特許第5790016号(P5790016)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5790016
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】ハイブリッド建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/08 20060101AFI20150917BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   E02F9/08 Z
   E02F9/00 C
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-33224(P2011-33224)
(22)【出願日】2011年2月18日
(65)【公開番号】特開2012-172332(P2012-172332A)
(43)【公開日】2012年9月10日
【審査請求日】2013年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】上田 浩司
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−021432(JP,A)
【文献】 特開2010−203160(JP,A)
【文献】 特開2011−020833(JP,A)
【文献】 特開2007−107230(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/015798(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
E02F 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体上に上部旋回体が旋回自在に搭載され、この上部旋回体の基台となるアッパーフレームの後部にエンジンルームが設けられるとともに、左右方向の中間部に前後方向に延びる左右の縦板が設けられ、この両縦板を挟んだ左右一側にキャビン、反対側にメンテナンスのための後上がりの昇降ステップがそれぞれ設けられる一方、両縦板の前部に作業アタッチメントのブームの下端部がブームフットピンによって取付けられ、かつ、ハイブリッド機器として、エンジンを駆動源として発電機作用と電動機作用とを行う発電電動機と、この発電電動機に電動機作用を行わせる電源となるとともに発電電動機の発電機作用等によって充電される蓄電器と、この蓄電器を電源として上記上部旋回体を旋回駆動する旋回電動機と、上記発電電動機、旋回電動機、蓄電器の動作を制御する制御器とを備えたハイブリッド建設機械において、上記蓄電器及び制御器を、階段状に形成した機器ケース内に格納し、この機器ケースを上記昇降ステップとして上記アッパーフレーム前部のキャビンと反対側に設置し
上記機器ケース内の蓄電器及び制御器を冷却するための冷却水入口及び冷却水出口を、上記機器ケースにおける上記縦板と対面する側面であって側面から見て縦板から外れた位置で機器ケースに設けたことを特徴とするハイブリッド建設機械。
【請求項2】
上記制御器として、発電電動機及び旋回電動機の作動を制御するインバータと、このインバータ及び上記蓄電器の充放電指令等の制御指令を出すハイブリッドコントローラとを備え、上記蓄電器、インバータ、ハイブリッドコントローラを、蓄電器が最下層となる状態で上記機器ケースに対応する階段状に積層して同ケース内に格納したことを特徴とする請求項1記載のハイブリッド建設機械。
【請求項3】
上記機器ケースを、上記ブームフットピンを同ピン軸方向に抜き差しするのに十分なピン挿脱空間が上記キャビンと反対側に確保される階段状に形成したことを特徴とする請求項1または2記載のハイブリッド建設機械。
【請求項4】
上記発電電動機及び旋回電動機と蓄電器とを接続する電力ケーブルを、上記機器ケースと、この機器ケースが配置された側の縦板との間の空間を通る経路で配線したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のハイブリッド建設機械。
【請求項5】
機器ケースにおける上記電力ケーブルの接続位置を上記縦板の上端よりも上方に設定したことを特徴とする請求項4記載のハイブリッド建設機械。
【請求項6】
