(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
着用者の腹部に接触する前身頃外装体(1)と,着用者の背部に接触する後身頃外装体(2)と,少なくとも前端が前記前身頃外装体(1)と接合し少なくとも後端が前記後身頃外装体(2)と接合する吸収性本体(3)を備える使い捨ておむつにおいて,
前記吸収性本体(3)は,
液体を吸収し保持するための吸収体(31)と,
前記吸収体(31)を,着用者の肌に接触する側から被覆する液透過性のトップシート(32)と,
前記吸収体(31)を,前記トップシート(32)とは反対の側から被覆し,前記吸収体(31)の両側縁部に沿って前記トップシート(32)と接着する接線(T)を有する液不透過性のバックシート(33)と,
前記吸収性本体(3)の両側縁部に形成され,前記トップシート(32)の長手方向に沿って形成された固定線(P)上に固定される立体ギャザー(34)と,
前記トップシート(32)と前記バックシート(33)の接線(T)と,前記トップシート(32)と前記立体ギャザー(34)の固定線(P)の間の領域である起立領域(R)に,前記吸収性本体(3)の長手方向に沿って伸長状態で配設された少なくとも1本の弾性伸縮部材(35a)を備え,
前記立体ギャザー(34)のそれぞれは,
内側立体ギャザー(341)と外側立体ギャザー(342)を含み,
前記内側立体ギャザー(341)は,
前記内側立体ギャザー(341)の先端部に,その長手方向に沿って伸長状態の弾性伸縮部材(35b)が少なくとも一本配設されていることにより,前記トップシート(32)との固定線(P)において起立するとともに,前記吸収体(31)の内方に向かって傾倒するものであり,
前記外側立体ギャザー(342)は,
前記内側立体ギャザー(341)よりも前記吸収体(31)の外側に形成され,前記外側立体ギャザー(342)の先端部に,その長手方向に沿って伸長状態の弾性伸縮部材(35c)が少なくとも一本配設されていることにより前記固定線(P)において起立するとともに,前記吸収体(31)の外方に向かって傾倒するものであり,
ここで,前記固定線(P)から前記内側立体ギャザー(341)の先端までの距離をFとし,前記固定線(P)から前記外側立体ギャザー(342)の先端までの距離をSとし,前記吸収体(3)の両側部に形成された固定線(P)間の距離をWとした場合に,
S<F<2Sであり,かつ,2S<W<7Sの関係を満たす
使い捨ておむつ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら,着用者の脚部の周りに脚周りギャザーを形成しない架橋型の使い捨ておむつでは,着用時における脚部とのフィット感や,脚周りの開口部からにおける防漏性が低下することが懸念される。すなわち,架橋型の使い捨ておむつには,脚周りギャザーが形成されていないため,前身頃外装体と後身頃外装体との間に架橋された吸収性本体のみが,着用者の股下部に接触し,着用者が排泄した尿などの液体を受けることとなる。従って,架橋型の使い捨ておむつは,着用者の動きに合わせて使い捨ておむつを肌にフィットさせ難く,排泄時における液体の防漏性が低いという問題が生じていた。
【0007】
このため,現在は,脚周りギャザーを形成しない架橋型の使い捨ておむつにおいて,着用者の動きやすさを確保しつつ,前身頃外装体と後身頃外装体の間に架橋された吸収性本体を着用者の肌に好適にフィットさせるとともに,排泄時にける液体の防漏性を高めるための技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで,本発明者は,上記従来技術の問題を解消するために鋭意検討した結果,前身頃外装体と後身頃外装体の間に架橋された吸収性本体に立体ギャザーを形成し,立体ギャザーの起立線近傍の領域に,吸収性本体の長手方向に沿って伸長状態の弾性伸縮部材を配設することにより,立体ギャザーを着用者の肌にフィットする方向に持ち上げることができるという知見を得た。そして,本発明者は,吸収性本体に形成された立体ギャザーを着用者の肌にフィットさせることができれば,従来の課題を解決することができることを見出した。
【0009】
これにより,本発明は,脚周りギャザーを形成しない架橋型の使い捨ておむつにおいて,着用者の動きやすさを確保しつつ,前身頃外装体と後身頃外装体の間に架橋された吸収性本体を着用者の肌に好適にフィットさせるとともに,排泄時にける液体の防漏性を高めることができる。
【0010】
具体的に,本発明は,以下の構成を有する。
本発明は,前身頃外装体1と,後身頃外装体2と,吸収性本体3を備える架橋型の使い捨ておむつに関する。
