(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5790147
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】エンジン駆動式空気調和装置
(51)【国際特許分類】
F25B 27/02 20060101AFI20150917BHJP
F25B 27/00 20060101ALI20150917BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
F25B27/02 F
F25B27/00 A
F25B1/00 397A
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-113806(P2011-113806)
(22)【出願日】2011年5月20日
(65)【公開番号】特開2012-242015(P2012-242015A)
(43)【公開日】2012年12月10日
【審査請求日】2014年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】呉 奉春
(72)【発明者】
【氏名】峯村 雄治
(72)【発明者】
【氏名】和田 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】岩田 知晃
【審査官】
藤崎 詔夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−300396(JP,A)
【文献】
特開2004−003805(JP,A)
【文献】
特開2008−038916(JP,A)
【文献】
特開2004−322914(JP,A)
【文献】
特開2005−009789(JP,A)
【文献】
特開2002−286309(JP,A)
【文献】
特開2005−201067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスエンジンにより駆動されて冷媒を吸入するとともに該吸入した冷媒を圧縮して吐出する圧縮機、冷房運転時は前記冷媒の凝縮器として機能し暖房運転時は前記冷媒の蒸発器として機能する室外機熱交換器及び冷房運転時は前記冷媒の蒸発器として機能し暖房運転時は前記冷媒の凝縮器として機能する室内機熱交換器が配設され、前記圧縮機から吐出された前記冷媒が該圧縮機に吸入されるまでの流路を形成する空気調和回路と、
前記ガスエンジンの冷却液が循環する流路を形成する冷却液回路と、
作動流体が循環する流路を形成するとともに、冷房運転時に前記ガスエンジンの排熱で前記作動流体を加熱して動力として回収するランキンサイクル回路と、
前記冷却液回路の冷却液を供給可能な第1冷却液供給路に設けられ、暖房運転時は前記冷却液で前記冷媒を温めるとともに該冷媒の蒸発器として機能する第1補助熱交換器と、
前記冷却液回路の冷却液を供給可能な前記第1冷却液供給路とは独立の第2冷却液供給路に設けられ、冷房運転時は前記冷却液で前記作動流体を昇圧する第2補助熱交換器と、
前記第1冷却液供給路及び前記第2冷却液供給路とは独立の冷却液回路に設けられ、該冷却液回路を循環する前記冷却液を放熱するためのラジエータと、
前記第1冷却液供給路及び前記第2冷却液供給路に配設され、暖房運転時は前記第1冷却液供給路を開放するとともに前記第2冷却液供給路を閉鎖し、冷房運転時は前記第1冷却液供給路を閉鎖するとともに前記第2冷却液供給路を開放する切替手段と、
前記冷却液の温度が第1の所定温度よりも高く前記第1の所定温度よりも高い第2の所定温度よりも低い場合には前記切替手段により選択された前記第1冷却液供給路あるいは前記第2冷却液供給路を選択し、前記冷却液の温度が前記第2の所定温度よりも高い場合には前記ラジエータが設けられた前記冷却液回路を選択する選択手段と、を備えたこと
を特徴とするエンジン駆動式空気調和装置。
【請求項2】
