(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
交流電源から供給される交流電力を磁気エネルギに変換して無線送電する送電コイルと、前記磁気エネルギを交流電力に再変換する受電コイルとを備える非接触給電装置であって、
前記送電コイルと前記受電コイルの両方は、球形状に組み付けられた複数のヘリカルコイルから構成されており、
前記送電コイルを構成する各ヘリカルコイルの両端と前記交流電源の出力端子との電気的な接続または切断の切り替えを行う送電側スイッチと、
前記受電コイルを構成する各ヘリカルコイルの両端と負荷の入力端子との電気的な接続または切断の切り替えを行う受電側スイッチと、
前記交流電源から前記送電側スイッチへ伝搬する進行波と、前記送電側スイッチから前記交流電源へ伝搬する反射波とを分離して取り出す波形分離手段と、
前記送電コイルを構成するヘリカルコイルと前記受電コイルを構成するヘリカルコイルとの組合わせの中から伝送効率の最も高い組合わせを前記進行波及び反射波から算出された定在波比に基づいて割出し、その結果得られた組合わせを使用して非接触給電を行う制御手段と、
を備えることを特徴とする非接触給電装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の磁界共鳴方式では、送電回路及び受電回路ともに単一のヘリカルコイルを使用し、送電回路側の送電コイルと受電回路側の受電コイルとを正対させながら磁界共鳴を発生させて電力伝送を行うことが一般的であるが、送電コイルから受電コイルへの磁界の伝搬方向が一方向のみであるため、送電コイルと受電コイルとの位置関係にズレが生じると電力の伝送効率が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、送電コイルと受電コイルとの位置関係に依らずに高効率での非接触給電を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、第1の解決手段として、交流電源から供給される交流電力を磁気エネルギに変換して無線送電する送電コイルと、前記磁気エネルギを交流電力に再変換する受電コイルとを備える非接触給電装置であって、前記送電コイルと前記受電コイルの少なくとも一方は、球形状に組み付けられた複数のヘリカルコイルから構成されている、という手段を採用する。
【0007】
また、第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記送電コイルと前記受電コイルの両方が前記球形状に組み付けられた複数のヘリカルコイルから構成されており、前記送電コイルを構成する各ヘリカルコイルの両端と前記交流電源の出力端子との電気的な接続または切断の切り替えを行う送電側スイッチと、前記受電コイルを構成する各ヘリカルコイルの両端と負荷の入力端子との電気的な接続または切断の切り替えを行う受電側スイッチと、前記交流電源から前記送電側スイッチへ伝搬する進行波と、前記送電側スイッチから前記交流電源へ伝搬する反射波とを分離して取り出す波形分離手段と、前記送電コイルを構成するヘリカルコイルと前記受電コイルを構成するヘリカルコイルとの組合わせの中から伝送効率の最も高い組合わせを前記進行波及び反射波に基づいて割出し、その結果得られた組合わせを使用して非接触給電を行う制御手段とを備える、という手段を採用する。
【0008】
また、第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、前記送電コイルと前記受電コイルの少なくとも一方にコアを挿入し、そのコア位置を調整自在とするコア位置調整機構を備える、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数のヘリカルコイルからなる球形状の送電コイル及び受電コイルを採用することにより、送電コイルから受電コイルへの磁界の伝搬方向が複数存在することになるため、送電コイルと受電コイルとの位置関係に依らずに高効率での非接触給電を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る非接触給電装置Aの構成概略図である。この非接触給電装置Aは、例えばバッテリ等の負荷Lに対して、離れた位置に設置された交流電源Pから非接触で(ワイヤレスで)電力伝送を行うものであり、送電回路1及び受電回路2から構成されている。
【0012】
送電回路1は、送電コイル11、送電側スイッチ12、方向性結合器13及びコントローラ14を備えている。送電コイル11は、螺旋状に巻かれた3つのヘリカルコイル11a、11b、11cから構成されている。
