(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記弾性部材は、前記レンズの光軸方向に直交する面内方向の力を増加させるように捩じられている、請求項1から4のいずれかに記載の光ピックアップのレンズ駆動機構。
【背景技術】
【0002】
従来、光ピックアップの中には、球面収差の補正を行う目的等でレンズ駆動機構を備えるものがある(例えば特許文献1〜3参照)。このレンズ駆動機構の具体例としては、例えば光ピックアップの光学系中に配置されるコリメートレンズを光軸方向に移動可能とするものが挙げられる。このレンズ駆動機構を備える光ピックアップでは、コリメートレンズの位置がレンズ駆動機構によって移動されることで、対物レンズに入射する光の収束発散状態が変更され、球面収差の補正が行われる。なお、ここでいう対物レンズは、光源から出射された光を光ディスクの情報記録面に集光するレンズのことである。
【0003】
図6は、従来の光ピックアップが備えるレンズ駆動機構の構成を示す概略斜視図である。従来の光ピックアップのレンズ駆動機構100は、光ピックアップを構成するベース(図示せず)上に配置される。なお、光ピックアップを構成するベースには、レンズ駆動機構100のほか、光源、光学部材、光検出器、対物レンズアクチュエータ、各種の回路基板等が取り付けられる。
【0004】
図6に示すように、レンズ駆動機構100は、ステッピングモータ1と、リードスクリュ2と、リードナット3と、レンズホルダ4と、ガイドシャフト5と、与圧バネ6と、リターンスプリング7と、を備える。
【0005】
ステッピングモータ1は、リードスクリュ2を回転する駆動源である。駆動源としてステッピングモータが用いられることで、リードスクリュ2の回転によって移動するレンズホルダ4の移動量を、ステップ数で管理することが可能になる。なお、レンズ駆動機構100は、レンズホルダ4が基準位置にあることを検知するフォトインタラプタ(図示せず)を備えている。そして、このフォトインタラプタからの情報とステッピングモータ1のステップ数とから、レンズホルダ4の位置を把握することが可能になっている。
【0006】
ステッピングモータ1の出力軸に取り付けられる金属製のリードスクリュ2には、螺旋状のネジが切られたネジ部2aが設けられている。なお、リードスクリュ2の両端部側には螺旋状のネジが切られていない部分が存在する。平面視(
図6のX方向に沿って見た場合を想定)略十字形状に設けられる樹脂製のリードナット3は、その略中央部に、内面にネジが切られた貫通孔を有し、リードスクリュ2のネジ部2aと螺合する。リードナット3は、リードスクリュ2が回転すると、自身は回転することなく、リードスクリュ3の長手方向(
図6のX方向が該当)に移動するように構成されている。なお、リードナット3は、レンズホルダ4よりもステッピングモータ1側に配置されている。
【0007】
レンズホルダ4は、コリメートレンズを保持するレンズ保持部4aを有する。また、レンズホルダ4は、リードナット3と当接可能となるように、レンズ保持部4aから延出する延出部4bを有する。延出部4bには、リードスクリュ2と略平行となるように配置されるガイドシャフト5が挿通される軸受け部4cが設けられている。この軸受け部4cに挿通するガイドシャフト5は、リードスクリュ2よりもレンズ保持部4a側に位置するように設けられている。
【0008】
また、レンズホルダ4は、レンズ保持部4aから延出部4bとは反対側に突出するガイド突起4dを有する。このガイド突起4dは、
図7に示すように、ベース110(光ピックアップを構成する部材)に設けられるガイド溝8と係合する。なお、
図7は、従来の光ピックアップが備えるレンズ駆動機構における、ガイド突起とガイド溝との関係を示す模式図である。
【0009】
レンズホルダ4は、その移動時には、軸受け部4cに挿通されるガイドシャフト5と、ガイド突起4dに係合するガイド溝8とにガイドされて移動する。なお、ガイドシャフト5とガイド溝8とによるガイド方向は、レンズホルダ4に保持されるコリメートレンズの光軸方向(
図6のX方向が該当)と一致している。
【0010】
ガイドシャフト5に遊嵌される与圧バネ(圧縮コイルバネ)6は、その一端がレンズホルダ4に当接し、他端が光ピックアップを構成するベース110の一部分に当接するようになっている。この与圧バネ6は、レンズホルダ4をそれが保持するコリメートレンズの光軸方向に付勢して、レンズホルダ4とリードナット3とが当接するようにしている。