前身頃外装体1は,着用者の腹部に接触する部材である。後身頃外装体2は,着用者の背部に接触する部材である。また,吸収性本体3は,少なくとも前端が前身頃外装体1と接合し,少なくとも後端が前記後身頃外装体2と接合する部材であり,前身頃外装体1と後身頃外装体2の間に配置される。
【0011】
本発明において,吸収性本体3は,吸収体31と,トップシート32と,バックシート33と,一対の立体ギャザー34と,弾性伸縮部材35aを含む。
吸収体31は,液体を吸収し保持するための部材である。
トップシート32は,吸収体31を,着用者の肌に接触する側から被覆する液透過性の部材である。
バックシート33は,吸収体31を,トップシート32とは反対の側から被覆し,吸収体31の両側縁部に沿ってトップシート32と接着する接線Tを有する液不透過性の部材である。
立体ギャザー34のそれぞれは,吸収性本体3の両側縁部に形成され,トップシート32の長手方向に沿って形成された固定線P上に固定される部材であり,防漏壁として機能する。
弾性伸縮部材35aは,トップシート32とバックシート33の接線Tと,トップシート32と立体ギャザー34の固定線Pの間の領域である起立領域Rに,吸収性本体3の長手方向に沿って伸長状態で配設される部材である。弾性伸縮部材35aが,収縮することにより,立体ギャザー34が,その根元部分から着用者の肌と接触する方向に持ち上がる。
なお,起立領域Rとは,吸収性物品3のうち,トップシート32とバックシート33の接線Tから吸収性物品3の底面方向に向かう垂線と,トップシート32と立体ギャザー34の固定線Pから吸収性物品3の底面方向に向かう垂線の間の領域をいい,幅,高さ,及び奥行のある領域である。
【0012】
このように,本発明の吸収性本体3では,立体ギャザー34が着用者の肌と接触する方向に持ち上がるため,立体ギャザー34を着用者の肌に好適にフィットさせるとともに,排泄時における液体の防漏性を高めることができる。従って,使い捨ておむつに脚周りギャザーを形成しなくても,着用者のフィット感と防漏性を高めることができる。
【0013】
本発明の好ましい形態では,弾性伸縮部材35aが,起立領域R内であり,かつ,バックシート33と,立体ギャザー34を形成するサイドシートとの間に配設される。
具体的に説明すると,本発明の好ましい形態では,立体ギャザー34を形成するサイドシートの一部が,バックシート33の側縁部の長手方向に沿ってバックシート33の底面に接着される。また,立体ギャザー34を形成するサイドシートの一部が,トップシート32の長手方向に沿って形成された固定線P上に固定される。これにより,立体ギャザー34は,バックシート33及びトップシート32を挟持するようにして形成される。そして,弾性伸縮部材35aは,起立領域Rであって,かつ,立体ギャザー34を形成するサイドシートと,バックシート33の間に配設される。
【0014】
このように,弾性伸縮部材35aが,起立領域R内のうち,吸収性本体3の底面に近い位置に配設されることにより,弾性伸縮部材35aの収縮力によって,立体ギャザー34をその根元部分から持ち上げることができる。また,弾性伸縮部材35aと,着用者の肌との間には,複数のシートが層となって重なっているため,着用者に弾性伸縮部材35aによる圧迫感を与えたり,弾性伸縮部材35aの締め付けによって着用者の柔肌に痕が残ったりこすることがない。
【0015】
本発明の好ましい形態では,一対の立体ギャザー34のそれぞれが,内側立体ギャザー341と外側立体ギャザー342を含む。
内側立体ギャザー341は,その先端部に,その長手方向に沿って伸長状態の弾性伸縮部材35bが少なくとも一本配設されていることにより,トップシート32との固定線Pにおいて起立するとともに,吸収体31の内方に向かって傾倒する。
外側立体ギャザー342は,内側立体ギャザー341よりも吸収体31の外側に形成され,外側立体ギャザー342の先端部に,その長手方向に沿って伸長状態の弾性伸縮部材35cが少なくとも一本配設されていることにより起立するとともに,吸収体31の外方に向かって傾倒する。
【0016】
このように,立体ギャザーが実質的に2つ形成されていることにより,吸収性本体3の防漏性を高めることができる。特に,内側立体ギャザー341は,その根本部分に弾性伸縮部材35aが配設されていることで着用者の肌と接触する方向に向かって持ち上がるとともに,その先端部に弾性伸縮部材35bが配設されていることで吸収体31の内方に向かって傾倒する。従って,内側立体ギャザー341においては,より着用者の肌に密着する。一方で,仮に,内側立体ギャザー341で液体の漏洩が防げなかった場合であっても,外側立体ギャザー342が備わっていることで,液体が吸収本体3から漏洩する事態をより確実に防止できる。