図1に示すように、これらのヘリカルコイル11a、11b、11cは、球形状に組み付けられて1つの送電コイル11を構成している。なお、ヘリカルコイル11a、11b、11cは、互いに電気的に絶縁されている。
【0013】
送電側スイッチ12は、コントローラ14による制御に応じて、送電コイル11を構成する各ヘリカルコイル11a、11b、11cの両端と交流電源Pの出力端子との電気的な接続または切断の切り替えを行う。
なお、ヘリカルコイル11aの両端は、送電コイル11から引き出されて送電側スイッチ12の外部端子12aに接続されている。ヘリカルコイル11bの両端は、送電コイル11から引き出されて送電側スイッチ12の外部端子12bに接続されている。ヘリカルコイル11cの両端は、送電コイル11から引き出されて送電側スイッチ12の外部端子12cに接続されている。また、交流電源Pの出力端子は、方向性結合器13を介して送電側スイッチ12の外部端子12dに接続されている。
【0014】
つまり、送電側スイッチ12は、ヘリカルコイル11aの両端と交流電源Pの出力端子とを接続する場合、外部端子12aと外部端子12dとを接続状態に切り替える(
図1参照)。また、送電側スイッチ12は、ヘリカルコイル11bの両端と交流電源Pの出力端子とを接続する場合、外部端子12bと外部端子12dとを接続状態に切り替える。また、送電側スイッチ12は、ヘリカルコイル11cの両端と交流電源Pの出力端子とを接続する場合、外部端子12cと外部端子12dとを接続状態に切り替える。
【0015】
方向性結合器13は、送電側スイッチ12と交流電源Pとの間に介挿され、交流電源P側から送電コイル11側へ伝搬する進行波と、送電コイル11側から交流電源P側へ伝搬する反射波とを分離して取り出す波形分離手段である。なお、この方向性結合器13は、取り出した進行波W1と反射波W2(いずれも電気信号)をコントローラ14へ出力する。
【0016】
コントローラ14は、例えばメモリやCPU、入出力インターフェース等が一体的に組み込まれたマイコンであり、方向性結合器13から入力される進行波W1及び反射波W2に基づいて定在波比VSWRを算出し、その算出結果から最も伝送効率の高い状態に送電側スイッチ12を制御する機能を有している。なお、このコントローラ14の機能の詳細については後述する。
【0017】
一方、受電回路2は、受電コイル21、受電側スイッチ22及び整流回路23を備えている。受電コイル21は、送電コイル11と同様に、螺旋状に巻かれた3つのヘリカルコイル21a、21b、21cから構成されている。
図1に示すように、これらのヘリカルコイル21a、21b、21cは、球形状に組み付けられて1つの受電コイル21を構成している。なお、ヘリカルコイル21a、21b、21cは、互いに電気的に絶縁されている。
【0018】
受電側スイッチ22は、ユーザによる手動操作に応じて、受電コイル21を構成する各ヘリカルコイル21a、21b、21cの両端と整流回路23(負荷Lの前段回路)の入力端子との電気的な接続または切断の切り替えを行う。
なお、ヘリカルコイル21aの両端は、受電コイル21から引き出されて受電側スイッチ22の外部端子22aに接続されている。ヘリカルコイル21bの両端は、受電コイル21から引き出されて受電側スイッチ22の外部端子22bに接続されている。ヘリカルコイル21cの両端は、受電コイル21から引き出されて受電側スイッチ22の外部端子22cに接続されている。また、整流回路23の入力端子は、受電側スイッチ22の外部端子22dに接続されている。
【0019】
つまり、受電側スイッチ22は、ヘリカルコイル21aの両端と整流回路23の入力端子とを接続する場合、外部端子22aと外部端子22dとを接続状態に切り替える(
図1参照)。また、受電側スイッチ22は、ヘリカルコイル21bの両端と整流回路23の入力端子とを接続する場合、外部端子22bと外部端子22dとを接続状態に切り替える。また、受電側スイッチ22は、ヘリカルコイル21cの両端子と整流回路23の入力端子とを接続する場合、外部端子22cと外部端子22dとを接続状態に切り替える。
【0020】
整流回路23は、受電側スイッチ22を介して受電コイル21から供給される交流電力を直流電力に変換して負荷Lに出力する。
【0021】
以上のように構成された非接触給電装置Aにおいて、送電コイル11と受電コイル21は、それぞれ不図示のコンデンサとともにLC共振回路を構成している。送電コイル11の共振周波数と受電コイル21の共振周波数とが等しくなるように回路定数を設定すれば、送電コイル11と受電コイル21との間に磁界共鳴を発生させることができる。
【0022】
