(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0018】
[空気入りタイヤ]
図1は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。
図2は、
図1に記載した空気入りタイヤのトレッド面を示す平面図である。これらの図は、スタッドレスタイヤを示している。
【0019】
この空気入りタイヤ1は、一対のビードコア11、11と、一対のビードフィラー12、12と、カーカス層13と、ベルト層14と、トレッドゴム15と、一対のサイドウォールゴム16、16とを備える(
図1参照)。一対のビードコア11、11は、環状構造を有し、左右のビード部のコアを構成する。一対のビードフィラー12、12は、ローアーフィラー121およびアッパーフィラー122から成り、一対のビードコア11、11のタイヤ径方向外周にそれぞれ配置されてビード部を補強する。カーカス層13は、単層構造を有し、左右のビードコア11、11間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。また、カーカス層13の両端部は、ビードコア11およびビードフィラー12を包み込むようにタイヤ幅方向外側に巻き返されて係止される。ベルト層14は、積層された一対のベルトプライ141〜143から成り、カーカス層13のタイヤ径方向外周に配置される。これらのベルトプライ141〜143は、スチール材あるいは有機繊維材から成る複数のベルトコードを配列して圧延加工して構成され、ベルトコードをタイヤ周方向に相互に異なる方向に傾斜させることによりクロスプライ構造を構成する。トレッドゴム15は、カーカス層13およびベルト層14のタイヤ径方向外周に配置されてタイヤのトレッド部を構成する。一対のサイドウォールゴム16、16は、カーカス層13のタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置されて左右のサイドウォール部を構成する。
【0020】
また、空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向に延在する3本以上の周方向主溝21、22と、これらの周方向主溝21、22に区画されて成る2列以上のセンター陸部31、31および一対のショルダー陸部32とを備える(
図2参照)。また、これらのセンター陸部31が、周方向細溝311と、複数のラグ溝312と、複数のブロック313とをそれぞれ有する。周方向細溝311は、タイヤ周方向に延在してセンター陸部31をタイヤ幅方向に区画する。複数のラグ溝312は、この周方向細溝311に区画されたセンター陸部31の左右の領域にそれぞれ配置され、タイヤ幅方向に延在してセンター陸部31の各領域をタイヤ周方向に区画する。これらの周方向細溝311および複数のラグ溝312により、タイヤ周方向に配列された2列のブロック列が区画される。
【0021】
例えば、この実施の形態では、空気入りタイヤ1が3本の周方向主溝21、22を備え、これらの周方向主溝21、22により、2列のセンター陸部31、31と、左右一対のショルダー陸部32、32とが区画されている。また、タイヤ赤道線CLを中心とした左右対称のトレッドパターンが形成されている。
【0022】
また、周方向細溝311が、タイヤ周方向にジグザグ状に延在して、センター陸部31をタイヤ幅方向に二等分している。また、複数のラグ溝312が、二分割されたセンター陸部31の各領域にそれぞれ配置されている。また、各ラグ溝312が、タイヤ周方向に所定間隔で配置され、また、周方向細溝311からタイヤ幅方向に延在していずれか一方の周方向主溝21、22にそれぞれ開口している。これにより、センター陸部31の左右の周方向主溝21、22と、1本の周方向細溝311と、複数のラグ溝312とによって、2列のブロック列が1つのセンター陸部31内に形成されている。また、左右の領域のラグ溝312がタイヤ周方向に位置をズラして配置されることにより、複数のブロック313が周方向細溝311を軸としてタイヤ周方向に千鳥状に配置されている。
【0023】