【0017】
本発明の好ましい形態においては,一対の立体ギャザー34(内側立体ギャザー341及び外側立体ギャザー342のそれぞれ)が,撥水性を有する一枚のサイドシートで形成されている。
具体的に説明すると,まず,サイドシートの一部は,バックシート33の長手方向に沿って,バックシート33の側縁部の底面に接着されている。
また,サイドシートは,バックシート33の側縁端よりも,吸収体31の外側に位置する第1の折返部41において,吸収体31の内方に向かって折り返されている。
また,第1の折返部41には,サイドシートの長手方向に沿って,伸長状態の弾性伸縮部材35cが少なくとも1本挟持されることにより,第1の折返部41が起立している。
これにより,まず,外側立体ギャザー342が形成される。
次に,第1の折返部41において折り返されたサイドシートの一部が,トップシート32の側縁部の長手方向に沿って形成された固定線Pにおいて,トップシート32の表面に固定されている。
また,第1の折返部41において折り返されたサイドシートは,第2の折返部42において,吸収体31の内方又は外方に向かって折り返される。
また,第2の折返部42には,サイドシートの長手方向に沿って,伸長状態の弾性伸縮部材35bが少なくとも1本挟持されることにより,第2の折返部42が,固定線Pにおいて起立している。
これにより,内側立体ギャザー341が,形成される。
【0018】
このように,内側立体ギャザー341及び外側立体ギャザー342を含む立体ギャザー34が,一枚のサイドシートにより形成されることにより,シート材の繋ぎ目がなくなるため,シートの繋ぎ目から液体が漏洩する事態を防止できる。また,シート材を重ねる必要がないため,全体的に柔らかくコンパクトな立体ギャザー34を提供できる。さらには,立体ギャザー34全体が一枚のサイドシートからなり,シート材の繋ぎ目や重なり部分がないため,起立領域Rに配設された弾性伸縮部材35aの収縮力によって,内側立体ギャザー341及び外側立体ギャザー342を含む立体ギャザー34が,全体的に持ち上がり易くなる。
【0019】
本発明の好ましい形態においては,内側立体ギャザー341の先端部には,複数本の弾性伸縮部材が,内側立体ギャザー341の長手方向に沿って,伸長状態で配設されている。そして,複数本の弾性伸縮部材のうち,内側立体ギャザー341の先端に最も近い位置に配設された弾性伸縮部材が最も応力が低く,内側立体ギャザー341の先端から最も遠い位置に配設された弾性伸縮部材が最も応力が高い。
【0020】
このような構成を有することにより,内側立体ギャザー341の先端部(内側立体ギャザーのうち,弾性伸縮部材が配設されている部分)が,内側立体ギャザー341の先端から最も遠い位置に配設された弾性伸縮部材を起点として,吸収体31の外方に向かって折れ曲がる。これにより,内側立体ギャザー341は,着用者の肌に密着しやすくなる。
【0021】
本発明の好ましい形態においては,外側立体ギャザー342の先端部には複数本の弾性伸縮部材が,外側立体ギャザー342の長手方向に沿って,伸長状態で配設されている。
そして,複数本の弾性伸縮部材のうち,外側立体ギャザー342の先端に最も近い位置に配設された弾性伸縮部材が最も応力が低く,外側立体ギャザー342の先端から最も遠い位置に配設された弾性伸縮部材が最も応力が高い。
【0022】
このような構成を有することにより,外側立体ギャザー342の先端部(外側立体ギャザーのうち,弾性伸縮部材が配設されている部分)が,外側立体ギャザー341の先端から最も遠い位置に配設された弾性伸縮部材を起点として,吸収体31の外方に向かって折れ曲がる。これにより,外側立体ギャザー341も,着用者の肌に密着しやすくなる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。ただし,本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
【0025】
(1.使い捨ておむつの全体構成)
図1は,使い捨ておむつ10の例を示す概略図であり,使い捨ておむつ10を前身頃外装体側からみた状態を示している。
図2は,
図1に示された使い捨ておむつ10の展開図であり,吸収性本体3のトップシート32側からみた状態を示している。
図1及び
図2に示されるように,使い捨ておむつ10は,着用者の腹部に接触する前身頃外装体1と,着用者の背部に接触する後身頃外装体2と,前身頃外装体1と後身頃外装体2の間に架橋される吸収性本体3を備える架橋型の使い捨ておむつである。
【0026】
