(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
石炭を燃料とする石炭焚きボイラでは、塊状の石炭を竪型ミルにより粉砕して微粉炭とし、微粉炭を1次空気と共に燃焼装置であるバーナに供給している。
【0003】
竪型ミルは、ハウジングと、ハウジングの上部に収納され所定の回転数で回転する回転式の分級機と、ハウジングの下部に収納され所定の回転数で回転する粉砕テーブルと、ハウジングに支持された加圧ローラユニットとを有し、加圧ローラユニットは回転自在な加圧ローラを粉砕テーブルに押圧する構造となっている。
【0004】
粉砕テーブルには給炭管から塊状の石炭が粉砕テーブルの中心に投入され、供給される。供給された塊状の石炭は、粉砕テーブルの回転遠心力によって外周へと移動し、石炭が粉砕テーブルの外周に移動する過程で、加圧ローラと粉砕テーブルの間に噛込まれて粉砕される。粉砕された粉砕炭は粉砕テーブル周囲の1次空気吹出し口より吹上がる1次空気によって上昇し、分級機により微粉炭と粗粉炭とに分級された後、1次空気と共にバーナに供給される。
【0005】
従来の竪型ミルの場合、分級機が竪型ミル全体の高さ寸法の1/3程度を占めており、竪型ミルを小型化し、コストの低減を図る際には分級機の小型化は有効な手段となる。
【0006】
然し乍ら、従来の分級機は逆円錐台形状であり、1次空気に吹上げられる微粉炭の流路面積を確保しつつ、分級機の高さ寸法を減少させるのには限界があった。又、分級機が逆円錐台形状である為、分級機の上部と下部では径の差により回転遠心力に差が生じ、分級機に流入する微粉炭の分布が不均一になり、分級性能に悪影響を及すことがあった。
【0007】
尚、分級機の回転フィンの上部を下部よりも大きく傾けることで分級性能を向上させ、重力分級性能の影響を小さくすることで重力分級空間を小さくし、ミル全体を小型化する分級装置および竪型ミルとして、特許文献1に示されるものがある。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0015】
先ず、
図1について、本発明の実施例に係る竪型ミル1について説明する。
【0016】
中空構造又は脚構造の基台2に筒状のハウジング3が立設され、該ハウジング3により密閉された空間が形成される。該空間の下部には減速機4を介して粉砕テーブル5が立設され、該粉砕テーブル5は前記減速機4を介して粉砕テーブルモータ6によって定速又は可変速で回転される。
【0017】
前記粉砕テーブル5の上面には、断面が円弧状の凹溝7を有する複数のテーブルセグメント8がリング状に設けられている。
【0018】
該粉砕テーブル5の回転中心から放射状に所要組数、例えば120°間隔で設けられた3組の加圧ローラユニット9と、該加圧ローラユニット9を押圧可能な3組のローラ加圧装置13が設けられ、前記ハウジング3の下部にはジャーナルカバー10が設けられている。前記加圧ローラユニット9及び前記ローラ加圧装置13は前記ジャーナルカバー10によって支持され、前記加圧ローラユニット9は、加圧ローラ11を有し、水平支持軸12を介して傾動自在となっている。
【0019】
前記ローラ加圧装置13は、アクチュエータ、例えば油圧シリンダ14を具備し、該油圧シリンダ14によって前記加圧ローラ11を前記凹溝7に押圧する様になっている。
【0020】
前記粉砕テーブル5の下方には1次空気室15が形成され、前記ハウジング3内部の前記粉砕テーブル5より上方は、分級室16となっている。
【0021】
前記ハウジング3の下部には1次空気供給口17が取付けられ、該1次空気供給口17は図示しない送風機に接続されると共に、前記1次空気室15に連通している。前記粉砕テーブル5の周囲には、1次空気の吹出し口18が全周に設けられている。