上記冷却水入口及び出口を縦板の前部と後部に分けて、かつ、冷却水出口が冷却水入口よりも高位に位置する状態で機器ケースに設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のハイブリッド建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハイブリッド機器である蓄電器及び制御器のレイアウトを改良したハイブリッドショベル等のハイブリッド建設機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ショベルを例にとって背景技術を説明する。
【0003】
ショベルは、図6図8に示すようにクローラ式の下部走行体1上に上部旋回体2が、地面に対して鉛直となる軸のまわりに旋回自在に搭載され、この上部旋回体2の前部に、ブーム3、アーム4、バケット5、及びこれらを作動させる油圧シリンダ(ブーム、アーム、バケット各シリンダ)6,7,8を備えた作業アタッチメント9が装着されて構成される。
【0004】
上部旋回体2は基台としてのアッパーフレーム10を有し、このアッパーフレーム10の左右方向の中間部に左右の縦板11,12が間隔を置いてかつ前後方向のほぼ全長に亘って設けられている。
【0005】
この縦板11,12は前部が山形に突出する形状に形成され、この縦板前部にブーム3の下端部が縦板11,12を左右方向に水平に貫通するブームフットピン13によって回動可能に取付けられ、ブーム3(作業アタッチメント9全体)がこのブームフットピン13を中心として起伏作動する。
【0006】
また、アッパーフレーム10の後部に、メンテナンス用のボンネット14によって上面が開閉されるエンジンルーム15が設けられ、図7に示すようにこのエンジンルーム15に動力源としてのエンジン16と、エンジンまわりの機器類(ラジエータ17、冷却ファン18、油圧ポンプ19等)が設置される。
【0007】
一方、エンジンルーム15よりも前方において両縦板11,12を挟んだ左右一側(一般的には左側、以下、この場合で説明する)にキャビン20が設置されるとともに、反対側に燃料、作動油両タンク21,22が前後に並んで設置され、燃料タンク21の前方(アッパーフレーム右側前部)に、メンテナンス作業員がボンネット14(エンジンルーム15内の機器類)に向けて昇降するための後上がりの階段状でかつ中空状の昇降ステップ23が設けられている。
【0008】
なお、この明細書において「前後」「左右」は、キャビン20内に着座したオペレータから見た方向性をいう。
【0009】
また、図7,8は作業アタッチメント9を取外して示す。
【0010】
このショベルをハイブリッド方式として構成した場合の駆動系及び制御系のブロック構成を図9に示す。
【0011】
ハイブリッドショベルにおいては、上記ショベルの基本構成に加えて、ハイブリッド機器、すなわち、発電機作用と電動機作用を行う発電電動機24と、旋回駆動源としての旋回電動機25と、二次電池等の蓄電器26と、これらを制御する制御器27が設けられる。
【0012】
発電電動機24は、図7に示すように油圧ポンプ19と並んでエンジン16に接続され、エンジン16によって駆動される。
【0013】
油圧ポンプ19からの吐出油は制御弁(アクチュエータごとに設けられているが、ここでは複数の制御弁の集合体として示す)28を介して図6に示すブーム、アーム、バケット各シリンダ6〜8、及び図示しない左、右両走行用油圧モータ等の油圧アクチュエータ(一括符号「29」を付している)に供給され、この油圧アクチュエータ29が駆動される。
【0014】
旋回電動機25は、図6に示す旋回軸受30に臨んで設けられ(図7参照)、図示しない旋回歯車を駆動して上部旋回体2を旋回させる。
【0015】
発電電動機24及び旋回電動機25は、太線で示す電力ケーブル31…によって蓄電器26に接続される。
【0016】
また、発電電動機24、旋回電動機25、蓄電器26は、破線で示す信号ケーブル32によりインバータ33を介して、あるいは直接、ハイブリッドコントローラ34に接続される。
【0017】
すなわち、インバータ33とハイブリッドコントローラ34とによってハイブリッド用の制御器27が構成され、この制御器27により、発電電動機24の発電機作用と電動機作用の切換えや、発電電力あるいは電動機としての電流またはトルクの制御、発電電動機24の発電機出力の過不足に応じた蓄電器26の充放電制御、旋回電動機25の駆動/停止制御等、ハイブリッドショベルとして必要な各種制御が行われる。
