特許第5790152号(P5790152)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5790152
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】電気湯沸かし器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/21 20060101AFI20150917BHJP
   A47J 36/38 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   A47J27/21 101S
   A47J36/38
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-118831(P2011-118831)
(22)【出願日】2011年5月27日
(65)【公開番号】特開2012-245139(P2012-245139A)
(43)【公開日】2012年12月13日
【審査請求日】2014年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003702
【氏名又は名称】タイガー魔法瓶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092875
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 孝治
(74)【代理人】
【識別番号】100116159
【弁理士】
【氏名又は名称】玉城 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100075731
【弁理士】
【氏名又は名称】大浜 博
(72)【発明者】
【氏名】藤川 尚輝
(72)【発明者】
【氏名】上江洲 栄輔
【審査官】 長浜 義憲
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−197022(JP,A)
【文献】 特開平10−314029(JP,A)
【文献】 特開平10−108894(JP,A)
【文献】 特開2002−360427(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第02398997(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/21
A47J 36/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する内容器および該内容器を加熱する加熱手段を備えた容器本体と、該容器本体の上部側開口部を覆蓋する蓋体とからなる電気湯沸かし器であって、前記蓋体内に、前記内容器内連通する蒸気入口と外部に開放されていない部分で蓋体外に開口する蒸気出口とを結ぶ蒸気経路を形成するとともに、該蒸気経路に、通路断面積が拡大、縮小する通路断面積の変化を複数箇所設けて蒸気圧力を変化させることにより、前記蒸気入口から導入された蒸気の大半が前記蒸気経路を流れる過程において結露するようにしたことを特徴とする電気湯沸かし器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、電気ヒータ等の加熱手段により液体容器内の液体(例えば水)を加熱するようにした電気湯沸かし器に関し、さらに詳しくは加熱時に外部に蒸気が出ないようにした電気湯沸かし器の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
気湯沸かし器は、一般に、液体(例えば水)を入れる内容器および該内容器内の液体を加熱する加熱手段を備えた容器本体と、該容器本体の上部開口を覆蓋する蓋体とからなっており、該蓋体の上面には、沸騰時に外部に蒸気を排出する蒸気排出口が設けられている。
【0003】
前記蒸気排出口は、蓋体の内面側における蒸気導入口部分から蒸気を導入し、転倒止水弁を介した蒸気排出通路を通して、上面側に形成したスリット状の蒸気排出口から室内空間上方に吐出させるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この結果、沸騰時における内容器内の圧力は低下し、内容器内の液体(例えば、お湯)は、スムーズな形で沸騰し、所定の時間内沸騰が継続された後に、必要に応じて保温状態に移行されることとなる。
【0005】
ところが、上記構成の電気湯沸かし器の場合、床面上に置いて使用されるケースもあり、そのような場合、子供などが蒸気排出口から吐出される蒸気に触れる可能性がある。また、多量の蒸気が出ると、室内の湿度が高くなり、ふすまや壁紙が湿るし、必要以上に沸騰状態を続けると、消費電力も大きくなる等の問題がある。
