(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
日周運動によって撮影装置に対して相対運動する天体を撮影するために、撮像素子の撮像領域の一部を電子的にトリミングしたトリミング領域を移動させながら撮影する天体自動追尾撮影方法であって、
前記撮像領域上での天体像の移動情報を取得するステップと、
取得した前記天体像の移動情報に基づき、前記トリミング領域の移動データを設定するステップと、
前記トリミング領域の切り出し範囲及び撮影時間を設定するステップと、
設定した前記トリミング領域の移動データ及び切り出し範囲並びに撮影時間に基づいて、前記トリミング領域を移動させながら、各移動後のトリミング領域上における撮影画像を取得するステップと、を有し、
前記トリミング領域の切り出し範囲及び撮影時間を設定するステップは、
前記撮像素子の撮像領域に、該撮像領域よりも小さいトリミング領域を切り出すステップと、
切り出した前記トリミング領域を、前記トリミング領域の移動データに基づいて仮想的に移動させたときに、前記トリミング領域が前記撮像素子の撮像領域内に収まることができる最長の時間を最長撮影時間として算出するステップと、
算出した最長撮影時間を撮影時間として設定するステップと、を有することを特徴とする天体自動追尾撮影方法。
日周運動によって撮影装置に対して相対運動する天体を撮影するために、撮像素子の撮像領域の一部を電子的にトリミングしたトリミング領域を移動させながら撮影する天体自動追尾撮影方法であって、
前記トリミング領域上での天体像の移動方向、移動距離、及び回転角を含む天体像の移動情報を取得するステップと、
取得した前記天体像の移動情報に基づき、前記トリミング領域の移動方向、移動距離、回転角、及び移動周期を含む移動データを設定するステップと、
設定した前記トリミング領域の移動データに基づいて前記トリミング領域を移動させながら、各移動後のトリミング領域上における撮影画像を取得するステップと、を有し、
前記移動情報の取得ステップでは、前記トリミング領域上での天体像の所定時間あたりの移動距離を、前記撮影装置の撮影光学系の光軸に対して直交する方向の平行移動成分と、該光軸と平行な軸回りの回転移動成分とに分けて取得し、
前記移動データの設定ステップでは、取得した前記平行移動成分の移動距離に対応するトリミング領域の移動周期と前記回転移動成分の移動距離に対応するトリミング領域の移動周期とのうち、いずれか短いほうの移動周期を、前記トリミング領域の移動周期として設定することで、前記トリミング領域の移動周期を、前記トリミング領域上での天体像の所定時間あたりの移動距離が、前記トリミング領域の画素ピッチを超えない範囲内で設定することを特徴とする天体自動追尾撮影方法。
日周運動によって撮影装置に対して相対運動する天体を撮影するために、撮像素子の撮像領域の一部を電子的にトリミングしたトリミング領域を移動させながら撮影する天体自動追尾撮影装置であって、
前記トリミング領域上での天体像の移動方向、移動距離、及び回転角を含む天体像の移動情報を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した前記天体像の移動情報に基づき、前記トリミング領域の移動方向、移動距離、回転角、及び移動周期を含む移動データを設定する設定手段と、
前記設定手段が設定した前記トリミング領域の移動データに基づいて前記トリミング領域を移動させながら、各移動後のトリミング領域上における撮影画像を取得する撮影画像取得手段と、を有し、
前記取得手段は、前記トリミング領域上での天体像の所定時間あたりの移動距離を、前記撮影装置の撮影光学系の光軸に対して直交する方向の平行移動成分と、該光軸と平行な軸回りの回転移動成分とに分けて取得し、
前記設定手段は、取得した前記平行移動成分の移動距離に対応するトリミング領域の移動周期と前記回転移動成分の移動距離に対応するトリミング領域の移動周期とのうち、いずれか短いほうの移動周期を、前記トリミング領域の移動周期として設定することで、前記トリミング領域の移動周期を、前記トリミング領域上での天体像の所定時間あたりの移動距離が、前記トリミング領域の画素ピッチを超えない範囲内で設定することを特徴とする天体自動追尾撮影装置。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、
図1ないし
図17を参照して、本発明の天体自動追尾撮影装置をデジタルカメラ(撮影装置)10に適用した実施形態を説明する。
【0022】
図1に示すように、デジタルカメラ10は、カメラボディ11と、撮影手段としての撮影レンズ101(撮影光学系101L)とを備えている。カメラボディ11内には、撮影光学系101Lの後方に撮像センサ(撮像素子)13が配設されている。撮影光学系101Lの光軸LOと、撮像センサ13の撮像面(撮像領域)14とは直交している。
【0023】
図2(A)に示すように、撮像センサ13の撮像面14は、矩形をなしており、この矩形の撮像面14の一部を電子的にトリミングした矩形のトリミング領域15が設定されている。