【0022】
前記ハウジング3の上側には石炭給排部19が設けられており、該石炭給排部19の中心部を貫通する様にパイプ状の給炭管21が設けられ、該給炭管21が前記ハウジング3の内部に延出し、下端が前記粉砕テーブル5の中央上方に位置している。前記給炭管21には石炭が供給され、供給された石炭は前記粉砕テーブル5の中心部に落下する様になっている。
【0023】
前記給炭管21には、回転管22が回転管支持部23に軸受24を介して回転自在に設けられている。前記回転管22は、プーリ25とプーリ26に掛渡されたベルト27及び前記プーリ26が設けられた減速機28を介して分級機モータ29によって回転される様になっている。
【0024】
又、前記回転管22の下端部には円盤状の回転分級部31が設けられ、前記回転管22、前記プーリ25、前記プーリ26、前記ベルト27、前記減速機28、前記分級機モータ29、前記回転分級部31によって分級機32が構成されている。
【0025】
該分級機32の下方には、前記分級室16を上下に仕切る様に逆円錐形状のリジェクトシュート33が配設され、該リジェクトシュート33には円周方向に所要角度ピッチで、粉砕炭を含む1次空気が通過するスリット34が穿設されている。
【0026】
前記リジェクトシュート33は上端を前記ハウジング3に固着されると共に、前記給炭管21に固着されたブラケット35を介してリジェクトシュート支持部36によって支持されている。又、前記リジェクトシュート33の下端部は円筒形状となっており、下端は開放されて前記給炭管21との間に開口部37が形成される。
【0027】
前記石炭給排部19には、粉砕された微粉炭を送給する微粉炭送給管40が接続されており、該微粉炭送給管40はボイラのバーナ(図示せず)に接続されている。
【0028】
次に、
図2(A)(B)に於いて、前記回転分級部31及びその周辺部の詳細について説明する。尚、
図2(A)中、破線は従来の回転分級部31′を示している。
【0029】
前記回転管22にはリング状の中心円筒部39が設けられ、又前記回転管22を中心に等角度ピッチで放射状に複数本のビーム38が設けられている。該ビーム38は前記回転管22及び中心円筒部39に溶接等により固着されている。該中心円筒部39は前記回転管22と同心であり、前記中心円筒部39の外径は従来の回転分級部31′下端の径と等しくなっている。
【0030】
更に、前記ビーム38には、少なくとも2つ以上の円筒部41、例えば3つの円筒部41a〜41cが、前記中心円筒部39と同心多重円状となる様全ビーム38に掛渡って溶接等により固着されている。又、最外部の前記円筒部41cの外径は前記ビーム38の長さと等しく、更に従来の回転分級部31′上端の径と等しくなっている。
【0031】
又、前記中心円筒部39の外径と前記円筒部41aの内径の差、該円筒部41aの外径と前記円筒部41bの内径の差、該円筒部41bの外径と前記円筒41cの内径の差、即ち前記中心円筒部39,前記円筒部41a間の距離、該円筒部41a,41b間の距離、該円筒部41b,41c間の距離がそれぞれ等しくなっている。
【0032】
前記中心円筒部39と前記円筒部41aとの間にはブレード42aが所要数配設され、前記円筒部41aと41bとの間にはブレード42bが所要数配設され、前記円筒部41bと41cとの間にはブレード42cが所要数配設されている。各ブレード42a、ブレード42b、ブレード42cは同心多重円状にブレード列を形成する。
【0033】
前記ブレード42a〜42cはそれぞれ短冊状であり、倒立円錐曲面上に円周方向に等角度ピッチで配設され、前記ブレード42a〜42cは下端から上端に向って前記回転管22から離反、即ち中心から半径方向に離反する様に傾斜している。
【0034】