【0006】
従って、何等かの方法で、蒸気自体を外部に出さなくするか、または、蒸気発生量そのものを低減することが好ましい。
【0007】
これに関し、電気炊飯器等においては、蓋体に形成した蒸気排出口から蒸気が排出しないように構成したものが既に提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、電気炊飯器等における技術を電気湯沸かし器に適用するには、構造上の無理がある。
【0008】
例えば、蒸気経路を水タンクに通して冷却するタイプの場合、蒸気経路を水没させると、蒸気出口が塞がってしまい、電気湯沸かし器特有の吐出口からの自然吐出という危険な状態が発生する。また、沸騰終了後に内容器内が陰圧となって、水タンクの水を吸い上げてしまうおそれがあり、出湯すると、水タンクの水を吸い上げてしまうというような電気湯沸かし器特有の不具合が生じるおそれがある。
【0009】
さらに、ファンを用いて蒸気が見えない温度に冷やして飛ばす方式の場合、非常にコストがかかるとともに、電気湯沸かし器の蓋体は、着脱が可能な場合が多いところから、ファンを蓋体には設けられない等の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−189519号公報
【特許文献2】特開平8−140836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記ように、電気湯沸かし器の場合、蒸気自体を外部に出さなくするか、または、蒸気発生量そのものを低減することが好ましいという課題が存している。
【0012】
本願発明は、のような課題を解決するためになされたものであり、蓋体内に蒸気を結露させる蒸気系路を設けることによって、蓋体上面の蒸気排出口を無くし、外部に蒸気を出さないようにした電気湯沸かし器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明では、上記課題を解決するための手段として、液体を収容する内容器および該内容器を加熱する加熱手段を備えた容器本体と、該容器本体の上部側開口部を覆蓋する蓋体とからなる電気湯沸かし器において、前記蓋体内に、前記内容器内連通する蒸気入口と外部に開放されていない部分で蓋体外に開口する蒸気出口とを結ぶ蒸気経路を形成するとともに、該蒸気経路に、通路断面積が拡大、縮小する通路断面積の変化を複数箇所設けて蒸気圧力を変化させることにより、前記蒸気入口から導入された蒸気の大半が前記蒸気経路を流れる過程において結露するようにしている。
【0014】
このような構成によれば、沸騰時に内容器内において発生した蒸気が、蒸気入口から導入された後、通路断面積が拡大、縮小する通路断面積の変化部を複数箇所設けて形成された蒸気経路を流れる過程において、蒸気圧力が高い状態から低い状態、低い状態から高い状態、高い状態から低い状態へと複数回変化する。その結果、流れる蒸気の大半が効率良く結露することとなる。
【0015】
しかも、蒸気系路下流側の蒸気出口は、外部に開放されていない部分で蓋体外に開口している。
【0016】
したがって、外部への蒸気の排出がほとんど行われることがなくなる。
【発明の効果】
【0017】
以上の結果、本願発明によれば、外部への蒸気の排出がほとんど行われることがなくなるところから、蓋体の上面に蒸気排出口を形成しなくとも、電気湯沸かし器の安全が確保されることとなり、蓋体内に通路断面積の変化部を複数箇所有する蒸気経路を形成するという簡単な構成によって、蓋体から外部への蒸気の排出をなくすことが可能とな、子供が排出蒸気に触れるおそれもなく、室内の湿気が増大してしまうということもなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本願発明の実施の形態にかかる電気湯沸かし器の斜視図である。
図2】本願発明の実施の形態にかかる電気湯沸かし器の縦断面図である。
図3】本願発明の実施の形態にかかる電気湯沸かし器の蓋体開蓋時の斜視図である。
図4図2のX部拡大図である。
図5】本願発明の実施の形態にかかる電気湯沸かし器における蓋体の斜視図である。
図6】本願発明の実施の形態にかかる電気湯沸かし器における蓋体の上板を取り外した状態を示す斜視図である。
図7】本願発明の実施の形態にかかる電気湯沸かし器における蓋体に取り付けられる蒸気経路構成部を示す斜視図である。
図8図7に示す蒸気経路構成部の分解斜視図である。
図9】本願発明の実施の形態にかかる電気湯沸かし器における蒸気経路内の蒸気の流れを示す説明図である。