図2(B)に示すように、トリミング領域15は、撮像面14内において、撮影光学系101Lの光軸LOと直交する所望の移動量(例えば、横方向移動量Δx、縦方向移動量Δy)だけ所望の移動速度で平行移動制御される。
図2(C)に示すように、トリミング領域15は、光軸LOと平行な軸(光軸LOと直交する面内の何処かに位置する瞬間中心)を中心として所望の回転量(例えば、回転角α)だけ所望の回転速度で回転制御される。
【0024】
撮影レンズ101は、撮影光学系101L内に、絞り103を備えている。この絞り103の絞り値(開閉度合い)は、カメラボディ11内に備えられた絞り駆動制御機構17によって制御される。撮影レンズ101は、撮影光学系101Lの焦点距離情報fを検出する焦点距離検出装置(焦点距離情報入力手段)105を備えている。
【0025】
カメラボディ11は、撮像センサ13で撮像した画像を表示するLCDモニタ23と、撮像センサ13で撮像した画像を保存するメモリーカード25を備えている。またカメラボディ11は、電源スイッチ27と、レリーズスイッチ28と、設定スイッチ30とを備えている。電源スイッチ27は、デジタルカメラ10の電源のオンオフを切り替えるためのスイッチである。レリーズスイッチ28は、焦点調節処理、測光処理及び撮影処理を実行するためのスイッチである。設定スイッチ30は、天体自動追尾撮影モードや通常撮影モードなどの撮影モードを選択して設定するスイッチである。
【0026】
カメラボディ11は、GPSユニット(緯度情報入力手段)31と、方位角センサ(撮影方位角情報入力手段)33と、重力センサ(撮影仰角情報入力手段、姿勢情報入力手段)35とを備えている。GPSユニット31は、デジタルカメラ10の撮影地点の緯度情報εを検出する。方位角センサ33は、デジタルカメラ10の撮影地点の撮影方位角情報Aを検出する。重力センサ35は、デジタルカメラ10の撮影地点の撮影仰角情報hを検出する。また、重力センサ35は水準機能を有しており、
図12に示すカメラボディ11(撮像センサ13)の姿勢情報ξを検出する。姿勢情報ξは、カメラボディ11(撮像センサ13)の基準位置からの撮影光軸LO(撮像センサ13の撮像面14の中心C)を中心とする回転角情報ξである。カメラボディ11(撮像センサ13)の基準位置は、例えば、矩形の撮像センサ13の長辺方向を水平方向Xとした位置であり、回転後の長辺方向X’とのなす角ξがこの回転角情報である。
【0027】
カメラボディ11には、デジタルカメラ10の全体の機能を制御するCPU(取得手段、設定手段、撮影手段、重ね合わせ手段)21が搭載されている。CPU21は、トリミング領域15(撮像面14)の画素ピッチ情報を保持する画素ピッチ情報保持部21Aを備えている。
【0028】
CPU21は、焦点距離検出装置105から入力した焦点距離情報fと、GPSユニット31から入力した緯度情報εと、方位角センサ33から入力した撮影方位角情報Aと、重力センサ35から入力した撮影仰角情報h及び姿勢情報ξと、画素ピッチ保持部21Aが保持するトリミング領域15の画素ピッチ情報とに基づいて、撮像センサ13に対してトリミング指示信号を送ることにより、撮像センサ13の撮像面14でトリミング領域15を移動させる。以下、CPU21によるトリミング領域15の移動制御について詳細に説明する。
【0029】
CPU21は、焦点距離検出装置105から入力した焦点距離情報fと、GPSユニット31から入力した緯度情報εと、方位角センサ33から入力した撮影方位角情報Aと、重力センサ35から入力した撮影仰角情報h及び姿勢情報ξとを用いて、撮像面14上での天体像の所定時間あたりの移動情報を取得する。
この移動情報は、撮像面14上での天体像の横方向移動量Δx、縦方向移動量Δy、回転角αを含む。横方向移動量Δxと縦方向移動量Δyを合成したベクトル成分の方向が、トリミング領域15上での天体像の移動方向に相当する。横方向移動量Δxと縦方向移動量Δyを合成したベクトル成分の長さが、トリミング領域15上での天体像の移動距離に相当する。
【0030】
CPU21は、取得した撮像面14上での天体像の移動情報(横方向移動量Δx、縦方向移動量Δy、回転角α)に基づいて、トリミング領域15の移動データを設定する。この移動データは、トリミング領域15上での天体像の結像位置が常に固定となるように撮像センサ13の撮像面14でトリミング領域15を移動させるためのデータである。
この移動データは、トリミング領域15の横方向移動量Δx、縦方向移動量Δy、回転角α、移動周期tを含む。横方向移動量Δxと縦方向移動量Δyを合成したベクトル成分の方向が、トリミング領域15の移動方向に相当する。横方向移動量Δxと縦方向移動量Δyを合成したベクトル成分の長さが、トリミング領域15の移動距離に相当する。
【0031】
CPU21は、設定したトリミング領域15の移動データ(横方向移動量Δx、縦方向移動量Δy、回転角α、移動周期t)に基づいて、撮像センサ13の撮像面14でトリミング領域15を移動させる。
【0032】