ガスエンジンにより駆動されて冷媒を吸入するとともに該吸入した冷媒を圧縮して吐出する圧縮機、冷房運転時は前記冷媒の凝縮器として機能し暖房運転時は前記冷媒の蒸発器として機能する室外機熱交換器及び冷房運転時は前記冷媒の蒸発器として機能し暖房運転時は前記冷媒の凝縮器として機能する室内機熱交換器が配設され、前記圧縮機から吐出された前記冷媒が該圧縮機に吸入されるまでの流路を形成する空気調和回路と、
前記ガスエンジンの冷却液が循環する流路を形成する冷却液回路と、
作動流体が循環する流路を形成するとともに、冷房運転時に前記ガスエンジンの排熱で前記作動流体を加熱して動力として回収するランキンサイクル回路と、
前記冷却液回路の冷却液を供給可能な第1冷却液供給路に設けられ、暖房運転時は前記冷却液で前記冷媒を温めるとともに該冷媒の蒸発器として機能する第1補助熱交換器と、
前記冷却液回路の冷却液を供給可能な前記第1冷却液供給路とは独立の第2冷却液供給路に設けられ、冷房運転時は前記冷却液で前記作動流体を昇圧する第2補助熱交換器と、
前記第1冷却液供給路及び前記第2冷却液供給路とは独立の冷却液回路に設けられ、該冷却液回路を循環する前記冷却液を放熱するためのラジエータと、
前記ラジエータが設けられた前記冷却液回路と、前記第1冷却液供給路及び前記第2冷却液供給路とは独立のバイパス回路と、
前記第1冷却液供給路及び前記第2冷却液供給路に配設され、暖房運転時は前記第1冷却液供給路を開放するとともに前記第2冷却液供給路を閉鎖し、冷房運転時は前記第1冷却液供給路を閉鎖するとともに前記第2冷却液供給路を開放する切替手段と、
前記冷却液の温度が第1の所定温度よりも低い場合には前記バイパス回路を選択し、前記冷却液の温度が前記第1の所定温度よりも高く前記第1の所定温度よりも高い第2の所定温度よりも低い場合には前記切替手段により選択された前記第1冷却液供給路あるいは前記第2冷却液供給路を選択し、前記冷却液の温度が前記第2の所定温度よりも高い場合には前記ラジエータが設けられた前記冷却液回路を選択する選択手段と、を備えたこと
を特徴とするエンジン駆動式空気調和装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のエンジン駆動式空気調和装置において、
前記ラジエータは、前記ランキンサイクル回路に配設され、前記作動流体を膨張させて動力回収する膨張機及び該膨張機からの前記作動流体を凝縮するためのランキンサイクル用ラジエータであることを特徴とするエンジン駆動式空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスヒートポンプのエンジンの排熱を利用可能なエンジン駆動式空気調和装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの排熱を利用するための各種装置が提案されている。例えば特許文献1の内燃機関の廃熱利用装置は、内燃機関(エンジン)の冷却液回路に排気ガスで冷却液を加熱するための排ガス熱交換器を設置して、該排ガス熱交換器を経由した冷却液をランキンサイクル回路の蒸発器に送ることで、内燃機関の廃熱を動力回収するものである。特に、内燃機関を経由した冷却液を、冷却液回路のラジエータの手前側で流量配分制御手段により、排ガス熱交換器及び蒸発器(熱交換領域)とバイパス路との間で流量配分することで、ラジエータの冷却性能を維持して冷却液回路を適正に機能させながらも、同時にランキンサイクル回路を適正に機能させるとしている。
【0003】
また、特許文献2の内燃機関の廃熱利用装置は、内燃機関の廃熱を複数の熱媒体から熱回収するもので、低温熱媒体と熱交換して加熱される作動流体(冷媒)を高温熱媒体(排気ガス)と熱交換して更に加熱する熱交換器の他、膨張機、凝縮器及びポンプを有し、エネルギー発生回路部と熱交換回路部との間で作動流体を循環させてランキンサイクル経路を形成するランキンサイクル回路を備える。
【0004】