磁界共鳴が発生すると、交流電源Pから供給される交流電力は送電コイル11によって磁気エネルギに変換されて無線送信され、その磁気エネルギは受電コイル21によって交流電力に再変換される。受電コイル21から得られた交流電力は、整流回路23によって直流電力に変換された後、負荷Lに供給されることになる。このように、負荷Lに対して、離れた位置に設置された交流電源Pから非接触で電力伝送を行うことができる。
【0023】
ここで、本実施形態では、送電コイル11及び受電コイル21が、球形状に組み付けられた複数(本実施形態では3つ)のヘリカルコイルから構成されている。前述のように、従来では、送電コイルから受電コイルへの磁界の伝搬方向が一方向のみであったため、送電コイルと受電コイルとの位置関係にズレが生じると電力の伝送効率が低下するという問題があった。これに対して、本実施形態では、複数のヘリカルコイルからなる球形状の送電コイル11及び受電コイル21を採用することで、送電コイル11から受電コイル21への磁界の伝搬方向が複数存在することになるため、送電コイル11と受電コイル21との位置関係に依らずに高効率での非接触給電を実現することができる。
【0024】
ところで、本実施形態では、電力伝送に使用される送電コイル11側のヘリカルコイルと受電コイル21側のヘリカルコイルの組み合わせ(以下、この組み合わせを伝送コイルペアと称す)によって電力の伝送効率が異なるため、送電コイル11と受電コイル21との位置関係に応じて最も伝送効率が高くなるように伝送コイルペアを決定する必要がある。
本実施形態では、非接触給電装置Aによる給電開始時において、
図2のフローチャートに示す手順に従って最も伝送効率の高い伝送コイルペアを決定し、その伝送コイルペアを使用して非接触給電を行う。
【0025】
図2に示すように、まず、受電側スイッチ22を手動操作して、受電コイル21のヘリルカルコイル21aと負荷Lとを接続させる(ステップS1)。そして、コントローラ14は、送電側スイッチ12を制御して、送電コイル11のヘリカルコイル11aと交流電源Pとを接続させる(ステップS2)。つまり、この場合、ヘリカルコイル11aと21aとが伝送コイルペアとなる。
【0026】
そして、コントローラ14は、方向性結合器13から入力される進行波W1と反射波W2に基づいて、今回の伝送コイルペアでの定在波比VSWRを算出し、その算出結果を内部メモリに保存する(ステップS3)。なお、コントローラ14は、進行波W1の振幅V1と反射波W2の振幅V2を検出し、これらV1、V2の値と下記(1)式及び(2)式に基づいて定在波比VSWRを算出する。
ρ=V2/V1 ・・・(1)
VSWR=(1+|ρ|)/(1−|ρ|) ・・・(2)
【0027】
続いて、コントローラ14は、送電側スイッチ12を制御して、送電コイル11のヘリカルコイル11bと交流電源Pとを接続させる(ステップS4)。つまり、この場合、ヘリカルコイル11bと21aとが伝送コイルペアとなる。そして、コントローラ14は、方向性結合器13から入力される進行波W1と反射波W2に基づいて、今回の伝送コイルペアでの定在波比VSWRを算出し、その算出結果を内部メモリに保存する(ステップS5)。
【0028】
続いて、コントローラ14は、送電側スイッチ12を制御して、送電コイル11のヘリカルコイル11cと交流電源Pとを接続させる(ステップS6)。つまり、この場合、ヘリカルコイル11cと21aとが伝送コイルペアとなる。そして、コントローラ14は、方向性結合器13から入力される進行波W1と反射波W2に基づいて、今回の伝送コイルペアでの定在波比VSWRを算出し、その算出結果を内部メモリに保存する(ステップS7)。
【0029】
次に、受電側スイッチ22を手動操作して、受電コイル21のヘリルカルコイル21bと負荷Lとを接続させる(ステップS8)。そして、コントローラ14は、送電側スイッチ12を制御して、送電コイル11のヘリカルコイル11aと交流電源Pとを接続させる(ステップS9)。つまり、この場合、ヘリカルコイル11aと21bとが伝送コイルペアとなる。そして、コントローラ14は、方向性結合器13から入力される進行波W1と反射波W2に基づいて、今回の伝送コイルペアでの定在波比VSWRを算出し、その算出結果を内部メモリに保存する(ステップS10)。
【0030】
続いて、コントローラ14は、送電側スイッチ12を制御して、送電コイル11のヘリカルコイル11bと交流電源Pとを接続させる(ステップS11)。つまり、この場合、ヘリカルコイル11bと21bとが伝送コイルペアとなる。そして、コントローラ14は、方向性結合器13から入力される進行波W1と反射波W2に基づいて、今回の伝送コイルペアでの定在波比VSWRを算出し、その算出結果を内部メモリに保存する(ステップS12)。