CPU21は、焦点距離検出装置105から入力した焦点距離情報fと、トリミング領域15上での天体像の所定時間あたりの移動距離と、画素ピッチ情報保持部21Aが保持するトリミング領域15の画素ピッチ情報とに基づいて、トリミング領域15の移動周期tを設定する。
【0033】
より具体的にCPU21は、トリミング領域15上での天体像の所定時間あたりの移動距離が、トリミング領域15の画素ピッチを超えない範囲内で、トリミング領域15の移動周期tを設定する。これにより、トリミング領域15上に形成される天体像がトリミング領域15の画素ピッチを跨いで移動することがないので、天体を静止状態(光点状)で撮影することができる。
【0034】
いま、トリミング領域15の移動周期の許容できる最大値をt
max、トリミング領域15の画素ピッチをa、移動周期tでのトリミング領域15上における天体像の移動距離をLと定義する。
【0035】
撮影画像に天体像の移動がずれとして写らないようにするためには、移動周期tでのトリミング領域15上における天体像の移動距離Lがトリミング領域15の画素ピッチa以内であればよい。つまりトリミング領域15の移動周期の許容できる最大値t
maxとは、a=Lが成立するときの移動周期tを意味する。CPU21は、0.5t
max<t≦t
maxを満足するような移動周期tを設定することが好ましい。これにより、トリミング領域15を天体の日周運動に良好に追従させて天体を静止状態(光点状)で撮影するとともに、無駄な演算処理を省いてCPU21の負担を低減することができる。この条件式の上限を超えると、トリミング領域15の移動周期tが長くなりすぎて、天体の移動軌跡が直線状あるいは曲線状に写ってしまう。この条件式の下限を超えると、トリミング領域15の移動周期tが短くなりすぎて、マクロに見て同じような撮影画像を大量に得ることになるため、無駄な演算処理が増えてCPU21の負担が増大する。
【0036】
例えば、トリミング領域15の横方向移動量Δx、縦方向移動量Δyだけを考慮した場合のトリミング領域15の移動周期をt
xyとする。北極星から撮影目標点への角度をθ、焦点距離検出装置105から入力した撮影レンズ101の焦点距離情報をfとすると、次の式(1)が成立する。
L = f・sinθ・sin(2・π/24/60/60・t
xy) ・・・(1)
この式(1)の移動距離Lを画素ピッチaに置き換えて(a=L)、移動周期t
xyについて変形すると、次の式(2)が成立する。
t
xy= arcsin(a/f/sinθ)・24・60・60/2/π ・・・(2)
この式(2)においてa=5μm、f=100mmとして、点の赤道上を撮影する場合(θ=90°)を想定すると、移動周期t
xyは、
t
xy = arcsin(5/100000/1)・24・60・60/2/π = 0.687549秒
となる。
この値はトリミング領域15の移動周期t
xyの許容できる最大値に相当するので、CPU21は、トリミング領域15の移動周期t
xyとして、0.687549秒以内の値を設定する。
【0037】
また、トリミング領域15の回転角αだけを考慮した場合のトリミング領域15の移動周期をtαとする。矩形の撮像センサ13のトリミング領域15の対角サイズをbとすると、次の式(3)が成立する。
L = b・π/24/60/60・tα・cosθ ・・・(3)
この式(3)の移動距離Lを画素ピッチaに置き換えて(a=L)、移動周期tαについて変形すると、次の式(4)が成立する。
tα= a/b/π・24・60・60/cosθ ・・・(4)
この式(4)においてa=5μm、b=28.4mmとして、北極星を撮影する場合(θ=0°)を想定すると、移動周期tαは、
tα = 5/28400/π・24・60・60/1 = 4.841897秒
となる。
この値はトリミング領域15の移動周期tαの許容できる最大値に相当するので、CPU21は、トリミング領域15の移動周期tαとして、4.841897秒以内の値を設定する。
【0038】
CPU21は、平行移動成分(Δx、Δy)の移動距離に対応するトリミング領域15の移動周期t
xyと、回転移動成分(α)の移動距離に対応するトリミング領域15の移動周期tαとのうちいずれか短い方の移動周期(この例では移動周期t
xy)を、トリミング領域15の移動周期tとして設定する。これにより、トリミング領域15上における天体像の平行移動成分(回転移動成分)の移動距離が回転移動成分(平行移動成分)の移動距離に対して大きくなりすぎることがないので、天体を静止状態(光点状)で撮影することができる。
【0039】
CPU21は、以上のようにして設定したトリミング領域15の移動データ(横方向移動量Δx、縦方向移動量Δy、回転角α、移動周期t(t
xyまたはtα))に基づいて、トリミング領域15を移動させながら、各移動周期tのトリミング領域15上で撮影(露出)を行い、各移動周期tのトリミング領域15での撮影画像を重ね合わせて1枚の画像を得る。トリミング領域15が移動している間、トリミング領域15上における天体像の結像位置は固定されているので、重ね合わせて得られる1枚の画像は、日周運動する各天体が見かけ上静止した状態で明るく写っている。