また、ショルダー陸部32が、周方向細溝321と、複数のラグ溝322と、これらの周方向細溝321および複数のラグ溝322に区画されて成る複数のブロック323とをそれぞれ有している。周方向細溝321は、タイヤ周方向に延在してショルダー陸部32をタイヤ幅方向に区画している。ラグ溝322は、この周方向細溝321に区画されたショルダー陸部32の各領域にそれぞれ配置され、タイヤ幅方向に延在してショルダー陸部32の各領域をタイヤ周方向に区画している。これにより、2列のブロック列が1つのショルダー陸部32内に形成され、また、複数のブロック323が周方向細溝321を中心としてタイヤ周方向に千鳥状に配置されている。
【0024】
なお、周方向主溝とは、4.0[mm]以上の溝幅を有する周方向溝をいう。また、周方向細溝とは、4.0[mm]未満1.0[mm]以上の溝幅を有する周方向溝をいう。また、ラグ溝とは、3.0[mm]以上の溝幅を有する横溝をいう。
【0025】
なお、この実施の形態では、3本の周方向主溝21、22が配置されている(
図2参照)。かかる構成では、4本以上の周方向主溝が配置される構成と比較して、ブロック313を大型化できる。このため、ブロック313の剛性が増加して、タイヤの耐偏摩耗性能が向上する点で好ましい。しかし、これに限らず、4本以上の周方向主溝が配置されても良い(図示省略)。
【0026】
[ブロックのサイプ]
一般的なスタッドレスタイヤは、複数の溝および複数のサイプを有することにより、排雪性、排水性およびエッジ効果を高めて、氷雪上性能(氷上性能および雪上性能)を向上させている。
【0027】
そこで、この空気入りタイヤ1は、氷雪上性能を向上するために、以下の構成を採用する。
【0028】
図3は、
図2に記載したセンター陸部のブロック列を示す拡大図である。
図4は、
図3に記載したブロック列のブロックを示す平面図である。
図5は、
図4に記載したブロックのオープンサイプを示す説明図である。
【0029】
この空気入りタイヤ1では、センター陸部31のブロック313が、1本のオープンサイプ3131と、複数のクローズドサイプ3132とを有する(
図3および
図4参照)。オープンサイプ3131は、タイヤ幅方向に延在してブロック313をタイヤ周方向に区画する。複数のクローズドサイプ3132は、オープンサイプ3131に区画されたブロック313の各領域にそれぞれ配置される。また、各領域に対して、3本以上のクローズドサイプ3132がそれぞれ配置される。これにより、ブロック313のエッジ成分が確保されて、タイヤの氷雪上性能が向上する。
【0030】
例えば、この実施の形態では、ブロック313が、タイヤ周方向に長尺な略矩形状を有している。また、1本のオープンサイプ3131が、ブロック313の中央部をタイヤ幅方向に横断してブロック313をタイヤ周方向に二分割している。これにより、ブロック313が、略同一形状を有する2つの領域に区画されている。また、分割されたブロック313の各領域に、3本のクローズドサイプ3132がタイヤ幅方向に延在してそれぞれ配置されている。
【0031】
また、ブロック313の幅方向長さaと周方向長さbとが、1.2≦b/a≦1.6の関係を有する(
図3参照)。したがって、ブロック313がタイヤ周方向に長尺な形状を有する。これにより、ブロック313のアスペクト比b/aが適正化されて、タイヤの耐偏摩耗性能および氷上性能が両立する。
【0032】
また、ラグ溝312の溝幅Wと、ブロック313の周方向長さbとが、0.20≦W/b≦0.25の関係を有する(
図3参照)。これにより、ラグ溝312の溝幅Wが適正化され、ラグ溝312の排雪性および排水性ならびにブロック313のエッジ効果が確保されて、タイヤの氷雪上性能が向上する。
【0033】
なお、この実施の形態では、ブロック313の周方向長さbが、33.0[mm]以上38.0[mm]以下の範囲に設定されている。これにより、タイヤ周方向に対するブロック剛性が確保されている。
【0034】
[付加的事項]
また、この空気入りタイヤ1では、周方向細溝321の溝深さH2と、最も深い周方向主溝22の溝深さH1とが、0.50≦H2/H1≦0.70の関係を有することが好ましい。これにより、トラクション性が確保されて、タイヤの氷雪上性能が向上する。なお、この実施の形態では、タイヤ幅方向の最も外側にある左右の周方向主溝22、22が、最も深い溝深さを有している。
【0035】
また、複数のブロック313が、タイヤ周方向に千鳥状に配置されることが好ましい(
図2参照)。言い換えると、複数のラグ溝312が周方向細溝321を軸としてタイヤ周方向に千鳥状に配置されることが好ましい。かかる構成では、周方向細溝321の左右のラグ溝312が相互にオフセットして配置されるので、タイヤ接地時における各ブロック313への応力集中が抑制される。これにより、タイヤの耐偏摩耗性能が向上する。