【0011】
リードスクリュ2の回転により、リードナット3がステッピングモータ1から離れる方向に移動すると、レンズホルダ4は、リードナット3によって押される形で、与圧バネ6の付勢力に反してステッピングモータ1から離れる方向に移動する。一方、リードナット3がステッピングモータ1に近づく方向に移動すると、レンズホルダ4は与圧バネ6の付勢力によってリードナット3に当接しながらステッピングモータ1に近づく方向に移動する。
【0012】
リターンスプリング7は、ステッピングモータ1に近づく方向に移動するリードナット3がリードスクリュ2のネジ部2aから抜け落ちて、リードナット3が使用できなくなるのを防止するために設けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、以上のように構成される従来の光ピックアップのレンズ駆動機構100には次のような問題点がある。レンズホルダ4の軸受け部4cに設けられる挿通孔は、レンズホルダ4が滑らかに摺動できるようにガイドシャフト5(断面視円形)の直径よりも若干大きく設けられる。また、同様の目的で、レンズホルダ4のガイド突起4dに係合するガイド溝8も、
図7に示すようにガイド突起4dの厚みtよりも若干大きな幅(Z方向の長さ)を有するように設けられる。
【0015】
すなわち、従来の光ピックアップのレンズ駆動機構100は、コリメートレンズの光軸方向(
図6のX方向)に直交する面内方向(より詳細には
図6のY方向及びZ方向)に嵌合ガタを有する。このために、従来の光ピックアップのレンズ駆動機構100によってレンズホルダ4を移動する場合には、レンズホルダ4に保持されるコリメートレンズが、その光軸方向に直交する面内方向に位置ずれを起こし、光ピックアップの性能が劣化するという問題があった。
【0016】
なお、特許文献3においては、軸嵌合を用いたガイド構成において嵌合ガタを発生しない構成が開示される。しかしながら、特許文献3に開示される構成では、レンズホルダをガイド部材に付勢する付勢部材がナット部材と係合する構成となっている。近年の市場における光ピックアップの小型化の要求から、光ピックアップに備えられるレンズ駆動機構のサイズも小型化されることが望まれる。このため、レンズ駆動機構に備えられるナット部材は非常に小さいものとなりやすい。このようなことを考慮すると、特許文献3に開示されるナット部材と付勢部材とが係合する構成を採用する場合には、レンズ駆動機構の組み立て時の作業性が悪くなることが懸念される。
【0017】
以上の点に鑑みて、本発明の目的は、レンズを安定して駆動させることができる光ピックアップのレンズ駆動機構を提供することである。より詳細には、レンズをその光軸方向に移動可能とする光ピックアップのレンズ駆動機構において、レンズが光軸方向に移動する際に、光軸方向に直交する面内方向に位置ずれを起こし難い技術を提供することである。また、本発明の他の目的は、レンズを安定して駆動させることができるとともに、組み立て時の作業性が良い光ピックアップのレンズ駆動機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために本発明の光ピックアップのレンズ駆動機構は、光源と前記光源から出射される光を光記録媒体の情報記録面に集光する対物レンズとの間の光路中に配置されるレンズを、該レンズの光軸方向に移動可能とする光ピックアップのレンズ駆動機構であって、モータと、前記モータの駆動によって回転するリードスクリュと、前記リードスクリュのネジ部に螺合するナット部材と、前記レンズを保持し、前記リードスクリュの回転による前記ナット部材の移動とともに移動するレンズ保持部材と、前記レンズ保持部材が前記レンズの光軸方向に移動するようにガイドするガイド部と、前記レンズ保持部材を前記レンズの光軸方向へ付勢して前記ナット部材に当接させる力と、前記レンズの光軸方向に直交する面内方向の力と、を分力として発生させる弾性部材と、を備えることを特徴としている。
【0019】
本構成によれば、レンズ保持部材とナット部材との当接を維持する機能を発揮する弾性部材が、レンズの光軸方向に直交する面内方向の力をも発揮するように構成されている。このために、本構成のレンズ駆動機構によれば、レンズ保持部材とガイド部との間に生じる嵌合ガタを抑制してレンズを移動させることが可能になる。すなわち、本構成によれば、レンズ駆動機構によるレンズの移動に伴ってレンズの位置ずれが生じる可能性が低く、光ピックアップの性能を向上させることができる。