【0040】
続いて、
図3ないし
図12を参照して、トリミング領域15の移動データ(横方向移動量Δx、縦方向移動量Δy、回転角α)を算出するための原理を説明する。
【0041】
「北極点(緯度90゜)から撮影する場合」
地球上の北極点(緯度90゜)から撮影する場合とは、地軸(自転軸)の延長上に位置する北極星(天の極)が天頂と一致している状態(
図3)での撮影である。
【0042】
天球を有限の球体と見立てて、実際には無限大となるはずの天球の半径を
図3のように有限のrとおき、デジタルカメラ10の撮影光学系101Lの光軸LOと北極星からのずれ角度(天の極方向と撮影光学系光軸LOとの成す角)をθとする。このとき、デジタルカメラ10の撮影仰角hは、90−θ(h=90−θ)である。
【0043】
天球を
図4のように真下から見た場合、すべての天体は北極星(天の極)を中心に円軌道を描く。その円軌道の半径をRと置く。円軌道の半径Rはデジタルカメラ10の撮影仰角hに依存するので、θで表すことができる。円軌道の半径Rは、
R = r × sinθ ・・・(5)
で与えられる。
【0044】
円軌道の1周360°を24時間( = 1440分 = 86400秒)で一回りするとして、u秒でφ゜回転する場合、
φ = 0.004167 × u [deg] ・・・(6)
が成立する。
【0045】
図5のように天体の描く軌道が円軌道であっても、円軌道を真下から見た構図(a1)の場合と、斜めから見た構図(a2)、(a3)、真横から見た構図(a4)の場合はそれぞれ
図6の(a1)乃至(a4)に示したような画像となり、軌跡が異なるという結果が得られる。つまり、天体はあたかも円軌道を描いて動いているように見えるが、実際にカメラで撮影する場合には、カメラの撮影仰角hが結像状態に影響する。
【0046】
これらの軌跡は、円を斜めから見ると楕円に見えることから、Xrを楕円の長軸側の半径、Yrを短軸側の半径として、
Xr = R = r × sinθ ・・・(7)
Yr = R × cosθ= r × sinθ × cosθ ・・・(8)
として求めることができる。
【0047】
そこで、
図4、
図5、
図7に示したように、天体にデジタルカメラ10を向けて、天体(地球)がφ゜回転したときの軌跡をX方向(天球の緯線方向)、Y方向(天球の経線方向)に分割して説明する。X方向の移動量xは、
x = R × sinφ ・・・(9)
となる。Y方向の移動量yは円軌道を見ている方向により異なる。
【0048】
図7中において、矢印(D点からE点)で示した天体の軌跡は、(a1)のように天体の軌跡を真下から見た場合(θ= 0°)に完全な円軌道を描く。実際にはθ= 0では、円の半径Rも0となり点にしか見えないが、ここでは簡単のためRを有限の値で仮定する。このとき、Y方向の移動量yは最大になる。
【0049】
そして、円軌道を構図(a2)、(a3)のように斜めに見ていくと移動量yは小さくなっていくので、構図(a4)のように円軌道を真横から見ると移動量yは最小(=0)となる。Y方向の移動量yの最大量Ymaxは円軌道の場合の
図7から、
Ymax = R - R × cosφ ・・・(10)
となる。
よって移動量yは、
y = Ymax × cosθ = (R - R × cosφ) × cosθ ・・・(11)
となる。
(9)、(11)式中のRに(5)式を代入すると、移動量x、移動量yは、
x = r × sinθ × sinφ ・・・(12)
y = r × sinθ × cosθ(1 - cosφ) ・・・(13)
となる。
【0050】
実際のデジタルカメラ10を用いて天球に対する計算をするには、天球のX方向、Y方向を撮像面14上に射影した方向に関し、トリミング領域15上での移動量ΔxとΔyを求める。無限大となる天球半径rは撮影レンズ101の焦点距離fで表して、
Δx = f × sinθ × sinφ ・・・(14)
Δy = f × sinθ × cosθ(1 - cosφ) ・・・(15)
により、移動量ΔxとΔyを演算する。
つまり、トリミング領域15の光軸直交面内での移動量は、デジタルカメラ10に装着された撮影レンズ101の焦点距離fによって変化する。
【0051】
次に、撮影時にトリミング領域15をどれだけ回転すればよいかを求める。前述のように、デジタルカメラ10から天体を見た場合、天体の軌道は円もしくは楕円軌道として見える。
図8のように点Fの天体が楕円(円)軌道を描いて移動する場合、点Fをトリミング領域15の中心Cにとらえて、F→F'という移動に対し追尾するならば、トリミング領域15の中心CをΔx、Δy移動させればよい。しかし、点Fの周囲に例えばJという天体があった場合、点Jは、J→J'へと移動する。この点Jに対しても追尾を行うためには、トリミング領域15の中心Cを中心としてトリミング領域15を回転させればよい。その回転角度は、点F'における楕円の接線Lの傾き角(点Fにおける楕円の接線と点F'における楕円の接線との成す角)αである。以下、カメラボディ11(トリミング領域15)の基準位置において、トリミング領域15の長辺方向をX軸、X軸と直交する短辺方向をY軸とする。