【0018】
なお、他の制御器として、図示しない操作レバーの操作等に応じて、かつ、ハイブリッドコントローラ34と連携して制御弁28を制御するメカトロコントローラ35が設けられる。
【0019】
この構成において、油圧ポンプ19の必要動力が大きい場合には、蓄電器26の蓄電力により発電電動機24が電動機作用を行ってエンジン出力を補い、必要動力が小さい場合は発電電動機24が発電機作用を行って蓄電器26に蓄電する等、ハイブリッド方式本来の省エネルギー運転が行われる。
【0020】
従来、このようなハイブリッド式ショベルに搭載されるハイブリッド機器のうち蓄電器26及び制御器27(インバータ33、ハイブリッドコントローラ34)は、多くの場合、エンジンルーム15に配置されている(特許文献1,2参照)。あるいは、空きスペースを利用してアッパーフレーム各部に分散して配置する場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2007−107230
【特許文献2】WO2008/015798
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかし、元々、ショベルは小型化の要請が強いことからスペースに余裕がないため、通常ショベルと同等の車格で、ショベルの基本構成要素に加えてハイブリッド機器を設置することは、集中配置するにしろ分散配置するにしろきわめて困難であった。
【0023】
また、エンジンルーム15等に無理やり集中配置するとラジエータ17に対する通風を阻害したり、蓄電器26及び制御器27の発熱が激しくなったりし、分散配置すると機械の組立やメンテナンスが面倒となる等の弊害が生じていた。
【0024】
そこで本発明は、通常ショベルと同等の車格で蓄電器及び制御器を、通風を阻害する等の弊害を招かずに効率良く設置することができるハイブリッド建設機械を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記課題を解決する手段として、本発明においては、下部走行体上に上部旋回体が旋回自在に搭載され、この上部旋回体の基台となるアッパーフレームの後部にエンジンルームが設けられるとともに、左右方向の中間部に前後方向に延びる左右の縦板が設けられ、この両縦板を挟んだ左右一側にキャビン、反対側にメンテナンスのための後上がりの昇降ステップがそれぞれ設けられる一方、両縦板の前部に作業アタッチメントのブームの下端部がブームフットピンによって取付けられ、かつ、ハイブリッド機器として、エンジンを駆動源として発電機作用と電動機作用とを行う発電電動機と、この発電電動機に電動機作用を行わせる電源となるとともに発電電動機の発電機作用等によって充電される蓄電器と、この蓄電器を電源として上記上部旋回体を旋回駆動する旋回電動機と、上記発電電動機、旋回電動機、蓄電器の動作を制御する制御器とを備えたハイブリッド建設機械において、上記蓄電器及び制御器を、階段状に形成した機器ケース内に格納し、この機器ケースを上記昇降ステップとして上記アッパーフレーム前部のキャビンと反対側に設置し、上記機器ケース内の蓄電器及び制御器を冷却するための冷却水入口及び冷却水出口を、上記機器ケースにおける上記縦板と対面する側面であって側面から見て縦板から外れた位置で機器ケースに設けたものである。
【0026】
本発明によると、昇降ステップは比較的大きなスペースを占めながら有効利用されていない(工具類の収納程度しか利用されていない)点に着目し、上記のようにハイブリッド機器のうち蓄電器及び制御器を、階段状に形成した機器ケースに集中格納し、この機器ケースをメンテナンス用の昇降ステップとしてアッパーフレーム前部のキャビンと反対側に設置したから、通常ショベルと同等の車格で蓄電器及び制御器を効率良く配置することができる。
【0027】
しかも、蓄電器及び制御器をエンジンルーム等に配置した場合のようにラジエータに対する通風を阻害したり機器自身の発熱が激しくなったりするおそれがないとともに、集中格納することで組立が容易となり、かつ、外部からアクセスし易いためメンテナンスも容易となる。
【0028】
また、蓄電器と制御器を一つの機器ケース内に集中格納するため、これらの機器同士を最短距離で容易に、かつ、外部に露出しない隠蔽配線によって接続することができる。
【0029】
加えて、蓄電器及び制御器の防塵、防水処理を一つの機器ケースに対して一括して簡単に低コストで行うことができる。