ランキンサイクル回路は、エネルギー発生回路部をバイパスするバイパス路を有し、該バイパス路に回路を切り換えることにより熱交換器で加熱蒸発された作動流体で低温熱媒体を加熱すべくポンプにより熱交換回路部及びバイパス路に作動流体を循環させてヒートパイプ経路を形成するものである。ランキンサイクル回路は、内燃機関の作動状況に応じてバイパス路に切り換え、ランキンサイクル経路からヒートパイプ経路に切り換える経路切換手段を有している。ポンプは、経路切換手段による経路の切り換えに依らず、液体状の作動流体を循環させるよう配設されている。これにより、内燃機関の暖機を迅速化しながら内燃機関の廃熱回収効率を向上できるとしている。
【0005】
しかしながら、特許文献1、2のいずれにおいても、空気調和に係る冷媒回路との連係(熱交換等)については特に考慮されていない。
そこで、特許文献3の空気調和装置では、エンジンの冷却液回路と空気調和に係る冷媒回路とを熱交換可能に連係するとともに、冷却液回路にランキンサイクル回路を設けることが提案されている。これにより、エンジンの排熱をランキンサイクル回路において動力として回収し発電に供することで、エネルギー効率を向上できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−196342号公報
【特許文献2】特開2008−231980号公報
【特許文献3】特開2006−300396号公報(第[0034]段落、
図8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献3では、ランキンサイクル回路が冷却液回路の一部として構成されているため、例えば暖房運転時にエンジンの排熱を利用して冷媒を加熱するにしても、必ずランキンサイクル回路の排熱回収機でもエンジンの排熱を外部に排出することになってエネルギー効率が低下してしまう。
【0008】
本発明の目的は、簡易な構成で、冷房運転時及び暖房運転時共にエンジンの排熱を有効活用することができるエンジン駆動式空気調和装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、ガスエンジンにより駆動されて冷媒を吸入するとともに該吸入した冷媒を圧縮して吐出する圧縮機、冷房運転時は前記冷媒の凝縮器として機能し暖房運転時は前記冷媒の蒸発器として機能する室外機熱交換器及び冷房運転時は前記冷媒の蒸発器として機能し暖房運転時は前記冷媒の凝縮器として機能する室内機熱交換器が配設され、前記圧縮機から吐出された前記冷媒が該圧縮機に吸入されるまでの流路を形成する空気調和回路と、前記ガスエンジンの冷却液が循環する流路を形成する冷却液回路と、作動流体が循環する流路を形成するとともに、冷房運転時に前記ガスエンジンの排熱で前記作動流体を加熱して動力として回収するランキンサイクル回路と、前記冷却液回路の冷却液を供給可能な第1冷却液供給路に設けられ、暖房運転時は前記冷却液で前記冷媒を温めるとともに該冷媒の蒸発器として機能する第1補助熱交換器と、前記冷却液回路の冷却液を供給可能な前記第1冷却液供給路とは独立の第2冷却液供給路に設けられ、冷房運転時は前記冷却液で前記作動流体を昇圧する第2補助熱交換器と、
前記第1冷却液供給路及び前記第2冷却液供給路とは独立の冷却液回路に設けられ、該冷却液回路を循環する前記冷却液を放熱するためのラジエータと、前記第1冷却液供給路及び前記第2冷却液供給路に配設され、暖房運転時は前記第1冷却液供給路を開放するとともに前記第2冷却液供給路を閉鎖し、冷房運転時は前記第1冷却液供給路を閉鎖するとともに前記第2冷却液供給路を開放する切替手段と