【0052】
図9のようなX-Y座標系と楕円において、楕円上の点Kにおける楕円の接線Lの方程式は、
x0 × x/a
2 + y0 × y/b
2 = 1
となる。
図9において、点a、点bは、式(7)と(8)で示した楕円の長軸側の半径Xr、短軸側の半径Yrに相当する。
【0053】
この接線Lの式をYについての方程式(Y=)の形に変形すると、
Y = -(b
2 × x0)/(a
2 × y0) × x - 1/(a
2 × y0)
となる。
この楕円の接線LとX軸の成す角度が、画像中心を回転中心とする画像の回転角αである。
【0054】
楕円の接線Lの傾きに直交する直線Qの傾きは、
-(b
2 × x0)/(a
2 × y0)
となるため、求める回転角αは、
α = arctan( -(b
2 × x0)/(a
2 × y0)) ・・・(16)
となる。
【0055】
「緯度が90°以外の場合」
以上は、撮影地点の緯度が90°(つまり北極星(天の極)が真上にある場合)の説明である。次に、撮影地点の緯度が90°以外の場合について、さらに
図10及び
図11を参照して説明する。
【0056】
北半球における天体撮影の様子を表す
図10において、各符号を以下の通り定義する。
P:天の極
Z:天頂
N:真北
S:対象天体(撮影目標点)(説明の便宜上、この対象天体(恒星)はトリミング領域15の中心であり、撮影レンズ101の光軸LOの延長線上に位置するものとする。但し、撮影するにあたり光軸をどれかの天体に一致させる必要が無いことは言うまでも無い)
ε:撮影地点の緯度
A:撮影方位角(撮影レンズ101が狙う天体Sの方位、又は撮影レンズ101の光軸LOと天球との交点の方位角)
h:撮影仰角(撮影レンズ101が狙う天体Sの高度、又は撮影レンズ101の光軸LOと天球との交点の高度)
H:対象天体Sの時角(通常、時角の単位は時間が使われるが、ここでは角度(1時間=15度)に換算して扱うこととする。)
δ:対象天体Sの赤緯
γ:天球面上において、天の極Pと対象天体Sとを最短で結ぶ曲線と、天頂Zと対象天体(恒星)Sとを最短で結ぶ曲線とがなす角。
【0057】
図10において、北極星Pと目標点Sの間の角度である∠POSが求められれば、
図3における角度θを∠POSに置き換えることで天体の軌跡を求めることができる。
【0058】
∠POSは、球の半径を1とした場合の
図11の曲線PSの長さに等しい。よって、∠POSは球面三角の余弦定理を用いて、
cos(∠POS) = cos(90 - ε) × cos(90 - h) + sin(90 - ε) × sin(90 - h)×cos(A)
= sin(ε) × sin(h) + cos(ε) × cos(h) × cos(A)
となるので、
∠POS = arccos[sin(ε) × sin(h) + cos(ε) × cos(h) × cos(A)]・・・(17)
となる。
ここで、式(12)乃至(15)のθを∠POSで置き換えると、任意の緯度εにおける天体のX方向移動量x、Y方向移動量yを求めることができる。
【0059】
また、カメラ姿勢によって、移動方向の補正を行う必要がある。カメラを水平に構えたまま、撮影仰角hの方向に持ち上げて目標点Sへ向けた場合、水平と目標点Sの赤道がなす角はγとなる。なお、前述のように、カメラ姿勢は、デジタルカメラ10の撮影レンズ光軸LO回りの回転角のことであり、トリミング領域15の長手方向が水平の場合のカメラ姿勢を水平とする。
球面三角の正接定理より、
tan(γ) = sin(90 - ε) × sin(A)/(cos(90 - ε) × sin(90 - h) - sin(90 - ε) × cos(90 - h) × cos(A))
= cos(ε) × sin(A)/(sin(ε) × cos(h) - cos(ε) × sin(h) × cos(A))
となり、
γ = arctan[cos(ε) × sin(A)/(sin(ε) × cos(h) - cos(ε) × sin(h) × cos(A))]・・・(18)
となる。
【0060】
よって、上記で求めたこのγを用いて、天体の移動量x、yを撮像面上の座標(カメラ(トリミング領域)の縦横座標)における横方向移動量Δx、縦方向移動量Δyに変換するには、下記式(I)、(II)を使用する。
Δx = x × cos(γ) + y × sin(γ)・・・(I)
Δy = x × sin(γ) + y × cos(γ)・・・(II)
【0061】
また、
図12に示したように、デジタルカメラ10のカメラ姿勢(撮像センサ13)が撮影レンズ光軸LO回りに水平からξ傾いている(回転している)場合は、式(III)、(IV)によってトリミング領域15の横方向、縦方向移動量Δx、Δyを補正することができる。
Δx = x × cos(γ + ξ) + y × sin(γ + ξ)・・・(III)
Δy= x × sin(γ + ξ) + y × cos(γ + ξ)・・・(IV)