図10図4に示すX部拡大図における蒸気経路において内容器から蒸気センサ部までの蒸気および結露水の流れを示す説明図である。
図11図4に示すX部拡大図における蒸気経路において蒸気センサ部から蒸気経路構成部までの蒸気および結露水の流れを示す説明図である。
図12】本願発明の実施の形態にかかる電気湯沸かし器における蓋体開蓋時の蓋体内の結露水の流れを示す説明図である。
図13】本願発明の実施の形態にかかる電気湯沸かし器の前方傾斜時あるいは前方転倒時における蒸気経路内の結露水の流れを示す説明図である。
図14】本願発明の実施の形態にかかる電気湯沸かし器の蓋体開蓋時、後方傾斜時あるいは後方転倒時における蒸気経路内の結露水の流れを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付の図面を参照して、本願発明の実施の形態について説明する。
【0020】
この電気湯沸かし器は、湯沸かしおよび保温機能を備えており、液体(例えば、水)を収容する内容器3を備えた容器本体1と、該容器本体1の上部側開口部を開閉する蓋体2と、前記内容器3を湯沸かし時および保温時において加熱する加熱手段である電気ヒータ4と、前記内容器3内のお湯を外部へ給湯注出するための給湯通路5と、AC電源が接続されている状態において前記給湯通路5を介して前記内容器3内のお湯を外部へ注出する電動式の給湯ポンプ6とを備えて構成されている。符号5aは前記給湯通路5の出口(即ち、吐出口)、5bは前記給湯通路5において前記容器本体1の前部に位置する直管部に設けられた透明な計量管である。
【0021】
前記容器本体1は、外側面部を構成する合成樹脂製の筒状(本実施の形態の場合、四角筒状)の外ケース7と、内側面部を構成する前記内容器3と、前記外ケース7と前記内容器3とを上部側で一体的に結合固定するとともに前記蓋体2が閉蓋時に装着される合成樹脂製の環状の肩部材8と、底面部を構成する合成樹脂製の皿状の底部材9とからなっている。符号10は前記外ケース7の前部において前記計量管5bが見える位置に設けられた透明な計量覗き窓である。
【0022】
前記内容器3は、ステンレス製の有底円筒形状の内筒3Aと、同じくステンレス製で底部のない円筒形状の外筒3Bとを、上端側部分および下端側部分で相互に接合し、それら内筒3Aと外筒3Bとの間に真空断熱空間を設けた保温性能の高い真空二重壁構造の断熱構造体からなっており、その底部には、外周側における内筒3Aと外筒3Bとの接合部までを除いて前記内筒3Aの底面部のみにより構成された1枚板部3aが形成されている。該一枚板部3aは、若干上方に高く突出して形成されていて、その下面側には、前記電気ヒータ4(例えば、雲母板にワット数の異なる2組の発熱体を保持させたマイカヒータ)が取り付けられている。
【0023】
前記蓋体2は、合成樹脂製の上板11と、該上板11に対して外周縁同士が相互に結合された合成樹脂製の下板12とからなっており、前記肩部材8の後端部8aに対してヒンジピン13およびヒンジロック14を介して上下方向に開閉自在且つ着脱自在に支持されている。
【0024】
前記蒸気回収ユニット18は、図8図9に示すように、合成樹脂製の下部構成部材18aと合成樹脂製の上部構成部材18bとを一体的に結合して構成されており、後端部(即ち、蓋体2の後端側)に位置する矩形部分19と、該矩形部分19の前方側に位置する半円形状の拡大部分20と、該拡大部分20の一端側(即ち、上方視左側)から前方側に突出する突出部分21とからなっている。
【0025】
そして、前記蒸気入口16は、前記拡大部分20の後方部に設けられるとともに、前記蒸気出口17は、前記突出部分21の先端部に設けられている。なお、蒸気出口17は、その全体が内容器3内に連通するのではなく、一部が内容器3内に連通し且つ一部が前記肩部材8内において前記給湯通路5の出口(即ち、吐出口)5aに隣接して開口されている。すなわち、蒸気出口17は、外部に開放されていない部分で蓋体2外に開口されている。
【0026】
このようにすると、従来のような蓋体2上面の蒸気排出口は無くなり、蒸気出口17からの蒸気が蓋体2から外部へ出ることもなくなるとともに、蒸気経路15への蒸気導入が蒸気入口16に集中することとなり、蒸気経路15を蒸気Sの結露用通路として有効に利用することができるようになる
【0027】
なお、本実施の形態においては、前記蒸気出口17は、蓋体2の下面側に開口するように構成されているが、蒸気出口17は、蓋体2の外部であれば、いずれの位置に開口するように構成してもよい。
【0028】