【0020】
上記構成の光ピックアップのレンズ駆動機構において、前記レンズの光軸方向は、前記対物レンズの光軸方向と略直交するように設けられるのが好ましい。本構成のレンズ駆動機構は、薄型の光ピックアップに好適である。そして、この構成においては、前記レンズの光軸方向に直交する面内方向の力は、前記対物レンズの光軸方向に略平行な方向に力を生じさせる第1の分力と、前記対物レンズの光軸方向に略直交する方向に力を生じさせる第2の分力とに分けられるのが好ましい。このように構成することにより、ガイド部の形成に要するコストを低コストとしつつ(例えば、Dシャフト等の特別なシャフトを使用しなくて済む)、レンズの駆動を安定して行える(レンズの駆動時にレンズの位置ずれを生じさせない)レンズ駆動機構を提供できる。
【0021】
上記構成の光ピックアップのレンズ駆動機構において、前記弾性部材は、前記レンズの光軸方向に直交する面内方向の力を増加させるように捩じられているのが好ましい。本構成によれば、例えば弾性部材としてバネを選択する場合に、バネ定数が比較的小さいバネを使用でき、レンズ駆動機構を組み立てる際の作業性を良好とし易い。
【0022】
上記構成の光ピックアップのレンズ駆動機構において、前記弾性部材は引張りバネであるのが好ましい。本発明においては、弾性部材として例えば圧縮バネを選択することも可能である。ただし、圧縮バネを用いる場合には、レンズ駆動機構の組み立て時において、バネの撓み等によって作業性が低下しやすい。この点、本構成のように弾性部材として引張りバネを用いると、上記撓みを気にすることなくレンズ駆動機構の組み立てを行える。
【0023】
上記構成の光ピックアップのレンズ駆動機構において、前記レンズはコリメートレンズであることとしてもよい。球面収差を補正する目的で、コリメートレンズがその光軸方向に移動可能とされる光ピックアップに対して、本発明は好適である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、レンズをその光軸方向に移動可能とする光ピックアップのレンズ駆動機構において、レンズが光軸方向に移動する際に、光軸方向に直交する面内方向に位置ずれを起こし難い技術を安価に提供できる。また、本発明によれば、レンズを安定して駆動させることができるとともに、組み立て時の作業性が良い光ピックアップのレンズ駆動機構を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明が適用された光ピックアップの実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態の光ピックアップは、ブルーレイディスク(BD)、デジタル多用途ディスク(DVD)、コンパクトディスク(CD)といった3種類の規格の光ディスク(光記録媒体の一例)に対して情報の読み取りや書き込みを行うことが可能となっている。
【0027】
図1は、本実施形態の光ピックアップ10の外観構成を示す概略斜視図である。光ピックアップ10を構成するピックアップベース101には、光源、光学部材、本発明のレンズ駆動機構、対物レンズアクチュエータ、光検出器(これらについては後述する)が搭載される。また、ピックアップベース101には、光ピックアップ10の動作を制御する上で必要となる各種の回路基板や配線部材等も取り付けられる。
【0028】
なお、ピックアップベース101の左右の端部には軸受け部101a、101bが設けられている。ピックアップベース101は、この軸受け部101a、101bによって、光ディスク装置(光ディスクの再生や記録を行うための装置)に設けられるガイドシャフト(図示せず)に摺動可能に支持されることになる。そして、ガイドシャフトに対して摺動可能に設けられる光ピックアップ10は、回転する光ディスクの所望のアドレスにアクセスして情報の読み取りや書き込みを行うことが可能となる。
【0029】
図2は、本実施形態の光ピックアップ10の光学構成を示す概略平面図である。光ピックアップ10には、第1の半導体レーザ11から出射される光を光ディスクの情報記録面に導くとともに、情報記録面で反射される反射光(戻り光)を光検出器23に導く、BD用の光路が形成されている。また、光ピックアップ10には、第2の半導体レーザ18から出射される光を光ディスクの情報記録面に導くとともに、情報記録面で反射される反射光(戻り光)を光検出器23に導く、DVD及びCD用の光路が形成されている。
