延伸糸条に複数集合させて約80ktexのトウとし、分散性処理剤(ポリエーテル・ポリエステル共重合ノニオン系界面活性剤)を原綿重量に対して0.30%となるようにローラータッチ方式にて付与させ、常温のトウをスタッファーボックスで機械捲縮を付与させた。その後、繊維長5mmに切断しポリエステル原綿を製造した。得られた原綿の物性は表1に示すとおりであり、水中分散性に優れたものであった。
【0042】
得られた原綿130kgを圧縮ボックス(長さ85cm×幅85cm)内に充填し、高さ85cmになるまで圧縮した。その後、圧縮ボックスの扉を開放し、約2分間その状態を保持し、実施例1の場合と同様にベール梱包性を評価したところ、梱包性良好であった。
【0043】
その後、ベール形状に梱包し、6ヶ月間保管した後に梱包を解き、原綿の水中分散性の評価を行ったところ、水中分散性に優れたものであった。
【0044】
(実施例4)
実施例1と同様に、同設備を用い、単糸繊度2.4dtexの未延伸糸条を製造し、得られた未延伸糸条を約80ktexのトウとし、90℃の温水浴中で3.0倍に延伸し、更にホットドラムにより200℃にて緊張熱処理を行った後、分散性処理剤(ポリエーテル・ポリエステル共重合ノニオン系界面活性剤)を原綿重量に対して0.35%となるようにローラータッチ方式にて付与させ、温度を40℃に調整したトウをスタッファーボックスで機械捲縮を付与させた。その後、繊維長12mmに切断しポリエステル原綿を製造した。得られた原綿の物性は表1に示すとおりであり、水中分散性に優れたものであった。
【0045】
得られた原綿130kgを圧縮ボックス(長さ85cm×幅85cm)内に充填し、高さ85cmになるまで圧縮した。その後、圧縮ボックスの扉を開放し、約2分間その状態を保持し、実施例1の場合と同様にベール梱包性を評価したところ、梱包性良好であった。
【0046】
その後、ベール形状に梱包し、6ヶ月間保管した後に梱包を解き、原綿の水中分散性の評価を行ったところ、水中分散性に優れたものであった。
【0047】
(比較例1)
実施例1にて得られた未延伸糸を用い、スタッファーボックスに供給されるトウの温度を85℃に変更した以外は実施例1と同様の方法でポリエステル原綿を製造し、ベール梱包体を作製した。得られた原綿は水中分散性が劣っていた。
【0048】
(比較例2)
実施例1にて得られた未延伸糸を用い、スタッファーボックスでの機械捲縮付与を行わないこと以外は実施例1と同様の方法でポリエステル原綿を製造した。実施例1と同様にベール梱包しようとしたが、圧縮形態を維持できず、ベール梱包体とすることができなかった。
【0049】
(比較例3)
実施例1にて得られた未延伸糸を用い、繊維長を38mmに変更した以外は実施例1と同様の方法でポリエステル原綿を製造し、ベール梱包体を作製した。得られた原綿は水中分散性が劣っていた。
【0050】
(比較例4)
実施例1にて得られた未延伸糸を用い、分散性処理剤(ポリエーテル・ポリエステル共重合ノニオン系界面活性剤)の付着量を原綿重量に対して0.15%と変更した以外は実施例1と同様の方法でポリエステル原綿を製造し、ベール梱包体を作製した。得られた原綿は水中分散性が劣っていた。
【0051】
(比較例5)
実施例1にて得られた未延伸糸を用い、分散性処理剤(ポリエーテル・ポリエステル共重合ノニオン系界面活性剤)の付着量を原綿重量に対して0.60%と変更した以外は実施例1と同様の方法でポリエステル原綿を製造した。実施例1と同様にベール梱包しようとしたが、圧縮形態を維持できず、ベール梱包体とすることができなかった。
【0052】
(比較例6(請求項4発明の比較例))
実施例1にて得られた原綿200kgを圧縮ボックス(長さ85cm×幅85cm)内に充填し、高さ85cmになるまで圧縮した。その後、圧縮ボックスの扉を開放し、約2分間その状態を保持し、実施例1の場合と同様にベール梱包性を評価した。
【0053】
その後、ベール形状に梱包し、6ヶ月間保管した後に梱包を解き、原綿の水中分散性の評価を行ったところ、長期保管後には水中分散性が劣っていた。
【0054】
【表1】