前記ブレード42a〜42cの傾き角はそれぞれ同等、即ち傾き角が等しいか、略等しく、該ブレード42a〜42cのブレード列は同心多重円状となっている。又、該ブレード42a〜42cの傾き角は従来の回転分級部31′のブレード42′の傾き角と同等であり、且つ該ブレード42′よりも高さが低くなっており、更に前記ブレード42a〜42cの長さの合計が、前記ブレード42′の長さと略等しくなっている。
【0035】
従って、本実施例に於ける前記回転分級部31は、従来の回転分級部31′の前記ブレード42′を径方向に3等分し、3等分した該ブレード42′を同一平面内で同心多重円状に配設したのと略同様の形状となっている。尚、前記ブレード42a、前記ブレード42b、前記ブレード42cが設けられている角度ピッチは、各ブレード列毎に変更してもよい。
【0036】
前記回転分級部31の外周面と前記ハウジング3の内壁面との間にはシール部43が設けられ、該シール部43は下シール板44と上シール板46とで構成される。
【0037】
最外部の前記円筒部41cの外周下端には、リング状の下シール板44の内端が溶接されており、該下シール板44は外端部が上方に折曲げられる様成形され、該下シール板44は前記円筒部41cの周囲にリング状の凹部45を形成する。
【0038】
前記ハウジング3の内壁には、リング状の上シール板46の外端が溶接されており、該上シール板46は内端部が下方に折曲げられる様成型され、内端部がシールリング部47を形成している。
【0039】
前記上シール板46は、前記下シール板44の近傍且つ上方に位置し、前記シールリング部47は前記凹部45に非接触で嵌入し、前記下シール板44と前記上シール板46との間に屈曲した間隙が形成される。
【0040】
尚、前記下シール板44の他端部を下方に折曲げてシールリング部を形成し、前記上シール板46の他端部を上方に折曲げて凹部を形成し、前記下シール板44のシールリング部を前記上シール板46の凹部に嵌入する様にしてもよい。
【0041】
次に、前記竪型ミル1に於ける石炭の粉砕について説明する。
【0042】
図1中、実線は1次空気の流れを示しており、点線は石炭の流れを示している。
【0043】
前記粉砕テーブル5が、前記減速機4を介して前記粉砕テーブルモータ6により回転され、前記1次空気供給口17より200℃前後の1次空気が前記1次空気室15に導入された状態で、前記給炭管21より塊状の石炭が投入される。塊状の石炭は、前記給炭管21の下端より前記粉砕テーブル5の中心部に流落し、該粉砕テーブル5上に供給される。
【0044】
該粉砕テーブル5上の石炭は、該粉砕テーブル5の回転による遠心力で外周方向に移動し、前記加圧ローラ11に噛込まれて粗粉炭と微粉炭からなる粉砕炭に粉砕され、更に遠心力によって外周に移動する。
【0045】
前記1次空気供給口17より前記1次空気室15に導入された1次空気が、前記粉砕テーブル5の前記吹出し口18より吹上がり、遠心力によって前記テーブルセグメント8を乗越えた粉砕炭は、前記吹出し口18から吹上がった1次空気に乗って前記分級室16の外周部を前記ハウジング3の壁面に沿って上昇する。
【0046】
前記分級室16の外周を1次空気に乗って上昇する粉砕炭は、粒径の大きい一部の粗粉炭が上昇途中で自重により前記粉砕テーブル5上に落下し、一部が前記リジェクトシュート33の下面に衝突し、弾かれた粗粉炭は前記粉砕テーブル5上に落下する。残りの粗粉炭及び微粉炭は、1次空気に乗って前記スリット34を通抜け、前記分級室16を更に上昇し、1次空気と共に前記分級機32に流入する。
【0047】
この時、前記下シール板44及び上シール板46によって、前記ハウジング3の内壁に沿って上昇する1次空気はシールされ、粗粉炭及び微粉炭が、前記分級機32に分級されることなく前記微粉炭送給管40よりボイラのバーナ(図示せず)に供給されることを防止している。