【0030】
なお、光ピックアップ10においては、複数の光学部材が、BD用の光路と、DVD及びCD用の光路とで共用される構成となっている。このような構成を採用しているため、光ピックアップ10は、BD、DVD、及び、CDに対応する光ピックアップを少ない部品点数で形成可能となっている。
【0031】
まず、BD用の光路について説明する。第1の半導体レーザ11は、BD用のレーザ光(例えば波長405nm帯のレーザ光)を出射可能となっている。第1の半導体レーザ11から出射されたレーザ光は、回折素子12によって主光と2つの副光とに分けられる。回折素子12を経たレーザ光は偏光ビームスプリッタ13によって反射され、1/4波長板14及びコリメートレンズ15を透過する。コリメートレンズ15を透過したレーザ光は、第1の立ち上げミラー16によって反射されて、第1の立ち上げミラー16の上方にある第1の対物レンズ17へと至る。
【0032】
第1の対物レンズ17は、入射したレーザ光を光ディスクの情報記録面に集光する機能を有する。第1の対物レンズ17によって情報記録面に集光されたレーザ光は、情報記録面で反射される。この反射光(戻り光)は、第1の対物レンズ17を通過後、第1の立ち上げミラー16で反射され、コリメートレンズ15、1/4波長板14、偏光ビームスプリッタ13、ビームスプリッタ19を順に透過する。そして、ビームスプリッタ19を透過した戻り光は、センサーレンズ22によって非点収差を与えられて光検出器23の所定の受光領域に集光される。
【0033】
光検出器23は、受光した光信号を電気信号に変換する光電変換手段として機能する。光検出器23から出力された電気信号は図示しない信号処理部に送られ、この信号処理部で、再生信号、フォーカスエラー(FE)信号、トラッキングエラー(TE)信号等が生成される。
【0034】
次に、DVD及びCD用の光路について説明する。第2の半導体レーザ18は、DVD用のレーザ光(例えば波長650nm帯のレーザ光)とCD用のレーザ光(例えば波長780nm帯のレーザ光)とを切り換えて出射可能となっている。すなわち、第2の半導体レーザ18は2種類の光源を含む構成となっている。このようなレーザ光源は、例えばモノリシックタイプ或いはハイブリッドタイプの2波長レーザによって構成できる。
【0035】
第2の半導体レーザ18から出射されたレーザ光は、ビームスプリッタ19によって反射され、その後、偏光ビームスプリッタ13、1/4波長板14、コリメートレンズ15、及び、第1の立ち上げミラー16を順に透過する。第1の立ち上げミラー16を透過したレーザ光は、第2の立ち上げミラー20によって反射されて、第2の立ち上げミラー20の上方にある第2の対物レンズ21へと至る。
【0036】
なお、偏光ビームスプリッタ13は、BD用のレーザ光に作用する光学部材であり、DVD用のレーザ光及びCD用のレーザ光は、偏光状態に関係なく透過する。また、第1の立ち上げミラー16はダイクロイックミラーであり、BD用のレーザ光は反射されるが、DVD用のレーザ光及びCD用のレーザ光は透過可能となっている。
【0037】
第2の対物レンズ21は、入射したレーザ光を光ディスクの情報記録面に集光する機能を有する。第2の対物レンズ21によって情報記録面に集光されたレーザ光は、情報記録面で反射される。この反射光(戻り光)は、第2の対物レンズ21を通過後、第2の立ち上げミラー20で反射され、第1の立ち上げミラー16、コリメートレンズ15、1/4波長板14、偏光ビームスプリッタ13、ビームスプリッタ19を順に透過する。そして、ビームスプリッタ19を透過した戻り光は、センサーレンズ22によって非点収差を与えられて光検出器23の所定の受光領域に集光される。
【0038】
BD対応の場合と同様に、光検出器23から出力された電気信号は図示しない信号処理部に送られ、この信号処理部で、再生信号、FE信号、TE信号等が生成される。
【0039】
なお、コリメートレンズ15は、詳細は後述するレンズ駆動機構によって、その光軸方向(
図2のX方向)に移動可能となっている。そして、コリメートレンズ15の位置は、対応する光ディスク種の変更やレイヤージャンプ等に応じて適宜移動される。このようにコリメートレンズ15を移動可能とするのは、対物レンズ17、21に入射する光の収束・発散度合いを調節して、球面収差の影響を適切に抑制できるようにするためである。特に、BDにおいては情報記録面を厚み方向に複数有する多層ディスクが一般的である。このため、BD対応の場合にはレイヤージャンプが行われるのが一般的であり、その際に球面収差を適切に補正することが必要になる。コリメートレンズ15は、本発明のレンズ駆動機構によって移動されるレンズの一例である。