【0062】
以上のトリミング領域15の横方向移動量Δx、縦方向移動量Δy、回転角αは、次のように算出される。
【0063】
天球の北極点Pの方向は、日時にかかわらず変化しないと見なすことができるので、撮影地点の緯度から演算によって算出できる。さらに天頂Zの方向も、緯度から算出できる。従って、先ず、目標とする天体がトリミング領域15に投影されるように、デジタルカメラ10の構図を決めて固定する。このデジタルカメラ10の構図において、CPU21に、GPSユニット31から緯度情報εを入力し、方位角センサ33から撮影方位角情報Aを入力し、重力センサ35から撮影仰角情報h及び姿勢情報(回転角情報)ξを入力する。CPU21は、これらの入力情報から、
図10、
図11に示したように、天頂の点Z、天の極の点P、撮影画面中心の天体の点Sの位置(方位角、仰角)を求める。
【0064】
以上の3点Z、P、Sが求まれば、CPU21は、焦点距離検出装置105から入力した撮影レンズ101の焦点距離情報f及び姿勢情報(回転角情報)ξから、トリミング領域15の横方向移動量Δx、縦方向移動量Δy、回転角αを算出する。
【0065】
続いて、このデジタルカメラ10による天体自動追尾撮影を行うための第1の方法について、
図13のフローチャートを参照して説明する。この方法は、最初に撮像センサ13の撮像面14にトリミング領域15を切り出して、その後に撮影時間(露出時間)を設定するものである。第1の方法は言わば「撮影範囲優先モード」であり、例えば特定の星座を全て含めるような撮影範囲をユーザが積極的に設定して天体追尾撮影をする時に有効なモードである。
【0066】
まずCPU21は、
図14(A)に示すように、撮像センサ13の矩形の撮像面14の中央部から、撮像面14よりも小さい面積の矩形のトリミング領域15を切り出す(S1)。つまりCPU21は、撮像面14のトリミング領域15内の画素信号を読み出す。本実施形態では、矩形の撮像面14とトリミング領域15の長辺と短辺がそれぞれ平行をなしている。トリミング領域15の切り出し範囲は、ユーザの手入力によって可変とする方が好ましい。トリミング領域15内の画素が読み出した画像はLCDモニタ23の全表示範囲に表示されるので、ユーザはLCDモニタ23に表示されるトリミング領域15を見ながら、図示しないトリミング領域変更/決定手段によってトリミング領域を変更し、決定すれば良い。
【0067】
次いでCPU21には、焦点距離検出装置105から撮影レンズ101の焦点距離情報fが入力され、GPSユニット31から緯度情報εが入力され、方位角センサ33から撮影方位角情報Aが入力され、重力センサ35から撮影仰角情報h及び姿勢情報ξが入力される(S2)。
【0068】
次いでCPU21は、入力した焦点距離情報f、緯度情報ε、撮影方位角情報A、撮影仰角情報h及び姿勢情報ξから、トリミング領域15の移動データ(横方向移動量Δx、縦方向移動量Δy、回転角αからなる天体追尾データ)を設定する(S3)。
【0069】
次いでCPU21は、撮像センサ13の撮像面14の範囲と、トリミング領域15の切り出し範囲と、トリミング領域15の移動データ(横方向移動量Δx、縦方向移動量Δy、回転角α)とに基づいて、最長撮影時間(最長露出時間)T
limitを算出し、撮影時間(露出時間)Tを最長撮影時間T
limit(T=T
limit)と決定する(S4)。
より具体的にCPU21は、
図14(B)に示すように、切り出したトリミング領域15を移動データ(横方向移動量Δx、縦方向移動量Δy、回転角α)に基づいて移動させたときに、トリミング領域15が撮像センサ13の撮像面14内に収まることができる最長の時間を最長撮影時間T
limitとして算出し、撮影時間(露出時間)Tを最長撮影時間T
limitと決定する。決定された撮影時間TはLCDモニタ23に表示される。
【0070】
ユーザはLCDモニタ23に表示された撮影時間(露出時間)Tが許容できる撮影時間か否かを確認し(S5)、許容できない場合には(S5:NO)トリミング領域15の範囲を変更する(S6)。さらにデジタルカメラ10の向きあるいは撮影レンズ101の焦点距離を変更するか否かを確認し(S7)、変更する場合(S7:YES)はステップS2に戻り、変更しない場合(S7:NO)はステップS3に戻る。
【0071】
LCDモニタ23に表示された撮影時間(露出時間)Tが許容できる撮影時間であれば(S5:YES)、CPU21は、トリミング領域15の移動周期tを算出する(S8)。トリミング領域15の移動周期tを算出する方法については後述する。
【0072】
次いでCPU21は、撮像センサ13にトリミング指示信号を送ることにより、移動周期tの露出時間だけ、撮像センサ13による撮影を行い(S10)、撮影画像データを取得する(S11)。CPU21は、取得した撮影画像データを図示しない内蔵メモリ(キャッシュメモリ)に蓄積する。移動周期tの露出時間の撮影が終わると、CPU21は、撮像センサ13にトリミング指示信号を送ることにより、トリミング領域15を移動データ(横方向移動量Δx、縦方向移動量Δy、回転角α)に従って1周期分だけ移動させるとともに、撮影時間Tから移動周期tを減じた時間T−tを新たな撮影時間Tとして置き換える(S12)。
