(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,従来の装置には,次のような問題があった。すなわち,節電モードとしてRAMへの電力供給を遮断する機能を有する装置では,節電モードに移行する際の報知態様に改善の余地がある。例えば,データがRAMにあることのみを装置の表示部に報知したとしても,そのデータをRAMに記憶させたユーザに伝わらないこともある。また,そのデータと無関係のユーザに伝わっても,対処に困惑することが考えられる。
【0006】
本発明は,前記した従来の装置が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,節電モードへの移行の報知を効果的に行う画像形成装置および画像形成システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題の解決を目的としてなされた画像形成装置は,印刷データを記憶する揮発性メモリと,前記揮発性メモリへ電力を供給する非節電モードと,前記揮発性メモリへ電力を供給しない節電モードとを有し,モードを切り替えることで前記揮発性メモリへの給電状態を制御する給電部と,前記給電部を前記非節電モードから前記節電モードに切り替えることで前記揮発性メモリから消失する印刷データがあるか否かを確認する確認部と,前記確認部にて前記揮発性メモリから消失する印刷データがあることが確認された場合に,その消失対象の印刷データである消失対象データを前記揮発性メモリに記憶させたユーザを特定する特定部と,前記非節電モードから前記節電モードに切り替えることで消失対象の印刷データがあることを,前記特定部にて特定したユーザに対して報知する報知部とを備えることを特徴としている。
【0008】
本発明の画像形成装置は,揮発性メモリへの給電状態を制御するモードとして,節電モードと非節電モードとを有している。また,画像形成装置は,非節電モードから節電モードに切り替えるにあたって揮発性メモリから消失する印刷データがある場合,その消失対象データを揮発性メモリに記憶させたユーザに対して,消失対象の印刷データがあること報知する。ユーザへの報知態様としては,例えば,対象ユーザへのメール,対象ユーザの装置に組み込まれているプリンタドライバへのメッセージ表示指示,対象ユーザを明示したパネル表示,対象ユーザを明示したメッセージを登録者全員にメールが該当する。
【0009】
すなわち,本発明の画像形成装置は,消失対象となる印刷データのユーザ,つまりその印刷データを揮発性メモリに記憶させたユーザを特定し,そのユーザに向けて報知する。そのため,その印刷データのユーザに,消失対象の印刷データがあるという情報が伝わりやすい。その結果,データが不意に消失するリスクを軽減できる。
【0010】
また,本発明の画像形成装置の前記報知部は,消失対象の印刷データがあり,当該印刷データの消失を許可するか否かをユーザに問い合わせ,前記報知部にて消失許可を問い合わせた後,ユーザが印刷データの消失を許可しなかった場合に,前記消失対象データの消失を回避する回避部を備えるとよい。印刷データを消失させるか否かを,消失対象の印刷データのユーザが決定できるので,利便性が高い。なお,印刷データの消失可否の問い合わせは,印刷データを消去するもしくは消去しないといったような直接的な問い合わせでもよいし,節電モードに移行するもしくは移行しないといったような間接的な問い合わせでもよい。
【0011】
また,上記の画像形成装置は,前記報知部での印刷データの消失許可の問い合わせ対象となるか否かの,印刷データの条件を登録する登録部を備え,前記報知部は,前記消失対象データが前記登録部に登録されている条件に基づいて消失許可の問い合わせ対象となる印刷データに該当する場合に,前記消失対象データの消失許可を問い合わせるとよい。問い合わせ対象となる印刷データの条件を登録しておくことで,必要なものに限って問い合わせを行うことになる。そのため,ユーザの手間を軽減することが期待できる。
【0012】
また,前記報知部は,前記確認部にて前記揮発性メモリから消失する印刷データが複数確認された際,印刷データの消失許可の問い合わせを,印刷データごとに順次に行う構成であり,ある印刷データに基づく消失許可の問い合わせで消失が許可されなかった場合には,前記ある印刷データ以降の印刷データに基づく消失許可の問い合わせを行わず,前記回避部は,前記ある印刷データに基づく消失許可の問い合わせで消失が許可されなかった場合には,前記ある印刷データ以降の印刷データについては消失を回避するとよい。複数の印刷データについて順次問い合わせる構成の場合,一回でも印刷データの消失が不許可となれば,それ以降の印刷データについては消失を回避する方が望ましい。その場合,問い合わせは不要であり,問い合わせを行わないことで,ユーザの手間を省ける。