【0040】
また、第1の対物レンズ17及び第2の対物レンズ21は、ピックアップベース101に取り付けられる対物レンズアクチュエータ30(
図1参照)に搭載された状態で、ピックアップベース101に搭載されることになる。対物レンズアクチュエータ30は、光ピックアップ10に備えられる2つの対物レンズ17、21をフォーカス方向(
図1のZ方向が該当)及びトラッキング方向(
図1のY方向が該当)に移動可能とする装置である。
【0041】
光ピックアップ10においては、情報の読み取りや書き込みを行う際に、第1の対物レンズ17(或いは第2の対物レンズ21)の焦点位置が常に光ディスクの情報記録面に合うようにフォーカシング制御を行う必要がある。また、光ピックアップ10においては、情報の読み取りや書き込みを行う際に、第1の対物レンズ17(或いは第2の対物レンズ21)によって光ディスクの情報記録面に集光される光スポットの位置が、光ディスクのトラックに常に追随するようにトラッキング制御を行う必要がある。対物レンズアクチュエータ30は、例えば、これらフォーカシング制御及びトラッキング制御を行う際に駆動される。
【0042】
対物レンズアクチュエータ30は、対物レンズ17、21を保持するレンズホルダ31を有し、レンズホルダ31をワイヤ32で揺動可能に支持する構成のものである。そして、コイル及び磁石を利用して発生させた力でレンズホルダ31(すなわち対物レンズ17、21)を動かすものである。このようなタイプの対物レンズアクチュエータは公知であるので、ここでは、詳細な説明は省略する。
【0043】
図3は、本実施形態の光ピックアップ10が備えるレンズ駆動機構40の構成を示す概略平面図で、
図3(a)は上面図、
図3(b)は
図3(a)の矢印A方向に沿って見た側面図である。なお、ピックアップベース101に設けられる光ピックアップ10のレンズ駆動機構40は、
図1の破線領域に内蔵される。
【0044】
光ピックアップ1のレンズ駆動機構40は、上述した従来のレンズ駆動機構100(
図6及び
図7参照)と概ね同様である。このために、その構成が従来のレンズ駆動機構100と重複する部分については同一の符号を付し、特に必要がない場合には、その説明を省略する。
【0045】
図3に示すように、レンズ駆動機構40は、従来のレンズ駆動機構100に備えられる与圧バネ(圧縮コイルバネ)6を有さず、その代わりに引張りバネ9を有する点で異なる。
【0046】
なお、ステッピングモータ1は本発明のモータの一例である。ステッピングモータ1の代わりに、例えばDCモータを用いてもよい。この場合には、例えばエンコーダを利用することでレンズホルダ4の位置を把握可能である。また、リードスクリュ2は本発明のリードスクリュの一例である。また、リードナット3は本発明のナット部材の一例である。本実施形態ではリードナット3は平面視(
図3のX方向に沿って見ること想定)略十字形状となっているが、その形状は適宜変更可能である。また、レンズホルダ4は本発明のレンズ保持部材の一例である。レンズホルダ4の形状についても、光ピックアップ10における光学レイアウトに合わせて適宜変更してよい。
【0047】
また、ガイドシャフト5、及び、ガイド溝8(ピックアップベース101に設けられる)は本発明のガイド部の一例である。ガイドシャフト5とガイド溝8によってガイド部を形成する代わりに、例えば2本のガイドシャフトによってガイド部を構成しても構わない。また、リターンスプリング7は設けるのが好ましいが、場合によっては設けなくてもよい。
【0048】
本発明の弾性部材の一例である引張りバネ9は、一端がレンズホルダ4の端部(レンズ保持部4aが設けられる側と反対側の端部)に設けられる第1のフック部4eに取り付けられる。また、引張りバネ9は、他端がピックアップベース101に設けられる第2のフック部101cに取り付けられている。
【0049】
図3に示すように、第1のフック部4eと第2のフック部101cとは、X方向に間隔(レンズホルダ4の移動とともに第1のフック部4eがピックアップベース101に対して動くために、その大きさは変動する)をあけて配置されている。ただし、
図3に示すように、第1のフック部4eと第2のフック部101cとは、X方向について同一直線上に配置される関係にはない。