吸収性本体3は,略矩形型に形成されており,それぞれの短辺が,前身頃外装体1及び後身頃外装体2に接合されている。つまり,吸収体本体3の短辺の一方である前端から所定の長さを有する領域が前身頃外装体1と接合され,吸収体本体3の短辺の他方である後端から所定の長さを有する領域が後身頃外装体2と接合される。これら部材の接合手段としては,公知の方法を用いることができ,例えば,ホットメルト接着剤やその他流動性のある接着剤を用いた固定方法に固定することとしてもよいし,ヒートシールのような熱溶着や超音波溶着により固定することとしてもよい。
【0027】
また,
図1及び
図2に示されるように,前身頃外装体1及び後身頃外装体2の両側縁に延出するサイドフラップ51の端部を対応させて接合することにより,装着時に着用者の腰周りに位置する腰周り開口部52と,装着時に着用者の脚部周りに位置する脚部周り開口部53が形成される。このようにして架橋型の使い捨ておむつ10が形成され,着用者は,前身頃外装体1が腹部に接触し,後身頃外装体5が背部に接触するように,腰周り開口部52からに両脚部を入れ,それぞれの脚部を脚部周り開口部52から出すことで,使い捨ておむつ10を装着する。
【0028】
(2.使い捨ておむつの具体的構成)
以下,図面を用いて,本発明にかかる使い捨ておむつ10の具体的な構成について説明する。
【0029】
(2−1.前身頃外装体,及び後身頃外装体)
前身頃外装体1及び後身頃外装体2は,着用者の腹部及び背部に接触するとともに,使い捨ておむつ10の着用時において,前身頃外装体1及び後身頃外装体2の間に位置する吸収性本体3を,吊持するための部材である。
【0030】
図2に示された使い捨ておむつの展開図において,前身頃外装体1は,腰周り端となる辺である長辺と,後身頃外装体2との接合部であるサイドフラップ51の両側辺と,吸収性本体3との接合する辺である短辺を有する略台形状となっている。また,後身頃外装体2についても同様に,腰周り端となる辺である長辺と,前身頃外装体1との接合部であるサイドフラップ51の両側辺と,吸収性本体3との接合する辺である短辺を有する略台形状となっている。ただし,前身頃外装体1については,サイドフラップ51の両側辺と,吸収性本体3との接合する短辺とを結ぶ斜辺のそれぞれが,円弧状となっている。このため,前身頃外装体1と後身頃外装体2を接合した場合であっても,脚周り開口部53は,前身頃外装体1が比較的広く開けており,着用者の脚部が動き易くなっている。
【0031】
前身頃外装体1と後身頃外装体2の両側縁に延出するサイドフラップ51の端部は,互いに重ね合わされ,例えば,熱エンボス加工や,ソニック溶着のような公知の接合手段により接合される。
【0032】
前身頃外装体1及び後身頃外装体2は,着用者の肌に接触する面,及び着用者の肌に接触しない面に,例えば,柔軟な繊維不織布やプラスチックシートや,それらのラミネートシートが形成されている。繊維不織布やプラスチックシートの間は,例えばホットメルト接着剤によって接着され,前身頃外装体1及び後身頃外装体2の腰周り端に沿って,腰周り弾性伸縮部材54が伸長状態で配設されている。
【0033】
(2−2.吸収性本体)
吸収性本体3は,前身頃外装体1と後身頃外装体2の間に架橋された状態で保持され,使い捨ておむつ10の着用時おいて,着用者の股下部に位置し,着用者が排泄した尿などの液体を吸収保持するための部材である。
【0034】
図3は,
図2に示されたA−Aの線分における使い捨ておむつ10の断面図である。つまり,
図3は,吸収性本体3の断面形状の例を示す概略断面図である。
図3に示されるように,吸収性本体3は,吸収体31と,トップシート32と,バックシート33と,一対の立体ギャザー34と,弾性伸縮部材35aを基本構成としている。
なお,本来,吸収性本体3を構成するそれぞれのシート材は極めて薄いものであるが,
図3では,説明を分かりやすくするために概念的な厚みをもたせて作図を行っている。
【0035】
(2−2−1.吸収体)
吸収体31は,尿などの液体を吸収し,吸収した液体を保持するための部材である。吸収体31は,液透過性のトップシート32と,液不透過性のバックシート33の間に配置される。吸収体31は,トップシートを透過した液体を吸収する機能を有し,吸収性材料により構成される。
【0036】
吸収体31を構成する吸収性材料には,公知の材料を採用することができる。吸収性材料としては,例えば,フラップパルプ,高吸収性ポリマー,又は親水性シートを用いることとしても良い。また,吸収性材料には,フラップパルプ,高吸収性ポリマー,又は親水性シートのうち1種類を単独で用いてもよいし,2種類以上を併用することとしてもよい。吸収性材料は,通常,単層又は複数層のマット状に形成され,用いられる。