【0036】
しかし、これに限らず、センター陸部31が、周方向細溝321と、センター陸部31をタイヤ幅方向に貫通して左右の周方向主溝21、22に開口するラグ溝とを有することにより、格子状に区画されたブロック列を有しても良い(図示省略)。
【0037】
また、周方向細溝321のタイヤ周方向に対する傾斜角θが、5[deg]≦θ≦15[deg]の範囲内にあることが好ましい(
図3参照)。例えば、この実施の形態では、周方向細溝321がジグザグ状に屈曲しつつタイヤ周方向に延在することにより、ブロック313の周方向細溝321側の縁部が中央部にてタイヤ幅方向に凸となっている。また、ブロック313縁部が、周方向細溝321の直線部に区画された部分にて、タイヤ周方向に対して上記の傾斜角θで傾斜している。かかる構成では、周方向細溝321が適正な傾斜角θを有することにより、タイヤ周方向に対するブロック313のエッジ成分が確保されて、タイヤの氷雪上性能が向上する。
【0038】
また、ブロック313が、ブロック313のタイヤ幅方向の縁部に開口するセミクローズドサイプ3133を有することが好ましい(
図4参照)。例えば、この実施の形態では、2本のセミクローズドサイプ3133が、オープンサイプ3131に区画されたブロック313の各領域にそれぞれ配置され、タイヤ幅方向に延在して各領域のタイヤ幅方向の縁部にそれぞれ開口している。また、これらのセミクローズドサイプ3133の深さH3と、最も深い周方向主溝22の溝深さH1とが、0.40≦H3/H1≦0.50の関係を有している。かかる構成では、ブロック313のタイヤ幅方向の縁部における偏摩耗が抑制される。なお、セミクローズドサイプのサイプ深さが深すぎると、セミクローズドサイプを起点としたティアが発生し易くなり、好ましくない。
【0039】
また、ブロック313が、周方向細溝311に対するオープンサイプ3131の開口部に切欠部3134を有することが好ましい(
図3および
図4参照)。例えば、この実施の形態では、周方向細溝321がジグザグ状に屈曲しつつタイヤ周方向に延在することにより、ブロック313の周方向細溝321側の縁部がタイヤ幅方向に凸となっている。また、オープンサイプ3131が、周方向細溝321の屈曲部(ブロック313の縁部が凸となる部分の頂部)に開口している。そして、この位置に、ブロック313の内側に凹んだ切欠部3134が形成されている。かかる構成では、ブロック313のエッジ成分が切欠部3134により増加して、タイヤの氷雪上性能が向上する。
【0040】
また、クローズドサイプ3132が、屈曲形状を有する(
図4参照)。例えば、この実施の形態では、クローズドサイプ3132が、ステップ状あるいはクランク状に屈曲しつつタイヤ幅方向に延在している。かかる構成では、直線形状を有するクローズドサイプと比較して、クローズドサイプ3132のサイプ長さが長い。これにより、ブロック313のエッジ成分が増加して、タイヤの氷上性能が向上する。
【0041】
また、オープンサイプ3131がジグザグ形状を有し、そのジグザグ形状の振幅Aが1.0[mm]≦A≦3.0[mm]の範囲内にある(
図5参照)。かかる構成では、ジグザグ形状によりブロック313のエッジ成分が増加してタイヤの氷上性能が向上する。また、ジグザグ形状の振幅Aが適正化されることにより、タイヤの耐偏摩耗性能が向上する。
【0042】
また、オープンサイプ3131に区画された各領域におけるクローズドサイプ3132の配置が、オープンサイプ3131側に底辺を有するトラス配置となることが好ましい(
図4参照)。具体的には、各領域におけるクローズドサイプ3132の中心点(サイプ長さの中点)を結んだ仮想線が、オープンサイプ3131側に底辺を有する略三角形(あるいは、オープンサイプ3131側に長辺を有する略台形)となることが好ましい。例えば、この実施の形態では、ブロック313の各領域において、3本のクローズドサイプ3132のうちの2本のクローズドサイプ3132が、相互に直列かつオープンサイプ3131に隣り合って配置されている。また、残り1本のクローズドサイプ3132が、他の2本のクローズドサイプ3132よりもブロック313の周方向端部側に配置されている。そして、これらのクローズドサイプ3132の中心点を結んだ仮想線が三角形となっている(トラス配置)。かかる構成では、クローズドサイプ3132によりブロック313のエッジ成分が増加する一方で、トラス配置によりブロック313の端部の剛性が確保される。これにより、タイヤの耐偏摩耗性が向上する。