【0013】
また,本発明の画像形成装置は,前記非節電モードから前記節電モードへの切り替えに伴って前記揮発性メモリに記憶されている印刷データの消失を許可するか否かの,印刷データの条件を登録する第2登録部を備え,前記回避部は,前記消失対象データが前記第2登録部に登録されている条件に基づいて消失を許可しない印刷データに該当する場合に,前記消失対象データの消失を回避するとよい。消失の許可あるいは不許可をあらかじめ登録された条件によって決定することで,ユーザの手間を軽減できる。
【0014】
また,本発明の画像形成装置は,印刷データが印刷不能の状態にあるか否かを判断する判断部を備え,前記判断部にて印刷不能と判断された印刷データについては,前記報知部による印刷データの消失許可の問い合わせを行わず,消失許可とするとよい。印刷不能の状態の印刷データは,揮発性メモリから消失せずに残った状態であったとしても印刷が実行されない。そのため,消失許可と見做してもよい。
【0015】
また,本発明の画像形成装置は,印刷データを記憶する不揮発性メモリを備え,前記回避部は,前記消失対象データを前記不揮発性メモリに保存するとよい。不揮発性メモリに保存することで,印刷データの消失回避と節電モードへの移行とを両立できる。
【0016】
また,本発明の画像形成装置の前記回避部は,前記給電部による前記節電モードへの移行を行わないようにしてもよい。印刷データの消失を確実に回避できるとともに,節電モードに移行するものと比較して印刷を早期に実行できる。
【0017】
また,本発明の画像形成装置は,ユーザとそのユーザの情報処理装置の宛先とを関連付けて記憶する宛先記憶部を備え,前記報知部は,前記特定部にて特定したユーザと関連付けられた情報処理装置に対して,前記非節電モードから前記節電モードに切り替えることで消失対象の印刷データがあることを報知するとよい。この構成によれば,消失対象データのユーザに直接伝わり易い。
【0018】
また,本発明の画像形成装置は,メッセージを表示する表示部を備え,前記報知部は,前記表示部に,前記特定部にて特定したユーザを明示し,さらに前記非節電モードから前記節電モードに切り替えることで,前記特定部にて特定したユーザの印刷データが消失対象となることを報知するとよい。装置周辺に来たユーザに知らせることで,直接的あるいは間接的に消失対象データのユーザに伝わることが期待できる。
【0019】
また,本発明の画像形成装置は,前記非節電モードから前記節電モードに切り替えるための切替条件を満たすことで,前記給電部を,前記非節電モードから前記節電モードに自動的に切り替える自動切替部を備えるとよい。切替条件としては,例えば,前回の印刷完了時からの経過時間が所定時間以上であることが該当する。モードの自動切り替えを可能にすることで,ユーザの手間を軽減できる。
【0020】
また,本発明は,画像を印刷する画像形成装置と,前記画像形成装置に印刷データを送信する情報処理装置と,を有する画像形成システムであって,前記画像形成装置は,印刷データを記憶する揮発性メモリと,前記揮発性メモリへ電力を供給する非節電モードと,前記揮発性メモリへ電力を供給しない節電モードとを有し,モードを切り替えることで前記揮発性メモリへの給電状態を制御する給電部と,前記給電部を前記非節電モードから前記節電モードに切り替えることで前記揮発性メモリから消失する印刷データがあるか否かを確認する確認部と,前記確認部にて前記揮発性メモリから消失する印刷データがあることが確認された場合に,その消失対象の印刷データである消失対象データを前記揮発性メモリに記憶させたユーザを特定する特定部と,前記特定部にて特定したユーザの情報処理装置に対して報知指示を出力する出力部とを備え,前記情報処理装置は,前記画像形成装置からの前記報知指示を受け付ける受付部と,メッセージを表示する表示部と,前記受付部にて前記報知指示を受け付けた場合に,前記画像形成装置に消失対象の印刷データがあることを前記表示部に報知する報知部とを備えることを特徴とする画像形成システムを含んでいる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば,節電モードへの移行の報知を効果的に行う画像形成装置および画像形成システムが実現される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下,本発明にかかる装置を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,消費電力を抑える節電モードを有する複合機(MFP:Multi Function Peripheral )に本発明を適用したものである。
【0024】
[MFPの構成]
本形態のMFP100は,