【0073】
CPU21は、残りの撮影時間Tが移動周期tよりも長い限りにおいて(S9:YES)、以上の撮影動作(S10−S12)を繰り返す。
【0074】
CPU21は、残りの撮影時間Tが移動周期tよりも短くなると(S9:NO)、撮像センサ13にトリミング指示信号を送ることにより、残りの撮影時間Tだけ、撮像センサ13による撮影を行い(S13)、撮影画像データを取得する(S14)。
【0075】
このようにしてCPU21は、移動データ(横方向移動量Δx、縦方向移動量Δy、回転角α、移動周期t)に基づいてトリミング領域15を移動させながら、各移動後のトリミング領域15上で撮影を行って複数の撮影画像データを取得して、図示しない内蔵メモリ(キャッシュメモリ)に蓄積する(S15:YES)。そしてCPU21は、これら複数の撮影画像データを重ね合わせて1枚の画像データを得る(S16)。最後にCPU21は、複数の撮影画像を重ね合わせて得た1枚の画像データを、最終画像としてLCDモニタ23に表示するとともに、メモリーカード25に保存する(S17)。
【0076】
なお、CPU21は、初期設定した撮影時間Tがトリミング領域15の移動周期tよりも短いために1枚の撮影画像データしか得られなかったときは(S15:NO)、この1枚の撮影画像を最終画像として、最終画像としてLCDモニタ23に表示するとともに、メモリーカード25に保存する(S17)。
【0077】
ここで、本実施形態のトリミング領域15の移動周期tを算出する方法(S8)について、
図15のフローチャートを参照してより詳細に説明する。
【0078】
まずCPU21には、焦点距離検出装置105から撮影レンズ101の焦点距離情報fが入力され、GPSユニット31から緯度情報εが入力され、方位角センサ33から撮影方位角情報Aが入力され、重力センサ35から撮影仰角情報h及び姿勢情報ξが入力される(S21)。
【0079】
次いでCPU21は、入力した焦点距離情報f、緯度情報ε、撮影方位角情報A、撮影仰角情報h及び姿勢情報ξから、トリミング領域15の横方向移動量Δx、縦方向移動量Δy、回転角αを算出する(S22)。
【0080】
次いでCPU21は、上述の式(1)と(2)により、焦点距離検出装置105から入力した焦点距離情報fと、横方向移動量Δx及び縦方向移動量Δyを合成して得た移動距離L
xyと、画素ピッチ情報保持部21Aが保持するトリミング領域15の画素ピッチ情報aとに基づいて、トリミング領域15の横方向移動量Δx及び縦方向移動量Δyを考慮した場合のトリミング領域15の移動周期t
xyを算出する(S23)。
【0081】
同時にCPU21は、上述の式(3)と(4)により、焦点距離検出装置105から入力した焦点距離情報fと、回転角αに対応する移動距離Lαと、画素ピッチ情報保持部21Aが保持するトリミング領域15の画素ピッチ情報aとに基づいて、トリミング領域15の回転角αを考慮した場合のトリミング領域15の移動周期tαを算出する(S24)。
【0082】
移動周期t
xyの算出(S23)と移動周期tαの算出(S24)は必ずしも同時に行う必要はなく、その順序も問わない。
【0083】
次いでCPU21は、平行移動成分(Δx、Δy)の移動距離に対応するトリミング領域15の移動周期t
xy(S23)と、回転移動成分(α)の移動距離に対応するトリミング領域15の移動周期tα(S24)とのうち、いずれか短い方の移動周期を、
トリミング領域15の移動周期tとして設定する(S25)。
【0084】
最後に、このデジタルカメラ10による天体自動追尾撮影を行うための第2の方法について、
図16のフローチャートを参照して説明する。この方法は、最初に任意の撮影時間(露出時間)を設定して、その後にトリミング領域15の切り出し範囲を決定するものである。第2の方法は言わば「撮影時間優先モード」であり、例えば撮影したい天体が暗く、十分な明るさに撮影するには長時間の追尾撮影が必要な場合等に、撮影時間をユーザが積極的に設定して天体追尾撮影をする時に有効なモードである。
【0085】
まずCPU21は、ユーザの指示に従い任意の撮影時間(露出時間)Tを設定する(S31)。撮影時間Tの設定値は、ユーザの手入力によって可変とする方が好ましい。ユーザはLCDモニタ23に表示される撮影時間Tを見ながら、図示しない撮影時間変更/決定手段によって撮影時間Tを変更し、決定すれば良い。
【0086】
次いでCPU21には、焦点距離検出装置105から撮影レンズ101の焦点距離情報fが入力され、GPSユニット31から緯度情報εが入力され、方位角センサ33から撮影方位角情報Aが入力され、重力センサ35から撮影仰角情報h及び姿勢情報ξが入力される(S32)。
【0087】
次いでCPU21は、入力した焦点距離情報f、緯度情報ε、撮影方位角情報A、撮影仰角情報h及び姿勢情報ξから、撮像センサ13の撮像面14上での天体像の移動情報を取得(算出)し、この移動情報と、設定した撮影時間Tとから撮像センサ13の撮像面14上の移動データ(天体移動データ)(Δx、Δy、α)を算出する(S33)。