【0030】
蓄電器及び制御器は発熱するため、通常、性能維持のため水冷方式によって冷却される。
【0031】
この場合、冷却水入口及び出口を縦板と対面する側面であって側面から見て縦板から外れた位置で機器ケースに設けることにより、冷却水入口及び出口配管の配管作業及びメンテナンス作業を縦板に邪魔されずに容易に行うことができる。
【0032】
本発明において、上記制御器として、発電電動機及び旋回電動機の作動を制御するインバータと、このインバータ及び上記蓄電器の充放電指令等の制御指令を出すハイブリッドコントローラとを備え、上記蓄電器、インバータ、ハイブリッドコントローラを、蓄電器が最下層となる状態で上記機器ケースに対応する階段状に積層して同ケース内に格納するのが望ましい(請求項2)。
【0033】
この構成によれば、蓄電器及び制御器(インバータ、ハイブリッドコントローラ)を機器ケースに対応する階段状に積層したから、昇降ステップ(機器ケース)のスペースを最大限に利用できるとともに、最も重くて大きい蓄電器を最下層に配置することで、機器ケース内でのこれらのレイアウトが容易となるとともに重心的にも安定したものとなる。
【0034】
また本発明においては、上記機器ケースを、上記ブームフットピンを同ピン軸方向に抜き差しするのに十分なピン挿脱空間が上記キャビンと反対側に確保される階段状に形成するのが望ましい(請求項3)。
【0035】
上部旋回体の組立後にブームを取付ける場合、あるいは出荷後にメンテナンス等のためにブームを取外す場合、ブームフットピンの左側にはキャビンがあるため、同ピンの抜き差しは右側、つまり昇降ステップ側からしか行えない。
【0036】
この場合、機器ケースの階段形状を、ブームフットピンの挿脱空間を確保するものとしたことにより、たとえば同ピンの挿脱時に機器ケースを内部の機器ごと分解する等の厄介な作業が不要となり、ブームフットピン挿脱作業、ひいてはブームの着脱作業が容易となる。
【0037】
さらに本発明においては、上記発電電動機及び旋回電動機と蓄電器とを接続する電力ケーブルを、上記機器ケースと、この機器ケースが配置された側の縦板との間の空間を通る経路で配線するのが望ましい(請求項4,5)。
【0038】
この構成によれば、発電電動機及び旋回電動機と蓄電器とを接続する電力ケーブルの配線経路として、縦板と機器ケースの間の隙間というデッドスペースを利用するため、配線経路を新たに確保するためのアッパーフレームの改造や加工が不要ないしは最小限ですむとともに、縦板と機器ケースをガイドとして容易に、しかも外部から隠蔽して配線することができる。
【0039】
この場合、機器ケースにおける上記電力ケーブルの接続位置を上記縦板の上端よりも上方に設定するのが望ましい(請求項5)。
【0040】
こうすれば、電力ケーブルの接続時に縦板が邪魔にならず、配線がさらに容易となる。
【0041】
本発明において、上記冷却水入口及び出口を縦板の前部と後部に分けて、かつ、冷却水出口が冷却水入口よりも高位に位置する状態で機器ケースに設けるのが望ましい(請求項)。
【0042】
こうすれば、冷却水入口及び出口に対して入口、出口両配管を互いに干渉せずに簡単に接続できるとともに、出口を入口よりも高位に位置させることでエア抜き性能を確保することができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明によると、通常ショベルと同等の車格で蓄電器及び制御器を効率良く、通風を阻害する等の弊害を招かずに設置することができる
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明の実施形態に係るショベルの概略平面図である。
図2】(a)は図1の矢印Aから見た側面図、(b)は同矢印Bから見た側面図である。
図3】実施形態に係るショベルの概略斜視図である。
図4】実施形態に係るショベルに設置される昇降ステップの組立斜視図である。
図5】同分解斜視図である。
図6】背景技術を説明するためのショベルの概略側面図である。
図7】従来ショベルの概略平面図である。
図8】従来ショベルの概略斜視図である。
図9】ハイブリッドショベルのシステム構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
実施形態はハイブリッドショベルを適用対象としている。
【0046】