図1に示すように,用紙に画像を印刷する画像形成部1と,原稿の画像を読み取る画像読取部2とを備えている。画像形成部1の画像形成方式は,電子写真方式であっても,インクジェット方式であってもよい。また,カラー画像の形成が可能であっても,モノクロ画像専用であってもよい。
【0025】
また,MFP100は,その前面側に,各種のボタン(例えば,スタートキー,ストップキー,テンキーの各ボタン)によって構成されるボタン群41,液晶ディスプレイからなる表示部42を備えた操作パネル40を備えている。このボタン群41や表示部42により,動作状況の表示やユーザによる操作の入力が可能になっている。
【0026】
特に,操作パネル40のボタン群41には,節電モードを解除する解除キー43がある。MFP100が節電モードで動作中にユーザによって解除キー43が押下されると,給電に関するモードが節電モードからレディモードに切り替えられる。各種モードについては後述する。
【0027】
[MFPの電気的構成]
続いて,MFP100の電気的構成について説明する。MFP100は,
図2に示すように,CPU31と,ROM32と,RAM33と,NVRAM(Non Volatile RAM)34と,ASIC35と,ネットワークインターフェース36と,FAXインターフェース38とを備えた制御部30を有している。
【0028】
ROM32は,MFP100を制御するための各種制御プログラムや画像処理プログラム,各種設定,初期値等を記憶している。RAM33(揮発性メモリの一例)は,各種制御プログラムが読み出される作業領域として,あるいは画像読取部2で読み取った原稿の画像データやネットワークインターフェース36を介して送られてくる画像データを一時的に記憶する記憶領域として,利用される。NVRAM34(不揮発性メモリの一例)は,不揮発性を有する記憶手段であって,各種設定や画像データ等を保存する記憶領域として利用される。
【0029】
ASIC35は,画像形成部1,画像読取部2,操作パネル40等と電気的に接続されている。例えば,ASIC35は,画像読取部2から画像データの信号を取得する。また,画像形成部1へ所望の画像を作成するための信号を出力する。また,ボタン群41に入力される各種ボタンの信号を受け付ける。また,表示部42に表示する内容の信号を出力する。
【0030】
CPU31(確認部,特定部,報知部,回避部,判断部,自動切替部の一例)は,MFP100における画像読取機能,画像形成機能,さらには給電制御機能等の各種機能を実現するための演算を実行し,制御の中枢となるものである。CPU31は,ROM32から読み出した制御プログラムに従って,その処理結果をRAM33またはNVRAM34に記憶させながら,ASIC35を介してMFP100の各構成要素を制御する。
【0031】
ネットワークインターフェース36は,ネットワーク300に接続され,このネットワークインターフェース36を介して他の情報処理装置(例えば,MFP100用のプリンタドライバ21が組み込まれたPC200)とのデータ通信が可能になっている。また,FAXインターフェース38は,公衆回線に接続され,このFAXインターフェース38を介して外部のFAX装置等とデータ通信が可能になっている。
【0032】
[給電制御]
続いて,MFP100の給電制御について説明する。MFP100は,給電制御系50(給電部の一例)として,
図3に示すように,電源部51と,電源部51から供給される電力をMFP100の各種構成要素に分配するスイッチ回路52と,スイッチ回路52の各種スイッチの開閉を制御する給電制御部53とを有している。
【0033】
電源部51は,例えば商用電源あるいはバッテリと接続し,適切な電力に変換する回路で構成され,変換後の電力をMFP100の各種構成要素に供給する。スイッチ回路52は,モードに応じて,MFP100の各種構成要素に給電するか否かを切り換える。具体的にMFP100には,画像形成部1や画像読取部2への電源系統,制御部30への電源系統,解除キー43を除く操作パネル40への電源系統,解除キー43への電源系統の各種電源系統がある。スイッチ回路52は,各種電源系統への給電のオンオフを切り換える。
【0034】
ここで,給電制御系50が有するモードについて説明する。給電制御系50は,画像の読み取りや印刷が可能であり,データの送受信が可能であり,さらに操作パネルでの操作の受付けが可能なレディモード(非節電モードの一例)と,画像の読み取りや印刷,データの送受信,さらに操作パネルでの操作の受付けも全て不可能であり,解除キー43の受け付けのみが可能になる節電モードとを有している。なお,解除キー43は,節電モードから,レディモードに移行する指示を入力するキーである。レディモード中の押下は無視される。
【0035】
