【実施例1】
【0013】
本発明による風向変更装置は、空気調和機の吹出口や吹出グリルに取り付けられる。実施例1では
図1に示すように吹出グリル1に取り付けられた風向変更装置で説明する。
吹出グリル1は、前面パネル2と、取付枠3と、風向を調整する風向変更装置4と、風向変更装置4とは異なる向きの風向を調整する風向変更装置5とからなり、例えば風向変更装置4が左右の風向を調整し、風向変更装置5が上下の風向を調整する。
前面パネル2は、前後面が開放された四角い枠状で、同枠内が吹出口2aとなるダクト部20と、同ダクト部20の前面側に額縁状に設けられた縁面21と、ダクト部20の中央に立設され、縁面21側に延出したアーム部22aで後述する風向板50を軸支する風向板軸受部22とからなる。
【0014】
尚、以下の説明では、吹出グリル1において、
図1で前面パネル2の縁面21が配置された方を前面、その反対面を背面とし、前面パネル2を正面視した時に縁面21が幅広の面を有する側を右側面、その反対面を左側面として説明を進める。
【0015】
吹出グリル1は、
図2に示すように、室内の壁面10の開口部に取付枠3を先に取り付け、同取付枠3と空気調和機から延設された吹出用ダクト11とを接続する。その後に前面パネル2の縁面21を室内に露出させながらダクト部20を取付枠3内に埋め込んで設置する。
風向変更装置4は、前面パネル2のダクト部20内の後方に設けられ、風向変更装置5は、前面パネル2のダクト部20内の前方に設けられる。
【0016】
なお、図示しないが、空気調和機は天井裏に本体を設置し、室内に設けられた吸込グリルとダクトを介して吸い込まれた空気を屋外に設置した室外機との間で熱交換する。熱交換された空気は吹出用ダクト11を通過し、吹出グリル1のダクト部20内の風向変更装置4と風向変更装置5とで室内に広く届くように調整されて吹き出される。
【0017】
風向変更装置4は、
図1に示すように、前面パネル2の中央の風向板軸受部22で仕切られたダクト部20内の右側と左側にそれぞれ1つずつ配置され、並列に配置された6枚の左右風向板40と、左右風向板40同士を連結する連結板41で構成される。
左右風向板40は、スチレン系樹脂製であり、
図2に示すように、薄板状の縦長矩形の基体40aと、基体40aの上端に設けられた上軸40bと、上軸と中心を合わせ下端に設けられた下軸40cと、下部前方に延出した延出部40dを有する。延出部40dの下端面から下方に向け連結軸40eが突出している。
6枚の左右風向板40の連結軸40eをそれぞれ連結板41の軸受部41aに係止したのち、上軸40bを前面パネル2のダクト部の上面に設けた上軸受孔23に差し込み、次に下軸40cを前面パネル2のダクト部の底面に設けた下軸受孔24に差し込む。この時上軸61と下軸62は若干径が異なることで、左右風向変更装置を上下反転して取り付けることを防ぐことができる。
【0018】
左右風向板6は、吹出グリル1を壁面10に据え付ける時は前面に対して垂直に取り付けられ、この状態で空気調和機を運転すると、吹出空気は前面側に吹き出される。
吹出空気を左側に向ける時は、左右風向板6のいずれかの一つを摘み、左方向へ移動させると、左右風向板40は上軸40bと下軸40cを中心として回動する。一つの左右風向板40を回動させると、一つの連結軸40eの移動に合わせ連結板41が左方向へ移動する。連結板41で軸支されたその他の左右風向板40も一斉に左方向へ移動することで、左右風向板40が全て左方向へ傾斜する。
【0019】
次に風向変更装置5の構成について説明する。
風向変更装置5は、
図1に示すように、運転時は吹出口2aを開放し、運転停止時は
図2および
図3に示すように、シャッター状に吹出口2aを閉塞する複数個(本実施例では4個)の風向板50と、
図4に示すモータ駆動機構6からなる。
【0020】
風向板50は、スチレン系の樹脂製でなり、
図2および
