【実施例1】
【0014】
図1に示すように、車輪用転がり軸受装置は、内輪部材11と、外輪部材20と、これら内輪部材11と外輪部材20との間に複列をなして転動可能に配設されかつ保持器35、36によって保持される複列の転動体30、31と、シール部材40と、覆い部材51とを備えている。
内輪部材11(ハブホイールとも呼ばれることもある)は、ハブ軸14と、このハブ軸14の一端寄り外周面から径方向外方に延出されたフランジ13とを一体に備え、フランジ13には車輪を締め付けるための複数のハブボルト12が所定ピッチで配設されている。
また、この実施例1において、外輪部材20の一端部外周面には、後述する覆い部材51の固定部52が嵌込まれて同固定部52の軸方向への移動を阻止する環状の嵌込み溝25が形成されている。
【0015】
図2に示すように、シール部材40は、内輪部材11の一方(フランジ13に近い方)の内輪軌道面6の内輪肩部6aと、この内輪肩部6aの外周面に対向する外輪部材20の一端部内周面との間の環状空間に装着されてこの環状空間を密封する。
このシール部材40は、芯金41と弾性シール体46とを備える。芯金41は、外輪部材20の一端部内周面に圧入されて固定される筒状部42と、この筒状部42の一端から径方向内方へ曲げ加工された環状部43と、この環状部43の内径端から斜め内方へ曲げられたテーパ部44と、このテーパ部44の先端から径方向内方へ曲げられた内径端部45とを備えている。
弾性シール体46は、芯金41の一側面の環状部43と、テーパ部44と、内径端部45との外側面に接着されて一体状をなしている。
そして、弾性シール体46は、内輪部材11のフランジ13の基端部近傍に摺接するリップ47と、内輪肩部6aの外周面に摺接するリップ48、49とを備えている。
【0016】
図2〜
図4に示すように、覆い部材51は、外輪部材20の一端部外周面とフランジ13との間の隙間を覆ってシール部材40を保護する。
覆い部材51は、外輪部材20の一端部外周面の径方向外方から嵌込まれて固定される下部が開口されたC字状に形成されると共に、外輪部材20とフランジ13との間の隙間の少なくとも上半部を覆う構成にしてある。
この実施例1において、覆い部材51は、合成樹脂材、ゴム等から形成され、固定部52と、覆い部53とを一体に有している。
固定部52は、外輪部材20の嵌込み溝25の径方向外方から嵌込み可能に下部が開口されたC字筒状に形成されている。この実施例1において、固定部52は、180度を越える(半円よりも長い周長を有する)円弧状に形成されている。
また、固定部52の外周面には、留め具としての結束バンド57(市販のインシュロックタイと呼ばれている留め具を用いることができる。)の軸方向へのずれ止めをなす溝54が形成されている。
そして、固定部52は、外輪部材20の嵌込み溝25の径方向外方から嵌込まれ、その固定部52の溝54に結束バンド57が締結されることによって外輪部材20の嵌込み溝25に固定(締結)される。
【0017】
また、覆い部材51の覆い部53は、固定部52の一端縁からフランジ13に接近する位置まで延出されて外輪部材20の一端部外周面とフランジ13との間の隙間の少なくとも上半部を覆うと共に、下半部が開放されたC字状に形成されている。
また、この実施例1において、覆い部53は、
図2に示すように、上部が最も傾斜角度が大きく、
図3に示すように、下部に向けてしだいに傾斜角度が小さくなっている。言い換えると、覆い部53は、上部の延出長さが最も長く、下部に向けてしだいに短くなっている。これによって、覆い部材51の材料費の節減や軽量化が図られている。
すなわち、泥水等が覆い部53の上部傾斜面に跳ねかけられると、覆い部53の上部傾斜面に沿って流れ、シール部材40に向けて浸入することを防止している。また、覆い部53の上部以外の側面においては、泥水等が跳ねかけられると下向きに流れるため、シール部材40に向けて浸入され難い。
【0018】
この実施例1に係る車輪用転がり軸受装置は上述したように構成される。
したがって、外輪部材20の一端部外周面に覆い部材51を固定する場合、覆い部材51のC字筒状の固定部52を外輪部材20の嵌込み溝25の径方向外方から嵌込み、固定部52の溝54に結束バンド57を締結することによって、外輪部材20の嵌込み溝25に覆い部材51を安定よく固定することができる。
このため、内輪部材11の外周に複列の転動体30、31を介在させて外輪部材20をを組み付けた後においても、覆い部材51を後付けによって外輪部材20の一端部外周面に容易に取り付けることができる。
【0019】
また、外輪部材20の一端部外周面に覆い部材51が取り付けられた状態において、覆い部材51の覆い部53によって、外輪部材20の一端部外周面と内輪部材11のフランジ13との間の隙間を覆うことで、泥水や塵埃からシール部材40を保護することができる。これによって、軸受内部を密封状態に維持することができる。
また、仮に、覆い部材51の内部に泥水や塵埃が浸入したとしても、覆い部53の下部の開口部から外部に排出されるため、覆い部材51の内部に泥水や塵埃が溜まることがない。
【0020】
また、この実施例1において、外輪部材20の一端部外周面の嵌込み溝25に覆い部材51の固定部52が嵌込まれて軸方向への移動が阻止される。このため、覆い部材51の覆い部53によって、外輪部材20の一端部外周面と内輪部材11のフランジ13との間の隙間を常に良好に覆うことができる。
【0021】
なお、この発明は前記実施例1に限定するものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施することもできる。
例えば、前記実施例1においては、外輪部材20の嵌込み溝25の外周面に覆い部材51の固定部52を締結する留め具として、市販のインシュロックタイと呼ばれている結束バンド57を用いた場合を例示したが、外輪部材20の嵌込み溝25の外周面に覆い部材51の固定部52を締結する留め具であればどのような構造の留め具を用いてもよい。例えば、
図5に示すように、C字状の弾性ワイヤ58によって外輪部材20の嵌込み溝25の外周面に覆い部材51の固定部52を締結してもよい。
また、外輪部材20の一端部外周面に嵌込み溝25を形成しなくてもこの発明を実施することが可能である。
また、覆い部材51は、その基部を外輪部材20の一端部外周面に接着剤等によって固定することも可能である。この場合には、C字筒状の固定部52を必ずしも設けなくてもこの発明を実施可能である。