具体的に,レディモードでは,画像形成部1,画像読取部2,制御部30,操作パネル40の全てに電力が供給され,印刷動作やスキャン動作が可能になる。一方,節電モードでは,画像形成部1および画像読取部2に加え,制御部30や操作パネル40への給電も遮断する。すなわち,操作パネル40の解除キー43以外の操作の受け付けができなくなる。ただし,解除キー43への給電は継続する。すなわち,解除キー43は,制御部30とは別の回路によって制御され,節電モードであってもユーザ入力を受け付ける。
【0036】
給電制御部53は,MFP100の動作モードに応じて,スイッチ回路52に対して各種電源系統への給電をオンオフする信号を入力する。なお,給電制御部53は,電源部51から直接給電され,節電モード中も動作する。そのため,節電モード中であっても解除キー43への入力を監視し,スイッチ回路52を制御することができる。
【0037】
MFP100は,起動直後はレディモードで動作する。そして,所定時間,印刷も読み取りもユーザ操作もない場合,すなわち不使用状態の場合,節電モードに移行して電力消費を抑制する。節電モード中は,解除キー43への入力を監視し,解除キー43が押下されると,節電モードからレディモードに復帰する。
【0038】
なお,レディモードから節電モードに移行すると,制御部30への給電が遮断されることから,それまでRAM33に記憶されていた印刷データが消失するおそれがある。そこで,MFP100では,レディモードから節電モードに移行する際にRAM33に記憶されている印刷データの対応を,印刷データの種別ごとに規定するデータベースをROM32に有している。
【0039】
印刷データの対応としては,例えば,消失を許可する「消失可」や,消失を許可しない「消失不可」がある。この他,強制的に印刷を実行する「強制印字」や,消失の可否をユーザに問い合わせる「確認」がある。
【0040】
図4は,印刷データの対応を規定するデータベース321(登録部,第2登録部の一例)の構成を示している。本形態のMFP100では,例えば,テンポラリフォントを利用する印刷データは「消失可」とし,パーマネントフォントが含まれる印刷データは「消失不可」とする。この他,例えば排紙命令が組み込まれていない印刷データ(印刷残データ)は,「強制印字」とする。また,印刷の実行にユーザ認証を必要とする印刷データ(セキュア印刷データ)は,「確認」とする。
【0041】
[節電モード切替処理]
[第1の形態]
続いて,上記のモードの切り替え動作を実現する節電モード切替処理(確認部,特定部,報知部,回避部,判断部,自動切替部の一例)の手順について,
図5のフローチャートを参照しつつ説明する。節電モード切替処理は,節電モードへの移行条件を満たしたことを契機に,CPU31によって実行される。なお,節電モードへの移行条件としては,例えば不使用時間(印刷,読み取り,パネル操作のいずれも行われていない連続時間)が閾値時間以上となった場合が該当する。
【0042】
第1の形態では,MFP100は,まず,RAM33に記憶されている印刷データを抽出し,さらにその印刷データをRAM33に記憶したユーザを特定する(S101)。すなわち,ユーザを特定できる印刷データ(以下,「ユーザ特定データ」とする)をRAM33から抽出する。ユーザは,例えば印刷データの属性情報に基づいて特定できる。
【0043】
次に,S101にてユーザ特定データが抽出されたか否かを判断する(S102)。ユーザ特定データが抽出されなければ(S102:NO),節電モードに移行し(S110),節電モード切替処理を終了する。
【0044】
ユーザ特定データが抽出された場合には(S102:YES),そのユーザ特定データが印刷不能データに該当するか否かを判断する(S103)。印刷不能データとは,印刷不能の状態のため,印刷を保留しているデータである。印刷不能状態とは,例えば,トナー切れや用紙切れ,あるいは装置故障が該当する。ユーザ特定データが印刷不能データに該当する場合には(S103:YES),S109に移行する。すなわち,印刷不能の状態のまま放置している印刷データは,データの消失を回避したとしても印刷を実行できない。従って,重要性が低い傾向にある。そのため,消失許可を問い合わせることなく,そのユーザ特定データをRAM33に残したままS109に移行して次のユーザ特定データを抽出する。
【0045】
ユーザ特定データが印刷不能データに該当しない場合には(S103:NO),そのユーザ特定データが強制印字対象に該当するか否かを判断する(S104)。具体的には,データベース321を参照し,S101で抽出したユーザ特定データが,消失対応が「強制印字」となっているデータ種別に該当する場合には,強制印字対象となる。ユーザ特定データが強制印字対象に該当する場合には(S104:YES),そのユーザ特定データを強制印字する(S121)。その後,S109に移行して次のユーザ特定データを抽出する。なお,強制印字されたユーザ特定データは,印字後にRAM33から消去される。