【0050】
図3(a)に示すように、第2のフック部101cは、第1のフック部4eに対してY方向にずれた(詳細にはレンズホルダ4から離れる側にずれた)位置に設けられている。また、
図3(b)に示すように、第2のフック部101cは、第1のフック部4eに対してZ方向にずれた(詳細には上側にずれた)位置に設けられている。このため、第1のフック部4e及び第2のフック部101cに取り付けられた引張りバネ9のバネ力の作用ベクトルは、コリメートレンズ15の光軸方向(レンズホルダ4の移動方向に同じ;
図3のX方向)とは非平行となっている。
【0051】
図4は、レンズホルダ4の第1のフック部4eに引張りバネ9が及ぼすバネ力について説明するための模式図である。
図4に示す力Fは、引張りバネ9のバネ力の作用ベクトルを表している。このバネ力Fは、コリメートレンズ15の光軸方向(X方向)の力(分力α)と、コリメートレンズ15の光軸方向に直交する面内方向の力と、に分けられる。そして、コリメートレンズ15の光軸方向に直交する面内方向の力は、Y方向の力(分力β)と、Z方向の力(分力γ)とに分けられる。
【0052】
なお、光ピックアップ1においては、コリメートレンズ15の光軸方向(X方向)と、対物レンズ17、21の光軸方向(Z方向)とは略直交する関係にある。分力γは本発明の第1の分力(対物レンズ17、21の光軸方向に略平行な方向に力を生じさせる)の一例であり、分力βは本発明の第2の分力(対物レンズ17、21の光軸方向に略直交する方向に力を生じさせる)の一例である。
【0053】
引張りバネ9が発生させる分力αにより、レンズホルダ4はコリメートレンズ15の光軸方向に付勢され、レンズホルダ4とリードナット3とが当接した状態が得られる。これにより、リードナット3の移動に伴って、レンズホルダ4をステッピングモータ1に近づく方向及びステッピングモータ1から離れる方向に安定して移動可能となる。すなわち、この分力αは、従来のレンズ駆動機構100における与圧バネ6と同一の作用を与える。
【0054】
また、引張りバネ9が発生させる分力βは水平方向に発生するために、ガイドシャフト5とレンズホルダ4の軸受け部4cとの間の嵌合ガタに由来するレンズホルダ4(コリメートレンズ15)の位置ずれを抑制できる。更に、引張りバネ9が発生させる分力γは上下方向に発生する。このために、分力γにより、ガイドシャフト5とレンズホルダ4の軸受け部4cとの間の嵌合ガタ、及び、レンズホルダ4のガイド突起4dとピックアップベース101に設けられるガイド溝8との間の嵌合ガタ(
図7参照)に由来するコリメートレンズ15の位置ずれを抑制できる。
【0055】
図5は、本実施形態のレンズ駆動機構40における、コリメートレンズ15の位置(レンズホルダ4の位置)と分力の大きさとの関係を示したグラフである。
図5において、コリメートレンズ15の位置は、その可動範囲内においてコリメートレンズ15がステッピングモータ1から最も離れた位置をゼロ(原点)としている。なお、
図3(a)は、コリメートレンズ15が原点位置にある場合の状態を示している。
【0056】
引張りバネ9のバネ力Fはコリメートレンズ15の位置(レンズホルダ4の位置)によって変動する。コリメートレンズ15の可動範囲内において、レンズホルダ4がステッピングモータ1から離れる程、引張りバネ9のバネ力は大きくなる。逆に、レンズホルダ4がステッピングモータ1に近づく程、引張りバネ9のバネ力は小さくなる。このために、バネ力Fの分力α、β、γも
図5に示すように変動する。
【0057】
コリメートレンズ15が原点から離れた状態(レンズホルダ4がステッピングモータ1に近づいた状態)において、分力αがあまりに小さくなるとリードナット3の動きにレンズホルダ4が追随しない可能性がある。このために、コリメートレンズ15の可動範囲内において、分力αがあまり小さくならないように注意する必要がある。
【0058】
また、コリメートレンズ15の可動範囲内において、分力αを大きくすることばかりに注力して分力β及び分力γがあまりに小さくなると、嵌合ガタに由来するコリメートレンズ15の位置ずれを十分抑制できなくなる。このために、コリメートレンズ15の可動範囲内において、分力β及び分力γもあまりにも小さくならないように注意する必要がある。
【0059】
以上のような点を注意して、引張りバネ9のバネ定数や、第1のフック部4eと第2のフック部101cとの位置関係等を決定する必要がある。この決定の方法は、例えば光ピックアップ1の再生性能等を指標に実験的に決める手法でも、シミュレーションによって決める手法でもよい。
