【実施例1】
【0026】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。まず、本実施の形態の構成を説明する。
図1は、本発明の実施例1のスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。
【0027】
ローサイドのスイッチング素子Q1は、本発明の第1スイッチ素子に対応する。また、ハイサイドのスイッチング素子Q2は、本発明の第2スイッチ素子に対応する。これらのスイッチング素子Q1,Q2は、例えばMOSFETである。スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2とが直列に接続された直列回路は、本発明の第1直列回路に対応し、直流電源の両端に接続されている。ただし、本実施例における直流電源とは、商用交流電源を全波整流し、平滑コンデンサで平滑することで得られた直流電圧を出力する電源回路により構成されるものであり、抵抗R1,R2からなる直列回路の両端に直流電圧を出力している。
【0028】
また、共振コンデンサCiと共振リアクトルLrとトランスT1の1次巻線Lpとが直列に接続された直列回路は、本発明の第2直列回路に対応する。ここで、共振リアクトルLrは、トランスT1の1次巻線Lpのリーケージインダクタンス(漏れインダクタンス)により構成されてもよい。また、スイッチング素子Q1には電圧共振コンデンサCvが並列に接続されている。本発明の第2直列回路は、第1スイッチ素子と第2スイッチ素子とのいずれか一方に並列に接続されるが、本実施例においては
図1に示すように、第1スイッチ素子(スイッチング素子Q1)に並列に接続されている。なお、第2直列回路が第2スイッチ素子に並列に接続される場合については後述する。
【0029】
ダイオードD1,D2と平滑コンデンサCoとによる直列回路は、本発明の整流平滑回路に対応し、トランスT1の二次巻線S1,S2に並列接続され、トランスT1の二次巻線S1,S2の電圧を整流平滑するものである。この整流平滑回路で得られた平滑コンデンサCoの直流電圧は、
図1に示すスイッチング電源装置の出力電圧となり、Outputから直流電力を供給する。
【0030】
また、
図1に記載のスイッチング電源装置は、制御回路10aを有している。この制御回路10aは、上述した整流平滑回路の出力電圧に基づいて、出力電圧が所定の値に保持されるようにスイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2とを交互にオン/オフさせる。
【0031】
具体的には、エラーアンプ20によって出力電圧が検出され、検出された出力電圧は、フォトカプラを介して一次側の制御回路10aのフィードバック端子(FB端子)に送られる。制御回路10aは、出力電圧に応じて内部の発振回路の発振周波数を調整し、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2とを交互にオン/オフさせる。これにより、制御回路10aは、共振コンデンサCiへの充放電期間を変化させ、トランスT1の2次側に誘導される電力量を制御する。
【0032】
ここで、スイッチング素子Q1は、LO端子電圧がLowの場合にオフし、LO端子電圧がHighの場合にオンする。また、スイッチング素子Q2は、HO端子電圧がLowの場合にオフし、HO端子電圧がHighの場合にオンする。
【0033】
コンデンサC1と抵抗ROCPとは、電流共振コンデンサCiに流れる電流を分流するためにコンデンサCiに並列に接続されており、消費電力の低減に資する。これらのコンデンサC1、及び抵抗ROCPは、本発明の電流検出部に対応し、第2直列回路に流れる電流を検出する。すなわち、第2直列回路を流れる電流は、共振コンデンサCiとコンデンサC1とにより分流される。その際にコンデンサC1に流れる電流は、共振コンデンサCiに流れる電流に比例しており、抵抗ROCPに流れる。
【0034】
図2は、本実施例のスイッチング電源装置における制御回路10aの中身の一部の構成を示すブロック図である。スイッチ22は、制御回路10a内部においてPL端子とCL端子との間に設けられ、LO端子電圧がLowの場合に閉じ、LO端子電圧がHighの場合に開く。このスイッチ22と、制御回路10aの外部においてCL端子に接続されたコンデンサC2とは、本発明の負荷電流抽出部に対応する。
【0035】
本発明の負荷電流抽出部は、第1スイッチ素子(スイッチング素子Q1)と第2スイッチ素子(スイッチング素子Q2)との少なくとも一方のオン期間に同期して、電流検出部により検出された電流を電圧信号に変換するとともに、電圧信号の電圧値を平均して負荷電流値を抽出する。