【0046】
ユーザ特定データが強制印字対象に該当しない場合には(S104:NO),そのユーザ特定データの消失を許可するか否かを判断する(S105)。具体的には,データベース321を参照し,S101で抽出したユーザ特定データが,消失対応が「消失可」となっているデータ種別に該当する場合には,ユーザ特定データの消失が許可される。ユーザ特定データの消失が許可されている場合には(S105:YES),消失許可を問い合わせることなく,そのユーザ特定データをRAM33に残したままS109に移行して次のユーザ特定データを抽出する。
【0047】
ユーザ特定データの消失が許可されていない場合には(S105:NO),ユーザ特定データが問合せ対象に該当するか否かを判断する(S106)。具体的には,データベース321を参照し,S101で抽出したユーザ特定データが,消失対応が「確認」となっているデータ種別に該当する場合には,問合せ対象となる。ユーザ特定データが問合せ対象に該当しない場合には(S106:NO),そのユーザ特定データをNVRAM34に保存し(S141),消失許可を問い合わせることなく,そのユーザ特定データをNVRAM34に確保した後,S109に移行して次のユーザ特定データを抽出する。
【0048】
ユーザ特定データが問合せ対象に該当する場合には(S106:YES),S101で特定したユーザのPCに対し,
図6に示すような確認画面211を表示する命令を出力する(S107)。この確認画面211では,少なくともどのプリンタに消失対象の印刷データがあることを表示し,さらにその印刷データの消失を許可するか,NVRAM34に保存するかを選択させる。
【0049】
MFP100は,
図7に示すようなユーザとそのユーザのPCのIPアドレスとを関連付けて記憶するデータベース322(宛先記憶部の一例)を有している。S107では,データベース322を利用してS101で特定したユーザから問い合わせ先のPCのアドレスを特定し,そのPCに対して確認画面211を表示する命令を出力する。その命令を受け取ったPCのプリンタドライバ21は,確認画面211を表示し,ユーザの入力結果をその命令を出力したプリンタに応答する。
【0050】
MFP100は,ユーザからの入力結果を取得した後,消失許可が得られたか否かを判断する(S108)。消失許可が得られた場合には(S108:YES),そのユーザ特定データをRAM33に残したままS109に移行する。消失許可が得られなかった場合には(S108:NO),そのユーザ特定データをNVRAM34に保存し(S141),S141の後にS109に移行する。
【0051】
S109では,RAM33に記憶されている全データの確認が完了したか否かを判断する(S109)。未確認の印刷データがある場合には(S109:NO),S101に戻って次のユーザ特定データを抽出する。全データの確認が完了した場合には(S109:YES),節電モードに移行する(S110)。すなわち,制御部30への給電を停止する。これに伴って,RAM33に記憶されているデータは消失する。一方,NVRAM34に保存されているデータは消失しない。S110の後,節電モード切替処理を終了する。
【0052】
すなわち,第1の形態の節電モード切替処理では,節電モードに移行する際,その際にRAM33に残っている印刷データのユーザを特定し,その印刷データの消失が許可されていない場合には,そのユーザに対して消失対象の印刷データがあることを報知し,消失可否を確認している。そのため,その印刷データをMFP100に登録したユーザに,消失対象の印刷データがある情報が直接伝わり易い。その結果,データが不意に消失するリスクを軽減できる。また,節電モードへの移行が取り消されないため,省電力化に資する。
【0053】
なお,S103,104,105,106の判断ステップは,必須の構成ではない。各ステップは無くてもよい。例えば,S103,104,105,106の判断ステップを全て無くし,ユーザ特定データ全てに対してS107の消失確認を行うように構成してもよい。
【0054】
また,S103では,印刷不能データを消失対象としているが,印刷不能データを強制消失してしまうと,その印刷不能データのユーザには不測の不利益となることが考えられる。そのため,印刷不能データを検出した場合には(S103:YES),節電モード切替処理を強制終了し,節電モードへの移行を回避してもよい。また,印刷不能データを検出した場合には(S103:YES),印刷不能データの消失許可あるいは節電モードへの移行許可をユーザに問い合わせてもよい。
【0055】
