(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回折レンズは、ガラス基板と、前記ガラス基板の少なくとも一面に形成され、光軸方向に沿って色収差を生じさせるパターンの樹脂層とを有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の共焦点計測装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る共焦点計測装置の構成を示す模式図である。
図1に示す共焦点計測装置100は、共焦点光学系を利用して計測対象物200の変位を計測する計測装置である。共焦点計測装置100で計測する計測対象物200には、たとえば液晶表示パネルのセルギャップなどがある。
【0014】
共焦点計測装置100は、共焦点の光学系を有するヘッド部10、光ファイバ11を介して光学的に接続されたコントローラ部20、コントローラ部20から出力される信号を表示するモニタ部30を備えている。
【0015】
ヘッド部10は、回折レンズ1、回折レンズ1より計測対象物200側に配置された対物レンズ2を備えている。回折レンズ1の焦点距離は、回折レンズから対物レンズまでの距離と、対物レンズの焦点距離との差より大きくしてある。
【0016】
ここで、回折レンズ1は、後述する複数の波長の光を出射する光源(たとえば、白色光源)から出射する光に、光軸方向に沿って色収差を生じさせる光学素子である。回折レンズ1は、レンズの表面に、たとえばキノフォーム形状あるいはバイナリ形状(ステップ形状、階段形状)などの微細な起伏形状を周期的に形成するか、光の透過率を周期的に変更する振幅型のゾーンプレートを形成してある。なお、回折レンズ1の構成は、上記の記載の構成に限定されるものではない。
【0017】
対物レンズ2は、回折レンズ1で色収差を生じさせた光を計測対象物200に集光する光学素子である。なお、共焦点計測装置100は、複数の波長の光を出射する光源に、白色光源を用いる場合について以下に説明する。
【0018】
白色光源から出射する光は、光ファイバ11を介してヘッド部10に導かれている。光ファイバ11から出射する光を、回折レンズ1で有効に利用するには、光ファイバ11の開口数(NA:numerical aperture)と回折レンズ1の開口数とを一致させる必要がある。そのため、光ファイバ11と回折レンズ1との間に集光レンズ3を設けて、光ファイバ11の開口数と回折レンズ1の開口数とが一致するように調整している。
【0019】
光ファイバ11は、ヘッド部10からコントローラ部20までの光路であるとともに、ピンホールとしても機能している。つまり、対物レンズ2で集光した光のうち、計測対象物200で合焦する光は、光ファイバ11の開口部で合焦することになる。そのため、光ファイバ11は、計測対象物200で合焦しない波長の光を遮光し、計測対象物200で合焦する光を通過させるピンホールとして機能することになる。ヘッド部10からコントローラ部20までの光路に光ファイバ11を用いることで、ピンホールが不要となる。
【0020】
共焦点計測装置100は、ヘッド部10からコントローラ部20までの光路に光ファイバ11を用いない構成であっても良いが、当該光路に光ファイバ11を用いることで、ヘッド部10をコントロール部に対してフレキシブルに移動することが可能になる。また、共焦点計測装置100は、ヘッド部10からコントローラ部20までの光路に光ファイバ11を用いない構成の場合、ピンホールを備える必要があるが、光ファイバ11を用いる構成の場合、共焦点計測装置100は、ピンホールを備える必要がない。
【0021】
コントローラ部20は、白色光源である白色LED(Light Emitting Diode)21、分岐光ファイバ22、分光器23、撮像素子24、制御回路部25を備えている。白色光源として白色LED21を用いているが、白色光を出射することができる光源であれば他の光源であってもよい。
【0022】