【0036】
本実施例においては、負荷電流抽出部は、第1スイッチ素子(スイッチング素子Q1)のオン期間に同期して、電流検出部により検出された電流を電圧信号に変換する。すなわち、負荷電流抽出部は、電流検出部により検出された電流を抵抗ROCPで電圧信号に変換したものを抵抗R3を介してPL端子から取り込み、スイッチング素子Q1のオン期間に同期してスイッチ22を開閉することで、スイッチング素子Q1のオン期間に同期した電圧信号をCL端子に出力する。
【0037】
したがって、CL端子に出力された電圧信号は、スイッチング素子Q1のオン期間に同期して、コンデンサC2に対し充放電を行う。これにより、CL端子電圧は、電圧信号を平均化したものとなる。すなわち、負荷電流抽出部は、電流検出部により検出された電流を電圧信号に変換する際に、正負の符号を含む形で電圧信号に変換し、整流することなく電圧信号の電圧値を平均して負荷電流値を抽出する。
【0038】
図2に示す基準電圧生成回路24、コンパレータ26、及び過電力保護回路28は、本発明の過電流保護部に対応し、負荷電流抽出部により抽出された負荷電流値に基づいて過電流保護動作を行う。ここで、過電流保護部の各構成について説明する。
【0039】
基準電圧生成回路24は、入力されたVsen電圧に基づいて第2基準電圧値を生成し、出力する。ここで、Vsen電圧は、入力電圧(直流電源の電圧)から生成される抵抗R1,R2の抵抗分割に応じた値の電圧である。言い換えると、基準電圧生成回路24は、直流電源の電圧値に基づいて第2基準電圧値を生成する。
【0040】
図3は、本実施例のスイッチング電源装置における基準電圧生成回路24の出力を示す図であり、入力されたVsen電圧に対して出力する第2基準電圧の電圧値を示している。基本的に、基準電圧生成回路24は、
図3に示すように、直流電源の電圧値の増加(Vsen電圧の増加)に対して第2基準電圧値を減少させ、直流電源の電圧値の減少(Vsen電圧の減少)に対して第2基準電圧値を増加させるような相補的な関係となる電圧を出力する。
【0041】
これは、1次側に流れる電流は入力電圧が高いと小さくなるので、Vsen電圧が高くなると第2基準電圧が小さくなるように基準電圧生成回路24が調整し、適切な過電流検出を行うことができるようにするためである。
【0042】
ただし、基準電圧生成回路24は、実際のスイッチング電源特性に合わせて非線形特性を持っていてもよく、例えば
図3(a)に示すように所定のVsen電圧値を境としてVsen電圧に対する第2基準電圧値の傾きを変化させてもよいし、
図3(b)に示すようにVsen電圧に対して第2基準電圧値が単純に負の傾斜を持たせるようにしてもよい。
【0043】
コンパレータ26は、基準電圧生成回路24により生成された第2基準電圧値とCL端子電圧とを比較し、CL端子電圧の電圧値が第2基準電圧値未満である場合にLowレベルの電圧を出力し、CL端子電圧の電圧値が第2基準電圧値以上である場合にHighレベルの電圧を出力する。
【0044】
過電力保護回路28は、コンパレータ26によりHighレベルの電圧が出力された場合に、過電流保護(過電力保護)動作を行う。過電力保護回路28による保護動作は、従来からある一般的な動作でよく、例えば発振を停止させて2次側への電力供給を停止してもよいし、発振周波数を強制的に上昇させて2次側への電力供給を制限してもよい。過電力保護回路28による具体的な動作は、本発明の本質的な部分ではなく、上述した方法に制限されるものではない。
【0045】
すなわち、過電流保護部は全体として、直流電源の電圧値に基づいて第2基準電圧値を生成し、負荷電流抽出部により抽出された負荷電流値(CL端子電圧値に相当)が第2基準電圧値以上である場合に過電流保護動作を行う。
【0046】
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。過電流が流れていない通常の動作は、
図7で説明した従来の装置と同様である。コンデンサC1と抵抗ROCPとは、上述したように第2直列回路に流れる電流を検出する電流検出部であり、本来共振コンデンサCiに流れる電流をコンデンサC1に分流し、抵抗ROCPにおいて電圧に変換する。
【0047】
本実施例における負荷電流抽出部は、第1スイッチ素子(スイッチング素子Q1)のオン期間に同期して、電流検出部により検出された電流を電圧信号に変換する。すなわち、負荷電流抽出部は、抵抗ROCPで電圧信号に変換したものを抵抗R3を介してPL端子から取り込み、スイッチング素子Q1のオン期間に同期してCL端子からコンデンサC2に対して充放電を行う。