実施形態において、図6図9に示す従来技術と同一部分には同一符号を付して示し、背景技術の説明を援用するものとしてその重複説明を省略する。
【0047】
蓄電器26と、制御器27(インバータ33及びハイブリッドコントローラ34)は一つの機器ケース36に集中格納され、この機器ケース36がアッパーフレーム10の前部右側、すなわち、燃料タンク21の前方に、メンテナンス作業員がボンネット14(エンジンルーム15内の機器類)に向けて昇降するための昇降ステップとして設置されている。
【0048】
機器ケース36は、パネル材によって図示のような後上がりの階段状、詳しくは最下段の第1段ステップ面36aと、この第1段ステップ面36aから後方及び左側に段差を持って連続する第2段ステップ面36bと、この第2段ステップ面36bから後方に段差を持って連続する最上段の第3段ステップ面36cとを備えた三段構成の箱体として構成されている。
【0049】
なお、図1及び図2(b)において、図面の複雑化を避けるために各ステップ面36a,36b,36cの符号を省略している。
【0050】
蓄電器26、インバータ33及びハイブリッドコントローラ34は、この機器ケース36に対応する階段状の配置で同ケース36内に配置されている。
【0051】
すなわち、最も大きくて重い蓄電器26が最下層として機器ケース36内の下部に同ケース内ほぼ全域に亘って設置され、この蓄電器上面の前部左側にハイブリッドコントローラ34、後部に、第2段及び第3段両ステップ面36b,36cに対応する側面視L字形のインバータ33がそれぞれ積層されている。
【0052】
なお、インバータ33及びハイブリッドコントローラ34について、図では分かり易くするために輪郭の明らかな箱状に表しているが、実際にはそれぞれ明確な輪郭のない部品の集合体として構成され、機器ケース36を共通のケーシングとしてこれに格納されている。
【0053】
ここで、従来機におけるメンテナンス用の昇降ステップは、比較的大きなスペースを占めながら、工具類を収納する程度で有効利用されていない。
【0054】
そこでこの点に着目し、ハイブリッド機器のうち蓄電器26と、制御器であるインバータ33及びハイブリッドコントローラ34(以下、両者を「制御器」の一括名称で表記す
る場合がある)を、階段状に形成した一つの機器ケース36に集中格納したから、通常ショベルと同等の車格で蓄電器26及び制御器33,34を効率良く、すなわち、他の機器類の設置スペースやメンテナンススペースを犠牲にすることなく簡単に設置することができる。
【0055】
しかも、蓄電器26及び制御器33,34をエンジンルーム15に配置した場合のようにラジエータ17に対する通風を阻害したり機器自身の発熱が激しくなったりするおそれがないとともに、外部からアクセスし易い昇降ステップ内に集中配置するためメンテナンスも容易となる。
【0056】
このメンテナンスの容易性を確保するために、機器ケース36の右側面や上面にメンテナンス口とこれを開閉する扉を設けてもよい。
【0057】
また、蓄電器26及び制御器33,34を一つの機器ケース36内に集中格納するため、機器同士を最短距離で容易に、かつ、外部に露出しない隠蔽配線によって接続することができる。
【0058】
加えて、蓄電器26及び制御器33,34の防塵、防水処理を一つの機器ケース36に対して一括して簡単に低コストで行うことができる。
【0059】
ところで、上部旋回体2の組立後にブーム3を取付ける場合、あるいは出荷後にメンテナンス等のためにブーム3を取外す場合、ブームフットピン13の左側にはキャビン20が位置するため、ブームフットピン13の挿脱は右側からしか行えない。
【0060】
ところが、ブームフットピン13の右側には機器ケース36が位置し、同ケース36がブームフットピン13の抜き差しの邪魔になるおそれが生じる。
【0061】
そこで機器ケース36は、図2(a)(b)に示すようにブームフットピン13を同ピン軸方向に抜き差しするのに十分なピン挿脱空間が右側に確保される階段状に形成されている。
【0062】
具体的には、側面から見てブームフットピン13が機器ケース36の第2段ステップ面36bの上方に位置し、同ステップ面上方にピン挿脱空間が確保されるように機器ケース36の階段形状が設定されている。
【0063】
これにより、たとえばブームフットピン13の挿脱時に機器ケース36を内部の機器ごと分解する等の厄介な作業が不要となり、ブームフットピン挿脱作業、ひいてはブーム3の着脱作業が容易となる。
【0064】