また,本形態では,消失許可が得られなかった場合,NVRAM34にユーザ特定データを保存する(S141)ことで,ユーザ特定データの消失を回避しているが,節電モード切替処理を強制終了し,節電モードへの移行を中止することで,ユーザ特定データの消失を回避してもよい。
【0056】
また,本形態では,S107で消失確認を行った後,ユーザからの回答を待つ構成になっているが,ユーザからの回答が長時間得られない場合には,消失許可および不許可の一方を強制的に選択してもよい。
【0057】
[第2の形態]
続いて,節電モード切替処理(確認部,特定部,報知部,回避部,自動切替部の一例)の別の形態の手順について,
図8のフローチャートを参照しつつ説明する。第2の形態では,印刷データの種別に関係なくNVRAM34に保存することが前提であり,保存できない場合にユーザに報知する。この点,所定の種別の印刷データについて消失確認を行う第1の形態とは異なる。なお,第1の形態と同様の処理については同じ符号を付し,説明を省略する。
【0058】
第2の形態では,MFP100は,まず,RAM33に記憶されている印刷データを抽出し,さらにその印刷データをRAM33に記憶したユーザを特定する(S101)。次に,S101にてユーザ特定データが抽出されたか否かを判断する(S102)。ユーザ特定データが抽出されなければ(S102:NO),節電モードに移行し(S110),節電モード切替処理を終了する。
【0059】
ユーザ特定データが抽出された場合には(S102:YES),そのユーザ特定データをNVRAM34に保存できるか否か,すなわちNVRAM34にそのユーザ特定データを記憶できる空き容量があるか否かを判断する(S203)。ユーザ特定データをNVRAM34に保存できない場合には(S203:NO),S101で特定したユーザのPCに,節電モードに移行すること,および印刷データが消失することを報知する(S221)。
【0060】
なお,S221では,ユーザのPCからの応答を必要としない。そのため,S107のようにPCのプリンタドライバによって確認画面を表示してもよいし,テキストメッセージを電子メールで送信してもよい。S221の後,S109に移行して次のユーザ特定データを抽出する。
【0061】
ユーザ特定データをNVRAM34に保存できる場合には(S203:YES),そのユーザ特定データをNVRAM34に保存し(S141),S141の後にS109に移行する。
【0062】
S109では,RAM33に記憶されている全データの確認が完了したか否かを判断する(S109)。未確認の印刷データがある場合には(S109:NO),S101に戻って次のユーザ特定データを抽出する。全データの確認が完了した場合には(S109:YES),節電モードに移行する(S110)。S110の後,節電モード切替処理を終了する。
【0063】
すなわち,第2の形態の節電モード切替処理でも,節電モードに移行する際,その際にRAM33に残っている印刷データのユーザを特定し,ユーザ特定データについてNVRAM34に保存できない場合,すなわちユーザ特定データが消失してしまう場合,そのユーザに対して消失対象の印刷データがあることを報知している。そのため,その印刷データをMFP100に登録したユーザに,消失対象の印刷データがある情報が直接伝わり易い。したがって,印刷データを消失したユーザは,データ消失の事実をより確実に把握できる。また,節電モードへの移行が取り消されないため,省電力化に資する。
【0064】
[第3の形態]
続いて,節電モード切替処理(確認部,特定部,報知部,回避部,自動切替部の一例)の別の形態の手順について,
図9のフローチャートを参照しつつ説明する。第3の形態では,節電モードへの移行許可を確認し,不許可であれば,節電モードへの移行を行わないことによって印刷データの消失を回避する。この点,NVRAM34に印刷データを保存することによって印刷データの消失を回避する第1の形態とは異なる。なお,第1の形態と同様の処理については同じ符号を付し,説明を省略する。
【0065】
第3の形態では,MFP100は,まず,RAM33に記憶されている印刷データを抽出し,さらにその印刷データをRAM33に記憶したユーザを特定する(S101)。次に,S101にてユーザ特定データが抽出されたか否かを判断する(S102)。ユーザ特定データが抽出されなければ(S102:NO),節電モードに移行し(S110),節電モード切替処理を終了する。
【0066】
ユーザ特定データが抽出された場合には(S102:YES),S101で特定したユーザのPCに,MFP100に消失対象の印刷データがあることを表示し,さらに節電モードへの移行を許可するか否かを選択させる選択画面を表示する命令を出力する(S303)。その命令を受け取ったPCのプリンタドライバ21は,選択画面を表示し,ユーザの入力結果をMFP100に応答する。
【0067】