図5に示すように、細長い長尺で前面側に緩やかに湾曲した板状で上面に第1テーパ部51aと下面に第2テーパ部51bを有する羽根部51と、羽根部51の両端に備え、羽根部面を底辺とした五角形の板状でなる左側支持部52および右側支持部53と、羽根部51の背面側中央に立設するリブ状の中央支持部54からなる。
なお、第1テーパ部51aは、上段に配置される風向板50の第2テーパ部51bと平行となる。
【0021】
左側支持部52には、外側に向かって羽根部51と平行に回転軸52aが立設し、回転軸52aは、軸受7を介して前面パネル2のダクト部20の吹出口側壁20bに設けた軸孔25に軸支される。
中央支持部54には、片側に回転軸54aが立設し、回転軸54aは、前面パネル2の中央の風向板軸受部22のアーム部22aに軸支される。
右側支持部53には、羽根部51と平行に回転軸53aが立設し、回転軸53aの先端部53a1は円柱の一部が削れたD字形となっている。回転軸53aは、
図6に示すように、軸受7を介して前面パネル2のダクト部20の吹出口側壁20bに設けた軸孔25に軸支され、先端部53a1は後述する連結軸62と連結される。
回転軸52a、53a、54aは羽根部51と平行な直線n上に配置されることで、風向板50が左右両端と中央の3点をそれぞれ前面パネル2に支持されて自在に回動する。3点が支持されることで、風向板50が自重により撓んだり、送風の影響により振動を発生することを防ぐことができる。
なお、回転軸52aと係合する軸受7と、回転軸53aと係合する軸受7は共通の部材であり、軸受7は風向板とは異なるポリアセタールの高摺動性樹脂でなり、風向板50の摺動性を向上させ回動時に異音を防止する効果がある。
【0022】
右側支持部53には、右側支持部53を挟んで回転軸53aの対面にリンク軸53bが立設する。リンク軸53bは、リンク板8から突設したアーム80に軸支される。リンク板8はその他のそれぞれの風向板50も同時にアーム80で軸支することで、後述するモータ駆動機構6の回動に合わせ、全ての風向板50をリンクして回動することができる。
【0023】
モータ駆動機構6は、
図6および
図7で示すように、ギアボックス60と、モータ61と、連結軸62と、スプリング63とで構成され、風向板50のいずれか1つの回転軸53aに組み合わされる。
ギアボックス60は、縦長の箱型で箱の解放面を前面パネル2の右側面に合わせ、上面、下面それぞれに設けたネジ取付部60aと、前面パネル2の右側面に設けたネジ用リブ20aとを螺着して取り付けられる。また、ギアボックス60の右側面に設けた孔部60bに、後述するモータ回転軸61bを挿入する。
【0024】
モータ61は、駆動機構を内蔵する本体部61aと駆動機構の動力を伝えるモータ駆動軸61bからなり、本体部61aの底面側2か所に設けたネジ取付部61cでギアボックス60に螺着される。モータ駆動軸61bの先端部は小判形であり、ギアボックス60の孔部60bに挿入し、連結軸62と連結する。
【0025】
連結軸62は、筒型で、内部がモータ側連結部62aと風向板側連結部62bに仕切られている。
モータ側連結部62aはモータ駆動軸61bの先端部の小判形に合わせた凹部であり、駆動軸61aと嵌合する。
風向板側連結部62bは回転軸53aの先端部53a1のD字形に合わせた凹部であり、軸受7から貫通した回転軸53aと嵌合する。
連結軸62の外周には、フック62cが平面部62c1を備えて立設されている。
【0026】
スプリング63は、回転軸53aと連結軸62を巻回したバネ部63aで包むように配置され、バネ部63aのモータ側端が延出して先が直角に折れ曲がりモータ側に突出したモータ側規制部63bと、バネ部63aの風向板側端が延出して先が直角に折れ曲がった風向板側規制部63cとを備え、モータ側規制部63bが連結軸62のフック62cの平面部62c1に係止され、風向板側規制部63cが、前面パネルの右側面に立設して水平面部26aを備えた固定台26に係止される。
【0027】