【0048】
図4は、本実施例のスイッチング電源装置の動作を示す各部の波形図である。スイッチ22は、上述したようにLO端子電圧がLowの場合に閉じ、LO端子電圧がHighの場合に開く。したがって、抵抗R3に流れる電流は、
図4に示すようにスイッチング素子Q1がオンの期間にゼロとなり、スイッチング素子Q1がオフの期間に第2直列回路に流れる電流に応じた値となる。
【0049】
このようにローサイド側又はハイサイド側に波形を分けるのは、電流共振コンデンサCiに流れる電流は、ローサイドとハイサイドを合算するとゼロになるためである。本実施例におけるスイッチング電源装置は、ローサイド側MOSFET(スイッチング素子Q1)のゲート信号を用いている。
【0050】
図4に示すように、本実施例のスイッチング電源装置は、ローサイド側MOSFET(スイッチング素子Q1)のゲート信号がLowの時に、CL端子に接続されたコンデンサC2に、抵抗R3を通して充放電を行う。これにより、CL端子に対してマイナス方向から平均化を行う事ができる。
【0051】
すなわち、励磁電流(循環電流)は
図4に示すようにマイナス方向からプラス方向に流れているので相殺され、励磁電流(循環電流)分の影響を少なくする事ができ、負荷電流分のみがコンデンサC2に充電される。したがって、コンデンサC2に接続されたCL端子電圧は、2次側に送られる負荷電流値に基づいた値となる。
【0052】
このようにして、本実施例の負荷電流抽出部は、負荷電流分のみを抽出し、負荷電流値に対応した電圧をCL端子に出力することができる。
【0053】
コンパレータ26は、基準電圧生成回路24により生成された第2基準電圧値とCL端子電圧とを比較し、CL端子電圧の電圧値が第2基準電圧値未満である場合にLowレベルの電圧を出力し、CL端子電圧の電圧値が第2基準電圧値以上である場合にHighレベルの電圧を出力する。過電力保護回路28は、コンパレータ26によりHighレベルの電圧が出力された場合に、過電流保護(過電力保護)動作を行う。
【0054】
すなわち、過電流保護部は、直流電源の電圧値に基づいて第2基準電圧値を生成し、負荷電流抽出部により抽出された負荷電流値(CL端子電圧値に相当)が第2基準電圧値以上である場合に過電流保護動作を行う。
【0055】
上述のとおり、本発明の実施例1の形態に係るスイッチング電源装置によれば、小型化及び低コスト化のため1次側において過負荷保護を行うに際し、励磁電流(循環電流)の影響を抑えるとともに、広範囲な入力電圧に対応して安定した過負荷保護を行うことができる。
【0056】
すなわち、本実施例のスイッチング電源装置は、PFC無しで且つワールドワイド入力のように入力電圧が変化する場合においても対応することができ、基準電圧生成回路24が直流電源の電圧値に基づいて第2基準電圧値を生成するので、適切な検出スレッシュによる過電流検出を行うことができる。
【0057】
また、一次巻線Pに流れる電流が励磁電流(循環電流)と2次側への負荷電流の合計であり、入力電圧が高い場合に一次側負荷電流が少なくなるため励磁電流が占める割合が相対的に大きくなっても、負荷電流抽出部が励磁電流(循環電流)の影響を小さくして負荷電流値のみを抽出するので、本実施例のスイッチング電源装置は、適切に過電流検出を行うことができる。
【0058】
さらに、特許文献2に記載のスイッチング電源のように高価なカレントトランスを用いる必要がないため低コストで実現することができ、また1次側において過負荷保護を行うため、1次―2次間で信号伝達を行う必要がなく、各種安全距離を取得する必要がないので装置の小型化が期待できる。特に、1次制御回路と合わせてIC化すれば、設計が簡単で大幅なコストダウンが可能となる。
【0059】
なお、本発明を実現するに際し、過電流保護部は、必ずしも
図2に示す構成に限らない。
図5は、本実施例のスイッチング電源装置における制御回路10aの中身の一部の構成の別例を示すブロック図である。
【0060】
図5に示す振幅調整回路23、乗算回路25、コンパレータ26、及び過電力保護回路28は、本発明の過電流保護部に対応し、負荷電流抽出部により抽出された負荷電流値に基づいて過電流保護動作を行う。ここで、過電流保護部の各構成について説明する。
【0061】
振幅調整回路23は、入力されたVsen電圧を適切なスケールに調整する回路であり、特にIC化する際に電圧値をICの動作範囲内に収める役割を有する。この振幅調整回路23は、本発明の本質的部分には特に関係しない。