【0043】
また、2本のクローズドサイプ3132、3132が、オープンサイプ3131に隣り合って配置される(
図4参照)。かかる構成では、長尺かつ一本のクローズドサイプがオープンサイプに隣り合って配置される構成(図示省略)と比較して、ブロック剛性が向上し、耐偏摩耗性能が向上する点で好ましい。また、このとき、2本のクローズドサイプ3132、3132の配置間隔dと、ブロック313の幅方向長さaとが、0.10≦d/a≦0.30の関係を有することが好ましい。これにより、耐偏摩耗性能と氷雪上性能とが両立する。例えば、d/a<0.10となると、ブロック剛性が低下し、耐偏摩耗性能が低下するため、好ましくない。また、0.30<d/aとなると、クローズドサイプ線分が減少し、氷雪上性能が低下するため、好ましくない。
【0044】
また、ブロック313のタイヤ幅方向の縁部がジグザグ形状を有することが好ましい(
図2および
図4参照)。例えば、この実施の形態では、周方向主溝21、22がステップ状に屈曲しつつタイヤ周方向に延在するジグザグ溝であり、ブロック313の周方向主溝21、22側の縁部がステップ状のジグザグ形状を有している。これにより、ブロック313のエッジ成分が増加して、タイヤの氷上性能が向上する。
【0045】
[変形例]
図6は、
図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。
【0046】
図1の空気入りタイヤ1では、3本のクローズドサイプ3132が、オープンサイプ3131に区画された各領域にそれぞれ配置されている(
図4参照)。
【0047】
しかし、これに限らず、4本以上のクローズドサイプ3132が、オープンサイプ3131に区画された各領域にそれぞれ配置されても良い(
図6参照)。例えば、
図6の変形例では、4本のクローズドサイプ3132が、各領域にそれぞれ配置されている。また、そのうちの2本のクローズドサイプ3132が、相互に直列に配置され、また、オープンサイプ3131に隣り合って配置されている。また、残り2本のクローズドサイプ3132が、相互に直列に配置され、また、他の2本のクローズドサイプ3132よりもブロック313の周方向端部側に配置されている。また、ブロック313の周方向端部側にある2本のクローズドサイプ3132が、他の2本のクローズドサイプ3132よりも短尺構造を有している。また、4本のクローズドサイプ3132の中心点を結んだ仮想線が、ブロック313のタイヤ周方向の端部側に短辺を有する台形となっている(トラス配置)。
【0048】
なお、この空気入りタイヤ1において、サイプとは、陸部に形成された切り込みをいい、一般に1.0[mm]未満のサイプ幅を有する。また、オープンサイプとは、両端部にて陸部の端部にそれぞれ開口するサイプをいう。また、クローズドサイプとは、両端部にて陸部内に終端するサイプをいう。また、セミクローズドサイプとは、一方の端部にて陸部の端部に開口し、他方の端部にて陸部内に終端するサイプをいう。
【0049】
また、周方向主溝の溝幅、ラグ溝の溝幅、サイプ幅などは、タイヤが規定リムに装着されて規定内圧を付与されると共に無負荷とされた状態で測定される。
【0050】
ここで、規定リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。ただし、JATMAにおいて、乗用車用タイヤの場合には、規定内圧が空気圧180[kPa]であり、規定荷重が最大負荷能力の88[%]である。
【0051】
[効果]
以上説明したように、この空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向に延在する3本以上の周方向主溝21、22と、これらの周方向主溝21、22に区画されて成る2列以上のセンター陸部31および一対のショルダー陸部32とを備える(
図2参照)。また、センター陸部31が、タイヤ周方向に延在してセンター陸部31をタイヤ幅方向に区画する周方向細溝311と、この周方向細溝311に区画されたセンター陸部31の各領域にそれぞれ配置されると共にタイヤ幅方向に延在してセンター陸部31の各領域をタイヤ周方向に区画する複数のラグ溝312と、これらの周方向細溝311および複数のラグ溝312に区画されて成る複数のブロック313とを有する(