【0037】
また,吸収体31は,トップシート32とバックシート33の間の少なくとも一部に挟持されることが好ましい。つまり,吸収体31の形状が矩形状である場合に,長辺となる両側縁,及び短辺となる上縁と下縁の周縁部が,トップシート32とバックシート33の間に封着される。
【0038】
吸収体31の形状は,適宜,使い捨ておむつの形状や,大きさ,用途に合せて設計することができる。例えば,吸収体31の形状は,
図2に示されるように,砂時計型としてもよい。また,一般的な使い捨ておむつに使用されている,矩形型,楕円形型,又はひょうたん型とすることとしてもよい。
【0039】
(2−2−2.トップシート)
トップシート32は,着用者の股下部の肌に直接接し,尿などの液体を吸収体31に透過させるための部材である。このため,トップシート32は,柔軟性が高い液透過性材料で構成される。また,トップシート32は,吸収体1の表面を被覆するように配置される。
【0040】
トップシート32を構成する不透過性材料の例は,織布,不織布,又は多孔性フィルムである。また,例えばポリプロピレンやポリエチレン,ポリエステル,ナイロンのような熱可塑性樹脂の繊維を親水化処理してさらに不織布にしたものを用いることとしてもよい。
【0041】
(2−2−3.バックシート)
バックシート33は,トップシート32を透過し吸収体31に吸収された液体が,漏出することを防止するための部材である。このため,バックシート33は,液不透過性材料によって構成される。そして,バックシート33は,吸収体1の底面からの液漏れを防止するため,吸収体31の底面を被覆するように配置される。
【0042】
バックシートを構成する不透過材料の例は,ポリエチレン樹脂からなる液不透過性のフィルムである。特に,0.1〜4μmの微細な孔が複数形成された微多孔性ポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。
【0043】
また,
図3に示されるように,バックシート33には吸収体31が載置され,載置された吸収体31の上面がトップシート32によって被覆され,吸収体31を被覆したトップシート32が,吸収体31の両側縁に沿って,バックシート33に接着されている。従って,バックシート33には,トップシート32が吸収体31の両側縁に沿って接着された接線Tが形成される。なお,
図3に示されるように,接線Tは,吸収体31と,トップシート32と,バックシート33の接線であるともいえる。接線Tにおいて,トップシート32とバックシート33は,例えば,ホットメルト接着剤やその他流動性のある接着剤を用いた接着方法により接着されてもよいし,ヒートシールのような熱溶着や超音波溶着により接着されていてもよい。
【0044】
また,バックシート33の外表面には,バックシートを補強しその手触りを良くするために,カバーシート55を貼り合わせることとしても良い。カバーシート55を構成する材料としては,織布や不織布が用いられる。特に,カバーシート55を構成する材料として,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリエステルのような熱可塑性樹脂からなる不織布又は湿式不織布を用いることが好ましい。
【0045】
(2−2−4.立体ギャザー)
一対の立体ギャザー34は,吸収性本体3の両側縁部沿って起立し,着用者が排泄した尿の横漏れを防止するための部材である。立体ギャザー34のそれぞれは,起立した状態(弾性伸縮部材が収縮した状態)において尿の防漏壁となるため,トップシート32を透過しなかった尿や,吸収体31により吸収しきれなった尿が,使い捨ておむつの脚部周り開口部などから漏出する横漏れを防止する。
【0046】
立体ギャザー34のそれぞれは,トップシート32上の長手方向に沿って形成された固定線Pにおいて,トップシート32に固定される。
図3に示されるように,一対の立体ギャザー34は,トップシート32及びバックシート33の両側縁を挟みこむようにして,トップシート32の上面及びバックシート3の底面に固定されている。
【0047】
立体ギャザー34のそれぞれは,一又は複数の弾性伸縮部材が,立体ギャザー34の先端部の長手方向に沿って配設されており,弾性伸縮部材の収縮力を利用して起立するものである。つまり,弾性伸縮部材は,伸張された状態で,立体ギャザー34にシート材に固定されており,弾性伸縮部材が収縮すると,立体ギャザー34のシート材も縮退し,立体ギャザー34が立ち上がる。弾性伸縮部材を立体ギャザー34に配設する位置は,立体ギャザーの形態や,使い捨ておむつの形状や大きさに合せて適宜変更可能であるが,一般的に,立体ギャザー34の上端縁近傍に配設される。