、前記冷却液の温度が第1の所定温度よりも高く前記第1の所定温度よりも高い第2の所定温度よりも低い場合には前記切替手段により選択された前記第1冷却液供給路あるいは前記第2冷却液供給路を選択し、前記冷却液の温度が前記第2の所定温度よりも高い場合には前記ラジエータが設けられた前記冷却液回路を選択する選択手段と、を備えたことを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、ガスエンジンにより駆動されて冷媒を吸入するとともに該吸入した冷媒を圧縮して吐出する圧縮機、冷房運転時は前記冷媒の凝縮器として機能し暖房運転時は前記冷媒の蒸発器として機能する室外機熱交換器及び冷房運転時は前記冷媒の蒸発器として機能し暖房運転時は前記冷媒の凝縮器として機能する室内機熱交換器が配設され、前記圧縮機から吐出された前記冷媒が該圧縮機に吸入されるまでの流路を形成する空気調和回路と、前記ガスエンジンの冷却液が循環する流路を形成する冷却液回路と、作動流体が循環する流路を形成するとともに、冷房運転時に前記ガスエンジンの排熱で前記作動流体を加熱して動力として回収するランキンサイクル回路と、前記冷却液回路の冷却液を供給可能な第1冷却液供給路に設けられ、暖房運転時は前記冷却液で前記冷媒を温めるとともに該冷媒の蒸発器として機能する第1補助熱交換器と、前記冷却液回路の冷却液を供給可能な前記第1冷却液供給路とは独立の第2冷却液供給路に設けられ、冷房運転時は前記冷却液で前記作動流体を昇圧する第2補助熱交換器と、前記第1冷却液供給路及び前記第2冷却液供給路とは独立の冷却液回路に設けられ、該冷却液回路を循環する前記冷却液を放熱するためのラジエータと、前記ラジエータが設けられた前記冷却液回路と、前記第1冷却液供給路及び前記第2冷却液供給路とは独立のバイパス回路と、前記第1冷却液供給路及び前記第2冷却液供給路に配設され、暖房運転時は前記第1冷却液供給路を開放するとともに前記第2冷却液供給路を閉鎖し、冷房運転時は前記第1冷却液供給路を閉鎖するとともに前記第2冷却液供給路を開放する切替手段と、前記冷却液の温度が第1の所定温度よりも低い場合には前記バイパス回路を選択し、前記冷却液の温度が前記第1の所定温度よりも高く前記第1の所定温度よりも高い第2の所定温度よりも低い場合には前記切替手段により選択された前記第1冷却液供給路あるいは前記第2冷却液供給路を選択し、前記冷却液の温度が前記第2の所定温度よりも高い場合には前記ラジエータが設けられた前記冷却液回路を選択する選択手段と、を備えたことを要旨とする。
【0010】
請求項1及び請求項2に記載の発明の構成によれば、例えば暖房運転時、前記切替手段により開放された前記第1冷却液供給路に前記ガスエンジンを冷却する冷却液、即ち該ガスエンジンの排熱で加熱される冷却液が供給されることで、前記第1補助熱交換器において前記空気調和回路の冷媒が温められて該冷媒の蒸発に供される。このように、前記第2冷却液供給路(第2補助熱交換器)に冷却液を供給することなく、冷媒を温めてこれを蒸発させることができ、暖房効率を向上することができる。一方、冷房運転時、前記切替手段により開放された前記第2冷却液供給路に前記ガスエンジンを冷却する冷却液、即ち該ガスエンジンの排熱で加熱される冷却液が供給されることで、前記第2補助熱交換器において前記ランキンサイクル回路の作動流体が昇圧される。このように、前記第1冷却液供給路(第1補助熱交換器)に冷却液を供給することなく、作動流体を昇圧することができ、前記ランキンサイクル回路の動力回収効率を向上することができる。
【0011】
特に、暖房運転時の前記第1補助熱交換器における前記ガスエンジンの排熱利用及び冷房運転時の前記第2補助熱交換器における前記ガスエンジンの排熱利用を、前記切替手段による前記第1冷却液供給路及び前記第2冷却液供給路の選択的な開閉という極めて簡易な構造で実現することができる。
【0012】
請求項
3に記載の発明は、請求項1
または請求項2に記載のエンジン駆動式空気調和装置において、
前記ラジエータは、前記ランキンサイクル回路
に配設され、前記作動流体を膨張させて動力回収する膨張機及び該膨張機からの前記作動流体を凝縮するためのランキンサイクル用ラジエータ
であることを要旨とする。
【0013】
同構成によれば、冷却液の温度が高温時に冷却液を放熱するための専用のラジエータが不要になる分、部品点数を削減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、簡易な構成で、冷房運転時及び暖房運転時共にエンジンの排熱を有効活用することができるエンジン駆動式空気調和装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態を示す冷媒回路図及び冷却液回路図。