分岐光ファイバ22は、光ファイバ11と接続する側に一本の光ファイバ22a、反対側に二本の光ファイバ22b、22cを有している。なお、光ファイバ22bは白色LED21に、光ファイバ22cは分光器23にそれぞれ接続してある。そのため、分岐光ファイバ22は、白色LED21から出射する光を光ファイバ11に導くとともに、光ファイバ11を介してヘッド部10から戻る光を分光器23に導くことができる。
【0023】
分光器23は、ヘッド部10から戻る光を反射する凹面ミラー23a、凹面ミラー23aで反射した光が入射する回折格子23b、回折格子23bから出射する光を集光する集光レンズ23cを有している。分光器23は、ヘッド部10から戻る光を波長ごとに分けることができれば、ツェルニターナ型、リトロー型などのいずれの構成であってもよい。
【0024】
撮像素子24は、分光器23から出射する光の強度を測定するラインCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)やCCD(Charge Coupled Device)である。ここで、共焦点計測装置100では、分光器23および撮像素子24で、ヘッド部10から戻る光の強度を波長ごとに測定する測定部を構成している。なお、測定部は、ヘッド部10から戻る光の強度を波長ごとに測定することができれば、CCDなどの撮像素子24の単体で構成してもよい。また、撮像素子24は、2次元のCMOSや2次元のCCDであってもよい。
【0025】
制御回路部25は、白色LED21や撮像素子24などの動作を制御する回路である。また、図示していないが、制御回路部25には、白色LED21や撮像素子24などを動作を調整するための信号を入力する入力インターフェース、撮像素子24の信号を出力する出力インターフェースなどを有している。
【0026】
モニタ部30は、撮像素子24が出力した信号を表示する。たとえば、モニタ部30は、ヘッド部10から戻る光のスペクトル波形を描画し、計測対象物の変位が123.45μmであることを表示する。
【0027】
次に、ヘッド部10の共焦点光学系を、回折レンズ1より計測対象物200側に対物レンズ2を配置し、回折レンズ1の焦点距離を、回折レンズ1から対物レンズ2までの距離と、対物レンズ2の焦点距離との差より大きくすることで、共焦点計測装置100が、光の波長による、計測対象物200の変位を計測する精度の変動を抑えていることについて説明する。
【0028】
まず、
図2は、従来の共焦点計測装置において採用されていたヘッド部の共焦点光学系の構成を示す模式図である。
図2に示す共焦点光学系の構成は、コリメートレンズ300より計測対象物200側に回折レンズ400を配置する構成である。つまり、従来の共焦点計測装置では、光ファイバ11の端部から出射する光をコリメートレンズ300で平行光にし、平行光を回折レンズ400で計測対象物200に集光するとともに、光軸方向に沿って色収差を生じさせている。
【0029】
従来の共焦点計測装置は、回折レンズ400で光を計測対象物200に集光するため、回折レンズ400の光学特性上、光の波長に依存して被写界深度が大きく変化する。光の波長によって被写界深度が大きく変化すると、光ファイバ11に入射することができる光量(ピンホールを通過することができる光量)が光の波長ごとに異なることになり、従来の共焦点計測装置は、計測対象物の変位を計測する精度(分解能)が光の波長により大きく変動する。
【0030】
計測対象物の変位を計測する精度は、共焦点計測装置の測定部で得られるスペクトル波形におけるスペクトルの半値幅で評価することができる。ここで、スペクトルの半値幅とは、ピークの光の強度に対して1/2の光の強度となるスペクトルの2点間の距離をいう。
【0031】
図3は、従来の共焦点計測装置で計測した計測対象物の変位のスペクトル波形の一例を示す図である。