モータ61はギアボックス60で前面パネル2の吹出口側壁20bに固着されていることから、ギアボックス60でスプリング63の反発力を抑えている。
【0028】
次に、風向変更装置5の作動について説明する。
図2および
図3に示すように、吹出グリル1を壁面10に据え付ける時、風向板50は、羽根部50aで吹出口2aを閉塞した状態になっている。この時、下段の風向板50の第1テーパ部51aに上段の風向板50の第2テーパ部51bが重なって互いに干渉することで、いずれか1つが開いた状態となったり、逆に奥に行き過ぎたりすることなく、均一な角度を保つことができ、外観の意匠性が向上する。
また、風向板50とダクト部20の間には、上下に若干の隙間mが設けられている。これは、閉塞した状態のままで吹出空気が吹き出された場合の空気の逃げ道となっており、本体側に生じる故障を防ぐためである。
【0029】
羽根部50aが吹出口2aを閉塞した状態では、
図8(a)に示すように、モータ駆動軸61bの先端部は側面が平面となる小判形の状態で連結軸62と連結され、連結軸62のフック62cは上方に位置する。また、風向板50の回転軸53aの先端部53a1のD形状は、上方に平面を向けて位置する。
風向板50は互いにリンク板8でリンクされていることで、その他の風向板50も同様に、同じ向きに配置されている。
【0030】
空気調和機の操作部の指示により空気調和機が運転開始をすると、モータ61が駆動し、風向板50を開放させることで、吹出空気が室内に吹き出される。風向板50は
図1のように90度の全開の位置にしてもよいし、任意の位置に設定して室内の一定の部分に向けて送風してもよい。また風向を任意に回動させる指令がある場合は、モータ61が正逆に回転することで風向板50の角度が自動で変化して、室内の隅々まで行き渡るように吹出空気が吹き出される。
モータ61が風向板50を
図1の全開状態に開放させた場合は、
図8(b)に示すように、モータ駆動軸61bの先端が上下面が平面となる小判形の状態になるまで移動すると、連結軸62のフック62cが背面側に傾斜して水平状態の位置に移動する。フック62cに係止されたスプリング63は、風向板側規制部63cが常に固定台26に係止されたままで、モータ側規制部63bがフック62cに合わせて移動することで、スプリング63の弾性力が発生して風向板50がスムーズに回動することができる。そして、風向板50の回転軸53aの先端部53a1のD形状が、背面側に平面を向けた位置に移動することで、風向板50が全開位置まで回動する。
風向板50は互いにリンク板8でリンクされていることで、その他の風向板50も同様に全開位置まで回動する。
【0031】
空気調和機の操作部の指示により空気調和機が運転停止をすると、モータ61が停止する。すると、モータ61により付勢されていたスプリング63は反発して、連結軸62を
図8(a)の位置に戻すことになり、風向板50も閉塞された状態に戻ることになる。
【0032】
以上の実施例の構成の風向変更装置5は、複数個の風向板50が配置された吹出グリル1において、それぞれの風向板50をリンクするリンク板8と、1つのモータ61と、いずれか1つの風向板50の回転軸52aとモータの駆動軸61bを連結する連結軸62と、スプリング63とでなる構成により、モータを駆動して、1つの風向板を回動させると、他の風向板も追従して回動することができ、従来例のように、風向板を別の形状としたり、それぞれの風向板を駆動する部品を必要とせずに、部品の共通化が図れ、少ない部品点数により、組み立て易いものとなる。
また、風向板50の回転軸52aとモータの駆動軸61bを連結する部品が連結軸62のみで行うことと、回転軸52aの対面にリンク軸80を備えたことで、モータ駆動機構6全体がコンパクトになり、従来例のように広いスペースを必要としない風向変更装置となる。これにより、風向変更装置5を備えた空気調和機全体が小型化することが可能となるものである。