【
図2】同実施形態及びその動作を示す冷却液回路図及びランキンサイクル回路図。
【
図3】同実施形態及びその動作を示す冷却液回路図及びランキンサイクル回路図。
【
図4】本発明の変形形態を示す冷却液回路図及びランキンサイクル回路図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1〜
図3を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1に示すように、エンジン駆動式空気調和装置は、室外側及び室内側で機能の分割可能な空気調和回路11を備える。この空気調和回路11は、室外側に設置されたガスエンジン10により駆動される圧縮機12から吐出された冷媒が該圧縮機12に吸入されるまでの流路を形成する。すなわち、この空気調和回路11には、冷房・暖房時の流路を切り替える四方弁13、室外空気と冷媒との間で熱交換を行う室外機熱交換器14、並列接続された逆止弁15a及び電子膨張弁15b、空気調和回路11の冷媒の流量を調整する膨張弁21、室内空気と冷媒との間で熱交換を行う室内機熱交換器22、ガスエンジン10の冷却液と冷媒との間で熱交換を行う第1補助熱交換器16、電子膨張弁17、液冷媒とガス冷媒とを分離するアキュムレータ18などが設けられている。
【0017】
ここで、エンジン駆動式空気調和装置が冷房運転を行うときは、空気調和回路11の四方弁13により流路が切り替えられて冷房サイクルが行われる。すなわち、
図1に実線の矢印にて示したように、圧縮機12で高温・高圧となった冷媒は、四方弁13を介して室外機熱交換器14へと流入する。このとき、凝縮器としての室外機熱交換器14では、室外空気と冷媒との間で熱交換を行うことにより、冷媒が凝縮される。そして、室外機熱交換器14を流出した冷媒は、逆止弁15aを介して室内側に導かれ、膨張弁21で膨張した後に、室内機熱交換器22へと流入する。このとき、蒸発器としての室内機熱交換器22では、室内空気と冷媒との間で熱交換を行うことにより、冷媒が加熱されて蒸発する一方、冷媒の蒸発熱により室内空気が冷却されて冷風となり、冷房効果が生じる。さらに、室内機熱交換器22を流出した冷媒は室外側に導かれ、四方弁13を介してアキュムレータ18へと流入するとともに、該アキュムレータ18で液冷媒が分離された後に圧縮機12に戻る。従って、冷房運転時には第1補助熱交換器16へと冷媒が流入することはない。
【0018】
一方、エンジン駆動式空気調和装置が暖房運転を行うときは、空気調和回路11の四方弁13により流路が切り替えられて暖房サイクルが行われる。すなわち、
図1に破線の矢印にて示したように、圧縮機12で高温・高圧となった冷媒は、四方弁13を介して室内側に導かれ、室内機熱交換器22へと流入する。このとき、凝縮器としての室内機熱交換器22では、室内空気と冷媒との間で熱交換を行うことにより、冷媒が凝縮する一方、冷媒の凝縮熱により室内空気が加熱されて温風となり、暖房効果が生じる。そして、室内機熱交換器22を流出した冷媒は、膨張弁21で膨張した後に室外側に導かれ、電子膨張弁15bを介して室外機熱交換器14へと流入する。このとき、蒸発器としての室外機熱交換器14では、室外空気と冷媒との間で熱交換を行うことにより、冷媒が加熱されて蒸発する。あるいは、室外側に導かれた冷媒は、電子膨張弁17を介して第1補助熱交換器16へと流入する。このとき、蒸発器としての第1補助熱交換器16では、冷却液と冷媒との間で熱交換を行うことにより、冷媒が加熱されて蒸発する。そして、室外機熱交換器14又は第1補助熱交換器16を流出した冷媒は、四方弁13を介してアキュムレータ18で液冷媒が分離された後に圧縮機12に戻る。なお、暖房運転時、一般的に、室外機熱交換器14及び第1補助熱交換器16の両方に冷媒を流すが、極例外的に、室外機熱交換器14及び第1補助熱交換器16のいずれか一方にのみ冷媒を流すようにしてもよい。