図3に示すスペクトル波形では、横軸が光の波長に対応するワーク高さ(計測対象物200からヘッド部10の先端までの高さをゼロと設定)(mm)、縦軸が光の強度(規格化した値)である。スペクトル波形は、複数のスペクトルのピークが図示されており、ワーク高さが正側(光の波長が長い側)にあるスペクトルの半値幅に比べて、ワーク高さが負側(光の波長が短い側)にあるスペクトルの半値幅が大きい。なお、この半値幅は、光ファイバ11の直径および光ファイバ11側のレンズ300の焦点深度にも依存する。光ファイバ11の直径が小さくなる、もしくはレンズ300の焦点深度が浅くなることで、半値幅が狭くなる。ただし、光ファイバ11の直径および光ファイバ11側のレンズ300の焦点深度は、計測装置内で固定されているため、ワークの高さによる半値幅の相対的な違いが変化することはない。
【0032】
具体的に、ワーク高さが約−0.6mmのスペクトルの半値幅Aは、約0.046mmであるが、ワーク高さが約0.6mmのスペクトルの半値幅Bは、約0.023mmである。つまり、スペクトルの半値幅Aは、スペクトルの半値幅Bに比べて約2倍になっており、ワーク高さが小さく(光の波長が短く)なるにつれてスペクトルの半値幅が大きくなっている。なお、スペクトルのピークが、ワーク高さにより変化するのは、白色光源に含まれる光の強度が光の波長により異なっているためである。
【0033】
従来の共焦点計測装置は、ワーク高さが小さく(光の波長が短く)なるにつれてスペクトルの半値幅が大きくなることから、ワーク高さが小さく(光の波長が短く)なるにつれて計測対象物200の変位を計測する精度が悪くなることがわかる。
【0034】
次に、
図4は、本発明の実施の形態1に係る共焦点計測装置100において採用されているヘッド部10の共焦点光学系の構成を示す模式図である。
図4に示す共焦点光学系の構成は、回折レンズ1より計測対象物200側に対物レンズ2を配置する構成である。つまり、共焦点計測装置100では、光ファイバ11の端部から出射する光を回折レンズ1で光軸方向に沿って色収差を生じさせ、色収差が生じた光を対物レンズ2で計測対象物200に集光する。
【0035】
共焦点計測装置100は、回折レンズ1で光を計測対象物200に集光するのではなく、対物レンズ2で光を計測対象物200に集光するので、後述する理由により、光の波長による被写界深度の変化を抑え、光の波長による、計測対象物200の変位を計測する精度の変動を抑えている。
【0036】
図5は、本発明の実施の形態1に係る共焦点計測装置100で計測した計測対象物の変位のスペクトル波形の一例を示す図である。
図5に示すスペクトル波形では、横軸が光の波長に対応するワーク高さ(計測対象物200からヘッド部10の先端までの高さをゼロに設定)(mm)、縦軸が光の強度(規格化した値)である。スペクトル波形は、複数のスペクトルのピークが図示されており、ワーク高さが負側(光の波長が短い側)にあるスペクトルの半値幅と、ワーク高さが正側(光の波長が長い側)にあるスペクトルの半値幅とが略等しい。
【0037】
具体的に、ワーク高さが約−0.6mmのスペクトルの半値幅Cは、約0.025mmで、ワーク高さが約0.6mmのスペクトルの半値幅Dは、約0.029mmである。つまり、スペクトルの半値幅Cは、スペクトルの半値幅Dに略等しい。
【0038】
したがって、共焦点計測装置100は、ワーク高さ(光の波長)が変化してもスペクトルの半値幅が変化しにくくなるので、光の波長による、計測対象物200の変位を計測する精度の変動を抑えている。
【0039】
図6は、ワーク高さに対するスペクトルの半値幅の変化を示すグラフである。
図6に示すグラフには、従来の共焦点計測装置に係るスペクトルの半値幅(
図3に示すスペクトルの半値幅)を示す折れ線aと、共焦点計測装置100に係るスペクトルの半値幅(
図5に示すスペクトルの半値幅)を示す折れ線bとを図示してある。折れ線aは、ワーク高さが小さく(光の波長が短く)なるにつれてスペクトルの半値幅が大きくなっているが、折れ線bは、ワーク高さ(光の波長)にかかわらず略一定である。具体的に、折れ線aに示すスペクトルの半値幅は、傾きを持って約0.023mmから約0.046mmまで変化しているが、折れ線bに示すスペクトルの半値幅は、約0.030mmを中心に約0.023mmから約0.034mmまで変化している。