図3参照)。また、センター陸部31のブロック313が、タイヤ幅方向に延在してブロック313をタイヤ周方向に区画する1本のオープンサイプ3131と、このオープンサイプ3131に区画されたブロック313の各領域にそれぞれ配置される3本以上のクローズドサイプ3132とを有する。
【0052】
かかる構成では、センター陸部31のブロック313が、1本のオープンサイプ3131によりタイヤ周方向に二分割され、その分割された各領域に3本以上のクローズドサイプ3132をそれぞれ有することにより、ブロック313のエッジ成分が確保される。これにより、タイヤの氷雪上性能が向上する利点がある。
【0053】
また、この空気入りタイヤ1では、ブロック313の幅方向長さaと周方向長さbとが、1.2≦b/a≦1.6の関係を有する(
図3参照)。これにより、ブロック313のアスペクト比b/aが適正化されて、タイヤの耐偏摩耗性能および氷上性能が両立する利点がある。例えば、b/a<1.2となると、タイヤ周方向に対するブロック剛性が低下してタイヤの耐偏摩耗性が低下するため、好ましくない。また、1.6<b/aとなると、タイヤ幅方向に対するブロック剛性が低下して耐偏摩耗性が低下し、また、タイヤ周方向に対するブロックのエッジ成分が低下して氷上性能が低下するため、好ましくない。
【0054】
また、この空気入りタイヤ1では、ラグ溝312の溝幅Wと、ブロック313の周方向長さbとが、0.20≦W/b≦0.25の関係を有する(
図3参照)。これにより、ラグ溝312の溝幅Wが適正化され、ラグ溝312の排雪性および排水性ならびにエッジ効果が確保されて、タイヤの氷雪上性能が向上する利点がある。例えば、W/b<0.20となると、ブロックの雪中剪断力が確保できずタイヤの雪上性能が低下するため、好ましくない。また、0.25<W/bとなると、タイヤ周方向に対するブロックのエッジ成分が低下して氷上性能が低下するため、好ましくない。
【0055】
また、この空気入りタイヤ1では、周方向細溝321の溝深さH2と、最も深い周方向主溝22の溝深さH1とが、0.50≦H2/H1≦0.70の関係を有する。これにより、周方向細溝321の溝深さH2が適正化され、トラクション性が確保されて、タイヤの氷雪上性能が向上する利点がある。例えば、また、H2/H1<0.50となると、トラクション性が低下してタイヤの氷雪上性能が低下するため、好ましくない。また、0.70<H2/H1となると、ブロック剛性が低下してタイヤの耐偏摩耗性が低下するため、好ましくない。
【0056】
また、この空気入りタイヤ1では、複数のブロック313が、タイヤ周方向に千鳥状に配置されることが好ましい(
図2参照)。これにより、タイヤ接地時における各ブロック313への応力集中が抑制されて、タイヤの耐偏摩耗性能が向上する利点がある。
【0057】
また、この空気入りタイヤ1では、周方向細溝321のタイヤ周方向に対する傾斜角θが、5[deg]≦θ≦15[deg]の範囲内にある(
図3参照)。これにより、タイヤ周方向に対するブロック313のエッジ成分が確保されて、タイヤの氷上性能が向上する利点がある。
【0058】
また、この空気入りタイヤ1では、ブロック313が、ブロック313のタイヤ幅方向の縁部に開口するセミクローズドサイプ3133を有する(
図4参照)。これにより、ブロック313のタイヤ幅方向の縁部における偏摩耗が抑制されて、タイヤの耐偏摩耗性能が向上する利点がある。
【0059】
また、この空気入りタイヤ1では、ブロック313が、周方向細溝311に対するオープンサイプ3131の開口部に切欠部3134を有する(
図3および
図4参照)。これにより、ブロック313のエッジ成分が確保されて、タイヤの氷雪上性能が向上する利点がある。
【0060】
また、この空気入りタイヤ1では、クローズドサイプ3132が、屈曲形状を有する(
図4参照)。これにより、ブロック313のエッジ成分が増加して、タイヤの氷上性能が向上する利点がある。
【0061】
また、この空気入りタイヤ1では、オープンサイプ3131がジグザグ形状を有し、そのジグザグ形状の振幅Aが1.0[mm]≦A≦3.0[mm]の範囲内にある(
図5参照)。これにより、ブロック313のエッジ成分が増加してタイヤの氷上性能が向上し、また、ジグザグ形状の振幅Aが適正化されてタイヤの耐偏摩耗性能が向上する利点がある。
【実施例】