【0019】
エンジン駆動式空気調和装置は、室外側にガスエンジン10の冷却液が循環する流路を形成する冷却液回路30を備える。この冷却液回路30には、冷却液の流れを作るウォーターポンプ31、冷却液を空冷するラジエータ32、前記第1補助熱交換器16、ランキンサイクルの作動流体(例えば冷媒)と冷却液との間で熱交換を行う第2補助熱交換器33、ラジエータ32に向かう冷却液の流量とバイパス流路34に向かう冷却液の流量と第1補助熱交換器16又は第2補助熱交換器33に向かう冷却液の流量とを自動的にコントロールするサーモスタット35などが設けられている。
【0020】
なお、第1補助熱交換器16及び第2補助熱交換器33は、冷却液を供給可能な互いに独立の第1冷却液供給路36及び第2冷却液供給路37に配設されている。これら第1冷却液供給路36及び第2冷却液供給路37には、互いに排他的にオン・オフが切り替えられることで開閉される第1電子膨張弁38及び第2電子膨張弁39が配設されている。第1電子膨張弁38及び第2電子膨張弁39は、切替手段を構成する。すなわち、第1電子膨張弁38がオン状態にあり、第2電子膨張弁39がオフ状態にあるときには、第1冷却液供給路36が開放されて第1補助熱交換器16に対し冷却液が供給可能であるとともに、第2冷却液供給路37が閉鎖されて第2補助熱交換器33に対し冷却液が供給不能である。反対に、第1電子膨張弁38がオフ状態にあり、第2電子膨張弁39がオン状態にあるときには、第1冷却液供給路36が閉鎖されて第1補助熱交換器16に対し冷却液が供給不能であるとともに、第2冷却液供給路37が開放されて第2補助熱交換器33に対し冷却液が供給可能である。
【0021】
そして、サーモスタット35は、冷却液の温度に応じてラジエータ32に向かう冷却液の流量とバイパス流路34に向かう冷却液の流量と第1補助熱交換器16又は第2補助熱交換器33に向かう冷却液の流量とを調節する。
【0022】
具体的には、冷却液温度Tが所定の低側温度T1(例えば50°C)以下の場合には、ガスエンジン10を通過した冷却液が主としてバイパス流路34を介してウォーターポンプ31に戻る。また、冷却液温度Tが低側温度T1を超え、かつ所定の高側温度T2(例えば70°C)以下の場合には、ガスエンジン10を通過した冷却液が主として、第1電子膨張弁38及び第1補助熱交換器16を介してウォーターポンプ31に戻り、あるいは第2電子膨張弁39及び第2補助熱交換器33を介してウォーターポンプ31に戻る。さらに、冷却液温度Tが高側温度T2を超える場合には、ガスエンジン10を通過した冷却液が主としてラジエータ32を介してウォーターポンプ31に戻る。
【0023】
なお、室外側には、ガスエンジン10の排気ガスと流体(例えば冷却液)との間で熱交換を行うための排気熱交換器19が設置されている。この排気熱交換器19で熱交換された流体は、プレート熱交換器41において、ランキンサイクルの作動流体との間で熱交換を行う。
【0024】
エンジン駆動式空気調和装置は、
図2に示すように、前述の作動流体が循環する流路を形成するとともに冷房運転時にガスエンジン10の排熱で作動流体を加熱して動力として回収するランキンサイクル回路40を備える。このランキンサイクル回路40には、前記第2補助熱交換器33、前記プレート熱交換器41、該プレート熱交換器41を経由した作動流体を膨張させて駆動力を発生する膨張機42、該膨張機42を経由した作動流体を凝縮させるための凝縮器として機能するランキンサイクル用ラジエータ43、受液器44及び作動流体を循環させるポンプ45などが配設されている。
【0025】