【0040】
次に、共焦点計測装置100が、光の波長による被写界深度の変化を抑え、光の波長による、計測対象物200の変位を計測する精度の変動を抑えていることについて数式を用いて理論的に説明する。
【0041】
まず、
図4に示す共焦点計測装置100の光学系において、光ファイバ11の端部から回折レンズ1までの距離をa、回折レンズ1から対物レンズ2までの距離をb、対物レンズ2から対物レンズ2により合焦する点までの距離をc(λ)とする。さらに、回折レンズ1は、光の波長λ
0 のときの焦点距離をf
d0とし、有効径をφ
a とする。なお、距離aは、焦点距離f
d0とは等しいものとする。対物レンズ2は、焦点距離をf
o とし、有効径をφ
b (λ)とする。
【0042】
一方、
図2に示す従来の共焦点計測装置の光学系において、計算を簡単にするために、光ファイバ11の端部からコリメートレンズ300までの距離をa、コリメートレンズ300から回折レンズ400までの距離をb、回折レンズ400から回折レンズ400により合焦する点までの距離をc(λ)とする。さらに、コリメートレンズ300は、焦点距離をf
d0とする。なお、距離aは、焦点距離f
d0とは等しいものとする。回折レンズ400は、光の波長λ
0 のときの焦点距離をf
o とし、有効径をφ
a とする。
【0043】
回折レンズ400の焦点距離f
d (λ)は、光の波長λの関数であり、光の波長λ
0 のときの焦点距離をf
o とすると、一般的は回折レンズの公式を用いて(式1)のように表すことができる。
【0045】
さらに、回折レンズ400の開口数NA
1 (λ)は、(式1)の関係を用いて、(式2)のように表すことができる。
【0047】
次に、
図4に示す共焦点計測装置100の光学系において、一般的なレンズの公式を用いて、光ファイバ11の端部から回折レンズ1までの距離aと、回折レンズ1から回折レンズ1により光ファイバ11からの出射光が合焦する点まで距離a
g (λ)(図示せず)と、回折レンズ1の焦点距離f
d (λ)との関係、および回折レンズ1から対物レンズ2までの距離bと、対物レンズ2から対物レンズ2により合焦する点までの距離c(λ)と、対物レンズ2の焦点距離f
o との関係を(式3)のように表すことができる。なおここで、対物レンズの色収差は無視できるものとしている。
【0049】
さらに、対物レンズ2の有効径φ
b (λ)は、(式3)の関係を用いて、(式4)のように表すことができる。
【0051】
また、対物レンズ2から対物レンズ2により合焦する点までの距離c(λ)は、(式3),(式4)の関係を用いて、(式5)のように表すことができる。
【0053】
さらに、対物レンズ2の開口数NA
2 (λ)は、(式3)〜(式5)の関係を用いて、(式6)のように表すことができる。
【0055】
距離aは、焦点距離f
d0と等しいものとするとすると、(式6)は、f
d0=aとして、(式7)のように表すことができる。
【0057】
ここで、従来の構成の対物レンズに相当する回折レンズ400の開口数NA
1 (λ)と、本発明の対物レンズ2の開口数NA
2 (λ)と比較する。このとき、(式8)に示す条件を考慮する。(式8)に示す条件は、光の波長λ
0 のときの回折レンズ1の焦点距離f
d0(設計波長の焦点距離)が、回折レンズ1から対物レンズ2までの距離bと、対物レンズの焦点距離との差より大きい。
【0059】
(式8)に示す条件を考慮すると、対物レンズ2の開口数NA
2 (λ)は、回折レンズ400の開口数NA
1 (λ)に比べて、光の波長λに対する変化率(光の波長λの関数の傾き)が小さい。
【0060】
図7は、回折レンズ400の開口数と、対物レンズ2の開口数との比較を示すグラフである。
図7に示すグラフは、横軸が光の波長、縦軸が開口数の逆正弦値である。そして、直線cは、回折レンズ400の開口数NA
1 (λ)を、直線dは、対物レンズ2の開口数NA