【0048】
立体ギャザー34のそれぞれは,
図3に示されるように,内側立体ギャザー341と外側立体ギャザー342の2つのギャザー部を有するものであってもよい。内側立体ギャザー341の先端部には,その長手方向に沿って伸長状態の弾性伸縮部材35bが一又は複数本配設されている。このため,内側立体ギャザー部341は,トップシート32との固定線Pを起点として,吸収体31の内方に向かって傾倒しながら起立する。
内側立体ギャザー341の起立部の長さ(固定線Pから上端縁までの長さ)は,例えば,10mm〜100mm,又は20mm〜80mm,好ましくは30mm〜60mmである。
内側立体ギャザー341の先端部とは,例えば,固定線Pからその先端までの高さの上部1/3〜1/7までの部分を意味する。
【0049】
図3においては,内側立体ギャザー341を形成するシート材の先端が,吸収体31の外方に向かって折り返され,一部においてシート材が二重構造となっている。そして,二重に構成されているシート材の間に,弾性伸縮部材35bが伸長状態で挟持され,例えばホットメルト接着材によって固定される。弾性伸縮部材35bは,例えば,非伸長状態における寸法の1.5倍〜5倍(1.5倍以上5倍以下)の寸法にまで引き伸ばされた状態において,内側立体ギャザー341の折返し部に配設挟持される。内側立体ギャザー341の先端の折返し幅は,例えば,固定線Pから内側立体ギャザー341の先端までの高さの上部1/3〜1/7までとすればよい。
【0050】
また,内側立体ギャザー341を形成するシート材を,吸収体31の外方又は内方へ向かって折返し,内側立体ギャザー341が起立する起立部全体にわたって,シート材を2重構造とすることとしてもよい。また,内側立体ギャザー341を形成するシート材を,内側立体ギャザー341の先端部に相当する位置において吸収体31の内方へ向かって折返し,折り返したシート材を,トップシート1に当接するようにして,このシート材とトップシート1の間に折り込み固定することしてもよい。この場合において,内側立体ギャザー341の先端部近傍には,弾性伸縮部材35bが伸長状態で配設される。
【0051】
また,外側立体ギャザー342は,内側立体ギャザー341よりも吸収体31の外側に形成される。外側立体ギャザー342の先端部にも,その長手方向に沿って伸長状態の弾性伸縮部材35cが一又は複数本配設されている。また,外側立体ギャザー342には,外側立体ギャザー342を形成するシート材の全体にわたって,複数の弾性伸縮部材35cを配設することとしてもよい。外側立体ギャザー342は,弾性伸縮部材35cが配設されていない状態において,吸収体31の外側に傾倒するように形成されているため,弾性伸縮部材35cが配設され起立した状態においても,吸収体31の外方に向かって傾倒する。
外側立体ギャザー342の起立部の長さは,例えば,10mm〜100mm,又は20mm〜80mm,好ましくは30mm〜60mmである。
なお,外側立体ギャザー342の先端部も,例えば,固定線Pからその先端までの高さの上部1/3〜1/7までの部分を意味する。
【0052】
内側立体ギャザー341と,外側立体ギャザー342は,それぞれ別々のシート材によって形成されこととしてもよいし,一枚のシート材(サイドシート)により形成されることしてもよい。
図3に示された実施の形態においては,内側立体ギャザー341と外側立体ギャザー342が,撥水性を有する一枚のサイドシートを幅方向に折り込むことにより,形成された例が示されている。
【0053】
図3に示されるように,内側立体ギャザー341と外側立体ギャザー342を形成するサイドシートの一部は,バックシート33の長手方向に沿って,バックシート33の側縁部の底面に接着される。サイドシートの側縁部は,バックシート33とカバーシート55の間に挟持され,例えばホットメルト接着剤により接着される。
【0054】
また,サイドシートは,バックシート33の側縁端よりも,吸収体31の外側に向かって延在している。吸収体の外側に向かって延在するサイドシートは,第1の折返部41において,吸収体31の内方に向かって折り返される。第1の折返部41において折り返されたサイドシートの間には,サイドシートの長手方向に沿って,伸長状態の弾性伸縮部材35cが一又は複数本挟持され固定される。
図3に示されるとおり,第1の折返部41からバックシート33の側縁端にかけて,サイドシートは,2重構造となっている。このように,第1の折返部41において弾性伸縮部材35bが挟持されているため,第1の折返部41からバックシート33の側縁端にかけて2重構造となっているサイドシートが固定線Pを起点として起立する。これにより,外側立体ギャザー342が形成される。