【0048】
1次空気と共に前記分級機32に流入する粗粉炭及び微粉炭は、前記分級機モータ29によって回転する前記回転分級部31の前記ブレード42a〜42cを横切る際に、所定の粒径以上の粗粉炭は該ブレード42a〜42cと衝突して弾かれる。
【0049】
又、前記ブレード42a〜42cが倒立円錐曲面上に設けられている為、粗粉炭は前記分級室16の外周側に弾飛ばされる。所定の粒径以下の微粉炭は1次空気に乗って前記ブレード42a〜42cを横切り、前記微粉炭送給管40より送出され、ボイラのバーナ(図示せず)に供給される。
【0050】
この時、前記中心円筒部39の外径と従来の回転分級部31′下端の径が等しく、最外部の前記円筒部41cの外径と従来の回転分級部31′上端の径が等しく、更に前記ブレード42a〜42cの傾き角が前記従来のブレード42′と同等であり、長さの合計が前記従来のブレード42′と略等しくなっているので、前記回転分級部31の径方向に於ける遠心力の差は、前記従来の回転分級部31′の径方向に於ける遠心力の差と略等しく、又微粉炭の流路面積も略等しくなっている。
【0051】
前記ブレード42a〜42cによって弾飛ばされた粗粉炭は、前記分級室16の外周部を落下し、前記リジェクトシュート33の斜面に沿って滑落し、前記開口部37より前記粉砕テーブル5の中心部に落下する。落下した粗粉炭は、前記粉砕テーブル5の回転遠心力によって前記凹溝7まで移動し、前記加圧ローラ11によって再度粉砕される。
【0052】
上述の様に、本実施例では、従来の回転分級部31′の前記ブレード42′と同様の傾き角を有し、且つ該ブレード42′よりも高さの低い前記ブレード42a〜42cからなるブレード列を同心多重円状に配設し、更に該ブレード42a〜42cの長さの合計が前記ブレード42′の長さと略等しくなる様にしたので、従来の回転分級部31′と同等の径方向の遠心力差を有しつつ、又同等の流路面積を保ちつつ高さ方向の寸法を縮小させることができ、前記分級機32の小型化に伴う前記竪型ミル1の小型化による省スペース化及びコストの低減を図ることができる。
【0053】
又、前記回転分級部31の高さ寸法を縮小したことで、該回転分級部31の高さ方向に於ける遠心力の差が小さくなるので、該回転分級部31に流入する微粉炭の流量分布の均一化を図ることができ、分級性能を向上させることができる。
【0054】
尚、本実施例では、前記ブレード42a〜42cからなる3列のブレード列を前記中心円筒部39と同心多重円状に配設しているが、配設するブレード列の数は2列であってもよく、又4列以上であってもよい。この場合についても、ブレード42の傾き角及び長さの合計が、前記従来のブレード42′と同等になる様にすることで、従来の回転分級部31′と同様の径方向の遠心力差を保ちつつ、高さ寸法を縮小することができる。
【0055】
又、本実施例では、前記ブレード42a〜42cの傾き角を全て同等としているが、各ブレード42a〜42cをそれぞれ異なった傾き角にて配設し、径方向の遠心力差を変更してもよいのは言う迄もない。
【0056】
更に、前記回転分級部31は外輪側で遠心力が大きくなるので、前記ブレード42c1枚当りの分級性能が大きく、一方内輪側では前記ブレード42a1枚当りの分級性能が小さくなる。従って、各ブレード42a〜42cの円周方向のピッチ(角度ピッチ)を外輪側で大きくなる様変更することで、内輪側、外輪側での分級性能が同一となる様にしてもよい。又、旋回流の強さは外輪側で強くなるので、内輪側、外輪側で分級性能が同一となる様各ブレード42a〜42cの傾き角を外輪側で大きくなる様変更してもよい。
【0057】
尚、本発明の竪型ミルは、石灰岩等、他の塊状物を粉砕する場合に於いても適用可能であることは言う迄もない。