【0062】
乗算回路25は、CL端子電圧と振幅調整回路23により適切な振幅に調整されたVsen電圧とを乗算して出力する。ここで、CL端子電圧は、2次側に送られる負荷電流値に基づいているので、(CL端子電圧)×(Vsen電圧)=(2次側負荷電力に相似)ということができる。
【0063】
コンパレータ26は、第1基準電圧27と乗算回路25による出力電圧とを比較し、乗算回路25による出力電圧値が第1基準電圧値未満である場合にLowレベルの電圧を出力し、乗算回路25による出力電圧値が第1基準電圧値以上である場合にHighレベルの電圧を出力する。また、過電力保護回路28は、
図2の場合と同様である。
【0064】
すなわち、過電流保護部は全体として、負荷電流抽出部により抽出された負荷電流値(CL端子電圧値に相当)と直流電源の電圧値(Vsen電圧値に相当)とを乗算し、得られた乗算値が第1基準電圧27による第1基準電圧値以上である場合に過電流保護動作を行う。
【0065】
本実施例のスイッチング電源装置は、
図5に示すような過電流保護部を用いたとしても、
図2に示す過電流保護部と同様の効果を得ることができる。特に、乗算回路25による出力値が2次側負荷電力に相当するので、
図2の場合のように基準電圧生成回路24による第2基準電圧を適切に調整する必要が無く、過電流保護部は、得られた乗算値と固定値たる第1基準電圧値とを比較することにより、適切に過負荷保護動作を行うことができる。
【実施例2】
【0066】
図6は、本発明の実施例2のスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。
図1に示す実施例1のスイッチング電源装置の構成と異なる点は、共振回路の構成部品がハイサイド側MOSFETに変更されている点である。すなわち、本実施例において、共振コンデンサCiと共振リアクトルLrとトランスT1の1次巻線Lpとが直列に接続された直列回路(本発明の第2直列回路に対応)は、実施例1の場合と異なり、第2スイッチ素子(スイッチング素子Q2)に並列に接続されている。
【0067】
また、本実施例においては、分流コンデンサを使用しない代わりに、ローサイド側MOSFETのソース−GND間に電流検出用抵抗ROCPが設けられている。本実施例において、この抵抗ROCPは、本発明の電流検出部に対応し、第2直列回路に流れる電流を検出する。すなわち、第2直列回路を流れる電流は、スイッチング素子Q1を介して、抵抗ROCPに流れる。
【0068】
本実施例のスイッチング電源装置における制御回路10bの中身の一部の構成は、実施例1で説明した
図2あるいは
図5と同様でよい。ただし、スイッチ22は、LO端子電圧がLowの場合に開き、LO端子電圧がHighの場合に閉じる。このスイッチ22と、制御回路10bの外部においてCL端子に接続されたコンデンサC2とは、本発明の負荷電流抽出部に対応する。
【0069】
その他の構成は、実施例1と同様であり、重複した説明を省略する。
【0070】
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。基本的な動作は実施例1で説明したスイッチング電源装置と同様である。抵抗ROCPは、上述したように第2直列回路に流れる電流を検出する電流検出部であり、スイッチング素子Q1がオンしたときに共振コンデンサCiに流れる電流を抵抗ROCPにおいて電圧に変換する。
【0071】
本実施例における負荷電流抽出部は、第1スイッチ素子(スイッチング素子Q1)のオン期間に同期して、電流検出部により検出された電流を電圧信号に変換する。すなわち、負荷電流抽出部は、抵抗ROCPで電圧信号に変換したものを抵抗R3を介してPL端子から取り込み、スイッチング素子Q1のオン期間に同期してCL端子からコンデンサC2に対して充放電を行う。
【0072】
その他の作用は実施例1と同様であり、重複した説明を省略する。
【0073】
上述のとおり、本発明の実施例2の形態に係るスイッチング電源装置によれば、共振回路の構成部品がハイサイド側にある場合や、分流コンデンサを使用せずに電流検出用の抵抗ROCPがローサイド側MOSFETに直列に接続されているような場合であっても、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0074】
なお、抵抗ROCPの代わりにカレントトランスを代用した場合には、抵抗ROCPの電力損失を抑え、巻線間は低圧で済むため、特許文献2に記載のスイッチング電源装置のように1次−2次間耐圧は必要とせず、安価なものが使用できる。