ユーザからの入力結果を取得した後,移行許可が得られたか否かを判断する(S304)。移行許可が得られた場合には(S304:YES),そのユーザ特定データをRAM33に残したままS109に移行する。移行許可が得られなかった場合には(S304:NO),残りのユーザ特定データについては移行許可の確認は行わず,節電モード切替処理を終了する。すなわち,ユーザが1人でも節電モードへの移行を許可しなかった場合には,節電モードへの移行は好ましくない。そこで,残りのユーザ特定データについて確認を行ったとしても節電モードへの切り替えは行わないことが確実であり,無用な
ユーザ確認は回避する方が好ましい。
【0068】
S109では,RAM33に記憶されている全データの確認が完了したか否かを判断する(S109)。未確認の印刷データがある場合には(S109:NO),S101に戻って次のユーザ特定データを抽出する。全データの確認が完了した場合には(S109:YES),節電モードに移行する(S110)。すなわち,すべてのユーザ特定データについて節電モードへの移行許可が得られた場合には,節電モードに移行する。S110の後,節電モード切替処理を終了する。
【0069】
すなわち,第3の形態の節電モード切替処理では,節電モードに移行する際,その際にRAM33に残っている印刷データのユーザを特定し,そのユーザに対して節電モードへの切り替えを可否を確認している。そのため,その印刷データをMFP100に登録したユーザに,消失対象の印刷データがある情報が直接伝わり易い。その結果,データが不意に消失するリスクを軽減できる。
【0070】
なお,本形態では,S303で節電モードへの移行確認を行い,一人でも移行を許可しなかったら節電モードへの移行を回避しているが,S303でユーザ特定データの消失確認を行い,一人でも消失を許可しなかったら消失対象の印刷データのすべてをNVRAM34に保存した後,節電モードへ移行するように構成してもよい。
【0071】
[第3の形態の応用例]
また,第3の形態では,S303にて節電モードへの移行許可をユーザに問い合わせているが,例えば,印刷データがセキュア印刷データであれば,重要度が高い傾向にある。そのため,節電モードへの移行に伴って印刷データが消失してしまうことは好ましくない。
【0072】
そこで,ユーザへの問い合わせを行うまでもなく,印刷データの種別等によって節電モードへの移行許可を自動判断してもよい。
図10は,第3の形態の応用例の手順を示している。
【0073】
第3の形態の応用例では,MFP100は,まず,RAM33に記憶されている印刷データを抽出し,さらにその印刷データをRAM33に記憶したユーザを特定する(S101)。次に,S101にてユーザ特定データが抽出されたか否かを判断する(S102)。ユーザ特定データが抽出されなければ(S102:NO),節電モードに移行し(S110),節電モード切替処理を終了する。
【0074】
ユーザ特定データが抽出された場合には(S102:YES),そのユーザ特定データが特定の種類の印刷データ(本応用例ではセキュア印刷データ)に該当するか否かを判断する(S351)。
【0075】
セキュア印刷データでなければ(S351:NO),そのユーザ特定データをRAM33に残したままS109に移行する。セキュア印刷データの場合には(S351:YES),節電モードへの移行は行わず,セキュア印刷データをRAM33に残したまま,節電モード切替処理を終了する。これにより,セキュア印刷データの消失を回避できる。
【0076】
S109では,RAM33に記憶されている全データの確認が完了したか否かを判断する(S109)。未確認の印刷データがある場合には(S109:NO),S101に戻って次のユーザ特定データを抽出する。全データの確認が完了した場合には(S109:YES),節電モードに移行する(S110)。S110の後,節電モード切替処理を終了する。
【0077】
なお,本応用例では,節電モードへの移行を回避することで,セキュア印刷データの消失を回避しているが,セキュア印刷データをNVRAM34に保存して,節電モードに移行してもよい。また,セキュア印刷データ以外の印刷データについては,ユーザ確認を行ってもよい。
【0078】
すなわち,第3の形態の応用例の節電モード切替処理では,節電モードに移行する際,その際にRAM33に残っている印刷データの種別を特定し,特定の種別(例えばセキュア印刷データ)に該当するか否かを確認している。そして,特定の種別に該当する場合には,その印刷データの消失を回避している。その結果,重要度が高いデータの消失リスクを軽減できる。
【0079】
[第4の形態]
続いて,節電モード切替処理(確認部,特定部,報知部,回避部,自動切替部の一例)の別の形態の手順について,