【0088】
次いでCPU21は、設定した撮影時間Tと、算出した移動データ(Δx、Δy、α)とに基づいて、トリミング領域15の切り出し範囲を決定し、LCDモニタ23の全表示範囲に表示する(S34)。
より具体的にCPU21は、
図17に示すように、設定した撮影時間T内で、撮像センサ13の撮像面14を算出した移動データに基づいて仮想的に移動させたときに、撮像センサ13の撮像面14として共通して使用する部分からトリミング領域15を切り出す。本実施形態では、撮像センサ13の矩形の撮像面14から、撮像面14の長辺および短辺と平行をなす矩形のトリミング領域15を切り出している。
【0089】
ユーザは、LCDモニタ23に表示されたトリミング領域15の切り出し範囲に撮影を希望する天体が含まれているかどうか等により、トリミング領域15の切り出し範囲が所望のものであるか否かを確認する(S35)。トリミング領域15の切り出し範囲が所望のものでなければ(S35:NO)、ユーザは、図示しない撮影時間変更/決定手段によって撮影時間Tを調整する(S36)。さらにデジタルカメラ10の向きあるいは撮影レンズ101の焦点距離を変更するか否かを確認し(S37)、変更する場合(S37:YES)はステップS32に戻り、変更しない場合(S37:NO)はステップS33に戻る。
【0090】
トリミング領域15の切り出し範囲が所望のものであれば(S35:YES)、CPU21は、前述の
図15のフローチャートで説明した方法に従って、トリミング領域15の移動周期tを算出する(S38)。
【0091】
次いでCPU21は、撮像センサ13にトリミング指示信号を送ることにより、移動周期tの露出時間だけ、撮像センサ13による撮影を行い(S40)、撮影画像データを取得する(S41)。CPU21は、取得した撮影画像データを図示しない内蔵メモリ(キャッシュメモリ)に蓄積する。移動周期tの露出時間の撮影が終わると、CPU21は、トリミング領域15を移動データ(横方向移動量Δx、縦方向移動量Δy、回転角α)に従って1周期分だけ移動させるとともに、撮影時間Tから移動周期tを減じた時間T−tを新たな撮影時間Tとして置き換える(S42)。
【0092】
CPU21は、残りの撮影時間Tが移動周期tよりも長い限りにおいて(S39:YES)、以上の撮影動作(S40−S42)を繰り返す。
【0093】
CPU21は、残りの撮影時間Tが移動周期tよりも短くなると(S39:NO)、撮像センサ13にトリミング指示信号を送ることにより、残りの撮影時間Tだけ、撮像センサ13による撮影を行い(S43)、撮影画像データを取得する(S44)。
【0094】
このようにしてCPU21は、移動データ(横方向移動量Δx、縦方向移動量Δy、回転角α、移動周期t)に基づいてトリミング領域15を移動させながら、各移動後のトリミング領域15上で撮影を行って複数の撮影画像データを取得し、図示しない内蔵メモリ(キャッシュメモリ)に蓄積する(S45:YES)。そしてCPU21は、これら複数の撮影画像データを重ね合わせて1枚の画像データを得る(S46)。最後にCPU21は、複数の撮影画像を重ね合わせて得た1枚の画像データを、最終画像としてLCDモニタ23に表示するとともに、メモリーカード25に保存する(S47)。
【0095】
なお、CPU21は、初期設定した撮影時間Tがトリミング領域15の移動周期tよりも短いために1枚の撮影画像データしか得られなかったときは(S45:NO)、この1枚の撮影画像を最終画像として、最終画像としてLCDモニタ23に表示するとともに、メモリーカード25に保存する(S47)。
【0096】
以上のように、本実施形態の天体自動追尾撮影方法及び天体自動追尾撮影装置によれば、撮像センサ(撮像素子)13の撮像面14上での天体像の移動情報(移動方向、移動距離、回転角)を取得し、取得した移動情報に基づいてトリミング領域15の移動データ(移動方向、移動距離、回転角、及び移動周期)を設定し、設定した移動データに基づいてトリミング領域15を移動させながら各移動後のトリミング領域15上で撮影を行い、撮影した各トリミング領域15上での撮影画像を重ね合わせて1枚の画像を得ている。これにより、高価で大きく重く複雑な調整が必要な赤道儀を使用せず、高精度に制御が必要なアクチュエーターも用いず、無駄な演算処理を省いてCPU21の負担を低減し、天体を見かけ上静止した状態で明るく撮影することができる。
【0097】
以上の実施形態では、焦点距離検出装置105から入力した焦点距離情報fと、GPSユニット31から入力した緯度情報εと、方位角センサ33から入力した撮影方位角情報Aと、重力センサ35から入力した撮影仰角情報h及び姿勢情報ξとから、撮像センサ13の撮像面14上に形成される天体像の移動距離(天体像の移動軌跡)を算出している。しかし、撮像センサ13の撮像面14上に形成される天体像の移動距離(天体像の移動軌跡)を算出する方法はこれに限定されず、種々の方法を用いることができる。