ランキンサイクル回路40は、ポンプ45により送り出された作動流体を、第2補助熱交換器33においてガスエンジン10の冷却液と熱交換することでこれを昇圧し、引き続きプレート熱交換器41において排気熱交換器19で排気ガスにより加熱された流体と熱交換することで更にこれを昇圧する。そして、ランキンサイクル回路40は、膨張機42において作動流体を膨張させることでガスエンジン10の排熱を動力として回収する。膨張機42を流出した作動流体は、ランキンサイクル用ラジエータ43において室外空気と熱交換することで凝縮される。そして、ランキンサイクル用ラジエータ43を流出した冷媒は、受液器44を介してポンプ45に戻る。なお、膨張機42には、発電機46が機械的に接続されており、膨張機42で発生した機械的エネルギー(駆動力)を更に電気的エネルギーに変換してこれを回収するように構成されている。
【0026】
次に、本実施形態の動作について説明する。
まず、冷房運転時の動作について説明する。このとき、空気調和回路11の流路が四方弁13により冷房サイクルに切り替えられているものとする。そして、冷房運転時には第1補助熱交換器16が使用されないことから、冷却液回路30では、第1電子膨張弁38がオフされて第1冷却液供給路36が閉鎖されるとともに、第2電子膨張弁39がオンされて第2冷却液供給路37が開放されている。これにより、第2補助熱交換器33への冷却液の供給が可能になって、ランキンサイクル回路40の作動流体との熱交換、即ちランキンサイクル回路40におけるガスエンジン10の排熱利用が可能となる。
【0027】
詳述すると、
図2に破線の矢印にて示したように、運転開始時等で冷却液温度Tが所定の低側温度T1以下の場合には、ウォーターポンプ31から送り出されてガスエンジン10を通過した冷却液は、主としてサーモスタット35及びバイパス流路34を経てウォーターポンプ31に戻る。これにより、ガスエンジン10での冷却液の加熱が繰り返されて、冷却液温度Tが速やかに上昇する。
【0028】
また、
図2に1点鎖線の矢印にて示したように、冷却液温度Tが低側温度T1を超え、かつ所定の高側温度T2以下の場合には、ウォーターポンプ31から送り出されてガスエンジン10を通過した冷却液は、主としてサーモスタット35及び第2冷却液供給路37(第2補助熱交換器33)を経てウォーターポンプ31に戻る。この場合、第2補助熱交換器33において冷却液によりランキンサイクル回路40の作動流体を昇圧するべく、ガスエンジン10の排熱が利用される。そして、ランキンサイクル回路40の動力回収効率が向上される。
【0029】
なお、第2補助熱交換器33におけるランキンサイクル回路40の作動流体との熱交換により、通常は冷却液温度Tが高側温度T2を超えることがない。換言すれば、従来、冷房運転時にラジエータ32で放熱していたガスエンジン10の排熱を、ランキンサイクル回路40において動力として回収している。しかしながら、仮に冷却液温度Tが高側温度T2を超える場合には、
図2に2点鎖線の矢印にて示したように、ウォーターポンプ31から送り出されてガスエンジン10を通過した冷却液は、主としてサーモスタット35及びラジエータ32を経てウォーターポンプ31に戻る。この場合、ガスエンジン10の排熱は、ラジエータ32において冷却液が外部に放熱することで放出される。
【0030】
続いて、暖房運転時の動作について説明する。このとき、空気調和回路11の流路が四方弁13により暖房サイクルに切り替えられているものとする。そして、暖房運転時にはガスエンジン10の排熱利用のために第1補助熱交換器16が使用されることから、冷却液回路30では、第1電子膨張弁38がオンされて第1冷却液供給路36が開放されるとともに、第2電子膨張弁39がオフされて第2冷却液供給路37が閉鎖されている。これにより、第1補助熱交換器16への冷却液の供給が可能になって、空気調和回路11の冷媒との熱交換、即ち空気調和回路11におけるガスエンジン10の排熱利用が可能となる。
【0031】
詳述すると、
図3に破線の矢印にて示したように、運転開始時等で冷却液温度Tが低く所定の低側温度T1以下の場合には、ウォーターポンプ31から送り出されてガスエンジン10を通過した冷却液は、主としてサーモスタット35及びバイパス流路34を経てウォーターポンプ31に戻る。これにより、ガスエンジン10での冷却液の加熱が繰り返されて、冷却液温度Tが速やかに上昇する。
【0032】