2 (λ)それぞれ表している。
【0061】
直線dは、(式8)に示す条件を考慮すると、直線cに比べて傾きが小さい。つまり、対物レンズ2の開口数NA
2 (λ)は、回折レンズ400の開口数NA
1 (λ)に比べて、光の波長λに対して変化しにくいことを示している。対物レンズ2の開口数NA
2 (λ)が光の波長λに対して変化しにくいということから、対物レンズ2は、光の波長λによる被写界深度の変化を抑えることができる。
【0062】
なお、距離bと焦点距離f
d0とが等しい場合(b=f
d0)、対物レンズ2の開口数NA
2 (λ)は、光の波長λの変数を含まない一定値となる。つまり、対物レンズ2の開口数NA
2 (λ)は、光の波長λに対して変化しない。そのため、共焦点計測装置100は、光の波長λを変化させても、光ファイバ11に入射することができる光量(ピンホールを通過することができる光量)が一定となり、計測対象物の変位を計測する精度が光の波長によらず一定となる。
【0063】
次に、ヘッド部10についてさらに詳しく説明する。
図8は、本発明の実施の形態1に係る共焦点計測装置100のヘッド部10の構成を示す模式図である。
図8に示すヘッド部10は、対物レンズ2をスペーサ4に接着し、該スペーサ4を取り外し可能にしてあるので、対物レンズ2を交換することが可能である。具体的に、ヘッド部10からリング5を外し、スペーサ4を光軸方向に移動させてヘッド部10からスペーサ4を取り外し、異なる焦点距離の対物レンズ2を接着してあるスペーサ4をヘッド部10に挿入することで、ヘッド部10は、対物レンズ2を容易に交換することができる。異なる焦点距離の対物レンズ2に交換することで、共焦点計測装置100は、ヘッド部10と計測対象物200との距離や、測定可能なワーク高さ(WD)のレンジを変更することができる。
【0064】
ここで、対物レンズ2には、一般的な光学レンズを用いているが、屈折率の異なる2種類の硝材で作られた凸レンズと凹レンズとを、近接あるいは接着したアクロマティックレンズを用いてもよい。アクロマティックレンズは、色収差を除去するように設計してあるので、共焦点計測装置100は、アクロマティックレンズを対物レンズ2に用いることで、光の波長λによる、計測対象物200の変位を計測する精度の変動をさらに抑えている。
【0065】
また、光ファイバ11は、マルチモードファイバを用いても、シングルモードファイバを用いてもよい。マルチモードファイバを用いた光ファイバ11は、ファイバの直径が大きいため、白色LED21からの出射光を伝送するときの光パワーのロスを少なくすることができ、光反射率の低い計測対象物でも高いS/N比で安定して計測することができる。シングルモードファイバを用いた光ファイバ11は、ファイバの直径が数μmと小さいため、ピンホールとしても機能することで、前述のように受光波形の半値幅を狭くすることができ、精度よく計測することができる。一般的に、光ファイバを共焦点光学系に用いた場合、光パワーのロスが大きくなるためS/N比が問題となることが多く、光ファイバ11にマルチモードファイバを用いることが望ましい。
【0066】
また、光ファイバ11には、耐屈曲ファイバを用いることが望ましい。ヘッド部10は、電子部品実装装置等の駆動部分に取り付けられることが多く、その場合にはヘッド部10自体も移動することになる。そのため、ヘッド部10に接続された光ファイバ11は、ヘッド部10の移動方向に絶えず曲げられるため、耐屈曲ファイバを用いることで損傷を防ぐことができる。
【0067】
さらに、回折レンズ1は、ガラスまたは樹脂などの単一材料の基板に、光軸方向に沿って色収差を生じさせるパターンを形成した構成に限定されるものではなく、複数の材料で構成してもよい。
図9は、複数の材料で構成した回折レンズ1の模式図である。
図9に示す回折レンズ1は、ガラス基板1aと、ガラス基板1aの片面に形成され、光軸方向に沿って色収差を生じさせるパターンの樹脂層1bとを有する。
【0068】