【0055】
第1の折返部において折り返されたサイドシートは,トップシート32の側縁部上の長手方向に沿って形成された固定線Pにおいて,トップシート32の表面に固定され,トップシート32とバックシート33の側縁部を挟みこむ。サイドシートは,固定線Pより,吸収体3の内側に向かって延在している。吸収体の内側において延在するサイドシートは,第2の折返部42において,吸収体の内方又は外方に向かって折り返される。第2の折返部42において折り返されたサイドシートの間には,サイドシートの長手方向に沿って,伸長状態の弾性伸縮部材35aが一又は複数本挟持され固定される。
図3に示されるとおり,第2の折返部42からサイドシートの側縁端にかけて,サイドシートが2重構造となっている。このように,第2の折返部42において弾性伸縮部材35aが挟持されているため,固定線Pより吸収体3の内側に向かって延在するサイドシートが,固定線Pを起点として起立する。これにより,内側立体ギャザー341が形成される。
【0056】
このようにして,内側立体ギャザー341及び外側立体ギャザー342を含む立体ギャザー34を,撥水性を有する一枚のサイドシートから形成することが可能である。
【0057】
また,
図3(b)に示されるように,固定線Pから内側立体ギャザー341の先端までの距離をFとし,固定線Pから外側立体ギャザー342までの距離をSとし,吸収体3の両側部に形成された固定線P間の距離をWとした場合に,S<F<2Sであり,かつ,2S<W<7Sの関係を満たすことが好ましい。この関係を満たす場合,内側立体ギャザー341及び外側立体ギャザー342が立ち上がる角度や,内側立体ギャザー341及び外側立体ギャザー342と着用者の肌の密着度が最も好適となった。ただし,距離F,距離S,及び距離Wは,上記した関係に完全に一致しない場合であっても,それぞれの距離について±5パーセント以内の修正を行うことにより上記関係を満たす場合であれば,内側立体ギャザー341及び外側立体ギャザー342が起立する角度と,着用者の肌の密着度は好適なものであった。
【0058】
立体ギャザー4を構成するシート材としては,撥水性を有する材料を用いられる。撥水性の材料の例としては,撥水性が高くかつ通気性が良いという観点から,スパンボンドやカードエンボスのような不織布を用いることが好ましい。特に,耐水圧が高いという理由か,SMS(スパンボンド/メルトブロー/スパンボンド)や,SMMS(スパンボンド/メルトブロー/メルトブロー/スパンボンド)のような目の詰まった不織布を用いることが好ましい。
【0059】
(2−2−5.弾性伸縮部材)
弾性伸縮部材35は,その収縮力によって,弾性伸縮部材35が配設された部材を起立させたり,ギャザーを形成するために,吸収性本体3の適所に配設される部材である。立体ギャザー34を構成する部材に,弾性伸縮部材35が配設されることについては,上述したとおりである。
【0060】
本発明においては,トップシート32とバックシート33の接線Tと,トップシート32と立体ギャザー34の固定線Pの間の領域である起立領域Rに,吸収性本体3の長手方向に沿って少なくとも1本の弾性伸縮部材35aが伸長状態で配設される。より詳しく説明すると,起立領域Rとは,吸収性物品3のうち,トップシート32とバックシート33の接線Tから吸収性物品3の底面方向に向かう垂線と,トップシート32と立体ギャザー34の固定線Pから吸収性物品3の底面方向に向かう垂線の間の領域をいい,幅,高さ,及び奥行のある領域である。このように,起立領域Rにおいて,弾性伸縮部材35aが配設されていることにより,弾性伸縮部材35aの収縮力を利用して,内側立体ギャザー341及び外側立体ギャザー342を含む立体ギャザー34全体が,着用者の肌と接触する方向(
図3上方向)に持ち上がる。従って,立体ギャザー34と着用者の肌の密着度が高まり,吸収性本体3の防漏性も向上する。
【0061】
また,弾性伸縮部材35aは,
図3に示されるように,起立領域R内であり,かつ,バックシート33と立体ギャザー34を形成するサイドシートとの間に配設されることとしてもよい。また,弾性伸縮部材35aが,起立領域R内に配設される本数は,一本であってもよいし,複数本であってもよい。起立領域内には,弾性伸縮部材35aが,1〜5本配設されることとしてもよい。
【0062】