図11のフローチャートを参照しつつ説明する。第4の形態では,ユーザに応じて印刷データの消失許可を確認し,不許可であれば,節電モードへの移行を行わないことによって印刷データの消失を回避する。この点,印刷データの種別によって印刷データの消失許可の問合せを決定する第1の形態とは異なる。なお,第1の形態と同様の処理については同じ符号を付し,説明を省略する。
【0080】
第4の形態では,MFP100は,まず,RAM33に記憶されている印刷データを抽出し,さらにその印刷データのうち,登録されているユーザの印刷データ(以下,「登録ユーザデータ」とする)を抽出する(S401)。MFP100は,ユーザ登録が可能であり,登録されたユーザはROM32あるいはNVRAM34に記憶される。また,登録ユーザは一人でもよいし,複数でもよい。
【0081】
次に,S401にて登録ユーザデータが抽出されたか否かを判断する(S402)。登録ユーザデータが抽出されなければ(S402:NO),節電モードに移行し(S110),節電モード切替処理を終了する。
【0082】
登録ユーザデータが抽出された場合には(S402:YES),その登録ユーザのPCに,MFP100に消失対象の印刷データがあることを表示し,さらに節電モードへの移行を許可するか否かを選択させる選択画面を表示する命令を出力する(S403)。その命令を受け取ったPCのプリンタドライバ21は,選択画面を表示し,ユーザの入力結果をMFP100に応答する。
【0083】
ユーザからの入力結果を取得した後,移行許可が得られたか否かを判断する(S404)。移行許可が得られた場合には(S404:YES),その登録ユーザデータをRAM33に残したままS405に移行する。移行許可が得られなかった場合には(S404:NO),他の登録ユーザについては移行許可の確認は行わず,節電モード切替処理を終了する。
【0084】
S405では,登録されている全ユーザの確認が完了したか否かを判断する(S405)。未確認の登録ユーザがある場合には(S405:NO),S401に戻って次の登録ユーザの印刷データを抽出する。全ユーザの確認が完了した場合には(S405:YES),節電モードに移行する(S110)。すなわち,すべての登録ユーザについて節電モードへの移行許可が得られた場合には,節電モードに移行する。S110の後,節電モード切替処理を終了する。
【0085】
すなわち,第4の形態の節電モード切替処理では,節電モードに移行する際,登録ユーザの印刷データを抽出し,その登録ユーザに対して節電モードへの切り替えを可否を確認している。そのため,MFP100にユーザ登録したユーザにとっては,消失対象の印刷データがある情報が直接伝わり易い。その結果,データが不意に消失するリスクを軽減できる。
【0086】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,MFPに限らず,プリンタ,コピー機等,印刷データの受信機能を備えるものであれば適用可能である。
【0087】
また,実施の形態では,不使用時間によってレディモードから節電モードへの移行を図っているが,モードの切り替え条件は,不使用時間でなくてもよい。例えば,MFP100が複数のPCと接続している場合,MFP100が現時点で通信可能なPC台数であってもよい。すなわち,通信可能なPCの台数が少ないほどMFP100が使用される可能性は低くなる。そのため,例えば,通信可能なPCが所定台数以下の場合にレディモードから節電モードに切り換えてもよい。また,フォトレジスタ等によって装置周辺の明るさを検知し,周囲が暗くなったと判断した場合にレディモードから節電モードに切り換えてもよい。
【0088】
また,実施の形態では,MFP100が,レディモードと節電モードとの2つのモードを有しているが,これに限るものではない。例えば,レディモードおよび節電モードに加え,レディモードから節電モードに移行するまでの間に,画像形成部1や画像読取部2への給電は遮断し,制御部への給電は継続するスリープモードを設けてもよい。また,他のモード(例えば,スリープモードから節電モードに移行するまでの間に,制御部30の通信系(ネットワークインターフェース36,FAXインターフェース38)への給電を遮断するディープスリープモード)を設けてもよい。
【0089】
また,S107の確認画面の表示は,対象ユーザのPCに限るものではない。例えば,MFP100の表示部42に確認画面を表示してもよい。この場合,確認画面では,消失対象の印刷データとそのユーザとを関連付けて表示し,さらにその印刷データの消失を許可するか,NVRAM34に保存するかを選択させる。すなわち,ユーザ名を明記して報知することで,MFP100の周辺に来たユーザが,どのユーザの印刷データが消失対象となっているかを知ることができる。その結果,直接的あるいは間接的に消失対象データのユーザに伝わることが期待できる。