また、
図2に1点鎖線の矢印にて示したように、冷却液温度Tが低側温度T1を超え、かつ所定の高側温度T2以下の場合には、ウォーターポンプ31から送り出されてガスエンジン10を通過した冷却液は、主としてサーモスタット35及び第1冷却液供給路36(第1補助熱交換器16)を経てウォーターポンプ31に戻る。この場合、第1補助熱交換器16において冷却液により空気調和回路11の冷媒を温めて蒸発させるべく、ガスエンジン10の排熱が利用される。そして、空気調和回路11の暖房効率が向上される。
【0033】
さらに、
図2に2点鎖線の矢印にて示したように、冷却液温度Tが高側温度T2を超える場合には、ウォーターポンプ31から送り出されてガスエンジン10を通過した冷却液は、主としてサーモスタット35及びラジエータ32を経てウォーターポンプ31に戻る。この場合、ガスエンジン10の排熱は、ラジエータ32において冷却液が外部に放熱することで放出される。
【0034】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、例えば暖房運転時、第2冷却液供給路37(第2補助熱交換器33)に冷却液を供給することなく、第1補助熱交換器16において空気調和回路11の冷媒を温めてこれを蒸発させることができ、暖房効率を向上することができる。一方、冷房運転時、第1冷却液供給路36(第1補助熱交換器16)に冷却液を供給することなく、作動流体を昇圧することができ、ランキンサイクル回路40の動力回収効率を向上することができる。特に、暖房運転時の第1補助熱交換器16におけるガスエンジン10の排熱利用及び冷房運転時の第2補助熱交換器33におけるガスエンジン10の排熱利用を、第1及び第2電子膨張弁38,39による第1及び第2冷却液供給路36,37の選択的な開閉という極めて簡易な構造で実現することができる。また、運転状態(冷房・暖房)に応じて第1及び第2電子膨張弁38,39のオン・オフを切り替えるという極めて簡易な制御となる分、開発工数及びコストを削減することができる。
【0035】
(2)本実施形態では、基本的に暖房運転時の冷却液回路30の冷却液の経路は現行とおりであり、従来のエンジン駆動式空気調和装置に僅かな変更を加えることで、冷房運転時にランキンサイクル回路40においてエンジン排熱を有効活用できる。
【0036】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・
図4に示すように、冷却液回路30のラジエータ32を割愛するとともに、ランキンサイクル回路40のランキンサイクル用ラジエータ43をラジエータ(32)として兼用させてもよい。すなわち、冷房運転時であれば、既述のように通常は冷却液温度Tが高側温度T2を超えることがなく冷却液回路30のラジエータ32がそもそも不要である。一方、暖房運転時であれば、ランキンサイクル回路40におけるガスエンジン10の排熱利用がないことから、冷却液温度Tが高側温度T2を超える場合には、未使用状態にあるランキンサイクル用ラジエータ43を流用して、該ランキンサイクル用ラジエータ43において冷却液を外部に放熱させる。そして、ガスエンジン10の排熱を外部に放出させる。このように変更することで、前記実施形態と同様の効果に加え、冷却液の温度が高温時に冷却液を放熱するための専用のラジエータ(32)が不要になる分、部品点数を削減することができる。
【0037】
・前記実施形態において、第1及び第2電子膨張弁38,39に代えて、例えばサーモスタット35の出口と、第1冷却液供給路36の入口及び第2冷却液供給路37の入口との連通を切り替える三方弁を採用してもよい。
【符号の説明】
【0038】
10…ガスエンジン、11…空気調和回路、12…圧縮機、14…室外機熱交換器、16…第1補助熱交換器、22…室内機熱交換器、30…冷却液回路、32…ラジエータ、33…第2補助熱交換器、36…第1冷却液供給路、37…第2冷却液供給路、40…ランキンサイクル回路、42…膨張機、43…ランキンサイクル用ラジエータ。