また,起立領域Rに配設された弾性伸縮部材35aは,外側立体ギャザー341の先端部に配設された弾性伸縮部材35cより応力が高く,外側立体ギャザー341の先端部に配設された弾性伸縮部材35cは,内側立体ギャザー342の先端部に配設された弾性伸縮部材35bより応力が高いものであってもよい。つまり,弾性伸縮部材の応力の関係は,35a>35c>35bとなることとしてもよい。この際,弾性伸縮部材35の応力は,各部位に配設された弾性伸縮部材35一本ずつの応力を比較するのではなく,各部位に配設された弾性伸縮部材35を一群とした場合の応力を比較する。また,各部位に配設された弾性伸縮部材35の応力は,使い捨ておむつ10(又は吸収性本体3)を長手方向に引張する力に対する応力を比較する。
【0063】
各部位に配設された弾性伸縮部材35の応力は,各部位に配設される弾性伸縮部材35の本数や,材料を変更することにより適宜調節可能である。すなわち,例えば,ある部位に配設された弾性伸縮部材35の数が多ければ多いほど,その部位における弾性伸縮材35の応力が高まる。また,ある部位に配設された弾性伸縮部材35が引張力に対する応力が強い素材で形成されていれば,の部位における弾性伸縮材35の応力は高くなる。
【0064】
また,各部位(起立領域R,外側立体ギャザー341の先端部,及び外側立体ギャザー341の先端部)には,応力の異なる素材で形成された複数の弾性部材35を配設することとしてもよい。この場合には,例えば,各部位に配設された弾性伸縮部材35の応力の平均値が比較される。応力(引張力)の強さは,公知の方法,及び公知の装置を用いて測定される。
【0065】
弾性伸縮部材35には,通常,糸状弾性ゴムが適用される。このようなゴム材としては,スチレン系ゴム,オレフィン系ゴム,ウレタン系ゴム,エステル系ゴム,ポリウレタン,ポリエチレン,ポリスチレン,スチレンブタジエン,シリコーン,ポリエステル等の素材を用いることができる。なお,弾性伸縮部材35の形成材料は必ずしも材料に限定されるものではなく,例えば熱可塑性エラストマー,プラスチックシート,ゴムシート等の伸縮性を有する公知の種々のものを用いることができる。特に熱可塑性エラストマーを用いることが好ましく,この熱可塑性エラストマーとしては,例えばスチレン系エラストマー,オレフィン系エラストマー,ポリブタジエン系エラストマー,ポリエステル系エラストマー,ポリアミド系エラストマー,ウレタン系エラストマー,塩化ビニル系エラストマー,フッ素系エラストマー,アイオノマー樹脂,シリコーン系樹脂等の公知の種々のものを用いることができる。なお,これらの熱可塑性エラストマーは単独で用いてもよいし,2種以上を混合して用いてもよい。
【0066】
(3.変形例)
図4は,本発明にかかる吸収性本体の変形例を示す概略断面図である。
図4に示された例においては,
図3に示された例と異なり,内側立体ギャザー341及び外側立体ギャザー342の先端部が,吸収体3の外方に向かって折れている。
【0067】
このように,内側立体ギャザー341の先端部と外側立体ギャザー342の先端部を外倒しとするためには,先端側の弾性伸縮部材35の応力を,立体ギャザーの根元側の弾性伸縮部材35の応力より低いものとすればよい。
【0068】
図4に示されるように,内側立体ギャザー341の先端部には複数本の弾性伸縮部材35bが,内側立体ギャザー341の長手方向に沿って,伸長状態で配設されている。そして,複数本の弾性伸縮部材35bのうち,内側立体ギャザー341の先端に最も近い位置に配設された弾性伸縮部材35bの応力が最も低くなっている。また,複数本の弾性伸縮部材35bのうち内側立体ギャザー341の先端から最も遠い位置に配設された弾性伸縮部材35bの応力が最も高くなっている。従って,弾性伸縮部材35bの収縮時において,内側立体ギャザー341の先端側が弱く収縮し,内側立体ギャザー341の根元側が強く収縮するため,内側立体ギャザー341の先端側が外側に折れ曲がる。このように,内側立体ギャザー341が外折れとなり形成された角度αは,例えば,30度〜150度,50度〜120度,70度〜100度であることが好ましい。
【0069】
一方,内側立体ギャザー341と同様に,外側立体ギャザー342の先端部には複数本の弾性伸縮部材35cが,外側立体ギャザー342の長手方向に沿って,伸長状態で配設されている。そして,複数本の弾性伸縮部材35cのうち,最も外側立体ギャザー342の先端に近い位置に配設された弾性伸縮部材35cの応力が最も低くなっている。また,複数本の弾性伸縮部材35cのうち,最も外側立体ギャザー342の先端から遠い位置に配設された弾性伸縮部材cの応力が最も高くなっている。従って,弾性伸縮部材35cの収縮時において,外側立体ギャザー342の先端側が弱く収縮し,外側立体ギャザー342の根元側が強く収縮するため,外側立体ギャザー342の先端側が外側に折れ曲がる。このように,外側立体ギャザー342が外折れとなり形成された角度βは,例えば,50度〜170度,70度〜140度,90度〜120度であることが好ましい。