樹脂層1bは、ガラス基板1aに紫外線硬化樹脂を塗布し、所望のパターンの型を紫外線硬化樹脂を塗布したガラス基板1aの面に押し付け、紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化することで形成することができる。
【0069】
ガラスのみで構成した回折レンズ1は、硬いガラスを加工して、光軸方向に沿って色収差を生じさせるパターンを形成するため製造コストが高価になる。しかし、ガラス基板1aと、樹脂層1bとで構成する回折レンズ1は、所望のパターンの型で樹脂層1bを加工して、光軸方向に沿って色収差を生じさせるパターンを形成するため製造コストが安価になる。
【0070】
また、樹脂のみで構成した回折レンズ1は、環境温度による形状の変化が大きく、温度特性が悪い。しかし、ガラス基板1aと、樹脂層1bとで構成する回折レンズ1は、環境温度による形状の変化が小さいガラス基板1aが構成の大部分を占めるため、温度特性がよい。
【0071】
なお、
図9に示す回折レンズ1は、ガラス基板1aの片面に樹脂層1bを形成する場合に限定するものではなく、ガラス基板1aの両面に樹脂層1bを形成してあってもよい。
【0072】
以上のように、本発明に従った共焦点計測装置100は、対物レンズ2を回折レンズ1より計測対象物200側に配置し、回折レンズ1の焦点距離を、回折レンズ1から対物レンズ2までの距離と、対物レンズ2の焦点距離との差より大きくすることで、光の波長による被写界深度の変化を抑え、光の波長による、計測対象物200の変位を計測する精度の変動を抑えている。
【0073】
(実施の形態2)
図1に示した共焦点計測装置100を構成するヘッド部10、分光器23、白色LED21と光ファイバ22bとの結合部について、別の構成のヘッド部、分光器、白色LEDと光ファイバとの結合部について説明する。
【0074】
図10は、本発明の実施の形態2に係る共焦点計測装置100のヘッド部の構成を示す概略図である。
図10に示すヘッド部10aは、回折レンズ1を有する本体ユニット12と、対物レンズ2を有する対物レンズユニット13とを含んでいる。対物レンズユニット13は、測定する対象物に応じて異なる対物レンズ2を有するものが用意されており、本体ユニット12に嵌合する構成であるため、容易に交換することができる。本体ユニット12と、対物レンズユニット13との嵌合方式は、本体ユニット12と対物レンズユニット13とを固定することが可能であれば、ネジ式、嵌込み式などいずれの方式であってもよい。
【0075】
本体ユニット12には、光ファイバ11と接続するためのファイバレセプタクル14を設けてある。なお、光ファイバ11は、本体ユニット12に接続する側の端部にファイバレセプタクル14と嵌合させることが可能な光コネクタ15を設けてある。本体ユニット12は、ファイバレセプタクル14と光コネクタ15とを嵌合させることで、光ファイバ11を着脱可能に接続することができる。本体ユニット12と光ファイバ11とを着脱可能にすることで、共焦点計測装置100を設置した現場で光ファイバ11が破損した場合でも、ヘッド部10a全体を交換することなく、光ファイバ11を交換するだけで済み、共焦点計測装置100のランニングコストを低減することができる。また、光ファイバ11を交換するだけであるため、ヘッド部10aの光軸を再調整する必要もなく、光ファイバ11の交換後すぐに測定を再開することが可能である。
【0076】
光ファイバ11は、本体ユニット12に接続する側の端部の面(端面)が、光軸に対して斜めにカットされたAPC(Angled PC)研磨のファイバを用いている。そのため、光ファイバ11の端面からの反射光を低減することができ、反射光による受光波形へのオフセットを減らし計測レンジが狭まるのを抑えることができる。なお、APC研磨した光ファイバ11を用いる場合、光の出射方向が光ファイバ11の光軸に対して斜めになるので、光の出射方向が本体ユニット12の中心軸に沿うように、ファイバレセプタクル14の中心軸を本体ユニット12の中心軸に対して斜めに設置する必要がある。
【0077】