【0031】
続いて、コントローラ14は、送電側スイッチ12を制御して、送電コイル11のヘリカルコイル11cと交流電源Pとを接続させる(ステップS13)。つまり、この場合、ヘリカルコイル11cと21bとが伝送コイルペアとなる。そして、コントローラ14は、方向性結合器13から入力される進行波W1と反射波W2に基づいて、今回の伝送コイルペアでの定在波比VSWRを算出し、その算出結果を内部メモリに保存する(ステップS14)。
【0032】
次に、受電側スイッチ22を手動操作して、受電コイル21のヘリルカルコイル21cと負荷Lとを接続させる(ステップS15)。そして、コントローラ14は、送電側スイッチ12を制御して、送電コイル11のヘリカルコイル11aと交流電源Pとを接続させる(ステップS16)。つまり、この場合、ヘリカルコイル11aと21cとが伝送コイルペアとなる。そして、コントローラ14は、方向性結合器13から入力される進行波W1と反射波W2に基づいて、今回の伝送コイルペアでの定在波比VSWRを算出し、その算出結果を内部メモリに保存する(ステップS17)。
【0033】
続いて、コントローラ14は、送電側スイッチ12を制御して、送電コイル11のヘリカルコイル11bと交流電源Pとを接続させる(ステップS18)。つまり、この場合、ヘリカルコイル11bと21cとが伝送コイルペアとなる。そして、コントローラ14は、方向性結合器13から入力される進行波W1と反射波W2に基づいて、今回の伝送コイルペアでの定在波比VSWRを算出し、その算出結果を内部メモリに保存する(ステップS19)。
【0034】
続いて、コントローラ14は、送電側スイッチ12を制御して、送電コイル11のヘリカルコイル11cと交流電源Pとを接続させる(ステップS20)。つまり、この場合、ヘリカルコイル11cと21cとが伝送コイルペアとなる。そして、コントローラ14は、方向性結合器13から入力される進行波W1と反射波W2に基づいて、今回の伝送コイルペアでの定在波比VSWRを算出し、その算出結果を内部メモリに保存する(ステップS21)。
【0035】
最後に、コントローラ14は、内部メモリに保存した各伝送コイルペアの定在波比VSWRに基づいて最も伝送効率の高いペアを割出し、その伝送コイルペアとなるように送電側スイッチ12を制御する(ステップS22)。この時、受電側スイッチ22側は手動操作にて切り替える。従って、最も伝送効率の高い伝送コイルペアをユーザに知らせる必要があるため、不図示の表示装置等に最も伝送効率の高い伝送コイルペアを表示させる機能をコントローラ14に持たせることが望ましい。なお、周知のように、定在波比VSWRが低いほど伝送効率は高くなるため、各伝送コイルペアの中から最も定在波比VSWRが低いペアを、最も伝送効率の高いペアとして決定すれば良い。
【0036】
以上説明したように、本実施形態によれば、複数のヘリカルコイルからなる球形状の送電コイル11及び受電コイル21を採用することにより、送電コイル11から受電コイル21への磁界の伝搬方向が複数存在することになるため、送電コイル11と受電コイル21との位置関係に依らずに高効率での非接触給電を実現することができる。
【0037】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、以下のような変形例が挙げられる。
(1)上記実施形態では、送電コイル11及び受電コイル21ともに、3つのヘリカルコイルによって構成した場合を例示したが、
図3(a)に示すように、3つ以上のヘリカルコイルを球形状に組み付けて構成しても良い。ヘリカルコイル数が多いほど、伝送効率の高い伝送コイルペアを発見しやすくなる。また、送電コイル11と受電コイル21の少なくとも一方が、球形状に組み付けられた複数のヘリカルコイルから構成されていれば良い。
【0038】
(2)
図3(b)に示すように、送電コイル11と受電コイル21の少なくとも一方にコア31を挿入し、そのコア31の位置を調整自在とするコア位置調整機構32を設けても良い。このような構成を採用することにより、送電コイル11または受電コイル21のQ値を調整できるようになるため、より効率の高い非接触給電を実現できる。なお、コア位置調整機構32は、手動、自動を問わず、公知の技術によって実現できる。
【0039】
(3)上記実施形態において、送電コイル11または受電コイル21の各ヘリカルコイルの巻数やコンデンサの値等を変えておけば、各ヘリカルコイルのそれぞれの共振周波数やQ値が異なるため、利用する周波数の選択や最適なQ値の選択による高効率な非接触給電を実現できる。