【0062】
図7は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す表である。
図8は、従来例の空気入りタイヤを示す説明図である。
【0063】
この性能試験では、相互に異なる複数の空気入りタイヤについて、(1)氷上性能、(2)雪上性能および(3)耐偏摩耗性能に関する評価が行われた(
図4参照)。また、タイヤサイズ275/80R22.5の空気入りタイヤがJATMA規定の適用リムに組み付けられ、この空気入りタイヤにJATMA規定の最高空気圧および最大負荷能力が付与される。また、この空気入りタイヤが、2−D4(前2輪−後4駆動輪)の試験車両に装着される。
【0064】
(1)氷上性能に関する評価では、空気入りタイヤを装着した試験車両が所定の氷路面を走行し、走行速度40[km/h]からの制動距離が測定されて評価が行われる。この評価は従来例を基準(100)とした指数評価により行われ、その数値が大きいほど好ましい。
【0065】
(2)雪上性能に関する評価では、空気入りタイヤを装着した試験車両が所定の雪路面を走行し、走行速度40[km/h]からの制動距離が測定されて評価が行われる。この評価は従来例を基準(100)とした指数評価により行われ、その数値が大きいほど好ましい。
【0066】
(3)耐偏摩耗性能に関する評価では、空気入りタイヤを装着した試験車両が一般舗装路を5000[km]走行し、その後に、1つのブロック内における最大摩耗部と最小摩耗部との摩耗量差が、各ブロックについて測定される。そして、この測定結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、その数値が大きいほど好ましい。
【0067】
実施例1の空気入りタイヤ1は、
図2に記載した構成を有し、3本の周方向主溝21、22と、2列のセンター陸部31および一対のショルダー陸部32とを備える。また、センター陸部31が、周方向細溝311と、複数のラグ溝312と、複数のブロック313とを有する(
図3参照)。また、センター陸部31のブロック313が、1本のオープンサイプ3131と、3本のクローズドサイプ3132と、4本のセミクローズドサイプ3133とを有する。また、周方向主溝21、22の溝幅が8.0[mm]であり、周方向細溝311の溝幅が2.8[mm]であり、ラグ溝312の溝幅が7.5[mm]である。また、センター陸部31のブロック313がタイヤ周方向に千鳥状に配列される。また、セミクローズドサイプ3133の深さH3と、最も深い周方向主溝22の溝深さH1とが、0.40≦H3/H1≦0.50の関係を有する。実施例2〜17の空気入りタイヤ1は、実施例1の空気入りタイヤ1の変形例である。
【0068】
従来例の空気入りタイヤは、
図8に記載した構成を有する。
【0069】
試験結果に示すように、実施例1〜17の空気入りタイヤ1では、氷上性能、雪上性能および耐偏摩耗性能が向上することが分かる(
図7参照)。また、実施例1〜3を比較すると、ブロック313のアスペクト比b/aが適正化されることにより、タイヤの耐偏摩耗性能および氷上性能が両立することが分かる。また、実施例1、4を比較すると、ラグ溝312の溝幅Wが適正化されることにより、タイヤの氷雪上性能が向上することが分かる。また、実施例1、5〜7を比較すると、周方向細溝321の溝深さH2が適正化されることにより、タイヤの氷雪上性能が向上することが分かる。また、実施例1、8を比較すると、センター陸部31のブロック313が千鳥配列となることにより、タイヤの耐偏摩耗性能が向上することが分かる。
【0070】
また、実施例1、9〜11を比較すると、周方向細溝321の傾斜角θが適正化されることにより、タイヤの氷上性能が向上することが分かる。また、実施例1、12を比較すると、ブロック313がセミクローズドサイプ3133を有することにより、タイヤの耐偏摩耗性能が向上することが分かる。また、実施例1、13を比較すると、ブロック313が切欠部3134を有することにより、タイヤの氷雪上性能が向上することが分かる。また、実施例1、14を比較すると、クローズドサイプ3132が躯極形状を有することにより、タイヤの氷上性能が向上することが分かる。また、実施例1、15〜17を比較すると、オープンサイプ3131がジグザグ形状を有し、そのジグザグ形状の振幅Aが適正化されることにより、タイヤの氷上性能および耐偏摩耗性能が向上することが分かる。