また、
図10に示すヘッド部10aは、形状を小さくするため、対物レンズ2の焦点距離に比べて、回折レンズ1と対物レンズ2との距離を短くしている。さらに、
図10に示すヘッド部10aは、
図8に示す集光レンズ3を採用していない。そのため、
図10に示すヘッド部10aは、
図8に示すヘッド部10に比べて光の利用効率が悪くなるが、レンズの枚数を減らせるため、レンズのコストとレンズの調整工数を削減することができる。
【0078】
次に、
図11は、本発明の実施の形態2に係る共焦点計測装置100の分光器の構成を示す概略図である。
図11に示す分光器230は、ツェルニターナ型であり、回折格子23b、集光レンズ23c、コリメートレンズ23dを含んでいる。なお、
図11において分光器230は、
図1に示す分光器23と同じ構成要素について同じ番号を付与してある。
【0079】
分光器230には、光ファイバ22cを経由してヘッド部10から戻る光が入射される。光ファイバ22cから出射した光はコリメートレンズ23dによってコリメート光となり、回折格子23bで反射された後、集光レンズ23cで集光されて撮像素子24であるCCDに照射する。
【0080】
光ファイバ22cの端部にはファイバフェルール部22c1を設け、ファイバフェルール部22c1はファイバレセプタクル部23eに固定される。回折格子23b、集光レンズ23c、コリメートレンズ23d、ファイバレセプタクル23e、および撮像素子24は、それぞれの位置が容易にずれないように、分光器ベース部23fに固定してある。
【0081】
分光器230は、光ファイバ22cから入射した光をコリメート光にするために、反射鏡ではなくて単レンズのコリメートレンズ23dを用いているので、コストを低減することができる。
【0082】
次に、
図12は、本発明の実施の形態2に係る共焦点計測装置100の白色LEDと光ファイバとの結合部の構成を示す概略図である。
図12に示す白色LED21と光ファイバ22bとの結合部は、保持筐体210、ファイバ留め具211を含んでいる。保持筐体210には、白色LED21を実装した基板21aをネジなどで固定してある。保持筐体210は、アルミ合金等の金属製であり、白色LED21を点灯したときに発生する熱を基板21a介して放熱しやすくなっている。なお、白色LED21は、発熱量を抑えるためにはパルス点灯が望ましいが、ノイズを抑えるためには連続点灯の方が望ましい。
【0083】
保持筐体210は、白色LED21の光軸上に設けた凹部に光ファイバ22bのファイバフェルール部22b1を差込み、ファイバ留め具211で光ファイバ22bすることで、白色LED21と光ファイバ22bとの結合部を構成している。光ファイバ22bのファイバフェルール部22b1は、ファイバ先端保護する金属もしくはセラミック製の部品であり、先端の直径が50μm程度である。
【0084】
なお、白色LED21とファイバフェルール部22b1の先端との距離は、光の利用効率向上のため、できるだけ短い方がよい。しかし、製造バラツキを考慮して、白色LED21、ファイバフェルール部22b1などの寸法公差分だけ、白色LED21とファイバフェルール部22b1の先端との距離を開けておく必要がある。
【0085】
次に、実施の形態2に係る共焦点計測装置100に用いる白色LED21について詳しく説明する。白色LED21は、蛍光体方式のものを採用している。蛍光体方式の白色LEDは、青またはそれよりも波長の短い発光ダイオードのチップを蛍光体で覆った構造で、チップからの出射光とそれによる蛍光体の励起光とを得ることで白色光を得ている。
【0086】
図13は、蛍光体方式を採用した白色LED21の分光スペクトルを示す図である。
図13に示す分光スペクトルは、青色の部分(波長440nm付近)に強い強度をもつ成分と、波長500nm〜700nmにかけて滑らかに強度が変化する成分との、2つの成分を含んでいる。分光スペクトルの強い強度をもつ成分は、チップからの出射光の成分であり、分光スペクトルの滑らかに強度が変化する成分は、蛍光体の励起光の成分である。