【0060】
なお、本実施形態のレンズ駆動機構40では、ガイドシャフト5と軸受け部4cとの間で発生する嵌合ガタに比べて、ガイド突起4dとガイド溝8との間に発生する嵌合ガタの方が大きい。このために、ガイド突起4dとガイド溝8との間に発生する嵌合ガタに由来するコリメートレンズ15の位置ずれを適切に抑制できるように、分力βに比べて分力γが大きくなるようにしている。
【0061】
また、本実施形態のレンズ駆動機構40のように、引張りバネ9のバネ力を分力して使用する場合には、各分力α〜γの大きさを十分確保するために引張りバネ9のバネ定数を比較的大きなものとする必要がある。ただし、引張りバネ9のバネ定数をあまり大きなものとすると、例えば引張りバネ9の取り付け作業が行い難くなることがある。この点を考慮して、本実施形態のレンズ駆動機構40では、引張りバネ9は、ほぼ90°捩じられた状態でフック部4e、101cに取り付けている。引張りバネ9の捩じり方向は、引張りバネ9が捩じられた状態から元の状態に戻ろうとする復元力で、分力β及び分力γが大きくなる方向とされている。これにより、分力β及び分力γの発生力を比較的小さなものとできるために、引張りバネ9のバネ定数をあまり大きくせずに済む。
【0062】
なお、本実施形態では引張りバネ9の捩じり角を90°としているが、これは一例であり、捩じり角は適宜変更してよい。
【0063】
以上のように構成される光ピックアップ10では、レンズ駆動機構40によるコリメートレンズ15の駆動時に、嵌合ガタが原因となってコリメートレンズ15が位置ずれを起こす可能性が小さくできる。このために、本実施形態の光ピックアップ10では、再生性能の向上等が期待できる。また、本実施形態の光ピックアップ10では、光学設計にマージンが見込める等の利点も有する。
【0064】
以上に示した実施形態は本発明の一例であり、本発明の光ピックアップのレンズ駆動機構は以上に示した構成に限定されるものではない。
【0065】
例えば、以上に示した実施形態では、レンズホルダ4をコリメートレンズ15の光軸方向に付勢してリードナット3に当接させる分力(分力α)と、コリメートレンズ15の光軸方向に直交する面内方向の分力(分力β及び分力γ)と、を発生させる弾性部材が引張りバネ9である構成とした。しかし、本発明はこの構成に限定されるものではなく、前記弾性部材は圧縮バネ等でもよいし、バネでなくゴム等であっても構わない。
【0066】
また、以上に示した実施形態では、引張りバネ9のバネ力Fが分力α、分力β、分力γの3つの力に分けられる構成とした。しかし、本発明はこの構成に限られず、場合によっては、引張りバネ9のバネ力Fが、分力αと分力β、或いは、分力αと分力γ、といった2つの力に分けられる構成であっても構わない。例えば、レンズ駆動機構40が備えるガイド部に断面視D字型のシャフト(Dシャフト)を使用する等して、ガタの発生方向が主に一方向となるように構成される場合には、上述の引張りバネ9のバネ力Fが上記した2つの方向に分力される構成も有効である。
【0067】
また、以上に示した本実施形態では、レンズ駆動機構40をピックアップベース101に直接取り付ける構成とした。しかし、この構成に限らず、レンズ駆動機構40を専用に搭載するベース部材を設ける構成とし、レンズ駆動機構を搭載したベース部材をピックアップベース101に取り付ける構成としても構わない。
【0068】
また、本実施形態では、レンズ駆動機構40によって移動されるレンズがコリメートレンズであることとした。しかし、これに限らず、他のレンズを移動するレンズ駆動機構に対しても、当然本発明は適用できる。例えば、球面収差の補正を行うためにビームエキスパンダーが使用される場合に、これに対して本発明のレンズ駆動機構を適用できる。
【0069】
また、以上に示した実施形態では、光ピックアップ1が備える対物レンズの数を2つとしたが、この対物レンズの数は1つであっても構わない(この場合は、光学構成も本実施形態の場合から変更される)。
【0070】
また、以上に示した実施形態では、光ピックアップはBD、DVD、CDに対応する構成とした。しかしながら、本発明の光ピックアップのレンズ駆動機構は、光ピックアップが対応可能な光ディスクの種類が、本実施形態で示したもの以外の場合(対応可能な光ディスクの種類が複数の場合ばかりでなく単数の場合も含む)でも適用できるのは当然である。