一方、発電電動機24はアッパーフレーム後部の右側、旋回電動機25は平面視で両縦板11,12間にそれぞれ配置され、この両者と機器ケース36内の蓄電器26とは、図9に示す電力ケーブル31…によって接続される。
【0065】
この実施形態において電力ケーブル31…は、図1,2に示すように機器ケース36の左側面と右縦板12との間に形成された隙間状の空間S(図1に符号を付している)を通る経路で配線され、機器ケース36内の電力ケーブル(図示省略)と接続されている。
【0066】
この電力ケーブル31…の接続位置は、図2(a)(b)に示すように右縦板12の上端よりも上方位置(第3段ステップ面36cの少し下方)でケース左側面に設定されている。
【0067】
このように、電力ケーブル31…の配線経路として、右縦板12と機器ケース36の間の隙間状の空間Sというデッドスペースを利用するため、配線経路を新たに確保するためのアッパーフレーム10の改造や加工が不要ないしは最小限ですむ。
【0068】
また、右縦板12と機器ケース36をガイドとして容易に、しかも外部から隠蔽して配線することができる。
【0069】
しかも、機器ケース36におけるケーブル接続位置を縦板12の上端よりも上方に設定しているため、電力ケーブル31…の接続時に縦板12が邪魔にならず、配線がさらに容易となる。
【0070】
また、この実施形態においては、機器ケース36内の蓄電器26及び制御器33,34の発熱を抑えるために水冷方式によって冷却する構成がとられている。
【0071】
詳しくは、エンジンルーム15内に冷却水ポンプとハイブリッド機器用ラジエータ(いずれも図示省略)が設けられ、冷却水ポンプから出た冷却水を冷却水入口配管で機器ケース36内に導入し、冷却済みの冷却水を冷却水出口配管により同ケース36からラジエータ経由で冷却水ポンプに戻す構成がとられている。
【0072】
機器ケース36には、図2(a)(b)に示すようにこの冷却のための冷却水入口37と冷却水出口38とが設けられている。
【0073】
この場合、図示のように冷却水入口37は機器ケース36の左側面の前部において、冷却水出口38は左側面の後部において、いずれも側面から見て右縦板12から外れた位置に、そして冷却水出口38が冷却水入口37よりも高位に位置する状態で設けられている。
【0074】
このレイアウトとすれば、冷却水入口及び出口配管の配管作業及びメンテナンス作業を右縦板12に邪魔されずに容易に行うことができる。
【0075】
また、冷却水入口37及び出口38を前後に分けているため、これらに対して入口、出口両配管を互いに干渉せずに簡単に接続できるとともに、出口38が入口37よりも高位にあることでエア抜き性能を確保することができる。
【0076】
なお、冷却水配管は、電力ケーブル31…と同様に右縦板12と機器ケース36との間の隙間を通る経路でレイアウトしてもよいし、他のルートを通してもよい。
【0077】
ところで、実施形態では機器ケース36に格納する制御器としてインバータ33とハイブリッドコントローラ34を挙げたが、図9中のメカトロコントローラ35をも機器ケース36に格納してもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、キャビン20が前部左側に配置される一般的なレイアウトをとるショベルを適用対象としたが、本発明はキャビン20が前部右側に配置される場合にも適用することができる。
【0079】
この場合、前部左側に昇降ステップを兼ねる機器ケース36を配置することになる。
【0080】
さらに、本発明はショベルに限らず、たとえばショベルを母体として構成される解体機や破砕機等、他のハイブリッド建設機械にも適用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 下部走行体
2 上部旋回体
3 ブーム
9 作業アタッチメント
10 アッパーフレーム
11 左縦板
12 右縦板
13 ブームフットピン
14 ボンネット
15 エンジンルーム
16 エンジン
20 キャビン
24 発電電動機
25 旋回電動機
26 蓄電器
27 制御器
31 電力ケーブル
33 インバータ
34 ハイブリッドコントローラ
36 昇降ステップとしての機器ケース
S 右縦板と機器ケースとの間の空間
37 冷却水入口
38 冷却水出口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9