前記蒸気経路15は、図9に示すように、前記蒸気入口16から導入された蒸気Sを一旦後方側(即ち、矩形部分19の後端部)に導く第1通路15aと、該第1通路15aの後端からUターンして前方側(即ち、拡大部分20の後方側)に延びる第2通路15bと、該第2通路15bに続いて前記拡大部分20の中間位置において左右に延びる第3通路15cと、該第3通路15cに続いて前記拡大部分20の中間位置において左右に延びる第4通路15dと、該第4通路15dに続いて前記拡大部分20の前端部において左右に延びる第5通路15eと、該第5通路15eに続いて前記突出部分21の前端部まで延びて前記蒸気出口17に達する第6通路15fとからなっている。つまり、蒸気経路15は、該蒸気経路15を流れる蒸気Sが結露し易いように、全体として蒸気入口16から蒸気出口17にかけて左右にジグザグ形状で迂回した長い経路とされているのである。このようにすると、電気湯沸かし器が左右のどちら側に転倒したとしても、ジグザグ形状のいずれか一方が上側となるところから、内容器3内のお湯が漏れ出ることがなくなる。そして、前記第1通路15aと前記第2通路15bとの連通部(即ち、Uターン部)には、蒸気Sの温度を検出すべく肩部材8に取り付けられた蒸気センサ22を臨ませるための連通穴(結露水出口)23が形成されており、該連通穴23の開口縁には、前記蓋体2の閉蓋時において前記連通穴23をシールするためのシールパッキン24が設けられている。従って、前記第1通路15aと前記第2通路15bとは、蓋体2の閉蓋時においてのみ連通されることとなっており、蓋体2の開蓋時においては前記連通穴23から結露水Wが流出(即ち、内容器3内へ還流)されることとなっている。これらの第1〜第6通路15a〜15fは、前記下部構成部材18aの上面に一体に突設されたリブ25によって区画形成されている。
【0029】
前記第3通路15cには、前記第2通路15bの出口側に位置して通路断面積が広がる通路拡大部15c1と、該通路拡大部15c1の右端側に位置して電気湯沸かし器の前方傾斜時あるいは前方転倒時に結露水Wをトラップする(図13参照)トラップ部15c2とが形成され、前記第4通路15dには、前記第3通路15cの出口側に位置して通路断面積が広がる通路拡大部15d1と、該通路拡大部15d1の左端側に位置して電気湯沸かし器の前方傾斜時あるいは前方転倒時に結露水Wをトラップする(図13参照)トラップ部15d2とが形成され、前記第5通路15eには、前記第4通路15dの出口側に位置して通路断面積が広がる通路拡大部15e1と、該通路拡大部15e1の右端側に位置して電気湯沸かし器の前方傾斜時あるいは前方転倒時に結露水Wをトラップする(図13参照)トラップ部15e2とが形成され、前記第6通路15fには、前記第5通路15eの出口側に位置して電気湯沸かし器の前方傾斜時あるいは前方転倒時に結露水Wをトラップする(図13参照)トラップ部15f2と、前記第6通路15fの出口側に位置して電気湯沸かし器の前方傾斜時あるいは前方転倒時に結露水Wをトラップする(図13参照)トラップ部15f3が形成されている。
【0030】
なお、本実施の形態においては、前記通路拡大部15c1,15d1,15e1は、第3ないし第5通路15c〜15eと同一平面上において通路が拡大する構成となっているが、通路断面積が広がればよいのであって、上下方向(即ち、深さ方向)において通路断面積が広がるように構成することもできる。
【0031】
そして、前記蒸気回収ユニット18は、蒸気経路15が前記蓋体2の閉蓋時において全体が蒸気入口16側(即ち、ヒンジ側)に向かって下り傾斜となるように取り付けられている。このようにすると、蒸気経路15を流れる蒸気Sが結露して生じた結露水Wが蒸気入口16から前記内容器3内に還流し易くなるのである。
【0032】
また、前記蓋体2における下板12の下面側には、前記蒸気入口16への蒸気導入口26aを備えた金属製の内カバー部材26が固定されており、該内カバー部材26の外周縁(全周)には、前記蓋体2の閉蓋時において前記内容器3の上端開口部に圧接される耐熱ラバー製のシールパッキン27が設けられている。
【0033】
図面中、符号29は蓋体2の開閉状態を規制する蓋開閉レバー、30は各種スイッチ類の操作面や液晶表示手段の表示面を備えた操作パネル部、31は電気湯沸かし器を持ち運ぶ際に用いる把手である。
【0034】
上記のように構成したことにより、沸騰開始後、蓋体2下部の蒸気導入口26aを経て蒸気入口16に導かれた内容器3からの蒸気Sは、図9に示すように、蒸気経路15を蒸気出口17に向かって流れる過程において、先ず蒸気センサ22により蒸気温度が検出され、沸騰状態あると判定されると、電気ヒータ4が保温加熱状態となる。従って、従来の内容器3の底部の温度を検出する底センサでの沸騰検知より早く検知することができるところから、内容器3内のお湯から生ずる蒸気Sが少なくなるとともに、省エネにもなる。