【0087】
ここで、本発明の実施の形態2に係る共焦点計測装置100では、波長軸に対して均一に近い強度分布を持つ光源が理想であるため、分光スペクトルの滑らかに強度が変化する成分を用いることが望ましい。分光スペクトルの滑らかに強度が変化する成分のピーク(波長560nmあたり)に対して、半分以上の強度が得られる波長を、共焦点計測装置100の計測領域(波長520〜650nm)とする。
【0088】
次に、本発明の実施の形態2に係る共焦点計測装置100では、安定した測定結果を得るために白色LED21の発光強度を調整している。つまり、共焦点計測装置100は、白色LED21の発光強度が大きすぎると、撮像素子24の受光波形が飽和してしまうため正しいピークを得ることができず、逆に白色LED21の発光強度が小さすぎると、撮像素子24の受光波形がノイズに埋もれてしまうため正しいピークを得ることができない。
【0089】
また、白色LED21の分光スペクトルは、前述したように、波長に対して発光強度が変化して一定ではない。そのため、安定した測定結果を得るために白色LED21の発光強度を調整する必要がある。
【0090】
図14は、撮像素子24の受光波形と閾値の関係を示した図である。安定した測定結果を得るために、撮像素子24の受光波形のピークが第1閾値と第2閾値との間となるように白色LED21の発光強度を調整する。
【0091】
図15は、白色LED21の発光強度を調整する動作を説明するためのフローチャートである。まず、撮像素子24は、
図14に示すような受光波形を取込む(ステップS151)。次に、
図1に示す制御回路部25は、撮像素子24で取込んだ受光波形にピークが含まれているか否かを判断する(ステップS152)。制御回路部25は、撮像素子24で取込んだ受光波形にピークが含まれていないと判断した場合(ステップS152:NO)、白色LED21の発光強度が大きくなるように、投入電流を大きくしたり、発光パルス幅を広くしたりする(ステップS153)。
【0092】
制御回路部25は、撮像素子24で取込んだ受光波形にピークが含まれていると判断した場合(ステップS152:YES)、受光波形のピークが
図14に示すような第1閾値以上であるか否かを判断する(ステップS154)。制御回路部25は、受光波形のピークが第1閾値以上でない(第1閾値より小さい)と判断した場合(ステップS154:NO)、処理をステップS153に進め、白色LED21の発光強度が大きくなるように、投入電流を大きくしたり、発光パルス幅を広くしたりする。
【0093】
制御回路部25は、受光波形のピークが第1閾値以上であると判断した場合(ステップS154:YES)、受光波形のピークが
図14に示すような第2閾値より小さいか否かを判断する(ステップS155)。制御回路部25は、受光波形のピークが第2閾値より小さくない(第2閾値以上)と判断した場合(ステップS155:NO)、白色LED21の発光強度が小さくなるように、投入電流を小さくしたり、発光パルス幅を狭くしたりする(ステップS156)。
【0094】
制御回路部25は、受光波形のピークが第2閾値より小さいと判断した場合(ステップS155:YES)、処理を終了する。
【0095】
以上のように、本発明の実施の形態2に係る共焦点計測装置100は、
図15に示すフローチャートのように白色LED21の発光強度を調整することで、白色LED21の波長により受光波形のピークが変化しても、計測対象物の反射率によって受光波形のピークが変化しても、安定した測定結果を得ることができる。
【0096】
なお、
図15に示すフローチャートでは、白色LED21の投入電流を調整したり、発光パルス幅を調整したりすることで、白色LED21の発光強度を調整する場合について説明したが、撮像素子24の撮像時間や増幅率を変化させて、安定した測定結果を得るように受光波形のピークを調整してもよい。
【0097】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。