【0035】
その後、蒸気経路15を流れる過程においては、蒸気Sは、第2通路15bから第3通路15cに入ると、該第3通路15cおける通路拡大部15c1において圧力が低減され、結露が促進される。その後、第3通路15c下流の通路縮小部を経て第4通路15dの通路拡大部15d1で圧力が低減され、結露が促進される。さらに、その後、第4通路15d下流の通路縮小部を経て第5通路15eの通路拡大部15e1で圧力が低減されて、結露が促進される。
【0036】
つまり、同構成では、沸騰時に内容器3内において発生した蒸気Sが、蒸気入口16から導入された後、通路断面積が拡大、縮小する第3〜第5通路15c〜15eを流れる過程において、蒸気圧力が高い状態から低い状態、低い状態から高い状態、高い状態から低い状態へと複数回変化する。その結果、同蒸気経路15を流れる過程において、内容器内で発生した大半の蒸気Sが効率良く結露水Wに変えられることになり、蒸気出口17からは蒸気の排出が殆どなくなる。
【0037】
そして、蒸気経路15において結露した結露水Wは、蓋体2の閉蓋時において全体が蒸気入口16側に向かって下り傾斜部分を持つ蒸気経路15を介して蒸気入口16に向かって流れ、蒸気入口16から内容器3内に還流されることとなる。
【0038】
しかも、この実施の形態の場合、上記蒸気系路15下流側(第5、第6通路15e、15f下流側)の蒸気出口17は、上述のように外部に開放されていない部分で蓋体2外に開口している。したがって、より確実に外部への蒸気の排出が阻止される。
【0039】
この実施の形態の場合、上記第3通路15c、第4通路15d、第5通路15e各々の通路拡大部および通路縮小部は、図示のごとく、それら各通路を形成するリブ25の壁厚を変えることにより実現されている。
【0040】
また、電気湯沸かし器の前方傾斜時あるいは前方転倒時においては、図13に示すように、蒸気経路15内において生じた結露水Wのうち蒸気入口16から内容器3内に還流された分を除く部分は、蒸気経路15を蒸気出口17側に向かって流れるが、トラップ部15c2,15d2,15e2,15f2,15f3に貯溜されることとなる。なお、トラップ部15f3の入口側から蒸気出口17にかけての部分にある結露水Wは、蒸気出口17から排出される可能性があるが、当該部分に残る結露水Wは殆どないので問題とはならない。
【0041】
さらに、蓋体2の開蓋時においては、図12および図14に示すように、蒸気経路15内において生じた結露水Wのうち蒸気入口16から内容器3内に還流された分を除く部分は、蒸気センサ22が臨む連通穴23から結露水Wが流出(即ち、内容器3内へ還流)される。
【0042】
さらにまた、電気湯沸かし器の後方傾斜時あるいは後方転倒時においては、図14に示すように、蒸気経路15内において生じた結露水Wのうち蒸気入口16から内容器3内に還流された分を除く部分は、蒸気センサ22が臨む第1通路15aと第2通路15bとの連通部(即ち、Uターン部)へ戻ることとなる。その後、電気湯沸かし器を正常姿勢(即ち、正立姿勢)に戻すと、結露水Wは、蒸気経路15への蒸気入口16から内容器3内に還流されることとなるので、結露水Wが外部へ漏れ出ることはなくなる。
【0043】
上記したように、本実施の形態においては、大半の発生蒸気が結露化され、内容器3内に還流されることとなるところから、蒸気レスタイプの電気湯沸かし器を、極めて低コストで提供することが可能となる。しかも、蒸気経路15には結露水Wが殆ど残らないので、ユーザは、蒸気経路15を構成する蒸気回収ユニット18を分解してお手入れを行わなくてもよいこととなる(即ち、メンテナンスフリーとなる)。
【0044】
本実施の形態においては、蒸気入口16をヒンジピン13側に設け且つ蒸気出口17を蓋体の前方側に設けているが、蒸気入口16を蓋体の前方側に設け且つ蒸気出口17をヒンジピン13側に設けてもよい。また、蒸気回収ユニット18を、転倒流水時の湯溜まり部との間に隙間を設けて設置すると、冷却性能を維持し易くなる。
【0045】
なお、本願発明は、上記実施の形態において説明したものに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜設計変更可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0046】
1は容器本体
2は蓋体
3は内容器
4は加熱手段(電気ヒータ)
15は蒸気経路
16は蒸気入口
17は蒸気出口
15c1,15d1,15e1は通路拡大部
Sは蒸気
Wは結露水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14